JP4332072B2 - 加工性と焼き入れ性に優れた高炭素鋼板 - Google Patents

加工性と焼き入れ性に優れた高炭素鋼板 Download PDF

Info

Publication number
JP4332072B2
JP4332072B2 JP2004168057A JP2004168057A JP4332072B2 JP 4332072 B2 JP4332072 B2 JP 4332072B2 JP 2004168057 A JP2004168057 A JP 2004168057A JP 2004168057 A JP2004168057 A JP 2004168057A JP 4332072 B2 JP4332072 B2 JP 4332072B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
less
workability
carbide
hardenability
carbides
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP2004168057A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2005344194A (ja
Inventor
良久 高田
志郎 佐柳
一行 竹島
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nippon Steel Corp
Original Assignee
Nippon Steel Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Nippon Steel Corp filed Critical Nippon Steel Corp
Priority to JP2004168057A priority Critical patent/JP4332072B2/ja
Publication of JP2005344194A publication Critical patent/JP2005344194A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP4332072B2 publication Critical patent/JP4332072B2/ja
Expired - Fee Related legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Description

この発明は、成型時の加工性、熱処理後の耐磨耗性の優れた高炭素鋼板に関する。より具体的には、自動車の駆動系のギヤ部品、クラッチ部品等に用いられる加工性に優れ、焼き入れ性に優れた高炭素鋼板に関する。
一般に、自動車の駆動系のギヤ部品、クラッチ部品等、リクライナー用ギヤ部品はJISG4501に規定されるS35C、S45C、S55C等の機械構造用鋼を素材鋼板として、これを各目的製品形状に成型加工した後、焼き入れ、焼き戻して、所望の強度に調整される。ここで、前記の各製品の素材鋼板は、成型加工前は軟質で加工がし易く、次の成型加工後に施される熱処理によって初めて所望の強度が得られ、かっ使用時に耐衝撃性、耐磨耗性を発揮する特性が要求される。
また一般に、高炭素鋼板の加工は、切削や、打ち抜き、曲げ、絞り等で行なわれていた。しかし、プレス加工で複雑な形状に成形が可能であれば、切削や溶接による成形よりはるかに製造コストを下げることが可能なため、高炭素薄鋼板の加工性に対する要求がますます高まる傾向にある。同時に、自動車用製品では、軽量化等の要求から、個々の部品の小型化が進められている。部品の小型化は加工性の要求をますます厳しくしている。例えば、リクライナーシートに組み込まれるアームポールは半抜きで内側にギヤをファインブランキングで成形される部品がある。これらも軽量化、小型化の要請からギヤのモジュールを小さくする傾向にあり、従来に用いられていたS45Cでは十分な加工性が得られない。また、焼き入れ、焼戻しの熱処理により、強度を確保するが、焼入れ方法を従来の焼き入れ方法から高周波焼入れ、プラズマ加熱焼入れ等が試みられて、急速加熱、短時間保持の焼き入れ性の要求も増加している。
加工性、焼き入れ性を改善する方法として、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、参考文献5が開示されている。特許文献1は球状化焼鈍された炭化物の粒径と量を調整している。しかし、この技術で製造された鋼板は上記の要求される用途に対して、加工性が不十分である。特許文献2は、C:0.20%以上の高炭素薄鋼板において、炭化物粒径が1.3μm以下、フェライト粒径を1〜4μmに制御することで加工性と焼き入れ性を改善する技術が開示されている。しかし、この技術では、厳しい加工性が要求されるものには適用できない。特許文献3は、P量を6×B+0.005以下の添加量に調整した高炭素鋼板を球状化率が90%以上で、かつ炭化物粒径を0.4〜1.2μmに炭化物を制御し、加工性と焼き入れ性を改善した技術である。特許文献4は、フェライト粒径を2.0μm以上に、炭化物粒径を1.1μm以下、かつその形状比を1.5以下に制御する製造法である。特許文献5は、熱延鋼板を球状化焼鈍し、30%以上の冷間圧延、焼鈍することで、フェライト形状比を1.5以下、炭化物の形状比を1.3以下の鋼板を得る製造法である。
上記の技術で製造した高炭素鋼板は、いずれも、焼き入れ性は十分であるが、加工性が不十分であるか、加工性は満足するが、焼き入れ性が不十分である。また、上記の技術で製造した鋼板は、必ずしも加工性が良好でない場合があり、加工性と焼き入れ性を両立する技術に至っていない。このため、加工性と焼き入れ性を安定して有する高炭素鋼板の提供が待たれている。
特開平8−3687号公報 特開平8−128583号公報 特開平11−52866号公報 特開平11−89827号公報 特開2000−4529号公報
本発明は、上述した如く従来技術の課題である、安定した加工牲と安定した焼入れ性の両方に優れた高炭素鋼板を提供することを目的とする。
本発明者らは、高炭素鋼板の加工性、焼入れ性について詳細に検討した結果、炭化物のサイズ分布を制御することにより、加工性と焼き入れ性を両立できることを知見した。その要旨は、質量%でC:0.20%以上の高炭素薄鋼板において、炭化物の平均粒径が1.0μm以下、かつ、0.30μm以下の炭化物の比率が20%以下であることを特徴とする加工性の優れた高炭素鋼板にある。
以下本発明の構成要件について詳述する。
最初に、炭化物サイズ分布を制御することにより、加工性と焼き入れ性を両立できることを知見した事実について説明する。
C:0.45%、Si:0.18%、Mn:0.78%、P:0.011%、S:0.003%の組成の連続鋳造スラブを1200℃に加熱し、仕上げ温度:800〜850℃、巻取り温度:550〜690℃の条件で熱間圧延を行い、3.5mm厚みの鋼帯を製造した。この鋼を酸洗後に600〜710℃で12〜96時間の焼鈍を行った。この鋼板を高周波加熱で、加熱速度70℃/秒で800℃まで加熱後、直ちに油中に焼き入れし、焼き入れ硬さを測定した。加工性の評価はJIS5号引張り試験片の平行部中心に両端より2mm深さのVノッチを入れ、引張り速度:200mm/minの引張り試験を行い、伸びを測定した。加工性の評価にVノッチ付の引張り試験を行なった理由は、高炭素鋼板のプレス加工が比較的歪が局所に集中するケースが多く、高速引張りでのVノッチ付引張り試験の伸びと高炭素鋼板の加工性との対応が良い為である。また、この鋼板の炭化物のサイズ分布を走査型電子顕微鏡で調査した。図1は炭化物平均粒径と高周波焼き入れ硬さとの関係を示したもので、図2は0.3μm以下の炭化物粒径の割合とVノッチ引張り試験での伸びの関係を示したものである。
図1から分かるように、炭化物の粒径が大きくなるにしたがって、焼き入れ硬さが低下し、1.0μmを超えると焼き入れ硬さがHv:600以下になり、焼き入れ性が悪くなる。この事実から炭化物粒径を1.0μm以下を特定した。
高炭素鋼板の加工性の指標である、高速引張り時のVノッチ付引張り伸び値は、0.3μm以下の炭化物の割合が多くなるにしたがって低下する。0.3μm以下の炭化物の割合が20%超になると、Vノッチ伸び値が40%以上を安定して得られなくなる。このことから、0.3μm以下の炭化物の割合を20%以下に特定した。安定して高いVノッチ伸び値が得られる条件として0.3μm以下の炭化物の割合を15%以下にすることが好ましい。
炭化物平均粒径を1.0μm以下、0.3μm以下の炭化物粒径の比率を20%以下に制御することによって、加工性と焼き入れ性を両立する特性が得られる。
Cは焼き入れ後の硬さを調整するために必要な元素で、C量が0.20%未満になると焼き入れ硬さが得られなくなる。一方、C量が多くなると十分な加工性が得られなくなるので、実質的なC量の上限は0.90%である。
Bは焼き入れ性を高める元素としてよく知られている。C量が少ない場合に、安定した焼き入れ性を必要とする場合に0.0003〜0.0050%の範囲で添加する。0.0003%未満では焼き入れ性を高める効果を安定して発揮できない。一方、0.0050%超の添加は鋼を製造するときに、鋼飯の欠陥、疵の原因となり、製品歩留りを低下させ製造コストの上昇をまねく。好ましい範囲は、同様の理由から、0.0005%から0.0030%である。
TiはBを添加する場合に、Bの添加効果を発揮させるため、0.01〜0.050%の範囲で添加する。
炭化物のサイズと分布の制御で加工性と焼き入れ性が両立した鋼板が得られる理由は定かでないが、本発明者等は次のように考えている。高炭素鋼板の球状炭化物は、大きさの異なる炭化物がランダムに分布しておらず、微細な炭化物が多い個所と大きな炭化物が存在する個所が分かれている場合がほとんどである。このような炭化物分布の鋼板を加工すると微細な炭化物が存在する領域の変形が抑制され、大きな炭化物が存在する領域に変形が集中し、大きな炭化物の周りにボイドが生じ、これが合体して鋼板に割れが生じる。一方、微細な炭化物が少ないと炭化物の微細な炭化物が偏在する領域が少なくなり、0.3μm以下の炭化物割合が20%以下になると、微細炭化物が偏在する領域がほとんど無くなり、大きさの異なる炭化物はほぼランダムな分布となる。このような炭化物の分布の鋼板を加工した場合は、加工が全領域で均等に歪を分担し、炭化物の周りでのボイドが生じる加工量を高くする。この機構により、加工性が良好になる。
本発明によれば、炭化物の平均粒径だけでなく、0.3μm以下の微細炭化物が加工性に影響することに注目し、炭化物の平均粒径を1.0μm以下に制御し、加えて、0.3μm以下の炭化物割合を20%以下に制御すれば、焼入れ性と加工性に優れた高炭素鋼板が提供することができる。このように本発明に係る高炭素鋼板は加工性と焼入れ性に優れることから、ギヤに代表される自動車の変速機部品等を安価でかつ、安定した品質で製造することが可能となり、工業的に極めて有益な発明である。
本発明は、C:0.20%以上の高炭素鋼において、炭化物のサイズ分布を制御するのみで加工性と焼き入れ性を両立できるので、Si、Mn、P、S、Cr、Al等の元素は通常の範囲で添加しても良く、特に規定する必要はない。これらの元素は他の特性との関係で添加量を決めればよく、添加量により本発明の特徴を損なうことはない。ただし、好ましくは、次のようにすればよい。
Siは、添加量が多くなると鋼板が硬質になり、加工性を損なうので、0.50%以下とすることが好ましい。
Mnは焼き入れ性を高める元素として良く知られている。しかし、炭化物に固溶し、炭化物の溶解を遅らし、短時間加熱時の焼き入れ性を低下するので、1.5%以下の範囲で添加することが好ましい。
Pは加工性を損なうだけでなく、焼き入れ、焼き戻し後の靭性を劣化させるので0.03%以下とすることが好ましい。
SはMnS等の介在物を生成し、加工性を劣化させるので、0.02%以下にすることが好ましい。
CrはMnと同様に、焼き入れ性を高める元素であることが良く知られているが、しかし、短時間加熱保持時の焼き入れの場合は、炭化物の溶解を遅らせるため、1.0%以下の範囲で添加することが好ましい。
Alは過剰に添加すると焼き入れ性が悪くなるので、0.08%以下とすることが好ましい。
その他の不可避的に混入する元素が存在しても本発明の特徴を損なわない。
このような組成の鋼は転炉、電気炉等の通常の溶解炉で溶製され、連続鋳造あるいはインゴット―分塊圧延してスラブが造られる。この際、鋼成分の偏析が存在すると、球状化焼鈍、あるいは再結晶焼鈍後の炭化物粒径のバラツキが大きくなり、炭化物サイズ分布の制御が難しくなるので、できるだけ、凝固速度を速める、未凝固域で圧下を加える、電磁攪拌等の手段を用いて偏析を少なくすることが好ましい。
次に、熱間圧延されるが、この際の加熱温度は特に本発明の特徴に効果をもたらさないので、何度でも良いが、本発明では1050から1280℃の範囲で実施している。熱延仕上温度は圧延安定性等からAr3点温度以上とすることが好ましい。熱延後の冷却は球状化焼鈍あるいは再結晶焼鈍後の炭化物の大きさ、分布に影響するので、制御冷却をすることが好ましい。具体的には、フェライト変態温度域は急冷し、パーライト変態温度域は変態発熱に相当する熱量を抜熱する水量を注水し、均一なパーライト組織とすることが好ましい。巻取り温度は550〜650℃の範囲で行なうことが、球状化焼鈍あるいは再結晶焼鈍後の炭化物のサイズ、分布を制御するために好ましい。
次に、脱スケールの後、球状化焼鈍あるいは直接に冷間圧延後に焼鈍、あるいは球状化焼鈍後に冷間圧延、再結晶焼鈍される。これらの焼鈍は炭化物の平均粒径および、粒径の分布に影響するので、鋼成分、熱間圧延条件等を考慮して、冷間圧延率、焼鈍条件を選ぶことが好ましい。
このようにして製造された鋼帯は、必要に応じ、調質圧延を行い、製品に供される。
表1に示す組成の鋼を転炉で溶製し、連続鋳造によりスラブを造り、1250℃で加熱し、表2に記載の条件で熱間圧延し、3.2mmの鋼板を造った。この鋼板を酸洗後に表2に記載の条件で焼鈍した。この鋼板の圧延方向に平行な断面を研磨し、ピクリン酸飽和溶液で腐食後、走査型電子顕微鏡を用い炭化物の平均粒径および、0.3μm以下の炭化物の割合を測定した。JIS5号引張り試験片の平行部の中心に両端部に2mm深さのVノッチを付け、引張り速度100mm/minで引張り試験を行った。また、鋼板を800℃×2秒の保定後に油中に焼き入れ、その硬さを測定した。調査結果を表2に記した。鋼AはS35C相当成分、鋼BはS55C相当の成分、鋼CはSAEl070相当の成分の鋼板である。これらの鋼は一部、連続鋳造の冷却速度を変えた条件、電磁攪拌を行い、鋳造した。
Figure 0004332072
Figure 0004332072
A−1は炭化物の平均粒径が0.85μmで、0.3μm以下の炭化物が7.3%の鋼板である。この鋼板は、スラブを造る際に、電磁攪拌を用い、冷却速度を速めて製造した。熱延の加熱温度は1200℃、熱延仕上スタンドは、潤滑圧延し、後段3スタンドは等歪の圧下率で圧延し、熱延後の冷却はパーライト変態が610〜625℃の温度範囲で進行するように注水制御した。この鋼板は焼入れ硬さがHv:640、Vノッチ付引張り伸び値が51%で、優れた焼入れ性と、加工性を有している事が分かる。A−2は炭化物の平均粒径が1.43μmと本発明範囲から外れた比較例である。この鋼は焼入れ硬さがHv:520と焼入れ性が不十分で、加工性が若干低下している。A−3とA−4は、熱延条件がほぼ同じであるが、A−3は焼鈍保持中に±10℃以内で昇温、降温を14回繰り返えす熱サイクルを採用した鋼で、0.3μm以下の炭化物の占める割合が9.85%で、加工性の指標であるVノッチ伸びが良好であるに対し、通常の条件で製造したA−4は0.3μm以下の炭化物の割合が35.6%と本発明範囲から外れており、Vノッチ付引張りの伸びが低く、加工性が悪いことが分かる。
B−1は炭化物平均粒径が0.95μm、0.3μm以下の炭化物の割合が8.5%と本発明範囲の実施例である。この鋼は、偏析が少なくなる条件の電磁攪拌を付加してスラブを造り、熱延、焼鈍仕上温度、巻取り温度、焼鈍条件は表2記載の条件で製造した。ただし、熱延後の冷却は、パーライト変態温度を20℃以内に制御する注水を行った。この鋼板の焼入れ性はHv:740の焼入れ硬さを有し、優れており、加工性の指標であるVノッチ引張り伸びも高く、優れた加工性を有することが分かる。鋼B−2は通常の熱延、焼鈍条件で製造した比較例で、炭化物の平均粒径が1.51μmと大きい鋼板である。なを、B−2の熱延終了後の冷却時のパーライト変態温度は、580〜640℃であった。この鋼板の焼き入れ硬さはHv:620と、B−1のそれより大幅に硬さが低く、焼入れ性が劣ることが分かる。B−3,B−4は、熱延条件はほぼ同じであるが、B−3の焼鈍は保持の途中で温度を変化させる熱サイクルを採用したものである。炭化物平均粒径はほとんど差がないが、0.3μm以下の炭化物の割合がB−3の12.5%に対し、B−4は32.3%と両者で大幅に炭化物の粒径分布が異なり、微細な炭化物の多い鋼B−4の加工性が大きく劣ることが分かる。
C−1、C−2は、共に偏析が少なくなる条件の電磁攪拌を付加してスラブを製造したものであるが、C−1は熱延後の冷却中にパーライト変態を600〜610℃の範囲で進行するように注水した。C−2は通常の方法で冷却した鋼板である。通常の冷却で製造したC−2のパーライト変態温度範囲は570〜630℃であった。C−1の炭化物平均粒径は0.56μm、0.3μm以下の炭化物割合が12%で本発明範囲内である。C−2は、0.3μm以下の炭化物の割合が、25%と多い、比較例である。C−1は焼き入れ性、加工性共に優れた特性を有するが、C−2はC−1に比較して加工性が劣る。C−3は、炭化物の平均粒径が1.45μmと本発明範囲から外れた比較例である。この鋼は、焼入れ硬さが本発明範囲内の実施例より低く、焼入れ性が劣る。
Figure 0004332072
表1に示す組成の鋼を転炉で溶製し、連続鋳造によりスラブを造り、1250℃で加熱し、表3に記載の条件で熱間圧延し、酸洗、冷間圧延、焼鈍して、2.2mmの鋼板を造った。この鋼板の圧延方向に平行な断面を研磨し、ピクリン酸飽和溶液で腐食後、走査型電子顕微鏡を用い炭化物の平均粒径および、0.3μm以下の炭化物の割合を測定した。JIS5号引張り試験片の平行部の中心に両端部に2mm深さのVノッチを付け、引張り速度100mm/minで引張り試験を行った。また、鋼板を800℃×10秒の保定後に油中に焼き入れ、その硬さを測定した。調査結果を表2に記した。鋼AはS35C相当成分、鋼BはS55C相当の成分、鋼CはSAEl070相当の成分の鋼板である。これらの鋼は一部、連続鋳造の冷却速度を変えた鋳造、電磁攪拌、未凝固域の圧下を行って鋳造した。
A−5は連続鋳造時の冷却速度を速めてスラブを造り、表3記載の熱延、冷延、焼鈍した鋼板である。熱延後の冷却中のパーライト変態温度を20℃以内に制御して冷却した。この鋼板の炭化物の平均粒径が0.75μm、0.3μm以下の炭化物割合が8.6%で、本発明範囲内の実施例である。焼入れ後の硬さはHv:610で良好な焼入れ性を有し、Vノッチ付引張り伸びも高い値を示し、加工性も優れていることが分かる。A−6は特別な手段を講じることなく製造した鋼板で、炭化物平均粒径が1.42μm、0.3μm以下の炭化物割合が5.2%の比較例である。この鋼板はA−5に比べて、焼き入れ性が大きく劣っており、本発明の目的に合致しない。A−7,A−8は、熱延条件以外はほぼ同一の条件で製造した鋼板である。A−7は、通常の熱延条件で行い、A−8は熱延の仕上圧延中に冷却し、パーライト変態させた後に、急速加熱で850℃まで加熱、熱延した。A−7は炭化物の平均粒径が0.48μm、0.3μm以下の炭化物割合が25%の本発明範囲外の比較例である。一方、A−8は炭化物平均粒径が0.60μm、0.3μm以下の炭化物割合が9.0%の本発明範囲内の実施例である。A−8はA−7に比較して、焼入れ性は良好であると共に、優れた加工性を有することが分かる。B−5はS55C相当成分で、熱延までは、B−1と同じ条件で製造した鋼で、炭化物の平均粒径が0.66μm、0.3μm以下の炭化物割合が8.3%の本発明範囲内の実施例で、優れた焼入れ性と加工性を有している事が分かる。B−6は通常の製造条件で製造した鋼板で、炭化物平均粒径が1.23μm、0.3μm以下の炭化物の割合が4.3%の比較例であるが、B−5に比較して、焼入れ性、加工性共に劣る。B−7,B−8は熱延、冷間圧延まではほぼ同じ条件で製造されたが、B−7が通常の焼鈍で製造したに対し、B−8は焼鈍の保持中に±15℃の範囲で10回の昇温、降温を繰り返す熱サイクルを採用して製造した鋼板である。B−8の0.3μm以下の炭化物が23%に対し、B−7のそれは13%と微細な炭化物が少ない。両者の焼入れ性は同じであるが、加工性の指標であるVノッチ付引張り伸びは、B−7が高く、加工性が良好であることが分かる。C−4,C−5はSAEl070相当成分の鋼で、熱延、冷延、焼鈍はほぼ同じ条件で製造し、C−5は、通常の鋳造条件でスラブを製造し、C−4は電磁攪拌で従来材に比し、偏析を三分の一程度に低める条件でスラブを製造した。両鋼板の焼入れ性は同じであるが、微細な炭化物の少ないC−4の方が加工性の指標であるVノッチ付引張り伸びが高く、C−4の加工性が優れていることが分かる。C−6は通常の製造条件内で製造した鋼板である。この鋼板の炭化物平均粒径は1.23μmで、焼き入れ硬さがC−4,5に比較して低く、焼き入れ性が不足していることが分かる。
Figure 0004332072
表1に示す組成の鋼B,鋼Cを転炉で溶製し、連続鋳造によりスラブを造り、1250℃で加熱し、熱延圧延し、表4に記載の条件で一次焼鈍、冷間圧延、二次焼鈍を行って、2.2mmの鋼板を造った。この鋼板の圧延方向に平行な断面を研磨し、ピクリン酸飽和溶液で腐食後、走査型電子顕微鏡を用い炭化物の平均粒径および、0.3μm以下の炭化物の割合を測定した。JIS5号引張り試験片の平行部の中心に両端部に2mm深さのVノッチを付け、引張り速度100mm/minで引張り試験を行った。また、鋼板を800℃×1秒の加熱後に油中に焼き入れ、その硬さを測定した。調査結果を表4に記した。これらの鋼は一部、連続鋳造の冷却速度を変えて、または電磁攪拌、未凝固域圧下の一つまたは二つを組み合わせて鋳造した。
S55CのB−9とB−l0は、鋳造条件以外はほぼ同一条件で製造し、B−10が通常の鋳造条件でスラブを造り、B−9が電磁攪拌で凝固組織の均一となる条件でスラブを造った。両鋼の炭化物平均粒径は大きく変わっていないが、0.3μm以下の炭化物に違いが生じ、B−9のそれは12%で本発明範囲内に、B−10のそれは22%で本発明範囲から外れている。炭化物の平均粒径、0.3μm以下の炭化物割合が本発明範囲内のB−9は焼き入れ性、加工性共に優れた特性を有し、0.3μm以下の炭化物が本発明範囲より多い、B−10の加工性はB−9より劣る。B−11は炭化物の平均粒径が本発明範囲より大きい比較例であるが、焼入れ後の硬さが本発明範囲内の実施例のB−9より軟く、焼き入れ性が劣る。
SAE1070のC−7,C−8は、鋳造条件以外はほぼ同一条件で製造し、C−8は通常の鋳造条件で、C−7が電磁攪拌と鋳造速度を早めて凝固偏析を少なくする条件で鋳造してスラブとした。両鋼の炭化物平均粒径は大きく変わっていないが、0.3μm以下の炭化物に違いが生じ、C−7のそれは12%で本発明範囲内に、C−8のそれは21.5%で本発明範囲から外れている。炭化物粒径が0.3μm以下の炭化物割合が本発明範囲内のC−7は焼き入れ性、加工性共に優れた特性を有し、0.3μm以下の炭化物が本発明範囲より多い、C−8の加工性はC−7より劣る。C−9は炭化物の平均粒径が本発明範囲より大きい比較例であるが、焼入れ後の硬さが本発明範囲内の実施例のC−7より軟く、焼き入れ性が劣る。

C:0.25%、Si:0.15%、Mn:0.55%、Cr:0.20%、P:0.016%、S:0.005%、Al:0.012%、Ti:0.015%、B:0.0015%の鋼を転炉で溶製し、連続鋳造でスラブを造った。このスラブを1250℃に加熱後、表5記載の条件で4.0mm厚みに熱間圧延し、酸洗後に表5記載の条件の焼鈍、0.3%の調質圧延を行い、鋼板を製造した。この鋼板の圧延方向に平行な断面を研磨し、ピクリン酸飽和溶液で腐食後、走査型電子顕微鏡を用い炭化物の平均粒径および、0.3μm以下の炭化物の割合を測定した。JIS5号引張り試験片の平行部の中心に両端部に2mm深さのVノッチを付け、引張り速度100mm/minで引張り試験を行った。また、鋼板を800℃×1秒に加熱後に油中に焼き入れ、その硬さを測定した。
鋼No.D−1は連続鋳造時に電磁攪拌を付与してスラブを造り、熱延後の冷却をパーライト変態が600〜615℃の温度で進行するように注水制御した。D−2、D−3は通常の条件でスラブを造り、熱延後の冷却も通常の条件で製造した。D−2は、熱延後の冷却中のパーライト変態温度が600〜660℃、D−3は、熱延後の冷却中のパーライト変態温度が580〜640℃であった。D−4はD−1と同じ条件で熱延まで行い、酸洗後に冷間圧延率:45%の冷延後に670℃×18時間の焼鈍を行い、鋼板を製造したものである。
Figure 0004332072
鋼No.D−1は炭化物平均粒径が0.85μm、0.3μm以下の炭化物割合が7.3%の本発明範囲内の実施例である。この鋼板は、焼き入れ硬さがHv:590と焼き入れ性が良好で、加工性の指標である伸びも51%と良好であることがわかる。鋼No.D−2は炭化物平均粒径が1.43μmと本発明範囲から外れた比較例である。この鋼板は、焼き入れ硬さがHv:490と焼き入れ性が劣る。鋼No.D−3は炭化物平均粒径が0.56μm、0.3μm以下の炭化物割合が32%と本発明範囲外の比較例である。この鋼板は加工性の指標である伸びが38%でD−1に比較して大幅に劣る。鋼No.D−4は炭化物平均粒径が0.75μm、0.3μm以下の炭化物の割合が8.3%と本発明範囲内の実施例である。この鋼板も焼き入れ硬さが高く、伸びも良好で、加工性と焼き入れ性が優れていることがわかる。
本発明によれば、炭化物の平均粒径だけでなく、0.3μm以下の微細炭化物が加工性に影響することに注目し、炭化物の平均粒径を1.0μm以下に制御し、加えて、0.3μm以下の炭化物割合を20%以下に制御すれば、焼入れ性と加工性に優れた高炭素鋼板が提供することができる。このように本発明に係る高炭素鋼板は加工性と焼入れ性に優れることから、ギヤに代表される自動車の変速機部品等を安価でかつ、安定した品質で製造することが可能となり、工業的に極めて有益な発明である。
炭化物の平均粒径と焼き入れ後の硬さの関係を示す図。 0.3μm以下の炭化物割合とVノッチ付引張り伸び値の関係を示す図。

Claims (3)

  1. 質量%で、
    C :0.20%以上0.90%以下、
    Si:0.50%以下、
    Mn:1.5%以下、
    P :0.03%以下、
    S :0.02%以下、
    Al:0.08%以下、
    残部Feおよび不可避的不純物からなる高炭素薄鋼板において、炭化物の平均粒径が0.5μm以上1.0μm以下、かつ、0.30μm以下の炭化物の圧延方向に平行な断面での面積比率が20%以下であることを特徴とする加工性の優れた高炭素鋼板。
  2. 質量%で、
    C :0.20%以上0.90%以下、
    Si:0.50%以下、
    Mn:1.5%以下、
    P :0.03%以下、
    S :0.02%以下、
    Al:0.08%以下、
    Ti:0.01〜0.05%、
    B :0.0003〜0.0050%、
    残部Feおよび不可避的不純物からなる高炭素薄鋼板において、炭化物の平均粒径が0.5μm以上1.0μm以下、かつ、0.30μm以下の炭化物の圧延方向に平行な断面での面積比率が20%以下であることを特徴とする加工性の優れた高炭素鋼板。
  3. 更に質量%で、Cr:1.0%以下の範囲で添加することを特徴とする請求項1または2に記載の加工性の優れた高炭素鋼板。
JP2004168057A 2004-06-07 2004-06-07 加工性と焼き入れ性に優れた高炭素鋼板 Expired - Fee Related JP4332072B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2004168057A JP4332072B2 (ja) 2004-06-07 2004-06-07 加工性と焼き入れ性に優れた高炭素鋼板

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2004168057A JP4332072B2 (ja) 2004-06-07 2004-06-07 加工性と焼き入れ性に優れた高炭素鋼板

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2005344194A JP2005344194A (ja) 2005-12-15
JP4332072B2 true JP4332072B2 (ja) 2009-09-16

Family

ID=35496838

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2004168057A Expired - Fee Related JP4332072B2 (ja) 2004-06-07 2004-06-07 加工性と焼き入れ性に優れた高炭素鋼板

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP4332072B2 (ja)

Families Citing this family (9)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN101389878B (zh) 2006-02-27 2011-11-30 爱信精机株式会社 离合器构件及其制造方法
JP5042924B2 (ja) * 2008-06-02 2012-10-03 新日本製鐵株式会社 機器筐体
KR101417260B1 (ko) 2012-04-10 2014-07-08 주식회사 포스코 재질 균일성이 우수한 고탄소 열연강판 및 이의 제조방법
KR101630951B1 (ko) 2014-10-21 2016-06-16 주식회사 포스코 고상 접합성이 우수한 고탄소 열연강판 및 그 제조방법
CN105568149B (zh) 2014-10-30 2018-03-27 Posco公司 抗回火脆性优异的高碳热轧钢板及其制造方法
CN111655893B (zh) 2018-01-30 2022-05-03 杰富意钢铁株式会社 高碳热轧钢板及其制造方法
TWI798338B (zh) * 2018-06-26 2023-04-11 美商A芬克父子公司 塑膠注射模具及其製造方法
WO2020158356A1 (ja) 2019-01-30 2020-08-06 Jfeスチール株式会社 高炭素熱延鋼板およびその製造方法
EP3901303A4 (en) 2019-01-30 2021-11-03 JFE Steel Corporation HIGH CARBON HOT-ROLLED STEEL SHEET AND METHOD OF MANUFACTURING THEREOF

Also Published As

Publication number Publication date
JP2005344194A (ja) 2005-12-15

Similar Documents

Publication Publication Date Title
KR101050698B1 (ko) 극연질 고탄소 열연 강판 및 그 제조 방법
JP4650006B2 (ja) 延性および伸びフランジ性に優れた高炭素熱延鋼板およびその製造方法
KR20120123153A (ko) 열처리 강재와 그 제조 방법 및 그 소재 강재
JP5725263B2 (ja) 硬質冷延鋼板およびその製造方法
JP6065121B2 (ja) 高炭素熱延鋼板およびその製造方法
CN113366137B (zh) 高碳热轧钢板及其制造方法
JP6065120B2 (ja) 高炭素熱延鋼板およびその製造方法
JP6244701B2 (ja) 焼入れ性および加工性に優れる高炭素熱延鋼板およびその製造方法
JP5070824B2 (ja) 打抜き加工後の平坦度および端面性状に優れた冷延鋼板およびその製造方法
JP4332072B2 (ja) 加工性と焼き入れ性に優れた高炭素鋼板
JP2005097740A (ja) 高炭素熱延鋼板およびその製造方法
JP5501819B2 (ja) 窒化特性及び耐再結晶軟化特性に優れた窒化処理用冷延鋼板およびその製造方法
CN115461482A (zh) 钢板、部件及其制造方法
JP3752118B2 (ja) 成形性に優れた高炭素鋼板
JP5920256B2 (ja) 硬さの熱安定性に優れた硬質冷延鋼板およびその製造方法
JP2016216809A (ja) 冷間成形性と熱処理後靭性に優れた低炭素鋼板及び製造方法
JP5884781B2 (ja) 焼入れ性および加工性に優れる高炭素熱延鋼板およびその製造方法
JP4670135B2 (ja) 歪時効硬化特性に優れた熱延鋼板の製造方法
JP4280202B2 (ja) 焼き入れ性と伸びフランジ性の優れた高炭素鋼板
JP4319940B2 (ja) 加工性と、焼入れ性、熱処理後の靭性の優れた高炭素鋼板
CN105714197A (zh) 一种高强易冲压成型冷轧钢板及其生产方法
WO2019203251A1 (ja) 熱延鋼板
JP4319945B2 (ja) 焼き入れ性と加工牲に優れた高炭素鋼板
JP7444097B2 (ja) 熱延鋼板およびその製造方法
JP4276504B2 (ja) 伸びフランジ性の優れた高炭素熱延鋼板

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20061113

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20081117

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20081125

RD03 Notification of appointment of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7423

Effective date: 20090106

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20090126

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20090421

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20090515

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20090609

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20090619

R151 Written notification of patent or utility model registration

Ref document number: 4332072

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R151

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120626

Year of fee payment: 3

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130626

Year of fee payment: 4

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130626

Year of fee payment: 4

S531 Written request for registration of change of domicile

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313531

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130626

Year of fee payment: 4

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

S533 Written request for registration of change of name

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313533

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130626

Year of fee payment: 4

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

S533 Written request for registration of change of name

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313533

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees