JP4332529B2 - 外皮付き水煮タケノコの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、密封状態で長期保存が可能な外皮付き水煮タケノコの製造方法に関する。
古くから旬の食材としてタケノコは親しまれてきた。缶詰による保存技術の普及に伴い、春に収穫したタケノコを水煮して密封保存することで、一年を通じてタケノコを容易に入手することが可能となっている。
タケノコは、イネ科植物のタケの新芽であり、特に可食部の上部は生育のためのエネルギー源である糖質を多く含有するため、竹林の周辺に生息する動物に食害されたり、微生物や細菌等による病害のおそれがあった。そこで、このような動物による食害や、微生物や細菌等による病害から身を守るため、タケノコの可食部、即ち、後に成長して竿となる部分は、何層にも重なり合う硬い外皮で覆われ、さらに、特に、新芽の先端周辺を被覆する外皮は、防腐・消毒殺菌効果を有するフェノールを多く含有することによっても食害や病害から身を守っている。なお、タケノコの可食部を被覆する外皮の表面には多数の毛が生えており、断熱効果も有する。また、フェノールはタケノコを食する場合の苦味や渋みのもとであることが一般に知られている。
また、タケノコは、地下茎から切り離しても組織細胞が死滅しておらず、タケノコは生きた状態にあるのである。つまり、タケノコの可食部や外皮の細胞は依然として代謝機能を有し、収穫してからそのまま放置すると、この生きた細胞の酵素作用及び呼吸作用に伴い、タケノコの組織内に「あく」と呼ばれる苦味や渋みの成分が生成され蓄積されて、可食部の変質・劣化が起こることが知られている。
さらに、タケノコの可食部は、その大部分が多数のブドウ糖が略直鎖状に結合したセルロースを主成分とする植物細胞であり、この植物細胞を構成するセルロースが加熱されると、ブドウ糖とブドウ糖の結合が一部切断されて軟化し、食べられるようになるのである。
このように、硬い外皮に覆われ苦味や渋み成分を有するタケノコは、まず、可食部への熱の伝達を容易にし、外皮に含まれる苦味成分を煮汁に溶出させる目的で、外皮付きタケノコの穂先部分を切り落とし、或いは、タケノコの外皮に可食部に達する程度の切込みを軸方向に入れ、或いは、この両方の処理を行った後に荒煮し、次いで、約1日程度水にさらして外皮の特に先端部に多く含まれる苦味や渋みのもととなる成分を水に溶出させる、あく抜き作業を行うのと同時に冷却し、続いて、加熱により軟化した外皮を剥し、さらに、外観を整えるため、弓状の治具を用いて可食部表面に残る外皮をそぎ落とし、最後に、外皮を剥皮したタケノコを缶に詰め込んで隙間を水で満たし、pHを調整して再度加熱殺菌処理をしてから密閉保存していた。
しかしながら、タケノコを荒煮して外皮を剥がし、その後、高温で加熱殺菌処理を行うと、食する際に剥皮作業を行う必要がないものの、加熱中にタケノコの可食部の裸出部分からタケノコ本来の味のもとである細胞質成分が充填液中に溶出してしまい、この結果、風味が失われてしまうという課題があった。また、結果的に可食にする加熱処理が2度行われるため、特に柔らかい可食部の上部はいわゆる煮過ぎの状態となってしまい、タケノコ特有の食感が損なわれてしまうという課題もあった。
このような従来の課題に対して、外皮付きタケノコを剥皮することなく加熱処理することによりタケノコ本来の風味や栄養分が損なわれにくいことが知られており、タケノコを外皮付きのまま水煮にして長期保存する方法がいくつか開示されている。
例えば、特許文献1には、「筍の惣菜キット」という名称で、外皮の一部を残して水煮したゆがき筍を真空パックにしたものと、調合した調味料類を別途包装した宅配用セットに係る考案が開示されている。
特許文献1に開示された「筍の惣菜キット」に係るゆがき筍は、朝掘りした外皮付き筍の穂先を切り落として縦方向に切り込みを入れ、米ぬかとたかの爪(唐辛子)とともに水から90分加熱し、荒皮(特に硬い外皮)のみを剥いで、薄くて柔らかく可食な姫皮を残した状態で真空パックにしたものである。
このゆがき筍は、朝掘りした筍を収穫後時間が経過しないうちに加工するので、筍の可食部と可食な姫皮に渋みや苦味のもととなる、いわゆる「あく」がほとんど蓄積されていない。従って、苦味や渋みの少ないゆがき筍にすることができる。
また、このゆがき筍は、調理と殺菌を兼ねた加熱処理を1度だけ行うので、筍の組織の軟化の程度が低く、歯ざわりの良いゆがき筍となる。
また、特許文献2には、「生筍の調理,殺菌方法」という名称で皮付き筍の保存方法に係る発明が開示されている。
特許文献2に開示された、「生筍の調理,殺菌方法」は、剥皮しない生の筍260gの芯抜きを行い、清水70gと共に空缶に充填して密封し、雰囲気圧力4.0kg/cm2で温度が140℃の熱水雰囲気中に25分間浸漬した後冷却させるというものである。
このように外皮を有する筍の調理と殺菌を兼ねた加熱処理を1度だけ高温高圧の下で行った場合、筍の外皮を剥皮してから2度目の加熱により殺菌処理した場合に比べると、可食部の表面が充填液に晒されることがないために、風味や香りのもととなる細胞質成分が充填液内に過度に溶出することがなく、風味や香りの優れた水煮筍となる。
また、特許文献2に開示された方法では、調理と殺菌を1回の加熱処理で完了できるので、調理のための加熱処理と、殺菌のための加熱処理の間に行われる冷却や水晒し等の作業工程を省略することがで、作業能率を高めることができる。
また、特許文献2に係る方法の実施例において、加熱処理前の外皮付き生筍に下処理として、筍の芯抜き、即ち、筍の軸方向に貫通孔を設けることが記されている。
先に述べたように、皮付き筍の穂先は、断熱性を有する外皮が幾重にも重なり合っているため熱が通りにくい構造になっている。このため、特許文献2に係る方法のように筍の軸方向に貫通孔を設けることで、筍の内部に高温の充填液を流動させて、比較的短時間で加熱調理・殺菌を完了することができる。
さらに、筍を皮付きのまま缶詰めにするので、従来のように荒煮の後筍の皮を剥皮する場合に比べて格段に廃棄物量を少なくできる。また、消費者は、筍の柔らかい外皮部分を食べるかどうかを自由に選択することができるので、筍の料理レパートリーも広がる。
さらに、特許文献3には「筍の缶詰め保存方法」という名称で、やはり皮付き筍の保存方法に係る発明が開示されている。
特許文献3に開示された「筍の缶詰め保存方法」は、まず、採取した孟宗竹又は真竹の筍を常圧の下、水蒸気で1〜1.5時間蒸す。この処理により、筍は煮えておりこの蒸した筍を冷却して水洗いし、次に、pHを中性に調整した水と共に空き缶に充填して100℃の温度で1〜1.5時間程度加熱して密封し、その後、0〜3℃の温度のもとで保存するというものである。
このような方法で保存される水煮筍は、特許文献2の場合と同様に、従来の外皮を剥皮した水煮筍を製造する場合に比べて、格段に廃棄物量を少なくすることができる。また、食する際に、筍の柔らかい姫皮部分を食べるかどうかを自由に選択することができるので、筍の料理レパートリーも広がる。
実開平4−71488号公報 特開昭51−115948号公報 特開平4−58866号公報
しかしながら、上述の特許文献1に開示された発明におけるゆがき筍は、調理と殺菌のために外皮付きの筍を、常圧で水から1.5時間加熱しただけである。このように、常圧で100℃を大幅に超えない温度で加熱処理を行った場合、腐敗菌の胞子の一部は死滅せずに容易に生き残ることができる。このため、ゆがき筍を真空パックにしても、長期間保存した場合には、生き残った腐敗菌により腐敗がおこってしまう可能性があった。
また、このゆがき筍は、冷水と共に容器に充填された後、なんら殺菌処理が行なわれていないため、この冷水に腐敗菌が混入していた場合には、ゆがき筍が腐敗する可能性がさらに高まるという課題もあった。
また、特許文献2に開示された発明に係る方法においては、外皮付きのまま筍を調理・殺菌処理しているので、細胞質成分が充填液に溶出おそれが少ないものの、筍の収穫後、生きた細胞の代謝機能を停止させるような処置を何ら行うことなく長時間が経過した筍を、このような方法で加熱・殺菌処理をした場合、外皮や可食部に蓄積される苦味や渋みのもととなる成分の大半が、可食部の組織内に溶存したままとなり、味が劣った水煮筍になってしまう可能性があった。
また、筍の可食部のうちの特に上部(先端部)は、新鮮であれば生で食べられるほど柔らかく、熱の通りも極めて早い。このため、実施例に記載されるように筍の芯抜きを行い、つまり、筍の軸方向に貫通孔を設けて、筍の内部を高温の充填液が流動できるようにすると、可食部の下部、すなわち、組織の硬い根元部分が可食となるのに必要な熱量と同じ量の熱量が可食部の上部にも加えられることになり、この結果、筍の上部が煮えすぎの状態となり、組織の破壊が大きい上、独特の食感が損なわれる可能性があった。さらに、味のもとである糖類を多く含有する可食部の上部に貫通孔を設けることで、可溶性の糖類が貫通孔を流動する充填液に溶出してしまい、豊かな味が損なわれるおそれもあった。
さらに、特許文献2に開示された方法を実施するためには、体積のかさばる外皮付きの筍を大量に収容し、高圧・高温で処理できる設備が必要となる。このため、作業工程を省略できたとしても、設備のためのコストがかさむという課題があった。
また、特許文献3に開示された発明においても、特許文献1と同様に、殺菌工程として常圧のもと、100℃で1.5時間の加熱処理を行っているが、特許文献3に記載される実験結果からも明らかなように、上述のような条件で加熱しただけでは十分な殺菌効果が発揮されていない。
このため、殺菌工程の後0℃〜3℃の温度で保存することで、仮に腐敗菌が休眠状態となり水煮筍の長期間保存に成功したとしても、その後、水煮した筍を流通させる段階になって密閉容器を開封し、水煮した筍の温度が上昇したり、空気と接触したりした場合、充填液はほぼ中性に保たれていることから、腐敗菌が活動しやすい環境となってしまい、活動を休止していた腐敗菌の活動に伴い、水煮した筍が腐敗する可能性があった。
また、殺菌工程後の保存温度を0℃〜3℃とすると、特に0℃に近い温度で保存した場合、充填液がゆっくりと凍結するおそれもあった。低温保存中の水煮筍に凍結が始まると、まず微小な氷の粒が水煮した筍の可食部の細胞壁内に生じ、この微小な氷の粒は徐々に肥大しながら、細胞壁を押し広げるように破壊してしまう。このように、緩やかに凍結した水煮筍が融けた場合、氷の粒があった場所は空洞となり水煮筍の可食部がスポンジ状になってしまうことで、筍独特の食感が失われてしまう可能性があった。また、可食部の組織内に生じた氷粒の融解に伴い、味のもとである細胞質成分が壊れた細胞壁から溶出してしまう。そして、筍本来の風味や味も失われてしまう可能性があった。つまり、水煮した筍を十分に殺菌しないまま、凍結のおそれのある温度で長期間保存すると、腐敗や凍結により水煮筍の品質が著し低下する可能性があり、結果として生産性が悪くなるという課題があった。
本発明はかかる従来の事情に対処してなされたものであり、タケノコの可食部上部の過熱による軟化を防止し、水煮タケノコの味や食感を好適に保ったまま、腐敗させることなく長期間保存することができる外皮付き水煮タケノコの製造方法を提供することにある。
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明である外皮付き水煮タケノコの製造方法は、収穫後の外皮付きタケノコを加熱して、酵素作用及び呼吸作用に伴う外皮付きタケノコの可食部の変質・劣化を防止する第1の工程と、その後に外皮付きタケノコを冷却する第2の工程と、その後に外皮付きタケノコの外皮に軸方向へ切込みを入れるとともに,外皮付きタケノコの底部に外皮付きタケノコの軸方向中央に達する程度の穴を形成する第3の工程と、その後に外皮付きタケノコを加熱して可食可能にしかつ殺菌する第4の工程と、その後あるいは第3の工程の後に外皮付きタケノコを容器詰めする工程を有することを特徴とするものである。
請求項1に記載の外皮付き水煮タケノコの製造方法に係る第1の工程においては、活動可能な細胞の酵素を熱で失活させるという作用を有する。そして、この酵素の失活により、細胞内部における苦味や渋みのもととなる物質の生成を停止させるという作用を有する。また、外皮を付けたまま加熱することで、外皮の内側に存在する可食部を保護しながら細胞酵素を失活させるという作用を有する。
さらに、この第1の工程の後に続く第2の工程は、タケノコの細胞壁を構成するセルロースのブドウ糖同士の結合が、熱により過度に切断されるのを防止するという作用を有する。また、第2の工程は、タケノコの細胞壁内部に含有され、タケノコ独特の味のもととなる細胞質成分が熱により変性するのを妨げるという作用を有する。
一般に、外皮付きのタケノコを調理する場合、加熱調理前にタケノコの外皮の外側から軸方向に向って可食部に達しない程度の切込を入れ、加熱により外皮を軟化させた後、外皮付きのタケノコを両手で支持したまま両親指をこの切込みの内部へ挿入し、この状態のまま左右に外皮を押し開くことで容易に剥皮することができる。
従って、第3の工程においてタケノコの外皮に設けられる切込みは、タケノコの外皮に指の挿入を可能にして剥皮を容易にするという作用を有する。また、タケノコの外皮に切込を入れることで、続く第4の工程における殺菌処理のための加熱の際に、熱の浸透を徐々に促しつつ外皮と外皮の癒着を妨げるという作用を有する。また、第3の工程において、外皮付きタケノコの底部に外皮付きタケノコの軸方向中央に達する程度の深さに空けられた穴は、筍の内部に熱媒体を供給して、タケノコを内側から加熱するという作用を有する。
最後に、第3の工程に続く第4の工程は、外皮付きタケノコを殺菌するという作用を有する。さらに、タケノコの可食部を被覆する外皮は、熱媒体の可食部への直接的な接触を妨げて熱の伝達を緩やかにする一方で、タケノコの外皮に切込みを入れることでタケノコの外皮に隙間にも熱媒体が浸透するので、可食部を可食可能にしかつ殺菌するために必要な熱が伝達されるという作用を有する。また、外皮を付けたままの加熱によって、可食部に接触する熱媒体に味のもととなる細胞質成分が多量に溶出することを妨げる作用を有する。
また、請求項2に記載の発明である外皮付き水煮タケノコの製造方法は、請求項1記載の外皮付き水煮タケノコ製造方法であって、外皮付きタケノコの底部に形成される穴の直径は、5〜10mm程度であることを特徴とするものである。
上記構成の発明は、請求項1記載の発明における穴の大きさを具体的に記載したものであるため、請求項1記載の発明と同じ作用を有する。
請求項3に記載の発明である外皮付き水煮タケノコの製造方法は、請求項1に記載の発明において、前記第1の工程における加熱媒体は、熱水、水蒸気、加圧水蒸気又は過熱水蒸気のうち、いずれか1つあるいはその組合せであることを特徴とするものである。
上記構成の外皮付き水煮タケノコの製造方法において、熱水、水蒸気、加圧水蒸気又は過熱水蒸気からなる加熱媒体は、外皮付きタケノコを外部から加熱して、タケノコの細胞内の酵素を失活させるという作用を有する。また、タケノコの細胞内の酵素を失活させることにより、タケノコの細胞の呼吸作用を停止させるという作用も有する。
本発明の請求項1に係る外皮付き水煮タケノコの製造方法においては、第1の工程によりタケノコの組織細胞がほぼ死滅するため、この第1の工程の後に組織細胞内において、苦味や渋みのもととなる成分がそれ以上生成されることがなく、最終製品であるタケノコの水煮を苦味や渋みの少ないものにすることができる。
また、第2の工程は、第1の工程の際の余熱により、タケノコの組織内のセルロースの糖鎖が必要以上に切断されるのを妨げることができ、タケノコの繊維質が軟化するのを防止するという効果を有する。このため、第4の工程における加熱殺菌処理を行った場合でも、過度にタケノコの可食部が軟化することがなくタケノコ独特の食感が失われるのを防止するという効果を有する。
さらに、切込みによりタケノコの外皮と外皮の隙間に熱媒体が供給されることで、可食部を可食可能にしかつ殺菌するのに必要な熱を供給するという効果を有する。さらに、タケノコの外皮と外皮の隙間に熱媒体が浸透することで、第4の工程の際に、タケノコの外皮の熱による癒着を防止できるという効果も有する。従って、外皮2に切り込みを入れることでタケノコの殺菌を確実にできるだけでなく、消費者が実際にタケノコを食する際に、外皮の剥皮をスムースにするという効果も期待できる。
加えて、第3の工程において切り込みとともにタケノコの底に貫通しない穴を形成することにより、この穴から伝達される熱で、タケノコの可食部において特に硬い下部をタケノコの内側から加熱することができるので、水煮タケノコの硬さを略均一なものにすることができる。また、加熱殺菌処理時の熱で可食部内部の空気が膨張してタケノコが破裂するのを防止することができる。
最後に、第4の工程では外皮付きタケノコの可食部を好適な状態で可食に加熱すると同時に、確実に殺菌することができる。従って、外皮付き水煮タケノコを長期間保存することが可能になる。
また、このように第1乃至第4の工程の順に従って外皮付きタケノコの水煮を製造すると、特に柔軟な可食部の上部は外皮により過度の加熱を防止することができるので歯ごたえのある水煮タケノコにすることができる。また、加熱殺菌時及び長期保存時において外皮は、タケノコの可食部の表面を被覆して、味のもととなる細胞質成分が充填液に溶出するのを効果的に防止する。従って水煮タケノコの味が豊かになる。
さらに、第1乃至第4の工程には、従来の外皮を剥皮したタケノコの水煮を製造する際の施設をそのまま流用することができ、たとえば、特許文献2に記載される発明のように、高温・高圧を実現するための特別な施設を設ける必要がないので、食感や味の優れた外皮付き水煮タケノコを安価に提供することができる。また、第1乃至第4の工程において、タケノコの外皮を剥皮する必要がないので有機廃棄物の排出を削減でき、外皮の剥皮にかかる人件費も節約できる。
さらに、通常の外皮を剥がした水煮タケノコであれば取り除かれていたタケノコの可食部上部の柔らかい外皮(姫皮)を残したまま水煮タケノコを製造することができるため、姫皮という貴重な可食部を付けたまま商品として販売することが可能であり、商品価値を高めることができる。
また、これまで外皮を剥皮すると可食部が小さく、商品価値がないという理由で廃棄されていた小型のタケノコも、実際にはこのような小型のタケノコの方が味も優れており商品価値は高いことから、外皮を剥皮することなく加工することで、商品として流通させることができるため資源の有効利用が可能となる。
なお、第3の工程の後にタケノコを容器詰めする工程を設けた場合、既に容器詰めしてあるので殺菌加熱処理した後は、そのまま出荷することが可能である。一方、第4の工程の後にタケノコを容器詰めする工程を設けた場合には、無菌状態を維持したままでタケノコを容器詰めする必要があるものの、加熱殺菌処理を、例えば大きな容器中で一括して行うことが可能となり、作業効率を高めることができる。
また、本発明の請求項2に係る外皮付き水煮タケノコの製造方法は、請求項1記載の発明と同じ効果を有する。
最後に、本発明の請求項3に係る外皮付き水煮タケノコの製造方法においては、請求項1又は請求項2の発明の効果に加えて、外皮付きタケノコに効率的に熱を加えられる熱媒体を入手容易かつ安価にすることができて経済的である。
以下に、本発明の第1の実施の形態に係る外皮付き水煮タケノコの製造方法を図1乃至図3に基づいて説明する。
本発明の第1の実施の形態に係る外皮付き水煮タケノコの製造方法は、タケノコを水煮して長期保存した場合であってもタケノコ独特の歯ざわりや味が失われることがないよう、タケノコの生理学的・生態学的特徴を考慮して加工工程を構成したものであるが、まず、タケノコの構造、すなわち、生態学的特徴について図1を参照しながら説明する。なお、ここで説明するタケノコとは、水煮タケノコを製造する際に一般に用いられる真竹或いは孟宗竹の新芽を示している。
なお、本実施の形態においては、タケノコの切り口直径が約6cm〜20cmのものを使用した場合の加熱条件を示している。このため、これよりも切り口直径が大きいタケノコを加工する場合には、以下に説明する加熱処理工程における加熱温度を高く設定するか、あるいは加熱処理時間を長く設定する必要がある。
図1は、外皮付きタケノコの一部を切り欠いて断面で示す外形図である。
図1に示すように、タケノコ1は主に可食部3とこの可食部3を被覆する外皮2からなっている。また、この可食部3は、下部7から上部5に向って円錐形状をなし、その内部空間は複数の節4により水平方向に仕切られている。なお、可食部3において節4により仕切られてできる隙間は、タケノコ1の下部7から中部6においては空間9を形成しているが上部5に向うに従い、この空間9は次第に狭まり、図中では符号Bで示される位置から上の部分においては節4が互いに重なり合うようになっている。
そして、特に可食部3の上部5の周辺は柔らかく、この部分の組織細胞は糖分を多く含有しており、竹林周辺に生息する動物に食害されたり、病原菌に侵されるおそれがある。このため、可食部3の上部5は外皮2が幾重にも重なりあって自ら保護している。
また、上部5周辺の外皮2は、抗菌・殺菌性を有し、苦味や渋みのもととなるフェノール等の含有量が多く、タケノコ1はこのような物質を体内に蓄積することによっても外敵から身を守っているのである。また、外皮2は断熱性も有しており、寒期の低温や霜からタケノコ1を守っている。
つまり、タケノコ1は、可食部3の下部7から上部5に向うにしたがって組織が軟弱となり、これと対応するように下部7から上部5に向って厚い外皮2に覆われているという生態学的特徴を有している。このため、可食部3の全体においてタケノコ独特の食感が損なわれないようにするためには、上部5への加熱を抑制し、反対に下部7は十分に加熱されるように配慮する必要がある。
次に、タケノコ1の生理学的特徴について説明する。
タケノコ1の組織細胞は、先にも述べたように、竹の地下茎から単に切り離しただけでは生命活動を停止せず、この生きた組織細胞の酵素作用や呼吸作用により苦味や渋み成分の生成と、体内への蓄積が起こり続ける。従って、収穫してから最初の加熱処理までの時間が長ければ長いほど、苦味や渋みの強いタケノコの水煮となってしまうのである。
上述のような生理学的・生態学的特徴を有するタケノコに対応した本実施の形態に係る外皮付き水煮タケノコ製造工程を図2及び図3を参照しながら説明する。
図2は、本実施の形態に係る外皮付き水煮タケノコ製造工程を示すフローチャートである。
図2に示す外皮付き水煮タケノコ製造工程10aにおける第1の工程は、収穫したタケノコ1を、熱水、水蒸気、加圧水蒸気又は過熱水蒸気のうちいずれか1つ、或いはその組合せにより加熱して、タケノコ1の組織細胞内の酵素を失活させて呼吸作用を停止させるという加熱工程11である。
本実施の形態においては、加熱工程11として、外皮2付きタケノコ1を1.2〜1.3気圧、温度121℃の条件下において約15分間の加熱処理を行った。この加熱工程11によりタケノコ1の細胞組織内における呼吸作用等の代謝機能をつかさどる酵素は失活し、最終製品である水煮タケノコ1を甘み等の味が勝ったものにすることができるのである。
一般に、タケノコ1の呼吸作用は、タケノコ1の細胞内において糖を解糖してエネルギーを得る工程であるが、この解糖工程は酵素により仲介されているため、タケノコ1の組織細胞内の酵素が失活するとタケノコ1の呼吸作用も停止するのである。
本来、水煮するタケノコ1は収穫されてから、加熱工程11の加熱処理が開始されるまでの時間が短ければ短ほど良いのであるが、本実施の形態においては、収穫後、すなわち、竹の地下茎からタケノコ1を切り離した時点から、加熱工程11の加熱処理が開始されるまでの時間が24時間を経過しないものを用いている。一般に、生体内における酵素作用や呼吸作用は、化学的な定量反応とは異なり、たとえば、タケノコ1内の水分含有量や、温度等の外的要因に大きく左右されるものである。従って、全てのタケノコ1について、一概に収穫後24時間を経過したタケノコ1の苦味や渋みが増すとはいえないものの、収穫後24時間以内に加熱工程11に係る加熱処理を施したタケノコ1は、苦味や渋みよりもむしろ甘み等の味が勝っている。そこで、本実施の形態にかかる外皮付き水煮タケノコ製造工程10aにおいては、収穫後にタケノコ1を搬送する時間や、タケノコ1に付着した泥を洗い流す時間も含めてタケノコ1の収穫から、加熱工程11が開始されるまでの時間を24時間以内とした。
また、タケノコ1の細胞組織内における呼吸作用等の代謝機能をつかさどる酵素や、苦味や渋みの生成を介助する酵素は、すなわち、タンパク性触媒であり、このタンパク性触媒は、通常それを取り巻く温度が70℃を超えると分子構造の変形が始まり、やがて触媒機能を失ってしまうことが知られている。
また、細胞組織内の酵素を失活させるには、可食部3の温度が約70℃〜90℃に保たれた状態を約1分程度持続させる必要があるのであるが、本実施の形態では、加熱工程11として外皮2付きタケノコ1を1.2〜1.3気圧、温度121℃の条件下において約15分間の加熱処理することでこの条件を満たすことができる。
他方、タケノコ1は、タケノコ1の細胞壁を構成するセルロースに加えられる熱量が多ければ多いほど、セルロースの糖鎖の切断が進み、組織の軟化が進行してしまう。つまり、加熱工程11においてタケノコ1を加熱する温度が高ければ高いほど、また、その温度による加熱時間が長ければ長いほどタケノコ1の軟化が進むのである。
しかしながら、加熱工程11に係る加熱処理の最大の目的は、タケノコ1の酵素を失活させることにあり、タケノコ1を可食に軟化させることではない。このため、タケノコ1の外皮2を傷つけないように注意しながら、加熱工程11における加熱は、タケノコ1の軟化が極力進まないように必要最低限の温度と時間で行う必要がある。
さらに、加熱工程11における加熱媒体が熱水の場合は、比較的低い温度で時間をかけて酵素を失活させる場合に適している。また、高温の加熱媒体である過熱水蒸気や加圧水蒸気は、高い温度で短時間に酵素を失活させる場合に適している。
なお、加熱することなくタケノコ1の酵素を失活させることができれば、加熱工程11においてタケノコ1を加熱する必要はなく、この加熱工程11は、タケノコの酵素失活工程となる。
次に、酵素を失活させるために十分な熱量がタケノコ1に加えられた後は、余熱でタケノコ1の組織の軟化が進まないように直ちに冷却する必要があり、このための処理が第2の工程に係る冷却工程12である。
本実施の形態における冷却工程12では、加熱工程11において加熱したタケノコ1を直ちに冷水にさらしタケノコ1を冷却している。
冷却工程12における冷却手段は、タケノコ1を素早く除熱できるものであればその方法は問題としない。たとえば、氷水を用いてもよいし、冷風にさらしてもよい。
続く、第3の工程は、切込み工程13と穴あけ工程14の2つの工程により構成されている。ここで、図3を参照しながら、切込み工程13と穴あけ工程14について詳細に説明する。
図3(a)は切込みを入れた外皮付きタケノコの外形図であり、(b)は図3(a)におけるタケノコの垂直断面図である。なお、図1又は図2に記載されたものと同一部分については同一符号を付し、その構成についての説明は省略する。
図3(a)に示されるように、切込み工程13では、タケノコ1に図中に示されるような切込み8を刃物で入れる工程である。図3(b)に符号A−A線で示される程度の深さの切込み8は、外皮2の表面から可食部3の表面に達しない程度入れることが好ましいが、万一、可食部3が傷ついても特に問題はない。
このような切込み8を外皮2に設けることで、切込み8に指を挿入し、先に述べた方法で容易にタケノコ1から外皮2を剥皮することができる。
また、切込み8を外皮2に設けることで、第3の工程後の第4の工程としての容器詰め工程15において、容器内のタケノコ1の隙間を満たすように充填液18を満たすのであるが、この時、切込み8から外皮2と外皮2の間に充填液18が浸入して、第5の工程である加熱殺菌工程16の際に、外皮2と外皮2が癒着するのを防止することができる。このため、水煮されたタケノコ1の外皮2をスムースに剥皮することができるのである。また、外皮2の隙間に浸透した充填液18は、外皮2の内側から可食部3を加熱するという作用を有する。このため、断熱効果の高い外皮2が積層した可食部3の上部5にも可食可能にかつ殺菌するために必要な熱が確実に伝達されるのである。従って、後の加熱殺菌工程16における殺菌効果を一層確実なものにすることができる。
なお、充填液18としては、ミネラル分を含有する天然水や弱酸性調整水を用いることが好ましいが、本実施の形態においては、水道水を用いている。このように、充填液18として、ミネラル分を含有する天然水や弱酸性調製水、或いは特に調整を行わない水道水を用いることなく、万一、蒸留水や精製水等のミネラル分の含有量が極めて少ない水を充填液18として用いた場合には、可食部3の細胞内部と外部には濃度勾配が生じ、この結果、細胞膜が浸透膜として作用して、タケノコ1の細胞内に多量の充填液18が流入したり、傷ついた細胞から細胞質成分が著しく充填液18へと溶出する。このため、水煮されたタケノコ1は味がうすく、極めて水っぽいものになってしまうのである。
また、切込み8は線状であり顕著な開口を有するものではない。このため、切込み8から外皮2の隙間に浸入する充填液18と、タケノコ1の外皮2の外側を対流する充填液18が自発的に頻繁に入れ替わるものではない。従って、後の加熱殺菌工程16において外皮2の隙間に浸入する充填液18によって可食部3の表面から細胞質成分が過度に溶出するおそれがなく、水煮タケノコ1の味を豊なものにすることができる。また、加熱殺菌工程16後に水煮タケノコ1を長期保存する場合にも、切込み8から充填液18が自発的に頻繁に入れ替わることがないので、長期保存の際に可食部3の表面から食味のもとである細胞質成分が過度に充填液18に溶出するのを防止するという効果も発揮する。さらに、外皮2が存在することで、過熱殺菌工程16において、上部5を含めて可食部3を過度に加熱することを防止している。
さらに、図3(b)中の符号Cで示す範囲の外皮の内側に隠れた部分は、姫皮19と呼ばれ珍重されており、加熱することで可食となる。本実施の形態に係る外皮付き水煮タケノコ製造工程10aにより製造される水煮タケノコは、外皮付きのまま流通されるので、製造過程及び流通過程においても姫皮19の形が崩れることもなく利用が容易である。従って、製品の価値を高めると同時に、製造過程における廃棄部分を少なくすることも可能である。
再び、第3の工程の説明に戻るが、切込み工程13の後に、穴あけ工程14を行う。この穴あけ工程14は、図3(b)に示すように、タケノコ1の底部に空間9を形成する節4を貫通するような穴17を設ける工程である。
実際には、外からタケノコ1のどの部分まで空間9が形成されているかを見ることができないため、空間9を形成している節4部分にのみ穴17を開けることは困難なのであるが、経験上穴17はタケノコ1の軸方向略中央に達していればよく、タケノコ1の軸方向に貫通する孔を設ける必要はない。
これは、通常タケノコ1の節4と節4による隙間は、何らかの原因で傷つけられる等の理由で外部環境と接触することがない限り、無菌状態に保たれており、穴あけ工程14においてタケノコ1の軸方向に貫通孔を設け、加熱媒体の流動を可能にしてまで殺菌する必要はなく、可食部3の上部5は単に可食可能な程度に加熱されればよいからである。従って、穴あけ工程14において、穴17がタケノコ1の軸方向略中央に達していればよいのはこのためである。
この穴あけ工程14により設けられる穴17は、加熱殺菌工程16の際に1.0気圧を超える条件の下でタケノコ1を加熱した場合でも、節4と節4により密閉された空間9内の空気が膨張してタケノコ1が破裂するのを防止するという効果を有する。
また、この穴17は、タケノコ1の空間9内への充填液18の浸入を可能にし、タケノコ1を内部から加熱するという効果を有する。なお、図3(b)に示す穴17の直径Hは約5mm〜10mmであることが望ましく、穴17の直径Hが5mmに満たない場合には充填液18が節4と節4により構成される空間9内にスムースに流入しなかったり、あるいは、空間9内の空気がスムースに外部に導出されないという不具合を生じる可能性がある。一方で、穴17の直径Hを10mmよりも大きく設定した場合には、加熱殺菌工程16においてタケノコ1の空間9内の充填液18と外部の充填液18が温度上昇による対流に伴い頻繁に入れ替わり、この結果、食味のもとである細胞質成分が充填液18に過度に溶出したり、過度に内側から加熱されてしまうおそれがあるので好ましくない。
つまり、第3の工程を終了したタケノコ1を容器詰めし、充填液18でタケノコ1の隙間を満たすと、図3(b)に示すように、タケノコ1の底部に設けられる穴17から充填液18が浸入し、節4と節4によって仕切られる空間9は充填液18で満たすことができる。
ここで、タケノコ1に切込み8及び穴17を設けて加熱殺菌工程16を行った際の、タケノコ1の上部5と下部7に供給される熱量の違いについて図4を参照しながら詳細に説明する。
図4(a)はタケノコの垂直断面図であり、(b)は図4中の点Dから点Eの区間において外部から供給される熱量を示すグラフである。また(c)は図4中の点Fから点Gの区間において外部から供給される熱量を示すグラフである。なお、図1乃至図3に記載されたものと同一部分については同一符号を付し、その構成についての説明は省略する。
図4(a)及び(b)に示すように、タケノコ1に切込み8及び穴17を設けて加熱殺菌工程16を行った場合、タケノコ1の上部5には、内部に充填液18が流入しないので、加熱殺菌工程16に係る熱はタケノコ1の外側の充填液18及び外皮2の隙間に浸透する充填液18からのみ供給される。この結果、外皮2の外側の点Dからタケノコ1の中心部の点Eに向うにつれて、タケノコ1の可食部3に供給される熱量Qは徐々に減少するのである。
これに対して、図4(a)及び(c)に示すように、下部7では、穴17から充填液18がタケノコ1の内部に流入するため、加熱殺菌工程16に係る熱はタケノコ1の外側及び内側の両方から供給される。この結果、外皮2の外側の点Fとタケノコ1の中心部における点Gでは、供給される熱量に大差が生じないのである。
従って、このような状態で第5の工程に係る加熱殺菌工程16を行った場合、外皮2を残しておくことも相まって、特に柔軟な可食部3の上部5が過度に加熱されるのを防止することができ、しかも、特に硬い下部7ではタケノコ1の外側とび内側の両方から同時に加熱することができる点が特に優れている。
なお、タケノコ1が小さい場合であっても、節4と節4で構成される空間9を有する場合には、タケノコ1が破損しないように底部に穴17を設けることが望ましい。
一方、このようにタケノコ1の底部にタケノコ1の軸方向略中央に達する程度の
穴17を設けないまま外皮付きタケノコ1を加熱殺菌工程16において加熱すると、図中の符号Bで示される部分周辺は、積層する空間9により断熱され、外皮2の断熱効果も相まってたとえ長時間加熱処理したとしても、可食部3が可食に加熱されない恐れがある。さらに、空間9内の空気が膨張してタケノコ1が破裂する恐れもある。このように、いずれの場合も水煮タケノコの品質を著しく低下させてしまうおそれがある。
他方、タケノコ1の軸方向に貫通するような孔を設けた場合には、高圧・高温条件下において加熱殺菌処理してもタケノコ1が破裂する恐れはないものの、タケノコ1の外側と内側を充填液18が対流するため、可食部3の上部5における細胞質成分が充填液18に溶出し、さらに、充填液18の加熱作用により上部5は過熱状態となってしまい、タケノコ独特の味と食感が損なわれる可能性があるので好ましくない。
このように、加熱殺菌工程16を行う前に、タケノコ1に切込み8と穴17を設けることで、タケノコ1が破裂するのを防止することができ、さらに、可食部3の上部5と下部7に加わる熱量が調節され、上部5の過熱が防止されると同時に下部7の加熱が促進されるのである。しかも、充填液18に溶出する細胞質成分を最小限にすることができる。
したがって、加熱殺菌工程16後のタケノコ1を、適度な歯ごたえと味を有するものにすることができる。
また、第3の工程において、切込み工程13と穴あけ工程14は必ずしもこの順序で行う必要はなく、穴あけ工程14を先に行っても良い。
なお、切込み工程13と穴あけ工程14を第1の工程に係る加熱工程11の前に行わないのは、加熱工程11の前に切込み工程13や穴あけ工程14を行うと、加熱媒体がタケノコ1の切込み8や穴17から外皮の隙間や可食部3の内部に浸入し、不必要な加熱や細胞質成分の溶出が起こる可能性がある。この不必要な加熱や細胞質成分の溶出は、タケノコ1の食感や味の劣化のもとであるため、本実施の形態では、加熱工程11の後に切込み工程13や穴あけ工程14を行うことにしているのである。
つまり、外皮付きのタケノコ1を可食に長期間保存するためには、最終的に可食可能に加熱しかつ殺菌する必要があるものの、加熱工程11においてタケノコ1を確実に可食可能に加熱しかつ殺菌する必要はない。すなわち、加熱工程11はあくまでもタケノコ1内の酵素を失活させるための工程であり、タケノコ1は可食に加熱される必要も、十分に殺菌されている必要もないのである。このように、加熱工程11と加熱殺菌工程16はいずれも加熱処理ではあるが、その目的は全く異なるものである。
上述のように、第3の工程において切込み8と穴17を設けたタケノコ1を、
これに続く第4の工程である容器詰め工程15において、内側に腐食のためのコーティング等を施した空缶等の容器に詰め込み、その隙間を充填液18、本実施の形態においては水道水で満たす。
なお、この時、充填液18にクエン酸を加えて、充填液18全体が弱酸性となるように調整してもよい。このように、充填液18を弱酸性に保つことで、水煮したタケノコ1の酸化による味の劣化を防止することができる。また、弱酸性の充填液18は、万一、第5の工程に係る加熱殺菌工程16において、腐敗菌の胞子等が殺菌されることなく残ってしまった場合に、この腐敗菌の繁殖を阻害して、水煮タケノコの腐敗を防止することができる。
最後に、容器詰め工程15において容器詰めされ、弱酸性の充填液18を満たした外皮付きのタケノコ1を加熱殺菌工程16において加熱殺菌処理し、容器が熱いうちに密閉する。
本実施の形態においては、一般にタケノコ1を水煮して保存する際に用いられる18リットル入りの容器に替えて9リットル入りの容器を用い、この容器に容器詰めされ充填液18で満たしたタケノコ1を、1.2〜1.3気圧、温度121℃の条件下において約2時間の加熱殺菌処理を行った。この加熱殺菌工程16における加熱により、タケノコ1は、はじめて可食に加熱され、さらに長期間保存できるように殺菌されるのである。
また、一般に缶詰の加熱殺菌処理において変敗の原因でありしかも耐熱性を有するバチルス菌を死滅させるためには121℃で少なくとも6分以上加熱する必要がある。このため、本実施の形態においてはこの点を考慮して加熱殺菌工程16に必要な温度を121℃としている。
なお、この加熱殺菌工程16に必要な温度を121℃よりも低く設定することも可能である。詳細な条件については後述の第2の実施の形態において説明する。
他方、1.2〜1.3気圧よりも高い圧力の下で加熱殺菌工程16を行った場合には、タケノコ1の細胞壁を構成するセルロースの糖鎖が過度に切断されてしまい、この結果、タケノコ1の軟化が進行してタケノコ1独特の食感が損なわれる恐れがある。
このように、加熱殺菌工程16の後密封されたタケノコ1は、粗熱をとった後、2℃〜5℃の低温で保存することが望ましいのであるが、常温でも十分長期保存が可能である。保存の際の温度が、2℃よりも低いと水煮されたタケノコ1が凍結して品質の劣化が起こる可能性が高まり、5℃よりも高い温度で保存した場合は、タケノコ1の酸化や軟化が進み味や食感が劣化する恐れがある。
以上、説明したような外皮付き水煮タケノコ製造工程10aにより製造された外皮付きの水煮タケノコ1は、食する際には外皮2を容易に剥皮することができ、長期間の保存された後も、タケノコ1特有の食感と味を有するものである。
なお、本実施の形態においては、第5の工程に係る加熱殺菌工程16を実施する前に第4の工程である容器詰め工程15を行ったが、無菌状態で容器詰め工程15を行うことができる場合には、加熱殺菌工程16の後に容器詰め工程15を行っても良い。
このような工程でタケノコ1の水煮を製造した場合、加熱殺菌工程16に大型の圧力鍋等を用いることができ、タケノコ1を密封用の容器ごと加熱する場合に比べて、加熱にかかるエネルギーを節約できる。
本発明の第1の実施の形態に係る外皮付き水煮タケノコ製造方法の効果を検証する目的で以下に示すような試験を行った。ここでは、その試験の概要と結果について説明する。
本試験は、タケノコ1の外皮2を剥皮することなく第1の実施の形態に係る外皮付き水煮タケノコ製造方法を実施したものと、タケノコ1の外皮2の一部を剥皮して第1の実施の形態に係る外皮付き水煮タケノコ製造方法を実施したものと、従来のようにタケノコ1の外皮2を全て剥皮した後、第1の実施の形態に係る外皮付き水煮タケノコ製造方法と同条件の下、加熱工程11〜加熱殺菌工程16を実施したものをそれぞれ準備し、それぞれの試料について、成分の調査(以下、試験1という。)と、タケノコ1の上部5,中部6,下部7における硬度の測定(以下、試験2という。)を行うことで、外皮2の細胞質成分溶出防止効果及びタケノコ1の上部5における過熱防止効果を検証したものである。
なお、本試験においては、2004年(平成16年)4月21日に、山口県岩国市阿品地区において、自然発生したタケノコ1(100本)の現物をサンプルとして鍬で掘り取り、水洗いしたものを試料とした。
次に、これらのサンプルを、収穫後24時間を経過しないうちに高圧殺菌釜で1.2気圧121℃の条件下において15分間加熱した(加熱工程11)。なお、後述する外皮付き水煮タケノコ製造工程10aに係る冷却工程12〜加熱殺菌工程16は、2004年(平成16年)4月22日及び4月26日の2回に分けて行った。
次に、外皮2を全て剥皮して水煮したタケノコ1と、外皮2を剥皮しないで水煮したタケノコ1について試験結果の比較ができるよう、サンプルの外皮2の剥皮状態が異なる3つの処理区を予め設定し、それぞれの処理区に供試されるサンプルについて、加熱殺菌工程16を行う前に下処理、即ち、切込み工程13及び穴あけ工程14及び外皮2の剥皮を行った。なお、各処理区におけるサンプルの剥皮状況及び下処理方法は表1に示すとおりである。
続いて、下処理済みのサンプルを各処理区ごとに、9リットル缶に9〜10個を詰め込み、サンプルの隙間を水道水で充填し(容器詰め工程15)、この後、高圧殺菌釜で1.2気圧121℃の条件下において1時間加熱した(加熱殺菌工程16)。
この加熱殺菌工程16の後、直ちに容器を密封し、即ち、閉缶して、全ての缶を5℃に設定した冷蔵室において保管した。
試験1は、2004年(平成16年)5月25日に開缶し、以下に示す手順に従って成分等の調査を行った。
まず、表1に示す各処理区から無作為に10サンプルを抽出して、外皮2を全て剥皮した後、組織が十分細かくなるようにミキシングを行い、このミキシングした各サンプルから3gを取り出し、それぞれについて乾式灰化処理を行った。さらに、乾式灰化処理を行った各サンプルについて、原子吸光光度計により、K(カリウム),Zn(亜鉛),Cu(銅),SiO2(ケイ酸)の含有量の調査を行い、生重量100gあたりの含有量(mgまたはμg)を求め、平均値±標準偏差値を測定結果とし、以下の表2に示した。最後に、各サンプルの外観を肉眼観察し、各処理区のサンプルごと外皮2の剥皮の難易を手作業で判定した。
表2は各処理区ごとの成分分析を行った結果を平均値±標準偏差値で示し、表にまとめたものである。
表2に示すように、試験1における成分の調査の結果、本発明品1区及び本発明品2区においては、K(カリウム),Zn(亜鉛),Cu(銅),SiO2(ケイ酸)の全ての含有量が従来品区の含有量を上回った。なお、本発明品1区及び本発明品2区における分析値と、従来品区における分析値との差が統計学的に有意なものであるか否かについて、「ウイルコクソンの順位和検定」により解析したところ、本発明品2区における分析値と従来品区における分析値には、1%水準で有意差があることが認められた。従って、タケノコ1の外皮2は、味のもととなる細胞質成分の溶出防止する効果を有するといえる。
また、試験2は、2004年(平成16年)12月2日に開缶し、以下に示す手順に従ってタケノコ1の上部5,中部6,下部7(図1を参照)における硬度の調査を行った。
まず、表1に示す各処理区のサンプルの外皮2を全て剥皮した後、サンプルの上部5,中部6,下部7を輪切りにし、この状態で各部位ごと2箇所の硬度を測定した。この硬度測定作業は、食品物性試験機を用いて、貫通方式により行い、測定した硬度の最高値を調査データとして採用した。また、各部位ごとに平均値±標準偏差値を調査結果として表3にまとめた。さらに、比較対照のため、市販の水煮タケノコについても上部5,中部6,下部7における硬度の測定を行った。なお、この硬度の測定は各処理区ごと5サンプルずつ行い、市販品1〜3については、3サンプルずつ硬度の測定を行った。また、市販品1のタケノコは中国産であり、市販品2及び市販品3には山口県以外の都道府県で収穫されたものである。
最後に、各サンプルの外観を肉眼観察し、各処理区のサンプルごと外皮2の剥皮の難易を手作業で判定した。
表3は各処理区ごとの硬度の測定結果を平均値±標準偏差値で示し表にまとめたものである。
表3に示すように、試験2における硬度の測定の結果は、市販品1〜3におけるタケノコ1の加熱殺菌に係る温度や加熱時間等の条件が不明であるため、一概に比較できないものの、従来品区及び市販品1〜3におけるタケノコ1硬度は、上部5と下部7の硬度差が比較的大きくなっているのに対し、本発明品1,2区に係るタケノコ1は、上部5,中部6,下部7の硬度差が比較的小さいという特徴を示している。
従って、タケノコ1の外皮2は上部5の過熱を防止して、タケノコ1の可食部3における上部5,中部6,下部7の硬度を略均一にする効果を有するといえる。
また、試験1及び試験2に供試するため、密封した缶を開封した際の本発明品2区に係るタケノコ1の外観は自然状態とほとんど変わらない状態であった。また、本発明品1区及び2区ともに、密封後221日を経過した後も外皮2を容易に剥皮することができ、実際に調理をする際に何ら支障がないことが明らかになった。さらに、密封してから11ヶ月を経過した後に開封し、実際に試食してみると本発明品1区及び2区に係るタケノコ1の風味は従来品区のものより優れていた。
以上述べたように、試験1及び試験2の結果、本発明の第1の実施の形態に係る外皮付き水煮タケノコ製造方法により加工した外皮2付きの水煮タケノコは、従来の外皮2を全て剥皮したものに比べ、加熱殺菌処理をし、長期間保存した後も味や食感が好適に維持され、外皮2を付けたまま流通させた場合においても、調理に何ら支障がないことが明らかになった。
以下に、本発明の第2の実施の形態に係る外皮付き水煮タケノコの製造方法を図4に基づいて説明する。
本発明の第2の実施の形態に係る外皮付き水煮タケノコの製造方法は、第1の実施の形態に係る外皮付き水煮タケノコ製造工程において、容器詰め工程の前に外皮付きタケノコを切り口直径が6cm〜10cmであるものに選別する選別工程を有し、さらに、加熱殺菌工程の際の加熱温度が低く設定されるか、または、加熱温度を121℃に設定した場合に加熱時間が短縮される点が第1の実施の形態に係る外皮付きタケノコ水煮製造工程とは異なる。
つまり、本発明の第2の実施の形態に係る外皮付きタケノコ水煮製造工程10bは、第1の実施の形態に係る外皮付きタケノコ水煮製造工程10aに使用するタケノコに比べて小さいタケノコを使用することで、加熱殺菌工程の際の加熱温度を低く、又は、加熱時間を短縮できるものである。
図5は本発明の第2の実施の形態に係る外皮付き水煮タケノコ製造工程を示すフローチャートである。なお、図1乃至図4に記載されたものと同一部分については同一符号を付し、その構成についての説明は省略する。
図5に示すように、本実施の形態に係る外皮付き水煮タケノコ製造工程10bでは、切込み工程13の前に選別工程20が設けられており、この選別工程20においてタケノコ1の切り口直径が6cm〜10cmであるものとそれ以外のものに区分けしている。このように、タケノコ1を、切り口直径を基準に選別することで、外皮付き水煮タケノコ1の大きさを略均一にすることができる。
この場合、タケノコ1を無選別のまま、たとえば、18L缶や9L缶等の容器に収容して加熱殺菌工程16を行う場合に比べて加熱温度を低く設定できる。このため、タケノコ1に過剰な熱が加わるのを防止することができ。この結果、タケノコ1が必要以上に軟化するのが妨げられ、しかも、タケノコ1の食味成分の溶出を最小限にすることができるので、水煮タケノコ1の商品としての価値が高まるという効果を有する。
また、このとき、タケノコ1の切り口直径が約10cmを超えるものについては、タケノコ1の切り口部分をいくらか切り落としたり、余分な外皮2を剥ぎ取ることで最終的に切り口の直径が約10cm程度となるよう調整してもよい。このようにタケノコ1を選別或いは大きさを調整することで、製品の歩留まりが向上するだけでなく、加熱殺菌工程16における熱の通りにムラが生じる可能性が少なくなり、水煮タケノコ1を一層高品質にすることができる。
なお、本発明においては、一旦選別されたタケノコ1を、所望の大きさに調整する作業も含めて選別工程としている。
上述のように、切り口の直径が約10cmまでとなるよう選別されたタケノコ1は、第1の実施の形態に係る外皮付き水煮タケノコ製造工程10aの場合と同様に、切込み工程13〜容器詰め工程15を経た後、加熱殺菌工程16において1.2〜1.3気圧、温度121℃の条件下において約30分間の加熱殺菌処理を行った。
また、特に上述のように、タケノコ1の切り口直径が約10cmまでとなるように選別した場合には、1.1〜1.2気圧、温度110℃の条件下において約2時間の加熱殺菌処理を行うことによっても十分な殺菌効果を期待することができる。
これは、一般に食べ物を腐敗させるバチルス菌を死滅させるためには121℃で少なくとも6分以上加熱する必要があるのであるが、これより低い温度であっても加熱時間を延長することで十分に殺菌することができる。
この場合、変敗の主原因であるバチルス菌の芽胞を死滅させるには、殺菌しようとする対象を最低100℃以上に加熱し、この状態を少なくとも20分間維持することが必要である。従って、1.1〜1.2気圧のもと、温度110℃で2時間の加熱処理を行えば、バチルス菌の芽胞を死滅させることができるのである。
他方、このような、圧力及び温度条件は、従来の外皮なし水煮タケノコを製造するための設備で十分実施可能であるため、特別な設備投資等を伴うことなく本発明の第2の実施の形態に係る外皮付き水煮タケノコ製造方法により水煮タケノコを製造することが可能である。
なお、本実施の形態においては、容器詰め工程15においてタケノコ1を収容する容器として9L缶を用いたが、必ずしも9L缶を用いる必要はなくタケノコ1が水中に浸った状態を保持したまま加熱殺菌処理を行うことができるよう構成されるものであればタケノコ1を収容する容器形態は問題としない。
また、本実施の形態に係る外皮付き水煮タケノコ製造工程10bにおいては、加熱殺菌工程16の際にタケノコ1と水道水を収容した9L缶の開口に、複数の少孔を穿設した仮蓋を覆設した状態で加熱殺菌処理を行った。このように、仮蓋を用いて加熱殺菌工程16を行うと、タケノコ1を収容する容器内の水が蒸発等により過度に失われるのを防止することができる。
本実施の形態に係る外皮付き水煮タケノコ製造工程10bにおいては、タケノコ1の選別作業を切込み工程13の前に行ったが、この選別工程20は容器詰め工程15の前に行われるのであればどの段階で行ってもよく、一連の作業がスムースに進むよう状況に応じて実施段階を適宜変更して良い。
このように、タケノコ1の大きさを略均一にすることで、加熱殺菌工程16における加熱時間の短縮や、加熱温度を低く設定することができ、この結果タケノコ1に加わる熱量を削減することができるので、外皮付きタケノコ1の歯ごたえと食味を一層豊にすることができる。
本発明の第2の実施の形態に係る外皮付き水煮タケノコ製造方法の殺菌状態及び食味を検証する目的で以下に示すような評価試験を行った。ここでは、その試験の概要と結果について説明する。
評価試験1では、本発明の第2の実施の形態に係る外皮付き水煮タケノコ製造方法により作業場所を変えて水煮タケノコを2回製造し、一定期間常温下で保存した後これらを開封して雑菌汚染の有無を検証した。
また、評価試験2では、本発明の第2の実施の形態に係る外皮付き水煮タケノコ製造方法により製造した水煮タケノコと、従来の全剥皮した水煮タケノコ加工品の食味調査を実施し、本発明の第2の実施の形態に係る外皮付き水煮タケノコ製造方法の食味への効果を検証した。
[1]評価試験1及び評価試験2に使用する供試材料(本発明品3, 本発明品4)の製造の手順について説明する。
1)本発明品3の製造は、山口県宇部市吉部に所在するJA山口宇部のタケノコ加工場内(以下吉部という。)で行った。
その手順は、まず、2005年(平成17年)4月24日(日)に山口県宇部市内において、自然発生・収集したサンプルを含む生タケノコを大きな釜内に入れ、水を加えて1.5時間煮込み処理を行い、1夜自然冷却した。次に、自然冷却したこれらのタケノコの中から、ものさしにより最大径が10cmより小さいタケノコを選別し、水洗い後、包丁により、タケノコ根元部を切り取り、形整後、先端から根元縦方向に、1ヶ所づつ可食部に到達する深さの切り込みを入れた。そして、この処理の後、9L缶にタケノコを5〜5.5kg(9〜10個づつ)入れ、水道水で容器内を満たした。このような本発明品3に係る処理区として6缶分の水煮タケノコを準備した。
さらに、タケノコを収容した缶の開口に小孔を穿設した蓋を仮覆設し、圧力釜で110℃、2時間の加熱殺菌処理を行った。このとき、加熱殺菌処理後に使用する小孔を穿設しない蓋についても同時に加熱殺菌処理を行った。このように、加熱殺菌処理時の温度を110℃とする場合、従来の施設をそのまま転用して本発明品に係る外皮付き水煮タケノコを製造することができる。
この加熱殺菌処理後、直ちに殺菌釜から外皮付きタケノコ又は全剥皮したタケノコを収容した缶を取り出し、仮覆設した小孔を穿設した蓋を取り除いて缶の内部を沸騰水で満たした後、小孔を穿設しない蓋を覆設して、閉缶器により閉缶した。上述のような手順で製造した缶詰は、加工場内において1夜自然温度下で冷却後、山口県農業試験場に運搬し、同敷地内において常温静置により保管した。
2)本発明品4の製造は、山口県山口市に所在する山口県農業試験場内の加工室内(以下農試という。)で行った。
その手順は、まず、2005年(平成17年)4月27日(水)に山口県宇部市内において、自然発生・収集した生タケノコのうち、最大径がおおむね10cmより小さいタケノコを選別し、サンプルとし、農試に運搬し、農試の保有する冷蔵庫内で1夜間、2℃で冷蔵保存した。次に、各サンプルを高圧殺菌釜で121℃、15分殺菌し、水洗い後、包丁により、タケノコ根元部を切り取り、形整後、先端から根元縦方向に、1ヶ所づつ可食部に到達する深さの切り込みを入れた。そして、各サンプルの最大径をノギスで計測し、10cmより大きいサンプルは、剥皮して10cmになるように調整した。このような計測・調整を行った後、9L缶にタケノコを9個づつ入れ、容器内を水道水で満たした。
同様の手順により9L缶にタケノコと水道水を収容したものを6缶準備し、缶づつ3つのグループに分け、上述の本発明品3に係る供試材料の場合と同様に、小孔を穿設した蓋を仮覆設した後、各グループの缶を高圧殺菌釜で121℃の温度条件下においてそれぞれ20分、30分、40分間の加熱殺菌処理を行った。このとき、加熱殺菌処理後に使用する小孔を穿設しない蓋についても同時に加熱殺菌処理を行った。
この殺菌処理後、直ちに殺菌釜から外皮付きタケノコを収容した缶を取り出し、小孔を穿設した蓋を取り除いて缶の内部を沸騰水で満たし、小孔を穿設しない蓋を覆設して、閉缶器により閉缶した。上述のような手順で製造した缶詰は、同敷地内において常温静置により保管した。
[2]評価試験1の概要と結果について説明する。
評価試験1では上述の1)又は2)の手順で製造した12缶について加熱殺菌処理後の経過について調査した。
なお、上述の2)に示す手順により製造した12缶のうち、加熱殺菌処理を20分間だけ行った2缶については、供試材料の過熱殺菌処理後約1か月を経過した時点で、水煮タケノコを収容する缶がかなりの内圧で形状変化を生じるほどに膨れたため、殺菌不良として除外した。
これ以外の10缶については、常温静置した後も外見上の異常が認められなかったため、水煮タケノコの製造から3か月経過した2005年(平成17年)7月26日(火)に山口県山口市に所在する山口県環境保健研究センターにおいて、1)に示す手順で製造した6缶のうちの1缶及び、2)に示す手順で製造したもののうち、加熱殺菌処理を30分間行ったもの及び40分間行ったものからそれぞれ1缶ずつを選んで缶内の水のpH値と雑菌の有無の調査を行った。なお、供試材料における雑菌の有無は、供試材料の一部を無菌状態下において、好気性菌及び嫌気性菌を検出する定法により調査した。
好気性菌の検出は、製造場所や加熱殺菌処理時間が異なる3つ処理区の供試試料をそれぞれ開缶して、任意の3本を無菌袋に入れ、この状態のまま剥皮し、剥皮したそれぞれのタケノコの頂部の1箇所と、左右の側部の各1箇所と、底部の1箇所の合計4箇所からそれぞれ10gの断片を切り取り、各断片につき90mlの滅菌したリン酸緩衝液を加えて、ストマッカーにより粉砕し、乳化状態にして調査試料とした。そして、(株)日水製薬製の標準寒天平板培地(シャーレ上の寒天培地)15ml上に上述の手順で乳化状態にした調査試料を1ml接種して、35℃の恒温室内で、7日間静置して菌の検出状況を調査した。
またこの調査では、タケノコから切り取った断片1つにつき同様の培養実験を同時に3枚の(株)日水製薬製の標準寒天平板培地を用いて行い、1缶当たりでは36枚の調査を実施した。
嫌気性菌の検出は、耐熱性菌類培養用袋内に、(株)日水製薬製のクロストリジア培地15mlに好気性菌の検出の場合と同様の手順により乳化状態にした調査試料1mlを混入し、空気を入れないように耐熱性菌類培養用袋の口をヒートシールして密閉し、35℃の恒温室内で7日間静置して菌の検出状況を調査した。
なお、供試材料を密閉保存したそれぞれの缶内の水のpH値は、開缶後、直ちに少量を容器に取り出して、pHメーターにより測定した。なお、pH値の測定は各缶につきそれぞれ3回行い、この平均値を各缶のpH値とした。上述のような評価試験1の結果を以下の表4に示す。
表4に示すように、本発明品3(吉部区=加熱温度110℃,加熱時間2時間)及び本発明品4(農試1区=加熱温度121℃,加熱時間30分,農試2区=加熱温度121℃,加熱時間40分)のいずれのサンプルからも菌の検出は認められなかった。このため、密封缶内において雑菌汚染はなく食用として問題がないことが確認された。なお、本発明品3及び本発明品4の処理区に係る表記は、製造場所と加熱殺菌処理時の温度や加熱時間の違いが理解されやすいように、吉部区,農試1区,農試2区のように記載した。
また、本発明品3である吉部区の供試試料は、全剥皮したタケノコを水煮加工する際、通常行われるクエン酸を用いたpH調整(通常、pH4.2程度に調整する。)を実施しなかったものの、このようなpH調整を実施した場合と同程度のpH値を示した。他方、本発明品4である農試1区,農試2区では酸性度がやや高い傾向を示しているがいずれも食用として問題ないことが確認された。
[3]評価試験2の概要と結果について説明する。
評価試験2では、本発明の第2の実施の形態に係る外皮付き水煮タケノコ製造工程により製造した水煮タケノコ〔上述の2)に示す手順で調整を行った本発明品3〕と、全剥皮した水煮タケノコ加工品を用い食味調査を実施した。
また、この食味調査は2005年(平成17年)7月21日(木)に山口県山口市に所在する山口県林業指導センター内(以下林指という。)で行った。この食味調査において対照となる全剥皮した水煮タケノコ加工品には、2005年(平成17年)4月15日(金)に山口県周防大島町内に所在するタケノコ加工場で、山口県産のタケノコを全剥皮して18L缶に水道水とともに収容し、加熱殺菌処理を実施したものを、山口県農業試験場が保有する冷蔵庫内において2℃の温度条件下で冷蔵保存していたもののうちの1缶を使用した。
本発明品3と従来品は、それぞれ缶から取り出した水煮タケノコを、食するに適当な大きさに切り分け、それぞれを別々に水道水のみで15分間煮込み調理した。
また、煮込み調理後に本発明品3と従来品を冷却し、それぞれを同じ種類の皿の上に「たけのこ1」、「たけのこ2」として少量入れ、水煮タケノコの調整方法や食味調査の目的に関する情報が一切伝えられていない山口県林業指導センターの職員17名に試食調査を実施し、表5に示すようなアンケート用紙に回答してもらった。なお、アンケート用紙に記載される「たけのこ1」は従来品であり、「たけのこ2」は本発明品3である。
上述のようなアンケート結果は、評点法(2元配置法)により項目ごとに解析し、その結果を表6に示した。
表6に示すように、評点法(2元配置法)による解析の結果、本発明品3と従来品は「総合評価」と「香り」の項目においては差が認められなかったものの、「味」については 本発明品3の方が優れているという結果が得られた。さらに、「歯ごたえ」は本発明品3の方が若干優れているという結果が得られた。そして「色」は従来品が優れるという結果であった。
なお、通常缶詰にされ水煮タケノコについてこのような食味調査を実施した場合、常温管理した水煮タケノコと冷蔵保存した水煮タケノコでは、冷蔵保存した水煮タケノコの方が明らかに食味が優れるという結果が得られる傾向にあるのであるが、この度の評価試験2においては、本発明品3に係る水煮タケノコが「色」を除く全ての項目において、冷蔵保存した水煮タケノコと同等であるか或いは同等以上であるという結果が得られた。
従って、本発明の第2の実施の形態に係る外皮付き水煮タケノコ製造方法によれば、既存のタケノコ加工施設を用いて特に食味の優れた外皮付き水煮タケノコを製造することが可能である。
なお、評価試験2において本発明品3の評価が低かった水煮タケノコの「色」に関して、本発明品3の場合、タケノコを外皮付のまま加工するため、加熱殺菌処理時や保存時に外皮に含まれる緑色の色素がタケノコの可食部分表面に染みこんでしまうことが原因として考えられる。他方、消費者は現在主として流通している従来品の白い水煮タケノコに慣れているため、本発明品3に係る水煮たけのこの色に違和感があり、この結果、「色」評価が低くなってしまったものと推察される。
本発明に係る外皮付き水煮タケノコ製造方法は、収穫後、細胞の酵素作用や呼吸作用により苦味や渋み、その他食する際に不快を与える物質の生成がおこる食品の水煮の製造と保存に関する分野において利用の可能性が高い。
外皮付きタケノコの一部を切り欠いて断面で示す外形図である。 本実施の形態に係る外皮付き水煮タケノコ製造工程を示すフローチャートである。 (a)は切込みを入れた外皮付きタケノコの外形図であり、(b)は(a)におけるタケノコの垂直断面図である。 (a)はタケノコの垂直断面図であり、(b)は図4中の点Dから点Eの区間において外部から供給される熱量を示すグラフである。また(c)は図4中の点Fから点Gの区間において外部から供給される熱量を示すグラフである。 本発明の第2の実施の形態に係る外皮付き水煮タケノコ製造工程を示すフローチャートである。
符号の説明
1…タケノコ 2…外皮 3…可食部 4…節 5…上部 6…中部 7…下部 8…切込み 9…空間 10a,10b…外皮付き水煮タケノコ製造工程 11…加熱工程 12…冷却工程 13…切込み工程 14…穴あけ工程 15…容器詰め工程 16…殺菌加熱工程 17…穴 18…充填液 19…姫皮 20…選別工程

Claims (3)

  1. 収穫後の外皮付きタケノコを加熱して、酵素作用及び呼吸作用に伴う前記外皮付きタケノコの可食部の変質・劣化を防止する第1の工程と、その後に前記外皮付きタケノコを冷却する第2の工程と、その後に前記外皮付きタケノコの外皮に軸方向へ切込みを入れるとともに,前記外皮付きタケノコの底部に前記外皮付きタケノコの軸方向中央に達する程度の穴を形成する第3の工程と、その後に前記外皮付きタケノコを加熱して可食可能にしかつ殺菌する第4の工程と、その後あるいは第3の工程の後に前記外皮付きタケノコを容器詰めする工程を有することを特徴とする外皮付き水煮タケノコの製造方法。
  2. 前記外皮付きタケノコの底部に形成される前記穴の直径は、5〜10mm程度であることを特徴とする請求項1記載の外皮付き水煮タケノコの製造方法。
  3. 前記第1の工程における加熱媒体は、熱水、水蒸気、加圧水蒸気、又は過熱水蒸気のうち、いずれか1つあるいはその組合せであることを特徴とする請求項1に記載の外皮付き水煮タケノコの製造方法。
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