JP4334779B2 - 前後表記付吸収性物品 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、カバー手段(おむつカバー、使い捨ておむつ、使い捨てパンツ、失禁パンツ、衣類)等と組み合わせて使用される、装着ミスを起こしにくい前後表記付体液吸収性物品(使い捨て失禁パッド、尿パッド等)に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、かかる吸収性物品は漏れを防止することが要求されており、女性が使用する際は臀部側に大きい吸収層、男性が使用する際は腹側に大きい吸収層をあてがう方法が知られている。
【0003】
このようなカバー手段と組み合わせて使用される吸収性物品、特に尿パッド(または失禁パッド)はその形が前後対象に近いため前後が分かり難く、装着ミスを起こし易かった。そのため従来から、装着時におけるカバー手段に対するズレを防止する目的で製品外面に付けられているズレ防止粘着材層の剥離シートに前後表記を印刷するという対策が広く採用されていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、使用時はこの剥離シートをはがして使用するため、結局のところ装着直前において前後がわからなくなってしまう虞があった。
【0005】
そこで、本発明の主たる課題は、ズレ防止粘着材層の剥離シートの剥離如何にかかわらず一見して前後が判別可能で、装着ミスを起こしにくい吸収性物品を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決した本発明は、次記のとおりである。
<請求項1記載の発明>
吸収性物品の外面をなす外装シートと、吸収性物品の内面をなす透液性トップシートと、これらの間に挟まれた、体液を吸収して保持する吸収要素と、外装シートの外面における幅方向中央部に設けられたズレ防止粘着材層と、このズレ防止粘着材層を覆う剥離シートとを備え、
装着時に、前記外装シート及び前記ズレ防止粘着材層が、吸収性物品の外側をカバーするカバー手段の内面と接する状態で使用される、パッドタイプの吸収性物品において、
前記外装シートの内面および外面の少なくとも一方における前記剥離シートと重なる部分に、前後表記が直に印刷されるとともに、前記剥離シートは透明または半透明であり、前記前後表記が前記剥離シートを介して外部から視認できるように構成されている、
ことを特徴とする、前後表記付吸収性物品。
【0007】
(作用効果)
このように、外装シート自体に前後表記を印刷することにより、ズレ防止粘着材層の剥離シートの剥離如何にかかわらず一見して前後が判別可能で、装着ミスを起こしにくくなる。なお、本発明のカバー手段は、おむつカバー、使い捨ておむつ、使い捨てパンツ、失禁パンツ又は衣類を意味する。
【0008】
<請求項2記載の発明>
前記前後表記の色とこれを印刷する外装シートの色との色差ΔE*abが25より大きく且つ100未満となるように構成された、請求項1記載の前後表記付吸収性物品。
【0009】
(作用効果)
かかる色の組合せを採用することによって、前後表記が、その色と外装シートの色とが同系であるため一見目立たないにもかかわらず、ある程度は色に差があるため注視すれば容易に読み取ることができる。特に、パッド等の頻繁な交換を要する吸収性物品では、表裏がわかりやすいように外装シートに色がついているが、印刷する色が同系であることで目にやさしく、読みやすくなる。
【0010】
<請求項3記載の発明>
前記前後表記の色および外装シートの色が、L*a*b*表色系でL*≧25の色とされた、請求項2記載の前後表記付吸収性物品。
【0011】
(作用効果)
前後表記の色および外装シートの色を適宜組み合わせるにあたり、かかる色の範囲内から選定することによって、全体として暗くなりすぎず、より見易い前後表記となる。
【0012】
<請求項4記載の発明>
前記前後表記の色および外装シートの色が、L*a*b*表色系でa*<0且つb*<0の色とされた、請求項2または3記載の前後表記付吸収性物品。
【0013】
(作用効果)
かかる範囲の色は緑と青との間の色であり、落ち着きがあり目に優しいとともに、清涼感・清潔感を想起させることができるため好ましい。
【0014】
<請求項5記載の発明>
前記前後表記は吸収性物品の幅方向中央部に設けられるとともに、前記ズレ防止粘着材層はこの前後表記の幅方向両側にそれぞれ配置されている、請求項1〜4のいずれか1項に記載の前後表記付吸収性物品。
【0015】
【0016】
【0017】
【0018】
【0019】
<請求項6記載の発明>
前記前後表記が、グラビア印刷、フレキソ印刷、またはインクジェット印刷により印刷された、請求項1〜5のいずれか1項に記載の前後表記付吸収性物品。
【0020】
(作用効果)
本発明の前後表記印刷には、かかる印刷手法が好適に使用できる。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について尿パッドの例を引いて説明するが、本発明は「外側をカバーするカバー手段と組み合わせて使用される」ものであれば他のパッドタイプの吸収性物品にも適用可能である。
(尿パッドへの応用例)
図1〜図3は、尿パッド例の展開状態の斜視図、およびその要部縦断面図をそれぞれ示しており、この例は、透液性トップシート1と不透液性バックシート2と、これらシート1,2の間に挟まれた吸収体3(吸収要素)とを主体として構成されている。
【0022】
不透液性バックシート2は、ポリエチレンフィルム等からなり、縦方向の一方側部分の両側部に脚周りに沿う曲線部20,20がそれぞれ形成されたものであり、本例では、この不透液性バックシート2がカバー手段の内面と接する外装シートを構成することになる。吸収体3は、高吸収性ポリマー粒子を含む綿状パルプ30を主体とし、これをティッシュペーパー等31により包装してなるものであり、不透液性バックシート2を若干スケールダウンした形状をなしている。また、透液性トップシート1は、不織布等からなり、その幅は吸収体3と略同じサイズとされているものの、その縦方向両端部は吸収体3よりも外側に延在しており、これら延在部においてホットメルト接着剤等により不透液性バックシート2の内面に固定されている。
【0023】
また、本例の尿パッドでは、横漏れを防止するための脚周り起立カフス4,4が両側部にそれぞれ形成されている。この起立カフス4,4を形成するカフスシート40,40は不織布等からなり、製品縦方向長さに等しい長さを有し、脚周り曲線部20,20と対応する縦方向中間部においては、幅方向一端部が透液性トップシート1側部および不透液性バックシート2側部に跨って固定(この固定部分を図2に42として示した)されるとともに、他端部は非固定の自由端部41とされ、さらにこの自由端部41はシート40が折り返された二重構造となっており、折り返し内面間には、幅方向に複数本の糸ゴムG,G…等の弾性伸縮部材が伸張下に配置固定されている。一方、カフスシート40の縦方向両端部においては、図3に示すように自由端部41に連続する部分51も折り畳まれて透液性トップシート1に対して固定される。かくして、伸縮部材G,G…の収縮作用により、脚周りに沿う自由端部41が固定部分42に対して起立される。またこの収縮作用によって製品が身体に沿う舟形状に丸められる。
【0024】
そしてかかる構成のもと、図4に示すように、本発明の外装シートたる不透液性バックシート2に前後表記10,10…が直に印刷される。本発明における前後表記10は製品外面から目視可能である限りにおいて、外装シート2の内面および外面であるとを問わず形成できるが、好適には外装シート2の外面に形成する。印刷方法としては、グラビア印刷、フレキソ印刷、インクジェット印刷が好適である。
【0025】
望ましい前後表記10の色としては、外装シート2の色との色差ΔE*ab(周知のように、ΔE*ab=(Δa2+Δb2+ΔL2)1/2 である)が25より大きく且つ100未満の範囲、より好適には35〜75の範囲にある色、すなわち同系色であるが容易に読み取れる程度の差がある色を選択するのが望ましい。また、これら前後表記10および外装シート2の色がL*a*b*表色系でL*≧25の色であると全体的に暗くならない。ただし、両色ともにL*値が70以上の明るい色の場合などにおいては、明暗の差が少ないと見難くなることもあるので、前後表記10および外装シート2間におけるL*値の差ΔL*は、10以上であるのが望ましい。さらにL*a*b*表色系でa*<0且つb*<0の色、すなわち緑と青との間の色は落ち着きがあり目に優しいとともに、清涼感・清潔感を想起させることができるため好ましい。特に、これら前後表記10および外装シート2の色としては、吸収性物品として好ましくない色、例えば排泄物や血液を連想させる(または見間違える)ような「黄色系、茶色系」や「赤(特に鮮明な赤)」は避けるようにするのが望ましい。
【0026】
本発明の前後表記10の形態としては各種考えられるが、見易さや汎用性等の点では、図4及び図5に示すように矢印等の方向指示マーク10Aとともに、マーク10A内(矢印の近傍でも良い)に前後判別文字10Bを併用した例を提案する。この場合、判別文字のサイズは、9ポイント以上、特に好適には17ポイント以上にするのが好ましい。
【0027】
このように、前後の判別のための表記として「前」「後」「腹」「尻」等の文字を印刷するとともに、直感的な方向理解のために矢印マークを付すことによって、より前後の判別が容易になる。また本発明における前後の判別のための表記として、図5に示すように前後の両表記を付しても良いが、図4に示すように前後いずれか一方の表記のみ(図示例は前のみ)を付すだけでも足りる。特に男女で前後が反対となる男女兼用タイプ(通常、男性の場合に脚周り曲線部20,20を境にしてより広い吸収体領域を有する側が前側となり、女性の場合にはその反対となる)においては、図4に示すように各性別毎の前後表記を付すのが望ましく、性別間で色合いを異ならしめるのも望ましい。またもちろん、本発明においては、図6に示すように方向指示マークを省略したり、矢印マークに代わる方向指示マーク、例えば図4の矢印マークの先端側にある山形マーク10Cや三角形マーク等を付したりすることも可能である。さらにこれらの図示例では、複数の前後表記10,10…を付しているが、基本的に本発明においては前後表記の数には特に限定されない。
【0028】
他方、図7及び図8に示すように、本発明においても前述の従来例と同様に、装着時におけるカバー手段に対するズレを防止する目的で、外装シート2(不透液性バックシート)の外表面にズレ防止粘着材層60および剥離シート61が積層されている。このズレ防止粘着材層60および剥離シート61は、図示のように縦方向一端から他端まで連続するように設けるほか、製品の縦方向に間隔をおいて複数設けることもできる。この場合、剥離シート61として透明または半透明の材料を用いることにより、外装シート2の前後表記10,10…が剥離シート61を介して外部から視認できるようになっている。また図9に示すように剥離シート61にも前後表記11を印刷することもできる。ただし、剥離シート61は使用時には剥離されてしまうため、カバー手段と接しないという点で本発明の外装シートを構成しないものである。よって、いずれにせよ、外装シート2に直に印刷を施すことが重要である。
【0029】
(折畳状態との関係)
本発明が対象とする吸収性物品は、一般にコンパクト化のために、3つ折り以上に小さく折り畳まれて包装される。この際、従来の製品では折り畳まれていると、前後表記の一部または全部が隠れてしまったり、上面または下面の一方側にしか前後表記がない状態となるものしかなかった。そのため、製品使用者は、折り畳まれた状態の製品を一見しただけでは、前後表記を完全に読み取れなかったり、前後表記が有る面を探したりする苦労があった。
【0030】
そこで、図10に(A)三つ折り状態の第1の例、(B)三つ折り状態の第2の例、(C)四つ折り状態の第1の例、ならびに(D)四つ折り状態の第2の例を示すように、折り畳んだ状態で少なくとも上面201となる位置および下面202となる位置に少なくとも一つの完全な前後表記10,10がそれぞれ位置するように、外装シート2の製品前後方向に間隔をあけて2つ以上の前後表記10,10…をそれぞれ印刷することを推奨する。これにより、畳まれた状態で上面201となる位置および下面202となる位置に少なくとも一つの完全な前後表記10,10がそれぞれ位置するため、製品使用者は、折り畳まれた状態の製品を一見しただけでもその前後を容易に判別することができるようになる。
【0031】
さらに図10(B)に示す例では、折り畳み状態から使用状態に広げたときに現れる見開き面203には前後表記がなく、一見して前後表記を視認できない。よって更に好適には、図10(A)(C)及び(D)に示すように、折畳み状態から開いたときに現れる見開き面203にも少なくとも一つの完全な前後表記10が位置するように、外装シート2に対して前後表記10,10…を適当な間隔で印刷するのが好ましい。これにより、折り畳み状態から使用状態に広げた際にも一見して前後表記10を視認できるようになる。
【0032】
さらに図示例のように、折り線部分204を跨ぐような前後表記がないようにすると、前後の判別に寄与しにくい表記の印刷を省略でき、使用者にとってはより見易くなる利点がもたらされ、製造者にとっては印刷コストの低減を図ることができる利点がもたらされる。
【0033】
<色に係る実験例>
表1に示すように、外装シートの色と前後表記の色との色差を変えた製品を各種製作し、前後表記の見易さの官能評価(視認性・色の組合せ・清涼感・落ち着き感・総合評価)を50人で行った。官能評価は、各評価項目に関して最良と感じる色の組合せを各人が選ぶようにして行った。また表2に評価結果を示した。評価結果は選択人数により示した。
【0034】
【表1】
【0035】
【表2】
【0036】
(考察)色差ΔE*abが100以上となる実施例4及び5では、同系色でないために視認性が良いと感じた人が多い。しかし、実施例4は黒白の組合せであるため、また実施例5は前後表記に鮮明な赤を用いたため、清涼感や落ち着き感が劣り、総合的な見易さに劣るという結果になった。さらに、茶系の色を組み合わせた実施例1、異系に近い同系色を組合せた実施例3についても、清涼感や落ち着き感が劣るために、総合評価が低くなった。
【0037】
他方、実施例2および実施例6は、ともにL*a*b*表色系でa*<0且つb*<0の色、すなわち緑と青との間の色の組合せを採用したものであり、清涼感や落ち着き感等の評価が著しく高くなった。特に実施例2においては、色差ΔE*abも前述の望ましい範囲にあるため視認性の評価も最も高くなった。一方、実施例6においては両色ともにL*値が高く(薄い色)かつ明暗差が少なかったために、視認性は劣る結果となった。
【0038】
【発明の効果】
以上のとおり、本発明によれば、ズレ防止粘着材層の剥離シートの剥離如何にかかわらず一見して前後が判別可能で、装着ミスを起こしにくい吸収性物品となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る尿パッド例の一部破断斜視図である。
【図2】 図1のII−II断面図である。
【図3】 図1のIII−III断面図である。
【図4】 第1の前後表記形態を示す外面図である。
【図5】 第2の前後表記形態を示す外面図である。
【図6】 第3の前後表記形態を示す外面図である。
【図7】 ズレ防止用粘着材層および剥離シートを有する例の外面図である。
【図8】 ズレ防止用粘着材層および剥離シートを有する例の縦断面図である。
【図9】 ズレ防止用粘着材層および剥離シートを有し、さらに剥離シートに前後表記を有する例の縦断面図である。
【図10】 各種折畳み状態を示す側面図である。
【符号の説明】
1…透液性トップシート、2…不透液性バックシート(外装シート)、3…吸収体、10…前後表記。
Claims (6)
- 吸収性物品の外面をなす外装シートと、吸収性物品の内面をなす透液性トップシートと、これらの間に挟まれた、体液を吸収して保持する吸収要素と、外装シートの外面に設けられたズレ防止粘着材層と、このズレ防止粘着材層を覆う剥離シートとを備え、
装着時に、前記外装シート及び前記ズレ防止粘着材層が、吸収性物品の外側をカバーするカバー手段の内面と接する状態で使用される、パッドタイプの吸収性物品において、
前記外装シートの内面および外面の少なくとも一方における前記剥離シートと重なる部分に、前後表記が直に印刷されるとともに、前記剥離シートは透明または半透明であり、前記前後表記が前記剥離シートを介して外部から視認できるように構成されている、
ことを特徴とする、前後表記付吸収性物品。 - 前記前後表記の色とこれを印刷する外装シートの色との色差ΔE*abが25より大きく且つ100未満となるように構成された、請求項1記載の前後表記付吸収性物品。
- 前記前後表記の色および外装シートの色が、L*a*b*表色系でL*≧25の色とされた、請求項2記載の前後表記付吸収性物品。
- 前記前後表記の色および外装シートの色が、L*a*b*表色系でa*<0且つb*<0の色とされた、請求項2または3記載の前後表記付吸収性物品。
- 前記前後表記は吸収性物品の幅方向中央部に設けられるとともに、前記ズレ防止粘着材層はこの前後表記の幅方向両側にそれぞれ配置されている、請求項1〜4のいずれか1項に記載の前後表記付吸収性物品。
- 前記前後表記が、グラビア印刷、フレキソ印刷、またはインクジェット印刷により印刷された、請求項1〜5のいずれか1項に記載の前後表記付吸収性物品。
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