JP4332767B2 - 変圧器用コンサベータ内の絶縁油遮蔽体 - Google Patents

変圧器用コンサベータ内の絶縁油遮蔽体 Download PDF

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Description

【0001】
【発明が属する技術分野】
本発明は、変圧器のコンサベータ内の絶縁油が空気や水分と接触するのを防止する変圧器用コンサベータ内の絶縁油遮蔽体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
変圧器には、変圧器の絶縁耐力と冷却効果を上げるために、絶縁油が封入されていて、この絶縁油は周囲の温度や負荷状態の変化で膨張と収縮を繰り返している。
【0003】
絶縁油の絶縁耐力を高めるには、絶縁油に水分が混入するのを防がなければならないし、一方、冷却効果を高めるには、高温になった絶縁油が酸素と化学反応を起こさないように空気と絶縁油を遮断する必要がある。そのために、ケース内に封入されている絶縁油が、膨張、収縮ができるようにすると共に絶縁油が外気と接触しないようにする、所謂コンサベータという絶縁油劣化防止装置が取り付けられている。
【0004】
上記コンサベータの一型式として、油密封方式があり、この油密封方式には、図1に示すように、コンサベータ1に入っている油2の油面上に絶縁油遮蔽体となる隔膜3を設け、油面の変動に伴って、隔膜3が上下に変動する所謂隔膜式のものと、図2に示すように、コンサベータ1内に絶縁油遮蔽体となる袋5を入れ、この袋5の内部を口部6を通して外気に通じさせて油2の膨張、収縮に応じて袋5内の空気が流出する所謂袋式のものとが知られている。
【0005】
前記した隔膜3と袋5は、絶縁油に接触するので、耐油性がなくてはならない上、高温にさらされるので、耐熱性に富み、また、油と空気を、就中、酸素を隔絶するためにガス不透過性に優れた物性をもつことが必要であり、更に、油の膨張、収縮に伴ってスムースな屈曲運動ができ、且つ反復する頻りな屈曲回数に耐えるために耐操性に富むものでなくてはならない。
【0006】
上記目的を可及的に満たすものとして、従来はアクリルニトリルゴムを、ナイロン織布の基布の両面に塗布した接着剤層を介して圧延、展着したアクリルニトリルゴム積層布(以下「NBR積層布」という)が用いられ、このNBR積層布を所定の形状に裁断し、この裁断布の縁を接着剤を介して重ね合せて継ぎ目を設け、この継ぎ目の表裏両面には接着剤を介して補強テープを当てがって加熱、加圧して隔膜3又は袋5を作成していた。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、隔膜2や袋5の構成材として用いられたNBR積層布は、耐油性に富み、且つ耐高温性に優れた物性をもつのであるとしても、隔膜3や袋5を加工するに当たっては、継ぎ目となる接着部分は全て、あらかじめ研磨加工を施し、研磨加工を施した上に接着剤を塗布し、更に、加熱加圧するといった多くの工程を要し、生産能率は必ずしも良いとは云えなかった。
【0008】
しかも、積層ゴム層から硫黄分が油中に析出すると、金属類を腐食するので、積層ゴムからは遊離硫黄が生じないように処置しなければならなかった。
【0009】
また、隔膜3や袋5は、油の膨張、収縮に敏感に応動してスムーズに運動するものでなければならないので、十分可撓性に富むものでなければならない。そのためには、構成材の厚みは可及的に薄いことが必要であるにも拘らず、従来のNBR積層布では、精一杯薄くしても1mm程度が限界であって、それ故に、よりスムースな運動を得るには不十分であった。
【0010】
更に、NBR積層布は、せいぜい温度が−20から−30℃で耐寒性は必ずしも良いとは云えない。そのため、寒冷地で隔膜3や袋5を交換する場合は、隔膜3や袋5を予め加温して柔軟性を与えてからでないとコンサベータ1に取り付けることが困難であるといった種々の課題があった。
【0011】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、耐油性、耐熱性、耐寒性及びガス不透過性に富み、柔軟性があって屈曲特性が優れ、更に、加工時の作業を向上させると共に取り付け時の作業をも容易にする変圧器用コンサベータ内の絶縁油遮蔽体を得ることにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明の変圧器用コンサベータ内の絶縁油遮蔽体は、ナイロン織布の表裏両面に形成されている熱可塑性ポリ炭酸型ポリウレタンを含む接着剤層を介して、熱可塑性ポリ炭酸型ポリウレタン層が形成されている熱可塑性ポリ炭酸型ポリウレタン積層布を融着して所定の形状に成形してなる。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態に就いて図面を参照して説明する。
図1は隔膜式の絶縁油遮蔽体を設けた変圧器用コンサベータを示す断面図で、コンサベータ1に入っている油2の油面上に絶縁油遮蔽体を構成する積層布からなる隔膜3を設け、この隔膜3の耳部をコンサベータ1に設けられている一対のフランジ4,4の間に挟持させて、油面の変動に伴って、隔膜3が上下に変動するように設置されている。また、図2は袋式の絶縁油遮蔽体を設けた変圧器用コンサベータを示す断面図で、コンサベータ1内に絶縁油遮蔽体を構成する積層布で成形した袋5を入れ、この袋5の内部を口部6を通して外気に通じさせて油2の膨張、収縮に応じて袋5内の空気が流出するようになっている。
【0014】
図3は本発明の変圧器用コンサベータ内の絶縁油遮蔽体を構成する積層布の要部断面図を示し、熱可塑性ポリウレタンを含む接着剤をナイロン66の210デニール、密度が、たて、よこ共に50本/inの平織布7の両面に塗付して接着剤層8,8を形成し、前記接着剤層8,8の上に熱可塑性ポリ炭酸型ポリウレタンを圧延展着した後に加熱処理して熱可塑性ポリ炭酸型ポリウレタン層9,9を形成して、総厚みが0.6mmの熱可塑性ポリ炭酸型ポリウレタン積層布10を作成する。そして、熱可塑性ポリ炭酸型ポリウレタン積層布10を構成材として熱融着加工手段により、絶縁油遮蔽体である隔膜3又は袋4の遮蔽体を作成する。
尚、図中、11は平織布7のよこ糸、12はたて糸をそれぞれ示す。
【0015】
(比較例1)
前記熱可塑性ポリ炭酸型ポリウレタン積層布10とは別に、熱可塑性ポリウレタン積層布を作成した。即ち、熱可塑性ポリウレタンを含む接着剤をナイロン66の210デニール、密度が、たて、よこ共に50本/inの平織布の両面に塗付して接着剤層を形成し、前記接着剤層の上に熱可塑性ポリエーテル型ポリウレタンを圧延展着した後に加熱処理して熱可塑性ポリエーテル型ポリウレタン層を形成して、総厚みが0.6mmの熱可塑性ポリエーテル型ポリウレタン積層布を作成する。そして、熱可塑性ポリエーテル型ポリウレタン積層布を構成材として熱融着加工手段により、絶縁油遮蔽体として隔膜3又は袋4を作成した。
【0016】
(比較例2)
同様に、前記熱可塑性ポリ炭酸型ポリウレタン積層布7に替えて、熱可塑性ポリウレタン積層布を作成した。即ち、熱可塑性ポリウレタンを含む接着剤をナイロン66の210デニール、密度が、たて、よこ共に50本/inの平織布の両面に塗付して接着剤層を形成し、前記接着剤層の上に熱可塑性ポリカプロ型ポリウレタンを圧延展着した後に加熱処理して熱可塑性ポリカプロ型ポリウレタン層を形成して、総厚みが0.6mmの熱可塑性ポリ炭酸ポリカプロ積層布を作成する。そして、熱可塑性ポリカプロ型ポリウレタン積層布を構成材として熱融着加工手段により、絶縁油遮蔽体として隔膜3又は袋4を作成した。
【0017】
本発明の熱可塑性ポリ炭酸型ポリウレタン積層布10、比較例1の熱可塑性ポリエーテル型ポリウレタン積層布及び比較例2の熱可塑性ポリカプロ型ポリウレタン積層布との前記3種の熱可塑性ポリウレタン積層布と、従来から用いられているNBR積層布(基布:210デニールナイロン66、密度:たて、よこ57本/in、総厚み:1.0mm)の各物性値を測定し、その結果を表1に示した。
【0018】
【表1】
Figure 0004332767
【0019】
表1に示す通り、―30℃以下における衝撃脆化点において、NBR積層布は、悪いのに対し、本発明の熱可塑性ポリ炭酸型ポリウレタン積層布10は、良好の結果を得た。また、耐油性の揉み試験において、熱可塑性ポリエーテル型ポリウレタン積層布並びに熱可塑性ポリカプロ型ポリウレタン積層布は、やや劣るが、本発明の積層布10は、良好であった。
それ故に、本発明の熱可塑性ポリ炭酸型ポリウレタン積層布10は、NBR積層布及び熱可塑性ポリエーテル型ポリウレタン積層布並びに熱可塑性ポリカプロ型ポリウレタン積層布に比較し、絶縁油遮蔽体の構成材として必要な物性で優れていることが判明した。特に、寒冷地における使用は、従来のNBR積層布は不適であるが、本発明の積層布10は、寒冷地での使用に適していることが理解できる。
【0020】
【発明の効果】
本発明の変圧器用コンサベータ内の絶縁油遮蔽体は、構成材として、ナイロン織布の両面に熱可塑性ポリ炭酸型ポリウレタン層を積層した熱可塑性ポリウレタン積層布を用いたので、従来から用いられているNBR積層布及び熱可塑性ポリエーテル型並びに熱可塑性ポリプロ型の各ポリウレタン積層布を構成材とするものに比較し、耐寒性が優れているので、寒冷地で、コンサベータのケースに取り付ける際に加温しなくても作業がなし得る。即ち、従来のNBR積層布を用いた遮蔽体は、−20℃近辺で、硬直化したのに対し、本発明の積層布を用いた遮蔽体は、−20℃近辺では十分に柔軟性を保持し、加温しなくても、作業が容易、且つ迅速に成し得る。
【0021】
本発明の絶縁油遮蔽体は、0.6mm程度の厚みの構成材で作成したもので十分に機能を果たすもので、従来のものに比し、大幅に軽量化ができて、搬送や作業を容易ならしめる。
【0022】
本発明の絶縁油遮蔽体は、油と空気を遮断するために用いるが、本発明の遮蔽体は熱可塑性ポリウレタン積層布でできていても、酸素の透過度は、NBRの含有率が32%以下のNBR積層布に比して、約40%も低く油の酸化防止に大きい効果を発揮する。
【0023】
本発明の絶縁油遮蔽体は、熱可塑性のポリウレタン積層布を構成材とするので、隔膜や袋に加工するには、高周波融着機による融着が可能であり、制作工程数と時間を大幅に低減することができる。
【0024】
本発明の絶縁油遮蔽体は、熱可塑性ポリウレタン積層布を構成材としているので、変圧器油に硫黄分が析出しないので変圧器及びコンサベータ内の諸金属を腐食することがない等の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の隔膜式の絶縁油遮蔽体を設けたコンサベータを示す断面図である。
【図2】本発明の袋式の絶縁油遮蔽体を設けたコンサベータを示す断面図である。
【図3】本発明の変圧器用コンサベータ内の絶縁油遮蔽体の構成材である熱可塑性ポリ炭酸型ポリウレタン積層布の要部断面図である。
【符号の説明】
1 コンサベータ
2 油
3 隔膜
4 フランジ
5 袋
6 口部
7 平織布
8 接着剤層
9 熱可塑性ポリ炭酸型ポリウレタン層
10 熱可塑性ポリ炭酸型ポリウレタン積層布
11 よこ糸
12 たて糸

Claims (1)

  1. ナイロン織布の表裏両面に形成されている熱可塑性ポリ炭酸型ポリウレタンを含む接着剤層を介して、熱可塑性ポリ炭酸型ポリウレタン層が形成されている熱可塑性ポリ炭酸型ポリウレタン積層布を融着して所定の形状に成形してなる変圧器用コンサベータ内の絶縁油遮蔽体。
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