JP4337367B2 - 液体吐出装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、液体吐出装置に関し、例えば発熱素子の駆動によりインク液滴を飛び出させるプリンタに適用することができる。本発明は、液滴の向きの可変に対応する目標において液滴が到達し得る到達可能領域が近接するノズルで重なり合わないように、オフセットさせてノズルを配置することにより、複数の圧力可変素子の駆動により液滴の飛び出す方向を制御する場合に、インク液滴の衝突を有効に回避することができるようにする。
【0002】
【従来の技術】
近年、画像処理等の分野において、ハードコピーのカラー化に対するニーズが高まってきている。このニーズに対して、従来、昇華型熱転写方式、溶融熱転写方式、インクジェット方式、電子写真方式及び熱現像銀塩方式等のカラーコピー方式が提案されている。
【0003】
これらの方式のうちインクジェット方式は、液体吐出ヘッドであるプリンタヘッドに設けられたノズルから記録液(インク)の液滴を飛翔させ、記録対象に付着してドットを形成するものであり、簡易な構成により高画質の画像を出力することができる。このインクジェット方式は、インクを保持した液室の圧力を圧力可変素子により可変することにより、ノズルからインク液滴を飛び出させるようになされており、この圧力可変素子の種類により静電引力方式、連続振動発生方式(ピエゾ方式)及びサーマル方式に分類される。
【0004】
これらの方式のうちサーマル方式は、圧力可変素子に発熱素子が適用され、この発熱素子によるインクの局所的な加熱により気泡を発生し、この気泡による圧力によりインクをノズルから押し出して印刷対象に飛翔させる方式であり、簡易な構成によりカラー画像を印刷することができる。
【0005】
このようなサーマル方式によるプリンタに適用されるプリンタヘッドは、例えば特開平7−68759号公報に開示のように、半導体基板上に、発熱素子を駆動するロジック集積回路による駆動回路等を作成した後、発熱素子、インク液室、ノズルを順次作成して形成されるようになされ、これにより発熱素子と駆動回路等を一体化して発熱素子を高密度に配置し、高解像度の印刷結果を出力できるようになされている。
【0006】
このようなプリンタヘッドにおいては、特開平8−48034号公報に開示されているように、各液室に複数の圧力可変素子を設け、この複数の圧力可変素子の駆動により、液室内における圧力変化の中心を変位させることにより、液滴の飛び出す方向を制御する方法が提案されるようになされている。
【0007】
すなわち図8(A)及び(B)に示すように、ノズル1を設けてなるインク液室2に対して、インク液室2の並び方向にそれぞれ発熱素子3A及び3Bを並べて設ける。各インク液室2に設けられた発熱素子3A及び3Bの一端を電源5に接続し、またそれぞれ発熱素子3A及び3Bの他端をトランジスタ7A、7Bに接続し、このトランジスタ7A、7Bを介して各発熱素子3A、3Bの他端を接地する。トランジスタ7A及び7Bにおいては、制御回路9のタイミング制御により、それぞれ所定のタイミングでオン状態に切り換わって発熱素子3A、3Bを駆動し、制御回路9によるこのオン状態におけるゲート電圧の設定により、発熱素子3A、3Bに流れる電流IA、IBを制御する。なおこの場合において、発熱素子3A及び3Bは、形状、抵抗値がほぼ等しいものとし、ノズル1の中心軸に対してほぼ対称に配置され、またインク液室2においては、これら発熱素子3A及び3Bの配列方向に対して偏りなく作成されているものとする。
【0008】
このようにプリンタヘッドを構成して、発熱素子3A、3Bの駆動電流IA及びIBをほぼ等しくすると、インク液滴においては、ノズル1より正面方向に飛び出す。これに対して発熱素子3A、3Bの駆動電流IA及びIBを相補的に変化させれば、駆動電流が小さくなって発熱量が少なくなった発熱素子の側に、インク液滴が傾いて飛び出すようになり、駆動電流IA及びIBの偏りを大きくすると、その分、この傾きも大きくなる。これによりこの方法では、各液室に設けた複数の圧力可変素子の駆動により、液室内における圧力変化の中心を変位させて液滴の飛び出す方向を制御するようになされている。
【0009】
【特許文献1】
特開平7−68759号公報
【特許文献2】
特開平8−48034号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
ところでこのように各液室に設けた複数の圧力可変素子の駆動により、液室内における圧力変化の中心を変位させて液滴の飛び出す方向を制御する方法においては、プリンタヘッドの製造バラツキの補正に利用する場合、解像度の向上に利用する場合等、種々の利用が考えられる。
【0011】
これらの利用のうち、隣接するノズルが受け持つ印刷可能範囲が一部で重なり合うように設定すれば、この重なり合った領域では、双方のノズルによるインク液滴を混在させることができ、インク液滴のインク量等、ノズルによる各種のばらつきを目立たなくし得、これにより一段と高品位の印刷結果を得ることができると考えられる。
【0012】
しかしながらこのようにするとインク液滴が印刷対象に付着する前に、インク液滴同士が衝突する場合が発生し、この衝突によりインク液滴が印刷対象に付着することが困難になり、却って印刷結果の品位が劣化する問題がある。因みにラインプリンタにおいては、この印刷結果における品位の劣化が用紙送り方向に延長するスジ状の印刷ムラとなって観察される。
【0013】
この問題を解決する1つの方法としてこのような衝突の可能性があるノズルについては、発熱素子を駆動するタイミングの制御により、これらノズル間で、インク液滴の飛び出すタイミングをずらせる方法も考えられるが、この方法の場合、タイミングをずらした分、印刷に要する時間が長くなり、また制御も煩雑になる問題がある。
【0014】
すなわち図9に示すように、インク液滴の向きの可変によりノズル1A、1Bから飛び出したインク液滴が目標において到達し得る範囲を着弾可能範囲ARA及びARBとして、これら着弾可能範囲ARA及びARBが部分的に重なり合うように、ノズル1A、1Bを近接して配置する。
【0015】
この場合に、符号LA1及びLB1により各インク液滴の軌跡を示すように、インク液滴の軌跡が交差し、かつ対称である場合、インク液滴を同時に飛び出させるとインク液滴が途中で衝突することになる。
【0016】
またタイミングをずらしてインク液滴を吐出させた場合でも、インク液滴の軌跡、タイミングによっては、インク液滴が衝突することになる。すなわち符号LB2に示すように、一方のノズル1Bからは真っ直ぐにインク液滴を飛び出させ、他方のノズル1Aからは、このノズル1Bのインク液滴の軌道を横切るように、インク液滴を飛び出させる。この場合に、ノズル1Aから飛び出したインク液滴について、2つの軌跡の交点に到達するまでの時間T1は、T1=(W2 +L2 )1/2 /vにより表される。ここでWは、ノズル1A、1Bの間隔、Lは、ノズル1Bから2つの軌跡が交差する点までの距離、vはインク液滴の速度である。これに対してノズル1Bのインク液滴は、ノズル1Bから飛び出してこの交点に到達するまでに、T2=L/vの時間を要する。図10は、距離Lを2mmに設定して、このような印刷対象にインク液滴が付着するまでの時間を計算した結果である。なおここで速度vは、10〔m/sec〕である。
【0017】
これによりこの場合は、ノズル1Aより先にインク液滴を飛び出させて、その後、時間ΔT(T1−T2)だけ経過してノズル1Bからインク液滴を飛び出させると、インク液滴が衝突してしまうことになる。
【0018】
実際上、インク液滴は有限の大きさを有することにより、このような時間ΔTを中心にしたインク液滴の大きさに対応する所定の時間範囲で、インク液滴が衝突することになる。この衝突の時間範囲は、インク液滴が交差する位置によって種々に変化することになる。これに対して印刷に要する時間を短くするためには、各ノズルを駆動する時間間隔を短くすることが必要になり、この場合は、一段と衝突の確率が高くなる。これらによりタイミングの制御により衝突を回避する場合にあっては、処理が煩雑になる欠点がある。
【0019】
本発明は以上の点を考慮してなされたもので、複数の圧力可変素子の駆動により液滴の飛び出す方向を制御する場合に、インク液滴の衝突を有効に回避することができる液体吐出装置を提案しようとするものである。
【0021】
【課題を解決するための手段】
かかる課題を解決するため請求項1の発明においては、液体吐出ヘッドより液滴を飛び出させる液体吐出装置に適用して、この液体吐出ヘッドは、液滴の向きの可変に対応する目標において液滴が到達し得る到達可能領域が隣接するノズルで重なり合わないように、隣接するノズルが、並び方向と略直交する方向にオフセットして配置されてなるようにする。さらに目標との間の相対位置が、前記並び方向と略直交する方向に変位するように保持され、該変位により到達可能領域が目標を走査する領域が、少なくとも隣接するノズルで一部は重なり合うように設定され、液体吐出装置は、変位により想達可能領域が重なり合う領域では、隣接するノズルからの液滴を混在させて目標に到達させる。
【0022】
請求項1の構成によれば、何れのタイミングで隣接するノズルから液滴を飛び出させるようにしても、液滴の衝突を防止することができ、これにより複数の圧力可変素子の駆動により液滴の飛び出す方向を制御する場合に、インク液滴の衝突を有効に回避することができる。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、適宜図面を参照しながら本発明の実施の形態を詳述する。
【0025】
(1)第1の実施の形態
(1−1)第1の実施の形態の構成
図1は、第1の実施の形態に係るプリンタに適用されるプリンタヘッドを示す平面図である。この実施の形態に係るプリンタは、所定の用紙送り機構により印刷対象である用紙を搬送しながら、このプリンタヘッド11からインク液滴を飛び出させて用紙に付着させ、これにより所望の画像、テキスト等を印刷するようになされている。
【0026】
ここでこのプリンタヘッド11は、ラインヘッドであり、ほぼ印刷対象である用紙の幅により延長するように、インクタンクに接続されるインク流路12が所定の部材に形成され、このインク流路12の両側に、ヘッドチップ13を千鳥に配置して構成される。
【0027】
ここでヘッドチップ13は、略長方体形状により形成され、その長手方向の端面に沿って複数個のノズル14が並んで設けられるようになされている。ヘッドチップ13は、この各ノズル14にそれぞれ図8について上述したインク吐出機構に係る1対の発熱素子、この1対の発熱素子を駆動する駆動回路が設けられるようになされている。
【0028】
図2は、このインク吐出機構に係る駆動回路を関連する構成と共に示す接続図である。この図2において、コントローラ21は、このプリンタヘッド11の描画を制御する上位の描画コントローラからの制御により、このヘッドチップ13に設けられた全ての駆動回路を制御する制御回路である。これに対して駆動回路は、各ノズル14毎に設けられ、主駆動回路22及び副駆動回路23により構成される。
【0029】
ここで主駆動回路22は、コントローラ21から出力されるコントロール信号SC1に基づいて、インク液滴を飛び出させるタイミングでインク液室24に設けられた圧力可変素子である発熱素子25A、25Bの直列回路を駆動する。これに対して副駆動回路23は、主駆動回路22による発熱素子25A、25Bの駆動を偏らせ、これによりインク液滴の飛び出す方向を可変させる。
【0030】
すなわち主駆動回路22は、一端が電源26に接続されてなる発熱素子25A及び25Bによる直列回路の他端を、定電流回路を構成するMOSFET27を介して接地する。主駆動回路22は、インバーター回路構成のアンド回路28を介して、コントローラ21から出力されるコントロール信号SC1によりこのMOSFET27の動作を制御し、これにより発熱素子25A、25Bの直列回路を所定のタイミイングで電源に接続し、発熱素子25A及び25Bを駆動する。これによりこのヘッドチップ13においては、このコントロール信号SC1によるタイミングでノズル14からインク液滴を飛び出させるようになされている。
【0031】
これに対して副駆動回路23は、それぞれ発熱素子25A、25Bの接続中点に所定の電流を流入させ、またこの接続中点から所定の電流を流出される電源回路30A、30B、30C、30Dにより構成される。ここで電源回路30A、30B、30C、30Dは、内蔵の定電流回路の設定により、この接続中点に流入し、又は接続中点から流出させる電流の値が、4:2:1:1に設定され、またそれぞれコントロール信号SA、SB、SC、SDの設定により、この電流値により発熱素子25A、25Bの駆動を偏らせる点を除いて同一に構成されることにより、以下の説明においては、電源回路30Aについて詳細に説明する。
【0032】
かくするにつきこの実施の形態においては、これら電源回路30A、30B、30C、30Dによる電流値を4:2:1:1に設定することにより、電源回路30A、30B、30Cでは電流値が2の階乗により段階的に変化するようになされ、これより全体として簡易な構成により発熱素子25A、25Bの駆動を効率良く偏らせるようになされている。
【0033】
しかして電源回路30Aは、発熱素子25A、25Bの接続中点への電流の流入と、これとは逆にこの接続中点からの電流の流出とを切り換える方向切り換え信号SC3をイクスクリーシブノア回路31に入力し、これによりこの方向切り換え信号SC3によりコントロール信号SAの極性を切り換える。電源回路30Aは、このイクスクリーシブノア回路31の出力信号をアンド回路32に直接入力し、またインバーター回路33を介して極性を反転してアンド回路34に入力する。アンド回路32、34は、それぞれイクスクリーシブノア回路31の出力信号、インバーター回路33の出力信号をコントロール信号SC1によりゲートしてMOSFET35、36に出力し、これによりコントロール信号SC1により発熱素子25A、25Bを駆動している期間の間、方向切り換え信号SC3、コントロール信号SAに応じて相補的にMOSFET35、36をオンオフ制御するようになされている。
【0034】
また電源回路30Aは、発熱素子25A、25Bの駆動を偏らせるか否かのコントロール信号SC2によりMOSFETによる定電流回路37をオンオフ制御する。電源回路30A〜30Cは、この定電流回路37の設定により、それぞれ発熱素子25A、25Bの駆動を偏らせる電流値が4:2:1:1に設定されるようになされている。
【0035】
MOSFET35、36は、この定電流回路37をソースに接続し、MOSFET35においては、発熱素子25A、25Bの接続中点にドレインが接続される。またMOSFET36は、電源側に設けられたMOSFET39、40によるカレントミラー回路にドレインが接続され、このカレントミラー回路により定電流回路37による電流値と値の等しい定電流をMOSFET40により発熱素子25A、25Bの接続中点に流入させる。かくするにつき、これらMOSFET35、36は、コントロール信号SC1により発熱素子25A、25Bを駆動している期間の間、方向切り換え信号SC3、コントロール信号SAに応じて相補的にオンオフ制御され、また動作基準である定電流回路37においては、コントロール信号SC2により動作することにより、発熱素子25A、25Bの駆動を偏らせる場合であって、接続中点より電流を流出させる場合には、MOSFET35側がオン状態に切り換わって定電流回路37による電流を吸い込むようになされ、またこれとは逆に接続中点に電流を流入させる場合には、MOSFET36側がオン状態に切り換わって定電流回路37による電流を流出させるようになされ、これによりこの発熱素子25A、25Bによるノズル14について、インク液滴の向きを制御し得るようになされている。
【0036】
これによりこの実施の形態において、ヘッドチップ13は、発熱素子25A、25Bの配列方向にインク液滴の向きを可変し得るようになされ、この配列方向がノズル14の並び方向とほぼ一致するように、発熱素子25A、25Bが併設して設けられるようになされている。
【0037】
図1(C)に示すように、この実施の形態では、印刷対象である用紙とプリンタヘッド11との相対的な運動を停止した状態で、ノズルから飛び出したインク液滴が目標において到達し得る範囲、すなわちインク液滴の向きの可変に対応した目標においてインク液滴が到達し得る範囲を到達可能領域A1〜A3として、この到達可能領域A1〜A3が近接するノズル14O、14Eで重なり合わないように、近接するノズル14Eをノズル14の並び方向と直交した方向にオフセットさせて配置する。
【0038】
またこのようにして1のノズル14が受け持つ領域である、目標物とプリンタヘッド11との相対的な運動により、目標において、到達可能領域A1〜A3が走査する領域A11、A12、A13については、近接するノズル14で少なくとも一部が重なり合うようにする。これによりこの実施の形態では、インク液滴の衝突を有効に回避して、この重なり合う領域では複数のノズルから飛び出したインク液滴を混在させて画質を向上するようになされている。
【0039】
この実施の形態では、このような到達可能領域A1〜A3が走査する領域A11、A12、A13における重なり合いが、隣接するノズル14O、14Eの間だけで発生するように設定され、またこれら隣接するノズル14O、14Eとの間の関係で、近接するノズル14Eをオフセットさせるようになされている。
【0040】
図3は、このようなノズル14をオフセットさせてなるヘッドチップ13の具体的な構成を示す分解斜視図である。ヘッドチップ13は、発熱素子25A、25B、発熱素子25A、25Bを駆動する駆動回路22、23、コントローラ21等を形成してなる半導体基板43に、隔壁44を形成してインク液室24等を形成した後、ノズル14を作成してなるノズルプレート45を配置して構成される。ヘッドチップ13は、インク流路12側の長手方向の端面に沿って発熱素子25A、25Bが並んで配列され、この発熱素子25A、25Bの並びを間に挟んで、インク流路12とは逆側に、駆動回路22、23、コントローラ21、コントローラ21を上位の描画コントローラに接続する端子等が設けられるようになされている。
【0041】
ヘッドチップ13は、偶数番目のノズル14Oと、奇数番目のノズル14Eとで、インク流路側端面からの距離が異なるように、発熱素子25A、25Bの位置、隔壁44の形状等が設定され、これにより到達可能領域が近接するノズル14で重なり合わないようにノズル14の並び方向と直交する方向に所定のノズル14をオフセットさせて配置するようになされている。
【0042】
図4に示すように、このプリンタにおいて、このようなノズル14O、14Eのオフセットの配置に対応して、描画コントローラ50は、このノズル14O、14E間のオフセット量を補正するように、ヘッドチップ13の動作を制御する。すなわち描画コントローラ50においては、印刷に供する画像データ、テキストデータを、各ノズル14から吐出するインク液滴によるドットの解像度に対応するビットマップ形式の画像データに変換し、この画像データを各ヘッドチップ13のノズル14に振り分ける。なお描画コントローラ50は、この処理において誤差拡散法等の手法を適宜適用する。描画コントローラ50は、この処理において、上述した到達可能領域が走査する領域において、重なり合う領域においては、対応する画像データをこれら重なり合ってなるノズル14にランダムに振り分け、これによりこの領域では隣接するノズルによるドットを混在させて画質を向上する。描画コントローラ50は、これらの処理において、コントローラ21においてコントロール信号SA〜SD、SC1〜SC3の生成に必要な各種信号を併せて出力する。
【0043】
描画コントローラ50は、このようにして各ノズルに振り分けた画像データを各種信号と共に対応するタイミングで対応するヘッドチップ13に出力する。この処理により、用紙搬送方向の上流側にオフセットさせて配置したノズル14Eに対して出力する画像データに対して(図4(A))、下流側に設けられたノズル14Oに対しては、オフセット量の分だけ遅延させて出力する。
【0044】
この実施の形態において、このオフセット量は0.1〔mm〕に設定され、用紙送り速度50〔mm/sec〕により用紙を搬送し、これによりこの遅延による遅延時間ΔTを0.002〔sec〕に設定してヘッドチップ13を駆動した。
【0045】
(1−2)第1の実施の形態の動作
以上の構成において、このプリンタにおいては、印刷に供する画像データ、テキストデータ等により、印刷対象である用紙を所定の用紙送り機構により搬送しながら、プリンタヘッド11からインク液滴が吐出され、このインク液滴が搬送中の用紙に付着し、これによりプリンタヘッド11の駆動に応じた画像、テキスト等が印刷される(図1)。
【0046】
プリンタにおいては、このプリンタヘッド11が、それぞれインク吐出機構を有してなる複数のヘッドチップ13が千鳥に配置されて形成される。また各ヘッドチップ13においては、インク流路12に沿ってノズル14が並ぶように形成され、各ノズル14のインク液室24には、圧力可変素子である発熱素子25A、25Bが1対設けられ、この発熱素子25A、25Bの主駆動回路22、副駆動回路23による駆動により、ノズル14から飛び出すインク液滴の向きが用紙送り方向と直交する方向であるノズル14の並びの方向に可変するように制御される(図2)。
【0047】
プリンタでは、このようにしてインク液滴の飛び出す方向を可変して、この可変に対応する目標においてインク液滴が到達し得る到達可能領域が、近接するノズル14で重なり合わないように、近接するノズル14がノズル14の並び方向と略直交する方向にオフセットして配置され(図1(A))、これによりインク液滴の衝突が有効に回避される。
【0048】
またこのようにしてノズル14の並び方向と略直交する方向にオフセットさせるようにして、目標である用紙との間の相対位置が、ノズル14の並び方向とに略直交する方向に変位すると、この変位によって到達可能領域の目標を走査する領域が、近接するノズルで一部は重なり合うように設定され、この重なり合う領域においては、対応するノズルによるインク液滴が混在するように、ヘッドチップ13が駆動され、これによりノズル14の特性のばらつきによる画質の劣化が有効に回避され、高品位の印刷結果を得ることができる。
【0049】
このようにして各ノズル14からインク液滴を飛び出させるにつき、プリンタでは、このようにしてオフセットしてノズル14(14O、14E)を配置した分、このオフセット量、用紙が搬送されるに要する時間だけタイミングをずらして各ノズル14O、14Eが駆動され、これによりこのようにオフセットさせて配置したことによる印刷結果の乱れが有効に回避される。
【0050】
(1−3)第1の実施の形態の効果
以上の構成によれば、液滴の向きの可変に対応する目標において液滴が到達し得る到達可能領域が近接するノズルで重なり合わないように、オフセットさせてノズルを配置することにより、複数の圧力可変素子の駆動により液滴の飛び出す方向を制御する場合に、インク液滴の衝突を有効に回避することができる。
【0051】
またこのようにしてノズルを配置して、目標との間の相対位置がノズルの並び方向とに略直交する方向に変位するようにして、この変位により到達可能領域の走査範囲が近接するノズルで一部は重なり合うように設定することにより、この重なり合った領域で複数のノズルからの液滴を混在させて目標に付着させることができ、これにより高品位の印刷結果を得ることができる。
【0052】
(2)第2の実施の形態
この実施の形態では、隣接する3つのノズルで、到達可能領域の走査範囲が重なり合うようにし、また3つのノズルの周期で繰り返しオフセットさせ、到達可能領域が重なり合わないようにする。これによりこの実施の形態では、さらに一段と複数のノズルからのインク液滴を混在させて、画質を向上させるようになされている。なおこの実施の形態では、このようなノズルの配置、ノズルの配置に対応して各ノズルからインク液滴を飛び出させるタイミング制御が異なる点を除いて、第1の実施の形態と同一に構成される。
【0053】
この実施の形態のように、隣接する3つのノズルで、到達可能領域が重なり合わないようにし、また到達可能領域の走査範囲が重なり合うようにしても、第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0054】
(3)第3の実施の形態
この実施の形態では、図6に示すように、1つのノズル14の中心軸を中心にして扇状に発熱素子25A〜25Dを配置し、これによりこれら発熱素子25A〜25Dの駆動により、この中心軸を中心にした円形形状の領域が到達可能領域に設定される。
【0055】
またこのような円形形状による到達可能領域に対応して、図7に示すように、この到達可能領域A1〜A3が近接するノズル14O、14Eで重なり合わないように、近接するノズル14Eが並び方向と直交する方向にオフセットして配置され、また到達可能領域の走査範囲にあっては、隣接するノズル14O、14Eで重なり合うようにする。なおこの実施の形態においては、このような発熱素子の配置、この発熱素子の配置に対応して主駆動回路、副駆動回路の構成、関連する構成が異なる点を除いて、第1の実施の形態と同一に構成される。
【0056】
この実施の形態のように、ノズルの並び方向に加えて、これと直交する方向にもインク液滴の飛び出す方向を可変する場合でも、第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0057】
(4)他の実施の形態
なお上述の実施の形態においては、主駆動回路及び副駆動回路による電流駆動により発熱素子を駆動し、またこの駆動を偏らせる場合について述べたが、本発明はこれに限らず、電圧駆動により発熱素子を駆動し、またこの駆動を偏らせる場合、さらには図8に示すように、発熱素子に個々に設けられた駆動回路により駆動する場合等にも広く適用することができる。
【0058】
また上述の実施の形態においては、1つのインク液室に2つ又4つの発熱素子を設ける場合について述べたが、本発明はこれに限らず、3つ以上発熱素子を設ける場合にも広く適用することができる。
【0059】
また上述の実施の形態においては、発熱素子と駆動回路と一体に半導体基板上に作成する場合について述べたが、本発明はこれに限らず、これらを別体に構成する場合にも広く適用することができる。
【0060】
また上述の実施の形態においては、インク液滴の向きを制御してノズルによるバラツキを補正する場合について述べたが、本発明はこれに限らず、1つのノズルによりインク付着位置を可変して複数ドットを作成することによる解像度の増大にインク液滴の向きの制御を利用する場合等、印刷品位の向上、構成の簡略化等、インク液滴の向きの制御を種々に役立てる場合に広く適用することができる。
【0061】
また上述の実施の形態においては、サーマル方式によるプリンタに本発明を適用して発熱素子による圧力可変素子を駆動する場合について述べてが、本発明はこれに限らず、ピエゾ方式、静電方式等、各種素子により圧力可変素子を構成するプリンタ、プリンタヘッドに広く適用することができる。
【0062】
また上述の実施の形態においては、本発明をプリンタヘッドに適用してインク液滴を飛び出させる場合について述べたが、本発明はこれに限らず、インク液滴に代えて各種染料の液滴、保護層形成用の液滴等を飛び出させる液体吐出ヘッド、さらには液滴が試薬等であるマイクロディスペンサー、各種測定装置、各種試験装置、液滴がエッチングより部材を保護する薬剤である各種のパターン描画装置等に広く適用することができる。
【0063】
【発明の効果】
上述のように本発明によれば、液滴の向きの可変に対応する目標において液滴が到達し得る到達可能領域が近接するノズルで重なり合わないように、オフセットさせてノズルを配置することにより、複数の圧力可変素子の駆動により液滴の飛び出す方向を制御する場合に、インク液滴の衝突を有効に回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るプリンタヘッドの一部を示す平面図である。
【図2】図1のプリンタヘッドのヘッドチップの駆動回路を示す接続図である。
【図3】図1のプリンタヘッドのヘッドチップを示す分解斜視図である。
【図4】図2のヘッドチップにおけるタイミングの説明に供する略線図である。
【図5】本発明の第2の実施の形態に係るプリンタヘッドの説明に供する平面図である。
【図6】本発明の第3の実施の形態に係るプリンタヘッドにおける発熱素子の配置を示す平面図である。
【図7】図6のプリンタヘッドの説明に供する平面図である。
【図8】複数の発熱素子による駆動の説明に供する略線図である。
【図9】インク液滴の衝突の説明に供する略線図である。
【図10】インク液滴の飛翔時間を示す特性曲線図である。
【符号の説明】
1、14、14E、14O、14A〜14C……ノズル、2、24……インク液室、3A、3B、25A、25B……発熱素子、11……プリンタヘッド、12……インク流路、13……ヘッドチップ、22……主駆動回路、23……副駆動回路
Claims (2)
- 液体吐出ヘッドより液滴を飛び出させる液体吐出装置において、
前記液体吐出ヘッドは、
それぞれ圧力可変素子の駆動により液滴が飛び出すノズルが複数個設けられ、
前記複数個のノズルが所定の並び方向に並んで配置され、
前記液室には、複数の前記圧力可変素子が設けられ、前記複数の圧力可変素子の駆動により、前記ノズルから飛び出す液滴の向きを可変できるようになされ、
前記液滴の向きの可変に対応する目標において前記液滴が到達し得る到達可能領域が隣接する前記ノズルで重なり合わないように、前記隣接するノズルが、前記並び方向と略直交する方向にオフセットして配置され、
前記目標との間の相対位置が、前記並び方向と略直交する方向に変位するように保持され、
該変位により前記到達可能領域が前記目標を走査する領域が、少なくとも前記隣接するノズルで一部は重なり合うように設定され、
前記液体吐出装置は、
前記変位により前記到達可能領域が重なり合う領域では、隣接するノズルからの前記液滴を混在させて前記目標に到達させる
液体吐出装置。 - 前記圧力可変素子が発熱素子である
請求項1に記載の液体吐出装置。
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