以下、本発明の実施の形態について説明する。
(センサの実施形態)
本発明のセンサに係る第1実施形態は、ピエゾ抵抗素子と、前記ピエゾ抵抗素子に沿って伸びており、且つ前記ピエゾ抵抗素子を支えるための支持部材とを備え、前記ピエゾ抵抗素子のうち湾曲する部分に対応する前記支持部材の一部に係る第1の厚さが、前記ピエゾ抵抗素子のうち湾曲する部分に対応しない前記支持部材の他の一部に係る第2の厚さよりも薄い。
本発明のセンサに係る第1実施形態によれば、ピエゾ抵抗素子の電気抵抗値の変化を検出することで、当該ピエゾ抵抗素子或いは支持部材がどの程度の力にて対象物に押し付けられているかを検出することが可能となる。例えば、第1実施形態に係るセンサは、例えば歪み検出センサとして用いられてもよいし、或いはピエゾ抵抗素子を用いて何らかのパラメータを測定する各種センサとして用いられる。
第1実施形態では特に、支持部材の一部における第1の厚さは支持部材の他の一部における第2の厚さよりも薄い。より具体的には、ピエゾ抵抗素子の湾曲する部分(或いは、湾曲させたい部分)に対応する一部の支持部材の厚さを第1の厚さとし、他方ピエゾ素子の湾曲する部分に対応しない(即ち、ピエゾ抵抗素子の湾曲しない或いは湾曲させたくない部分に対応する)他の一部の支持部材の厚さを第2の厚さとしている。尚、本発明における「湾曲する部分に対応する支持部材」とは、ピエゾ抵抗素子の一部が湾曲する場合に、それに伴って湾曲し得る少なくとも一部の支持部材を示す趣旨である。
このため、この第1の厚さを有する支持部材の部分は第2の厚さを有する支持部材の部分と比較してくぼんでいるため、相対的に湾曲しやすく(或いは、歪みやすく或いは曲がりやすく)なる。従って、当該第1の厚さを有する支持部材の部分において、支持部材は局所的に湾曲するため、ピエゾ抵抗素子においても局所的に湾曲する。これにより、歪み等を高精度に検出することが可能となる。
加えて、第1の厚さと第2の厚さとを有する支持部材を用いることでピエゾ抵抗素子を局所的に湾曲させることができるため、支持部材を必要以上に細くする必要がないという利点を有する。言い換えれば、支持部材を太く(或いは、幅を広く)しても、ピエゾ抵抗素子を局所的に湾曲させることが可能となる。このため、相対的に太い支持部材の上に比較的容易に配線を設けることが可能となり、またセンサ自体の強度も減少しないという利点を有する。
以上の結果、本発明のセンサに係る第1実施形態によれば、相応の幅を有する支持部材を用いて歪みを高精度に検出することが可能となる。
本発明のセンサに係る第2実施形態は、ピエゾ抵抗素子と、前記ピエゾ抵抗素子に沿って伸びており、且つ前記ピエゾ抵抗素子を支えるための支持部材とを備え、前記ピエゾ抵抗素子が配置される領域に対応する前記支持部材の一部に係る第1の厚さが、前記ピエゾ抵抗素子が配置される領域に対応する前記支持部材の他の一部に係る第2の厚さよりも薄い。
本発明のセンサに係る第2実施形態によれば、上述した第1実施形態に係るセンサと同様に、第1の厚さと第2の厚さとを有する支持部材を用いているため、歪み等を高精度に検出することが可能となる。加えて、支持部材を必要以上に細くする必要がないと言う利点を有する。このため、支持部材上に比較的容易に配線を設けることが可能となる。特に、例えば局所的に配置されるピエゾ抵抗素子の全体を好適に湾曲させたい場合等において、第2実施形態に係る記録再生ヘッドの如く、ピエゾ抵抗素子が配置される領域に対応する支持部材の厚さを相対的に薄くすればよい。これにより、ピエゾ抵抗素子を好適に或いは局所的に湾曲させることができ、歪みを高精度に検出することができる。
即ち、本発明のセンサに係る第2実施形態によれば、相応の幅を有する支持部材を用いて歪みを高精度に検出することが可能となる。
本発明のセンサに係る第1又は第2実施形態の一の態様は、前記ピエゾ抵抗素子のうち湾曲する部分の厚さが、前記ピエゾ抵抗素子のうち湾曲しない部分の厚さよりも薄い。
この態様によれば、ピエゾ抵抗素子自体も異なる厚さを有しているため、ピエゾ抵抗素子自体も局所的に湾曲しやすくなる。即ち、厚さが薄くなっている部分において、ピエゾ抵抗素子も局所的に湾曲しやすくなる。従って、より高精度に歪みを検出することが可能となる。
本発明のセンサに係る第1又は第2実施形態の他の態様は、前記ピエゾ抵抗素子及び前記支持部材の少なくとも一方はダイヤモンドを含んでなる。
この態様によれば、センサの強度をより高くすることが可能となる。加えて、ダイヤモンドは、少しの歪みに対しても高精度にその電気抵抗値が変化するため、当該ダイヤモンドをピエゾ抵抗素子として用いることでセンサの精度をより高くすることが可能となる。
上述の如くダイヤモンドを含んでなるセンサの態様では、前記ダイヤモンドの少なくとも一部は、不純物がドーピングされているように構成してもよい。
このように構成すれば、ダイヤモンド自体にある程度の導電性を与えることができ(即ち、低抵抗なダイヤモンドを生成することができ)、当該センサを後述する記録再生ヘッドにおいて有効に利用することが可能となる。
尚、この態様においてドーピングする不純物は、例えばボロンであってもよいし或いは他の原子等に係る不純物であってもダイヤモンドに導電性を生じさせ得る不純物であればよい。
本発明のセンサに係る第1又は第2実施形態の他の態様は、前記第1の厚さを有する前記一部の支持部材と前記第2の厚さを有する前記他の一部の支持部材との境界部分は丸みを帯びた形状である。
この態様によれば、厚さの相違に起因して生じる角部分を丸める(即ち、滑らかにする)ことができる。従って、角部分から亀裂が生じることで支持部材(或いは、ピエゾ抵抗素子や更にはセンサ自体)が破損する不都合を効果的に防止することが可能となる。
尚、この角部分については、後述の実施例において図面を参照しながらより詳細に説明する。
本発明のセンサに係る第1又は第2実施形態の他の態様は、前記第1の厚さを有する前記一部の支持部材と前記第2の厚さを有する前記他の一部の支持部材との間における前記支持部材の厚さが、前記第1の厚さから前記第2の厚さへ又は前記第2の厚さから前記第1の厚さへ連続的に又は段階的に変化する。
このように構成すれば、例えば厚さが連続的に変化する結果として或いは厚さが複数段階に分けて順に変化する結果として支持部材(或いは、ピエゾ抵抗素子)の厚さを変化させることが可能となる。
(製造方法の実施形態)
本発明の製造方法に係る実施形態は、上述した本発明のセンサに係る第1又は第2実施形態(但し、その各種態様を含む)を製造する製造方法であって、前記支持部材を形成するための鋳型であって、前記第1の厚さを有する前記支持部材を形成するための所定の物理形状を有する前記鋳型を形成する第1形成工程と、前記形成された鋳型を用いて前記支持部材を形成する第2形成工程とを備える。
本発明の製造方法に係る実施形態によれば、上述した第1又は第2実施形態に係るセンサを好適に製造することが可能となる。
具体的には、先ず第1形成工程において、支持部材(或いは、更にピエゾ抵抗素子)を形成するための鋳型を形成する。特にこの鋳型には、第1の厚さを有する支持部材と第2の厚さを有する支持部材とを形成するための、所定の物理形状が形成されている。そして後述するように、第2形成工程において、この物理形状が形成されている鋳型の部分において相対的に薄い第1の厚さを有する支持部材が形成され、この物理形状が形成されていない鋳型の部分において相対的に厚い第2の厚さを有する支持部材が形成される。
以上の結果、本実施形態に係る製造方法によれば、上述した本実施形態に係る記録再生ヘッドを効率的に且つ比較的容易に製造することが可能となる。
もちろん、異なる厚さ(例えば、第1の厚さと第2の厚さと)を有するピエゾ抵抗素子を製造する場合には、上述した各工程と同様の手順にて製造することができることは言うまでもない。
本発明の製造方法に係る実施形態の一の態様は、前記支持部材はダイヤモンドを含んでおり、前記第2形成工程において、前記ダイヤモンドの選択成長を行うことで前記支持部材を形成する。
この態様によれば、第1の厚さの部分を例えば物理的に削除したり、或いは通常のセンサの製造工程に特別な工程を追加したりして支持部材を製造する必要がなくなる。このため、比較的容易に上述した第1又は第2実施形態に係るセンサを製造することが可能となる。
(記録再生ヘッドの実施形態)
本発明の記録再生ヘッドに係る実施形態は、上述した本発明のセンサに係る第1又は第2実施形態(但し、その各種態様を含む)と、前記支持部材に立設される突起部とを備える。
本発明の記録再生ヘッドに係る実施形態によれば、支持部材に、突起部が立設されている。例えば、該突起部の先端が後述する誘電体記録媒体に対向するように立設されている。そして、後述の記録装置及び再生装置における記録再生ヘッドとして用いられ、情報の記録及び再生動作を行う。
本実施形態に係る記録再生ヘッドは特に、上述した第1又は第2実施形態に係るセンサを備えている。従って、上述したようにピエゾ抵抗素子の歪みを高精度に検出することが可能であるため、本実施形態に係る記録再生ヘッドがどれだけの力で例えば誘電体記録媒体に押し付けられているか或いは接触しているかを検出することが可能となる。このため、所望の力で誘電体記録媒体に押し付けられる或いは接触するように記録再生ヘッドを動作させることが可能となる。例えば、記録再生ヘッドが必要以上に強く誘電体記録媒体に押し付けられるような不都合を防ぐことができ、例えば突起部の損傷や磨耗を防ぐことができる。
加えて、上述したように支持部材を必要以上に細くする必要がないため、支持部材上に比較的容易に配線を設けることが可能となり、また記録再生ヘッド自体の強度も減少しないという利点を有する。
以上の結果、本発明の記録再生ヘッドに係る実施形態によれば、上述した本発明のセンサに係る第1及び第2実施形態が有する各種利益を享受することができるとともに、突起部の損傷や磨耗を防ぐことができる。
尚、支持部材と突起部とは、両者が一体となる形状であってもよい。即ち、支持部材と突起部とは、単一の部材から構成されていても、その形状の相違から支持部材と突起部とを区別することができれば、本発明の範囲に含まれるものである。
また、本実施形態に係る記録再生ヘッドは、誘電体記録再生装置の記録再生ヘッドにかかわらず、各種記録再生装置において記録再生ヘッドとして利用することが可能である。また、記録再生ヘッドとしてではなく、例えばAFMにおけるプローブとして利用することも可能である。
(記録装置の実施形態)
本発明の記録装置に係る実施形態は、誘電体記録媒体にデータを記録する記録装置であって、上述した本発明の記録再生ヘッドに係る実施形態(但し、その各種態様を含む)と、前記データに対応する記録信号を生成する記録信号生成手段とを備える。
本発明の記録装置に係る実施形態によれば、上述した本発明の記録再生ヘッドに係る実施形態が有する利点を生かしつつ、記録信号生成手段が生成した記録信号に基づき、データの記録を行うことができる。
(再生装置の実施形態)
本発明の再生装置に係る実施形態は、誘電体記録媒体に記録されたデータを再生する再生装置であって、上述した本発明の記録再生ヘッドに係る実施形態(但し、その各種態様を含む)と、前記誘電体記録媒体に電界を印加する電界印加手段と、前記誘電体記録媒体の非線形誘電率に対応する容量の違いに応じて発振周波数が変化する発振手段と、前記発振手段による発振信号を復調し、再生する再生手段とを備える。
本発明の再生装置に係る実施形態によれば、電界印加手段により誘電体記録媒体に電界を印加することで、該誘電体記録媒体の非線形誘電率の変化に応じた容量変化に起因して、発振手段の発振周波数が変化する。そして、係る発振手段による発振周波数の変化に応じた発振信号を、再生手段が復調及び再生することで、データを再生する。
本実施形態では特に、上述した本発明の記録再生ヘッドに係る実施形態が有する利点を生かしつつ、データの再生を行うことができるという利点を有している。
本実施形態におけるこのような作用、及び他の利得は次に説明する実施例から更に明らかにされる。
以上説明したように、本発明のセンサに係る第1又は第2実施形態は、ピエゾ抵抗素子と支持部材とを備えており、支持部材は第1の厚さと第2の厚さとを有する。従って、相応の幅を有する支持部材を用いて歪みを高精度に検出することが可能となる。
また、本発明の製造方法に係る実施形態は、第1形成工程、第2形成工程及び第3形成工程を備える。従って、第1又は第2実施形態に係るセンサを効率よく或いは好適に製造することが可能となる。
本発明の記録再生ヘッドに係る実施形態は、センサに係る第1又は第2実施形態と突起部とを備える。従って、センサに係る第1又は第2実施形態が有する各種利益を享受することができると共に、突起部の損傷や磨耗を防ぐことができる。
また、本発明の記録装置に係る実施形態は、記録再生ヘッドに係る実施形態及び記録信号生成手段を備える。従って、記録再生ヘッドに係る実施形態が有する各種利益を享受することができると共に、適切にデータを記録することができる。
また、本発明の再生装置に係る実施形態は、記録再生ヘッドに係る実施形態、電界印加手段、発振手段及び再生手段を備える。従って、記録再生ヘッドに係る実施形態が有する各種利益を享受することができると共に、適切にデータを再生することができる。
以下、本発明の記録再生ヘッドに係る実施例を図面に基づいて説明する。尚、本実施例においては、上述した本発明のセンサを用いた記録再生ヘッドについて説明する。即ち、同時に本発明のセンサに係る実施例についても適宜説明を加えている。
(1)記録再生ヘッドの実施例
先ず、図1から図35を参照して、本発明の記録再生ヘッドに係る実施例について説明する。
(i)記録再生ヘッドの構造
先ず、図1から図5を参照して、本実施例に係る記録再生ヘッドの構造(即ち、基本構成)について説明する。ここに、図1は、本実施例に係る記録再生ヘッドの構造を概念的に示す斜視図であり、図2は、本実施例に係る記録再生ヘッドの構造を概念的に示す断面図であり、図3(a)は、本実施例に係る記録再生ヘッドが例えば誘電体記録媒体に接触したときの状態を概念的に示す模式図であり、図3(b)は、比較例に係る記録再生ヘッドが例えば誘電体記録媒体に接触したときの状態を概念的に示す模式図であり、図4は、本実施例に係る記録再生ヘッドの他の構造を概念的に示す断面図である。
図1(a)に示すように、本実施例に係る記録再生ヘッド100は、本発明における「突起部」の一具体例であるダイヤモンドチップ110と、配線120と、支持部材130と、ピエゾ抵抗素子部140とを備える。
ダイヤモンドチップ110は、記録再生ヘッド100の記録再生時に、その先端側から後述の誘電体記録媒体20(図37参照)に電界を印加するように、細く尖った先端を有する。このダイヤモンドチップ110は特に、その製造時にダイヤモンドにボロン等をドープすることによって、導電性を備えている。
尚、ダイヤモンドチップ110に代えて、例えば窒化ボロンを用いることもできる。或いは、比較的硬質であり、且つ導電性を備える部材(即ち、低抵抗な部材)であれば、ダイヤモンドチップ110に代えて用いることができる。
配線120は、支持部材130の表面の少なくとも一部を覆うように形成されている。そして、ダイヤモンドチップ110から後述の誘電体記録媒体に対して電界を印化するための電流を供給する。配線120として、例えば白金パラジウムや白金イリジウム等の合金を用いることができる。
尚、配線120は必ずしもダイヤモンドチップ110と直接的に(即ち、物理的に)接触している必要はなく、ダイヤモンドチップ110に電流を供給可能であれば、所望の配置が可能である。例えば、支持部材130が導電性を有していれば、当該支持部材130中が電流(或いは、電界)のパスとして利用してもよく、その場合配線120は、ダイヤモンドチップ110と直接的に接触している必要はない。
支持部材130は、記録再生ヘッド100を支持する基盤となるものである。支持部材130は、導電性を有していることが好ましい。例えば、ダイヤモンドチップ110と同様にボロン等がドーピングされたダイヤモンドを用いて支持部材130を構成してもよい。但し、支持部材130は、導電性を有していなくともよい。また、後述の如く支持部材130とダイヤモンドチップ110とが一体として形成されてもよい(図6等参照)。
又、後述の如く、該支持部材130はプローブ11の一部として再生時における共振回路14の一部を構成する(図36参照)。このため、所望の共振周波数が得られるように、当該支持部材130のインダクタンスに応じて材料を選択することがより好ましい。また、このように材料を選択することで、後述の誘電体記録媒体12上を移動するプローブ11の振動周波数を適宜変更することも可能である。
尚、本実施例において支持部材130は、図1に示すように、異なる2方向から伸びる部材を含んだ構造をその具体例として説明しているが、このような構造に限られないことは言うまでもない。例えば、長手方向(より具体的には、1方向)に伸びる部材を支持部材とするように構成してもよいし、或いは異なる複数の方向から伸びる部材を支持部材とするように構成してもよい。要は、ダイヤモンドチップ110(更には、ピエゾ抵抗素子部140)を支えることが可能な構造であれば、本発明における支持部材130として用いることが可能である。
ピエゾ抵抗素子部140は、当該ピエゾ抵抗素子部140の歪み或いは曲がり(或いは、湾曲)の度合いに応じて、当該ピエゾ抵抗素子部140自体の電気抵抗値を変化させる。そして、この電気抵抗値の変化を検出することで、例えば記録再生ヘッド100がどれだけの力にて誘電体記録媒体に押し付けられているか又は接触しているかを判断することが可能となる。
そしてピエゾ抵抗素子部140は、不純物がドーピングされていないダイヤモンドの基板上に、ボロン等がドーピングされたダイヤモンドが積層される構造を有している。また、ピエゾ抵抗素子部140は、支持部材130により支持されている。
本実施例では特に、ピエゾ抵抗素子部140のうち局所的に湾曲させたい(即ち、歪めたい或いは曲げたい)部分の厚さが、それ以外の部分の厚さと比較して薄くなるようにピエゾ抵抗素子部140が形成されている。加えて、支持部材130も同様に、ピエゾ抵抗素子部140のうち局所的に湾曲させたい部分に対応する指示部材130の厚さをそれ以外の部分の厚さと比較して薄くなるように形成されている。即ち、ピエゾ抵抗素子部140や支持部材130の厚さが適宜変化するように構成されている。
この厚さの相違について、図2においてより分かりやすく示されている。図2に示すように、局所的に湾曲させたい部分の厚さが相対的に薄くなり、他方、局所的に湾曲させたい部分以外の部分の厚さが相対的に厚くなっている。例えば、局所的に湾曲させたい部分の支持部材130の厚さが2.5μmとなり、それ以外の部分の支持部材130の厚さが3.5μmとなるように構成してもよい。そして、この局所的に湾曲させたい部分の支持部材130の長さが5μmとなるように構成してもよい。この具体的な数値については後の製造方法の説明において詳述する(図24等参照)。
このような構造を採用することで、記録再生ヘッド100が誘電体記録媒体12と接触する場合に、図3(a)に示すように、厚さを相対的に薄くした部分においてピエゾ抵抗素子部140を湾曲させることが可能となる。即ち、本来湾曲させたくない部分におけるピエゾ抵抗素子部140の歪み等の発生を抑えることができ、その結果、局所的にピエゾ抵抗素子部140を湾曲させることが可能となる。従って、高精度に或いは高感度に歪み等を検出することができ、より高精度に或いは高感度に電気抵抗値の変化を検出することが可能となる。
仮に、本実施例に係る記録再生ヘッドのように厚さを変化させない記録再生ヘッドにおいて、ピエゾ抵抗素子部の歪みを検出する場合には、図3(b)に示すように、記録再生ヘッド全体に歪みが発生し得るため、高精度に歪み等を検出することが困難或いは不可能であるという技術的な問題点を含んでいる。しかるに、本実施例に係る記録再生ヘッド100の如き構造を採用すれば局所的にピエゾ抵抗素子部140を湾曲させることができ、このような技術的問題点を解消することが可能となる。
更に、本実施例に係る記録再生ヘッドの如く厚さを変化させない記録再生ヘッドにおいて、高精度に歪みを検出しようとすれば、例えば支持部材(更には、ピエゾ抵抗素子部)の幅を細くする必要がある。具体的には、例えば支持部材の幅が10μm或いはそれ以下の大きさである必要がある。しかるに、本実施例の如き構造を採用すれば、支持部材130の幅を必要以上に細くする必要はない。例えば支持部材130の幅が20μm或いはそれ以上であってもよい。加えて、支持部材130の幅を細くする必要がないため、当該支持部材130の上に配線を形成しやすくなるという利点をも有している。即ち、例えばフォトリソグラフィー等を用いた従来の手法により、比較的容易に配線を形成することが可能という利点を有している。このような利点は、記録再生ヘッド100の製造という観点からは優れた利点であり、記録再生ヘッド100の安価な製造或いは効率的な製造を好適に実現することができる。
尚、支持部材130(即ち、該支持部材130に含まれるダイヤモンド)の表面は、滑らかな平面ではなく、支持部材130を形成する一つの手法である結晶成長に起因して、比較的起伏のある(即ち、凹凸のある)平面である。このため、支持部材の幅が細ければ該支持部材の上に形成された配線ははがれやすいという技術的な問題点も有している。しかるに、本実施例の如き構成を採用すれば、支持部材130の幅を必要以上に細くする必要がないため、配線120がはがれやすいという問題点を解消し、比較的はがれにくい配線120を形成することができるという利点をも有している。
更に、支持部材130の幅を必要以上に細くする必要がなくなるため、記録再生ヘッド100自体の強度を高めることも可能である。
尚、本実施例においては、支持部材130やピエゾ抵抗素子部140の一具体例としてダイヤモンド(特に、ボロン等をドーピングしたダイヤモンド)を挙げているが、これに限定されるものではない。例えば、シリコンを用いて支持部材130やピエゾ抵抗素子部140を形成してもよいし、或いはそれ以外の材料を用いて支持部材130やピエゾ抵抗素子部140を形成してもよい。
但し、歪みをより高精度に検出するという観点からは、ピエゾ抵抗素子部140はダイヤモンドを用いて形成することが好ましい。更には、ピエゾ抵抗素子部140や支持部材130が湾曲して破損するという不都合を防止するという観点からは、ピエゾ抵抗素子部140や支持部材130は、比較的硬質な材料であるダイヤモンドを用いて形成することが好ましい。
また、ダイヤモンドチップ110と支持部材130とを接着する必要性を考慮すると、ダイヤモンドを用いて支持部材130を形成すれば、同様の部材にて形成されるダイヤモンドチップ110との接着特性を高めることが可能となる。同様に、支持部材130とピエゾ抵抗素子140とを接着する必要性を考えると、例えばダイヤモンドを用いて支持部材130を形成すれば、ピエゾ抵抗素子部140にもダイヤモンドと接着しやすい(即ち、相性のよい)炭素系材料(例えば、ダイヤモンド)を用いることが好ましい。
更に、ダイヤモンドチップ110が例えば後述の誘電体記録媒体と点で接するように記録再生ヘッド100を構成することが好ましい。即ち、ダイヤモンドチップ110が誘電体記録媒体と点で接するような湾曲を実現するように、支持部材130やピエゾ抵抗素子140の厚さを好適に変化させることが好ましい。
また、本実施例の如く、ピエゾ抵抗素子部140の歪みを検出するという観点からは、該ピエゾ抵抗素子部140や支持部材130の少なくとも一部の厚さを変化させなくともよい。即ち、支持部材130及びピエゾ抵抗素子部140にダイヤモンドを用いることでピエゾ抵抗素子部140に生ずる歪みを相応に高精度に検出することは可能である。
また、ピエゾ抵抗素子部140の少なくとも一部の厚さを変化させることなく、支持部材130の少なくとも一部の厚さだけを変化させるように構成してもよい。或いは、ピエゾ抵抗素子抵抗部140の少なくとも一部の厚さだけを変化させ、支持部材130の少なくとも一部の厚さを変化させないように構成してもよい。このように構成しても、ピエゾ抵抗素子部140に生ずる歪みを相応に高精度に検出することは可能である。
尚、ダイヤモンドチップ110を含んでいなくとも、少なくとも支持部材130及びピエゾ抵抗素子部140を備えていれば、圧力センサや歪みセンサ等として利用することが可能である。また更には圧力センサや歪みセンサに限られることなく、ピエゾ抵抗素子部140に生ずる歪みを検出することで何らかのパラメータ等を検出する各種センサとして利用することが可能である。
尚、図4に示すように、支持部材130やピエゾ抵抗素子部140の厚さが変化する部分において、当該部分の角をとって丸みを帯びた形状にしてもよい。また、必ずしもすべての角をとらなくとも、少なくとも一部の角を取って丸みを帯びた形状にしてもよい。このように構成すれば、ピエゾ抵抗素子部140や支持部材130が湾曲して、角の部分にひび割れ等が生じたり、或いは当該ひび割れに起因して記録再生ヘッド100自体が割れてしまうという不都合を効果的に防ぐことが可能となる。
更に、上述の実施例では、厚さが二段階に(即ち、相対的に厚い部分と相対的に薄い部分とに)変化するように厚さを変えているが、もちろん3以上の複数段階に厚さが変化するように構成してもよい。要は、ピエゾ抵抗素子部140のうち湾曲させたい部分において局所的に湾曲させることができるように支持部材130或いはピエゾ抵抗素子部140の厚さを変化させる構造であれば、本実施例に係る記録再生ヘッドと同様の効果を享受することが可能である。
尚、上述した実施例では、図1に示すように記録再生ヘッドを簡略化して記載しているが、このより詳細な構成を図5に示す。図5は、本実施例に係る記録再生ヘッドのより詳細な基本構成を示す斜視図である。
図5に示すように、記録再生ヘッド100は、図1と同様に、ダイヤモンドチップ110、配線120、支持部材130、ピエゾ抵抗素子部140を備えている。そして、ピエゾ抵抗素子部140を局所的に湾曲させたい部分に対応するピエゾ抵抗素子部140及び支持部材130の厚さが相対的に薄くなっている。
また、図5では、ピエゾ抵抗素子部140における電気抵抗値の変化を検出するための配線120が更に形成されており、金属電極170に接続されている。また、ダイヤモンドチップ110に電流を供給するための配線120も金属電極170に接続されている。
また、図5では記録再生ヘッド100自体を支えるためのガラス206が取り付けられている。ガラス206は、感光性ポリイミド205により記録再生ヘッド100に取り付けられている。
(ii)記録再生ヘッドの製造方法
続いて、図6から図35を参照して、本実施例に係る記録再生ヘッドの製造方法について説明する。ここに、図6から図22及び図24から図35は、本実施例に係る記録再生ヘッドの製造方法の各工程を概念的に示す断面図であり、図23は、ダイヤモンドの選択成長の過程を概念的に示す断面図である。
尚、ここで説明する製造方法により製造される記録再生ヘッドは、ダイヤモンドチップ110と支持部材130とが一体化されているものである。しかしながら、ダイヤモンドチップ110と支持部材130とが一体化されていなくとも、同様の製造方法により製造することができ、係る製造方法も本発明の範囲に含まれることは言うまでもない。
また、以降の説明において参照する断面図は、図5における斜視図に付されている太い鎖線において切断した場合の切断面に相当する。
先ず、図6に示すように、シリコン基板201を用意する。係るシリコン基板201は、主として記録再生ヘッドの型枠となるものである。尚、後の工程において、結晶格子構造における(100面)に沿って(或いは、平行に)二酸化シリコン膜が形成されるようなシリコン基板201を用意することが好ましい。これは、後述するように、異方性エッチングを施すことでダイヤモンドチップ110の突起状(或いは、ピラミッド状)の形状を形成するためである。係るシリコン基板201は、(100)基板と称される。
そして、図7に示すように、シリコン基板201の表側及び裏側の面に対して、二酸化シリコン(SiO2)膜202を形成する。ここでは、高温酸化雰囲気中にシリコン基板201を配置することで、その表面に二酸化シリコン膜202を形成してもよい。
続いて、図8に示すように、例えばスピンコーティングによりEB(Electron Beam)レジスト203aを二酸化シリコン膜202上にコーティングして、パターニングを行う。具体的には、EBレジスト203aをシリコン基板201の一方の面上に形成した二酸化シリコン膜202上にコーティングした後、ダイヤモンドチップ110が形成される領域に電子ビームを照射することで、該領域のEBレジスト203aを除去する。即ち、EBリソグラフィーが行われることで、図8に示すようにEBレジスト203aのパターニングがなされる。
尚、EBリソグラフィーによりパターニングを行わなくともフォトリソグラフィーによりパターニングを行ってもよい。例えば、フォトレジストをシリコン基板201の一方の面上に形成した二酸化シリコン膜202上にコーティングした後、ダイヤモンドチップ110に相当する部分をパターニングしたフォトマスクを用いて紫外線等を照射する。その後、現像を行うことで、図8に示すようにフォトレジストのパターニングがなされるように構成してもよい。
尚、図8に係るシリコン基板201等を上側(即ち、EBレジスト203aがパターニングされた側)から見ると、記録再生ヘッド100のダイヤモンドチップ110が形成される部分には、EBレジスト203aが塗布されないことで窓が形成され、二酸化シリコン膜202が見える。この窓の形状に合わせて、ダイヤモンドチップ110が形成される。
続いて、図9に示すように、図8においてEBレジスト203のパターニングが行われたシリコン基板201に対して、エッチングを行う。ここでは、例えば高速電子線エッチング(FAB:Fast Atomic Beam)により二酸化シリコン膜202のうちEBレジスト203aが塗布されていない部分のエッチングを行う。但し、BHF(バッファードフッ酸)やHF(フッ酸)等を用いてエッチングを行ってもよいし、或いは他のエッチャントを用いてエッチングを行ってもよいし、或いは他のドライエッチングやウェットエッチングによりエッチングを行ってもよい。
続いて、図10に示すように、二酸化シリコン膜201のエッチング後、EBレジスト203aの除却が行われる。ここでは、ドライエッチングによりEBレジスト203aの除却を行ってもよいし、或いはウェットエッチングによりEBレジスト203aの除却を行ってもよい。
続いて、図11に示すように、シリコン基板201に対して異方性エッチングを行う。ここでは、例えばTMAH(水酸化テトラメチルアンモニウム)やKOH(水酸化カリウム)等のアルカリ性のエッチャントを用いて異方性エッチングを行う。
このとき、シリコン基板201は、(100)面の法線方向(即ち、図11中シリコン基板201に垂直な方向)に向かってエッチングは進行しやすいが、他方(111)面の法線方向(即ち、図11中シリコン基板201に対して概ね45度で入射する方向)に向かってエッチングは進行しにくいという性質を有する。この性質を利用して異方性エッチングを行うことで、シリコン基板201は、ダイヤモンドチップ110に相当する形状(すなわち、突起状或いはピラミッド状)にエッチングされる。
尚、図11に係るシリコン基板201等を上側から見ると、シリコン基板201に異方性エッチングが施されることで、二酸化シリコン膜202の窓の外側部分ほどエッチングの速度が遅く、窓の中心部分ほどエッチングの速度が速い。その結果、エッチングにより形成された穴の先端がとがった形状となる。
続いて、図12に示すように、フォトレジスト203bを吹き付けてパターニングを行う。即ち、二酸化シリコン膜202上にコーティングされたフォトレジスト203bに対して、所定のマスクを用いて紫外線等を照射し、その後現像することで、フォトレジスト203bのパターニングを行う。
尚、図12に係るシリコン基板201等を上側から見ると、このときのフォトレジスト203bは、支持部材130及びピエゾ抵抗素子部140の形状に合わせてパターニングされる。特に、ボロンがドーピングされたダイヤモンド(即ち、ボロンドープドダイヤモンド)により構成される支持部材130及びピエゾ抵抗素子部140の少なくとも一部の形状に合わせて、フォトレジスト203bのパターニングがされる。
続いて、図13に示すように、図12におけるフォトレジスト203bのパターニングにあわせて二酸化シリコン膜202のエッチングが行われる。ここでは、例えばBHFを用いたエッチングが行われる。
その後、図14に示すように、フォトレジスト203bの除却が行われる。ここでは、ドライエッチングによりフォトレジスト203bの除却を行ってもよいし、或いはウェットエッチングによりフォトレジスト203bの除却を行ってもよい。
続いて、図15に示すように、ダイヤモンドパウダー入りのメタノール中において、シリコン基板201及びその上に形成されている二酸化シリコン膜202の夫々の表面に、例えば超音波等を用いてダイヤモンドパウダーを振動させることで、傷をつける。このように傷をつけることで、後の工程(図16参照)において、ダイヤモンド核を形成することができる。
続いて、図16に示すように、熱フィラメントCVD(Chemical Vapor Deposition)法により、ダイヤモンド膜を成長させる。例えば、CH4(メタン)ガスを原料として、シリコン基板201上にダイヤモンド膜を形成する。特にダイヤモンド膜は、図15における工程時に傷をつけた部分において成長する。尚、熱フィラメントCVD法でなくとも、例えばマイクロ波プラズマCVD法や或いは他の膜成長方法等を用いてダイヤモンド膜を成長させてもよい。
また、係るダイヤモンド膜は、上述のダイヤモンドチップ110(或いは、支持部材130やピエゾ抵抗素子部140等)として用いられるため、導電性を有している必要がある。従って、例えばB2H6(ジボラン)や(CH3O)3B(トリメトキシボラン)等のドーピングガスを添加することで、ダイヤモンド膜中にB(ボロン)をドーピングさせる。
尚、図15に示すように傷つけ処理によってダイヤモンド膜成長させる方法に限らず、例えばCVD処理の初期段階にシリコン基板201に負のバイアス電圧を印加することでダイヤモンド膜を成長させてもよいし、或いは超微粒子のダイヤモンドパウダーをシリコン基板201に塗布することで、ダイヤモンド膜成長の核としてもよい。
続いて、図17に示すように、二酸化シリコン膜202上において成長しているダイヤモンドパウダーを除却する。これは、例えばBHF等を用いたエッチングにより、極少量の二酸化シリコン膜202を除去することで、結果的にダイヤモンドパウダーを除却することができる。これにより、適切な形状を有するダイヤモンドチップ110、支持部材130或いはピエゾ抵抗素子部140の少なくとも一部を形成することができる。
続いて、図18に示すように、例えば熱フィラメントCVD法等を用いて、ダイヤモンド膜を更に成長させることで、ダイヤモンドチップ110、支持部材130或いはピエゾ抵抗素子部140の少なくとも一部を形成する。
続いて、ダイヤモンドチップ110が形成された後、図19に示すように、エッチングを行い、二酸化シリコン膜202を除却する。ここでは、例えばBHF等を用いて二酸化シリコン膜202を除却する。
続いて、図20に示すように、再度シリコン基板201上に二酸化シリコン膜202を形成する。ここでは、図7と同様の手法により二酸化シリコン膜202を形成してもよい。
続いて、図21に示すように、フォトレジスト203bのパターニングを行う。このフォトレジスト203bのパターニングは、ピエゾ抵抗素子部140の第1の層であるボロン等の不純物がドーピングされていないダイヤモンド(即ち、アンドープドダイヤモンド)を形成するためのパターニングである。従って、フォトレジスト203bは、当該アンドープドダイヤモンドを形成するためのパターニング形状にてパターニングされる。
このとき、本実施例では、上述したようにピエゾ抵抗素子部140及び支持部材130の厚さを変化させるように、フォトレジスト203bのパターニングが行われる。具体的には、ピエゾ抵抗素子部140及び支持部材130の厚さを相対的に薄くしたい部分に対して、フォトレジスト203bの除却を行わない。即ち、図21中のフォトレジスト203cを残すことで、図1から図5において説明したような厚さが相対的に薄い支持部材130及びピエゾ抵抗素子部140が形成される。
その後、上述した動作と同様に、二酸化シリコン膜202のうちフォトレジスト203bが塗布されていない部分のエッチングが行われ、フォトレジスト203bの除却が行われ二酸化シリコン膜202の夫々の表面に、例えば超音波等を用いてダイヤモンドパウダーを振動させることで、傷がつけられる。
そして、上述の熱フィラメントCVD法によりダイヤモンドの選択成長が行われることで、図22に示すように、ダイヤモンドのピエゾ抵抗素子部140(具体的には、ピエゾ抵抗素子部140の一部)が形成される。その後、二酸化シリコン膜202のエッチングが行われる。尚、ここで形成されるピエゾ抵抗素子部140は、アンドープなダイヤモンドにより構成されるため、熱フィラメントCVDが行われている間は、例えばB2H6(ジボラン)や(CH3O)3B(トリメトキシボラン)等のドーピングガスは添加されない。
このダイヤモンドの選択成長について、図23を参照してより詳細に説明する。図23(a)に示すようなシリコン基板201及び二酸化シリコン膜202に対してダイヤモンドの選択成長が行われるとする。
このとき、図23(b)に示すように徐々にダイヤモンドが成長していき、支持部材130等が形成される。そして、二酸化シリコン膜202(特に、二酸化シリコン膜202a)の大きさを超える程度にダイヤモンドが成長すると、図23(c)に示すように、二酸化シリコン膜202aを覆うようにダイヤモンドが成長していく。
そして、最終的には、二酸化シリコン膜202aの両側から、該二酸化シリコン膜202aを覆うように成長するダイヤモンドが繋がる。その結果として、二酸化シリコン膜202aが存在する部分において相対的に薄い厚さを有する支持部材130或いはピエゾ抵抗素子部140が形成される。
具体的に数値を用いて説明すると、図21において除却されなかったフォトレジスト203bの高さを1μmとし、該フォトレジスト203bの幅を5μmとすると、当該フォトレジスト203b付近では、ダイヤモンドは、初め垂直方向に成長し、その後フォトレジスト203bの上部において水平方向にも成長する。そしてフォトレジスト203bの上部においては、該フォトレジスト203bの両側よりダイヤモンドが成長するため、全体としてダイヤモンドは、1+5/2=3.5μmだけ選択成長することで、フォトレジスト203bを覆う。即ち、このような大きさを有するフォトレジスト203bを除却しなければ、厚さが3.5μmの記録再生ヘッドが製造される。
このようなダイヤモンドの選択成長を用いて、本実施例に係る記録再生ヘッド100を製造すれば、新たな製造工程を特段追加する必要もなく、支持部材130やピエゾ抵抗素子部140の厚さが変化する記録再生ヘッドを比較的容易に製造することが可能となる。即ち、例えば物理的に或いは機械的に微細な加工を施して支持部材130やピエゾ抵抗素子部140の厚さを変化させる必要はないため、本実施例の如き記録再生ヘッドを比較的容易に製造することができるという大きな利点を有している。
続いて、再度シリコン基板201上に二酸化シリコン膜202が形成され、図24に示すように、フォトレジスト203bのパターニングが行われる。このフォトレジスト203bのパターニングは、ピエゾ抵抗素子部140の第2の層であるボロン等の不純物がドーピングされたダイヤモンドを形成するためのパターニングである。従って、フォトレジスト203bは、当該ドーピングされたダイヤモンドを形成するためのパターニング形状にてパターニングされる。
その後、上述した動作と同様に、二酸化シリコン膜202のうちフォトレジスト203bが塗布されていない部分のエッチングが行われ、フォトレジスト203bの除却が行われ二酸化シリコン膜202の夫々の表面に、例えば超音波等を用いてダイヤモンドパウダーを振動させることで、傷がつけられる。
そして、上述の熱フィラメントCVD法によりダイヤモンドの選択成長が行われることで、図25に示すようにピエゾ抵抗素子部140(具体的には、ボロン等の不純物がドーピングされたダイヤモンドからなるピエゾ抵抗素子部140の他の一部)が形成される。その後、二酸化シリコン膜202のエッチングが行われる。尚、ここで形成されるピエゾ抵抗素子部140は、ドーピングされたダイヤモンドにより構成されるため、熱フィラメントCVDが行われている間は、例えばB2H6(ジボラン)や(CH3O)3B(トリメトキシボラン)等のドーピングガスが添加される。
続いて、図26に示すように、スパッタリング法(或いは、蒸着法)等により配線120が形成される。この配線120は、例えば上述したように白金パラジウムや白金イリジウム等の合金であってもよいし、或いはクロムや金等を含んだ金属或いは合金であってもよい。
尚、これら配線120のダイヤモンドに対する付着力を高めるために、該配線120を形成する前にチタン等の下地を蒸着させ、その後に配線120を形成するように構成してもよい。これにより、配線120とダイヤモンドとの付着力を高め、はがれにくい配線120が形成された記録再生ヘッドを製造することが可能となる。
続いて、図27に示すように、フォトレジスト203bのパターニングが行われる。このフォトレジスト203bのパターニングは、図26の工程において形成された配線120のうち不必要な配線を除却するためのパターニングである。従って、フォトレジスト203bは、除却されるべき配線120の部分以外に形成される。
続いて、図28に示すようにエッチングが施され、不必要な配線120の除却が行われる。そして、フォトレジスト203bの除却が行われる。
続いて、図29に示すようなガラス206を作成する。ガラス206は、記録再生ヘッド100全体を支え或いは保持する部材である。そして、例えばガラス206にアクチュエータ等が接続されることで、後述の誘電体記録再生装置の記録・再生動作時に、記録再生ヘッドを誘電体記録媒体上において移動させることができる。
尚、ガラス206には中心付近に切れ込みが形成されることで溝付け加工が施されている。これは、後述の工程(図34参照)において、ガラス206を割りやすくするために形成されている。また、ガラス206には、電極を形成するための穴が形成されている。
続いて、図30に示すように、形成される記録再生ヘッド100のうち突起状のダイヤモンドチップ110が形成される側とは反対の側の表面に、感光性ポリイミド205が形成される。係る感光性ポリイミド205は、後の工程において、記録再生ヘッド100全体を支え或いは保持するガラス206(図29参照)との接合のために用いられる。
続いて、図31に示すように、溝付け加工を施したガラス206が感光性ポリイミド205に貼り付けられる。感光性ポリイミド205は、シリコン基板201とガラス206との間に例えば直流電圧を印加することで、ガラス206と接着し、結果として記録再生ヘッド100とガラス206とが接着される。
続いて、図32に示すように、例えば蒸着法やスパッタリング法等を用いてアルミニウム電極170が形成される。このアルミニウム電極170は、ガラス206に形成されている穴を介して、ダイヤモンド(即ち、支持部材130やピエゾ抵抗素子部140)上に形成された配線120と接続される。そして、このアルミニウム電極170及び配線120を介してダイヤモンドチップ110に電流が供給され、或いはピエゾ抵抗素子部140の電気抵抗値の変化が検出される。
続いて、図33に示すように、シリコン基板201を取り除く。ここでは、ICP−RIE(Inductively Coupled Plasma Reactive Ion Ething)を用いてシリコン基板201をダイヤモンドチップ110より取り除く。但し、その他の手法を用いてシリコン基板201を取り除いてもよい。
続いて、図34に示すように、ガラス206を切れ込みに沿って割り、後述のプローブ11として利用可能な状態にする。
尚、図6から図34において説明した製造方法は、本実施例に係る記録再生ヘッドの製造方法は、あくまで一具体例であり、各工程において用いられる原材料や各種方法(例えば、エッチング法、膜形成法や膜成長法)等は適宜変更することが可能である。
尚、図4に示すような、支持部材130やピエゾ抵抗素子部140の厚さが変化する部分において、当該部分の角をとって丸みを帯びた形状を有する記録再生ヘッド100を製造するためには、図35に示すような製造方法を用いることが好ましい。ここに、図35は、本実施例に係る記録再生ヘッドの他の製造方法における工程を概念的に示す断面図である。
図35(a)に示すように、二酸化シリコン膜202の上にフォトレジスト203bが形成される。この工程は、上述の図21において説明したフォトレジスト203bの形成と同様である。
続いて、この二酸化シリコン膜202に対して等方性エッチングが施されることで、図35(b)に示すように、二酸化シリコン膜202の角部分が丸みを帯びた形状となる。
その後、フォトレジスト203bを除却すると、図35(c)に示すように、二酸化シリコン膜202の上側の角部分が角張っている。このため、残った二酸化シリコン膜202を軽くエッチングしてやれば、図35(d)に示すように、二酸化シリコン膜202の角部分が丸みを帯びた形状となる。
このようにエッチングされた二酸化シリコン膜202を用いてダイヤモンドの選択成長を行えば、図4に示すような、支持部材130やピエゾ抵抗素子部140の厚さが変化する部分において、当該部分の角をとって丸みを帯びた形状を有する記録再生ヘッドを比較的容易に製造することができる。
(2)記録再生装置の実施例
続いて、上述した本実施例に係る記録再生ヘッドを用いた記録再生装置について説明する。
(i)基本構成
先ず、本実施例に係る誘電体記録再生装置の基本構成について、図36を参照して説明する。ここに、図36は、本実施例に係る誘電体記録再生装置の基本構成を概念的に示すブロック図である。
誘電体記録再生装置1は、その先端部が誘電体記録媒体20の誘電体材料17に対向して電界を印加するプローブ11と、プローブ11から印加された信号再生用の高周波電界が戻るリターン電極12と、プローブ11とリターン電極12の間に設けられるインダクタLと、インダクタLとプローブ11の直下の誘電体材料17に形成される、記録情報に対応して分極した部位の容量Csとで決まる共振周波数で発振する発振器13と、誘電体材料17に記録された分極状態を検出するための交番電界を印加するための交流信号発生器21と、誘電体材料に分極状態を記録する記録信号発生器22と、交流信号発生器21及び記録信号発生器22の出力を切り替えるスイッチ23と、HPF(High Pass Filter)24と、プローブ11の直下の誘電体材料17が有する分極状態に対応した容量で変調されるFM信号を復調する復調器30と、復調された信号からデータを検出する信号検出部34と、復調された信号からトラッキングエラー信号を検出するトラッキングエラー検出部35等を備えて構成される。
プローブ11は、上述した本実施例に係る記録再生ヘッド100を用いる。そして、プローブ11はHPF24を介して発振器13と接続され、またHPF24及びスイッチ23を介して交流信号発生器21及び記録信号発生器22と接続される。そして、誘電体材料17に電界を印加する電極として機能する。尚、プローブ11として、例えば図1等に示すような針状のものや或いはカンチレバー状等のものが具体的な形状として知られる。
尚、係るプローブ11は、複数備える構造であってもよい。この場合、交流信号発生器21は、夫々のプローブ11に対応して複数設けることが好ましい。また、信号検出部34において夫々の交流信号発生器21に対応する再生信号を弁別可能なように、信号検出部34を複数備え、且つ夫々の信号検出部34は、夫々の交流信号発生器21より参照信号を取得することで、対応する再生信号を出力するように構成することが好ましい。
そして、ダイヤモンドチップ110は、夫々のプローブ11毎に絶縁されている必要がある。そして、支持部材130が導電性を備えている場合には、該支持部材130も夫々のプローブ11毎に絶縁されている必要があるが、支持部材130が導電性を備えていなければ、夫々のダイヤモンドチップ110に共通の支持部材130を設けるように構成してもよい。また、ピエゾ抵抗素子部140も夫々のプローブ毎に絶縁されている必要がある。
リターン電極12は、プローブ11から誘電体材料17に印加される高周波電界(即ち、発信器13からの共振電界)が戻る電極であって、プローブ11を取り巻くように設けられている。尚、高周波電界が抵抗なくリターン電極12に戻るものであれば、その形状や配置は任意に設定が可能である。
インダクタLは、プローブ11とリターン電極12との間に設けられていて、例えばマイクロストリップラインで形成される。インダクタLと容量Csとを含んで共振回路14が構成される。この共振周波数が例えば1GHz程度を中心とした値になるようにインダクタLのインダクタンスが決定される。
発振器13は、インダクタLと容量Csとで決定される共振周波数で発振する発振器である。その発振周波数は容量Csの変化に対応して変化するものであり、従って記録されているデータに対応した分極領域によって決定される容量Csの変化に対応してFM変調が行われる。このFM変調を復調することで、誘電体記録媒体20に記録されているデータを読み取ることができる。
尚、後に詳述するように、プローブ11、リターン電極12、発振器13、インダクタL、HPF24及び誘電体材料17中の容量Csから共振回路14が構成され、発信器13において増幅されたFM信号が復調器30へ出力される。
交流信号発生器21は、リターン電極12と電極16との間に交番電界を印加する。また、複数のプローブ11を備えている誘電体記録再生装置においては、この周波数を参照信号として同期を取り、プローブ11で検出する信号を弁別する。その周波数は5kHz程度を中心としたものであり、誘電体材料17の微小領域に交番電界を印加することになる。
記録信号発生器22は、記録用の信号を発生し、記録時にプローブ11に供給される。この信号はデジタル信号に限らずアナログ信号であってもよい。これらの信号として、音声情報、映像情報、コンピュータ用デジタルデータ等、各種の信号が含まれる。また、記録信号に重畳された交流信号は信号再生時の参照信号として各探針の情報を弁別して再生するためである。
スイッチ23は、再生時、交流信号発生器21からの信号を、一方、記録時は記録信号発生器22からの信号をプローブ11に供給するようにその出力を選択する。この装置は機械式のリレーや半導体の回路が用いられるが、アナログ信号にはリレーが、デジタル信号には半導体回路で構成するのが好適である。
HPF24は、インダクタ及びコンデンサを含んでなり、交流信号発生器21や記録信号発生器22からの信号が発振器13の発振に干渉しないように信号系統を遮断するためのハイパスフィルタを構成するために用いられていて、その遮断周波数はf=1/2π√{LC}である。ここで、LはHPF24に含まれるインダクタのインダクタンス、CはHPF24に含まれるコンデンサのキャパシタンスとする。交流信号の周波数は5KHz程度であり、発振器13の発振周波数は1GHz程度であるので、1次のLCフィルタで分離は十分に行われる。さらに次数の高いフィルタを用いてもよいが素子数が多くなるので装置が大きくなる虞がある。
復調器30は、容量Csの微小変化に起因してFM変調された発振器13の発振周波数を復調し、プローブ11がトレースした部位の分極された状態に対応した波形を復元する。記録されているデータがデジタルの「0」と「1」のデータであれば、変調される周波数は2種類であり、その周波数を判別することで容易にデータの再生が行われる。
信号検出部34は、復調器30で復調された信号から記録されたデータを再生する。この信号検出器34として例えばロックインアンプを用い、交流信号発生器21の交番電界の周波数に基づいて同期検波を行うことでデータの再生を行う。尚、他の位相検波手段を用いてもよいことは当然である。
トラッキングエラー検出部35は、復調器30で復調された信号から、装置を制御するためのトラッキングエラー信号を検出する。検出したトラッキングエラー信号がトラッキング機構に入力されて制御がなされる。
続いて、図36に示す誘電体記録媒体20の一例について、図37を参照して説明する。ここに、図37は、本実施例において用いられる誘電体記録媒体20の一例を概念的に示す平面図及び断面図である。
図37(a)に示すように、誘電体記録媒体20は、ディスク形態の誘電体記録媒体であって、例えばセンターホール10と、センターホール10と同心円状に内側から内周エリア7、記録エリア8、外周エリア9を備えている。センターホール10はスピンドルモータに装着する場合等に用いられる。
記録エリア8はデータを記録する領域であって、トラックやトラック間のスペースを有し、また、トラックやスペースには記録再生にかかわる制御情報を記録するエリアが設けられている。また、内周エリア7及び外周エリア8は誘電体記録媒体20の内周位置及び外周位置を認識するために用いられると共に、記録するデータに関する情報、例えばタイトルやそのアドレス、記録時間、記録容量等を記録する領域としても使用可能である。尚、上述した構成はその一例であって、カード形態等、他の構成を採ることも可能である。
また、図37(b)に示すように誘電体記録媒体20は、基板15の上に電極16が、また、電極16の上に誘電体材料17が積層されて形成されている。
基板15は例えばSi(シリコン)であり、その強固さと化学的安定性、加工性等において好適な材料である。電極16はプローブ11(或いは、リターン電極12)との間で電界を発生させるためのもので、誘電体材料17に抗電界以上の電界を印加することで分極方向を決定する。データに対応して分極方向を定めることにより記録が行われる。
誘電体材料17は、例えば強誘電体であるLiTaO3等を電極16の上にスパッタリング等の公知の技術によって形成されている。そして、分極の+面と−面が180度のドメインの関係であるLiTaO3のZ面に対して記録が行われる。他の誘電体材料を用いても良いことは当然である。この誘電体材料17は直流のバイアス電圧と同時に加わるデータ用の電圧によって、高速で微小な分極を形成する。
又、誘電体記録媒体20の形状として、例えばディスク形態やカード形態等がある。プローブ11との相対的な位置の移動は媒体の回転によって行われ、或いはプローブ11と媒体のいずれか一方が直線的に移動して行われる。
(ii)動作原理
続いて、図38及び図39を参照して、本実施例に係る誘電体記録再生装置1の動作原理について説明する。尚、以下の説明では、図36に示した誘電体記録再生装置1のうち一部の構成要素を抜き出して説明している。
(記録動作)
先ず、図38を参照して、本実施例に係る誘電体記録再生装置の記録動作について説明する。ここに、図38は、情報の記録動作を概念的に示す断面図である。
図38に示すように、プローブ11と電極16との間に誘電体材料17の抗電界以上の電界を印加することで、印加電界の方向に対応した方向を有して誘電体材料は分極する。そして、印加する電圧を制御し、この分極の方向を変えることで所定の情報を記録することができる。これは、誘電体(特に、強誘電体)にその抗電界を超える電界を印加すると分極方向が反転し、且つその分極方向が状態で維持されるという性質を利用したものである。
例えばプローブ11から電極16に向かう電界が印加されたとき、微小領域は下向きの分極Pとなり、電極16からプローブ11に向かう電界が印加されたときは上向きの分極Pとなるとする。これが情報を記録した状態に対応する。プローブ11が矢印で示す方向に操作されると、検出電圧は分極Pに対応して、上下に振れた矩形波として出力される。尚、分極Pの分極程度によりこのレベルは変化し、アナログ信号としての記録も可能である。
本実施例では特に、誘電体記録再生装置1は、ピエゾ抵抗素子部140の電気抵抗値の変化に応じて、プローブ11が誘電体記録媒体に押し付けられる或いは接触する力を検出することが可能である。特に、ピエゾ抵抗素子部140を歪めたり或いは曲げたい部分の厚さを相対的に薄くしているため、高精度に或いは高感度に電気抵抗値の変化(或いは、力)を検出することができる。このような電気抵抗値の変化等の検出は、所謂ホイートストンブリッジ回路を用いたピエゾ抵抗素子部140の等価回路を用いて、例えば図示しないCPUの動作によって行なわれてもよい。従って、記録動作や後述の再生動作の際に、必要以上にプローブ11を誘電体記録媒体20に押し付けたり、或いは必要以上にプローブ11が誘電体記録媒体12から離れたりする不都合を防ぐことができる。即ち、好適な状態でプローブ11を誘電体記録媒体20に接触させたりしながら該プローブ11を移動させることが可能となる。
(再生動作)
続いて、図39を参照して、本実施例に係る誘電体記録再生装置1の再生動作について説明する。ここに、図39は、情報の再生動作を概念的に示す断面図である。
誘電体の非線形誘電率は、誘電体の分極方向に対応して変化する。そして、誘電体の非線形誘電率は、誘電体に電界を印加した時に、誘電体の容量の違いないし容量の変化の違いとして検出することができる。従って、誘電体材料に電界を印加し、そのときの誘電体材料の一定の微小領域における容量Csの違いないし容量Csの変化の違いを検出することにより、誘電体材料の分極の方向として記録されたデータを読み取り、再生することが可能となる。
具体的にはまず、図39に示すように、不図示の交流信号発生器21からの交番電界が電極16及びプローブ11の間に印加される。この交番電界は、誘電体材料17の抗電界を越えない程度の電界強度を有し、例えば5kHz程度の周波数を有する。交番電界は、主として、誘電体材料17の分極方向に対応する容量変化の違いの識別を可能にするために生成される。尚、交番電界に代えて、直流バイアス電圧を印加して、誘電体材料17内に電界を形成してもよい。係る交番電界が印加されると誘電体記録媒体20の誘電体材料17内に電界が生ずる。
次に、プローブ11の先端と記録面との距離がナノオーダの極めて小さい距離となるまで、プローブ11を記録面に接近させる。この状態で発振器13を駆動する。尚、プローブ11直下の誘電体材料17の容量Csを高精度に検出するためには、プローブ11を誘電体材料17の表面、即ち、記録面に接触させることが好ましい。しかし、誘電体材料17に記録されたデータを高速に読み取るためには、プローブ11を誘電体記録媒体20上において高速に相対移動させる必要がある。このため、係る高速移動の実現性、プローブ11と誘電体記録媒体20との衝突・摩擦による破損の防止等を考慮すると、プローブ11を記録面に接触させるよりも、実質的には接触と同視できる程度に、プローブ11を記録面に接近させる方がよい。この点、本実施例においては、上述した本実施例に係る記録再生ヘッド100をプローブ11として用いているため、プローブ11が誘電体記録媒体20と接触する力を好適に検出することができるため、より好ましい態様でプローブ11を記録面に接近或いは接触させることができる。
そして、発振器13は、プローブ11直下の誘電体材料17に係る容量CsとインダクタLとを構成要因として含む共振回路の共振周波数で発振する。この共振周波数は、上述のとおりその中心周波数をおおよそ1GHz程度とする。
ここで、リターン電極12及びプローブ11は、発振器13による発振回路14の一部を構成している。プローブ11から誘電体材料17に印加された1GHz程度の高周波信号は、図39中点線の矢印にて示すように、誘電体材料17内を通過してリターン電極12に戻る。リターン電極12をプローブ11の近傍に設け、発振器13を含む発振回路の帰還経路を短くすることにより、発振回路内にノイズ(例えば、浮遊容量成分)が入り込むのを軽減することができる。
付言すると、誘電体材料17の非線形誘電率に対応する容量Csの変化は微小であり、これを検出するためには、高い検出精度を有する検出方法を採用する必要がある。FM変調を用いた検出方法は、一般に高い検出精度を得ることができるが、誘電体材料17の非線形誘電率に対応する微小な容量変化の検出を可能とするために、さらに検出精度を高める必要がある。そこで、本実施例に係る誘電体記録再生装置1(即ち、SNDM原理を用いた記録再生装置)は、リターン電極12をプローブ11の近傍に配置し、発振回路の帰還経路をできる限り短くしている。これにより、極めて高い検出精度を得ることができ、誘電体の非線形誘電率に対応する微小な容量変化を検出することが可能となる。
発振器13の駆動後、プローブ11を誘電体記録媒体20上において記録面と平行な方向に移動させる。すると移動によって、プローブ11直下の誘電体材料17のドメインが変わり、その分極方向が変わるたびに、容量Csが変化する。容量Csが変化すると、共振周波数、即ち、発振器13の発振周波数が変化する。この結果、発振器13は、容量Csの変化に基づいてFM変調された信号を出力する。
このFM信号は、復調器30によって周波数−電圧変換される。この結果、容量Csの変化は、電圧の大きさに変換される。容量Csの変化は、誘電体材料17の非線形誘電率に対応し、この非線形誘電率は、誘電体材料17の分極方向に対応し、この分極方向は、誘電体材料17に記録されたデータに対応する。従って、復調器30から得られる信号は、誘電体記録媒体20に記録されたデータに対応して電圧が変化する信号となる。更に、復調器30から得られた信号は、信号検出部34に供給され、例えば同期検波されることで、誘電体記録媒体20に記録されたデータが抽出される。
このとき、信号検出部34では、交流信号発生器21により生成された交流信号が参照信号として用いられる。これにより、例えば復調器30から得られる信号がノイズを多く含んでおり、又は抽出すべきデータが微弱であっても、後述の如く参照信号と同期をとることで当該データを高精度に抽出することが可能となる。
この再生動作時においても、記録動作の場合と同様に、ピエゾ抵抗素子部140の電気抵抗値の変化を高精度に或いは高感度に検出することができる。従って、必要以上にプローブ11を誘電体記録媒体12に押し付けたり、或いは必要以上にプローブ11が誘電体記録媒体12から離れたりする不都合を防ぐことができる。
また、上述の実施例では、誘電体材料17を記録層に用いているが、非線形誘電率や自発分極の有無という観点からは、該誘電体材料17は、強誘電体であることが好ましい。
また、本発明は、請求の範囲及び明細書全体から読み取るこのできる発明の要旨又は思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴うセンサ、記録再生ヘッド、記録装置及び再生装置もまた本発明の技術思想に含まれる。