JP4330117B2 - 組立ブローチ及びブローチ加工方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は本体の外周に軸方向に多数の切れ刃を配置されたブローチであって、特に切れ刃の材質が超硬合金である(超硬)組立ブローチに関する。さらに、被加工材料が焼き入れ後の例えばロックウエル硬さで50HRC以上の高硬度材の加工に適した組立ブローチに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来のブローチ加工では、被加工物(以下、ワークという)の硬度が20HRCから30HRC(ロックウエル硬さCスケール:以下同じ)以下のワークを対象に行っている。このためワークはブローチ加工後、硬度を上げるための熱処理をされるものが多い。このときの焼き入れ部の硬度は60HRC前後であり、浸炭深さは約1mmである。しかし、浸炭焼き入れすると熱処理歪みが発生するので、予め熱処理の変形を考慮して狙い形状を決め、焼き入れ前のワークを加工していた。しかし、変形量が不安定なため、例えば焼き入れ後のインボリュートスプライン部の精度(径寸法、歯筋、ピッチなど)が目標形状にならない等の問題があった。そこで、これを解決する手段として、特許文献1に記載のブローチにおいては、図9,10に示すように、前つかみ部2に続いて設けられた案内部7bを有する固定部材7、固定部材から後つかみ部3に延出する嵌合部4を有する本体51に中空円筒状の超硬合金材料の切れ刃32,42を有する組立体31,41を後つかみ部3と嵌合部4との間に設けられたねじ6にダブルナット8を螺着させて挟持嵌合固定した構造の組立ブローチ50が示されている。この組立ブローチは、ワークの熱処理歪みが大きく、削りしろを大きくとる必要がある場合などは、必要なブローチ長さが長くなるため、中空円筒状の超硬合金材料の切れ刃を有する組立体41,42を2本以上ブローチ本体51の片側(後つかみ部側)から順に挿入し、ダブルナット等の固定部材8により組立体を挟持固定する構造となる。
【0003】
【特許文献1】
特開2002−137118号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、超硬合金材料の切れ刃31,42を有する組立体31,41を2本以上順に挿入して組み付けると、ブローチ加工による振動が原因となって、組立体の合わせ面(当接面)31b,41aにチッピング、欠けを引き起こすという問題があった。また、組立ブローチの組み付け後の傾きは、一方の組立体の端面の直角度が悪いと、他方の組立体の傾きに影響する。即ち、相互の直角度の誤差が、組み付け後のブローチの傾きに影響しあうため、組立体が1本だけの場合に比べ、良好な組み付け精度(ブローチ傾き)が得られないという問題があった。このことが、加工精度、特にスプラインの歯筋精度、直角度に悪影響を及ぼしていた。
【0005】
本発明の課題は、かかる従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、切れ刃を有する組立体が2本以上必要な組立ブローチにおいて、ブローチ加工振動による組立体当接面のチッピング、欠けを引き起こさないブローチを提供するものである。さらに、組み付け後のブローチの傾きが少なく、組立体が1本の場合と同等の性能を発揮できるブローチを提供するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は研究の結果、特許文献1に示されたブローチ工具において組立体を2本にしたものを用いて、硬度が60HRCのワークの加工試験を行った結果、ブローチ加工による振動が原因となって起こる組立体の合わせ面のチッピング、欠けは、切れ刃を有する組立体を合金鋼とした場合では起こりにくいが、超硬合金とした場合に発生しやすい点に着目し、接触面のあたり(接触状態)によっては、部分的に高い応力がかかりチッピングが発生すると考え、組立体の合わせ面に、組立体よりも硬度の低い合金鋼を挟み込むようにして緩衝作用を持たせればよいと考えた。この考えにより、本発明においては、前つかみ部を有する多数の切れ刃を寸法順に配列した内面ブローチであって、前記前つかみ部を有する合金鋼製の本体は前記前つかみ部の反対側に延出する棒状の嵌合部を有しており、外周に切れ刃を有する中空円筒状又はリング状の超硬合金製の複数個の組立体が前記中空円筒状又はリング状の穴部を前記棒状嵌合部に嵌合固定されている組立ブローチ工具において、前記複数個の組立体の間に合金鋼製の鍔部を備え、前記複数の組立体と前記鍔部とを前記複数の組立体の最外側両端面にそれぞれ当接させ、前期各組立体同士の接触部を無くし、挟持固定する合金鋼製の固定部材が前記本体に配設された組立ブローチを提供することにより前述した課題を解決した。
【0007】
即ち、2本の超硬合金の組立体からなる部分と合金鋼からなるつかみ部を有する本体を一体に組み付けて一本のブローチとし、複数の組立体の間に、合金鋼の鍔部(間座)を配設するようにしたので、硬度の高い超硬合金同士の接触部が無くなり、比較的硬度の低い合金鋼が緩衝材となって、接触面のあたりのばらつきにより、部分的に高い応力がかかることは無くなり、チッピング、欠けの発生を防止するものとなった。なお、固定部材以外の全ての組立体間に鍔部を設けるのが好ましいが一部であっても良い。
【0008】
また、案内部は切れ刃がなく、ワークに対して硬くする必要もなく、位置決めを容易にしたい。そこで、請求項2に記載の発明においては、前記前つかみ部側の前記固定部材は、被加工物(ワーク)に設けられた前加工溝に嵌合可能に長手方向に延びた案内部を設けた組立ブローチとした。これにより、ワークの前加工溝に案内部が嵌合してワークとブローチとの位相合わせ、位置決めが自動的になされる。さらに刃部を有する円筒状の超硬合金の組立体と合金鋼製の固定部材の案内部はワークの加工諸元に応じて交換できるので、多種ワークへの対応が容易である。また、案内部の先端部を縮径するテーパ形状をもつようにすればより容易に嵌入できることとなる。
【0009】
さらに、請求項3に記載の発明においては、前記鍔部と前記組立体との当接部、及び、前記案内部を有する固定部材と前記組立体との当接部には、各々、回転方向位置決め手段により回転方向に回らないように互いに位置決めされ、かつ前記鍔部又は前記固定部材の内1以上が前記本体に対し回転しないように前記本体に位置決め又は固着するようにした。これにより、前つかみ部を有する本体と、本体と固定された鍔部又は固定部材に対して、鍔部、組立体、固定部材が互いに回転しないように位置決めされているので、本体、固定部材、組立体、鍔部の全てが固定される。従って、ブローチの前つかみ部を回転角が同じになるよう規制してつかむことにより、案内部、複数の組立体に設けられた刃部の回転位相決めができる。これにより、ワークの回転方向を適切に位置決めすれば、ワークの前加工溝に案内部、ブローチ刃部の回転位相を合わせることができる。
【0010】
また、本体への固定はできるかぎり確実にしたい。そこで、請求項4に記載の発明においては、固定部材のいずれか一方を本体に一体に形成するようにした。これにより、組立体、鍔部の回り止めが確実にされる。
【0011】
一方、本発明者等は前述したと同様に、組立体2本を用いたもので硬度が60HRCのワークの加工試験を行い加工精度の評価をするにあたり、特にスプラインの歯筋精度、直角度とブローチの組み付け状態に着目したところ、組立体が2本の場合は、1本の場合に比べて、超硬刃を有する円筒状のブローチの本体に組み付いた姿勢の傾きが大きく、加工されたワークのスプラインの歯筋精度、直角度が悪くなると言う知得を得た。これは前述した合金鋼製の鍔部が本体と分離している場合でも同様であった。この知得により、請求項5に記載の本発明においては、前記鍔部を1箇所のみに設け、かつ本体に一体にし、前記組立体と前記鍔部との当接面及び前記組立体と前記固定部材との当接面が軸直角平面又は同軸の円錐面にされた組立ブローチを提供することにより前述した課題を解決した。
【0012】
即ち、超硬合金の組立体からなる部分と合金鋼からなる前つかみ部を有する本体を嵌合部で嵌合させ一体に組み付けて一本のブローチとする組立ブローチにおいて、嵌合部を分割する本体と一体の合金鋼製の鍔部が設けられ、前つかみ部側より、前つかみ部側の組立体を組み入れ、鍔部の軸直角平面又は同軸の円錐面で当接させ、もう他方側の組立体は後つかみ部(前つかみ部の反対側)から鍔部に軸直角平面又は同軸の円錐面で当接させるように組み入れ、さらに両端を固定部材で挟持固定するようにしたので、超硬合金の組立体の端面直角度が、もう一方の組立体の組み付け後の傾きに影響することはない。したがって、中空円筒状の超硬合金材料の切れ刃を有する組立体が2本以上必要な場合においても、単一の組立体の場合と同等な組み付け精度が得られるものとなった。なお、この場合、請求項4に記載の場合とは異なり、固定部材は両方共、本体とは着脱可能にするのはいうまでもない。また、請求項2に記載の前つかみ側の合金鋼製の固定部材にワークに設けられた前加工溝に嵌合可能に長手方向に延びる案内部を設けるのがよい。これにより、前述したと同様に、ワークの回転方向を適切に位置決めすれば、ワークの前加工溝に案内部、ブローチ刃部の回転位相を合わせることができる。なお、当接面は平面が加工が容易で精度も高いが、軸直角方向の誤差が残る。これに対して同軸の円錐面とすれば、軸方向及び軸直角方向の両方向の取付誤差が小さくなる。一方、球面座のようなものは面同士が均一当たりとなるなどの利点があるが、軸に対して傾きを是正できないので好ましくない。
【0013】
かかる組立ブローチは、取りしろが少なく高精度を要し、また、超硬合金製の組立体を用いて加工しなければならないような、表面硬度が45HRC以上65HRC以下のような高硬度材の加工に適している。そこで、請求項6に記載の発明においては、請求項1乃至5のいずれか一に記載のブローチを用い、硬度HRC(ロックウエル硬さCスケール)45以上65以下の高硬度材の加工を行うブローチ加工方法を提供することにより前述した課題を解決した。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明にかかる組立ブローチの第一の実施の形態について、図を参照して説明するが、本発明はこれに限定されるわけではない。第一の実施の形態は案内部を兼用した前つかみ部側の固定部材を本体と一体に形成し、かつブローチ本体に着脱可能に本体とは別体のリング状の鍔部(間座)を設け、後つかみ部側から組立体を嵌挿組み付けるようにしたものである。図1は、本発明の第一の実施の形態を示す超硬組立ブローチの一部を切り欠いた側面図、図2は図1に記載の前つかみ部側の組立体の一部を切り欠いた(a)は側面図、(b)は正面図、(c)は背面図、図3は図1に記載の後つかみ部側の組立体の一部を切り欠いた(a)は側面図、(b)は正面図、(c)は背面図、図4は本発明の実施の形態を示す鍔部の(a)は側面図、(b)は正面図である。図2,図3に示す組立体は従来の組立ブローチでも使用しているものである。図1に示すように、組立ブローチ10の本体1は合金鋼を用いて製作されており、一端に組立ブローチ10を引き抜くための前つかみ部2、他端に後つかみ部3が形成されている。また、前つかみ部の反対側に棒状の嵌合部4が設けられ、2つの超硬合金製の組立体31,41が嵌合可能にされ、2つの組立体の間には合金鋼製の鍔部(間座)9が嵌合部4に嵌合しつつ挟持されている。ブローチ本体1は図10に示す従来例の本体51と同様であるが軸方向長さが鍔部9が増えた分に応じて長くなっている。前つかみ部2と棒状の嵌合部4の間に前つかみ側固定部材7が本体1と一体に形成されている。この前つかみ側固定部材7は図示しないワークに設けられた前加工溝に嵌合可能に長手方向に延びた案内部7bが設けられている。前つかみ部側固定部材7の嵌合部側端面は軸直角平面部7dと二面幅形状を有する凸部7eとが設けられている。また、嵌合部4と後つかみ部3との間にはねじ6が設けられている。
【0015】
図1,2に示すように、前つかみ部側固定部材7の端面の軸直角平面部7dに前つかみ部側組立体31が軸直角平面部31aを当接させながらが嵌合部4に嵌合されている。前つかみ部側組立体31は切れ刃32の一部または全部が超硬合金で組立体として一緒に焼結されている。前つかみ部側組立体31の切れ刃32の前には、前つかみ部側固定部材7の案内部7bと位相が一致した組立体案内部33が形成され、ワークがスムースに切れ刃に誘導される。前つかみ部側組立体31の両端面はそれぞれ軸直角平面部31a,31bと二面幅形状の凹部31c,31dとが形成され、一方の凹部31cは前つかみ部側固定部材7の凸部7eと嵌合され互いに回転しないように、かつ位相が一致するようにされている。図1,4に示すように、前つかみ部側組立体31の他方の端面の軸直角平面部31bに当接するように鍔部9が嵌合部4に嵌合されている。鍔部の両端面はそれぞれ軸直角平面部9a,9bと二面幅形状の凸部9c,9dとが形成され、一方の凸部9cは前つかみ部側組立体31の他方の凹部31dと嵌合され互いに回転しないように、かつ位相が一致するようにされている。
【0016】
図1,3に示すように鍔部9の他方の端面の軸直角平面部9bに後つかみ部側組立体41が軸直角平面部41aを当接させながら嵌合部4に嵌合されている。組立体41の両端面はそれぞれ軸直角平面部41a,41bと二面幅形状の凹部41c,41dとが形成され、一方の凹部41cは鍔部9の他方の凹部9dと嵌合され互いに回転しないように、かつ位相が一致するようにされている。また、後つかみ部側組立体41も切れ刃42の一部または全部が超硬合金で組立体として一緒に焼結されている。他方の凹部41dはなくてもよい。図1に示すように、後つかみ部側組立体41の他方の軸直角平面部41b、即ち、最外側端面に当接するように後つかみ部側の固定部材として、ダブルナット8を構成するナットが本体1に設けられたねじ6に螺着されている。
【0017】
組立にあたっては、組立ブローチ10は、前つかみ部側組立体31を、後つかみ部3側から、本体1上に設けられた棒状の嵌合部4に嵌入し、前つかみ部側固定部材7の端面7dに当接させ、次に、鍔部9を嵌合部4に嵌入し、次に、後つかみ部側組立体41を嵌合部4に嵌入し、ダブルナット8で挟持固定することにより、組立ブローチ10を形成する。
【0018】
従来ブローチにおいては、図9,10に示すように、切れ刃32,34を有する超硬合金の組立体31,41は、ブローチ本体51の前つかみ部側の固定部材7の端面7dに押し当て、ダブルナット(後つかみ部側固定部材)8で固定されている。このとき、2つの組立体31,41は、合わせ面31b,41aで接触しており、ブローチ加工による振動が原因となって、合わせ面にチッピング、欠けを引き起こすことがあった。これと比較して、図1で示す本発明の組立ブローチ10では、前つかみ部側組立体31と後つかみ部側組立体41の間に、合金鋼の鍔部(間座)9を設けたので、硬度の高い超硬合金同士の接触部が無くなっている。このような組立ブローチ10を用いて、硬度60HRCの高硬度材のブローチ加工を行ったところ、比較的硬度の低い合金鋼が緩衝材となって、組立体31,41のチッピング、欠けの発生を防止できた。また、組立体31,41と鍔部9は、凹凸部7e,31c,31d,9c,9d,41aにより互いに回転方向の位置決めが保証されているので、前記組立体の刃部32,42の回転位相決めができるものとなっている。
【0019】
本発明の第二の実施の形態について述べる。第二の実施の形態においては、後つかみ部側固定部材を合金鋼製のブローチ本体と一体に形成し、案内部と兼用した前つかみ部側固定部材をブローチ本体に着脱可能にし、かつダブルナットと案内部材とに二分した場合のものである。図5は本発明の第二の実施の形態を示す超硬組立ブローチの一部を切り欠いた側面図、図6は第二の実施の形態に用いる固定部材の案内部の(a)は側面図、(b)は正面図である。第二の実施の形態においては、第一の実施の形態と同様な部分については同符号を付し説明の一部を省略する。図5,6に示すように、組立ブローチ20の本体11は合金鋼を用いて製作されており、一端に組立ブローチ20を引き抜くための前つかみ部2が形成されている。また、本体11に続いて設けられた棒状の嵌合部4には超硬ブローチ20の進行方向後側(図でみて上側)に、後つかみ部3が設けられ、後つかみ部と嵌合部の間に後つかみ部側固定部材18が本体と一体に形成されている。後つかみ部側固定部材18の嵌合部側端面は軸直角平面部18aと二面幅形状を有する凸部18cとが設けられている。また、嵌合部4と前つかみ部2との間にはねじ5が設けられている。後つかみ部側固定部材18の端面の軸直角平面部18aに後つかみ部側組立体41の他方の端面の軸直角平面部41bが当接するように後つかみ部側組立体が嵌合部4に嵌合されている。後つかみ部側組立体の一方の端面の軸直角平面部41aに鍔部(間座)9の他方の端面9bが当接するように鍔部が嵌合部4に嵌合されている。鍔部9の一方の端面の軸直角平面部9aに前つかみ部側組立体31の他方の端面31bが当接するように前つかみ部側組立体が嵌合部4に嵌合されている。
【0020】
前つかみ部側組立体31の一方の軸直角平面部31a、即ち、最外側端面に当接するように、図6に示す案内部材17aの端面7dが当接するようにされ、案内部材とダブルナット17cとで、前つかみ部側固定部材17が形成されている。ダブルナット17cは本体11に設けられたねじ5に螺着されている。案内部材17aは本体11の嵌合部4に嵌合可能にされ、図示しないワークに設けられた前加工溝に嵌合可能に長手方向に延びた案内部7bが設けられている。また、案内部材17aの嵌合部側端面は軸直角平面部7dと二面幅形状を有する凸部7eとが設けられている。
【0021】
組立にあたっては、図2乃至図6に示すように、組立ブローチ20は、後つかみ部側組立体41を、前つかみ部2側から本体11上に設けられた棒状の嵌合部4に嵌入し、後つかみ部側固定部材18の端面18aに当接させ、次に、鍔部9を嵌合部4に嵌入し、次に、前つかみ部側組立体31を嵌合部に嵌入し、さらに、案内部材17aを嵌合部に嵌挿し、ダブルナット17cで挟持固定することにより、組立ブローチを形成する。後つかみ部側固定部材18端面、後つかみ部側組立体41、鍔部9、前つかみ部側組立体31のそれぞれの端面、案内部材17aの端面は互いに凹凸部18c,41d,41c,9d,9c,31d,31c,7eで、互いに回転しないように、かつ位相が一致するようにされている。
【0022】
かかる第二の実施の形態においても、第一の実施の形態の場合と同様、超硬合金製の組立体31,41の間に、合金鋼の鍔部(間座)9を設けたので、硬度の高い超硬合金同士の接触部が無くなり、比較的硬度の低い合金鋼が緩衝材となって、チッピング、欠けの発生を防止するものとなる。なお、組立体が2個、鍔部が1個の場合について説明したが、鍔部を両側に組立体を配置し、最外側の組立体の両端を固定部材で挟持固定することが重要であり、組立体は3個以上、鍔部も2個以上であってもよいことはいうまでもない。
【0023】
本発明の第三の実施の形態について述べる。第三の実施の形態においては、前後両側のつかみ部側固定部材をブローチ本体とは着脱可能にして、鍔部を合金鋼製のブローチ本体と一体に形成し、鍔部の両側から組立体を嵌挿組み付けするようにしたものである。図7は本発明の第三の実施の形態を示す超硬組立ブローチの一部を切り欠いた側面図、図8は第三の実施の形態に用いる合金鋼製のブローチ本体の(a)側面図、(b)は(a)のA−A線断面図である。第三の実施の形態において、前つかみ部側固定部材17は第二の実施の形態で述べたと同じく図6に示す案内部材17a及びダブルナット17cを使用している。また、後つかみ部側固定部材は第一の実施の形態で述べたと同じくダブルナット8を使用している。そこで、第一及び第二の実施の形態と同様な部分については同符号を付し説明の一部を省略する。第三の実施の形態においては、ブローチ本体21は、図8に示すように、合金鋼製で前つかみ部2と、前つかみ部より延びる嵌合部4と、嵌合部を二分する鍔部29が備えられている。嵌合部4と前つかみ部2の間及び嵌合部と後つかみ部3との間にねじ5,6が設けられている。鍔部29は本体21と一体に形成され鍔部の両端には本体の軸に対して直角平面部9a,9bと凸部9c,9dとが形成されている。
【0024】
図7に示すように、前つかみ部2側には鍔部29の前つかみ部側直角平面部9a及び凸部9cと当接及び嵌合して案内部33を有する前つかみ部側組立体31、案内部7bを有する固定部材17a、ダブルナット17cが順に配設されている。後つかみ部3側には鍔部29の後つかみ部側直角平面部9b及び凸部9dと当接及び嵌合して後つかみ部側組立体41、ダブルナット8が順に配設され、組立ブローチ30を構成している。
【0025】
組立にあたっては、後つかみ部側組立体41を、後つかみ部3側から本体21上に設けられた棒状の嵌合部4に嵌入し、組立体端面41a及び凹部41cを鍔部29の後つかみ部側直角平面部9b及び凸部9dに当接嵌合させ、後つかみ側ダブルナット8を後つかみ部側ねじ6に螺着して鍔部29と固定部材であるダブルナット8により後つかみ部側組立体41を挟持固定する。また、前つかみ部側組立体31を、前つかみ部2側から本体21上に設けられた棒状の嵌合部4に嵌入し、組立体端面31b及び凹部31dを鍔部29の前つかみ部側直角平面部9a及び凸部9cに当接嵌合させ、さらに、案内部材17aを組立部材31に当接、嵌合させ、前つかみ側ダブルナット17cを前つかみ側ねじ5に螺着して鍔部29と固定部材17である案内部材17aとダブルナット17cにより前つかみ部側組立体31を挟持固定する。後つかみ部側組立体41、鍔部29、前つかみ部側組立体31のそれぞれの端面41a,9b,9a,31b,31a、案内部材17aの端面7dは互いに軸直角平面にされ、かつ、凹凸部41c,9d,9c,31d,31c,7eで、互いに回転しないように、かつ位相が一致するようにされている。
【0026】
図9,10に示す従来型組立ブローチ50は、嵌合部4より前つかみ部側組立体31、後つかみ部側組立体41を順に入れ、ダブルナット8により締め付け、固定するようになっているため、組立体31,41の組み付け後の傾きは、同組立体の端面の直角度が相互に影響し合うので、ブローチの傾きが大きくなるものとなっている。これと比較して、本発明の第三の実施の形態においては、本体前つかみ部2側から前つかみ部側組立体31、案内部7bを設けた案内部材17aを順に入れ、本体21に一体にされた鍔部29の直角平面9aに組立体31の端面31bを当接させながらダブルナット17cにより締め付けを行い、また、後つかみ部3側から後つかみ側組立体41を入れ、本体21に一体にされた鍔部29の直角平面9bに組立体の端面41aを当接させながらダブルナット8により締め付けを行うので、円筒状の超硬合金の組立体の端面直角度が、組み付け後の傾きに影響することがなくなり、単一の組立体の場合と同等な組み付け精度(ブローチ傾き)が得られるものとなった。なお、コスト面は上がるが、直角平面より軸心を通る凹凸の円錐面同士を嵌合させることにより精度をさらに高くできる。また、鍔部は1箇所であるが、支障のない範囲で組立体は複数設けても良く、また、第一、第二の実施の形態で述べたような本体とは着脱可能なリング状の鍔部を組立体の間に設けてもよい。また、仕上げ精度を確保するため、後つかみ部側から入れる組立体41を刃数の少ない仕上げブローチとし、この部分のみを取外し交換するようにした場合には、前つかみ部側の組立体の組付精度を損なうことなく仕上げブローチ側の取り外し交換、組付が容易にできるので、加工寸法の維持が容易になる。
【0027】
【発明の効果】
本発明によれば、複数の超硬合金の切れ刃の付いた組立体の間に、合金鋼の鍔部(間座)を設たブローチ工具としたので、加工時の振動による、組立体の接触面のチッピング、欠けの発生を防止するものとなった(請求項1)。
【0028】
また、案内部を設けた組立体を切れ刃の付いた固定部材に続いて嵌合部に挿入したので、ワークに設けられた前加工溝に嵌合を容易にした(請求項2)。また、鍔部又は固定部材の一部を本体と一体にし、鍔部、切れ刃の付いた複数の組立体、複数の固定部材がキーなどの回転方向位置決め手段により回転方向の位置決め及び固定が確実にされるので組み付け精度が高くなり、加工精度が向上する。(請求項3)。また、固定部材のいずれか一方を本体と一体にしたので、本体への組立体の固定が確実になった(請求項4)。
【0029】
さらに、鍔部を棒状の嵌合部を二分するように設け鍔部を挟んで両側に組立体を配置し、互いに軸直角平面又は同軸の円錐面で当接するようにしたので、各々の組立体の端面直角度が、組み付け後の傾きに影響しあうことがなくなり、単一の組立体の場合と同等な組み付け精度が得られ、加工精度、特にスプラインの歯筋精度、直角度が安定するものとなった。
【0030】
かかる、本発明の組立ブローチにより、硬度が45HRC以上65HRC以下の高硬度材のブローチ加工方法により、加工負荷が大きく振動が発生しやすい45〜65HRCの高硬度材のブローチ加工においても、チッピングが発生せず、倒れのない良好な加工を得ることができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第一の実施の形態を示す超硬組立ブローチの一部を切り欠いた側面図である。
【図2】組立ブローチの前つかみ部側の組立体の一部を切り欠いた(a)は側面図、(b)は正面図、(c)は背面図である。
【図3】組立ブローチの後つかみ部側の組立体の一部を切り欠いた(a)は側面図、(b)は正面図、(c)は背面図である。
【図4】本発明の第一の実施の形態を示す鍔部の(a)は側面図、(b)は正面図である。
【図5】本発明の第二の実施の形態を示す超硬組立ブローチの一部を切り欠いた側面図である。
【図6】本発明の第二の実施の形態に用いる固定部材の案内部の(a)は側面図、(b)は正面図である。
【図7】本発明の第三の実施の形態を示す超硬組立ブローチの一部を切り欠いた側面図である。
【図8】本発明の第三の実施の形態に用いる合金鋼製のブローチ本体の(a)は側面図、(b)は(a)のA−A線断面図である。
【図9】従来の超硬組立ブローチの一部を切り欠いた側面図である。
【図10】従来の超硬組立ブローチの案内部を有する前つかみ部側固定部材が一体にされたブローチ本体の側面図である。
【符号の説明】
1、11、21 本体
2 前つかみ部
4 嵌合部
7、17 (前つかみ部側)固定部材
7b 案内部
7d,31a 固定部材と組立体との当接部
8、18 (後つかみ部側)固定部材
9、29 鍔部(間座)
9a、9b、31b、41a 鍔部と組立体との当接部
10、20、30 組立ブローチ。
31、41 組立体
32、42 切れ刃
31a、41b 最外側端面
Claims (6)
- 前つかみ部を有する多数の切れ刃を寸法順に配列した内面ブローチであって、前記前つかみ部を有する合金鋼製の本体は前記前つかみ部の反対側に延出する棒状の嵌合部を有しており、外周に切れ刃を有する中空円筒状又はリング状の超硬合金製の複数個の組立体が前記中空円筒状又はリング状の穴部を前記棒状嵌合部に嵌合固定されている組立ブローチ工具において、前記複数個の組立体の間に合金鋼製の鍔部を備え、前記複数の組立体と前記鍔部とを前記複数の組立体の最外側両端面にそれぞれ当接させ、前期各組立体同士の接触部を無くし、挟持固定する合金鋼製の固定部材が前記本体に配設されていることを特徴とする組立ブローチ。
- 前記前つかみ部側の前記固定部材は、被加工物に設けられた前加工溝に嵌合可能に長手方向に延びた案内部を有していることを特徴とする請求項1に記載の組立ブローチ。
- 前記鍔部と前記組立体との当接部、及び、前記案内部を有する固定部材と前記組立体との当接部には、各々回転方向位置決め手段により回転方向に回らないように互いに位置決めされ、かつ前記鍔部又は前記固定部材の内1以上が前記本体に対し回転しないように前記本体に位置決め又は固着されていることを特徴とする請求項2に記載の組立ブローチ。
- 前記固定部材のいずれか一方が本体に一体にされていることを特徴とする請求項3記載の組立ブローチ。
- 前記鍔部は1箇所のみに設けられ、かつ本体に一体にされており、前記組立体と前記鍔部との当接面及び前記組立体と前記固定部材との当接面が軸直角平面又は同軸の円錐面にされていることを特徴とする請求項1又は2又は3に記載の組立ブローチ。
- 請求項1乃至5のいずれか一に記載のブローチを用い、硬度45HRC以上65HRC(ロックウエル硬さCスケール)以下の高硬度材の加工を行うことを特徴とするブローチ加工方法。
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