発明の概要
本発明の一つの態様は、単離されたカロチンシンターゼタンパク質に関する。タンパク質は、以下から選択されるアミノ酸配列を含む: (a) 配列番号:3、配列番号:5、配列番号:7、配列番号:9、配列番号:3の30〜1268位からなるアミノ酸配列、およびその生物学的に活性な断片からなる群より選択されるアミノ酸配列; (b) 配列番号:3とまたは配列番号:3の30〜1268位からなるアミノ酸配列と少なくとも約40%同一のアミノ酸配列であって、そのアミノ酸配列が以下の生物活性:フィトエンデヒドロゲナーゼ(PD)活性、フィトエンシンターゼ(PS)活性、およびリコペンシクラーゼ(LC)活性、を有するアミノ酸配列; (c) 配列番号:5と少なくとも約40%同一のアミノ酸配列であって、そのアミノ酸配列がフィトエンデヒドロゲナーゼ(PD)活性を有するアミノ酸配列; (d) 配列番号:7と少なくとも約40%同一のアミノ酸配列であって、そのアミノ酸配列がフィトエンシンターゼ(PS)活性を有するアミノ酸配列;ならびに(e) 配列番号:9と少なくとも約40%同一のアミノ酸配列であって、そのアミノ酸配列がリコペンシクラーゼ(LC)活性を有するアミノ酸配列。一つの局面として、単離されたタンパク質は、上記のアミノ酸配列のうちの一つと少なくとも約60%同一のアミノ酸配列を含み、別の局面として、上記のアミノ酸配列のうちの一つと少なくとも約80%同一のアミノ酸配列を含み、別の局面として、上記のアミノ酸配列のうちの一つと少なくとも約95%同一のアミノ酸配列を含む。タンパク質は、以下から選択される生物活性を有することが好ましい:フィトエンデヒドロゲナーゼ(PD)活性、フィトエンシンターゼ(PS)活性、および/またはリコペンシクラーゼ(LC)活性。一つの局面として、タンパク質は、以下から選択されるアミノ酸配列を含む:配列番号:3、配列番号:5、配列番号:7、配列番号:9、配列番号:3の30〜1268位からなるアミノ酸配列、およびその生物学的に活性な断片。別の局面として、タンパク質は、配列番号:5、配列番号:7、および配列番号:9を含む。
カロチンシンターゼタンパク質は、ヤブレツボカビ目(Thraustochytriales)の微生物(例えば、シゾキトリウム属(Schizochytrium)の微生物)を含むがこれらに限定されることはない、任意の適当な生物から単離することができる。
本発明の一つの態様として、以下のアミノ酸配列: (a) 配列番号:5および配列番号:7を含むアミノ酸配列;ならびに(b) (a)のアミノ酸配列と少なくとも約40%同一のアミノ酸配列であって、そのアミノ酸配列が以下の生物活性:フィトエンデヒドロゲナーゼ(PD)活性およびフィトエンシンターゼ(PS)活性、を有するアミノ酸配列から選択されるアミノ酸配列を含む、単離されたタンパク質が提供される。
本発明の別の態様は、配列番号:3、配列番号:5、配列番号:7、および配列番号:9から選択されるアミノ酸配列に選択的に結合する単離された抗体に関する。
本発明のさらに別の態様は、以下から選択される核酸配列を含む単離された核酸分子に関する: (a) 配列番号:3、配列番号:5、配列番号:7、配列番号:9、配列番号:3の30〜1268位からなるアミノ酸配列、および任意のそのアミノ酸配列の生物学的に活性な断片からなる群より選択されるアミノ酸配列をコードする核酸配列; (b) 配列番号:3とまたは配列番号:3の30〜1268位からなるアミノ酸配列と少なくとも約40%同一のアミノ酸配列をコードする核酸配列であって、そのアミノ酸配列が以下の生物活性:フィトエンデヒドロゲナーゼ(PD)活性、フィトエンシンターゼ(PS)活性、およびリコペンシクラーゼ(LC)活性、を有する核酸配列; (c) 配列番号:5と少なくとも約40%同一のアミノ酸配列をコードする核酸配列であって、そのアミノ酸配列がフィトエンデヒドロゲナーゼ(PD)活性を有する核酸配列; (d) 配列番号:7と少なくとも約40%同一のアミノ酸配列をコードする核酸配列であって、そのアミノ酸配列がフィトエンシンターゼ(PS)活性を有する核酸配列; (e) 配列番号:9と少なくとも約40%同一のアミノ酸配列をコードする核酸配列であって、そのアミノ酸配列がリコペンシクラーゼ(LC)活性を有する核酸配列;ならびに(f) (a)〜(e)の核酸配列のうちの任意の一つと完全に相補的な核酸配列。
一つの局面として、単離された核酸分子は、上記のアミノ酸配列の任意のものと少なくとも約60%同一のアミノ酸配列をコードする核酸配列を含み、別の局面として、上記のアミノ酸配列の任意のものと少なくとも約80%同一のアミノ酸配列をコードする核酸配列を含み、別の局面として、上記のアミノ酸配列の任意のものと少なくとも約95%同一のアミノ酸配列をコードする核酸配列を含む。アミノ酸配列は、以下から選択される生物活性を有することが好ましい:フィトエンデヒドロゲナーゼ(PD)活性、フィトエンシンターゼ(PS)活性、および/またはリコペンシクラーゼ(LC)活性。本発明の一つの局面として、核酸分子は、以下から選択されるアミノ酸配列をコードする核酸配列を含む:配列番号:3、配列番号:5、配列番号:7、配列番号:9、配列番号:3の30〜1268位からなるアミノ酸配列。別の局面として、核酸配列は、以下から選択される:配列番号:1、配列番号:2、配列番号:4、配列番号:6、および配列番号:8。さらに別の局面として、核酸配列は、配列番号:5、配列番号:7、および配列番号:9からなる群より選択される任意の二つのアミノ酸配列をコードする。別の局面として、核酸配列は、配列番号:5、配列番号:7、および配列番号:9をコードする。
同様にして本発明に含まれるのは、転写制御配列に機能的に連結された上記の核酸分子のうちの任意の一つを含む組換え核酸分子である。転写制御配列には、組織特異的転写制御配列が含まれるが、これに限定されることはない。組換え核酸分子は、いくつかの局面において、標的化配列をさらに含むことができる。
本発明の別の態様は、本発明の組換え核酸分子の任意のもので形質転換された組換え細胞に関する。
本発明のさらに別の態様は、生合成過程によりカロチノイドを産生させるため、本発明の組換え核酸分子の任意のもので形質転換された、遺伝子改変微生物または遺伝子改変植物に関する。
本発明の別の態様は、生合成過程によりカロチノイドを産生させるための遺伝子改変微生物に関する。微生物は、カロチンシンターゼの発現または生物活性を増加させるために改変されているような、カロチンシンターゼをコードする核酸分子を含む。カロチンシンターゼは、上述のアミノ酸配列の任意のものを含むことができる。本発明の一つの局面として、カロチンシンターゼをコードする核酸分子は、微生物の内在性遺伝子である。別の局面として、微生物はカロチンシンターゼをコードする核酸分子で形質転換されている。この態様において、微生物はヤブレツボカビ目の微生物(例えば、シゾキトリウム属)とすることができる。別の局面として、微生物は、カロチンシンターゼをコードする内在性遺伝子を含みかつカロチンシンターゼをコードする組換え核酸分子で形質転換されている。この局面において、遺伝子および組換え核酸分子のうちの一方または両方が、カロチンシンターゼの発現または生物活性を増加させるために改変されている。微生物のなかには、ヤブレツボカビ目の微生物(例えば、シゾキトリウム属の微生物)を含めることができる。
本発明の別の態様は、上述の遺伝子改変微生物の任意のものを含むバイオマスに関する。同様にして本発明に含まれるのは、そのようなバイオマスを含む食品および医薬品である。
本発明のさらに別の態様は、生合成過程によりカロチノイドを産生するための方法に関する。その方法は、前述のカロチンシンターゼの発現または生物活性が増加した遺伝子改変微生物を発酵培地中で培養する段階を含む。
本発明の別の態様は、上述のカロチンシンターゼタンパク質の任意のものを含むタンパク質をコードする組換え核酸分子で形質転換された、遺伝子改変植物を増殖させる段階を含む、生合成過程によりカロチノイドを産生するための方法である。一つの態様として、組換え核酸分子は、フィトエンデヒドロゲナーゼ(PD)活性およびフィトエンシンターゼ(PS)活性を有するが、リコペンシクラーゼ(LC)活性を有さないタンパク質をコードする。
本発明のさらに別の態様は、配列番号:1、配列番号:2、配列番号:4、配列番号:6、配列番号:8、およびそれに完全に相補的な核酸配列からなる群より選択される核酸配列の少なくとも12個の連続ヌクレオチドを含む、オリゴヌクレオチドに関する。
本発明の別の態様は、色素沈着がない遺伝子改変微生物に関し、その微生物(例えば、ヤブレツボカビ目の微生物)は、カロチンシンターゼ遺伝子または機能ドメインをコードするその一部分を選択的に欠失させるかまたは不活化させるために遺伝子改変されている。カロチンシンターゼ遺伝子は、以下の核酸配列から選択される: (a) 配列番号:3をコードする核酸配列;ならびに(b) 配列番号:3と少なくとも約40%同一のアミノ酸配列をコードする核酸配列であって、そのアミノ酸配列を有するタンパク質がフィトエンデヒドロゲナーゼ(PD)活性、フィトエンシンターゼ(PS)活性、およびリコペンシクラーゼ(LC)活性からなる群より選択される生物活性を有する核酸配列。一つの局面として、カロチンシンターゼ遺伝子は、配列番号:3により示される核酸配列を含む。微生物は、シゾキトリウム属のような、ヤブレツボカビ目の微生物から選択することができるが、これに限定されることはない。一つの局面として、カロチンシンターゼ遺伝子は、遺伝子発現を阻害するために調節領域で改変されている。別の局面として、カロチンシンターゼ遺伝子は、微生物が機能的なカロチンシンターゼを産生しないように部分的にまたは完全に欠失されている。別の局面として、カロチンシンターゼ遺伝子は、カロチンシンターゼ遺伝子にハイブリダイズする核酸配列およびカロチンシンターゼ遺伝子のコード配列を破壊する異種核酸配列を含む核酸配列を用いた標的相同組換えにより突然変異しているかまたは不活化している。
同様にして本発明に含まれるのは、同一種の野生型微生物と比べて色素沈着が減少している遺伝子改変微生物(例えば、ヤブレツボカビ目の微生物)を含むバイオマスであって、その微生物は、上述のカロチンシンターゼ遺伝子を選択的に欠失させるかまたは不活化させるために遺伝子改変されている。本発明の別の局面は、そのようなバイオマスを含む食品に関する。
本発明の別の態様は、生合成過程から色素沈着がない脂質を産生するための方法に関する。この方法は、脂質を産生させるのに効果的な条件の下で、上述のカロチンシンターゼ遺伝子を選択的に欠失させるかまたは不活化させるために遺伝子改変された、遺伝子改変微生物(例えば、ヤブレツボカビ目の微生物)を培養する段階を含む。
本発明のさらに別の態様は、上述のカロチンシンターゼ遺伝子を選択的に欠失させるかまたは不活化させるために遺伝子改変された、遺伝子改変微生物(例えば、ヤブレツボカビ目の微生物)の培養物から脂質を回収する段階を含む、生合成過程から色素沈着がない脂質を回収するための方法に関する。従って、本発明の別の態様は、上述のカロチンシンターゼ遺伝子を選択的に欠失させるかまたは不活化させるために遺伝子改変された、上述の遺伝子改変微生物の培養物から回収される色素沈着がない脂質、ならびにその脂質を含む製品(例えば、食品または医薬品)に関する。
本発明の別の態様は、上述のアミノ酸配列の任意のものを含む、単離されたカロチンシンターゼと基質を、カロチノイドを産生させるのに十分な条件の下で接触させる段階を含む、カロチノイドを産生するための方法に関する。
発明の詳細な説明
本発明は、三つの異なる酵素活性:フィトエンデヒドロゲナーゼ(PD)活性、フィトエンシンターゼ(PS)活性、およびリコペンシクラーゼ(LC)活性を有するタンパク質をコードする、シゾキトリウム属種(Schizochytrium sp.)内の新規の三ドメイン遺伝子について記述する。この、多機能タンパク質の発見により、カロチノイドの経済的生産に向けた新たなアプローチが提供される。例えば、これからは、他の生物のカロチノイド生合成経路から二個、三個、または四個の遺伝子をクローニングするのではなく、三つの重要な逐次的酵素機能を有する一個の遺伝子をクローニングして発現させることが可能であり、これにより産生生物の遺伝子改変が非常に容易になると思われる。さらに、シゾキトリウム属のCS遺伝子の酵素ドメインを個別にまたは一つ、二つ、もしくは三つ全てのドメインを発現するさまざまな組換え/合成遺伝子を構築するために種々の組み合わせで使用することが可能である。
より具体的には、本発明は全体として、本明細書においてカロチンシンターゼ遺伝子と称する単離遺伝子およびその相同体、そのような遺伝子によりコードされる酵素ならびにその生物学的に活性な部分および相同体、そのような遺伝子を含む組換え核酸分子、そのような遺伝子で形質転換された微生物および植物ならびにその子孫、そのような遺伝子の作用を増加させるまたは低下させるために遺伝子改変されたシゾキトリウム属の生物およびその他のヤブレツボカビ目の生物、ならびにカロチノイドを産生させるのに効果的な条件の下で上述の微生物または植物を培養することによるカロチノイドおよびその誘導体の産生方法に関する。
本発明者らは、カロチノイド生合成経路と関連したシゾキトリウム属種の遺伝子を同定した。この遺伝子は、三つの異なる領域(ドメイン)を含む単一ポリペプチドをコードする。公に利用可能なデータベースとのこれらの三つのドメインの推定アミノ酸配列の比較から、これらのドメインが以下の酵素活性:フィトエンデヒドロゲナーゼ(PD)活性、フィトエンシンターゼ(PS)活性、およびリコペンシクラーゼ(LC)活性(推定上のN末端からC末端方向へ、順番に掲載)、を有することが示唆される。カロチノイド生合成に対する樹立された代謝経路図を参照すると、これらの三つの酵素活性により、ゲラニルゲラニルピロリン酸のβ-カロチンへの変換が遂行され得るものと思われる(例えば、図1を参照されたい)。本明細書において本発明者らは、本発明のカロチンシンターゼ(CS)遺伝子を、PD、PS、およびLCドメインを有する酵素をコードする核酸配列と定義する。当然のことながら、「フィトエンデヒドロゲナーゼ」および「フィトエンデサチュラーゼ」という酵素(活性)名は交換可能であり、本明細書で「フィトエンデヒドロゲナーゼ」または「PD」に対する言及には、「フィトエンデサチュラーゼ」と称される酵素および活性に対する言及が含まれる。
カロチノイド経路の酵素をコードする多くの遺伝子が同定され、クローニングされかつ配列決定されているが、本発明者らの知る限りでは、これが、その経路と関連した遺伝子をシゾキトリウム属またはヤブレツボカビ目の任意の一員からクローニングしかつ特徴付けた初めての例である。さらに、本発明者らの知る限りでは、これが、カロチノイド経路の三つの酵素機能が単一のポリペプチドで発見された初めての例である。カロチノイド合成経路の二つの酵素機能(具体的には、PSおよびLC)が一つのポリペプチドで発見された例は実際に存在するが、三つの酵素機能のものはない。
PS、PD、およびLCは、カロチノイド生合成経路の逐次的酵素である。これらの三つの酵素機能が単一のポリペプチドで生ずることから、この一連の反応における中間体の代謝性チャネリングが示唆される。PSの量を増加させることで、結果的にカロチノイド合成経路の流れが劇的に増加したという例がある(例えば、Shewmakerら、「Seed-specific overexpression of phytoene synthase: increase in carotenoids and other metabolic effects」 The Plant Journal 20, 401〜412 (1999)を参照されたい)。PD、PS、およびLC酵素ドメインをコードするシゾキトリウム属のカロチンシンターゼ遺伝子を、異種宿主において、またはシゾキトリウム属それ自体において導入すること(または発現増加させること)で、これらの三つの酵素活性を同時に上昇させることができるものと思われる。このことは、これらの三つの機能をコードする二つまたは三つの別個の遺伝子を導入するのに比べて大きな利益を有する可能性があるものと思われる。これらの酵素活性レベルの増加により、結果的にシゾキトリウム属においてまたは異種宿主においてβ-カロチンの産生増加がもたらされるものと思われ、実際に、本発明者らは、本発明のカロチンシンターゼ遺伝子で形質転換されたシゾキトリウム属では、対照と比べてβ-カロチンが増量することを示した。このβ-カロチンの増量は、それ自体、有用となる可能性があるものと思われ、またβ-カロチンの増量は、β-カロチン由来のカロチノイド(例えば、以下に限定されることはないが、カンタキサンチン、ゼアキサンチン、またはアスタキサンチン;図2を参照されたい)を産生させるための基質として役立つ可能性があるものと思われる。本発明者らは同様に、本発明のカロチンシンターゼ遺伝子で形質転換されたシゾキトリウム属では、対照と比べてアスタキサンチンが増量することを示した(実施例を参照されたい)。さらに、カロチンシンターゼ遺伝子の組換えにより、結果的にリコペンが産生され、これが次にα-カロチンおよびルテインを産生させるための基質として役立つ可能性があるものと思われる。
従って、本発明の一つの態様は、単離されたカロチンシンターゼに関する。本明細書では、単離されたカロチンシンターゼを含む単離されたタンパク質に対する言及は、その天然環境から取り出された(即ち、人的操作にかけられた)タンパク質(ポリペプチドまたはペプチドを含む)に対するものであり、例えば、精製されたタンパク質、部分的に精製されたタンパク質、組換えにより産生されたタンパク質、および合成により産生されたタンパク質が含まれ得る。従って、「単離された」には、タンパク質の精製度は反映されていない。本発明の単離されたカロチンシンターゼは、組換えにより産生されることが好ましい。さらに、および一例として、「シゾキトリウム属のカロチンシンターゼ」とは、シゾキトリウム属由来のカロチンシンターゼ(天然に存在するカロチンシンターゼの相同体を広く含む)を指すか、または構造(例えば、配列) の知識および恐らくはシゾキトリウム属由来の天然に存在するカロチンシンターゼの機能から別の方法で産生されたカロチンシンターゼタンパク質を指す。換言すれば、シゾキトリウム属のカロチンシンターゼには、天然に存在するシゾキトリウム属由来カロチンシンターゼの構造および機能に実質的に類似している、または本明細書に詳述される天然に存在するシゾキトリウム属由来カロチンシンターゼの生物学的に活性な(即ち、生物活性を有する)相同体である、任意のカロチンシンターゼが含まれる。従って、シゾキトリウム属のカロチンシンターゼタンパク質のなかには、精製タンパク質、部分精製タンパク質、組換えタンパク質、変異型/改変型タンパク質、および合成タンパク質を含めることができる。本発明によれば、「改変」および「変異」という用語は、とりわけ本明細書に記載のカロチンシンターゼのアミノ酸配列(または核酸配列)に対する改変/変異に関して、同じ意味で使用され得る。
本発明によれば、カロチンシンターゼの相同体(即ち、カロチンシンターゼ相同体)には、少なくとも一個または数個(但し一個または数個に限定されることはない)のアミノ酸が、欠失された(例えば、ペプチドまたは断片のような、タンパク質の切断型)、挿入された、反転された、置換された、および/または誘導体化された(例えば、グリコシル化、リン酸化、アセチル化、ミリストイル化、プレニル化、パルミチン酸化、ファルネシル化、アミド化、および/またはグリコシルホスファチジルイノシトールの付加による)カロチンシンターゼが含まれる。好ましい態様として、カロチンシンターゼ相同体は、測定可能なまたは検出可能なカロチンシンターゼ酵素活性を有する(即ち、生物活性を有する)。測定可能なまたは検出可能なカロチンシンターゼ酵素活性には、本発明の(下記に詳述の)カロチンシンターゼの酵素ドメインの一つのみ、または二つもしくは三つ全ての酵素活性が含まれ得る。別の態様として、カロチンシンターゼ相同体は、測定可能なカロチンシンターゼ酵素活性を持っていても持っていなくてもよいが、他のカロチンシンターゼを同定するのに有用な抗体の調製またはオリゴヌクレオチドの開発のために利用される。例えば、カロチンシンターゼに対する抗体の作製ならびにカロチンシンターゼのクローニングに有用なプローブおよびプライマーの作製は、実施例に記述されている。
カロチンシンターゼ相同体は、天然の対立遺伝子変異または自然変異の結果とすることができる。本発明のカロチンシンターゼ相同体は同様に、以下に限定されることはないが、タンパク質に対する直接的な組換え、または、例えば無作為化もしくは標的化変異生成をもたらす従来のもしくは組換えDNA技術を用いた、タンパク質をコードする遺伝子に対する組換えを含む、当技術分野において周知の技術を用いて作り出すことができる。天然に存在する、カロチンシンターゼをコードする核酸の対立遺伝子変異体は、配列番号:3により示されるアミノ酸配列をコードする遺伝子であるが、この遺伝子は、例えば、突然変異または組換えにより引き起こされる自然変異により、類似配列を有するが同一配列を有さないような、ゲノム中の本質的に同一遺伝子座(または遺伝子座(複数))に発生する遺伝子である。天然の対立遺伝子変異体は通常、その比較遺伝子によりコードされるタンパク質の活性に類似の活性を有するタンパク質をコードする。対立遺伝子変異体の種類の一つは、同一のタンパク質をコードするものの、遺伝コードの縮重により異なる核酸配列を有する可能性がある。対立遺伝子変異体には同様に、遺伝子の5'または3'非翻訳領域の(例えば、調節性制御領域の)変化が含まれる可能性がある。対立遺伝子変異体は、当業者に周知である。相同体は、以下に限定されることはないが、単離された、天然に存在するタンパク質に対する直接的な組換え、直接的なタンパク質合成、または、例えば、無作為化もしくは標的化変異生成をもたらす従来のもしくは組換えDNA技術を用いた、タンパク質をコードする核酸配列に対する組換えを含む、タンパク質を産生させるための当技術分野において周知の技術を用いて産生することができる。
野生型タンパク質と比べて、カロチンシンターゼ相同体の改変により、天然に存在するタンパク質のカロチンシンターゼと比較したカロチンシンターゼ相同体の基礎的生物活性が、増加する、低下する、または実質的に変化しない。一般に、タンパク質の生物活性または生物作用は、インビボ(即ち、タンパク質の天然の生理的環境)でまたはインビトロ(即ち、実験室条件下)で測定されるまたは観測されるような、天然型タンパク質に帰属するタンパク質により示されるまたは行われる任意の機能/機能を指す。相同体または模倣体(後述)におけるような、タンパク質の組換えによって結果的に、天然に存在するタンパク質と同じ生物活性を有するタンパク質が生ずるか、または天然に存在するタンパク質と比べて低下したもしくは増加した生物活性を有するタンパク質が生ずる可能性がある。タンパク質発現の低下またはタンパク質活性の低下をもたらす改変は、タンパク質の低下作用、下方制御、または不活性化(完全なまたは部分的な)と見なすことができる。同様に、タンパク質発現の増加またはタンパク質活性の増加をもたらす組換えは、タンパク質の増加作用、上方制御、増強、活性化、過剰産生、または増幅と見なすことができる。
本発明の一つの態様によれば、生物学的に活性なカロチンシンターゼ(その生物学的に活性な相同体または断片を含む)は、野生型のカロチンシンターゼ、または本明細書に記載の天然に存在するカロチンシンターゼの生物活性の特徴を少なくとも一つ有する。カロチンシンターゼの生物活性のなかには、ゲラニルゲラニルピロリン酸をβ-カロチンに変換する能力が含まれ、上述のように、本明細書に記載のカロチンシンターゼの三つのドメインの酵素活性の任意の一つまたは複数含めることができる。本発明によれば、本発明のカロチンシンターゼは、少なくとも一つの、好ましくは二つの、最も好ましくは三つの、酵素活性を有する。これらの酵素活性は、(1) フィトエンデヒドロゲナーゼ(PD)酵素活性、(2) フィトエンシンターゼ(PS)酵素活性、および(3) リコペンシクラーゼ(LC)酵素活性である。カロチンシンターゼの生物活性または酵素活性に対する一般的な言及は通常、三つ全ての酵素活性を指すが、一つのみまたは二つの酵素活性に対する言及を除外するものではない。これらの酵素活性を測定するための方法は、当技術分野において周知である(例えば、FraserおよびBramley, Meth. Enzymol. 214, 365 (1993); Camara, Meth. Enzymol. 214, 352, (1993); Hornero-MendezおよびBritton, FEBS Lett. 515, 133, (2002)を参照されたい)。本発明の単離されたカロチンシンターゼは同様に、その特異活性により特徴付けることもできる。「特異活性」とは、酵素によるゲラニルゲラニルピロリン酸のβ-カロチンへの変換速度を指す。より具体的には、特異活性とは、単位時間あたり酵素1 mgでβ-カロチンに変換されるゲラニルゲラニルピロリン酸の分子数を指す。
本発明によるタンパク質の発現量を測定する方法には、以下に限定されることはないが、ウエスタンブロッティング法、免疫細胞化学法、フローサイトメトリー法、または他の免疫学に基づく方法;基質結合性を含むがこれに限定されることはないタンパク質の特性に基づく方法が含まれる。結合試験も同様に、当技術分野において周知である。例えば、BIAcore測定器を使用して、二つのタンパク質間の複合体の結合定数を決定することができる。複合体の解離定数は、緩衝液がチップを通過する際、時間に対する屈折率の変化を監視することにより決定することができる(O'Shannessyら、Anal. Biochem. 212: 457〜468 (1993); Schusterら、Nature 365: 343〜347 (1993))。あるタンパク質の、別のタンパク質との結合を測定するための他の適当な測定法には、例えば、酵素結合免疫反応吸着測定法(ELISA)および放射性免疫測定法(RIA)のような免疫測定法、または蛍光、UV吸収、円二色性、もしくは核磁気共鳴(NMR)を介したタンパク質の分光学的性質もしくは光学的性質の変化を監視することによる結合の決定法が含まれる。
一つの態様として、カロチンシンターゼ(例えば、シゾキトリウム属から単離され、本明細書に詳述されるカロチンシンターゼの相同体を含む)には、(1) フィトエンデヒドロゲナーゼ(PD)酵素活性、(2) フィトエンシンターゼ(PS)酵素活性、および(3) リコペンシクラーゼ(LC)酵素活性のうちの少なくとも一つを有するタンパク質が含まれる。本発明の一つの態様として、単離されたカロチンシンターゼは、以下から選択されるアミノ酸配列を含む:(a) 配列番号:3、配列番号:5、配列番号:7、配列番号:9、配列番号:3の30〜1268位からなるアミノ酸配列、およびその生物学的に活性な断片から選択されるアミノ酸配列;(b) 配列番号:3とまたは配列番号:3の30〜1268位からなるアミノ酸配列と少なくとも約40%同一のアミノ酸配列であって、そのアミノ酸配列が以下の生物活性:フィトエンデヒドロゲナーゼ(PD)活性、フィトエンシンターゼ(PS)活性、およびリコペンシクラーゼ(LC)活性、を有するアミノ酸配列;(c) 配列番号:5と少なくとも約40%同一のアミノ酸配列であって、そのアミノ酸配列がフィトエンデヒドロゲナーゼ(PD)活性を有するアミノ酸配列;(d) 配列番号:7と少なくとも約40%同一のアミノ酸配列であって、そのアミノ酸配列がフィトエンシンターゼ(PS)活性を有するアミノ酸配列;または(e) 配列番号:9と少なくとも約40%同一のアミノ酸配列であって、そのアミノ酸配列がリコペンシクラーゼ(LC)活性を有するアミノ酸配列。
三つ全ての酵素ドメインとシグナル配列を含む、本発明のシゾキトリウム属カロチンシンターゼに対する完全なアミノ酸配列は、配列番号:3(配列番号:2によりまたは配列番号:1の1406〜5212位によりコードされる)として本明細書に示される。理論により束縛するわけではないが、本発明者らは、配列番号:3のアミノ酸1〜29はシグナル配列であり、この配列はある環境で切断されて、配列番号:3の30〜1268位に及ぶアミノ酸配列を有するカロチンシンターゼを産生する可能性があると考えている。今度は配列番号:3を参照して、CSタンパク質の一番目のドメインである、フィトエンデヒドロゲナーゼ(PD)ドメインは、配列番号:3のアミノ酸53〜521に及び、配列番号:5として本明細書に示される。配列番号:5は、配列番号:4として本明細書に示される核酸配列(配列番号:2の157〜1563位)によりコードされる。CSタンパク質の二番目のドメインであるフィトエンシンターゼ(PS)ドメインは、配列番号:3のアミノ酸586〜860に及び、配列番号:7として本明細書に示される。配列番号:7は、配列番号:6として本明細書に示される核酸配列(配列番号:2の1756〜2580位)によりコードされる。CSタンパク質の三番目のドメインであるリコペンシクラーゼ(LC)ドメインは、配列番号:3のアミノ酸911〜1132に及び、配列番号:9として本明細書に示される。配列番号:5は、配列番号:8として本明細書に示される核酸配列(配列番号:2の2731〜3396位)によりコードされる。
本発明の一つの局面として、カロチンシンターゼは、配列番号:3により示されるアミノ酸配列と、配列番号:3の少なくとも約325個のアミノ酸にわたって、少なくとも約40%同一のアミノ酸配列を含む。別の局面として、本発明のカロチンシンターゼは、配列番号:3と、少なくとも約325個のアミノ酸にわたって、少なくとも45%同一のアミノ酸配列を含み、配列番号:3により示されるアミノ酸配列と、配列番号:3の少なくとも約325個のアミノ酸にわたって、より好ましくは少なくとも約350個のアミノ酸にわたって、より好ましくは少なくとも約375個のアミノ酸にわたって、より好ましくは少なくとも約400個のアミノ酸にわたって、より好ましくは少なくとも約500個のアミノ酸にわたって、より好ましくは少なくとも約600個のアミノ酸にわたって、より好ましくは少なくとも約700個のアミノ酸にわたって、より好ましくは少なくとも約800個のアミノ酸にわたって、より好ましくは少なくとも約900個のアミノ酸にわたって、より好ましくは少なくとも約1000個のアミノ酸にわたって、より好ましくは1050個のアミノ酸にわたって、より好ましくは配列番号:3により示される完全長のアミノ酸配列にわたって、別の局面として少なくとも約50%、別の局面として少なくとも約55%、別の局面として少なくとも約60%、別の局面として少なくとも約65%、別の局面として少なくとも約70%、別の局面として少なくとも約75%、別の局面として少なくとも約80%、別の局面として少なくとも約85%、別の局面として少なくとも約90%、別の局面として少なくとも約95%同一のアミノ酸配列を含む。そのようなタンパク質には、フィトエンデヒドロゲナーゼ(PD)活性、フィトエンシンターゼ(PS)活性、およびリコペンシクラーゼ(LC)活性から選択される、本発明のカロチンシンターゼの酵素活性の少なくとも一つ、二つ、または三つ全てが含まれることが好ましい。
本発明の一つの局面として、カロチンシンターゼは、配列番号:5により示されるアミノ酸配列と少なくとも約40%同一のアミノ酸配列を含む。別の局面として、本発明のカロチンシンターゼは、配列番号:5と、少なくとも45%同一のアミノ酸配列を含み、配列番号:5により示されるアミノ酸配列と、配列番号:5により示される完全長のアミノ酸配列にわたって、別の局面として少なくとも約50%、別の局面として少なくとも約55%、別の局面として少なくとも約60%、別の局面として少なくとも約65%、別の局面として少なくとも約70%、別の局面として少なくとも約75%、別の局面として少なくとも約80%、別の局面として少なくとも約85%、別の局面として少なくとも約90%、別の局面として少なくとも約95%同一のアミノ酸配列を含む。そのようなタンパク質には、少なくともフィトエンデヒドロゲナーゼ(PD)活性が含まれる。
本発明の一つの局面として、カロチンシンターゼは、配列番号:7により示されるアミノ酸配列と少なくとも約40%同一のアミノ酸配列を含む。別の局面として、本発明のカロチンシンターゼは、配列番号:7と、少なくとも45%同一のアミノ酸配列を含み、配列番号:7により示されるアミノ酸配列と、配列番号:7により示される完全長のアミノ酸配列にわたって、別の局面として少なくとも約50%、別の局面として少なくとも約55%、別の局面として少なくとも約60%、別の局面として少なくとも約65%、別の局面として少なくとも約70%、別の局面として少なくとも約75%、別の局面として少なくとも約80%、別の局面として少なくとも約85%、別の局面として少なくとも約90%、別の局面として少なくとも約95%同一のアミノ酸配列を含む。そのようなタンパク質には、少なくともフィトエンシンターゼ(PS)活性が含まれる。
本発明の一つの局面として、カロチンシンターゼは、配列番号:9により示されるアミノ酸配列と少なくとも約40%同一のアミノ酸配列を含む。別の局面として、本発明のカロチンシンターゼは、配列番号:9と、少なくとも45%同一のアミノ酸配列を含み、配列番号:9により示されるアミノ酸配列と、配列番号:9により示される完全長のアミノ酸配列にわたって、別の局面として少なくとも約50%、別の局面として少なくとも約55%、別の局面として少なくとも約60%、別の局面として少なくとも約65%、別の局面として少なくとも約70%、別の局面として少なくとも約75%、別の局面として少なくとも約80%、別の局面として少なくとも約85%、別の局面として少なくとも約90%、別の局面として少なくとも約95%同一のアミノ酸配列を含む。そのようなタンパク質には、少なくともリコペンシクラーゼ(LC)活性が含まれる。
本発明の一つの態様として、本発明によるカロチンシンターゼ相同体は、配列番号:3、配列番号:5、配列番号:7、または配列番号:9の任意のものと約100%未満同一のアミノ酸配列を有する。本発明の別の局面として、本発明によるカロチンシンターゼ相同体は、上記のアミノ酸配列の任意のものと約99%未満同一の、別の態様として、上記のアミノ酸配列の任意のものと98%未満同一の、別の態様として、上記のアミノ酸配列の任意のものと97%未満同一の、別の態様として、上記のアミノ酸配列の任意のものと96%未満同一の、別の態様として、上記のアミノ酸配列の任意のものと95%未満同一の、別の態様として、上記のアミノ酸配列の任意のものと94%未満同一の、別の態様として、上記のアミノ酸配列の任意のものと93%未満同一の、別の態様として、上記のアミノ酸配列の任意のものと92%未満同一の、別の態様として、上記のアミノ酸配列の任意のものと91%未満同一の、別の態様として、上記のアミノ酸配列の任意のものと90%未満同一の、その他、全整数刻みの、アミノ酸配列を有する。
本発明の一つの態様として、カロチンシンターゼは、配列番号:5(PD)、配列番号:7(PS)、または配列番号:9(LC) (またはその相同体)から選択されるアミノ酸配列の任意の二つを含むが、必ずしも三番目の配列を含む必要はない。例えば、野生型CSのフィトエンデヒドロゲナーゼ(PD)とフィトエンシンターゼ(PS)ドメインだけを含む(即ち、天然に存在するシゾキトリウム属のCSの相同体)、本発明のカロチンシンターゼを産生させることができる(即ち、合成コンストラクトからリコペンシクラーゼ(LC)ドメインを欠失させるまたは除く)。LCドメインを欠くコンストラクトの例は、実施例に記載されている。このタンパク質は、例えば、カロチノイドのリコペンを産生するのに有用であると思われる。本発明のカロチンシンターゼ全体のドメイン構造を知ることで、当業者がドメインの一つまたは二つを選択することが可能となり、三つ全ての酵素機能の代りに、一つのみまたは二つの酵素機能を有する新規タンパク質を産生させることができる。
本明細書では、他に特別の定めのない限り、同一性の割合(%)に対する言及は、(1) 標準的なデフォルトパラメータを用いたアミノ酸検索用のblastpおよび核酸検索用のblastnを使ったBLAST 2.0 Basic BLAST相同性検索、この場合には問い合わせ配列はデフォルトによって低複雑度領域にフィルターがかけられる(Altschul, S. F., Madden, T.L., Schaaffer, A.A., Zhang, J., Zhang, Z., Miller, W. & Lipman, D.J. (1997)「Gapped BLAST and PSI-BLAST: a new generation of protein database search programs.」Nucleic Acids Res. 25: 3389〜3402、その全体が参照として本明細書に組み入れられる); (2) BLAST 2アライメント(後述のパラメータを用いる); (3) および/または標準的なデフォルトパラメータを用いたPSI-BLAST(位置特異的反復BLAST)を用いて行われる相同性の評価を指す。BLAST 2.0 Basic BLASTとBLAST 2との間の標準的なパラメータがいくつか異なるため、BLAST 2プログラムを使って、二つの特定配列が有意に相同性を有するものと識別される可能性があっても、BLAST 2.0 Basic BLASTでその配列のうちの一方を問い合わせ配列として実行した検索では、もう一方の配列が最大適合として同定されない可能性があることに留意しなければならない。さらに、PSI-BLASTにより、配列相同性を探すのに感度の高い方法である、自動で使い勝手の良い「プロフィール」検索バージョンが提供される。このプログラムでは最初に、ギャップ有りのBLAST(gapped BLAST)データベース検索が実行される。PSI-BLASTプログラムは、送り返された有意なアライメントの情報を使用して、位置特異的スコア行列を構築し、この行列を次回のデータベース検索の問い合わせ配列に置き換える。従って、当然のことながら、同一性の割合は、これらのプログラムのうちの任意の一つを用いて決定することができる。
二つの特定配列は、TatusovaおよびMadden, (1999),「Blast 2 sequences-a new tool for comparing protein and nucleotide sequences」, FEMS Microbiol Lett. 174: 247〜250(その全体が参照として本明細書に組み入れられる)に報告されているように、BLAST 2 配列を用いて相互に整列させることができる。BLAST 2 配列アライメントは、二つの配列間で、得られるアライメントにおいてギャップ(欠失および挿入)の挿入を考慮するGapped BLAST検索(BLAST 2.0)を実行するBLAST 2.0アルゴリズムを用いてblastpまたはblastnで実行される。本明細書で明示を目的として、BLAST 2 配列アライメントは、以下のような標準的なデフォルトパラメータを用いて行われる。
blastnの場合、0 BLOSUM62行列を使用:
Reward for match = 1
Penalty for mismatch =-2
Open gap (5) and extension gap (2) penalties
gap x_dropoff (50) expect (10) word size (11) filter (on)
blastpの場合、0 BLOSUM62行列を使用:
Open gap (11) and extension gap (1) penalties
gap x_dropoff (50) expect (10) word size (3) filter (on).
カロチンシンターゼには同様に、配列番号:3のうちの少なくとも10個の連続アミノ酸残基(即ち、配列番号:3により示されるアミノ酸配列のうちの10個の連続アミノ酸と100%の同一性を有する10個の連続アミノ酸残基)を含むアミノ酸配列を有するタンパク質を含めることができる。別の局面として、カロチンシンターゼ相同体のアミノ酸配列には、配列番号:3により示されるアミノ酸配列のうちの連続アミノ酸残基を、少なくとも20個、または少なくとも約30個、または少なくとも約40個、または少なくとも約50個、または少なくとも約75個、または少なくとも約100個、または少なくとも約115個、または少なくとも約130個、または少なくとも約150個、または少なくとも約200個、または少なくとも約250個、または少なくとも約300個、または少なくとも約350個、または少なくとも約400個、または少なくとも約500個、または少なくとも約600個、または少なくとも約700個、または少なくとも約800個、または少なくとも約900個、または少なくとも約1000個、または少なくとも約1100個、または少なくとも約1200個、含むアミノ酸配列が含まれる。カロチンシンターゼ相同体には、配列番号:1または配列番号:2により示される核酸配列のうちの連続ヌクレオチドを、少なくとも約30個、または少なくとも約60個、または少なくとも約90個、または少なくとも約150個、または少なくとも約225個、または少なくとも約300個、または少なくとも約750個、または少なくとも約900個、または少なくとも約1050個、または少なくとも約1200個、または少なくとも約1500個、または少なくとも約1800個、または少なくとも約2100個、または少なくとも約2400個、または少なくとも約2700個、または少なくとも約3000個、含む核酸配列によりコードされるタンパク質を含めることができる。好ましい態様として、カロチンシンターゼ相同体は、上述のように、本発明のカロチンシンターゼに対して記載される酵素活性の一つ、二つ、または三つ全てを含む、測定可能なカロチンシンターゼの生物活性を有する(即ち、生物活性を有する)。
本発明によれば、本明細書に記載の核酸配列またはアミノ酸配列に関して、「連続した(contiguous)」または「連続した(consecutive)」という用語は、切れ目のない配列としてつながれていることを意味する。例えば、第一配列が第二配列の30個の連続(contiguous)(または連続(consecutive))アミノ酸を含むことは、第一配列が、第二配列中の切れ目のない30個のアミノ酸残基の配列と100%同一の切れ目のない30個のアミノ酸残基の配列を含むことを意味する。同様に、第一配列が第二配列と「100%の同一性」を有することは、第一配列が第二配列に、ヌクレオチドまたはアミノ酸間の切れ目がなく正確に適合することを意味する。
別の態様として、カロチンシンターゼの相同体を含む、カロチンシンターゼは、その相同体をコードする核酸配列が、中等度の、高度のまたは非常に高度にストリンジェントな条件(後述)の下で、天然型カロチンシンターゼをコードする核酸分子(即ち、天然型カロチンシンターゼのアミノ酸配列をコードする核酸の相補鎖)に(と)ハイブリダイズできる程、天然型カロチンシンターゼのアミノ酸配列に十分に類似したアミノ酸配列を有するタンパク質を含む。好ましくは、カロチンシンターゼ相同体は、中等度の、高度のまたは非常に高度にストリンジェントな条件の下で、配列番号:3、配列番号:5、配列番号:7、または配列番号:9を含むタンパク質をコードする核酸配列の相補体にハイブリダイズする核酸配列を含む、核酸分子によりコードされる。さらにより好ましくは、カロチンシンターゼ相同体は、中等度の、高度のまたは非常に高度にストリンジェントな条件の下で、配列番号:1、配列番号:2、配列番号:4、配列番号:6、または配列番号:8により示される核酸配列の相補体にハイブリダイズする核酸配列を含む、核酸分子によりコードされる。
本発明のカロチンシンターゼをコードする核酸配列の核酸配列相補体とは、カロチンシンターゼをコードする鎖に相補的な核酸鎖の核酸配列を指す。当然のことながら、所定のアミノ酸配列をコードする二本鎖DNAには、一本鎖DNAとその一本鎖DNAに相補的な配列を有するその相補鎖が含まれる。従って、本発明の核酸分子は、二本鎖または一本鎖とすることができ、配列番号:3のアミノ酸配列をコードする核酸配列と、および/または配列番号:3のアミノ酸配列をコードする核酸配列の相補体と、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の下で安定なハイブリッド(雑種)を形成する二本鎖または一本鎖核酸分子を含む。相補的な配列を推定する方法は、当業者に周知である。核酸の配列決定技術には、全く間違いがないわけではないので、本明細書に示される配列によって、せいぜい、本発明のカロチンシンターゼの明らかな配列が示されるにすぎないことに留意すべきである。
本明細書では、ハイブリダイゼーション条件に対する言及は、標準的なハイブリダイゼーション条件であって、その条件の下で核酸分子を使用して、同類の核酸分子を同定する条件を指す。そのような標準的な条件は、例えば、Sambrookら、Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Labs Press, 1989, Sambrookら、ibid.に開示されており(特に9.31〜9.62頁を参照されたい)、これらはその全体が参照として本明細書に組み入れられる。さらに、さまざまな程度のヌクレオチドミスマッチを可能とするハイブリダイゼーションを達成するために、適当なハイブリダイゼーションと洗浄の条件を算出する公式は、例えば、Meinkothら、1984, Anal. Biochem. 138, 267〜284; Meinkothら、ibid.に開示されており、これらはその全体が参照として本明細書に組み入れられる。
より具体的には、中等度にストリンジェントなハイブリダイゼーションおよび洗浄の条件とは、本明細書では、ハイブリダイゼーション反応で探索に使用している核酸分子と少なくとも約70%の核酸配列の同一性を有する核酸分子の単離を可能とする条件(即ち、約30%またはそれ以下のヌクレオチドミスマッチを可能とする条件)を指す。高度にストリンジェントなハイブリダイゼーションおよび洗浄の条件とは、本明細書では、ハイブリダイゼーション反応で探索に使用している核酸分子と少なくとも約80%の核酸配列の同一性を有する核酸分子の単離を可能とする条件(即ち、約20%またはそれ未満のヌクレオチドミスマッチを許容する条件)を指す。非常に高度にストリンジェントなハイブリダイゼーションおよび洗浄の条件とは、本明細書では、ハイブリダイゼーション反応で探索に使用している核酸分子と少なくとも約90%の核酸配列の同一性を有する核酸分子の単離を可能とする条件(即ち、約10%またはそれ未満のヌクレオチドミスマッチを許容する条件)を指す。上記のように、当業者はMeinkothら、ibid.の公式を使用して、これらの特定のレベルのヌクレオチドミスマッチを達成するための適当なハイブリダイゼーションと洗浄の条件を算出することができる。その条件は、DNA:RNAハイブリッドが形成されるかDNA:DNAハイブリッドが形成されるかに応じて変化するものと思われる。DNA:DNAハイブリッドに対して算出された融解温度は、DNA:RNAハイブリッドに対してよりも10℃低い。特定の態様として、DNA:DNAハイブリッドに対するストリンジェントなハイブリダイゼーション条件には、適当な洗浄条件に合わせて、イオン強度6×SSC(0.9 M Na+)で、温度約20℃〜約35℃(より低度のストリンジェンシー)、より好ましくは、約28℃〜約40℃(よりストリンジェント)、さらにより好ましくは、約35℃〜約45℃(さらによりストリンジェント)でのハイブリダイゼーションが含まれる。特定の態様として、DNA:RNAハイブリッドに対するストリンジェントなハイブリダイゼーション条件には、同様にストリンジェントな洗浄条件に合わせて、イオン強度6×SSC(0.9 M Na+)で、温度約30℃〜約45℃、より好ましくは、約38℃〜約50℃、さらにより好ましくは、約45℃〜約55℃でのハイブリダイゼーションが含まれる。これらの値は、約100ヌクレオチドよりも大きく、ホルムアミド0%およびG+C含量およそ40%の分子に対する融解温度の算出に基づく。または、Tmは、Sambrookら、前掲、9.31〜9.62頁に記載されるように実験的に算出することができる。一般に、洗浄条件は、可能な限りストリンジェントとするべきであり、選択のハイブリダイゼーション条件に対して適当とするべきである。例えば、ハイブリダイゼーション条件には、塩条件と特定ハイブリッドについて算出されたTmよりも約20〜25℃低い温度条件との組み合わせを含むことができ、洗浄条件には通常、塩条件と特定ハイブリッドについて算出されたTmよりも約12〜20℃低い温度条件との組み合わせが含まれる。DNA:DNAハイブリッドで使用するのに適したハイブリダイゼーション条件の一例には、6×SSC(50%ホルムアミド)中、約42℃にて2〜24時間のハイブリダイゼーションが含まれ、続いて約2×SSC中、室温にて一回または複数回の洗浄を含む洗浄工程、続いてさらに高い温度およびさらに低いイオン強度でのさらなる洗浄(例えば、約0.1×SSC〜0.5×SSC中、約37℃での洗浄を少なくとも一回、続いて約0.1×SSC〜0.5×SSC中、約68℃での洗浄を少なくとも一回)を行う。
カロチンシンターゼにはまた、遺伝子融合体(例えば、組換えタンパク質の可溶化型、活性化型を過剰発現させるのに使用される)、突然変異誘発遺伝子(遺伝子の転写および翻訳を促進させるコドン改変を有する遺伝子など)、およびトランケートされた遺伝子(膜タンパク質の可溶化型を生ずるように膜結合ドメインが取り除かれた遺伝子、または特定の組換え宿主で十分に寛容されないシグナル配列が取り除かれた遺伝子のような)の、発現産物も含まれる。本発明のカロチンシンターゼタンパク質およびタンパク質相同体には、カロチンシンターゼ活性を有さないタンパク質が含まれることに留意しなければならない。そのようなタンパク質は、例えば、抗体の作製にまたは一つもしくは複数のカロチノイドを産生する能力がない遺伝子改変生物の作製に有用である。
本発明のタンパク質および/または相同体の最少サイズは、カロチンシンターゼの生物活性を有するのに十分な、またはタンパク質がそのような酵素活性を有する必要がない場合には、天然に存在するカロチンシンターゼに結合する抗体の産生に対するような、本発明のカロチンシンターゼと関連した別の目的に対して有用となるのに十分なサイズである。従って、本発明のカロチンシンターゼまたは相同体の最少サイズは、抗体により認識され得る抗原決定基を少なくとも一つ形成するのに十分なサイズであり、通常、アミノ酸の長さは、そのタンパク質の完全長、多価(即ち、それぞれが機能を持つ、ドメインを複数有する融合タンパク質)、または機能部分が望ましいかに応じて好ましいサイズとした、1から1268までの任意の全整数刻みで少なくとも8個、好ましくは10個、より好ましくは15個、より好ましくは20個、より好ましくは25個、さらにより好ましくはアミノ酸の長さが30個、および最大1268個までである。そのようなタンパク質の最大サイズに関しては、タンパク質には一部のカロチンシンターゼ(カロチンシンターゼ相同体を含む)または完全長のカロチンシンターゼが含まれる可能性があるという点において、実践する上での限界以外には限界がない。
同様に、本発明の核酸分子の最少サイズは、カロチンシンターゼ活性を有するタンパク質をコードするのに十分な、抗体に結合する抗原決定基を少なくとも一つ含むタンパク質をコードするのに十分な、または天然型カロチンシンターゼをコードする核酸分子の相補配列と安定なハイブリッドを形成できる(例えば、低度に、中等度に、または高度にストリンジェントな条件の下で)プローブまたはオリゴヌクレオチドプライマーを形成するのに十分なサイズである。従って、そのようなタンパク質をコードする核酸分子のサイズは、核酸の組成およびその核酸分子と相補配列との間の相同性または同一性の割合のほかに、それ自体のハイブリダイゼーション条件(例えば、温度、塩濃度、およびホルムアミド濃度)に依存する可能性がある。オリゴヌクレオチドプライマーとしてまたはプローブとして使用される核酸分子の最小サイズは通常、その核酸がGCに富む場合には長さが少なくとも約12〜約15ヌクレオチドであり、その核酸がATに富む場合には長さが少なくとも約15〜約18塩基である。本発明の核酸分子の最大サイズに関しては、核酸分子には一部のカロチンシンターゼコード配列、完全長のカロチンシンターゼをコードする核酸配列(カロチンシンターゼ遺伝子を含む)、もしくは複数の遺伝子、またはその一部分が含まれる可能性があるという点において、実践する上での限界以外には限界がない。
本発明には同様に、一つまたは複数の融合断片と付着したカロチンシンターゼ含有ドメイン(カロチンシンターゼの相同体または機能ドメインを含む)を含む融合タンパク質も含まれる。本発明で使用するのに適した融合断片には、タンパク質の安定性を増強できる断片、その他の所望の生物活性(例えば、サイトカイン活性またはカロチノイド生合成と関連した他の活性)を供与できる断片、および/またはカロチンシンターゼの精製(例えば、アフィニティークロマトグラフィーにより)を補助できる断片が含まれるが、これらに限定されることはない。適当な融合断片は、所望の機能を有する(例えば、安定性、可溶性、作用もしくは生物活性の増加を与えるおよび/またはタンパク質の精製を簡素化する)任意サイズのドメインとすることができる。融合断片は、タンパク質のカロチンシンターゼ含有ドメインのアミノ末端および/またはカルボキシル末端に連結することができ、カロチンシンターゼを直に復元可能とするために切断されやすくすることができる。融合タンパク質は、カロチンシンターゼ含有ドメインのカルボキシル末端および/またはアミノ末端に付着された融合断片を含むタンパク質をコードする融合核酸分子で形質転換された組換え細胞を培養することにより産生されることが好ましい。
本発明の一つの態様として、本明細書に記載のアミノ酸配列の任意のものを、その特定のアミノ酸配列のC末端および/またはN末端のそれぞれに隣接する、少なくとも1個から最大で約20個までの、付加的な異種アミノ酸とともに産生させることができる。得られたタンパク質またはポリペプチドは、その特定のアミノ酸配列で「本質的に構成されている」と見なすことができる。本発明によれば、異種アミノ酸は、天然に存在する配列中のその(異種)ヌクレオチドが、その所定のアミノ酸配列が由来する生物に対する標準的なコドン出現頻度を用いて翻訳された場合、特定のアミノ酸配列に隣接することが天然には見られない(即ち、自然界、インビボで見られない)、または特定のアミノ酸配列の機能に関連しない、または遺伝子中では、特定のアミノ酸配列をコードしている天然に存在する核酸配列に隣接するヌクレオチドによってコードされないと思われる、アミノ酸配列である。同様に、「本質的に構成される」という語句は、本明細書で核酸配列に関連して使用される場合、特定のアミノ酸配列をコードする核酸配列の5'末端および/または3'末端のそれぞれで、少なくとも1個から最大で約60個もの数の、付加的な異種ヌクレオチドに隣接され得る、特定のアミノ酸配列をコードする核酸配列を指す。異種ヌクレオチドは、天然型の遺伝子において起こるように特定のアミノ酸配列をコードしている核酸配列に隣接することが、天然では見られない(即ち、自然界で、インビボで見られない)、またはタンパク質に任意の付加的な機能を与えるかもしくは特定のアミノ酸配列を有するタンパク質の機能を変化させるタンパク質をコードしない。
カロチンシンターゼは、ヤブレツボカビ目の一員を含む、さまざまな微生物から単離することができる。例えば、本発明のカロチンシンターゼを得ることができる好ましい微生物には、以下に限定されることはないが、トラウストキトリウム属(Thraustochytrium)、ラビリンチュロイデス属(Labyrinthuloides)、ジャポノキトリウム属(Japonochytrium)、およびシゾキトリウム属を含む属由来の微生物が含まれる。これらの属内で好ましい種には、シゾキトリウム・アグリゲイツム(Schizochytrium aggregatum)、シゾキトリウム・リマシナム(Schizochytrium limacinum)、シゾキトリウム・ミナタム(Schizochytrium minutum)を含む、任意のシゾキトリウム属種; トラウストキトリウム・ストリアタム(Thraustochytrium striatum)、トラウストキトリウム・オーレウム(Thraustochytrium aureum)、トラウストキトリウム・ロゼウム(Thraustochytrium roseum)を含む、任意のトラウストキトリウム属種 (U.ビスルゲンシス(U. visurgensis)、U.アモエボイダ(U. amoeboida)、U.サルカリアナ(U. sarkariana)、U.プロファンダ(U. profunda)、U.ラジアタ(U. radiata)、U.ミヌタ(U. minuta)およびウルケニア属種(Ulkenia sp.) BP-5601のような前のウルケニア(Ulkenia)種を含む); ならびに任意のジャポノキトリウム属種が含まれるが、これらに限定されることはない。ヤブレツボカビ目の特に好ましい菌株には、シゾキトリウム属種 (S31)(ATCC 20888); シゾキトリウム属種 (S8)(ATCC 20889); シゾキトリウム属種 (LC-RM)(ATCC 18915); シゾキトリウム属種 (SR21); シゾキトリウム・アグリゲイツム (GoldsteinおよびBelsky) (ATCC 28209); シゾキトリウム・リマシナム (HondaおよびYokochi) (IFO 32693); トラウストキトリウム属種(Thraustochytrium sp.) (23B)(ATCC 20891); トラウストキトリウム・ストリアタム(Thraustochytrium striatum) (Schneider)(ATCC 24473); トラウストキトリウム・オーレウム (Goldstein)(ATCC 34304); トラウストキトリウム・ロゼウム (Goldstein)(ATCC 28210);およびジャポノキトリウム属種(Japonochytrium sp.) (L1)(ATCC 28207)が含まれるが、これらに限定されることはない。
進歩の結果、トラウストキトリド(Thraustochytrid)の分類が修正されることとなった。分類理論家らは、トラウストキトリドを藻類または藻類様の原生生物に位置付けている。しかしながら、分類の不確定性のため、本発明の目的に対し、本発明に記載される菌株をトラウストキトリド(目:ヤブレツボカビ目; 類:ヤブレツボカビ類(Thraustochytriaceae); 属:トラウストキトリウム属、シゾキトリウム属、ラビリンチュロイデス属、またはジャポノキトリウム属)と見なすことが最良であると思われる。本発明の場合、ラビリンツラ(labrinthulids)の一員は、トラウストキトリドのなかに含まれると見なされる。分類学上の変化については、下記に要約されている。本明細書に開示したある種の単細胞微生物の菌株は、ヤブレツボカビ目(トラウストキトリドとも称される)の一員である。ヤブレツボカビ目は、分類史が漸進的に変化している海洋真核生物である。トラウストキトリドの分類学的位置に関する問題については、Moss(1986)、BahnwebおよびJackle(1986)ならびにChamberlainおよびMoss(1988)により概説されている。本発明によれば、「トラウストキトリド」、「ヤブレツボカビ目の微生物」および「ヤブレツボカビ目の微生物」という語句は、同じ意味で使用され得る。
便宜上、トラウストキトリドは当初、分類学者らにより他の無色の遊走子型の藻菌類真核生物(藻類様真菌)と位置付けられた。しかしながら、藻菌類という名称は徐々に、分類上の地位から外されることとなり、トラウストキトリドは卵菌類(双鞭毛遊走子型の真菌(biflagellate zoosporic fungi))のなかに留められることとなった。当初、卵菌類は不等毛藻類(heterokont algae)と類縁関係にあると仮定されていた、そして最終的には、Barr(Barr, 1981, Biosystems 14:359〜370)がまとめた、広範囲に及ぶ超微細構造研究および生化学研究により、この仮説が支持された。事実、卵菌類は不等毛藻類(heterokont algae)の一員として、Leedale (Leedale, 1974, Taxon 23:261〜270)および他の藻類研究者により受け入れられた。しかしながら、その従属栄養的な性質から生ずる利便性から、卵菌類およびトラウストキトリドは、藻類研究者よりも真菌研究者により広く研究されている。
別の分類学的な観点から、進化生物学者らは、真核生物が如何に進化したかに関して二つの一般的な考え方を発展させてきた。一方の仮説では、一連の内部共生を通じて、膜結合性細胞内小器官の起源が外来性であることを提唱している(Margulis, 1970, Origin of Eukaryotic Cells Yale University Press, New Haven); 例えば、ミトコンドリアは細菌内部が、葉緑体はラン藻類が、そして鞭毛はスピロヘータ(spirochaetes)が起源であった。もう一方の仮説では、自発プロセスによる、原核生物祖先の非膜結合型システムからの膜結合性細胞内小器官の段階的進化を提唱している(Cavalier-Smith, 1975, Nature (Lond.) 256:462〜468)。両グループの進化生物学者らはしかしながら、卵菌類およびトラウストキトリドを真菌から除外しており、それらをともに黄色植物界(Cavalier-Smith, 1981, BioSystems 14:461〜481)(この界はつい最近、その他の原生生物を含むように拡張されており、この界の一員は現在、ストラメノパイル(Stramenopiles)と呼ばれる)の黄色植物門の藻類(chromophyte algae)と、またはプロトクチスタ(Protoctista)界(MargulisおよびSagen, 1985, Biosystems 18:141〜147)の全ての藻類と位置付けている。
電子顕微鏡の発達にともない、トラウストキトリドのなかの二つの属であるトラウストキトリウム属およびシゾキトリウム属の遊走子の超微細構造に関する研究(Perkins, 1976,「Recent Advances in Aquatic Mycology」(E.B.G. Jones(編)) 279〜312頁, John Wiley & Sons, New York;Kazama, 1980, Can. J. Bot. 58:2434〜2446; Barr, 1981, Biosystems 14:359〜370)から、ヤブレツボカビ類は卵菌類の遠縁に当たるにすぎないという十分な証拠が得られた。さらに、5SリボソームRNA配列の対応分析(多変量統計形式)を示す遺伝子情報のデータから、ヤブレツボカビ目は明らかに真核生物のなかの固有群になり、真菌類とは完全に区別され、そして紅藻類および褐藻類に最も近縁であって、卵菌類の一員と関連付けられることが示唆される(Mannellaら、1987, Mol. Evol. 24:228〜235)。大部分の分類学者は、トラウストキトリドを卵菌類から除外することに賛同している(Bartnicki-Garcia, 1987,「Evolutionary Biology of the Fungi」(Rayner, A.D.M., Brasier, C.M.およびMoore, D.(編)) 389〜403頁, Cambridge University Press, Cambridge)。
要約すれば、Cavalier-Smithの分類体系(Cavalier-Smith, 1981, BioSystems 14:461〜481, 1983; Cavalier-Smith, 1993, Microbiol Rev. 57:953〜994)を採用すると、トラウストキトリドは、黄色植物界(ストラメノパイル)の黄色植物門の藻類に分類される。この分類上の地位はつい最近、Cavalier-Smithらによりヘテロコンタ門(Heterokonta)の18s rRNA signature(サイン配列)を用いて再確認されており、トラウストキトリドはクロミスト(chromist)であって真菌類ではないことが証明されている(Cavalier-Smithら、1994, Phil. Tran. Roy. Soc. London Series BioSciences 346:387〜397)。このことから、トラウストキトリドは真菌類(これらは全てEufungi界に位置付けられる)と全く異なる界に位置付けられる。従って、トラウストキトリドの分類上の地位は、要約すると下記のようになる:
界: 黄色植物界(Chromophyta)(ストラメノパイル)
門: ヘテロコンタ門
目: ヤブレツボカビ目
類: ヤブレツボカビ類
属: トラウストキトリウム属、シゾキトリウム属、ラビリンチュロイデス属、またはジャポノキトリウム属
初期の分類学者のなかには、トラウストキトリウム属のもともとの構成員のいくつか(アメーバ様のライフステージを有するもの)をウルケニアと呼ばれる別の属に分類するものもいた。しかしながら現在では、全てとはいえないにしても大部分のトラウストキトリド(トラウストキトリウム属およびシゾキトリウム属を含む)は、アメーバ様のステージを示し、従って、多くの者はウルケニアを妥当な属であるとは考えていない。本明細書では、トラウストキトリウム属の中にはウルケニアが含まれるものとする。
門および界の高位の分類内における分類上の地位の不確実性にもかかわらず、トラウストキトリドは、その構成員を依然としてヤブレツボカビ目のなかに分類できる、独特かつ特徴的な分類群のままである。
本発明のさらなる態様には、カロチンシンターゼをコードする核酸分子が含まれる。本発明の単離された核酸分子には、上述の、カロチンシンターゼ相同体または断片を含む、単離されたカロチンシンターゼの任意のものをコードする核酸配列を含む核酸分子が含まれる。
一つの態様として、そのような核酸分子には、中等度にストリンジェントな条件の下で、さらにより好ましくは高度にストリンジェントな条件の下で、さらにより好ましくは非常に高度にストリンジェントな条件の下で、天然由来のカロチンシンターゼ(即ち、カロチンシンターゼをコードする天然由来の対立遺伝子変異体を含む)をコードする核酸配列の相補体とハイブリダイズする単離された核酸分子が含まれる。本発明のカロチンシンターゼをコードする単離された核酸分子には、中等度の、高度の、または非常に高度にストリンジェントな条件の下で、配列番号:3、配列番号:5、配列番号:7、または配列番号:9により示されるアミノ酸配列を含むタンパク質をコードする核酸配列の相補体にハイブリダイズする核酸配列が含まれることが好ましい。一つの態様として、単離された核酸分子には、中等度の、高度の、または非常に高度にストリンジェントな条件の下で、配列番号:1、配列番号:2、配列番号:4、配列番号:6、または配列番号:8により示される核酸配列の相補体にハイブリダイズする核酸配列が含まれる。そのような条件は、上に詳述されている。
本発明によれば、単離された核酸分子は、その天然環境から取り出された(即ち、人的操作にかけられた)核酸分子であり、DNA、RNA、またはcDNAを含む、DNAもしくはRNAの誘導体を含むことができる。従って、「単離された」には、核酸分子の精製度は反映されていない。本発明の単離されたカロチンシンターゼの核酸分子は、その天然源から単離することができるまたは組換えDNA技術(例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅法、クローニング法)もしくは化学合成により産生することができる。単離されたカロチンシンターゼの核酸分子の中には、例えば、カロチンシンターゼ遺伝子、カロチンシンターゼ遺伝子の天然の対立遺伝子変異体、カロチンシンターゼのコード領域またはその一部分、ならびに改変により、本発明のカロチンシンターゼタンパク質をコードするまたはストリンジェントな条件の下で天然の遺伝子単離体と安定なハイブリッドを形成する核酸分子の能力を実質的に妨害しないようなかたちで、ヌクレオチドの挿入、欠失、置換、および/または転置により改変されたカロチンシンターゼのコード領域および/または調節領域を含めることができる。単離されたカロチンシンターゼの核酸分子には、縮重が含まれる可能性がある。本明細書では、ヌクレオチドの縮重とは、一つのアミノ酸が異なるヌクレオチドコドンによりコードされ得る現象を指す。従って、本発明のカロチンシンターゼタンパク質をコードする核酸分子の核酸配列は、縮重により変化する可能性がある。本発明の単離されたカロチンシンターゼの核酸分子は、カロチンシンターゼ活性を有するタンパク質をコードする必要はないことに留意しなければならない。カロチンシンターゼの核酸分子は、例えば、トランケートタンパク質、変異タンパク質または不活性タンパク質をコードすることができる。そのような核酸分子およびそのような核酸分子によりコードされるタンパク質は、その他のカロチンシンターゼを同定するためのプローブおよびプライマーとして有用である。
本発明によれば、カロチンシンターゼ遺伝子に対する言及には、それ自体のコード領域だけでなくその遺伝子によりコードされるカロチンシンターゼの産生を制御する調節領域(例えば、以下に限定されることはないが、転写制御領域、翻訳制御領域または翻訳後の制御領域)のような、天然の(即ち、野生型の)カロチンシンターゼ遺伝子に関連した核酸配列の全てが含まれる。別の態様として、カロチンシンターゼ遺伝子は、所定のカロチンシンターゼをコードする核酸配列に類似するが同一ではない配列を含む天然に存在する対立遺伝子変異体とすることができる。対立遺伝子変異体については、すでに前述した。「核酸分子」および「遺伝子」という語句は、その核酸分子に上述の遺伝子が含まれる場合には同じ意味で使用され得る。
カロチンシンターゼの核酸(分子)相同体(即ち、カロチンシンターゼ相同体をコードする)は、当業者に周知の多くの方法により産生することができる(例えば、Sambrookら、を参照されたい)。例えば、核酸分子は、以下に限定されることはないが、従来の突然変異誘発法ならびに組換えDNA技術(例えば、部位特異的突然変異誘発法、化学処理、制限酵素切断、核酸断片の連結および/またはPCR増幅)、またはオリゴヌクレオチド混合物の合成と核酸分子混合物を「構築する」ための混合物群の連結およびその組み合わせによる技術を含む、さまざまな技術を用いて組換えることができる。カロチンシンターゼをコードする組換え核酸分子を組換えるための別の方法は、遺伝子シャッフリング(即ち、分子育種)である(例えば、Stemmerの米国特許第5,605,793号; MinshullおよびStemmer; 1999, Curr. Opin. Chem. Biol. 3:284〜290; Stemmer, 1994, P.N.A.S. USA 91:10747〜10751を参照されたい、これらは全てその全体が参照として本明細書に組み入れられる)。この技術を使用して、カロチンシンターゼ作用の変化をいくつか同時に効果的に導入することができる。核酸(分子)相同体は、カロチンシンターゼ遺伝子とのハイブリダイゼーションによりまたは核酸分子によりコードされるタンパク質の機能(即ち、酵素活性)をスクリーニングすることにより選択することができる。
本発明の一つの態様は、配列番号:1、配列番号:2、配列番号:4、配列番号:6、配列番号:8、およびそれらに完全に相補的な核酸配列から選択される核酸配列のうちの少なくとも12個の連続ヌクレオチドを含む、オリゴヌクレオチドに関する。オリゴヌクレオチドプライマーとしてまたはプローブとして使用される核酸分子の最小サイズは通常、その核酸分子がGCに富む場合には長さが少なくとも約12〜約15ヌクレオチドであり、その核酸分子がATに富む場合には長さが少なくとも約15〜約18塩基である。本発明のオリゴヌクレオチドプローブまたはプライマーの最大サイズに関しては、プローブまたはプライマーには、使用目的に適した本発明のカロチンシンターゼ遺伝子のいろいろな部分が含まれる可能性があり、通常、プローブの方がプライマーよりも大きいという点において、実践する上での限界以外には、限界がない。従って、本発明のオリゴヌクレオチドは、約12〜約3800ヌクレオチドの任意の長さの断片またはさらに大きなプローブを、全整数(例えば、12、13、14、15、16......3799、3800)で含むことができる。
本発明の一つの態様には、クローニング、配列決定、ならびに/または核酸分子を発現させるおよび/もしくは組換え細胞を形成させるために核酸分子を宿主細胞中に輸送するような、核酸分子を別の方法で操作するのに適した任意の核酸ベクター(例えば、組換えベクター)に挿入された、本発明の単離核酸分子を少なくとも一つ含む、組換え核酸分子が含まれる。そのようなベクターは、本発明の核酸分子に隣接することが天然には見られない核酸配列である、異種核酸配列を含むが、そのベクターは同様に、本発明の核酸分子に隣接することが天然に見られる調節核酸配列(例えば、プロモーター、非翻訳領域) (下記に詳述)を含むこともできる。ベクターは、RNAベクターかDNAベクターのどちらか、または原核生物ベクターか真核生物ベクターのどちらかとすることができ、通常、ウイルスベクターかプラスミドベクターである。ベクターは、染色体外要素(例えば、プラスミド)として維持することができるまたは染色体に組み込むことができる。ベクター全体を宿主細胞内の適所に残存させることができ、またはある特定条件の下で、本発明の核酸分子を残すようにして、プラスミドDNAを欠失させることができる。組み込まれた核酸分子は、染色体プロモーターの制御下、天然型プロモーターもしくはプラスミドプロモーターの制御下、またはいくつかのプロモーターを組み合わせた制御下とすることができる。単一または複数コピーの核酸分子を染色体へ組み込むことができる。ベクターは、例えば、組織特異的プロモーターを用いることで、宿主細胞での組織特異的発現を目的として設計することができる。いくつかの組換えベクターを含む、本発明で有用ないくつかの組換え核酸分子は、実施例に詳述されている。
通常、組換え分子には、一つまたは複数の転写制御配列(例えば、プロモーター、オペレーター、リプレッサー、エンハンサー、ターミネーター)に機能的に連結された本発明の核酸分子が含まれる。本明細書では、「組換え分子」または「組換え核酸分子」という語句は主に、転写制御配列に機能的に連結された核酸分子または核酸配列を指すが、そのような核酸分子が本明細書に記載の組換え分子である場合、「核酸分子」という語句と同じ意味で使用することができる。本発明によれば、「機能的に連結された」という語句は、核酸分子を転写制御配列に、宿主細胞中へ形質転換した(即ち、形質転換した、形質導入した、形質移入した、または接合した)場合にその分子が発現可能とされるように連結することを指す。転写制御配列は、転写の開始、伸長、または終結を制御する配列である。特に重要な転写制御配列は、プロモーター、エンハンサー、オペレーターおよびリプレッサー配列のような、転写開始を制御する配列である。適当な転写制御配列には、本発明のカロチンシンターゼを発現させるのに有用な組換え細胞のうちの少なくとも一つで機能できる任意の転写制御配列が含まれる。種々のそのような転写制御配列が当業者に知られている。好ましい転写制御配列には、ヤブレツボカビ目の微生物、細菌細胞、真菌(例えば、酵母)細胞、または植物細胞で機能する配列が含まれる。植物に対して特に好ましい転写制御配列は、特定組織(例えば、葉、茎、根、花、種)で遺伝子発現を促進させる配列であり、本明細書では組織特異的な転写制御配列と称することができる。そのような配列は、当技術分野において周知である。
本発明の一つの態様として、適当な転写制御配列には、本発明のカロチンシンターゼ遺伝子において天然に見られる調節配列が含まれる。例えば、カロチンシンターゼのプロモーターを含む、シゾキトリウム属のカロチンシンターゼの調節配列は、配列番号:1のヌクレオチド1〜1405に、または配列番号:1のヌクレオチド346〜1405に見られる。
DNAまたはRNAのどちらかとすることができる、本発明の組換え分子は同様に、転写調節配列、翻訳調節配列、複製起源、および組換え細胞に適合するその他の調節配列のような、付加的な調節配列も含むことができる。一つの態様として、宿主細胞の染色体中に組み込まれたものを含む、本発明の組換え分子には同様に、発現したカロチンシンターゼをそのタンパク質の産生細胞から分泌可能とするまたは特定の細胞小器官もしくは膜に標的化可能とするシグナル(標的化)(即ち、シグナル部分の核酸配列)が含まれる。例えば、一つの態様として、適当なシグナル部分には、本発明のカロチンシンターゼと本来結び付いたシグナル部分(例えば、配列番号:3のアミノ酸1〜29) または本発明によるカロチンシンターゼの分泌を誘導できるあらゆる異種のシグナル部分が含まれる。別の態様として、本発明の組換え分子には、発現したカロチンシンターゼを宿主細胞の膜に輸送かつ組み込み可能とするシグナル配列が含まれる。適当なシグナル配列には、本発明のカロチンシンターゼと本来結び付いたシグナル配列、または細胞膜へのカロチンシンターゼの輸送かつ組み込みを誘導できる任意の異種シグナル配列が含まれる。別の態様として、本発明の組換え分子には、小胞体、葉緑体、有色体、他の色素体、または細胞質のような、特定の細胞内小器官または細胞内区画へのカロチンシンターゼの輸送を特異的に標的化するシグナル配列が含まれる。
本発明の一つまたは複数の組換え分子を使用して、本発明のコード化産物(例えば、カロチンシンターゼ)を産生することができる。一つの態様として、コード化産物は、タンパク質を発現させるのに効果的な条件の下で、本明細書に記載の核酸分子を発現させることにより産生させる。コード化タンパク質を産生させる好ましい方法は、宿主細胞を一つまたは複数の組換え分子で形質転換して、組換え細胞を形成させるものである。形質転換させる適当な宿主細胞には、ヤブレツボカビ目の微生物を含む、任意の微細藻類の細胞、または形質転換可能な、任意の細菌細胞、真菌(例えば、酵母)細胞、その他の微生物細胞、もしくは植物細胞が含まれるが、これらに限定されることはない。宿主細胞は、非形質転換細胞または少なくとも一つの核酸分子で既に形質転換されている細胞とすることができる。
本発明で使用するのに好ましい宿主細胞には、以下に限定されることはないが: (1) 作物(例えば、ブラシカ属ナプス系のカノーラ種(canola-Brassica napus)、コメ、トウモロコシ、フラックス、ベニバナ、大豆、ヒマワリ、ナタネ、リンシード)、トマト、およびニンジンを含むがこれらに限定されることはない植物; (2) ヒゲカビ(Phycomyces)、アカパンカビ(Neurospora)、ケカビ(Mucor)、イトエダカビ(Blakeslea)、および酵母(例えば、サッカロマイセス・セルビシエ(Saccaromyces cerevisiae)、ファフィア・ロドザイマ(Phaffia rhodozyma)、キサントフィロマイセス・デンドロフス(Xanthophyllomyces dendrohous)、カンジダ・ウチルス(Candida utilus))を含むがこれらに限定されることはない菌類; (3) 緑藻類(例えば、ヘマトコッカス・プルビアリス(Haematococcus pluvialus)、クロロコッカム(Chlorococcum)、スポンギオコッカム(Spongiococcum)、ネオスポンギオコッカム(Neospongiococcum)、デュナリエラ(Dunaliella))を含むがこれらに限定されることはない藻類; (4) 藍藻(例えば、スピルリナ(Spirulina)、シネココッカス(Synechococcus)、シネコシスティス(Synechocystis))、大腸菌、フラボバクテリウム(Flavobacterium)、パラコッカス(Paracoccus)、エルビニア(Erwinia)、アグロバクテリウム、ロドコッカス(Rhodococcus)を含むがこれらに限定されることはない細菌; ならびに(5) トラウストキトリウム属種 (例えば、U.ビスルゲンシス、U.アモエボイダ、U.サルカリアナ、U.プロファンダ、U.ラジアタ、U.ミヌタおよびウルケニア属種 BP-5601のような前のウルケニア種を含み、トラウストキトリウム・ストリアタム、トラウストキトリウム・オーレウム、およびトラウストキトリウム・ロゼウムを含む); ラビリンチュロイデス属、ジャポノキトリウム属 (例えば、ジャポノキトリウム属種)、およびシゾキトリウム属 (例えば、シゾキトリウム属種、シゾキトリウム・アグリゲイツム、シゾキトリウム・リマシナム、シゾキトリウム・ミナタム)を含むがこれらに限定されることはないヤブレツボカビ目の一員を含む、本発明のカロチンシンターゼの発現に適した任意の微生物細胞または植物細胞が含まれる。
本発明によれば、「形質転換された」または「形質転換」という用語は、外来性核酸分子(即ち、組換え核酸分子)を細胞中に挿入できる任意の方法を言及するのに使用される。微生物系では、「形質転換」という用語は、微生物による外来性核酸の取込みに起因する遺伝的変化を述べるのに使用され、動物細胞での類似過程に関してよく使用される、「形質導入」という用語と本質的に同義語とすることができる。「形質転換」という用語は、本明細書では、細菌および酵母のような微生物細胞への、または植物細胞への核酸分子の導入を言及するのに好ましく使用される。従って、形質転換法には、トランスフェクション(形質導入)、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、リポフェクション、バイオリスティック法(粒子衝突)、吸着、アグロバクテリウム媒介形質転換、感染および原形質融合が含まれるが、これらに限定されることはない。原核宿主細胞および真核宿主細胞の形質転換法は、当技術分野において周知である。例えば、Maniatisら、Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor, NY (1982), Sambrookら、Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor, NY (1989)(これらはその全体が参照として本明細書に組み入れられる)を参照されたい。ヤブレツボカビ目の一員を形質転換させるための好ましい方法は、2002年4月16日付で出願された米国特許出願第10/124,807号(これはその全体が参照として組み入れられる)に報告されている。
生物学的および物理学的形質転換手順を含む、多数の植物形質転換法が開発されている。例えば、Methods in Plant Molecular Biology and Biotechnology, Glick, B.R.およびThompson, J.E.編(CRC Press社, Boca Raton, 1993) 67〜88頁のMikiら、「Procedures for Introducing Foreign DNA into Plants」を参照されたい。さらに、植物細胞に対するベクターおよびインビトロ培養法または植物の組織形質転換と再生を利用できる。例えば、Methods in Plant Molecular Biology and Biotechnology, Glick, B.R.およびThompson, J.E.編(CRC Press社, Boca Raton, 1993) 89〜119頁のGruberら、「Vectors for Plant Transformation」を参照されたい。
植物中に発現ベクターを導入するために最も広く利用されている方法は、アグロバクテリウムの自然形質転換系に基づいている。例えば、Horschら、Science 227:1229 (1985)を参照されたい。A.ツメファシエンス(A.tumefaciens)およびA.リゾジェネス(A. rhizogenes)は、植物細胞を遺伝的に形質転換させる、植物病原性の土壌細菌である。A.ツメファシエンスおよびA.リゾジェネスの、それぞれ、TiプラスミドおよびRiプラスミドは、植物の遺伝的な形質転換に関与する遺伝子を持っている。例えば、Kado, C. I., Crit. Rev. Plant. Sci. 10: 1 (1991)を参照されたい。アグロバクテリウムのベクター系およびアグロバクテリウム媒介遺伝子移入の方法に関する説明は、Gruberら(前掲)、Mikiら(前掲)、Moloneyら、Plant Cell Reports 8:238 (1989)、および米国特許第4,940,838号および米国特許第5,464,763号(これらはそれぞれ、その全体が参照として本明細書に組み入れられる)を含む、多数の文献に示されている。
植物形質転換に関して一般に利用可能な方法は、DNAをマイクロプロジェクタイル(微小粒子)の表面上で運ぶ、マイクロプロジェクタイルによる形質転換である。発現ベクターは、植物の細胞壁および細胞膜を貫通させるのに十分な速度までマイクロプロジェクタイルを加速するバイオリスティック装置により植物組織中に導入する。Sanfordら、Part. Sci. Technol. 5:27 (1987), Sanford, J.C., Trends Biotech. 6:299 (1988), Sanford, J.C., Physiol. Plant 79:206 (1990), Kleinら、Biotechnology 10:268 (1992) (これらはそれぞれ、その全体が参照として本明細書に組み入れられる)を参照されたい。
植物へのDNAの物理的輸送のための別の方法は、標的細胞の超音波処理である。Zhangら、Bio/Technology 9:996 (1991)を参照されたい。または、リポソームまたはスフェロプラスト融合が、植物中へ発現ベクターを導入するのに使用されている。Deshayesら、EMBO J., 4:2731(1985), Christouら、Proc Natl. Acad. Sci. USA 84:3962 (1987) (これらはそれぞれ、その全体が参照として本明細書に組み入れられる)を参照されたい。CaCl2沈殿、ポリビニルアルコールまたはポリ-L-オルニチンを用いたプロトプラスト中へのDNAの直接取込みも報告されている。Hainら、Mol. Gen. Genet. 199:161 (1985)およびDraperら、Plant Cell Physiol. 23:451 (1982) (これらはそれぞれ、その全体が参照として本明細書に組み入れられる)を参照されたい。プロトプラストならびに完全な細胞および組織のエレクトロポレーションも報告されている。Donnら、In Abstracts of VIIth International Congress on Plant Cell and Tissue Culture IAPTC, A2-38, 53頁(1990); D'Halluinら、Plant Cell 4 :1495〜1505 (1992)およびSpencerら、Plant Mol. Biol. 24:51〜61 (1994) (これらはそれぞれ、その全体が参照として本明細書に組み入れられる)を参照されたい。
一つの態様として、本発明の単離されたカロチンシンターゼは、このタンパク質を産生させるのに効果的な条件の下で、このタンパク質を発現する細胞を培養することと、そのタンパク質を回収することにより産生される。培養するのに好ましい細胞は、本発明の組換え細胞である。効果的な培養条件には、タンパク質の産生を可能とする、効果的な培地、バイオリアクター、温度、pH、および酸素条件が含まれるが、これらに限定されることはない。効果的な培地とは、本発明のカロチンシンターゼを産生させるため、細胞を培養する任意の培地を指す。そのような培地には通常、同化可能な炭素、窒素およびリン酸源、ならびに適当な塩、無機物、金属およびその他の栄養素(例えば、ビタミン)を有する水性培地が含まれる。本発明の細胞は、従来の発酵バイオリアクター、振盪フラスコ、試験管、マイクロタイタープレート、およびペトリ皿の中で培養することができる。培養は、組換え細胞に適した温度、pHおよび酸素含有量にて行うことができる。そのような培養条件は、当業者の専門知識の範囲内である。
産生のために利用したベクターおよび宿主系に応じて、得られた本発明のタンパク質は、組換え宿主細胞内に残るか、培地中に分泌されるか、大腸菌の細胞周辺腔のような、二つの細胞膜間の空間中に分泌されるか、細胞膜の外面上に保持される可能性がある。「タンパク質を回収する」という語句は、タンパク質を含有する培地全てを回収することを指し、必ずしも分離または精製のさらなる工程を意味しない。本発明のタンパク質は、必要に応じて、以下に限定されることはないが、アフィニティークロマトグラフィー法、イオン交換クロマトグラフィー法、ろ過法、電気泳動法、疎水性相互作用クロマトグラフィー法、ゲルろ過クロマトグラフィー法、逆相クロマトグラフィー法、コンカナバリンAクロマトグラフィー法、クロマトフォーカシング法および分別可溶化法のような、種々の標準的なタンパク質精製法を用いて精製することができる。本発明のタンパク質を精製する場合、それらは「実質的に精製された」形で回収されることが好ましい。本明細書では、「実質的に精製された」とは、生体触媒または他の試薬としてのタンパク質の有効利用を可能とする純度を指す。
本発明の方法により有意に多量のカロチノイドを産生させるため、微生物または植物(または植物の一部、例えば、種子、花粉、胚、花、果実、苗条、葉、根、茎、外植片など)を遺伝子改変して、カロチンシンターゼの作用を増加させること、好ましくは、カロチンシンターゼの産生を促進させることが可能であり、それによって最終産物のカロチノイドが産生される。本発明の一つの態様として、本発明の内在性カロチンシンターゼを含む微生物(例えば、シゾキトリウム属)を遺伝子改変して、カロチンシンターゼの発現および活性を増加させるかまたは低下させる。
本明細書では、遺伝子改変した、細菌、原生生物、微細藻類、真菌、またはその他の微生物、および特に、本明細書に記載のヤブレツボカビ目 (例えば、トラウストキトリド)の属の任意の一員(例えば、シゾキトリウム属、トラウストキトリウム属、ジャポノキトリウム属、ラビリンチュロイデス属)のような、遺伝子改変微生物は、所望の結果が得られる(即ち、カロチンシンターゼの発現および/もしくは活性ならびに/またはカロチンシンターゼを用いた望ましい産物の産生の増加または改変)ようにその天然(即ち、野生または天然に存在する)型から改変(即ち、突然変異または変化)させてあるゲノムを有する。微生物の遺伝子改変は、従来の菌株開発技術よび/または分子遺伝学的技術を用いて達成することができる。そのような技術は、例えば、Sambrookら、1989(前掲) (これはその全体が参照として本明細書に組み入れられる)のなかで、微生物について広く開示されている。遺伝子改変微生物の中には、改変により所望の効果が与えられるように、核酸分子が挿入されたる、欠失した、または改変された(即ち、突然変異させてある; 例えば、ヌクレオチドの挿入、欠失、置換、および/または反転により)微生物を含めることができる。
本発明によって改変することが好ましい微生物の宿主細胞には、任意の細菌、原生生物、微細藻類、真菌、または原生動物が含まれるが、これらに限定されることはない。一つの局面として、遺伝子改変するのに好ましい微生物には、ヤブレツボカビ目の任意の微生物が含まれるが、これらに限定されることはない。本発明で使用するのにとりわけ好ましい宿主細胞には、以下に限定されることはないが、トラウストキトリウム属、ラビリンチュロイデス属、ジャポノキトリウム属、およびシゾキトリウム属を含む属由来の微生物を含めることができる。これらの属内で好ましい種には、シゾキトリウム・アグリゲイツム、シゾキトリウム・リマシナム、シゾキトリウム・ミナタムを含む、任意のシゾキトリウム属種; トラウストキトリウム・ストリアタム、トラウストキトリウム・オーレウム、トラウストキトリウム・ロゼウムを含む、任意のトラウストキトリウム属種 (U.ビスルゲンシス、U.アモエボイダ、U.サルカリアナ、U.プロファンダ、U.ラジアタ、U.ミヌタおよびウルケニア属種 BP-5601のような前のウルケニア種を含む); ならびに任意のジャポノキトリウム属種が含まれるが、これらに限定されることはない。ヤブレツボカビ目の特に好ましい菌株には、シゾキトリウム属種 (S31)(ATCC 20888); シゾキトリウム属種 (S8)(ATCC 20889); シゾキトリウム属種 (LC-RM)(ATCC 18915); シゾキトリウム属種 (SR21); シゾキトリウム・アグリゲイツム (GoldsteinおよびBelsky) (ATCC 28209); シゾキトリウム・リマシナム (HondaおよびYokochi) (IFO 32693); トラウストキトリウム属種 (23B)(ATCC 20891); トラウストキトリウム・ストリアタム (Schneider)(ATCC 24473); トラウストキトリウム・オーレウム (Goldstein)(ATCC 34304); トラウストキトリウム・ロゼウム (Goldstein)(ATCC 28210);およびジャポノキトリウム属種 (L1)(ATCC 28207)が含まれるが、これらに限定されることはない。遺伝子改変に適した宿主微生物の他の例には、サッカロマイセス・セルビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、サッカロマイセス・カールスバーゲンシス(Saccharomyces carlsbergensis)を含む酵母、もしくはカンジダ(Candida)、クルイベロマイセス(Kluyveromyces)のような他の酵母、または他の真菌、例えば、アスペルギルス(Aspergillus)、アカパンカビ、ペニシリウム(Penicillium)などのような糸状菌が含まれるが、これらに限定されることはない。細菌細胞は、宿主として使用することもできる。この中には、発酵過程で有用とできる、大腸菌が含まれる。または、ラクトバチルス(Lactobacillus)種またはバチルス(Bacillus)種のような宿主を宿主として使用することができる。
本明細書では、遺伝子改変植物の中には、高等植物を含む任意の遺伝子改変植物および特に、任意の、消費可能植物または本発明の所望の産物(例えば、カロチノイドまたはその他の脂質産物)を産生させるのに有用な植物を含めることができる。そのような遺伝子改変植物は、所望の結果が得られる(即ち、カロチンシンターゼの発現および/もしくは活性ならびに/またはカロチンシンターゼを用いた望ましい産物の産生の増加または改変)ようにその天然(即ち、野生または天然に存在する)型から改変(即ち、突然変異または変化)させてあるゲノムを有する。植物の遺伝子改変は、従来の菌株開発技術よび/または分子遺伝学的技術を用いて達成することができる。所望のアミノ酸配列をコードする組換え核酸分子が植物のゲノム中に組み込まれた、形質転換植物を産生するための方法は、当技術分野において周知であり、上に簡単に記述されている。本発明によって遺伝子改変するのに好ましい植物は、ヒトを含む、動物が消費するのに適した植物が好ましい。
本発明によって遺伝子改変するのに好ましい植物(即ち、植物の宿主細胞)には、任意の高等植物および特に、作物とりわけその油を目的として利用される植物を含む、消費可能植物が含まれるが、これらに限定されることはない。そのような植物の中には、例えば、カノーラ、大豆、ナタネ、リンシード、トウモロコシ、ベニバナ、フラックス、ヒマワリ、タバコ、コメ、トマトおよびニンジンを含めることができる。その他の好ましい植物には、医用薬剤、芳香剤、食餌療法剤、機能性食品成分もしくは美容上の活性物質として使用される化合物を産生することが知られている植物、またはこれらの化合物/物質を産生させるために遺伝子改変されている植物が含まれる。
本発明によれば、遺伝子改変微生物または植物には、組換え技術を用いて組換えられた微生物または植物が含まれる。本明細書では、遺伝子発現の低下、遺伝子機能の低下、または遺伝子産物(即ち、遺伝子によりコードされるタンパク質)の機能の低下をもたらす遺伝子改変は、遺伝子の不活性化(完全なまたは部分的な)、欠失、妨害、遮断、または下方制御と見なすことができる。例えば、組換え遺伝子によりコードされるタンパク質の機能の低下をもたらす遺伝子の遺伝子改変は、遺伝子の完全な欠失(即ち、遺伝子が存在せず、従って、そのタンパク質が存在しない)、タンパク質を完全にはもしくは全く翻訳させない(例えば、タンパク質が発現しない)遺伝子変異、またはタンパク質の天然の機能を低下させるもしくは無効にする(例えば、酵素活性または作用が低下したまたは無いタンパク質が発現する)遺伝子変異、の結果とすることができる。遺伝子の発現または機能の増加をもたらす遺伝子改変は、遺伝子の増幅、過剰産生、過剰発現、活性化、増強、付加、または上方制御と見なすことができる。
本発明の一つの態様として、微生物または植物の遺伝子改変により、本発明のカロチンシンターゼの発現および/または活性を増加させるかまたは低下させる。そのような遺伝子改変には、任意の種類の組換えも含まれ、特に組換え技術によりおよび/または従来の突然変異誘発法により作り出した組換えが含まれる。カロチンシンターゼの作用(活性)を増加させるとの言及は、問題としている微生物もしくは植物中のおよび/または生物を形質転換する、カロチンシンターゼをコードするDNAを含む組換え核酸中の任意の遺伝子改変であって、それにより酵素の機能性の増加をもたらすことを指し、その中には酵素の高次活性(例えば、特異活性またはインビトロ酵素活性)、酵素の阻害または分解の低下、および酵素の過剰発現が含まれ得ることに留意すべきである。例えば、遺伝子のコピー数を増加させ、未変性のプロモーターによる発現量よりもさらに高い発現量を与えるプロモーターを使用して、発現量を増加させることができる。または遺伝子操作技術によりもしくは従来の突然変異誘発法により遺伝子を組換えて、酵素の作用を増大させることができる。一つの局面として、カロチンシンターゼの活性または発現は、カロチンシンターゼ遺伝子またはタンパク質と相互作用して、通常、そのカロチンシンターゼ遺伝子またはタンパク質の発現または活性を調節する、核酸またはタンパク質を改変することにより改変することができる。そのような改変は、組換え技術または従来の突然変異誘発法により行うことができる。
同様に、カロチンシンターゼの作用(活性)を低下させるとの言及は、問題としている微生物もしくは植物における、および/または生物を形質転換する、カロチンシンターゼをコードするDNAを含む組換え核酸における、任意の遺伝子改変であって、それにより酵素の機能性の低下をもたらすことを指し、その中には酵素活性(例えば、特異活性)の低下、酵素の阻害または分解の増加、および酵素発現の低下または消失が含まれる。例えば、本発明のカロチンシンターゼの作用は、その酵素の産生を遮断するもしくは低下させることにより、その酵素をコードする遺伝子の全てもしくは一部部を「ノックアウト」することにより、酵素活性を低下させることにより、または酵素活性(本発明のカロチンシンターゼの酵素活性の任意の一つ、二つ、または三つ)を阻害することにより低下させることができる。酵素産生の遮断または低下の中には、増殖培地中に誘導化合物の存在を必要とするプロモーターの制御下に酵素をコードする遺伝子を置くことを含めることができる。誘導物質が培地から枯渇されるような条件を樹立することにより、酵素をコードする遺伝子の発現(従って、酵素合成の発現)を停止させることが可能になると思われる。酵素活性の遮断または低下の中には、米国特許第4,743,546号(これはその全体が参照として本明細書に組み入れられる)に記述されているものに類似した除去技術によるアプローチの利用も含めることができるものと思われる。このアプローチを利用するため、関心対象の酵素をコードする遺伝子を、ゲノムからの遺伝子の特異的な、制御による除去を可能とする特定の遺伝子配列の間にクローニングする。除去は、例えば、米国特許第4,743,546号の中にあるように、培養の培養温度の変化により、または他のなんらかの物理的シグナルもしくは栄養的シグナルにより促進させることができるものと思われる。相同組換え技術による、本発明のカロチンシンターゼ遺伝子の全てまたは一部分の欠失については、実施例に記述されている。一つの態様として、本発明のCSの酵素ドメイン(例えば、PD、PS、LC)のうちの一つまたは二つは、所望の産物を産生させるためにノックアウトすることができる。例えば、CS酵素のLCドメインをノックアウトすることで、リコペンが産生されるはずである。そのような遺伝子は実質的に、本発明者らにとって以前は未知であった組み合わせである、PD/PSの二機能性酵素になるものと思われる。リコペンはそれ自体が、所望の産物となり得る。さらに、リコペンは、α-カロチンおよびルテインのようなその他の潜在的に望ましい産物に対する基質として役立つ可能性があるものと思われる。
本発明の一つの態様として、突然変異誘発プログラムを選択的スクリーニング過程と組み合わせて、関心対象の微生物を得ることができると考えられる。突然変異誘発法には、以下に限定されることはないが、化学的突然変異誘発法、遺伝子シャッフリング法、特定の酵素ドメインをコードする遺伝子領域のスイッチング法、またはそれらの遺伝子の特定領域に限定した突然変異誘発法、ならびにその他の方法を含めることができると思われる。例えば、高速大量処理による突然変異誘発法を使用して、所望のカロチノイドまたは他の脂質産物の産生に影響を与えるまたは最適化することができるものと思われる。そのような方法は、分子生物学法によるカロチンシンターゼの選択(即ち、標的または指向性)改変と組み合わせることができるものと思われる。例えば、ある場合には、例えば、内在性カロチンシンターゼを含有する宿主細胞を含む、任意の適当な宿主細胞への本発明のカロチンシンターゼをコードする組換え核酸分子の導入による、選択的改変技術を利用して微生物を改変し、それから突然変異誘発法を利用して、カロチノイド産生を最適化するおよびカロチノイド合成活性が改善された菌株を作製するまたはその他に改善したもしくは所望の性質を有する微生物を選択することができるものと思われる。スクリーニング法は、シゾキトリウム属のカロチンシンターゼに相同的なカロチンシンターゼ遺伝子を有する他の生物を同定する場合にも有用である。そのような生物で同定された相同的なCS遺伝子は、本明細書に記載の方法に類似の方法のなかで使用することができる。
本発明の一つの態様として、遺伝子改変微生物または植物には、カロチノイドを全般に合成する能力が増強したまたは特定のカロチノイドを合成する(即ち、生物により産生される特定のカロチノイドのプロファイルを変化させる)能力が増強した微生物または植物が含まれる。本発明によれば、産物を「合成する能力が増強した」とは、その微生物または植物が、同じ条件の下で、培養させたまたは増殖させた、野生型の微生物または植物と比べて、産物量の増加をもたらすような、産物合成に関連した経路における、任意の増強または上方制御を指す。本発明の一つの態様として、微生物または植物がカロチノイドを合成する能力の増強は、カロチンシンターゼ遺伝子の発現増幅により実現される。カロチンシンターゼの発現増幅は、任意の適当な宿主細胞(例えば、ヤブレツボカビ目の細胞、細菌細胞、酵母細胞、植物細胞)において、例えば、ヤブレツボカビ目の場合、カロチンシンターゼ遺伝子をコードする組換え核酸分子の導入により、または未変性のカロチンシンターゼ遺伝子に対し調節制御を変化させることにより実現することができる。
本発明によれば、生物または核酸分子の「選択的改変」とは、標的改変、または指向性改変を指し、作製すべき改変は、例えば、本発明のカロチンシンターゼの遺伝子構造の知識により予め決定され設計される。例えば、生物の選択的改変は、カロチンシンターゼをコードする組換え核酸分子の導入(例えば、過剰発現)により、または内在性遺伝子の標的改変により、例えば、相同組換えにより実現することができる。選択的改変は無作為変異導入法とは区別され、後者の過程では、変異は非特異的標的化法により無作為に生成され、所望の表現形は、その表現系を目的とした変異体のスクリーニングを介して後に選択される。選択的改変法ならびに従来の無作為変異導入法およびスクリーニング法を本発明のなかで組み合わせて、さまざまな遺伝子改変生物を作り出すことができる。
従って、カロチンシンターゼをコードする核酸配列を含む組換え核酸分子で形質転換する微生物または植物を提供することが本発明の一つの態様である。そのような核酸配列を含む好ましい組換え核酸分子には、本明細書に前述のカロチンシンターゼの核酸配列の任意のものを含む組換え核酸分子が含まれる。変異体の、または相同体の、カロチンシンターゼをコードする核酸配列を含む遺伝子改変核酸分子で形質転換する微生物または植物を提供することが本発明の一つの態様である。そのようなカロチンシンターゼは、本明細書ではカロチンシンターゼ相同体と見なすことができ、本明細書に記載の未変性のカロチンシンターゼの酵素活性の任意の一つ、二つ、または三つを含むことができる。タンパク質相同体については、本明細書に詳述されている。
生合成過程によりカロチノイドを産生させるための遺伝子改変微生物を提供することが本発明の別の態様であり、その際に、その微生物はカロチンシンターゼをコードする核酸分子を含み、そのカロチンシンターゼをコードする核酸分子は、カロチンシンターゼの発現または生物活性を増加させるために改変されている。カロチンシンターゼは、本明細書に記載の相同体および生物学的に活性な断片を含む、本明細書に記載の任意のカロチンシンターゼとすることができる。本発明の一つの局面として、微生物は内在性カロチンシンターゼ(例えば、ヤブレツボカビ目の一員)を有し、その内在性遺伝子は、カロチンシンターゼの発現または活性を増加させるために改変されている(例えば、未変性のプロモーターによる発現量よりもさらに高い発現量を与えるプロモーターの導入、酵素活性を増加させるための内在性遺伝子の遺伝子改変などによって)。別の態様として、微生物は、本発明のカロチンシンターゼをコードする組換え核酸分子を用いた形質転換により遺伝子改変される。そのような微生物は、任意の適当な宿主微生物とすることができ、一つの態様として、内在性カロチンシンターゼおよび組換えカロチンシンターゼの両方を含むような、ヤブレツボカビ目の微生物(例えば、シゾキトリウム属)である。このモデルでは、内在性カロチンシンターゼおよび組換えカロチンシンターゼの一方または両方が、本明細書に開示される野生型のシゾキトリウム属のカロチンシンターゼと比べて、カロチンシンターゼ相同体を産生させるために改変される可能性があるため、そのカロチンシンターゼは同一である必要はない。例えば、内在性カロチンシンターゼまたは組換えカロチンシンターゼの一方または両方を改変して、カロチンシンターゼの発現または活性を増加させることができる。
従って、本発明の一つの態様は、上述のカロチンシンターゼの発現または生物活性を増加させるために改変されたカロチンシンターゼをコードする核酸分子を含む、本明細書に記載の微生物の任意のものを含むバイオマスである。本明細書では、バイオマスとは、発酵または培養過程から集菌された微生物細胞の集団を指す。腸内細菌バイオマスを植菌する、増殖させるおよび回収するためのさまざまな発酵パラメータは、米国特許第5,130,242号(これはその全体が参照として本明細書に組み入れられる)に詳述されている。発酵を行い集菌したバイオマスは乾燥(例えば、噴霧乾燥、煙道乾燥、真空乾燥、または類似の工程)させて、任意の食品、医薬品、またはその他の所望の製品に使用することができる。または、集菌し洗浄したバイオマスをさまざまな製品に直接(乾燥させずに)使用することができる。その貯蔵期間を延長させるため、乾燥バイオマスを酸性(およそpH = 3.5〜4.5)にしておよび/または低温殺菌してもしくは急速加熱殺菌して酵素を不活化させてから、真空または非酸化雰囲気(例えば、N2またはCO2)の下で缶詰、瓶詰、または包装することができる。
本発明の一つの態様は、前述のカロチンシンターゼの発現または生物活性が増加した遺伝子改変微生物を発酵培地中で培養する段階を含む、生合成過程によりカロチノイドを産生するための方法である。例えば、微生物は、本明細書に記載の任意のカロチンシンターゼタンパク質(その相同部分および酵素活性部分を含む)の発現または生物活性が増加していてもよい。カロチンシンターゼは、本明細書の内在性カロチンシンターゼおよび/または組換えカロチンシンターゼとすることができる。微生物は、所望のカロチノイドまたはその他の脂質産物を産生させるのに効果的な条件の下、適当な培地中で培養するかまたは増殖させる。適当な、または効果的な培地とは、その中で本発明の遺伝子改変微生物を培養したときに所望の産物を産生できる任意の培地を指す。そのような培地は通常、同化可能な炭素、窒素、およびリン酸源を含む水性培地である。そのような培地には同様に、適当な塩、無機物、金属、およびその他の栄養素も含まれる。本発明の微生物は、従来の発酵バイオリアクターの中で培養することができる。微生物は、以下に限定されることはないが、バッチ法、流加培養(fed-batch)法、細胞リサイクル法、および連続発酵法を含む、任意の発酵法により培養することができる。本発明に従う潜在的な宿主微生物に対する好ましい増殖条件は、当技術分野において周知である。遺伝子改変微生物により産生された所望の産物は、従来の分離法および精製法を用いて、発酵培地から回収することができる。例えば、発酵培地をろ過または遠心して、微生物、細胞残渣、およびその他の粒状物質を除去することができ、産物をこの無細胞上清から、例えば、イオン交換法、クロマトグラフィー法、抽出法、溶媒抽出法、膜分離法、電気透析法、逆浸透法、蒸留法、化学誘導体化法、および結晶化法のような、従来法により回収することができる。あるいは、所望の産物を産生する微生物、またはその抽出物およびいくつかの分画は、微生物の構成成分を産物から除去することなく、例えば、本発明のバイオマスのなかで使用することができる。
本発明の一つの態様は、本明細書に前述したような本発明の遺伝子改変植物を増殖させるまたは培養することによりカロチノイドを産生させる方法である。そのような方法には、カロチンシンターゼの作用を高める遺伝子改変を有する植物を、発酵培地中で培養するかまたは土壌のような適当な環境中で増殖させる段階が含まれる。遺伝子改変には、カロチンシンターゼの生物活性を有するタンパク質を発現する組換え核酸分子による植物の形質転換または形質導入が含まれることが好ましい。そのようなタンパク質の中には、生物活性を有する天然型カロチンシンターゼの相同体の任意のものを含む、本明細書に記載のカロチンシンターゼの任意のものを含めることができる。
本発明のカロチノイドの産生方法では、カロチンシンターゼの作用を高める遺伝子改変を有する植物を、発酵培地中で培養するかまたはカロチンシンターゼを産生させる土壌のような適当な培地中で増殖させる。適当な、または効果的な、発酵培地は、上記に詳述されている。高等植物用の適当な増殖培地には、以下に限定されることはないが、土壌、砂、根の成長を補助する他の粒状体(例えば、蛭石、真珠岩など)または水耕培地を含む植物用の任意の増殖培地のほかに、高等植物の成長を最適化する、適当な光、水、および栄養剤が含まれる。本発明の遺伝子改変植物は、カロチンシンターゼの作用増加によって大量のカロチノイドを産生するように遺伝子操作で改変される。カロチノイドは、植物からカロチノイドを抽出する精製過程により回収することができる。好ましい態様として、カロチノイドは、植物または植物の一部分(例えば、種)を収穫することにより回収される。この態様において、植物または植物の一部分は、その自然の状態のまま消費してもよく、さらに消耗品に加工してもよい。
本発明の別の態様は、カロチンシンターゼ遺伝子または機能ドメイン(例えば、本発明のカロチンシンターゼの酵素機能ドメイン、PD、PSおよび/またはLC、の任意の一つ、二つ、または三つ)をコードするその一部分を選択的に欠失させるかまたは不活化させるために遺伝子改変された、色素沈着がない遺伝子改変微生物に関する。カロチンシンターゼ遺伝子には、本明細書に前述したような、カロチンシンターゼをコードする核酸分子が含まれる。好ましい態様として、微生物は、微細藻類の微生物であり、さらに好ましい態様として、ヤブレツボカビ目 (例えば、シゾキトリウム属)の微生物である。カロチンシンターゼ遺伝子は、カロチンシンターゼ遺伝子のコード領域に対するまたはカロチンシンターゼ遺伝子の調節領域に対する改変によって組換えることができ、その結果、カロチンシンターゼ遺伝子の発現および/または生物活性が低下する、および好ましくは微生物に色素沈着がなくなるように阻害される。一つの態様として、カロチンシンターゼ遺伝子は、その遺伝子を非CS核酸配列と置き換えるなどして、例えば、相同組換えを介した遺伝子破壊によって部分的にまたは完全に欠失させるか不活化させる。この局面において、カロチンシンターゼ遺伝子は、カロチンシンターゼ遺伝子のコード領域を破壊する異種核酸配列を含む、カロチンシンターゼ遺伝子にハイブリダイズする核酸配列との標的相同組換えにより、突然変異させるかまたは不活化させる(または欠失させる)(実施例を参照されたい)。
無色の(色素沈着のない)微生物を産生することには、商業的な利益がある。第一に、カロチンシンターゼを含有する微生物には、ω-3系脂肪酸のような高度不飽和脂肪酸を含む、多量の多価不飽和脂肪酸(PUFA)を含有する脂質の産生に有用な生物であることが知られている、ヤブレツボカビ目の一員が含まれる。PUFAには、三個またはそれ以上の二重結合を有する任意のω-3系またはω-6系多価不飽和脂肪酸が含まれる。ω-3系PUFAは、終極のエチレン結合が脂肪酸の末端メチル基中の炭素から三つ目の炭素にあるポリエチレン系脂肪酸であって、この中には、例えば、ドコサヘキサエン酸C22:6(n-3) (DHA)、エイコサペンタエン酸C20:5(n-3) (EPA)、ω-3ドコサペンタエン酸C22:5(n-3) (DPAn-3)、ステアリドン酸C18 :4(n-3) (SDA)、およびリノレン酸C18:3(n-3) (LNA)が含まれる。ω-6系PUFAは、終極のエチレン結合が脂肪酸の末端メチル基中の炭素から六つ目の炭素にあるポリエチレン系脂肪酸であって、この中には、例えば、アラキドン酸C20:4(n-6) (ARA)、C22:4(n-6)、ω-6ドコサペンタエン酸C22:5(n-6) (DPAn-6)、γリノレン酸C18:3(n-6) (GLA)およびジホモγリノレン酸C20:3(n-6) (ジホモGLA)が含まれる。PUFAは、遊離脂肪酸およびPUFA残基を含有する化合物(リン脂質、脂肪酸エステル、トリアシルグリセロール、ジアシルグリセリド、モノアシルグリセリド、リゾリン脂質、リン脂質などを含む)を含む天然脂質に見られる一般型の任意のものとすることができる。多価不飽和脂肪酸(PUFA)は、栄養目的、製薬目的、工業目的、およびその他の目的に有用であると考えられる。PUFAの供給を天然源からおよび化学合成から拡充するだけでは、実需には十分ではない。シゾキトリウム属のような、ヤブレツボカビ目の一員は、PUFAのなかで豊富なトリアシルグリセロールを多量に蓄積する。例えば、シゾキトリウム属を培養して、大量のドコサヘキサエン酸(DHA; 22:6 ω3)およびドコサペンタエン酸(DPA; 22:5 ω-6);例えば、乾燥重量で30% DHA + DPAを産生させることができる(Barclayら、J. Appl. Phycol. 6,123 (1994))。有用なω-3系脂肪酸を含む、その他のPUFAは、ヤブレツボカビ目の一員のような生物を用い、その微生物のPUFA産生プロファイルを遺伝子工学的に改変させて産生させることが可能であり、これは2002年4月16日付で出願された、「PUFA Polyketide Synthase Systems and Uses Thereof」という名称の米国特許出願第10/124,800号(その全体が参照として本明細書に組み入れられる)の主題である。
ヤブレツボカビ目の一員のような微生物の脂質産物は通常、カロチノイド合成経路の存在により有色である。脂質産物はさまざまな食品およびその他の製品に有用であるため、無色の、または色素沈着のない微生物および脂質産物を産生することは有用であると思われ、それらは使用目的によっては美的に望ましいと思われる。さらに、そして理論により束縛するわけではないが、β-カロチンのようなカロチノイドは、ある条件下で酸化促進剤として作用する可能性があることを示唆する公開報告がある(例えば、Beutnerら、J. Sci. Food Agric. 81, 559 (2001))。従って、製品の製造に使用される微生物によるβ-カロチンおよび他のカロチノイドの産生を低下させることで、それから生じた脂質産物の安定性が高まる可能性がある。
従って、本発明の別の態様は、前述のように、同一種の野生型微生物と比べて色素沈着が減少している遺伝子改変微生物(例えば、ヤブレツボカビ目 (例えば、シゾキトリウム属、トラウストキトリウム属)の微生物)を含むバイオマスに関する。同様に本発明に含まれるのは、前述のカロチンシンターゼ遺伝子を選択的に欠失させるかまたは不活化させるために遺伝子改変された、遺伝子改変微生物の(例えば、ヤブレツボカビ目の)培養物から回収される色素沈着がない脂質である。当然のことながら、ヤブレツボカビ目以外の生物に、本明細書に記載のカロチンシンターゼに相同性があるカロチンシンターゼが含まれることが発見される可能性がある。そのような微生物は同様に、とりわけそのような微生物またはそのような微生物により産生される産物が、例えば、製品のなかで有用である場合、カロチンシンターゼの発現または活性を低下させるために組換えることができる。同様に本発明に含まれるのは、食品または医薬品および本発明により産生された脂質を利用するその他の製品のような、色素沈着がないバイオマスまたは脂質を含む製品である。
本明細書では、「脂質」という用語には、リン脂質;遊離脂肪酸;脂肪酸エステル;モノアシルグリセロール、ジアシルグリセロール、およびトリアシルグリセロール;ステロールおよびステロールエステル;カロチノイド;キサントフィル(例えば、オキシカロチノイド);炭化水素(例えば、ワックス);イソプレノイド由来化合物ならびに当業者に周知の他の脂質が含まれる。食品には、本明細書では、任意の食品添加物(例えば、油のように、別の食品の一部となる食品)が含まれ、そしてまた、以下に限定されることはないが、細粒菓子パン、パンおよびロールパン、朝食用シリアル、加工および未加工チーズ、調味料(ケチャップ、マヨネーズなど)、乳製品(牛乳、ヨーグルト)、プディング菓子およびゼラチンデザート、清涼飲料水、茶、粉末状飲料混合物、魚加工品、果実ベース飲料、チューインガム、堅い菓子、冷凍乳製品、食肉加工品、ナッツおよびナッツベースのスプレッド、パスタ、家禽処理物、グレイビー(ソース)およびソース、ポテトチップスおよびその他のチップスまたはクリスプ、チョコレートおよびその他の菓子類、スープおよびスープミックス、大豆ベースの製品(牛乳、飲料、クリーム、粉状ミルク)、植物油ベースのスプレッド、ならびに野菜ベースの飲料が含まれる。その他の製品には、栄養補助食品、製剤、ヒト化した蓄乳、および特殊調製粉乳が含まれる。適当な製剤には、以下に限定されることはないが、抗炎症剤、化学療法剤、活性賦形剤、骨粗鬆症薬、抗うつ薬、抗けいれん薬、抗ヘリコバクターピロリ薬、神経変性疾患の治療薬、変性肝疾患の治療薬、抗生物質、コレステロール降下剤、ならびに以下の病状: 慢性炎症、急性炎症、胃腸疾患、がん、悪液質、心臓での再狭窄、神経変性疾患、肝変性疾患、血中脂質の疾患、骨粗鬆症、変形性関節症、自己免疫疾患、子癇前症、早産、老化性黄斑、肺疾患、およびペルオキシソーム病からなる群より選択される病状を治療するために使用される製品が含まれる。
従って、本発明の別の態様は、上述のカロチンシンターゼ遺伝子を選択的に欠失させるかまたは不活化させるために遺伝子改変された、本明細書に上述の遺伝子改変微生物(例えば、ヤブレツボカビ目)を、色素沈着がない脂質を産生させるのに効果的な条件の下で培養する段階を含む、生合成過程から色素沈着がない脂質を産生するための方法に関する。脂質は、当技術分野において知られる種々の回収技術の任意の一つを用いて回収することができるまたは微生物全体もしくはその抽出物を回収することができる。本発明の一つの局面は、上述のカロチンシンターゼ遺伝子を選択的に欠失させるかまたは不活化させるために遺伝子改変された、遺伝子改変微生物の(例えば、ヤブレツボカビ目の)培養物から脂質を回収する段階を含む、生合成過程から色素沈着がない脂質を回収するための方法に関する。培養物からの脂質の回収方法は当技術分野において周知であり、その中には、以下に限定されることはないが、イオン交換法、クロマトグラフィー法、抽出法、溶媒抽出法、相分離法、膜分離法、電気透析法、逆浸透法、蒸留法、化学誘導体化法および結晶化法が含まれる。
本発明の別の態様は、本明細書に記載のカロチンシンターゼ相同体を含む、単離されたカロチンシンターゼを用いてカロチノイドまたはその誘導体を産生するための方法である。この方法は、撹拌槽、プラグフロー反応器または当業者に周知のその他の装置を用い、バッチモードまたは連続モードで操作することができる。
一つの態様として、カロチンシンターゼは、固体支持体に結合させる、即ち、固定化酵素とする。本明細書では、固体支持体に結合したカロチンシンターゼ(即ち、固定化したカロチンシンターゼ)には、固定化した単離カロチンシンターゼ、カロチンシンターゼ酵素を含む固定化した細胞(固定化した、ヤブレツボカビ目の細胞、細菌細胞、真菌(例えば、酵母)細胞、微細藻類の細胞、または植物細胞を含む)、安定化した無傷細胞および安定化した細胞/膜ホモジェネートが含まれる。安定化した無傷細胞および安定化した細胞/膜ホモジェネートには、カロチンシンターゼを発現する天然起源の微生物由来のまたは本明細書のなかで他に開示したような遺伝子改変微生物もしくは植物由来の細胞およびホモジェネートが含まれる。従って、カロチンシンターゼを固定化するための方法について下記に論ずるが、当然のことながら、そのような方法は、細胞を固定化するのにも等しく適用可能であり、そのような態様のなかで、細胞を溶解してもよい。
酵素を固定化するためのさまざまな方法は、Industrial Enzymology 第二版, Godfrey, T.およびWest, S.(編), Stockton Press, New York, N.Y., 1996, 267〜272頁; Immobilized Enzymes, Chibata,I.(編), Halsted Press, New York, N.Y., 1978; Enzymes and Immobilized Cells in Biotechnology, Laskin, A.(編), Benjamin/Cummings Publishing社、Menlo Park, California, 1985;ならびにApplied Biochemistry and Bioengineering, Vol. 4, Chibata, I.およびWingard, Jr., L.(編), Academic Press, New York, N.Y., 1983(これらはその全体が本明細書に組み入れられる)に開示されている。
簡潔に言えば、固体支持体とは、単離されたカロチンシンターゼの活性に著しい影響を及ぼすことなくカロチンシンターゼ(または細胞)と結合を形成できる、任意の有機固体支持体、人工膜、生体高分子支持体、または無機支持体を指す。典型的な有機固体支持体には、ポリスチレンのようなポリマー、ナイロン、フェノール-ホルムアルデヒド樹脂、アクリルコポリマー(例えば、ポリアクリルアミド)、安定化した無傷の全細胞、および安定化した未精製の全ての細胞/膜ホモジェネートが含まれる。典型的な生体高分子には、セルロース、ポリデキストラン(例えば、Sephadex(登録商標))、アガロース、コラーゲン、およびキチンが含まれる。典型的な無機支持体には、ガラスビーズ(多孔質および非多孔質)、ステンレス鋼、金属酸化物(例えば、ZrO2、TiO2、Al203、およびNiOのような多孔質セラミックス)および砂が含まれる。固体支持体は、安定化した無傷の細胞および/または未精製の細胞ホモジェネートからなる群より選択されることが好ましい。そのような支持体の調製には、最低限の処理および費用が必要とされるだけである。さらに、そのような支持体により、安定性の優れた酵素が提供される。
安定化した無傷の細胞および/または細胞/膜ホモジェネートは、例えば、細胞および細胞ホモジェネートを安定化する二官能性架橋剤(例えば、グルタルアルデヒド)を用いることにより、もたらすことができる。無傷の細胞でも細胞膜でも、細胞壁および細胞膜は、固定化支持体として機能する。そのような系では、内在性膜タンパク質が「最良の」脂質膜環境にある。無傷の細胞からまたはホモジェネートから初めようが、この系では、細胞はすでに、「生存して」もしくは「代謝して」いるわけではない、または、「休止して」いるわけではない(即ち、細胞は、代謝ポテンシャルおよび活性なカロチンシンターゼを維持しているものの培養条件下で増殖していない);どちの場合でも、固定化した細胞または膜は、生体触媒として機能する。
カロチンシンターゼは、吸着、架橋結合(共有結合を含む)、およびエントラップメントを含む種々の方法により固体支持体に結合させることができる。吸着は、ファンデルワールス力、水素結合、イオン結合、または疎水結合を介して起こすことができる。吸着による固定化を目的とした典型的な固体支持体には、ポリマー吸着剤およびイオン交換樹脂が含まれる。ビーズ形の固体支持体は特に都合がよい。吸着固体支持体の粒径は、メッシュフィルターによって、固定化した酵素は反応器内に保持される一方、基質(例えば、所望のカロチノイドを産生させるため出発材料として使用する前駆体または基質)は所望の速度で反応器を通過できるように選択することができる。多孔質粒子状支持体の場合は、カロチンシンターゼまたは微生物細胞をその粒子の空洞内に固定させる吸着過程を制御することが可能であり、それによって、許容できないほど活性を喪失させることなく保護することができる。
固体支持体とのカロチンシンターゼの架橋結合の中には、固体支持体とカロチンシンターゼとの間に化学結合を形成させることが含まれる。当然のことながら、架橋結合には一般に、媒介化合物を用いて、カロチンシンターゼを固体支持体に結合させることが含まれるが、媒介化合物を使用することなく直接的に、酵素と固体支持体との間に共有結合を起こすことも可能である。架橋結合には一般に、酵素のカルボキシル基、アミノ基、硫黄基、ヒドロキシ基、またはその他の官能基を活性化させて、これらを固体支持体に付着させる二官能性試薬または多官能性試薬が使用される。「活性化する」という用語は、官能基での結合の形成を可能とする官能基の化学転換を指す。典型的なアミノ基活性化試薬には、水溶性カルボジイミド、グルタルアルデヒド、臭化シアン、N-ヒドロキシスクシンイミドエステル、トリアジン、塩化シアヌル、およびカルボニルジイミダゾールが含まれる。典型的なカルボキシル基活性化試薬には、水溶性カルボジイミド、およびN-エチル-5-フェニルイソキサゾリウム-3-スルホネートが含まれる。典型的なチロシン基活性化試薬には、ジアゾニウム化合物が含まれる。また典型的なスルフヒドリル基活性化試薬には、ジチオビス-5,5'-(2-ニトロ安息香酸)、およびグルタチオン-2-ピリジルジスルフィドが含まれる。酵素を固体支持体に直接的に共有結合させるためのシステムには、Eupergit(登録商標)、Rohm Pharma (Darmstadt, Germany)から市販されているポリメタクリレートビーズ支持体、Sterling Organicsから市販されているkieselguhl (Macrosorbs)、支持体「Biofix」としてEnglish China Clayから市販されているカオリナイト(高陵石)、シリル化により活性化でき、W. R. Graceから入手できるシリカゲル、およびUOP (Des Plaines, IL)から市販されている高密度アルミナが含まれる。
エントラップメントを利用して、カロチンシンターゼを固定化することもできる。カロチンシンターゼのエントラップメントには、とりわけ、ゲル(有機高分子または生体高分子を用いた)の形成、媒体(微小カプセル化封入を含む)の形成、半透膜の形成またはその他のマトリクスの形成が含まれる。酵素のエントラップメントに使用する典型的な材料には、コラーゲン、ゼラチン、寒天、三酢酸セルロース、アルギン酸塩、ポリアクリルアミド、ポリスチレン、ポリウレタン、エポキシ樹脂、カラギナン、および卵白アルブミンが含まれる。ポリマーの一部、とりわけ三酢酸セルロースは、酵素を、繊維の中に紡ぐようにしてエントラップする(閉じ込める)のに使用することができる。ポリアクリルアミドゲルのような他の材料は、溶液中で重合させて、酵素をエントラップすることができる。重合可能なビニル末端基で官能化されるポリグリコール・オリゴマーのようなさらに他の材料は、光感作物質の存在下、紫外線を照射して架橋ポリマーを形成させることで酵素をエントラップすることができる。
本明細書に記載の本発明の任意の方法により産生されるカロチノイドは、従来の方法により回収することができる。本発明の任意の方法を用いて産生する好ましいカロチノイドには、β-カロチン、アスタキサンチン、カンタキサンチン、ヒドロキシカンタキサンチン 、ゼアキサンチン、β−クリプトキサンチン、エキネノン、ビオラキサンチン、α−カロチン、ルテイン、リコペン、ならびに前記のカロチノイドの任意のエステルおよびグルコシドが含まれるが、これらに限定されることはない。
本発明には同様に、本発明のカロチンシンターゼに選択的に結合できる、単離された(即ち、その天然環境から取り出された)抗体(例えば、カロチンシンターゼ抗体)、またはその抗原結合断片が含まれる。「選択的に結合する」という語句は、任意の標準測定法(例えば、免疫測定法)により測定した場合、結合レベルが測定の対照バックグラウンドよりも統計学的に有意に高い、あるタンパク質と別のタンパク質(例えば、抗体、その断片、または抗原に対する結合パートナー)との特異結合を指す。例えば、免疫測定法を行う場合、対照には通常、抗体または抗原結合断片のみ(即ち、抗原が存在しない)を含む反応ウェル/チューブが含まれ、抗原が存在しないときの抗体またはその抗原結合断片による反応量(例えば、ウェルとの非特異結合)がバックグラウンドになると考えられる。結合は、酵素免疫測定法(例えば、ELISA)、イムノブロット法などを含む、当技術分野において標準的な種々の方法を用いて測定することができる。本発明の抗体は、ポリクローナルまたはモノクローナル抗体、機能的等価物、例えば、抗体断片および一本鎖抗体またはキメラ抗体(複数の抗原決定基に結合できる二重特異性抗体を含む)を含む、遺伝子改変抗体とすることができる。
一般に、抗体を産生する場合、例えば、以下に限定されることはないが、ウサギ、ヒツジ、ハムスター、モルモット、マウス、ラット、またはニワトリのような適当な実験動物に所望の抗体に対する抗原を投与する。通常、動物を動物に注射する抗原の有効量により免疫する。抗原の有効量とは、動物による抗体産生を誘発するのに必要とされる量を指す。その後、動物の免疫系を所定期間にわたり反応させる。免疫の過程は、免疫系が抗原に対する抗体を産生していることが認められるまで繰り返し行うことができる。抗原特異的なポリクローナル抗体を得るため、血清を、所望の抗体を含む動物から採取する(またはニワトリの場合、抗体を卵から採取することができる)。そのような血清は、試薬として有用である。ポリクローナル抗体は、例えば、血清を硫酸アンモニウムで処理することにより、血清(または卵)からさらに精製することができる。
モノクローナル抗体は、KohlerおよびMilsteinの方法論(Nature 256:495〜497, 1975)に従って作り出すことができる。例えば、Bリンパ球を免疫動物の脾臓(または任意の適当な組織)から回収し、その後、ミエローマ細胞と融合して、適当な培地中で継続的に増殖できるハイブリドーマ細胞の集団を得る。所望の抗体を産生するハイブリドーマは、所望の抗原とのハイブリドーマにより産生される抗体の結合能を試験することにより選択する。
本発明の遺伝子改変抗体には、抗体の可変領域および/または定常領域をコードするDNAの操作および再発現を含む、標準的な組換えDNA技術により産生される抗体が含まれる。特定の例には、抗体のVHおよび/またはVLドメインが抗体の残存部分とは異なる供給源に由来するキメラ抗体、ならびに少なくとも一つのCDR配列および選択的に少なくとも一つの可変領域骨格のアミノ酸が一つの供給源に由来しかつ可変領域および定常領域(必要に応じて)の残存部分が異なる供給源に由来するCDR移植抗体(およびその抗原結合断片)が含まれる。例えば、キメラ抗体およびCDR移植抗体の構築については、欧州特許出願:欧州特許出願第0194276号、欧州特許出願第0239400号、欧州特許出願第0451216号、および欧州特許出願第0460617号に報告されている。
2002年5月14日付で出願した米国特許仮出願第60/380,721号の開示全体、および「Carotene Synthase Gene and Uses Thereof」という表題が参照として本明細書に組み入れられる。
以下の実施例は、説明を目的として提供されるものであり、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
実施例
実施例1
以下の実施例により、本発明のカロチンシンターゼ遺伝子の同定、クローニングおよび配列決定について記述する。
シゾキトリウム属 cDNAライブラリーから以前に配列決定されていたが、公的には入手可能ではなかった8500クローンの内部情報を利用し、そのクローン配列でBLAST検索を行った。LIB3033-014-Q1-E1-C9と指定した、これらのcDNAクローンのうちの一つの翻訳配列が、周知のフィトエンシンターゼ(PS)遺伝子に強い相同性を示した。
約400塩基対のこのDNA配列から始めて、本発明者らは、周知のPS遺伝子との相同性を有するシゾキトリウム属の遺伝子を単離する試みを行った。一連のDNAプライマーを設計し、鋳型としてシゾキトリウム属の染色体DNAを用いた「Genome Walker」PCR手順で使用して、隣接するDNA領域を配列同定した。ライブラリーは、市販のキット(Clonetech社; Palo Alto, CA)およびシゾキトリウム属のゲノムDNAを用いて構築した。うまくいったPCR産物を大腸菌にクローニングし、そのプラスミドDNAを配列決定のために精製した。さらに、「反転PCR法」を活用した(iPCR; Sambrookら、Molecular Cloning, 1989、前掲)。これらの試みにより、PS遺伝子に対してのみならず周知のフィトエンデヒドロゲナーゼ(PD)およびリコペンシクラーゼ(LC)遺伝子に対しても相同な異なる領域を含んだ約5085 bpの「コンティグ(contig)」が得られた。PCRにより産生された断片に固有の配列曖昧性にもかかわらず、三つの相同性領域が5'-PD-PS-LC-3'の順で単一のオープンリーディングフレーム(ORF)を形成する可能性が非常に高いと思われた。この予想遺伝子をカロチンシンターゼ(CS)と命名した。これらの活性は、機能的であれば、ゲラニルゲラニルピロリン酸(GGPP)をβ-カロチンに変換するのに十分であると思われるカロチノイド生合成中の三つの連続工程に相当する。
ESTライブライリーをさらに詳細に調査することで、CSコンティグに対して相同性を有するその他二つの一員が配列同定された。LIB81-022-Q1-E1-G1と指定した一番目のクローンは、LIB3033-014-Q1-E1-C9のすぐ上流のCSのORFに相同であり、LIB3033-014-Q1-E1-C9とは重複しない。LIB81-021-Q1-E1-H1と指定した二番目のクローンは、CSコンティグの上流(外側)から始まり、コンティグ中へ約208 bp伸びる。このESTは遺伝子に隣接する上流に相当していたが、BLASTにより周知の遺伝子に対する相同性は検出されなかった。このESTメンバーの存在から、CSコンティグが、制御(プロモーター)配列を含むCS遺伝子の5'領域全体を含むことが強く示唆される。
上述の5085 bpのコンティグは、予想される遺伝子開始コドンの約1400 bp上流から伸びて、LCドメインの大部分を経て伸びていた。即ち、提唱される遺伝子構造と一致した停止コドンは検出されなかった。同様に、コンティグのなかにPCRにより産生された断片および「ワンパス(one pass)」配列決定反応に特有の明らかな配列の間違いが存在していた。従って、シゾキトリウム属のゲノムDNAから得られたCS遺伝子のクローンを得て、注意深く配列決定する必要があった。ラムダファージベクター(Lambda Fix II; Stratagene, La Jolla, CA)のゲノムライブラリーをいくつか、本発明者らの研究室のなかで構築した。本発明者らは、ファージのDNAが二つのプローブと明らかにハイブリダイズする場合に、ファージが唯一「予想されるCSクローン」と考えられるような戦略を考案した。鋳型としてシゾキトリウム属のゲノムDNAを用い、PS、LC、および「上流」(予想されるORF開始点の、5'領域、または上流)領域由来の多数組のPCRプライマー対について、強く、単一産物のPCR断片が得られるかどうか評価した。最良のPS由来の断片を選択し、Lambda FIX IIベクターに挿入されたシゾキトリウム属種(ATCC20888)のゲノムDNA由来のDNA断片からなる組換えゲノムライブラリーを探索するために使用した。このPSプローブは、カロチンシンターゼの予想されるオープンリーディングフレームのPSドメインの一部に相当するジゴキシゲニン標識プローブとした。陽性シグナルを示すクローンを続いて、カロチンシンターゼ遺伝子の予想開始点の上流配列(「5-プライム」)から創出したジゴキシゲニン標識断片で探索した。
両方のプローブに対してハイブリダイゼーション・シグナルを示す一つのラムダ・クローンをサブクローニングして、配列決定することでさらに特徴付けた。制限解析により、このファージ由来のDNAは約18〜20 kbのクローン化挿入断片を含むことが示された。この挿入断片は、クローン化挿入断片に隣接するファージベクター中の二箇所のNotI部位のほかに内部に二箇所のNotI制限部位を含むことがさらに示された。従って、挿入DNAは、約1.2、6、および12 kbサイズの三つのNotI断片として同定される可能性があるものと思われた。コンティグ配列およびPCR断片の制限パターンから、特徴的なNotI部位は、予想されるATG開始コドン(即ち、配列番号:1の塩基対1542〜1549)の約140 bp下流と予測されたことを考慮して、これらの三つのNotI断片を配列決定のためにプラスミドベクター(pBluescript II SK+)にサブクローニングした。三つの断片をそれぞれ二方向で与える、六個のコンストラクトを得た。同様に、XbaI酵素を用いて、20 kbの全挿入断片を含む、二つのサブククローンを得た(即ち、ファージベクター中の二箇所のXbaI部位は挿入断片に隣接していて、内部にはXbaI部位が存在していない)。
pCX010、pCX011 1.2 kbのNotI挿入断片
pCX012、pCX013 6 kbのNotI挿入断片
pCX014、pCX015 12kbのNotI挿入断片
pCX016、pCX017 20 kbのXbaI挿入断片
三つのNotI断片をベクタープライマーから(NotIクローニング部位を越えてシゾキトリウム属のDNAの中へ)配列決定したところ、CS遺伝子が完全に得られていたことがはっきりと示された(イントロンがないかごく小さいと推測される-シゾキトリウム属のゲノムDNAには、イントロンが含まれていないと考えられる)。具体的には、1.2 kbのNotI断片は、CSの予想ORFの、上流および最初の140 bpに相当し(プロモーター要素を含んでいる可能性が非常に高い)、12 kbのNotI断片は、遺伝子の残りの部分に相当していた。明らかに、6 kbのNotI断片は、CS遺伝子のかなり下流の配列に相当していた。
1.2 kbおよび12 kbのNotIクローンは、多重の配列決定反応に使用した。XbaI断片のクローンは、CS遺伝子中のNotI部位の前後の配列を確認するために使用した。拡大したコンティグ中のすべての塩基(極端に上流の5'末端および下流の3'末端の塩基を除く;下記を参照されたい)は、少なくとも一回、両鎖から配列決定した。
これらの試みから、6525 bpからなるCSコンティグに対して配列決定された。CSのORFには、BLAST解析により、前述のとおり相同性が明らかなPD(約469アミノ酸)、PS(約275アミノ酸)、およびLC(約222アミノ酸)ドメインに明確に区分される、1268個のアミノ酸が含まれる。これらの三つのドメインは、周知の配列に対して検出可能な相同性がない50〜60個のアミノ酸領域により区分される。これらのドメイン間の領域は、単なるリンカー領域または酵素「ヒンジ(hinge)」である可能性がある。BLASTによれば、三つの活性ドメインは内部近接している。従って、CS遺伝子のなかにイントロンが存在する可能性は低いように思われた。
6525 bpのコンティグの最初の5898 bp(これには、CSのORFと調節領域が含まれる)は、配列番号:1として本明細書に示される。位置1406〜5212(停止コドンを含む)に及ぶ、CSのORFは、配列番号:2として本明細書に示される。配列番号:2は、配列番号:3として本明細書に示される、本発明のカロチンシンターゼの1268アミノ酸をコードする。今度は配列番号:3を参照して、CSタンパク質の一番目のドメインである、フィトエンデヒドロゲナーゼ(PD)ドメインは、配列番号:3のアミノ酸53〜521に及び、これは配列番号:5として本明細書に示される。配列番号:5は、配列番号:4として本明細書に示される核酸配列(配列番号:2の157〜1563位)によりコードされる。CSタンパク質の二番目のドメインである、フィトエンシンターゼ(PS)ドメインは、配列番号:3のアミノ酸586〜860に及び、これは配列番号:7として本明細書に示される。配列番号:7は、配列番号:6として本明細書に示される核酸配列(配列番号:2の1756〜2580位)によりコードされる。CSタンパク質の三番目のドメインである、リコペンシクラーゼ(LC)ドメインは、配列番号:3のアミノ酸911〜1132に及び、これは配列番号:9として本明細書に示される。配列番号:5は、配列番号:8として本明細書に示される核酸配列(配列番号:2の2731〜3396位)によりコードされる。
CSタンパク質(配列番号:3)の最初(N末端)の50〜52アミノ酸は、PD遺伝子に対して相同性を示さない。その代りに、最初の29アミノ酸は、シグナル配列に相当する可能性が高いと予測される(Center for Biological Sequence Analysis、Technical University of Denmark)。この配列は酵素を細胞内器官、恐らく小胞体に標的化する可能性が高い。周知の遺伝子に対して有意な相同性がない、C末端の約135個の連続アミノ酸が存在する。
コンティグの上流領域は、開始ATGの前の1405 bp(配列番号:1の1〜1045位)からなる。配列番号:1の1〜345位は、もともとPCRに由来する断片の配列データに相当しており、いくつかの配列の間違いが本質的にPCRを介して導入される可能性があるので、注視する必要がある。1.2 kbのNotI断片の配列決定からはっきり、コンティグの塩基対346〜349(配列番号:1の346〜349位)にSau3AI部位の「末端部」が認められ、ここはラムダライブラリーの構築の間の部分的な切断反応位置である。上流配列のBLAST(検索)により、ESTはこの領域に位置していたが、周知の遺伝子に対して有意な相同性は示されない(上記を参照されたい)。本発明では、位置1〜1405、または少なくとも位置346〜1405は、本発明のCS遺伝子の調節領域に相当し、ここにはCS遺伝子のプロモーターが含まれる可能性が高い。
下流領域の解析から、コンティグの外側から始まり、CS遺伝子の末端に向かって読み取られるORF(ORF2)が明らかにされる。ORF2に対して予想される停止コドンにより、約690 bpの遺伝子間領域が生じる。この領域の中央には、機能は未知の興味深い特徴:TATATなどが完全に交互となった42 bpの広がり(配列番号:1の塩基対5698〜5739)がある。ORF2の625 bpのBLAST(検索)から、幅広い真核生物源由来のプロテインキナーゼ酵素に対する強い相同性が明らかである(データは示されていない)。両鎖の配列決定から、コンティグの塩基対6479までのヌクレオチドが確認された。従って、「6525 bpのCSコンティグ」の塩基対346〜塩基対6479のヌクレオチド配列(その346〜5898位は配列番号:1に示される)については、高い信頼性がある。配列番号:1から省略された6525 bpのコンティグ部分は、上記のORF2のコード領域の開始部分にあたる。
公共の配列データベースとの配列番号:3(CS)、配列番号:5(PDドメイン)、配列番号:7(PSドメイン)および配列番号:9(LCドメイン)のそれぞれの比較から、類似配列に関する以下の情報が明らかとなった。フィトエンデヒドロゲナーゼドメインに相当する配列番号:5は、ハロバクテリウム属種(Halobacterium sp.)(NC_002607)由来のフィトエンデヒドロゲナーゼと488アミノ酸にわたって34%同一(50%相同)であり;メタノサーモバクター・サーマウトトロフィクス(Methanothermobacter thermautotrophicus)(NC_000916)由来のフィトエンデヒドロゲナーゼと476アミノ酸にわたって32%同一(51%相同)であり;およびコリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)(NC_003450)由来のフィトエンデヒドロゲナーゼと491アミノ酸にわたって33%同一(47%相同)であった。
フィトエンシンターゼドメインに相当する配列番号:7は、マイコバクテリウム・オウレアム(Mycobacterium aureum)(AJ133724)由来のフィトエンシンターゼと292アミノ酸にわたって29%同一(39%相同)であり;ストレプトマイセス・コエリカーラ(Streptomyces coelicolor)(AL109962)由来の恐らくフィトエンシンターゼと269アミノ酸にわたって30%同一(39%相同)であり;ストレプトマイセス・グリセウス(Streptomyces griseus)(AF272737)由来のフィトエンシンターゼと138アミノ酸にわたって37%同一(47%相同)であった。
リコペンシクラーゼドメインに相当する配列番号:9は、ヒゲガビ(Phycomyces blakesleeanus)(AJ278287)由来のリコペンシクラーゼ/フィトエンシンターゼと230アミノ酸にわたって31%同一(45%相同)であり;ヒゲガビ(Phycomyces blakesleeanus)(AJ276965)由来のフィトエンシンターゼ/リコペンシクラーゼと230アミノ酸にわたって31%同一(45%相同)であり;アカパンカビ(Neurospora crassa)(L27652)由来のフィトエンシンターゼと245アミノ酸にわたって29%同一(45%相同)であり;およびジベレラ・フジクロイ(Gibberella fujikuroi)(AJ426417)由来のカロチン・シクラーゼと193アミノ酸にわたって30%同一であった。
本発明のカロチンシンターゼタンパク質の全体に相当する配列番号:3は、ハロバクテリウム属種(NP_280452.1)由来のフィトエンデヒドロゲナーゼと488アミノ酸にわたって34%同一(51%相同)であり;メタノサーモバクター・サーマウトトロフィクス(NP_276913.1)由来のフィトエンデヒドロゲナーゼと480アミノ酸にわたって33%同一(52%相同)であり;およびコリネバクテリウム・グルタミカム (NP_599858.1)由来のフィトエンデヒドロゲナーゼと480アミノ酸にわたって33%同一(47%相同)であった。
実施例2
以下の実施例により、本発明のカロチンシンターゼ遺伝子の発現および機能が実証される。
次の試みは、CS遺伝子の機能を実証することに重点を置いた。同種宿主および異種宿主でCS遺伝子を成功裏に発現および機能させることは、さまざまな用途でCS遺伝子およびその産物を利用するのにとても有益であると思われる。このような目的で、三つ並行して発現プラスミドの設計を行った。さらに、染色体CS遺伝子の発現を単一交差相同組換えまたは二重交差組換えにより「ノックアウト」するために設計したプラスミドを構築して、形質転換により試験した(実施例3を参照されたい)。プラスミド構築の詳細は、以下のとおりである。
pCSZEO1およびpCSZEO2: (CSおよびLC欠損CSをその未変性のプロモーターにより発現させるため)
pCX017由来の約5.1 kbのEcoRI断片(CSの全ORF(配列番号:1の1406〜5212位)を含有する)、上流のクローン化DNAの全て(配列番号:1の1〜1405位)、および約270 bpの下流DNA(配列番号:1の5213〜5485位)をpBluescript SK(+) (Stratagene)のEcoRI部位にクローニングした。挿入断片の方向が所望のコンストラクトがpBSKCS6である。
pBSKCS6からHindIII断片(約950 bp)を消化により取り除き、希釈、および再連結して、pBSKCS6ΔHを作製した。この欠失には、LCドメインのHindIII部位(配列番号:1の塩基対4552〜4557)が利用されており、LCドメインの遠位側半分から下流のシゾキトリウム属の配列の全てが除去される。
次に、pBSKCS6およびpBSKCS6ΔHからベクター配列由来の小さな(約60 bp) XbaI断片を消化により取り除き、希釈、および再連結して、それぞれpBSKCS6ΔXおよびpBSKCS6ΔHΔXを作製した。小さなXbaI断片を取り除くことで、次の工程が容易になる。
シゾキトリウム属のチューブリン遺伝子プロモーター(tubプロモーター)、ble ゼオシン耐性遺伝子、およびウイルスSV40ターミネーター(「TZS」カセット)を含有するpTUBZEO11-2(同時係属中の米国特許出願第10/124,807号(前掲)に詳述された、シゾキトリウム属の形質転換ベクター)由来の約1060 bpのXbaI断片を次に、pBSKCS6ΔXおよびpBSKCS6ΔHΔXのXbaI部位にクローニングして、それぞれpCSZEO1およびpCSZEO2を作製した。
pTUBCS11、pTUBCS12、pTUBCS13、およびpTUBCS14(CS、LC欠損CS、およびシグナル配列欠損CSをチューブリンプロモーターにより発現させるため)
tubプロモーターの近位側半分を含むpTUBZEO11-2由来の213 bpのPstI/EcoRI断片をpUC9ベクターの適合部位に指向的にクローニングして、pUC-TUBを得た。
pTUBZEO11-2(上記、tubプロモーターの遠位側半分、ゼオシン耐性遺伝子、およびSV40ターミネーターを含有する)由来の約880 bpのEcoRI断片をpUC-TUB固有のEcoRI部位に挿入することにより、プラスミドpTZS5を作製した。制限消化試験により適正な方向を決定した。この手法では、続く工程で特定の制限部位を利用するために、「TZS」カセットがpUC9に効果的に移される。
次に、開始コドンにNcoI部位を含む、所望の大腸菌発現ベクターにクローニング可能とするため、PCR断片をCS遺伝子の開始部分から産生させた。二通りの反応を計画した:一方は、未変性のN末端を有するタンパク質を産生させる方法であり、もう一方は、推定上のシグナル配列が欠損したタンパク質を産生させる方法である(実施例1を参照されたい)。次に、シゾキトリウム属に対してチューブリンプロモーターにより発現を駆動させるため、これらのNcoI部位を含有するコンストラクトをpTZS5に移した。同様に、大腸菌での発現を目的として、これらのコンストラクトをさらに発展させた(下記を参照されたい)。CSのATG開始コドン(配列番号:1の塩基対1406〜1408)をNcoI制限部位(CCATGG)に変換するため、PCRプライマーCAX049を設計した。同様に、29番目のアミノ酸に対するコドン(配列番号:1の塩基対1490〜1492)を開始ATGおよびNcoI部位に同時変換するため、プライマーCAX050を設計した。どちらのプライマーについてもそれぞれ、2番目のアミノ酸または30番目のアミノ酸に対する下流のコドンの変化は生じなかった。リバース・プライマー(CAX048)は、KpnI部位(配列番号:1の塩基対1859〜1864)の下流を選択し、鋳型としてpCX016を用い、CAX049で510 bpの産物およびCAX050で426 bpの産物を産生させた。
上記に記載のPCR反応から得たDNAをNcoIおよびKpnIで消化し、断片をゲル精製して市販の発現ベクターpTrcHis2B(Invitrogen; Carlsbad, CA)の適合部位に別々にクローニングすることで、結果的にプラスミドpCSNK2(未変性のN末端)およびpCSNK18(短縮型のN末端)が得られた。このベクターは、高活性のtrcプロモーターにより大腸菌で発現が駆動される。これには同様に、誘導発現制御(IPTGにより)のためのlacIq遺伝子およびマルチクローニング部位の下流に効果的な転写ターミネーターが含まれる。発現タンパク質のC末端に(His)6タグを付加するため、ベクターをさらに設計したが、この特徴は本明細書に記載のクローニング工程により不適切とされた。pCSNK2およびpCSNK18の挿入断片のDNA配列を決定したところ、所望のNcoI部位を含むこと、およびそれ以外には周知のCS遺伝子配列に適合することが示された。
pTZS5の(およびpTUBZEO11-2の)ble(ゼオシン耐性)遺伝子は、NcoI部位のATGが開始コドンとなり、NcoI/PmlI断片として存在する。PmlIで消化すると、平滑末端が得られる。pCSNK2およびpCSNK18由来のCSのN末端コード領域をpTZS5に移入するため、pTrcHis2Bベクターの、(His)6タグコード領域の直ぐ下流のDraI部位(平滑末端)を利用した。pCSNK2およびpCSNK18由来のNcoI/DraI断片は、制限酵素消化後に、ゲル精製により得た。NcoIおよびPmlI(ble遺伝子を欠く)で消化したpTZS5由来の大きなベクター断片を同様にして得た。pTZS5ベクター断片へのNcoI/DraI断片のクローニングにより、今度はCS遺伝子断片がチューブリンプロモーターの「下流」となったpTUBCS2(完全長のN末端)およびpTUBCS3(短縮型N末端)が産生された。
最後に、CS遺伝子のC末端部分をpTUBCS2およびpTUBCS3に付加した。各プラスミドをKpnIで消化して直鎖化し、エビ由来アルカリホスファターゼ(SAP)で処理して、その後にベクター末端が再連結することを最小限とした。pBSKCS6およびpBSKCS6ΔH(上記を参照されたい)からKpnI断片を、消化およびゲル精製により調製した。これらの断片は、CS遺伝子(上述のPCR断片の設計で保存された)の始めのKpnI部位からCS遺伝子下流のベクターKpnI部位にまで及んだ。従って、それらの断片はそれぞれ、CSのC末端の完全長部分またはトランケートされた(LC欠損)部分を含む。各挿入断片を各ベクター調製物と連結することで、結果的にシグナル配列(SS)が有る/無い(+/-)およびLCドメインが有る/無い(+/-)四つの可能な変異形が得られた。挿入断片の方向が適当なことは、制限消化により確認した。その命名は次のとおりである(下記表を参照されたい):pTUBCS11: SS+、LC+; pTUBCS12: SS+、LC-; pTUBCS13: SS-、LC+; pTUBCS14: SS-、LC-。これらのプラスミドにより効果的に、翻訳開始部位を同じ位置に維持したまま、tub/ble遺伝子/SV40コンストラクト中のble遺伝子を種々の形のCS遺伝子と置き換えられる。これらはシゾキトリウム属の形質転換用の選択可能なマーカーを含んでいないので、同時形質転換により導入する必要がある。
pTHCS1、pTHCS2、pTHCS3、pTHCS4、pATCS1、pATCS2、pATCS3、およびpATCS4:(CS、LC欠損CS、およびシグナル配列欠損CSを大腸菌で発現させるため)
プラスミドpCSNK2およびpCSNK18(上記を参照されたい)をそれぞれKpnI + EcoRIまたはKpnI + HindIIIで処理して、C末端DNA断片をその後に付加するためのベクター断片(SS+/-)を調製した。プラスミドpBSKCS6(上記を参照されたい)を同様にKpnI + EcoRIまたはKpnI + HindIIIで処理して、それぞれ、CSドメインが有るまたは無いC末端断片を遊離させた(HindIIIおよびKpnI部位の関連性については記述した; EcoRI部位はCS遺伝子下流のベクター配列にある)。挿入断片とのベクター断片の連結は、次のとおりとした:
CS遺伝子およびその変異体を大腸菌で発現させるため、プラスミドpTHCS1〜4を設計した。これらのプラスミドからの発現は、CS遺伝子に対して作製された抗血清/抗体を用いてウエスタンブロット法により検出することができた(下記を参照されたい)。しかしながら、CSをこれらのプラスミドから大腸菌で機能発現させても、この細菌がCS酵素に対する推定基質であるゲラニルゲラニルピロリン酸(GGPP)を通常合成しないため、カロチノイドの産生にはつながらないと思われる。さまざまな大腸菌株が、特定のクローン化遺伝子の存在によりGGPPを合成することが文献のなかで報告されている。これらのクローン化遺伝子は通常、pTHCS1〜4とは不適合のクローニングベクターにて運ばれる。従って、適合するベクターでCS遺伝子(および変異体)を発現させるために設計した一連の新たなプラスミドを構築した。文献のなかで報告された、GGPPを与えるプラスミドとともにCS変異体を共発現可能とする適合性媒体としてプラスドpACYC184を選択した。pACYC184およびpTHCS1〜4コンストラクトの制限部位は、trc遺伝子/CS/ターミネーターおよびlac遺伝子Iq領域が、ori(pTrcHis2Bのプラスミド複製起点)またはβ-ラクタマーゼ遺伝子のない(GGPPを与えるプラスミドがβ-ラクタマーゼ遺伝子を持ち運び、維持にはアンピシリンを必要とする)pACYC184に移入可能となるように選択した。具体的には、pACYC184をAseIおよびNrulで消化して、pACYC184由来のoriおよびクロラムフェニコール耐性遺伝子を含有するがテトラサイクリン耐性遺伝子を含有しないベクター断片を得た。pTHCS1〜4プラスミドをNdeIおよびScaIで消化して、前述の特性を有する断片を得た。部分的なpACYC184ベクターへの得られたtrc遺伝子/CS/ターミネーター/lac遺伝子Iq断片のクローニングは、NruIおよびScaI消化により平滑末端が得られ、AseIおよびNdeI消化により適合する2 bpの5'突出部が得られるという事実により容易となった。従って、指向性クローニングにより、pACYC184に入ったpTHCS1、2、3、および4由来の四つのCSコンストラクト(それぞれ、pATCS1、2、3、および4と命名)が産生された。GGPPを合成する大腸菌株でpATCS1〜4からCS遺伝子(および変異体)を機能発現させることで、視覚的にも分光学的にも検出可能なカロチノイド色素が得られるものと期待される。その産生により、異種生物でのCS遺伝子の機能発現が検証されるものと思われる。
微粒子銃による形質転換手順
形質転換手順は、米国特許出願第10/124,807号(前掲)に最初に記述された手順に厳密に従う。バイオリスティックPDS-1000/Heパーティクルデリバリー装置(Biolistic PDS-1000/He Particle Delivery System) (Bio-Rad)を使用した。各衝撃に対し、プラスミドDNA約5 μgをM-10タングステン・マイクロキャリア3 mgで被覆する。シゾキトリウム属の衝撃は、1100または1350 psiの大気放出板を用いて行う。4〜6時間「増殖(grow-out)」後、衝撃を受けた細胞を150〜300 μg/mlゼオシン(Invitrogen)を含有する寒天プレートに加える。形質転換体を通常、4〜8日で回収する。
実験計画および結果
1. CS遺伝子の未変性プロモーターにより駆動されその未変性ターミネーターにより終結されるCS遺伝子の発現
CS遺伝子を含有し、上述のゼオシン耐性カセット(「TZS」;シゾキトリウム属のチューブリン遺伝子プロモーター、ゼオシン[ブレオマイシン]耐性遺伝子[ble]、およびウイルスSV40ターミネーター)を含むプラスミドを作製した。
シゾキトリウム属をpCSZEO1(完全長CS遺伝子)およびpCSZEO2(LCドメイン欠失-上記を参照されたい)で形質転換した結果、各プラスミドDNA 1 μgあたり約800個のゼオシン耐性コロニーが生じたが、対照プラスミドpTUBZEO11-2の形質転換体では1 μgあたり300個であった。対照の形質転換体では概ね色彩が均一であったが、pTUBCS由来の形質転換体では、通常の黄白色から黄色/オレンジ色の色素沈着の勾配があるように思われた。最も色素沈着したコロニーを形成する菌株は、さらに研究するために保存しておいた。pTUBZEO1形質転換体の一つB4-2およびpTUBZE02形質転換体の一つB4-15は、対照の形質転換体が16 ppmのβ-カロチンを含んでいた実験で、それぞれ92および40 ppmのβ-カロチンを含んでいた。これらの結果から、CS遺伝子は機能的であって、過剰発現することが可能であり、そして「遺伝子コピー数」による効果を示すことが示唆される。興味深いことに、pTUBZE02形質転換体は、予想されたようにはリコペンを産生しなかった。恐らく、トランケートされたCS遺伝子により産生されたリコペンは、この構造体がもともとの完全長CS遺伝子コピーによりβ-カロチンに効果的に変換されるためである。
2. チューブリン遺伝子プロモーターにより駆動されSV40ターミネーターにより終結されるCS遺伝子
概念的には、上述の「TUB/ZEO/SV40」プロモーターを、ゼオシン耐性遺伝子に換えてCS遺伝子として使用した。陽性選択なしで、このプラスミドコンストラクトを同時形質転換によりシゾキトリウム属に導入した。米国特許出願第10/124,807号(前掲)に報告されているように、このシステムによる同時形質転換は、50%またはそれ以上の効率で起こり得る。
pTUBCS11またはpTUBCS13をpTUBZEO11-2と同時に形質転換した初期の実験では、非常に少ないゼオシン耐性コロニーしか得られなかった(およそDNA 1 μgあたり1個)。これまでに、各プラスミドから約10個のゼオシン耐性の形質転換体が得られた。pTUBCS11由来の形質転換体の一つB5-1は、視覚的に最も色素沈着した菌株であり、ある実験で115 ppmのβ-カロチンを含むことが示された(対照: 16 ppm; 下記を参照されたい)。色素産生は対照よりも著しく高いが、上記の最初の実験に記載した推定される「遺伝子コピー数」による効果からするとそこそこ高いにすぎない。
要約すると、上記の発現設計には、最大で四つまでのORFの変形体がある。一番目は完全長のCS遺伝子である。二番目は、配列番号:3の最初の29アミノ酸;即ち、推定上のシグナル配列がないORFである。この場合には、ORFが29番目のアミノ酸でATG開始コドンおよび有用な制限部位に操作されている。シゾキトリウム属で完全長CS遺伝子を過剰発現させると、そのタンパク質に対する細胞内標的の作用を阻害し得る可能性がある。同様に、シグナル配列は細菌システムに悪影響を与え得る可能性がある。三番目の変形体は、LCドメインの中央でトランケートされたCS ORFである。機能的であれば、得られたPD/PS酵素により、GGPPがリコペンに変換されるはずである。このPD/PS酵素はそれ自体、カロチノイド生合成酵素のなかで独特の活性対合体であるものと思われる。四番目の変形体は、シグナル配列とLC欠失の組み合わせである。プラスミド表記は、次のとおりである:
実施例3
本実施例では、シゾキトリウム属のカロチンシンターゼ遺伝子の不活化について記述する。
プラスミド構築
pCSKO1、pCSKO2、およびpCSKO3
CS ORFの内部断片(KpnI〜HindIII; 2689 bp)を市販ベクターpTrcHis2Bの適合部位にクローニングして、プラスミドpL35-4を得た。
プラスミドpL35-4は、XbaIでpL35-4を直鎖化し、エビ由来アルカリホスファターゼで処理し、pTUBZEO11-2由来のゲル精製した1122 bpのXbaI断片と連結して、pTUBZEO11-2由来の「TZS」カセットを1122 bpのXbaI断片として含むようにさらに改変した。得られたプラスミドpCSKO1は、ゼオシン耐性の選択によるシゾキトリウム属への形質転換後、単一交差相同組換えにより染色体CS遺伝子を不活化する(「ノックアウトする」)ように設計されている。
二重交差相同組換えによりCS遺伝子をノックアウトするように設計されたプラスミドの場合、pCX017由来の約5.1 kbのEcoRI断片上の全CS遺伝子(周知の上流領域および約270 bpの下流領域(配列番号:1の塩基対5480〜5485のEcoRI部位までの)を全て含む) (上記を参照されたい)を、pUC9ベクター(制限酵素消化およびホスファターゼ処理後)のEcoRI部位にクローニングして、結果的にpL36-3を得た。
pL36-3をDraIII(一箇所; 配列番号:1の塩基対275〜2773)、クレノー断片、およびエビ由来アルカリホスファターゼで処理して、プラスミドをCS遺伝子の中央で「開口する」とともに平滑末端とした。TUB/ZEO/SV40カセットのXbaI断片(上記を参照されたい)を同様にクレノー断片で処理して平滑末端とし、直鎖化したベクターに連結した。挿入断片の方向は両方で得られ、結果的に得られたプラスミドをpCSKO2およびpCSKO3と命名した。DraIII/XbaI連結部の配列決定から、四箇所の連結部のうちの三箇所が予想配列を有すること; pCSKO3の一箇所の連結部が一個の余分な塩基対を有することが示された。
実験計画
シゾキトリウム属 20888をpCSKO1(単一交差組換え事象によるノックアウトを目的に設計した)で形質転換すると、ゼオシン耐性コロニーがプラスミドDNA 1 μgあたり約325個の頻度で得られた(注記: 対照プラスミドpTUBZEO11-2に対する頻度は、プラスミドDNA 1 μgあたり60〜140個であり、DNAなしの模擬の形質転換ではゼオシン耐性コロニーが得られなかった)。pCSKO1由来のゼオシン耐性形質転換体のなかで、約1/220の割合で白くて、無色素の「アルビノ」コロニーが形成された。これらのデータから、CS遺伝子が予測通りに機能しているという最初の徴候が示された。二個の「アルビノ」形質転換体および対照プラスミドpTUBZEO11-2由来の普通に色素沈着した形質転換体をカロチノイド分析のために増殖させた。乾燥したバイオマス試料をカロチノイド含有量について分析した。「アルビノ」菌株ではカロチノイドは検出できなかったが、対照菌株ではわずかな量(16 ppm)のβ-カロチンがあった。
プラスミドpCSKO2は、形質転換から生ずる「アルビノ」コロニーの大部分が、二重交差相同組換えによる遺伝子破壊の結果であると考えられるように設計する。シゾキトリウム属をこのプラスミドで形質転換した結果、DNA 1 μgあたり約400個のゼオシン耐性コロニーが生じ、これらのうちの約5%が「アルビノ」であった。カロチノイド分析により、選択した二菌株では検出可能な色素は示されなかった(下記を参照されたい)。さらに、これらの菌株から調製された染色体DNAのPCR分析から、CS遺伝子が実際に「TZS」カセットにより破壊されていることおよびプラスミドベクターの配列は存在していないことが示された。CS遺伝子の構造について調べるため、TZSカセット挿入部位に隣接するCS遺伝子配列に相同的なPCRプライマーCAX037(配列番号:1の塩基対2575〜2594)およびCAX046(配列番号:1の塩基対3006〜3025)を使用した。破壊された遺伝子では、このプライマー対により約1570 bpの産物が産生されると予想される。ベクター配列の存在について調べるため、β-ラクタマーゼ遺伝子領域の両端で二組のプライマー対を設計した。具体的には、bla3/bla4プライマー対では、β-ラクタマーゼ遺伝子の近位部位から627 bpの産物が産生されると予想される一方、bla2/bla5プライマー対では、β-ラクタマーゼ遺伝子の遠位部位から354 bpの産物が得られるはずである。両プライマー対による分析は、pCSKO2プラスミドの組換えが、β-ラクタマーゼ遺伝子内でまたは別の方法により任意の二個のPCRプライマーの位置間で起こる場合に必要となる。pCSKO2形質転換体由来DNAのPCR分析の結果は、次のとおりである。
(
*) pCSKO2由来の色素沈着した形質転換体
「アルビノ」形質転換体は、分断化されたCS遺伝子を有するのみであって、ベクター配列を含んでいない(少なくともβ-ラクタマーゼ遺伝子領域を含んでいない)。色素沈着した形質転換体は、β-ラクタマーゼ遺伝子領域および分断化されていないCS遺伝子を有する。この後者の菌株はまた、当然のことながらpCSK02プラスミドが宿主染色体に異所的に導入される場合には、分断化されたCS遺伝子を有するものと思われる。恐らく、二つのPCR産物間の強度差は、大きさと増幅効率の相違を反映している。これらの結果は、また、pCSKO2由来の「アルビノ」形質転換体における二重交差相同組換えによるCS遺伝子の破壊と完全に一致する。
以下は、実施例2および3より選択した形質転換体のカロチノイド分析の要約である。
下記表には、振盪フラスコ中で増殖させた選択の形質転換体のHPLCによるカロチノイド分析の結果が示される。これらの実験の場合、形質転換体は、色素沈着が最も高いものを視覚的に評価することで選択した。形質転換体については、実施例2および3のなかで前に述べた。
選択した形質転換体中のカロチノイド
n.d.;検出されず
*ppm(μg/g dcw);その他のカロチノイドは、検出可能な量で検出されなかった。
実験Iに示されるように、pCSKO1(単一交差;B3-1、B3-2)およびpCSKO2(二重交差;B6-2、B6-3)由来の「アルビノ」形質転換体は、検出可能なカロチノイドを含んでいなかった。色素沈着があったpCSKO2形質転換体B6-4では、49 ppmのβ-カロチンが産生された。pCSKO2はCS遺伝子の内部断片のみを含む(そしてプロモーターがない)ことを考えれば、非「アルビノ」形質転換体により産生された色素は、基礎量または通常量に相当すると考えられる。「遺伝子コピー数」による説明と一致して、pCSZEO1の形質転換体B4-2は、β-カロチンを基礎量の約二倍含んでいた。興味深いことに、LC欠損型のpCSZEO2の代表的な形質転換体B4-15は、β-カロチンをほぼ基礎量含み、リコペンを含んでいなかった。この結果は、このプラスミド中の組換えCS遺伝子が全く機能していないことを示唆している可能性があると思われる。最大量のβ-カロチンは、pTUBCS11中のチューブリンプロモーターにより駆動されるCS遺伝子をpTUBZEO11-2と同時形質転換した菌株B5-1で認められた。しかしながら、B5-1中のβ-カロチン量は、B4-2中のその量よりもそこそこ高いにすぎなかったことから、強力なチューブリンプロモーターから得られる恩恵がごく僅かであることまたは上流の基質量が限られていることが示唆された。
実験IIでは、増殖条件により、β-カロチンに加えてキサントフィル類のアスタキサンチンが産生された(しかしカロチノイド中間体の量は有意ではない)。試験した菌株間で、カロチノイドの産生量から、実験Iについて記述したのと同じ相関関係が示される。カロチノイド総量は、「コピー数」コンストラクトのpCSZEO1では対照(pTUBZEO11-2)由来の総量の約2倍得られ、「過剰発現」コンストラクトのpTUBCS11ではそこそこ高い量が得られた。
実施例4
以下の実施例により、カロチンシンターゼ抗体の産生について記述する。翻訳した(部分的な)CSのオープンリーディングフレームの暫定版のアミノ酸配列をStrategic Biosolutions (Ramona, CA)に、最も抗原性の高い領域/ペプチドを予測するその専売権付きソフトウェアによる解析を目的として付託した。以下のPDドメイン由来ドデカペプチドは、非常に抗原性が高いと提言された: RLVDRLMDEAKA(配列番号:3のアミノ酸176〜187)。このペプチドはResGen (Huntsville, AL)により合成され、ウサギでポリクローナル抗体を作製するのに使用した。具体的には、第1日、第2週、第6週、および第8週に、ニュージーランド白ウサギ二羽にペプチド0.5 mgを皮下注射することで免疫した。第0日(前採血)および第4週、第8週、および第10週に、採血して、血清を調製した。血清は凍結保存する。
本発明のさまざまな態様について詳述してきたが、当業者によりそれらの態様の変更および適合が行われうることは明らかである。しかしながら、そのような変更および適合は、以下の特許請求の範囲に記載される、本発明の範囲内であると明確に理解されるべきである。