JP4334185B2 - 色素増感光電変換素子 - Google Patents
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Description
【本発明の属する技術分野】
本発明は有機色素で増感された光電変換素子および太陽電池に関し、詳しくは特定の骨格を有する色素によって増感された酸化物半導体微粒子を用いることを特徴とする光電変換素子及びそれを利用した太陽電池に関する。
【0002】
【従来の技術】
石油、石炭等の化石燃料に代わるエネルギー資源として太陽光を利用する太陽電池が注目されている。現在、結晶またはアモルファスのシリコンを用いたシリコン太陽電池、あるいはガリウム、ヒ素等を用いた化合物半導体太陽電池等について盛んに高効率化など、開発検討がなされている。しかしそれらは製造に要するエネルギー及びコストが高く、またその資源的問題からなかなか市場に拡がらないのが現状であり、さらに安いコストで出来る太陽電池の開発が望まれている。一方色素で増感した半導体微粒子を用いた光電変換素子、あるいはこれを用いた太陽電池も知られ、これを作成する材料、製造技術が開示されている。(B.O'Regan and M.Gratzel Nature, 353, 737 (1991), M.K.Nazeeruddin, A.Kay, I.Rodicio, R.Humphry-Baker, E.Muller, P.Liska, N.Vlachopoulos, M.Gratzel, J.Am.Chem.Soc., 115, 6382 (1993) e.t.c.) この光電変換素子は酸化チタン等の比較的安価な酸化物半導体を用いて製造され、従来のシリコン等を用いた太陽電池に比べコストの安い光電変換素子が得られる可能性があり注目を集めている。しかし変換効率の高い素子を得るために増感色素としてルテニウム系の錯体を使用されており、色素自体のコストが高く、またその供給にも問題が残っている。また増感色素として有機色素を用いる試みも既に行われているが、変換効率が低いなどまだ実用化には至らない現状にある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
有機色素増感半導体を用いた光電変換素子において、安価な有機色素を用い、変換効率の高い実用性の高い光電変換素子の開発が求められている。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は上記の課題を解決するために鋭意努力した結果、特定のサリチル酸部位を有する色素を用いて半導体微粒子を増感し、光電変換素子を作成する事により変換効率の高い光電変換素子が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち本発明は
【0005】
(1)下記一般式(11)で表されるメチン系の色素によって増感された酸化物半導体微粒子を用いることを特徴とする光電変換素子、
【0006】
【化3】
【0007】
(式中、Xは下記式(12)、(13)又は(14)
【0008】
【化4】
【0009】
(式中aで示される炭素原子は、式(11)において二重結合と結合する炭素原子を表す。)
をあらわす。)
(2)(1)記載の一般式(11)で表されるメチン系の色素を少なくとも1つ含み、かつ他の金属錯体色素および他の構造を有する有機色素によりなる群から選ばれた色素のうち、2種以上の色素の併用により増感された酸化物半導体微粒子を用いることを特徴とする(1)に記載の光電変換素子、
(3)酸化物半導体微粒子が二酸化チタンを必須成分として含有する(1)又は(2)に記載の光電変換素子、
(4)酸化物半導体微粒子に包摂化合物の存在下、色素を担持させた(1)乃至(3)のいずれか1項に記載の光電変換素子、
(5)(1)乃至(4)のいずれか1項に記載の光電変換素子を用いる事を特徴とする太陽電池、
(6)(1)記載の一般式(11)で表されるメチン系の色素により増感された酸化物半導体微粒子、
(7)酸化物半導体微粒子の薄膜に色素を担持させて得られる(1)乃至(4)のいずれか1項に記載の光電変換素子、
に関する。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下に本発明を詳細に説明する。本発明の光電変換素子は特定の構造を有するメチン系色素によって増感された酸化物半導体を用いる。特定の構造とは下記式(1)で表されるものであり、サリチル酸の部分を有している。このときサリチル酸部分はリチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムなどの金属塩やテトラメチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、ピリジニウム、イミダゾリウムなどの4級アンモニウム塩のような塩を形成していても良い。
【0011】
【化5】
【0012】
さらにメチン系色素の構造としては以下の一般式(2)で示される化合物が好ましい。
【0013】
【化6】
【0014】
一般式(1)においてA1、A2およびA3はそれぞれ独立に置換されていてもよい脂肪族炭化水素残基、置換されていてもよい芳香族炭化水素残基、置換されていてもよい複素環残基、置換されていてもよいアミノ基、ヒドロキシル基、アルコキシル基、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、アルコキシカルボニル基またはアシル基をあらわす。またnが2以上でA1およびA2が複数存在する場合にはそれぞれ互いに独立に同じ又は異なっても良い前記の基を示す。
上記脂肪族炭化水素残基としては飽和及び不飽和の直鎖、分岐及び環状の脂肪族炭化水素から水素原子1つを除いた残基が挙げられ、炭素数は特に制限は無いが、通常1から36のものが挙げられ、好ましくは炭素数1から20程度の直鎖アルキルが挙げられる。最も普通には炭素数1ないし6程度の直鎖アルキル基である。環状のものとして例えば炭素数3乃至8のシクロアルキル基などが挙げられる。
上記芳香族炭化水素残基は芳香族炭化水素から水素原子を1つ除いた基を意味し、例えばベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナンスレン、ピレン、インデン、アズレン、フルオレン等の芳香族炭化水素から水素原子1つを除いた基が挙げられる。
上記複素環残基は複素環化合物から水素原子を1つ除いた基を意味し、例えばピリジン、ピラジン、ピペリジン、モルホリン、インドリン、チオフェン、フラン、オキサゾール、チアゾール、インドール、ベンゾチアゾール、ベンゾオキサゾール、キノリン等の複素環化合物から水素原子を1つ除いた基が挙げられる。
置換されても良いアミノ基としては非置換のアミノ基、モノまたはジメチルアミノ基、モノまたはジエチルアミノ基、モノまたはジプロピルアミノ基、モノまたはジベンジルアミノ基、モノまたはジフェニルアミノ基、モノまたはジナフチルアミノ基、アルキルアリールアミノ基のような置換基を有しても良いモノまたはジアルキルアミノ基、モノまたはジ芳香族置換アミノ基などが挙げられる。(アルキル基、アリール基上の置換基としては特に制限は無いがフェニル基、アルコキシル基、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、シアノ基などが挙げられる。)
アルコキシル基としては、例えば炭素数1乃至10のアルコキシル基などが挙げられる。
ハロゲン原子としては塩素、臭素、ヨウ素等の原子が挙げられる。
アルコキシカルボニル基としては、例えば炭素数1乃至10のアルコキシカルボニル基などが挙げられる。
アシル基としては例えば炭素数1乃至10のアルキルカルボニル基、アリールカルボニル基等が挙げられ、好ましくは炭素数1乃至4のアルキルカルボニル基、具体的にはアセチル基、プロピオニル基等が挙げられる。
【0015】
上記脂肪族炭化水素残基、芳香族炭化水素残基または複素環残基上の置換基としては特に制限はないが、置換されても良いアルキル基、置換されても良いアリール基、シアノ基、イソシアノ基、チオシアナト基、イソチオシアナト基、ニトロ基、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、スルホ基、リン酸基、エステル化されたリン酸基(以下リン酸エステル基という)、置換もしくは非置換メルカプト基、置換もしくは非置換アミノ基、置換もしくは非置換アミド基、アルコキシル基、アルコキシアルキル基、またはカルボキシル基、カルボンアミド基、アルコキシカルボニル基、アシル基等の置換カルボニル基等が挙げられる。
上記置換されても良いアルキル基としては通常置換されてもよい直鎖、分岐及び環状の炭素数1から36程度のものが挙げられ、好ましくは炭素数1から20程度のアルキル基が挙げられる。最も普通には炭素数1ないし6程度のアルキル基である。該アルキル基は更に上記アルキル基を除く置換基で置換されていても良い。
アリール基としては、前記芳香族炭化水素残基の項で挙げられる芳香環から水素原子をとった基等が挙げられる。アリール基は更に上記の基などで置換されていてもよい。
ハロゲン原子としては塩素、臭素、ヨウ素等の原子が挙げられる。
リン酸エステル基としてはリン酸(C1−C4)アルキルエステル基などが挙げられる。
置換若しくは非置換メルカプト基としてはメルカプト基、アルキルメルカプト基などが挙げられる。
置換若しくは非置換アミノ基としてはアミノ基、モノまたはジアルキルアミノ基、モノまたはジ芳香族アミノ基などが挙げられ、モノまたはジメチルアミノ基、モノまたはジエチルアミノ基、モノまたはジプロピルアミノ基、モノまたはジフェニルアミノ基、またはベンジルアミノ基等が挙げられる。
置換若しくは非置換のアミド基としてはアミド基、アルキルアミド基、芳香族アミド基等が挙げられる。
アルコキシル基としては、例えば炭素数1乃至10のアルコキシル基などが挙げられる。
アルコキシアルキル基としては、例えば(C1−C10)アルコキシ(C1−C10)アルキル基などが挙げられる。
アルコキシカルボニル基としては、例えば炭素数1乃至10のアルコキシカルボニル基などが挙げられる。
アシル基としては例えば炭素数1乃至10のアルキルカルボニル基、アリールカルボニル基等が挙げられ、好ましくは炭素数1乃至4のアルキルカルボニル基、具体的にはアセチル基、プロピオニル基等が挙げられる。
またカルボキシル基、スルホ基およびリン酸基等の酸性基およびヒドロキシル基は塩を形成してもよく、塩として例えばリチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムなどのアルカリ金属またはアルカリ土類金属などとの塩または有機塩基、例えばテトラメチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、ピリジニウム、イミダゾリウムなどの4級アンモニウム塩のような塩を挙げることが出来る。
【0016】
またA1、A2およびA3として好ましいものは水素原子、ハロゲン原子、置換されてもよいアルキル基、置換されてもよいフェニル基、シアノ基などが挙げられ、より好ましくは水素原子、置換されてもよいアルキル基である。
またA1、A2およびA3はこのうちの2者を用いて置換されてもよい環を形成してもよい。特にnが2以上で、A1とA2がそれぞれ複数存在する場合には任意のA1および任意のA2を利用して、環を形成してもよい。置換基を有する場合の置換基としては前記置換されてもよい芳香族炭化水素残基の項で述べた置換基を挙げることができる。形成する環としては不飽和炭化水素環または複素環が挙げられる。不飽和炭化水素環としてはベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナンスレン環、ピレン環、インデン環、アズレン環、フルオレン環、シクロブテン環、シクロヘキセン環、シクロペンテン環、シクロヘキサジエン環、シクロペンタジエン環等が挙げられ、複素環としてはピリジン環、ピラジン環、インドリン環、チオフェン環、フラン環、ピラン環、オキサゾール環、チアゾール環、インドール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾオキサゾール環、ピラジン環、キノリン環、カルバゾール環、ベンゾピラン環等が挙げられる。またこれらのうちの好ましい物はシクロブテン環、シクロペンテン環、シクロヘキセン環、ピラン環などが挙げられる。また、置換基としてカルボニル基、チオカルボニル基等を有することが出来、その場合には環状ケトン又は環状チオケトンなどを形成してもよい。またこれらのうちの好ましい物はシクロブテン環、シクロペンテン環、シクロヘキセン環、ピラン環などが挙げられる。
【0017】
Xは置換されていてもよい芳香族炭化水素残基、置換されていてもよい複素環残基、置換されていてもよい有機金属錯体残基をあらわす。ここで挙げる、置換されていてもよい芳香族炭化水素残基としての芳香族炭化水素残基は芳香族炭化水素から水素原子を1つ除いた基を意味し、例えばベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナンスレン、ピレン、インデン、アズレン、フルオレン等の芳香族炭化水素から水素原子1つを除いた基が挙げられる。置換されていてもよい複素環残基としての複素環残基は複素環化合物から水素原子を1つ除いた基を意味し、例えばピリジン、ピラジン、ピペリジン、モルホリン、インドリン、チオフェン、フラン、オキサゾール、チアゾール、インドール、ベンゾチアゾール、ベンゾオキサゾール、キノリン、ピリミジン、ピラゾール、ピラゾリジン、チアゾリジン、オキサゾリジン、ピラン、クロメン、クマリン、ピロール、ベンゾイミダゾール、イミダゾリン、イミダゾリジン、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾール、トリアジン、ジアゾール、チアジン、ナフトチアゾール、ナフトオキサゾール、インドレニン、ベンゾインドレニン、キナゾリン、カルバゾール等の複素環化合物から水素原子を1つ除いた基が挙げられる。またそれぞれ増環や水素化されていても良い。置換されていてもよい有機金属錯体残基としての有機金属錯体残基としては、有機金属錯体から水素原子1つを除いた基を挙げることができ、これらの有機金属錯体化合物としてはフェロセン、ルテノセン、チタノセン、ジルコノセン、ポルフィリン、フタロシアニン、ビピリジル錯体などが挙げられる。
Xとして好ましくはベンゼン環、ナフタレン環、インデン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、キノリン環、チオフェン環、インドレニン環、ベンゾインドレニン環、ピラゾール環、ピラゾリジン環、チアゾール環、チアゾリジン環、ベンゾチアゾール環、オキサゾール環、オキサゾリジン環、ベンゾオキサゾール環、ピラン環、クロメン環、ピロール環、イミダゾール環、ベンゾイミダゾール環、イミダゾリン環、イミダゾリジン環、インドール環、カルバゾール環、フタロシアニン環、ポルフィリン環、フェロセンなどが挙げられ、それぞれ水素化されていても良い。さらに好ましくはベンゼン環、ナフタレン環、インデン環、インドレニン環、ベンゾインドレニン環、イミダゾール環、ベンゾイミダゾール環、オキサゾール環、ベンゾオキサゾール環、チアゾール環、ベンゾチアゾール環、クマリン環、ピリジン環、キノリン環などが挙げられる。
またこの時のXが有しても良い置換基としては脂肪族炭化水素残基、芳香族炭化水素残基または複素環残基上の置換基と同様で良くまた環式ケトン、チオケトンを形成していても良い。好ましくは置換しても良いアミノ基、アルキル基、アルコキシル基、アセチル基、ヒドロキシル基、ハロゲン原子、ケトン、チオケトンが挙げられる。さらに好ましくは置換しても良いアミノ基、アルキル基、アルコキシル基、ケトン、チオケトンが挙げられる。
これら置換基を合わせて環式炭化水素、複素環としてロダニン環、チオオキサゾリドン環、ヒダントイン環、チオヒダントイン環、インダンジオン環、チアナフテン環、ピラゾロン環、バルビツール環、チオバルビツール環、ピリドン環などを形成する構造が好ましい。
これら化合物はシス体、トランス体などの構造異性体をとり得るが、特に限定されず良好である。
またXが複素環等のときにその複素環が四級化されていても良く、その時に対イオンを有しても良い。具体的には特に限定はされないが、一般的なアニオンで良い。具体例としては、F-,Cl-,Br-,I-,ClO4 -,BF4 -,PF6 -,OH-,SO4 2- ,CH3SO4 -,トルエンスルホン酸等が挙げられ、Br-,I-,ClO4 -,BF4 -,PF6 -,CH3SO4 -,トルエンスルホン酸が好ましい。また対イオンではなく分子内または分子間のカルボキシル基などの酸性基により中和されていても良い。
【0018】
一般式(1)の化合物は例えば式(3)のサリチル酸系化合物とXとして表される活性メチレンを有する環状化合物を必要であればピペリジン、ピペラジンなどの塩基性触媒の存在下、エタノールなどのアルコールやN,N-ジメチルホルムアミドなどの非プロトン性極性溶媒、無水酢酸などの溶媒中、室温から還流温度で縮合することにより得られる。
【0019】
【化7】
【0020】
以下に化合物例を列挙する。
まずはAが水素でXが5員環の化合物の例として一般式(4)として、表1に示す。Phはフェニル基を示す。
【0021】
【化8】
【0022】
【表1】
【0023】
Aが水素でXが6員環の化合物の例として一般式(5)として、表2に示す。
【0024】
【化9】
【0025】
【表2】
【0026】
Aが水素でXが5員環の化合物の例として一般式(6)として、表3に示す。Ph-Clは4−クロロフェニル基を表す。
【0027】
【化10】
【0028】
【表3】
【0029】
Aが水素でXが6員環の化合物の例として一般式(7)として、表4に示す。
【0030】
【化11】
【0031】
【表4】
【0032】
Aが水素でXが6員環の化合物の例として一般式(8)として、表5に示す。
【0033】
【化12】
【0034】
【表5】
【0035】
その他の具体例として以下のような構造の色素があげられる。
【0036】
【化13】
【0037】
【化14】
【0038】
【化15】
【0039】
本発明の色素増感光電変換素子は例えば酸化物半導体微粒子を用いて基板上に酸化物半導体の薄膜を製造し、次いでこの薄膜に色素を担持させたものである。本発明で酸化物半導体の薄膜を設ける基板としては、その表面が導電性であるものが好ましいが、そのような基板は市場で容易に入手可能である。具体的には、例えばガラスの表面又はポリエチレンテレフタレート若しくはポリエーテルスルフォン等の透明性のある高分子材料の表面にインジウム、フッ素、アンチモン、をドープした酸化スズなどの導電性金属酸化物や金、銀、銅等の金属の薄膜を設けたものを用いることができる。その導電性としては、通常1000Ω以下であればよく、100Ω以下のものが好ましい。酸化物半導体の微粒子としては金属酸化物が好ましく、その具体例としてはチタン、スズ、亜鉛、タングステン、ジルコニウム、ガリウム、インジウム、イットリウム、ニオブ、タンタル、バナジウムなどの酸化物が挙げられる。これらのうちチタン、スズ、亜鉛、ニオブ、タングステン等の酸化物が好ましく、これらのうち酸化チタンが最も好ましい。これらの酸化物半導体は単一で使用することも出来るが、混合して使用することも出来る。また酸化物半導体の微粒子の粒径は平均粒径として、通常1〜500nmで、好ましくは5〜100nmである。またこの酸化物半導体の微粒子は大きな粒径のものと小さな粒径のものを混合して使用することも可能である。酸化物半導体薄膜は酸化物半導体微粒子をスプレイ噴霧などで直接基板上に薄膜として形成する方法、基板を電極として電気的に半導体微粒子薄膜を析出させる方法、後記の半導体微粒子のスラリーを基板上に塗布した後、乾燥、硬化もしくは焼成することによって製造することが出来る。酸化物半導体電極の性能上、スラリーを用いる方法等が好ましい。この方法の場合、スラリーは2次凝集している酸化物半導体微粒子を定法により分散媒中に平均1次粒子径が1〜200nmになるように分散させることにより得られる。スラリーを分散させる分散媒としては半導体微粒子を分散させ得るものであれば何でも良く、水あるいはエタノール等のアルコール、アセトン、アセチルアセトン等のケトンもしくはヘキサン等の炭化水素等の有機溶媒が用いられ、これらは混合して用いても良く、また水を用いることはスラリーの粘度変化を少なくするという点で好ましい。スラリーを塗布した基板の焼成温度はおおむね基材の融点(軟化点)以下であり、通常上限は900℃であり、好ましくは600℃以下である。また焼成時間には特に限定はないがおおむね4時間以内が好ましい。基板上の薄膜の厚みは通常1〜200μmで好ましくは5〜50μmである。酸化物半導体薄膜に2次処理を施してもよい。すなわち例えば半導体と同一の金属のアルコキサイド、塩化物、硝化物、硫化物等の溶液に直接、基板ごと薄膜を浸積させて乾燥もしくは再焼成することにより半導体薄膜の性能を向上させることもできる。金属アルコキサイドとしてはチタンエトキサイド、チタンイソプロポキサイド、チタンt−ブトキサイド、n−ジブチル−ジアセチルスズ等が挙げられ、そのアルコール溶液が用いられる。塩化物としては例えば四塩化チタン、四塩化スズ、塩化亜鉛等が挙げられ、その水溶液が用いられる。
【0040】
次に酸化物半導体薄膜に色素を担持させる方法について説明する。前記の色素を担持させる方法としては、色素を溶解しうる溶媒にて色素を溶解して得た溶液、又は溶解性の低い色素にあっては色素を分散せしめて得た分散液に上記酸化物半導体薄膜の設けられた基板を浸漬する方法が挙げられる。溶液又は分散液中の濃度は色素によって適宜決める。その溶液中に基板上に作成した半導体薄膜を浸す。浸積温度はおおむね常温から溶媒の沸点までであり、また浸積時間は1時間から48時間程度である。色素を溶解させるのに使用しうる溶媒の具体例として、例えば、メタノール、エタノール、アセトニトリル、ジメチルスルホキサイド、ジメチルホルムアミド等が挙げられる。溶液の色素濃度は通常1×10-6M〜1Mが良く、好ましくは1×10-5M〜1×10-1Mである。この様にして色素で増感した酸化物半導体微粒子薄膜の光電変換素子が得られる。担持する色素は1種類でも良いし、数種類混合しても良い。混合する場合は本発明の色素同士でも良いし、他の色素や金属錯体色素を混合しても良い。特に吸収波長の異なる色素同士を混合することにより、幅広い吸収波長を用いることが出来、変換効率の高い太陽電池が得られる。金属錯体の例としては特に制限は無いが J.Am.Chem.Soc., 115, 6382 (1993)や特開2000−26487に示されているルテニウム錯体やフタロシアニン、ポルフィリンなどが好ましく、有機色素としては無金属のフタロシアニン、ポルフィリンやシアニン、メロシアニン、オキソノール、トリフェニルメタン系などのメチン系色素や、キサンテン系、アゾ系、アンスラキノン系等の色素が挙げられる。好ましくはルテニウム錯体やメロシアニン等のメチン系色素が挙げられる。混合する色素の比率は特に限定は無く、それぞれの色素により最適化されるが、一般的に等モルずつの混合から、1つの色素につき10%モル程度以上使用するのが好ましい。混合色素を混合溶解若しくは分散した溶液を用いて、酸化物半導体微粒子薄膜に色素を吸着させる場合、溶液中の色素合計の濃度は1種類のみ担持する場合と同様で良い。酸化物半導体微粒子の薄膜に色素を担持する際、色素同士の会合を防ぐために包摂化合物の共存下、色素を担持することが効果的である。ここで包摂化合物としてはコール酸等のステロイド系化合物、クラウンエーテル、シクロデキストリン、カリックスアレン、ポリエチレンオキサイドなどが挙げられるが、好ましいものはコール酸、ポリエチレンオキサイド等である。また色素を担持させた後、4−t−ブチルピリジン等のアミン化合物で半導体電極表面を処理しても良い。処理の方法は例えばアミンのエタノール溶液に色素を担持した半導体微粒子薄膜の設けられた基板を浸す方法等が採られる。本発明の太陽電池は上記酸化物半導体薄膜に色素を担持させた光電変換素子電極と対極とレドックス電解質または正孔輸送材料から構成される。レドックス電解質は酸化還元対を溶媒中に溶解させた溶液や、ポリマーマトリックスに含浸させたゲル電解質、また溶融塩のような固体電解質であっても良い。正孔輸送材料としてはアミン誘導体やポリアセチレン、ポリアニリン、ポリチオフェンなどの導電性高分子、ポリフェニレンなどのディスコティック液晶相を用いる物などが挙げられる。用いる対極としては導電性を持っており、レドックス電解質の還元反応に触媒的に作用するものが好ましい。例えばガラス、もしくは高分子フィルムに白金、カーボン、ロジウム、ルテニウム等を蒸着したり、導電性微粒子を塗り付けたものが用いうる。
【0041】
本発明の太陽電池に用いるレドックス電解質としてはハロゲンイオンを対イオンとするハロゲン化合物及びハロゲン分子からなるハロゲン酸化還元系電解質、フェロシアン酸塩−フェリシアン酸塩やフェロセン−フェリシニウムイオンなどの金属錯体等の金属酸化還元系電解質、アルキルチオール−アルキルジスルフィド、ビオロゲン色素、ヒドロキノン−キノン等の芳香族酸化還元系電解質などをあげることができるが、ハロゲン酸化還元系電解質が好ましい。ハロゲン化合物−ハロゲン分子からなるハロゲン酸化還元系電解質におけるハロゲン分子としては、例えばヨウ素分子や臭素分子等があげられ、ヨウ素分子が好ましい。また、ハロゲンイオンを対イオンとするハロゲン化合物としては、例えばLiI、NaI、KI、CsI、CaI2等のハロゲン化金属塩あるいはテトラアルキルアンモニウムヨーダイド、イミダゾリウムヨーダイド、ピリジニウムヨーダイドなどのハロゲンの有機4級アンモニウム塩等があげられるが、ヨウ素イオンを対イオンとする塩類化合物が好ましい。ヨウ素イオンを対イオンとする塩類化合物としては、例えばヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化トリメチルアンモニウム塩等があげられる。また、レドックス電解質はそれを含む溶液の形で構成されている場合、その溶媒には電気化学的に不活性なものが用いられる。例えばアセトニトリル、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、3−メトキシプロピオニトリル、メトキシアセトニトリル、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、γ−ブチロラクトン、ジエチルカーボネート、ジエチルエーテル、ジメチルカーボネート、1,2−ジメトキシエタン、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキサイド、1,3−ジオキソラン、メチルフォルメート、2−メチルテトラヒドロフラン、3−メトキシ−オキサジリン−2−オン、スルホラン、テトラヒドロフラン、水等が挙げられ、これらの中でも、特に、アセトニトリル、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、3−メトキシプロピオニトリル、メトキシアセトニトリル、エチレングリコール、3−メトキシオキサジリジン−2−オン等が好ましい。これらは単独もしくは2種類以上組み合わせて用いても良い。ゲル電解質の場合はマトリックスとして、ポリアクリレートやポリメタクリレート樹脂などを使用したものが挙げられる。レドックス電解質の濃度は通常0.01〜99重量%で好ましくは0.1〜90重量%程度である。
【0042】
基板上の酸化物半導体薄膜に色素を担持した光電変換素子の電極に、それを挟むように対極を配置する。その間にレドックス電解質を含んだ溶液を充填することにより本発明の太陽電池が得られる。
【0043】
【実施例】
以下に実施例に基づき、本発明を更に具体的に説明するが、本発明がこれらの実施例に限定されるものではない。実施例中、部は特に指定しない限り重量部を、また%は重量%をそれぞれ表す。
【0044】
合成例1
5−ホルミルサリチル酸3部とN−エチルロダニン3.5部をエタノール100部に溶解し、ここにピペラジン無水物1部を添加する。還流で1時間反応させた後、冷却し得られた固体を濾過、洗浄、乾燥し、次いでエタノールで再結晶後、濾過、洗浄、乾燥し化合物(1)を2.5部得た。
吸収極大(メタノール):452nm
【0046】
合成例3
5−ホルミルサリチル酸1部と1,3−ジメチルバルビツール酸1.5部をエタノール100部に加え、還流で2時間反応させた後、冷却し得られた固体を濾過、洗浄、乾燥し、次いでエタノールで再結晶を繰り返した後、濾過、洗浄、乾燥し化合物(23)を1.4部得た。
吸収極大(メタノール):444nm
1H-NMR(ppm:d6-DMSO):3.2 (s, CH3, 6H), 7.05 (d, arom, 1H), 8.11 (s, -CH=, 1H), 8.16 (dd, arom, 1H), 8.91 (d, arom, 1H)
【0047】
合成例4
5−ホルミルサリチル酸1.7部と1,3−ジフェニルチオバルビツール酸3部をエタノール20部に溶解し、ここにピペラジン無水物1部を添加する。還流で2時間反応させた。その後、冷却し得られた固体を濾過、洗浄、乾燥し化合物(29)を3.5部得た。
吸収極大(エタノール):450nm
【0050】
実施例
色素を3×10-4MになるようにEtOHに溶解した。この溶液中に多孔質基板(透明導電性ガラス電極上に多孔質酸化チタンを450℃にて30分間焼結した半導体薄膜電極)を室温で3時間から一晩浸漬し色素を担持せしめ、溶剤で洗浄し、乾燥させ、色素増感した半導体薄膜の光電変換素子を得た。実施例6においては半導体薄膜電極の酸化チタン薄膜部分に0.2M四塩化チタン水溶液を滴下し、室温にて24時間静置後、水洗して、再度450℃にて30分間焼成して得た、四塩化チタン処理半導体薄膜電極を用いて色素を同様に担持した。さらに実施例2および7については色素の担持時に包摂化合物としてコール酸を3×10-2Mとなるように加えて先の色素溶液を調製し、半導体薄膜に担持して、コール酸処理色素増感半導体薄膜を得た。これと挟むように表面を白金でスパッタされた導電性ガラスを固定してその空隙に電解質を含む溶液を注入した。この電解液は実施例1〜2および5〜7においてはエチレンカーボネートとアセトニトリルの6対4の溶液にヨウ素/テトラ−n−プロピルアンモニウムアイオーダイドを0.02M/0.5Mになるように溶解したものを使用した。測定する電池の大きさは実行部分を0.25cm2とした。光源は500Wキセノンランプを用いて、AM1.5フィルターを通して100mW/cmとした。短絡電流、解放電圧、変換効率はポテンシオ・ガルバノスタットを用いて測定した。結果を表6に示す。
【0052】
【表6】
【0053】
【発明の効果】
本発明の色素増感光電変換素子においてサリチル酸部位を有する色素を用いることにより、変換効率の高い太陽電池を提供する事が出来た。
Claims (7)
- 請求項1記載の一般式(11)で表されるメチン系の色素を少なくとも1つ含み、かつ他の金属錯体色素および他の構造を有する有機色素によりなる群から選ばれた色素のうち、2種以上の色素の併用により増感された酸化物半導体微粒子を用いることを特徴とする請求項1に記載の光電変換素子。
- 酸化物半導体微粒子が二酸化チタンを必須成分として含有する請求項1又は2に記載の光電変換素子。
- 酸化物半導体微粒子に包摂化合物の存在下、色素を担持させた請求項1乃至3のいずれか1項に記載の光電変換素子。
- 請求項1乃至4のいずれか1項に記載の光電変換素子を用いる事を特徴とする太陽電池。
- 請求項1記載の一般式(11)で表されるメチン系の色素により増感された酸化物半導体微粒子。
- 酸化物半導体微粒子の薄膜に色素を担持させて得られる請求項1乃至4のいずれか1項に記載の光電変換素子。
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