JP4335587B2 - 潤滑油組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、潤滑油組成物に関する。詳しくは酸化安定性、塩基価維持性、耐摩耗性、極圧特性及び腐食防止性に極めて優れる潤滑油組成物に関するものであり、特に内燃機関用潤滑油として好適に用いられる潤滑油組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、内燃機関や自動変速機などには、その作用を円滑にするために潤滑油が用いられている。特に内燃機関用潤滑油(エンジン油)は内燃機関の高性能化、高出力化、運転条件の苛酷化などに伴い、高度な性能が要求され、さらに近年の環境問題の観点から、潤滑油の更油間隔を延ばすロングドレイン性の向上が求められている。したがって、従来のエンジン油にはこうした要求性能を満たすため、摩耗防止剤、金属系清浄剤、無灰分散剤、酸化防止剤などの種々の添加剤を配合し、その性能向上を図っている。
【0003】
本発明者らは、従来から内燃機関用潤滑油に必須の添加剤として使用されてきた摩耗防止剤兼酸化防止剤であるジチオリン酸亜鉛を低減して、あるいは全く使用せずに特定のリン含有化合物を含有させた潤滑油組成物が、ジチオリン酸亜鉛を使用した場合と同等の摩耗防止性能を維持しながら極めて優れたロングドレイン性(酸化安定性、塩基価維持性、熱安定性等)を発揮できることを見出し、既に特許出願している(例えば、特許文献1、特願2002−246975号)。
【0004】
これらの特定のリン化合物を含有させた潤滑油組成物は、他の添加剤との最適配合によってJASO M328−95に代表される国産エンジンの動弁摩耗試験においてはジチオリン酸亜鉛を使用した場合と同等の耐摩耗性能を発揮できることが確認されているものの、さらに厳しい条件で運転される特殊なエンジンや、さらに極圧性や耐摩耗性能が要求される用途、あるいは、次期ILSAC GF−4規格において排ガス触媒適合性のためにリン含有量0.08質量%以下とする要求やさらなる低リン化(例えば、現在検討が進められているILSAC GF−5規格(案):リン含有量0.05質量%以下)の要求を満たすためには、これまで以上の極圧性能や耐摩耗性能が必要となってくる。しかしながら、硫黄含有極圧剤の多くは、塩基価維持性能を著しく悪化させるだけでなく、排ガス後処理装置への悪影響、すなわち、酸化触媒、三元触媒、NOx吸収還元触媒等の排ガス浄化触媒、DPF等あるいは前記排ガス浄化触媒とDPFとを組合せたシステム、特に酸化触媒とDPFあるいはNOx吸蔵還元触媒とDPFを組合せた排ガス処理システムなど、硫黄による触媒被毒の問題及び/又はDPFの目詰まりの問題は依然解消されていないため、低硫黄化、低リン化あるいはさらに低灰化を同時に実現し、優れたロングドレイン性能と極圧性や耐摩耗性能、そして排ガス後処理装置への影響低減とを両立することは極めて困難であった。
【0005】
【特許文献1】
特開2002−294271号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、以上のような事情に鑑み、ロングドレイン性能を極めて高い水準で維持しながら、極圧性能及び耐摩耗性能をさらに向上できる潤滑油組成物、特に内燃機関用に好適な潤滑油組成物を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、前述した、(A)一般式(1)で表されるリン含有酸性有機化合物の金属塩に、(B)一般式(2)で表されるリン含有カルボン酸又はその金属塩、(C)酸化防止剤及び(E)金属系清浄剤を配合し、さらに組成物中のリン含有量を特定値以下に低減した内燃機関用潤滑油組成物が、ロングドレイン性能、極圧性能及び耐摩耗性能をさらに改善できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
本発明は、潤滑油基油に、(A)下記一般式(1)で表される、イオウを含まないリン含有酸性有機化合物の金属塩から選ばれる少なくとも1種、(B)下記一般式(2)で表される、リン含有カルボン酸化合物及びその金属塩(但し、金属は、アルカリ土類金属、亜鉛、銅、アルミニウム、及びモリブデンから選ばれる少なくとも1種である)から選ばれる少なくとも1種、(C)酸化防止剤、及び(E)金属系清浄剤を含有し、かつ組成物全量基準で組成物中のリン含有量が0.07質量%以下であることを特徴とする内燃機関用潤滑油組成物にある。
【化5】
(一般式(1)において、a及びbは、各々独立して0又は1であり、R 1 、R 2 及びR 3 は、それぞれ個別に水素又は炭素数1〜30の炭化水素基であり、少なくとも1つが水素を示す。)
【化6】
(一般式(2)において、X 1 〜X 4 は、それぞれ個別に酸素又は硫黄であり、R 4 及びR 5 は、それぞれ個別に炭素数1〜30の炭化水素基を示し、R 6 〜R 9 は、それぞれ個別に水素又は炭素数1〜4の炭化水素基を示す。)
【0009】
また、本発明は、潤滑油基油に(A)上記一般式(1)で表される、イオウを含まないリン含有酸性有機化合物の金属塩から選ばれる少なくとも1種、(B)上記一般式(2)で表される、リン含有カルボン酸化合物及びその金属塩から選ばれる少なくとも1種、(C)酸化防止剤、及び(E)金属系清浄剤を含有し、組成物全量基準で、組成物の硫黄含有量が0.3質量%以下かつリン含有量が0.07質量%以下の潤滑油組成物により硫黄分50質量ppm以下の燃料を使用する内燃機関を潤滑することを特徴とする低硫黄、低リンエンジンシステムにある。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳述する。
本発明の潤滑油組成物における潤滑油基油は、特に制限はなく、通常の潤滑油に使用される鉱油系基油及び/又は合成系基油が使用できる。
鉱油系基油としては、具体的には、原油を常圧蒸留して得られる常圧残油を減圧蒸留して得られた潤滑油留分を、溶剤脱れき、溶剤抽出、水素化分解、溶剤脱ろう、水素化精製等の処理を1つ以上行って精製したもの、あるいはワックス異性化鉱油、フィッシャートロプシュプロセス等により製造されるGTL WAX(ガストゥリキッドワックス)を異性化する手法で製造される潤滑油基油等が例示できる。
【0011】
鉱油系基油の%CAは、特に制限はないが、好ましくは5以下であり、より好ましくは3以下、さらに好ましくは2以下である。また、%CAは0であっても良いが、添加剤の溶解性の点で0.4以上であることが好ましく、1以上であることがより好ましい。
なお、上記%CAとは、ASTM D 3238−85に規定される方法により求められる、芳香族炭素数の全炭素数に対する百分率を示す。
また、鉱油系基油中の硫黄分は、特に制限はないが、0.05質量%以下であることが好ましく、0.01質量%以下であることがさらに好ましく、0.001質量%以下であることが特に好ましい。鉱油系基油の硫黄分を低減することで、よりロングドレイン性に優れる低硫黄の潤滑油組成物を得ることができる。
【0012】
合成系基油としては、具体的には、ポリブテン又はその水素化物;1−オクテンオリゴマー、1−デセンオリゴマー等のポリα−オレフィン又はその水素化物;ジトリデシルグルタレート、ジ−2−エチルヘキシルアジペート、ジイソデシルアジペート、ジトリデシルアジペート、及びジ−2−エチルヘキシルセバケート等のジエステル;トリメチロールプロパンカプリレート、トリメチロールプロパンペラルゴネート、ペンタエリスリトール−2−エチルヘキサノエート、及びペンタエリスリトールペラルゴネート等のポリオールエステル;マレイン酸ジブチル等のジカルボン酸類と炭素数2〜30のα−オレフィンとの共重合体、アルキルナフタレン、アルキルベンゼン、及び芳香族エステル等の芳香族系合成油又はこれらの混合物等が例示できる。
【0013】
本発明では、潤滑油基油として、鉱油系基油、合成系基油又はこれらの中から選ばれる2種以上の潤滑油の任意混合物等が使用できる。例えば、1種以上の鉱油系基油、1種以上の合成系基油、1種以上の鉱油系基油と1種以上の合成系基油との混合油等を挙げることができる。
【0014】
潤滑油基油の動粘度は特に制限はないが、その100℃での動粘度は、20mm2/s以下であることが好ましく、より好ましくは10mm2/s以下である。一方、その動粘度は、1mm2/s以上であることが好ましく、より好ましくは2mm2/s以上である。潤滑油基油の100℃での動粘度が20mm2/sを越える場合は、低温粘度特性が悪化し、一方、その動粘度が1mm2/s未満の場合は、潤滑箇所での油膜形成が不十分であるため潤滑性に劣り、また潤滑油基油の蒸発損失が大きくなるため、それぞれ好ましくない。
【0015】
潤滑油基油の蒸発損失量としては、NOACK蒸発量で、20質量%以下であることが好ましく、16質量%以下であることがさらに好ましく、10質量%以下であることが特に好ましい。潤滑油基油のNOACK蒸発量が20質量%を超える場合、潤滑油の蒸発損失が大きいだけでなく、組成物中の硫黄化合物やリン化合物、あるいは金属分が潤滑油基油とともに排ガス浄化装置へ堆積する恐れがあり、オイル消費量が増加するだけでなく、排ガス浄化性能への悪影響が懸念されるため好ましくない。なお、ここでいうNOACK蒸発量とは、ASTM D5800に準拠して測定される潤滑油の蒸発量を測定したものである。
【0016】
潤滑油基油の粘度指数は特に制限はないが、低温から高温まで優れた粘度特性が得られるようにその値は80以上であることが好ましく、更に好ましくは100以上であり、最も好ましくは120以上である。粘度指数の上限については特に制限はなく、ノルマルパラフィン、スラックワックスやGTLワックス等、あるいはこれらを異性化したイソパラフィン系鉱油のような135〜180程度のものやコンプレックスエステル系基油やHVI−PAO系基油のような150〜250程度のものも使用することができる。潤滑油基油の粘度指数が80未満である場合、低温粘度特性が悪化するため、好ましくない。
【0017】
本発明における(A)成分は、イオウを含まないリン含有酸性有機化合物の金属塩から選ばれる少なくとも1種であり、具体的には下記一般式(1)で表されるリン含有酸性有機化合物に金属酸化物、金属水酸化物、金属炭酸塩、金属塩化物等の金属塩基を作用させて、残存する酸性水素の一部又は全部を中和した塩を挙げることができる。
【0018】
【化7】
【0019】
上記一般式(1)において、a及びbは、各々独立して0又は1であり、R1、R2、及びR3は、それぞれ個別に水素又は炭素数1〜30の炭化水素基であり、少なくとも1つが水素を示す。
上記炭素数1〜30の炭化水素基としては、具体的には、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキル置換シクロアルキル基、アリール基、アルキル置換アリール基、及びアリールアルキル基を挙げることができる。
【0020】
上記アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基等のアルキル基(これらアルキル基は直鎖状でも分枝状でもよい)を挙げることができる。
上記シクロアルキル基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等の炭素数5〜7のシクロアルキル基を挙げることができる。また上記アルキルシクロアルキル基としては、例えば、メチルシクロペンチル基、ジメチルシクロペンチル基、メチルエチルシクロペンチル基、ジエチルシクロペンチル基、メチルシクロヘキシル基、ジメチルシクロヘキシル基、メチルエチルシクロヘキシル基、ジエチルシクロヘキシル基、メチルシクロヘプチル基、ジメチルシクロヘプチル基、メチルエチルシクロヘプチル基、ジエチルシクロヘプチル基等の炭素数6〜11のアルキルシクロアルキル基(アルキル基のシクロアルキル基への置換位置も任意である)を挙げることができる。
【0021】
上記アルケニル基としては、例えば、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基、オクタデセニル基等のアルケニル基(これらアルケニル基は直鎖状でも分枝状でもよく、また二重結合の位置も任意である)を挙げることができる。
【0022】
上記アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基等のアリール基を挙げることができる。また上記アルキルアリール基としては、例えば、トリル基、キシリル基、エチルフェニル基、プロピルフェニル基、ブチルフェニル基、ペンチルフェニル基、ヘキシルフェニル基、ヘプチルフェニル基、オクチルフェニル基、ノニルフェニル基、デシルフェニル基、ウンデシルフェニル基、ドデシルフェニル基等の炭素数7〜18のアルキルアリール基(アルキル基は直鎖状でも分枝状でもよく、またアリール基への置換位置も任意である)を挙げることができる。
上記アリールアルキル基としては、例えばベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、フェニルブチル基、フェニルペンチル基、フェニルヘキシル基等の炭素数7〜12のアリールアルキル基(これらアルキル基は直鎖状でも分枝状でもよい)を挙げることができる。
【0023】
上記炭素数1〜30の炭化水素基は、極圧性や摩耗防止性により優れる点で、好ましくは炭素数3〜18のアルキル基又アルケニル基であり、より好ましくは炭素数4〜12のアルキル基又はアルケニル基、さらに好ましくは炭素数3〜8のアルキル基、特に好ましくは4〜6のアルキル基である。
【0024】
上記一般式(1)で表されるリン含有酸性有機化合物としては、例えば、上記炭素数1〜30の炭化水素基を有する、リン酸モノエステル、リン酸ジエステル(a及びbが1の場合)、アルキル又はアルケニルホスホン酸、アルキル又はアルケニルホスホン酸モノエステル(a又はbのどちらかが1、残りが0である場合)、ジアルキルホスホン酸(a及びbの両方が0である場合)、あるいは、一般式(1)の化合物における炭素数1〜30の炭化水素基が付加した酸素原子とリン原子の間に−(OR4)n−(ここで、R4は炭素数1〜4のアルキレン基、nは1〜10の整数を表す。)が挿入されている化合物等が挙げられる。
【0025】
上記一般式(1)で表されるリン含有酸性有機化合物の好ましい具体例としては、リン酸モノ又はジn−ブチルエステル、リン酸モノ又はジイソブチルエステル、リン酸モノ又はジn−ペンチルエステル、リン酸モノ又はジn−ヘキシルエステル、リン酸モノ又はジ1,3−ジメチルブチルエステル、リン酸モノ又はジ4−メチル−2−ペンチルエステル、リン酸モノ又はジn−ヘプチルエステル、リン酸モノ又はジn−オクチルエステル、リン酸モノ又はジ2−エチルヘキシルエステル、リン酸モノ又はジイソデシルエステル、リン酸モノ又はジn−ドデシルエステル、リン酸モノ又はジイソトリデシルエステル、リン酸モノ又はジオレイルエステル、リン酸モノ又はジステアリルエステル、リン酸モノ又はジn−オクタデシルエステル;モノ又はジn−ブチルホスホン酸、モノ又はジイソブチルホスホン酸、モノ又はジn−ペンチルホスホン酸、モノ又はジn−ヘキシルホスホン酸、モノ又はジ1,3−ジメチルブチルホスホン酸、モノ又はジ4−メチル−2−ペンチルホスホン酸、モノ又はジn−ヘプチルホスホン酸、モノ又はジn−オクチルホスホン酸、モノ又はジ2−エチルヘキシルホスホン酸、モノ又はジイソデシルホスホン酸、モノ又はジn−ドデシルホスホン酸、モノ又はジイソトリデシルホスホン酸、モノ又はジオレイルホスホン酸、モノ又はジステアリルホスホン酸、モノ又はジn−オクタデシルホスホン酸;n−ブチルホスホン酸モノn−ブチルエステル、イソブチルホスホン酸モノイソブチルエステル、n−ペンチルホスホン酸モノn−ペンチルエステル、n−ヘキシルホスホン酸モノn−ヘキシルエステル、1,3−ジメチルブチルホスホン酸モノ1,3−ジメチルブチルエステル、4−メチル−2−ペンチルホスホン酸モノ4−メチル−2−ペンチルエステル、n−ヘプチルホスホン酸モノn−ヘプチルエステル、n−オクチルホスホン酸モノn−オクチルエステル、2−エチルヘキシルホスホン酸モノ2−エチルヘキシルエステル、イソデシルホスホン酸モノイソデシルエステル、n−ドデシルホスホン酸モノn−ドデシルエステル、イソトリデシルホスホン酸モノイソトリデシルエステル、オレイルホスホン酸モノオレイルエステル、ステアリルホスホン酸モノステアリルエステル、オクタデシルホスホン酸モノオクタデシルエステル等が挙げられ、これらリン含有酸性有機化合物は、その分子中の炭素数1〜30の炭化水素基を任意に選ぶことができ、例えば、リン酸ブチルエステル2−エチルヘキシルエステル、リン酸ブチルエステルオレイルエステル、ブチルホスホン酸モノオクチルエステル、ブチルホスホン酸モノオレイルエステル、2−エチルヘキシルホスホン酸モノブチルエステル、2−エチルヘキシルホスホン酸モノオレイルエステル、オレイルホスホン酸モノメチルエステル、オレイルホスホン酸モノブチルエステル、オレイルホスホン酸モノオクチルエステル、オレイルホスホン酸モノドデシルエステル、オクタデシルホスホン酸モノメチルエステル、オクタデシルホスホン酸モノエチルエステル等のように分子中の炭化水素基が同一のものであっても異なっていても良い。
【0026】
上記金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム等のアルカリ金属、カルシウム、マグネシウム、バリウム等のアルカリ土類金属、アルミニウム、亜鉛、銅、鉄、鉛、ニッケル、銀、マンガン、モリブデン等の重金属、これらの混合物等が挙げられる。これらの中ではアルカリ金属、アルカリ土類金属、亜鉛、銅、アルミニウム、モリブデンが好ましく、亜鉛であることが特に好ましい。
【0027】
なお、上記リン含有酸性有機化合物の金属塩は、金属の価数やリン化合物のOH基の数に応じその構造が異なり、従ってその構造については何ら限定されないが、例えば、酸化亜鉛1molとリン酸ジエステル(OH基が1つ)2molを反応させた場合、下記式で表わされる構造の化合物が主成分として得られると考えられるが、ポリマー化した分子も存在していると考えられる。
【0028】
【化8】
【0029】
また、例えば、酸化亜鉛1molとリン酸モノエステル(OH基が2つ)1molとを反応させた場合、下記式で表わされる構造の化合物が主成分として得られると考えられるが、ポリマー化した分子も存在していると考えられる。
【0030】
【化9】
【0031】
なお、ホスホン酸金属塩等の場合も上記と同様であり、例えば、下記式で表される構造の化合物等が挙げられる。
【化10】
【化11】
【0032】
また、本発明の(A)成分の中には、潤滑油にほとんど溶解しないか、あるいは溶解性が低い化合物があるので、(A)成分の溶解性や潤滑油組成物の製造時間の短縮の点から、潤滑油基油に配合するのに先立ち、油溶化された潤滑油添加剤として供するのが好ましい。(A)成分の油溶化方法としては、アミン化合物、例えばコハク酸イミド及び/又はその誘導体等の無灰分散剤や脂肪族アミン、芳香族アミン、ポリアミン等あるいはこれらの混合物と(A)成分とを、ヘキサン、トルエン、デカリン等の有機溶媒中で15〜150℃、好ましくは30〜120℃、特に好ましくは40〜90℃で10分〜5時間、好ましくは20分〜3時間、特に好ましくは30分〜1時間混合して溶解又は反応させ、減圧蒸留等で溶媒を留去する方法、若しくはこれに類似する方法、あるいはその他の公知の方法等が挙げられ、特に制限はない。
【0033】
本発明の潤滑油組成物における(A)成分の含有量は特に制限されるものではないが、その下限値は、組成物全量基準で、リン元素換算量で、通常0.001質量%であり、好ましくは0.01質量%、より好ましくは0.02質量%であり、また、その上限値は、組成物全量基準で、リン元素換算量で、通常0.2質量%であり、好ましくは0.1質量%、より好ましくは0.08質量%、特に好ましくは0.05質量%である。(A)成分の含有量を上記下限値以上とすることで、優れた極圧性、摩耗防止性を得ることができ、上記上限値以下とすることで潤滑油の低リン化が実現でき、特に内燃機関用の潤滑油組成物として適用する場合には、0.08質量%以下、あるいは0.05質量%以下とすることで、排ガス浄化装置等への影響の極めて少ない低リン型の潤滑油組成物を得ることができる。
【0034】
本発明における(B)成分は、リン含有カルボン酸化合物及びその金属塩から選ばれる少なくとも1種であり、リン含有カルボン酸化合物としては、具体的には下記一般式(2)で表される化合物が挙げられる。
【0035】
【化12】
【0036】
上記一般式(2)において、X1〜X4は、それぞれ個別に酸素又は硫黄であり、R4及びR5は、それぞれ個別に炭素数1〜30の炭化水素基を示し、R6〜R9は、それぞれ個別に水素又は炭素数1〜4の炭化水素基を示す。
上記一般式(2)で表される化合物において、X1〜X4はその2つが硫黄、他の2つが酸素であることが好ましく、特にX1及びX2が酸素、X3及びX4が硫黄であることが好ましい。
【0037】
また、上記炭素数1〜30の炭化水素基としては、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキル置換シクロアルキル基、アリール基、アルキル置換アリール基、及びアリールアルキル基を挙げることができ、具体的には、上記(A)成分のR1〜R3における炭素数1〜30の炭化水素基と同様のものが挙げられる。
R6〜R9としては、少なくとも2つが水素であることが好ましく、全てが水素であることが特に好ましい。
【0038】
上記リン含有カルボン酸化合物の金属塩としては、リン含有カルボン酸化合物に金属酸化物、金属水酸化物、金属炭酸塩、金属塩化物等の金属塩基を作用させて、残存する酸性水素の一部又は全部を中和した塩を挙げることができる。
上記金属としては、(A)成分において用いた金属と同様の金属を用いることができる。
なお、本発明における(B)成分としては、上記リン含有カルボン酸化合物の金属塩が、塩基価維持性により優れるため、より好ましい。
【0039】
本発明の潤滑油組成物における(B)成分の含有量は特に制限されるものではないが、その下限値は、組成物全量基準で、硫黄元素換算量で、通常0.001質量%、好ましくは0.005質量%、より好ましくは0.01質量%であり、その上限値は、塩基価維持性を悪化させない点で、組成物全量基準で、硫黄元素換算量で、好ましくは0.05質量%、より好ましくは0.03質量%とすることが望ましい。
【0040】
また、本発明の潤滑油組成物において、(A)成分と(B)成分の含有量の合計量は特に制限されるものではないが、組成物全量基準で、リン元素換算量で、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.02質量%以上、好ましくは0.2質量%以下、より好ましくは0.1質量%以下、さらに好ましくは0.08質量%以下、さらに好ましくは0.06質量%以下、特に好ましくは0.05質量%以下である。
また、(A)成分と(B)成分の含有量の質量比((A)成分のリン元素換算量/(B)成分の硫黄元素換算量)は特に制限されるものではないが、極圧性、摩耗防止性及び塩基価維持性を両立することができる点で、好ましくは0.5〜20、より好ましくは0.5〜10、特に好ましくは1〜4である。
【0041】
本発明における(C)成分は、酸化防止剤から選ばれる少なくとも1種である。酸化防止剤としては、具体的には、フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤等の連鎖停止型の酸化防止剤、ジチオリン酸亜鉛系、ジチオカルバミン酸亜鉛系、ジチオリン酸モリブデン系、ジチオカルバミン酸モリブデン系等の過酸化物分解型の酸化防止剤、リン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、銅系酸化防止剤等、潤滑油用の酸化防止剤として使用される公知の酸化防止剤が挙げられる。
フェノール系酸化防止剤としては、例えば、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ビス(2−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−イソプロピリデンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−ノニルフェノール)、2,2’−イソブチリデンビス(4,6−ジメチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−シクロヘキシルフェノール)、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェノール、2,4−ジメチル−6−tert−ブチルフェノール、2,6−ジ−tert−α−ジメチルアミノ−p−クレゾール、2,6−ジ−tert−ブチル−4(N,N’−ジメチルアミノメチルフェノール)、4,4’−チオビス(2−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−チオビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルベンジル)スルフィド、ビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)スルフィド、2,2’−チオ−ジエチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、トリデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクチル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、オクチル−3−(3−メチル−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート等を好ましい例として挙げることができる。これらは二種以上を混合して使用してもよい。
【0042】
アミン系酸化防止剤としては、例えば、フェニル−α−ナフチルアミン、アルキルフェニル−α−ナフチルアミン、ジアルキルジフェニルアミン及びフェノチアジン等を挙げることができる。これらは二種以上を混合して使用してもよい。
【0043】
本発明においては、上記のうち、フェノール系酸化防止剤及び/又はアミン系酸化防止剤からなる連鎖停止型の酸化防止剤を必須として配合するのが良い。
【0044】
本発明の潤滑油組成物において(C)成分の含有量は、通常潤滑油組成物全量基準で5.0質量%以下であることが好ましく、より好ましくは3.0質量%以下であり、さらに好ましくは2.5質量%以下である。その含有量が5.0質量%を超える場合は、配合量に見合った十分な塩基価維持性が得られないため好ましくない。一方、その含有量は、塩基価維持性をより高めるためには潤滑油組成物全量基準で好ましくは0.1質量%以上であり、より好ましくは1質量%以上である。
【0045】
本発明の潤滑油組成物には、(D)無灰分散剤及び(E)金属系清浄剤からなる群より選ばれる少なくとも1種を含有することが好ましい。
(D)無灰分散剤としては、潤滑油に用いられる任意の無灰分散剤を用いることができるが、例えば、炭素数40〜400の直鎖若しくは分枝状のアルキル基又はアルケニル基を分子中に少なくとも1個有する含窒素化合物又はその誘導体、あるいはアルケニルコハク酸イミドの変性品等が挙げられる。これらの中から任意に選ばれる1種類あるいは2種類以上を配合することができる。
このアルキル基又はアルケニル基の炭素数は40〜400、好ましくは60〜350である。アルキル基又はアルケニル基の炭素数が40未満の場合は化合物の潤滑油基油に対する溶解性が低下し、一方、アルキル基又はアルケニル基の炭素数が400を越える場合は、潤滑油組成物の低温流動性が悪化するため、それぞれ好ましくない。このアルキル基又はアルケニル基は、直鎖状でも分枝状でもよいが、好ましいものとしては、具体的には、プロピレン、1−ブテン、イソブチレン等のオレフィンのオリゴマーやエチレンとプロピレンのコオリゴマーから誘導される分枝状アルキル基や分枝状アルケニル基等が挙げられる。
【0046】
(D)成分の具体的としては、例えば、下記の化合物が挙げられる。これらの中から選ばれる1種又は2種以上の化合物を用いることができる。
(D−1)炭素数40〜400のアルキル基又はアルケニル基を分子中に少なくとも1個有するコハク酸イミド、あるいはその誘導体
(D−2)炭素数40〜400のアルキル基又はアルケニル基を分子中に少なくとも1個有するベンジルアミン、あるいはその誘導体
(D−3)炭素数40〜400のアルキル基又はアルケニル基を分子中に少なくとも1個有するポリアミン、あるいはその誘導体
【0047】
上記(D−1)コハク酸イミドとしては、より具体的には、下記の一般式(3)及び一般式(4)で示される化合物等が例示できる。
【0048】
【化13】
【0049】
一般式(3)において、R20は炭素数40〜400、好ましくは60〜350のアルキル基又はアルケニル基を示し、hは1〜5、好ましくは2〜4の整数を示す。
【0050】
【化14】
【0051】
一般式(4)において、R21及びR22は、それぞれ個別に炭素数40〜400、好ましくは60〜350のアルキル基又はアルケニル基を示し、ポリブテニル基であることが好ましい。iは0〜4、好ましくは1〜3の整数を示す。
【0052】
なお、コハク酸イミドには、ポリアミンの一端に無水コハク酸が付加した式(3)で表される、いわゆるモノタイプのコハク酸イミドと、ポリアミンの両端に無水コハク酸が付加した式(4)で表される、いわゆるビスタイプのコハク酸イミドとが含まれるが、本発明の組成物には、それらのいずれでも、あるいはこれらの混合物が含まれていても良い。
これらのコハク酸イミドの製法は特に制限はないが、例えば炭素数40〜400のアルキル基又はアルケニル基を有する化合物を無水マレイン酸と100〜200℃で反応させて得たアルキル又はアルケニルコハク酸をポリアミンと反応させることにより得ることができる。ポリアミンとしては、具体的には、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、及びペンタエチレンヘキサミン等が例示できる。
【0053】
上記(D−2)ベンジルアミンとしては、より具体的には、下記の一般式(5)で表される化合物等が例示できる。
【0054】
【化15】
【0055】
一般式(5)において、R23は、炭素数40〜400、好ましくは60〜350のアルキル基又はアルケニル基を示し、jは1〜5、好ましくは2〜4の整数を示す。
このベンジルアミンの製造方法は何ら限定されるものではないが、例えば、プロピレンオリゴマー、ポリブテン、及びエチレン−α−オレフィン共重合体等のポリオレフィンをフェノールと反応させてアルキルフェノールとした後、これにホルムアルデヒドとジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、及びペンタエチレンヘキサミン等のポリアミンをマンニッヒ反応により反応させることにより得ることができる。
【0056】
上記(D−3)ポリアミンとしては、より具体的には、下記の一般式(6)で表される化合物等が例示できる。
R24‐NH−(CH2CH2NH)k‐H (6)
【0057】
一般式(6)において、R24は、炭素数40〜400、好ましくは60〜350のアルキル基又はアルケニル基を示し、kは1〜5、好ましくは2〜4の整数を示す。
このポリアミンの製造法は何ら限定されるものではないが、例えば、プロピレンオリゴマー、ポリブテン、及びエチレン−α−オレフィン共重合体等のポリオレフィンを塩素化した後、これにアンモニアやエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、及びペンタエチレンヘキサミン等のポリアミンを反応させることにより得ることができる。
【0058】
また、(D)成分の1例として挙げた含窒素化合物の誘導体としては、具体的には例えば、前述の含窒素化合物に炭素数1〜30のモノカルボン酸(脂肪酸等)やシュウ酸、フタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等の炭素数2〜30のポリカルボン酸若しくはこれらの無水物、又はエステル化合物;炭素数2〜6のアルキレンオキサイド;ヒドロキシ(ポリ)オキシアルキレンカーボネート等を作用させて、残存するアミノ基及び/又はイミノ基の一部又は全部を中和したり、アミド化した、いわゆる含酸素有機化合物による変性化合物;前述の含窒素化合物にホウ酸を作用させて、残存するアミノ基及び/又はイミノ基の一部又は全部を中和したり、アミド化した、いわゆるホウ素変性化合物;前述の含窒素化合物にリン酸を作用させて、残存するアミノ基及び/又はイミノ基の一部又は全部を中和したり、アミド化した、いわゆるリン酸変性化合物;前述の含窒素化合物に硫黄化合物を作用させた硫黄変性化合物;及び前述の含窒素化合物に含酸素有機化合物による変性、ホウ素変性、リン酸変性、硫黄変性から選ばれた2種以上の変性を組み合わせた変性化合物;等が挙げられる。これらの誘導体の中でもアルケニルコハク酸イミドのホウ酸変成化合物は耐熱性、酸化防止性に優れ、本発明の潤滑油組成物においても塩基価維持性をより高めるために有効である。
【0059】
本発明の潤滑油組成物において(D)成分を含有させる場合、その含有量は、通常潤滑油組成物全量基準で、0.01〜20質量%であり、好ましくは0.1〜10質量%である。(D)成分の含有量が0.01質量%未満の場合は、高温清浄性に対する効果が少なく、一方、20質量%を越える場合は、潤滑油組成物の低温流動性が大幅に悪化するため、それぞれ好ましくない。
【0060】
(E)金属系清浄剤としては、潤滑油に使用される公知の金属系清浄剤を使用することができ、例えば、アルカリ金属スルホネート又はアルカリ土類金属スルホネート、アルカリ金属フェネート又はアルカリ土類金属フェネート、アルカリ金属サリシレート又はアルカリ土類金属サリシレートあるいはこれらの混合物等が挙げられる。
【0061】
アルカリ金属又はアルカリ土類金属スルホネートとしては、より具体的には、分子量100〜1500、好ましくは200〜700のアルキル芳香族化合物をスルホン化することによって得られるアルキル芳香族スルホン酸のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩、特にマグネシウム塩及び/又はカルシウム塩が好ましく用いられ、アルキル芳香族スルホン酸としては、具体的にはいわゆる石油スルホン酸や合成スルホン酸等が挙げられる。
【0062】
石油スルホン酸としては、一般に鉱油の潤滑油留分のアルキル芳香族化合物をスルホン化したものやホワイトオイル製造時に副生する、いわゆるマホガニー酸等が用いられる。また合成スルホン酸としては、例えば洗剤の原料となるアルキルベンゼン製造プラントから副生したり、ポリオレフィンをベンゼンにアルキル化することにより得られる、直鎖状や分枝状のアルキル基を有するアルキルベンゼンを原料とし、これをスルホン化したもの、あるいはジノニルナフタレンをスルホン化したもの等が用いられる。またこれらアルキル芳香族化合物をスルホン化する際のスルホン化剤としては特に制限はないが、通常、発煙硫酸や硫酸が用いられる。
【0063】
アルカリ金属又はアルカリ土類金属フェネートとしては、より具体的には、炭素数4〜30、好ましくは6〜18の直鎖状又は分枝状のアルキル基を少なくとも1個有するアルキルフェノール、このアルキルフェノールと元素硫黄を反応させて得られるアルキルフェノールサルファイド又はこのアルキルフェノールとホルムアルデヒドを反応させて得られるアルキルフェノールのマンニッヒ反応生成物のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩、特にマグネシウム塩及び/又はカルシウム塩等が好ましく用いられる。
【0064】
アルカリ金属又はアルカリ土類金属サリシレートとしては、より具体的には、炭素数1〜30、好ましくは10〜26の直鎖状又は分枝状のアルキル基を少なくとも1個有するアルキルサリチル酸(例えば、フェノールやクレゾール等をカルボキシル化、炭素数10〜26のオレフィンをアルキレーションさせたもの等)のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩、例えば、特にマグネシウム塩及び/又はカルシウム塩等、特にカルシウム塩が好ましく用いられる。
【0065】
アルカリ金属又はアルカリ土類金属スルホネート、アルカリ金属又はアルカリ土類金属フェネート、及びアルカリ金属又はアルカリ土類金属サリシレートには、アルキル芳香族スルホン酸、アルキルフェノール、アルキルフェノールサルファイド、アルキルフェノールのマンニッヒ反応生成物、アルキルサリチル酸等を、直接、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の酸化物や水酸化物等の金属塩基と反応させたり、又は一度ナトリウム塩やカリウム塩等のアルカリ金属塩としてからアルカリ土類金属塩と置換させること等により得られる中性塩(正塩)だけでなく、さらにこれら中性塩(正塩)と過剰のアルカリ金属又はアルカリ土類金属塩やアルカリ金属又はアルカリ土類金属塩基(アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物や酸化物)を水の存在下で加熱することにより得られる塩基性塩や、炭酸ガス及び/又はホウ酸若しくはホウ酸塩の存在下で中性塩(正塩)をアルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物等の塩基と反応させることにより得られる過塩基性塩(超塩基性塩)も含まれる。
なお、これらの反応は、通常、溶媒(ヘキサン等の脂肪族炭化水素溶剤、キシレン等の芳香族炭化水素溶剤、軽質潤滑油基油等)中で行われる。また、金属系清浄剤は通常、軽質潤滑油基油等で希釈された状態で市販されており、また、入手可能であるが、一般的に、その金属含有量が1.0〜20質量%、好ましくは2.0〜16質量%のものを用いるのが望ましい。
【0066】
本発明において、(E)成分の全塩基価は0〜500mgKOH/gであることが好ましく、より好ましくは20〜450mgKOH/gである。また(E)成分としては、アルカリ金属又はアルカリ土類金属のスルホネート、フェネート、サリシレート等を1種又は2種以上併用することができ、ロングドレイン性に極めて優れる点で、特にサリシレートを必須として使用することが好ましい。なお、ここでいう全塩基価とは、JIS K2501「石油製品及び潤滑油−中和価試験法」の7.に準拠して測定される過塩素酸法による全塩基価を意味する。
【0067】
また、本発明の(E)成分としては、その金属比に特に制限はなく、通常20以下、好ましくは1〜15のものを使用することができる。本発明においては、金属比が3以下の金属系清浄剤を必須として配合することが塩基価維持性の点で好ましく、金属比が3を超える金属系清浄剤、好ましくは金属比が5を超える金属系清浄剤を使用することが、摩耗防止性を高めることができる点で好ましい。従って、これら金属系清浄剤の種類及び金属比を適宜選択し、単独で、あるいは併用して使用することで所望の塩基価維持性、摩耗防止性を得ることが可能でなる。なお、ここでいう金属比とは、金属系清浄剤における金属元素の価数×金属元素含有量(mol%)/せっけん基含有量(mol%)で表され、金属元素とは、カルシウム、マグネシウム等、せっけん基とはスルホン酸基、サリチル酸基等を意味する。
【0068】
本発明において、(E)成分の配合量は特に制限はないが、通常、上限値は、組成物全量基準で、金属元素換算量で好ましくは1質量%であり、より好ましくは0.5質量%、さらに好ましくは0.2質量%であり、組成物の硫酸灰分量の要求により適宜選択することができる。また、その下限値は、通常0.01質量%、好ましくは0.02質量%、特に好ましくは0.05質量%である。(B)成分の配合量が0.01質量%以上とすることで、高温清浄性や酸化安定性、塩基価維持性などのロングドレイン性能をより高めることができる。
【0069】
本発明の潤滑油組成物には、その性能をさらに向上させるために、その目的に応じて潤滑油に一般的に使用されている任意の添加剤を添加することができる。このような添加剤としては、例えば、(A)成分以外の摩耗防止剤、摩擦調整剤、粘度指数向上剤、腐食防止剤、防錆剤、抗乳化剤、金属不活性化剤、消泡剤、着色剤等の添加剤を挙げることができる。
【0070】
(A)成分以外の摩耗防止剤としては、例えば、(亜)リン酸エステル類、チオ(亜)リン酸エステル類、これらのアミン塩、チオリン酸エステルの金属塩(ジチオリン酸亜鉛等)、ジスルフィド類、硫化オレフィン類、硫化油脂類、ジチオカルバミン酸亜鉛等の硫黄含有化合物等が挙げられるが、本発明の潤滑油組成物においてはこれら硫黄含有化合物の含有量は制限されるべきであり、特にジチオリン酸亜鉛を含有しないことが好ましい。
【0071】
摩擦調整剤としては、例えば、ジチオカルバミン酸モリブデン、ジチオリン酸モリブデン、モリブデン−アミン錯体、モリブデン−コハク酸イミド錯体、二硫化モリブデン、炭素数6〜30のアルキル基又はアルケニル基を有する脂肪酸、脂肪族アルコール、脂肪酸エステル、脂肪族エーテル、脂肪酸アミド、脂肪族アミン等及びこれらの混合物が挙げられる。これらの添加剤は組成物の低摩擦性能を付加できる点で有用である。
【0072】
粘度指数向上剤としては、具体的には、各種メタクリル酸エステルから選ばれる1種又は2種以上のモノマーの重合体若しくは共重合体又はその水添物などのいわゆる非分散型粘度指数向上剤、又はさらに窒素化合物を含む各種メタクリル酸エステルを共重合させたいわゆる分散型粘度指数向上剤、非分散型又は分散型エチレン−α−オレフィン共重合体(α−オレフィンとしてはプロピレン、1−ブテン、1−ペンテン等が例示できる。)若しくはその水素化物、ポリイソブチレン若しくはその水添物、スチレン−ジエン共重合体の水素化物、スチレン−無水マレイン酸エステル共重合体、ポリアルキルスチレン等が挙げられる。
【0073】
これら粘度指数向上剤の分子量は、せん断安定性を考慮して選定することが必要である。具体的には、粘度指数向上剤の数平均分子量は、例えば分散型及び非分散型ポリメタクリレートの場合では、通常5,000〜1,000,000、好ましくは100,000〜900,000のものが、ポリイソブチレン又はその水素化物の場合は通常800〜5,000、好ましくは1,000〜4,000のものが、エチレン−α−オレフィン共重合体又はその水素化物の場合は通常800〜500,000、好ましくは3,000〜200,000のものが用いられる。
【0074】
腐食防止剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系、トリルトリアゾール系、チアジアゾール系、及びイミダゾール系化合物等が挙げられる。
【0075】
防錆剤としては、例えば、石油スルホネート、アルキルベンゼンスルホネート、ジノニルナフタレンスルホネート、アルケニルコハク酸エステル、及び多価アルコールエステル等が挙げられる。
【0076】
抗乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、及びポリオキシエチレンアルキルナフチルエーテル等のポリアルキレングリコール系非イオン系界面活性剤等が挙げられる。
【0077】
金属不活性化剤としては、例えば、イミダゾリン、ピリミジン誘導体、アルキルチアジアゾール、メルカプトベンゾチアゾール、ベンゾトリアゾール又はその誘導体、1,3,4−チアジアゾールポリスルフィド、1,3,4−チアジアゾリル−2,5−ビスジアルキルジチオカーバメート、2−(アルキルジチオ)ベンゾイミダゾール、及びβ−(o−カルボキシベンジルチオ)プロピオンニトリル等が挙げられる。
【0078】
消泡剤としては、例えば、シリコーン、フルオロシリコール、及びフルオロアルキルエーテル等が挙げられる。
【0079】
これらの添加剤を本発明の潤滑油組成物に含有させる場合には、その含有量は潤滑油組成物全量基準で、粘度指数向上剤では、0.1〜20質量%、(A)成分以外の摩耗防止剤、摩擦調整剤、腐食防止剤、防錆剤、抗乳化剤ではそれぞれ0.005〜5質量%、金属不活性化剤では0.005〜1質量%、消泡剤では0.0005〜1質量%の範囲で通常選ばれる。なお、本発明においては、上記のうち、(B)成分以外の硫黄含有化合物の含有量も制限されるべきであり、組成物全量基準で、硫黄換算量で0.2質量%以下、より好ましくは0.1質量%以下、特に好ましくは0.05質量%以下まで低減して、あるいは全く使用しないことで、塩基価維持性能をより高めた低硫黄の潤滑油組成物を得ることができる。
【0080】
本発明の潤滑油組成物は、上記のように(A)成分、(B)成分及び(C)成分を併用することで、相乗的に極圧性、摩耗防止性を向上させることができ、かつ(B)成分を使用せず、(A)成分と(C)成分を併用した場合と同等以上の塩基価維持性能を発揮することができるものである。従って、ILSAC GF−4ガソリンエンジン油規格に規定される、リン含有量が0.08質量%以下の低リン型潤滑油組成物、あるいはさらにこれを0.05質量%以下まで低減し、硫黄含有量が0.3質量%以下、好ましくは0.2質量%以下、より好ましくは0.1質量%以下、さらに好ましくは0.05質量%以下、特に好ましくは0.01質量%以下まで低減した低リン低硫黄型潤滑油組成物としても極めて有用である。
【0081】
本発明の潤滑油組成物は、ロングドレイン性(酸化安定性、塩基価維持性等)、摩耗防止効果に優れるだけでなく、摩擦低減効果及び高温清浄性にも優れ、二輪車、四輪車、発電用、舶用等のガソリンエンジン、ディーゼルエンジン、ガスエンジン等の内燃機関用潤滑油として好ましく使用することができ、低硫黄、低リンの潤滑油のため、特に酸化触媒、三元触媒、NOx吸蔵還元触媒から選ばれる排ガス浄化触媒及び/又はDPF等の排ガス後処理装置、特に酸化触媒とDPFあるいはNOx吸蔵還元触媒とDPFを組合せた排ガス後処理装置を装着した内燃機関に好適である。また、低硫黄燃料、例えば、硫黄分が50質量ppm以下、さらに好ましくは30質量ppm以下、特に好ましくは10質量ppm以下のガソリンや軽油や灯油、あるいは硫黄分が1質量ppm以下の燃料(LPG、天然ガス、硫黄分を実質的に含有しない水素、ジメチルエーテル、アルコール、GTL(ガストゥリキッド)燃料等)を用いる内燃機関用潤滑油、特にガソリンエンジン用あるいはガスエンジン用潤滑油として特に好ましく使用することができる。
【0082】
また、本発明の上記のような極圧性能、摩耗防止性能、塩基価維持性能、そして酸化安定性能等のいずれかが要求されるような潤滑油、例えば、自動又は手動変速機等の駆動系用潤滑油、ギヤー油、グリース、湿式ブレーキ油、油圧作動油、タービン油、圧縮機油、軸受け油、冷凍機油等の潤滑油としても好適に使用することができる。
【0083】
また、本発明の低リン、低硫黄エンジンシステムは、潤滑油組成物として、潤滑油基油に(A)成分、(B)成分及び(C)成分を含有し、硫黄含有量が0.3質量%以下かつリン含有量0.08質量%以下の潤滑油組成物を使用し、燃料として硫黄分が50質量ppm以下の燃料を使用するものであり、ロングドレイン性、動弁系摩耗防止性が改善され、酸化触媒、三元触媒、NOx吸収還元触媒、DPF等の排ガス後処理装置に対する影響を低減することができる。
【0084】
【実施例】
以下に本発明の内容を実施例及び比較例によってさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例になんら限定されるものではない。
【0085】
(実施例1〜3及び比較例1〜3)
表1に示す組成の本発明の潤滑油組成物(実施例1〜3)及び比較用の潤滑油組成物(比較例1〜3)をそれぞれ調製した。得られた組成物について以下の(1)〜(3)に示す性能評価試験を行い、得られた結果を表1に示した。
【0086】
【表1】
【0087】
(1)高速四球試験
ASTM D2783−88に準拠する高速四球試験において、室温、回転数1800rpm、荷重を徐々に加える条件で摩耗発生開始直後の荷重(LNSL)を測定した。LNSLの数値(N)が高いほど摩耗防止性、極圧性に優れることを示す。
(2)ファレックス試験
ASTM D 3233に準拠するファレックス試験(B法)において、回転数290rpm、油温80℃、250lbs×5分間のなじみ運転を行った後に徐々に荷重を高めていく条件で、焼付き発生時の荷重(lbs)を測定した。焼付き荷重が高いほど極圧性に優れることを示す。
(3)NOx吸収試験による全塩基価の経時変化(全塩基価残存率)
日本トライボロジー会議予稿集1992、10、465に準拠し、140℃に保持した試験油にNOxガス濃度1198ppmの混合気を吹き込み、強制劣化させたときの全塩基価(HCl法)の経時変化を測定した。全塩基価の残存率が高いほど、塩基価維持性能に優れることを示す。
【0088】
表1から明らかな通り、(A)〜(C)成分を併用し、組成物の硫黄含有量を0.03質量%((B)成分含有量は硫黄元素換算で0.02質量%)、リン含有量を0.05質量%とした組成物(実施例1〜3)は、(B)成分を使用せずにリン含有量を0.05質量%とした組成物(比較例1及び2)と比べ、高速四球試験におけるLNSL及びFalex試験における焼付き荷重が高く、塩基価残存率もより高くなっていることがわかる。また、(A)成分および(B)成分を使用せずにジチオリン酸亜鉛を使用し、組成物のリン含有量を0.05質量%とした場合(比較例3)には、高速四球試験におけるLNSL及びFalex試験における焼付き荷重が劣るだけでなく、塩基価残存率が著しく劣るものであることがわかる。なお、(A)成分を使用せずに、(B)成分をリン含有量として0.05質量%とした場合には、塩基価維持性が著しく悪化することを確認している。
【0089】
(実施例4及び比較例4)
表2に示す組成の本発明の潤滑油組成物(実施例4)及び比較用の潤滑油組成物(比較例4)をそれぞれ調製した。得られた組成物について以下の(4)に示す性能評価試験を行い、得られた結果を表2に示した。
【0090】
【表2】
【0091】
(4)動弁摩耗試験
JASO M 328−95に準拠した動弁摩耗試験を行い、100時間経過後のロッカーアームパッドのスカッフィング面積、ロッカーアーム摩耗量、カムノーズ摩耗量を測定した。それぞれ10以下の数値であれば、摩耗防止性に極めて優れた組成物であることを示す。
なお、本試験には、硫黄分が10質量ppm以下のサルファーフリーガソリンを燃料として用いた。
【0092】
表2に示す通り、比較例4の組成物は(B)成分を使用せずにリン含有量が0.07質量%、硫黄含有量が0.01質量%の低リン低硫黄型の潤滑油組成物であり、そのままでも動弁系摩耗防止性、塩基価維持性に優れたものである。
それに対し、本発明にかかる実施例4の組成物は、リン含有量を比較例4と同じ0.07質量%、硫黄含有量を0.03質量%とした低リン低硫黄型の潤滑油組成物であり、動弁系の摩耗防止性、特にカムノーズ摩耗量は比較例4の組成物を使用した場合の10分の1程度となり、極めて優れた結果であった。
なお、上記硫黄分10質量ppm以下のサルファーフリーガソリンを使用したエンジン試験において、実施例4の組成物の塩基価維持性能、全酸化増加率、粘度増加率、エンジン清浄性能等の実用性能は比較例4の組成物と同等以上であることを確認している。
【0093】
【発明の効果】
以上述べた通り、本発明の潤滑油組成物は、極圧性、摩耗防止性及び塩基価維持性に極めて優れる潤滑油組成物であり、また、酸化安定性、腐食防止性にも優れるものである。従って、これらの性能が要望される上記したような各種潤滑油に適用可能である。また、金属系清浄剤や無灰分散剤の種類や含有量の最適化により、高温清浄性、酸化安定性等をさらに改善することができる。さらに、組成物の硫黄含有量を0.3質量%以下、リン含有量を0.08質量%以下とした低硫黄、低リン型の潤滑油組成物として、あるいは、さらに組成物の硫酸灰分量を所望のレベル(例えば、0.01〜1.2質量%、好ましくは0.8質量%以下、より好ましくは0.6質量%以下)に設定することができ、排ガス浄化装置(例えば、三元触媒や酸化触媒、NOx吸蔵還元触媒等の排ガス触媒、及び/又はDPF(ディーゼルパティキュレートフィルタ)等に対してもその浄化性能を悪化させない内燃機関用潤滑油組成物として特に有用である。
さらに、本発明は、上記のような低硫黄、低リン型の潤滑油組成物により低硫黄燃料(軽油、ガソリン、ガス等)を使用する内燃機関を潤滑する低硫黄、低リンエンジンシステムとして有用であり、潤滑油のロングドレイン化によるメインテナンスフリー化(例えば、硫黄分50質量ppm以下の低硫黄軽油や灯油、サルファーフリーガソリン、LPガスあるいは天然ガス等を燃料として用いたコージェネレーション等の発電エンジンシステム、自動車用エンジンシステム等)をより一層促進することが可能となる。
Claims (12)
- 潤滑油基油に、(A)下記一般式(1)で表される、イオウを含まないリン含有酸性有機化合物の金属塩から選ばれる少なくとも1種、(B)下記一般式(2)で表される、リン含有カルボン酸化合物及びその金属塩(但し、金属は、アルカリ土類金属、亜鉛、銅、アルミニウム、及びモリブデンから選ばれる少なくとも1種である)から選ばれる少なくとも1種、(C)酸化防止剤、及び(E)金属系清浄剤を含有し、かつ組成物全量基準で組成物中のリン含有量が0.07質量%以下であることを特徴とする内燃機関用潤滑油組成物。
一般式(1)において、a及びbは、各々独立して0又は1であり、R 1 、R 2 及びR 3 は、それぞれ個別に水素又は炭素数1〜30の炭化水素基であり、少なくとも1つが水素を示す。)
(一般式(2)において、X 1 〜X 4 は、それぞれ個別に酸素又は硫黄であり、R 4 及びR 5 は、それぞれ個別に炭素数1〜30の炭化水素基を示し、R 6 〜R 9 は、それぞれ個別に水素又は炭素数1〜4の炭化水素基を示す。) - 前記(B)の化合物が、一般式(2)で表されるリン含有カルボン酸化合物の金属塩であることを特徴とする請求項1に記載の潤滑油組成物。
- 前記(B)一般式(2)で表される化合物において、X1〜X4はその2つが硫黄、他の2つが酸素であることを特徴する請求項1又は2に記載の潤滑油組成物。
- 組成物全量基準で組成物中のリン含有量が0.05質量%以下であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかの項に記載の潤滑油組成物。
- 前記(C)酸化防止剤が、フェノール系及び/又はアミン系酸化防止剤であることを特徴する請求項1に記載の潤滑油組成物。
- 前記(E)金属系清浄剤が、アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属のサリシレートであることを特徴する請求項1に記載の潤滑油組成物。
- (A)成分の含有量が、組成物全量基準で、リン元素換算で0.001〜0.2質量%であり、(B)成分の含有量が、組成物全量基準で、硫黄元素換算で0.001〜0.05質量%であることを特徴とする請求項1に記載の潤滑油組成物。
- (A)成分と(B)成分の含有量の合計量が、リン元素換算で0.05質量%以下であることを特徴とする請求項1に記載の潤滑油組成物。
- 潤滑油基油の%CAが3以下であり、かつ硫黄分が0.05質量%以下であることを特徴する請求項1に記載の潤滑油組成物。
- (D)無灰分散剤を含有することを特徴する請求項1乃至9のいずれかの項に記載の潤滑油組成物。
- 内燃機関が、酸化触媒、三元触媒、NOx吸蔵還元触媒から選ばれる排ガス浄化触媒及び/又はDPFを装着した内燃機関であることを特徴とする請求項1に記載の潤滑油組成物。
- 潤滑油基油に(A)下記一般式(1)で表される、イオウを含まないリン含有酸性有機化合物の金属塩から選ばれる少なくとも1種、(B)下記一般式(2)で表される、リン含有カルボン酸化合物及びその金属塩から選ばれる少なくとも1種、(C)酸化防止剤、及び(E)金属系清浄剤を含有し、組成物全量基準で、組成物の硫黄含有量が0.3質量%以下かつリン含有量が0.07質量%以下の潤滑油組成物により硫黄分50質量ppm以下の燃料を使用する内燃機関を潤滑することを特徴とする低硫黄、低リンエンジンシステム。
(一般式(1)において、a及びbは、各々独立して0又は1であり、R 1 、R 2 及びR 3 は、それぞれ個別に水素又は炭素数1〜30の炭化水素基であり、少なくとも1つが水素を示す。)
(一般式(2)において、X 1 〜X 4 は、それぞれ個別に酸素又は硫黄であり、R 4 及びR 5 は、それぞれ個別に炭素数1〜30の炭化水素基を示し、R 6 〜R 9 は、それぞれ個別に水素又は炭素数1〜4の炭化水素基を示す。)
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