JP4335392B2 - 窒素含有排水の処理装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、窒素含有排水の処理装置に関し、詳しくは、排水中に含まれている窒素を微生物により生物学的に除去する工程を含んだ窒素含有排水の処理装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
排水中の窒素除去を目的とした排水処理装置としては、従来から、嫌気(無酸素)槽と好気槽とを組合わせた嫌気好気活性汚泥法(循環式硝化脱窒法)が広く行われている。この嫌気好気活性汚泥法は、流入下水等の被処理水を無酸素槽に流入させるとともに、好気槽からの硝化液と最終沈殿池からの返送汚泥とを無酸素槽に循環させるように形成したものであって、好気槽では、無酸素槽を経て流入するアンモニア性窒素を亜硝酸性あるいは硝酸性の窒素に酸化し、これらを硝化液として無酸素槽に循環させることにより、これらの酸化態の窒素を流入水中の有機物による酸化反応で窒素ガスに還元し、水中から除去するようにしている。また、他の方式の脱窒法も行われているが、基本的には、アンモニア性窒素を酸化して酸化態窒素とし、酸化態窒素を還元して窒素ガスにする反応となっている。
【0003】
上述の脱窒処理を行うに際し、無酸素槽における生物学的な酸化態窒素の還元による窒素除去、即ち脱窒処理においては、標準的な都市下水の場合は、脱窒のために有機物を添加する必要はないが、被処理水中のBODが低い場合は、水素供用体としてメタノール等の有機物を無酸素槽に添加する必要がある。
【0004】
上述のように、無酸素槽にメタノール等を添加する場合、例えば、特許第2643478号公報には、反応槽内の混合液又は処理液を取出して酸化態窒素濃度を測定し、測定結果に基づいてメタノール注入量等を制御することが開示されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述のように、反応槽内の混合液又は処理液を取出して酸化態窒素濃度を測定するものでは、流入水(被処理水)中の窒素含有量が大きく変化しても、反応槽内の窒素濃度は僅かずつしか変化しないため、通常の変動範囲に隠れてしまい、適切な制御が行えなくなるおそれがある。また、槽内の酸化態窒素濃度が所定値を超えてからメタノールの注入量を増加させても被処理水の窒素濃度に追随できず、その結果、一定の水質を保証することができなくなってしまう。したがって、前記公報記載の方法は、回分式の窒素除去には有効であっても、他の形式のものには適用が困難となっている。
【0006】
そこで本発明は、脱窒槽(反応槽、無酸素槽)に流入する被処理水の酸化態窒素濃度が大きく変動しても、一定の水質の処理水を安定して得ることができる窒素含有排水の処理装置を提供することを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明の窒素含有排水の処理装置は、酸化態窒素を生物学的に窒素に変換する脱窒槽を有する排水処理装置において、前記脱窒槽に流入する被処理水中の酸化態窒素濃度を測定する流入酸化態窒素計測手段と、前記脱窒槽内の処理水又は該脱窒槽から流出した処理水中の酸化態窒素濃度を測定する処理水酸化態窒素計測手段と、前記脱窒槽に有機物を注入する有機物注入手段と、該有機物注入手段からの有機物注入量を制御する有機物注入量制御手段とを備え、該有機物注入量制御手段は、前記有機物注入量及び前記流入酸化態窒素計測手段で計測した流入窒素濃度並びに前記処理水酸化態窒素計測手段で計測した処理水窒素濃度をそれぞれ経時的に記憶する記憶手段と、前記流入窒素濃度と前記処理水窒素濃度とから前記脱窒槽における窒素除去量を求める窒素除去量算出部と、該窒素除去量算出部で求めた窒素除去量と前記有機物注入量との間の相関関係を求める相関関係算出部と、該相関関係算出部で求めた相関関係と前記流入窒素濃度とに基づいて有機物の必要量を演算する演算部と、該演算部での演算結果に基づいて前記有機物注入手段からの有機物注入量を制御する制御部とを備えていることを特徴としている。
【0009】
また、前記脱窒槽に、槽内の活性汚泥濃度を測定する汚泥濃度計測手段を設けるとともに、前記有機物注入量制御手段の演算部は、前記汚泥濃度計測手段で測定した活性汚泥濃度を含めて有機物の必要量を演算することを特徴としている。
【0010】
さらに、このように形成した前記脱窒槽を、上流の硝化槽と、下流の化学酸化処理槽との間に設置したことを特徴としている。
【0011】
【発明の実施の形態】
図1は本発明の窒素含有排水の処理装置の参考例を示す系統図である。この窒素含有排水の処理装置は、生物学的な脱窒処理、すなわち、酸化態窒素を生物学的に窒素に変換する処理を行う脱窒槽10と、該脱窒槽10に被処理水を流入させる被処理水流入経路11と、脱窒槽10で処理した処理水を流出させる処理水流出経路12と、脱窒槽10内にメタノール等の有機物を注入する有機物注入手段13と、該有機物注入手段13からの有機物注入量を制御する有機物注入量制御手段14と、被処理水流入経路11を流れる被処理水中の酸化態窒素濃度を測定する流入酸化態窒素計測手段15とにより形成されている。
【0012】
ここで、このように形成した排水処理装置においては、脱窒槽10で除去する窒素量(窒素除去量M)と、被処理水流入経路11から流入する被処理水中の酸化態窒素濃度(流入窒素濃度Cin)と、処理水流出経路12から流出する処理水中の酸化態窒素濃度(処理水窒素濃度Cout)と、処理水量(流入水量F)との間に、M=F(Cin−Cout)という関係が成り立つ。
【0013】
この中で、流入水量F及び処理水窒素濃度Coutが一定とすれば、流入窒素濃度Cinを測定することにより、窒素除去量Mが算出できる。したがって、窒素除去量Mと有機物注入量との間の相関関係をあらかじめ求めておけば、この窒素除去量Mと有機物注入量との相関関係から、有機物注入手段13から脱窒槽10内に注入すべき有機物量を算出することができる。
【0014】
すなわち、本参考例における前記有機物注入量制御手段14は、前記流入酸化態窒素計測手段15で計測した流入窒素濃度Cinに基づいて有機物の必要量を演算する演算部と、該演算部での演算結果に基づいて前記有機物注入手段13からの有機物注入量を制御する制御部とを備えており、演算部で算出した有機物注入量に応じて制御部が有機物注入手段13に設けた流量調整弁の開閉制御やポンプの回転数調整等を行い、脱窒槽10に注入する有機物量を所定量に調整する。
【0015】
これにより、脱窒槽10に流入する被処理水の酸化態窒素濃度に応じた適正な量の有機物を脱窒槽10内に注入することができるので、被処理水の酸化態窒素濃度が大きく変動しても、所定量の有機物によって確実な脱窒処理を行うことができ、処理水の酸化態窒素濃度を一定濃度以下に維持することができる。
【0016】
なお、酸化態窒素濃度の測定は、波長が220±14nm、好ましくは220±5nmにおける吸光度と、250±14nm、好ましくは250±10nmにおける吸光度との差から求めることができる。例えば、適当量を被検水を抜出してろ過処理した後、両波長域の吸光度をそれぞれ測定して差を求め、吸光度差に所定の演算処理を行うことにより酸化態窒素濃度を求めることができる。
【0017】
図2は本発明の窒素含有排水の処理装置の第1形態例を示す系統図である。なお、以下の説明において、前記参考例の構成要素と同一の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0018】
本形態例は、前記参考例装置に加えて、処理水流出経路12に、脱窒槽10から流出した処理水中の酸化態窒素濃度を測定する処理水酸化態窒素計測手段16を設け、前記有機物注入量制御手段14の演算部で、前記流入窒素濃度に加えて、処理水酸化態窒素計測手段16で計測した処理水窒素濃度も含めて有機物の必要量を演算するようにしたものである。例えば、流入窒素濃度に基づいて算出した有機物注入量に対して、処理水窒素濃度が上昇又は低下したときに、有機物注入量を増加又は減少させる補正を行うようにする。これにより、脱窒槽10内の環境が変動しても処理水の酸化態窒素濃度を一定濃度以下に維持することができる。
【0019】
さらに、有機物注入量制御手段14に、流入窒素濃度Cinと処理水窒素濃度Coutと有機物注入量Yとを経時的に記憶するメモリーやディスク装置等の記憶手段と、流入窒素濃度Cinと処理水窒素濃度Coutとから脱窒槽10における窒素除去量Mを求める窒素除去量算出部と、該窒素除去量算出部で求めた窒素除去量Mと前記有機物注入量との間の相関関係を求める相関関係算出部とを設けておき、前記演算部により、相関関係算出部で求めた相関関係と前記流入窒素濃度Cinとに基づいて有機物の必要量を演算することにより、経時的な流入窒素濃度及び処理水窒素濃度の変動、例えば昼夜における変動等に対応して的確な量の有機物を注入することができるので、より効果的な窒素除去を行うことができる。
【0020】
なお、脱窒槽10から流出した処理水中の酸化態窒素濃度を測定するのに代えて、脱窒槽10内の酸化態窒素濃度を測定するようにしても、窒素流入量との関係から、窒素除去量を算出することは可能である。
【0021】
図3は本発明の窒素含有排水の処理装置の第2形態例を示す系統図である。本形態例は、前記第1形態例装置に加えて、脱窒槽10内に槽内の活性汚泥濃度を測定する汚泥濃度計測手段17を設け、前記流入窒素濃度及び処理水窒素濃度に加えて、汚泥濃度計測手段17で測定した活性汚泥濃度も含めて有機物の必要量を演算するようにしたものである。例えば、活性汚泥濃度の増減に応じて有機物注入量を増減させる補正を行うようにしている。なお、処理水窒素濃度を一定とした場合は、処理水酸化態窒素計測手段16を設けず、流入酸化態窒素計測手段15で計測した流入窒素濃度と汚泥濃度計測手段17で測定した活性汚泥濃度とによって有機物注入量を算出することもできる。
【0022】
また、前記有機物注入量制御手段14に、流入窒素濃度と処理水窒素濃度と有機物注入量と活性汚泥濃度とをそれぞれ経時的に記憶する記憶手段と、流入窒素濃度と処理水窒素濃度とから脱窒槽10における窒素除去量を求める窒素除去量算出部と、該窒素除去量算出部で求めた窒素除去量と前記活性汚泥濃度とから単位汚泥濃度当たりの窒素除去速度を求める窒素除去速度算出部と、該窒素除去速度算出部で求めた窒素除去速度と有機物注入量との間の相関関係を求める相関関係算出部と設け、演算部において、相関関係算出部で求めた相関関係と流入窒素濃度とに基づいて有機物の必要量を演算することにより、流入窒素濃度等の経時的な変動に応じて活性汚泥における窒素除去能力を有効に利用することができ、窒素除去を効率よく行うことができる。
【0023】
図4は本発明の窒素含有排水の処理装置の第3形態例を示す系統図である。本形態例は、前記第1形態例装置に加えて、脱窒槽10の上流に流入水槽18を設けるとともに、該流入水槽18に流入する被処理水の流量を測定する流入水量測定手段19と、流入水槽18から脱窒槽10に流入する被処理水の流量を制御する処理水量制御手段20とを設け、流入水量も制御データの一つとして用いるようにしたものである。
【0024】
通常、下水処理設備では、時間帯や季節、天候によって流入水量が変動するが、流入水量が変動する場合、流入水(被処理水)中の窒素濃度も変動する場合が多い。一般的には、水量が多くなると窒素濃度が低くなり、水量が少なくなると窒素濃度が高くなる傾向にある。すなわち、水量や窒素濃度が変動しても、処理すべき全窒素量の変動はそれほど大きくはならない。
【0025】
したがって、流入水量が多くなったときに脱窒槽10での滞留時間を短くしても十分な脱窒処理を行うことが可能であるから、少なくとも、前記流入酸化態窒素計測手段15で測定した流入窒素濃度と流入水量とによって有機物注入量を制御することにより、流入水量に応じた最適な脱窒処理を行うことができる。なお、流入水量と処理水量との関係は、脱窒槽10の処理能力等に応じてあらかじめ設定しておけばよい。
【0026】
すなわち、流入水量が多くなった場合でも、窒素濃度が低いので脱窒槽10における滞留時間(処理時間)を短くして処理水量を多くすることにより十分な脱窒処理を行えるので、脱窒槽10を大型化することなくコンパクトな設備で流入量の増加に対応することができる。
【0027】
図5は本発明の窒素含有排水の処理装置の第4形態例を示す系統図である。本形態例は、前記各形態例に記載したような脱窒槽10を、好気雰囲気下でアンモニア性窒素を除去する硝化槽21と、化学酸化処理を行う化学酸化処理槽22との間に設置したものである。化学酸化処理方法としては、オゾン、紫外線、過酸化水素、これら二種以上の組合わせ、あるいは、これら一種以上と光触媒又は酸化触媒との組合わせを用いることができる。この化学酸化処理を行うことにより、殺菌、脱臭、脱色の他に、難分解性有機物の除去も行うことができる。
【0028】
硝化槽21では、処理水量や流入窒素量の急激な変動により硝化不良が発生すると、亜硝酸が生成することがある。この亜硝酸は、化学酸化処理槽22での化学酸化処理でスカベンジャとなり、オゾン等の酸化剤を消費してしまうので、化学酸化処理槽22に流入する脱窒処理水中に亜硝酸が存在すると、酸化剤の利用効率が大幅に低下してしまう。
【0029】
したがって、硝化槽21と化学酸化処理槽22との間に、前記有機物注入量制御手段14等を備えた脱窒槽10を設置することにより、硝化槽21からの硝化処理水中の亜硝酸濃度が急増しても、流入酸化態窒素計測手段15で測定した流入窒素濃度等に基づいて必要量の有機物を注入しながら脱窒処理を行うことにより、脱窒槽10で亜硝酸を完全に除去することができるので、化学酸化処理槽22に亜硝酸が流入することが無くなり、化学酸化処理槽22における酸化剤の有効利用、すなわち、化学酸化処理槽22での化学酸化処理を効率よく行うことができる。
【0030】
上記第4形態例に示すように、本発明の処理装置は、各種処理と組合わせることが可能であり、前述の循環式硝化脱窒法だけでなく、二段循環式、硝化内生脱窒法等にも適用が可能である。
【0031】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の窒素含有排水の処理装置によれば、脱窒槽に流入する酸化態窒素濃度等に応じて有機物の注入量を制御するので、脱窒槽に流入する被処理水の酸化態窒素濃度が大きく変動しても、一定の水質の処理水を安定して得ることができる。さらに、流出した処理水中の酸化態窒素濃度や経時的な変動要素も加えて有機物注入量を制御することにより、脱窒処理を効率よく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の窒素含有排水の処理装置の参考例を示す系統図である。
【図2】 同じく処理装置の第1形態例を示す系統図である。
【図3】 同じく処理装置の第2形態例を示す系統図である。
【図4】 同じく処理装置の第3形態例を示す系統図である。
【図5】 同じく処理装置の第4形態例を示す系統図である。
【符号の説明】
10…脱窒槽、11…被処理水流入経路、12…処理水流出経路、13…有機物注入手段、14…有機物注入量制御手段、15…流入酸化態窒素計測手段、16…処理水酸化態窒素計測手段、17…汚泥濃度計測手段、18…流入水槽、19…流入水量測定手段、20…処理水量制御手段、21…硝化槽、22…化学酸化処理槽
Claims (3)
- 酸化態窒素を生物学的に窒素に変換する脱窒槽を有する排水処理装置において、前記脱窒槽に流入する被処理水中の酸化態窒素濃度を測定する流入酸化態窒素計測手段と、前記脱窒槽内の処理水又は該脱窒槽から流出した処理水中の酸化態窒素濃度を測定する処理水酸化態窒素計測手段と、前記脱窒槽に有機物を注入する有機物注入手段と、該有機物注入手段からの有機物注入量を制御する有機物注入量制御手段とを備え、該有機物注入量制御手段は、前記有機物注入量及び前記流入酸化態窒素計測手段で計測した流入窒素濃度並びに前記処理水酸化態窒素計測手段で計測した処理水窒素濃度をそれぞれ経時的に記憶する記憶手段と、前記流入窒素濃度と前記処理水窒素濃度とから前記脱窒槽における窒素除去量を求める窒素除去量算出部と、該窒素除去量算出部で求めた窒素除去量と前記有機物注入量との間の相関関係を求める相関関係算出部と、該相関関係算出部で求めた相関関係と前記流入窒素濃度とに基づいて有機物の必要量を演算する演算部と、該演算部での演算結果に基づいて前記有機物注入手段からの有機物注入量を制御する制御部とを備えていることを特徴とする窒素含有排水の処理装置。
- 前記脱窒槽に、槽内の活性汚泥濃度を測定する汚泥濃度計測手段を設けるとともに、前記有機物注入量制御手段の演算部は、前記汚泥濃度計測手段で測定した活性汚泥濃度を含めて有機物の必要量を演算することを特徴とする請求項1記載の窒素含有排水の処理装置。
- 前記脱窒槽を、上流の硝化槽と、下流の化学酸化処理槽との間に設置したことを特徴とする請求項1又は2記載の窒素含有排水の処理装置。
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