JP4333914B2 - 偏光回折素子の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、光波の回折と偏光変換機能を併せ持つ偏光回折素子の製造に好適である複屈折誘起材料重合体と、この重合体を用いた偏光回折素子、液晶配向膜に関するものである。
マスク露光や2光束の干渉縞を利用して回折格子やホログラフィーを作製する材料としては、写真などにも使われているようなハロゲン化銀感光材料、ゼラチン膜を重クロム酸アンモニウム水溶液に浸して感光性を付与した重クロム酸ゼラチン、半導体集積回路などの作製に用いるフォトレジスト、モノマーの光重合による屈折率変調を利用したフォトポリマーなどが挙げられる。このような材料を用いた回折格子やホログラムは、光ディスク、CDなどで各種の信号を取り出すための光ピックアップ素子、バーコードスキャナーなどのビームを走査するための素子、情報処理関連ではホログラフィックメモリー、光インターコネクトなどへの応用が検討され、実際に利用もされてきている。 しかしながら、これらの素子では屈折率の変調や表面の凹凸を利用しており、光波の回折と偏光変換機能を併せ持つ偏光回折素子を作製することはできない。
光波の回折と偏光変換機能を併せ持つ偏光回折素子を作製するには、複屈折性や光軸の向きなど光学的異方性の周期構造を高度に制御する必要がある。このようなことが可能な材料として、ネガ型のフォトレジストであるポリビニルシンナメート(PVCi)が知られている。PVCiのフィルムに直線偏光性の紫外光を照射すると、この照射光の電界振動方向に対して平行方向となる配置のシンナモイル基の炭素−炭素2重結合が選択的に光2量化し複屈折を生じるようになる。これを利用すれば、光学的異方性を周期的に制御することは可能であるが、誘起される複屈折は0.01以下と非常に小さく実用性に乏しい。
また、その他の代表的な材料として、アゾベンゼンを含む高分子材料を用いることが検討されている。アゾベンゼン分子は光や熱のような外部からの刺激によってシス体とトランス体の間で光異性化が起こり、このことを利用して分子配向を制御することができ周期的な分子配向制御も光照射によって行うことが可能である。しかしながら、従来検討されてきた、アゾベンゼンを含む高分子材料では、光学的異方性の発現があまり大きくないだけでなく、熱や光などの外場の影響によって特性が変化し、高い安定性を要求される光デバイスへの応用が困難であった。
また、本発明者もこれまで複屈折誘起材料としてメソゲン成分として多用されているビフェニル、ターフェニル、フェニルベンゾエートなどの置換基と感光性基を結合した構造を含む側鎖を有し、該側鎖が単炭化、アルキルエーテルなどの屈曲性部分を介して、炭化水素、アクリレート、メタクリレート、シロキサンなど主鎖に結合した構造の繰り返し単位とする単一重合体を提案している。 この複屈折誘起材料では、基板上に塗布(スピンコート)して製膜した後、この膜に直線偏光の紫外線を照射すると、照射直線偏光の電界振動方向に沿って配置されているシンナモイル基(または、その誘導体基)などの感光性基の2量化が選択的に起こり、続く加熱による分子運動により光2量化を起こさなかった側鎖も光2量化した側鎖と同じ方向に配列し、高分子塗布膜全体において照射した直線偏光の電界振動方向に側鎖が配列する材料である。該材料を用いて光波の回折と偏光変換機能を併せ持つ偏光回折素子を作製する方法として、レーザー光のような干渉性の良い偏光性の光束を用いた2光束干渉を用いて照射する方法ないしは、所望の周期ピッチを有する遮光性のマスクを用い、直線偏光性の光を照射する方法が挙げられる。
更に、本発明者は、複屈折誘起材料としてメソゲン成分として多用されているビフェニル、ターフェニル、フェニルベンゾエートなどの置換基と感光性基を結合した構造を含む側鎖を有し、該側鎖が単炭化、アルキルエーテルなどの屈曲性部分を介して、炭化水素、アクリレート、メタクリレート、シロキサンなど主鎖に結合した構造の繰り返し単位と非液晶性の繰り返し単位との共重合体を提案している。この共重合体では、感光性基を有する側鎖の光異性化が光2量化より優位となっている直線偏光の照射エネルギー量が比較的小さい場合、光異性化したZ異性体より光異性化しなかった側鎖の方が高い配向性を有していることから、照射後の加熱すると、分子運動により照射した直線偏光の電界振動方向に対して垂直方向に膜全体が配向するようになる。更に、直線偏光の紫外線を照射し、光2量化が光異性化より優位となる照射エネルギー量では、光2量化した側鎖に沿って未反応側鎖が配向するため直線偏光の電界振動方向に膜全体が配向するようになる。前述の単独重合体でも、直線偏光の照射エネルギー量が比較的小さいときには、照射した直線偏光の電界振動方向に対して垂直方向に膜全体が配向する傾向は見られるが、側鎖同士のhead−to−tailの会合(J会合)ないしはhead−to−headの会合(H会合)の形成により分子配向が阻害され、配向度が高められないことが分かっている。この点に鑑みて、非液晶性の繰り返し単位は、側鎖同士の会合を抑制するために共重合体したものであり、非液晶性の繰り返し単位としてメタクリル酸メチルなどを共重合比にして1:1程度の比率で共重合すると、直線偏光性の紫外光の照射量によって分子配向方向を90°変化できる材料が実現できている。しかしながら、このような共重合体では、共重合した非液晶性の繰り返し単位が分子レベルでの屈曲性に富むためか膜全体の配向度が低下するという問題点があった。
偏光回折素子においては、分子配向構造を有する高分子層のジョーンズ法による解析で知られているように、高い回折効率を得るには、位相差を大きくした方が有利であり、膜厚を厚くするか材料自体の異方性を大きくすることにより回折効率を高めることができる。 このため、配向度のあまり高くない、前述の共重合体を用いて偏光回折素子を作製した場合、膜厚を厚くすることによりある程度回折効率を高めることができるが、膜厚が大きくなると膜自身の光吸収により膜内部まで照射光が届かず、その部分での光2量化密度が低くなる。このことにより、未反応側鎖の配向規制力が低下し、偏光回折素子を作製した場合にヘイズが発生の原因となり素子の性能を低下させてしまう問題や膜厚が厚くなることから材料コストが大きくなってしまうことが問題であった。
R.C.Jones,J.Opt.Soc.Am.,31,488,1941
このような問題に鑑みて、本発明は、熱や光などの外部からの刺激に対して安定性に優れ、高い光波の回折と偏光変換機能を併せ持つ偏光回折素子を低コストで作製することのできる複屈折誘起材料重合体を提供しようとするものである。
複屈折誘起材料重合体に光照射と加熱冷却する操作を含む工程によって作製され、該複屈折誘起材料重合体の液晶性メソゲンが周期的な配向構造をなす偏光回折素子において、複屈折誘起材料重合体に化学式1で示される構造を有する化合物を用いることによって上記課題を解決することができる。
本発明により、熱や光などの外部からの刺激に対して安定性に優れ、高い光波の回折と偏光変換機能を併せ持つ偏光回折素子を低コストで作製することのできる複屈折誘起材料重合体を提供することができる。また、同材料を用いて、耐熱性に優れる液晶配向膜を作製することができる。
以下に、本発明の詳細を説明する。 本発明者等が、鋭意研究を行った結果、複屈折誘起材料重合体に光照射と加熱冷却する操作を含む工程によって作製される光波の回折と偏光変換機能を併せ持つ偏光回折素子の製造法において、複屈折誘起材料重合体に化学式1で示される構造を有する材料を用いることによって前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。 該複屈折誘起材料重合体は、メソゲン成分として多用されているビフェニル、ターフェニル、フェニルベンゾエートなどの置換基と感光性基を結合した構造を含む側鎖を有し、該側鎖が単炭化、アルキルエーテルなどの屈曲性部分を介して、炭化水素、アクリレート、メタクリレート、シロキサンなど主鎖に結合した構造の繰り返し単位とN−フェニルマレインイミドないしはその誘導体を繰り返し単位とする共重合体である。(図1:化学式1)
この共重合体では、N−フェニルマレインイミドないしはその誘導体を共重合している。N-フェニルマレインイミドないしはその誘導体は、適当な比率で共重合体として主鎖に導入すると、分子配向能を低下させることなく側鎖の会合の形成を抑制でき、直線偏光の照射エネルギー量が比較的小さい場合の照射した直線偏光の電界振動方向に対して垂直方向の配向を達成できることが確認された。このN−フェニルマレインイミドないしはその誘導体は、その共重合の比率が大きくなるとJ会合の形成を抑制できるものの、電界振動方向に対して垂直方向の配向のみならず電界振動方向への配向も阻害してしまう。共重合比率が小さすぎるとJ会合の形成を抑制する効果が充分得られず電界振動方向に対して垂直方向の配向を達成できることができない。これらの観点から、N−フェニルマレインイミドないしはその誘導体の共重合比率は、化学式(1)においてx:y=95〜50:5〜50、更に好ましくは、x:y=90〜70:10〜30である。
側鎖の会合の形成を抑制する目的で非液晶性の繰り返し単位としてメタクリル酸メチルなどを共重合する場合には、共重合比にして1:1程度の高い比率で共重合する必要があり、膜全体の配向度が低下するという問題点があったが、N−フェニルマレインイミドないしはその誘導体では、その分子構造が比較的剛直なためか効率よく側鎖の会合を抑制できる。このことにより、比較的低い共重合比でも側鎖の会合を充分に抑制する効果が得られ複屈折誘起材料重合体の分子配向能を低下することがない。結果として、直線偏光の照射エネルギー量が比較的小さい場合の照射直線偏光の電界振動方向に対して垂直方向の配向および更に直線偏光の紫外線を照射した場合の照射直線偏光の電界振動方向に対して平行方向の配向とも高い配向度が得られ、高い光波の回折と偏光変換機能を併せ持つ偏光回折素子を製造することができる。
複屈折を誘起するための光異性化反応ないしは光2量化反応を進めるには、感光性基の部分が反応し得る波長の光の照射を要する。この波長は、化学式1で示された−Rの種類によっても異なるが、一般に200−500nmであり、中でも250−400nmの有効性が高い場合が多い。
光波の回折と偏光変換機能を併せ持つ偏光回折素子の製造法としては、本発明の複屈折誘起材料重合体を溶媒に溶解した液を透明基板上に塗布した後に乾燥し、該膜をレーザー光のような干渉性の良い偏光性の光束を用いた2光束干渉を用いて照射する方法ないしは所望の周期ピッチを有する遮光性のマスクを用いて直線偏光性の光を照射する方法が挙げられる。 遮光性のマスクを用いる方法としては、所望の周期ピッチを有する遮光性のマスクを少なくとも2回用い、少なくとも2つの領域に偏光特性ないしは強度の異なるの直線偏光性の光を照射する方法と所望の周期ピッチを有する遮光性のマスクを用いて直線偏光性の光を照射し、次いで遮光性のマスクを用いること無しに直線偏光性の光を照射することによって、所望の周期ピッチで照射エネルギー量の異なる領域とし、分子配向方向が90°異なる周期構造を付与する方法が挙げられる。遮光性のマスクを用いる方法としては後者の方が装置を簡略化できる利点がある。
この照射後の分子運動による配向は、塗布膜を加熱することにより促進される。塗布膜の加熱温度は、光反応した部分の軟化点より低く、光反応しなかった側鎖および感光性基を有さない側鎖部分の軟化点より高いことが望ましい。また、加温下(室温からTi+5℃まで)で照射することにより配向を促進することができる。ここで、Tiは複屈折誘起材料重合体の液晶相から等方相へ変化するときの相転移温度を指す。このように照射後に加熱し未反応側鎖を配向させた膜または加熱下で照射し配向させた膜を該材料の軟化点温度以下まで冷却すると分子が凍結される。更に、軟化点温度以下まで冷却した塗布膜に紫外線を照射することにより未反応の感光性基の光反応を促進させ、フィルム中の配向を強固に固定することができ、耐熱性、光安定性に優れた光波の回折と偏光変換機能を併せ持つ偏光回折素子とすることができる。
このような複屈折誘起材料重合体を用いた光波の回折と偏光変換機能を併せ持つ偏光回折素子は、周期的に分子配向構造を制御した光学的に透明な機能性高分子層である。このような分子配向構造を有する高分子層の光学特性は、ジョーンズ法(R.C.Jones,J.Opt.Soc.Am.,31,488,1941)によって解析することができる。例えば、図2に示す配向構造を有する高分子層において、入射光として直線偏光を考えた場合、±1次光として回折されると同時に偏光が90°回転し出力され、また、入射光として右回り円偏光を考えた場合は、±1次光として回折されると同時に左回り円偏光として出力されることが分かる。このようにして、周期的に変化した分子配向構造を有する高分子層を用いることによって、回折機能と偏光変換機能が複合した偏光回折素子を形成することが可能であり、どのような回折効率と偏光変換機能を持たせるかは、その周期構造と異方性の大きさによって制御可能である。
また、本発明の化学式1で示される構造を有する材料をガラス基板に塗布し、直線偏光性の光を含む光を照射すると、照射光の進行方向に対して垂直方向かつ照射した直線偏光性の光の電界振動方向に対して平行方向で感光性基の光異性化ないしは光2量化が選択的に進み、結果として膜表面が異方性となる。この膜に、液晶分子が接触すると、膜との相互作用により液晶分子が配向するようになる。直線偏光の照射エネルギー量が比較的小さい場合には、照射直線偏光の電界振動方向に対して垂直方向に液晶分子が配向するようになり、更に直線偏光の紫外線を照射した場合には、照射直線偏光の電界振動方向に対して平行方向に液晶分子が配向するようになる。本発明の材料では、主鎖に比較的剛直な構造を有しているN−フェニルマレインイミドないしはその誘導体を共重合しているため、メタクリル酸メチルなど分子的に屈曲性に富む構造を共重合した場合に比べてガラス転移温度を高められることから、耐熱性に優れた液晶配向膜を得ることができる。このような液晶配向膜は、液晶表示装置におけるノンラビング光配向膜や液晶分子を配向させた光学補償フィルムを製造する場合の液晶配向膜として有効である。
本発明の光波の回折と偏光変換機能を併せ持つ偏光回折素子の実施例または液晶配向膜の実施例において用いた感光性(複屈折誘起材料)重合体の原料化合物に関する合成方法を以下に示す。(単量体1) 4,4’−ビフェニルジオールに、アルカリ条件下で1,6−ジブロモヘキサンを反応させ、4−(6−ブロモヘキシルオキシ)−4’−ヒドロキシビフェニルを合成した。次いで、リチウムメタクリレートを反応させ、6−(4’−ヒドロキシビフェニル−4−イルオキシ)−1−ヘキシルメタクリレートを合成した。最後に、塩基性の条件下において、4−メトキシ塩化シンナモイルを加え、化学式2に示されるメタクリル酸エステルを合成した。
Figure 0004333914
(単量体2) 4,4’−ビフェニルジオールに、アルカリ条件下で1,6−ジブロモヘキサンを反応させ、4−(6−ブロモヘキシルオキシ)−4’−ヒドロキシビフェニルを合成した。次いで、リチウムメタクリレートを反応させ、6−(4’−ヒドロキシビフェニル−4−イルオキシ)−1−ヘキシルメタクリレートを合成した。最後に、塩基性の条件下において、4−メチル塩化シンナモイルを加え、化学式3に示されるメタクリル酸エステルを合成した。
Figure 0004333914
(重合体1) 単量体1(2.25mmol)と市販のN−フェニルマレインイミド(0.249mmol)をアニソール12mlに溶解し、反応開始剤としてAIBN(アゾビスイソブチロニトリル)を添加して重合することにより感光性の重合体1を得た。この重合体1の共重合比はx:y=82:18であり、液晶性を呈した。
(重合体2) 単量体2(2.20mmol)と市販のN−フェニルマレインイミド(0.252mmol)をアニソール12mlに溶解し、反応開始剤としてAIBN(アゾビスイソブチロニトリル)を添加して重合することにより感光性の重合体2を得た。この重合体2の共重合比はx:y=81:19でありは、液晶性を呈した。(重合体3) 単量体1(2.25mmol)をアニソール12mlに溶解し、反応開始剤としてAIBN(アゾビスイソブチロニトリル)を添加して重合することにより感光性の重合体3を得た。この重合体3は、液晶性を呈した。(重合体4) 単量体1(2.34mmol)と市販のN−フェニルマレインイミド(0.073mmol)をアニソール12mlに溶解し、反応開始剤としてAIBN(アゾビスイソブチロニトリル)を添加して重合することにより感光性の重合体4を得た。この重合体4の共重合比はx:y=96:4であり、液晶性を呈した。
(重合体5) 単量体1(2.10mmol)と市販のN−フェニルマレインイミド(1.96mmol)をアニソール12mlに溶解し、反応開始剤としてAIBN(アゾビスイソブチロニトリル)を添加して重合することにより感光性の重合体5を得た。この重合体5の共重合比はx:y=53:47であり、液晶性を呈した。
(重合体6) 単量体1(2.31mmol)と市販のメタクリル酸メチル(2.35mmol)をTHF12mlに溶解し、反応開始剤としてAIBN(アゾビスイソブチロニトリル)を添加して重合することにより感光性の重合体6を得た。この重合体6の共重合比はx:y=51:49であり、液晶性を呈した。
実施例1から実施例3は、本発明の複屈折誘起材料重合体の膜に直線偏光性の紫外線を照射したときの配向性を評価し、更に、遮光性のマスクを用いて光波の回折と偏光変換機能を併せ持つ偏光回折素子を作製した実施例である。
重合体1をジクロロエタンに1重量%の濃度で溶解し、ガラス基板上にスピンコーターを用いて約0.3μmの厚みとなるよう塗布した。このフィルムに高圧水銀灯からの紫外光を、グランテーラープリズムを介して直線偏光性として種々の時間照射した後、180℃で熱処理したときの偏光UV−vis吸収スペクトル変化から算出した配向度(S)〔S=(A//−A)/(Alarger+2Asmaller)、ここで、A//は、照射した直線偏光性の紫外光の電界振動方向に対して平行方向の吸光度、Aは、照射した直線偏光性の紫外光の電界振動方向に対して垂直方向の吸光度、Alargerは、A//またはAのうち吸光度の大きい方、AsmallerはA//またはAのうち吸光度の小さい方である。〕を図3に示す。この図3において配向度が負の値の場合は、照射した直線偏光性の紫外光の電界振動方向に対して垂直方向、配向度が正の値の場合は、照射した直線偏光性の紫外光の電界振動方向に対して平行方向にメソゲン成分が配向していることを示している。図3より、直線偏光の照射エネルギー量が比較的小さいときには照射した直線偏光の電界振動方向に対して垂直方向の配向を示し、その配向度(S)は−0.6以上の高い値が得られ、更に、直線偏光の照射エネルギー量が大きくなると照射した直線偏光の電界振動方向に対して平行方向の配向を示し、その配向度(S)も直線偏光の照射エネルギー量が比較的小さい時と同様に0.6以上の高い値が得られることが分かった。
以下は、この重合体1を用いて偏光回折素子を作製した例である。 重合体1をジクロロメタンに1重量%の濃度で溶解し、ガラス基板上にスピンコーターを用いて約0.3μmの厚みとなるよう塗布した。このフィルム上に40μmピッチ(20μmの透過部と20μmの非透過部)の遮光性マスクを配置し、マスクの格子方向に対して電界振動方向が45°である高圧水銀灯からの紫外光を、グランテーラープリズムを介して直線偏光性とした光を1.5J/cm2照射した。続いて、遮光性マスクを取り除いて0.3J/cm2照射した。照射後、180℃で熱処理し、最後に高圧水銀灯からの紫外光を、グランテーラープリズムを介さず3.0J/cm照射して配向を固定し偏光回折素子を作製した。作製された偏光回折素子を偏光顕微鏡で観察したところ図2の分子配向構造をとっていることが確認された。
このように作製された偏光回折素子に直線偏光性のHe−Neレーザー光(波長:633nm)を入射して偏光変換機能の特性を調べた。偏光回折素子の格子方向に対して、He−Neレーザー光の電界振動方向を平行になるようにして入射したとき、±1次回折光の偏光状態は、入射光の電界振動方向に対して電界振動方向が90°回転した直線偏光となることが確認された。また、入射光の偏光を右回り円偏光としたときには、±1次回折光の偏光状態は、左回り円偏光であることが確認され、これら偏光変換の特性は前述のジョーンズ法を用いた理論計算結果と一致した。作製された偏光回折素子は、130℃で1週間以上に渡り放置しても特性の変化は見られず、分子配向は固定化されており実用的な耐熱性を有していることが確認された。また、回折効率は、約5%と高い値を示し、実用に供するに充分な回折効率を有していることがわかった。
重合体2をジクロロメタンに1重量%の濃度で溶解し、ガラス基板上にスピンコーターを用いて約0.3μmの厚みとなるよう塗布し、このフィルムに高圧水銀灯からの紫外光を、グランテーラープリズムを介して直線偏光性として種々の時間照射した後、180℃で熱処理したときの配向度の変化は、重合体1と同様に、直線偏光の照射エネルギー量が比較的小さいときには照射した直線偏光の電界振動方向に対して垂直方向の配向示し(配向度(S)は、−0.6以上)、直線偏光の照射エネルギー量が大きくなると照射した直線偏光の電界振動方向に平行方向に配向する(配向度(S)は、0.6以上)ことが分かった。この重合体2でも、重合体1と同様に遮光性のマスクを介して偏光照射後、遮光性のマスクを取り除いて偏光照射する操作のみでジョーンズ法を用いた理論計算結果と一致する偏光回折素子を作製することができた。回折効率は、約5%と高い値を示した。
重合体2をジクロロメタンに0.15重量%の濃度で溶解し、ガラス基板上にスピンコーターを用いて約600オングストロームの厚みとなるよう塗布し、このフィルムに高圧水銀灯からの紫外光を、グランテーラープリズムを介して直線偏光性として種々の時間照射して作製した基板2枚を用いて、厚さ5.0μmのアンチパラレル型の液晶セル作製して液晶E7〔メルクジャパン(株)製〕を充填した。この液晶セルを直交ニコル、で観察したところ、液晶分子の配向が確認され、直線偏光の照射エネルギー量が比較的小さいときには照射した直線偏光の電界振動方向に対して垂直方向の配向示し、直線偏光の照射エネルギー量が大きくなると照射した直線偏光の電界振動方向に平行方向に配向することが分かった。この液晶セルを、100℃雰囲気中に100時間放置したところ、液晶の配向性は保たれ、高い耐熱性を有していることが確認された。
(比較例1) 重合体3をジクロロメタンに1重量%の濃度で溶解し、ガラス基板上にスピンコーターを用いて約0.3μmの厚みとなるよう塗布した。このフィルムに高圧水銀灯からの紫外光を、グランテーラープリズムを介して直線偏光性として種々の時間照射した後、180℃で熱処理したときの偏光UV−vis吸収スペクトル変化から算出した配向度を図4に示す。図4より、直線偏光の照射エネルギー量が大きくなると照射した直線偏光の電界振動方向に対して平行方向に配向する(配向度(S)は、0.7)が、直線偏光の照射エネルギー量が比較的小さいときには配向度(S)は、−0.2と小さな値となった。これは、加熱後の偏光UV−vis吸収スペクトルの最大吸収波長が長波長側にレッドシフトしていることから、加熱時に側鎖同士のhead−to−tailの会合(J会合)の形成により分子配向が阻害されていると考えられる。
(比較例2) 重合体4をジクロロメタンに1重量%の濃度で溶解し、ガラス基板上にスピンコーターを用いて約0.3μmの厚みとなるよう塗布した。このフィルムに高圧水銀灯からの紫外光を、グランテーラープリズムを介して直線偏光性として種々の時間照射した後、180℃で熱処理したときの偏光UV−vis吸収スペクトル変化から算出した配向度は、重合体3と同様に直線偏光の照射エネルギー量が大きいときには照射した直線偏光の電界振動方向に配向する(配向度(S)は、0.6であった)が、直線偏光の照射エネルギー量が比較的小さいときには配向度は−0.3と小さな値となった。これも重合体3と同様に、加熱後の偏光UV−vis吸収スペクトルの最大吸収波長が長波長側にレッドシフトしていることから、加熱時に側鎖同士のhead−to−tailの会合(J会合)の形成により分子配向が阻害されたと考えられる。
(比較例3) 重合体5をジクロロメタンに1重量%の濃度で溶解し、ガラス基板上にスピンコーターを用いて約0.3μmの厚みとなるよう塗布した。このフィルムに高圧水銀灯からの紫外光を、グランテーラープリズムを介して直線偏光性として種々の時間照射した後、180℃で熱処理したときの偏光UV−vis吸収スペクトル変化から算出した配向度を図5に示す。図5より、照射エネルギー量によらず大きな配向度(S)は得られなかった。照射エネルギー量が比較的小さい場合での加熱後の偏光UV−vis吸収スペクトルの最大吸収波長はシフトしていないことから、加熱時の側鎖同士のhead−to−tail会合(J会合)は抑制されるものの分子配向が阻害されたと考えられる。 比較例2および比較例3から、N−フェニルマレインイミドないしはその誘導体の共重合比率は、共重合比率が小さすぎるとJ会合の形成を抑制する効果が充分得られず電界振動方向に対して垂直方向の配向を達成できることができない。共重合の比率が大きくなるとJ会合の形成を抑制できるものの、電界振動方向に対して垂直方向の配向のみならず電界振動方向への配向も阻害してしまうことが判明した。このことから、良好な配向特性を得るには、N−フェニルマレインイミドないしはその誘導体の共重合比率を適宜調整する必要があることが分かった。
(比較例4) 重合体6をジクロロメタンに1重量%の濃度で溶解し、ガラス基板上にスピンコーターを用いて約0.3μmの厚みとなるよう塗布した。このフィルムに高圧水銀灯からの紫外光を、グランテーラープリズムを介して直線偏光性として種々の時間照射した後、180℃で熱処理したときの偏光UV−vis吸収スペクトル変化から算出した配向度は、重合体1と同様に、直線偏光の照射エネルギー量が比較的小さいときには照射した直線偏光の電界振動方向に対して垂直方向の配向を示し、配向度(S)は、−0.45、直線偏光の照射エネルギー量が大きくなると照射した直線偏光の電界振動方向に対して平行方向に配向を示し、配向度(S)は、0.48であることが分かった。 この重合体6でも、重合体1と同様に偏光回折素子を作製することができた。この偏光回折素子は、ジョーンズ法を用いた理論計算結果と一致する特性を有していたが、回折効率は、約2.7%と低かった。 これは前述したように、共重合したメタクリル酸メチルの繰り返し単位が分子レベルでの屈曲性に富むため膜全体の配向度を低下させたためと考えられる。
本発明の重合体の化学構造 実施例1の作製した偏光回折素子の分子配向構造の模式図 実施例1の重合体1における直線偏光性紫外光の時間照射と配向度の関係 比較例1の重合体3における直線偏光性紫外光の時間照射と配向度の関係 比較例3の重合体5における直線偏光性紫外光の時間照射と配向度の関係
符号の説明
10 配向構造を有する高分子層
11、13 照射した直線偏光性の光の電界振動方向に対して垂直方向に配向した配向層
12、14 照射した直線偏光性の光の電界振動方向に対して平行方向に配向した配向層

Claims (3)

  1. 化学式1に示される構造を有する複屈折誘起材料重合体に、直線偏光性成分を含む光を照射して、分子配向方向が90°異なる周期的な分子配向構造を付与したことを特徴とする偏光回折素子の製造方法。
    Figure 0004333914
  2. 請求項1の偏光回折素子の製造方法として、前記複屈折誘起材料重合体を溶媒に溶解した液を透明基板上に塗布した後に乾燥し、干渉性の良い偏光性の光束を用いた2光束干渉を用いて照射することを特徴とする偏光回折素子の製造方法。
  3. 請求項1の偏光回折素子の製造方法として、前記複屈折誘起材料重合体を溶媒に溶解した液を透明基板上に塗布した後に乾燥し、所望の周期ピッチを有する遮光性のマスクを用いて直線偏光性の光を照射することを特徴とする偏光回折素子の製造方法。
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