JP4329408B2 - 薬剤入り多室容器 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、医療用液体、例えば、静脈投与用輸液剤、液状栄養剤、腹膜透析液等、に配合される複数有効成分を、混合変化を避けるため分離して保持し、投与直前に確実に混合することができる薬剤入り多室容器及び多室容器自体に関する。より詳細には、高カロリー輸液、アミノ酸輸液、電解質輸液、糖類輸液、その他の医療用輸液成分を剥離容易な連通部により区画された複数の収容室に収容する薬液容器において、薬液容器に収容された複数の薬液を使用前に確実に混合することが可能な薬液容器に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、点滴により人体に供給される輸液成分、例えば、アミノ酸液、ブドウ糖液等は、混合すると変質するため、剥離可能な隔離手段により仕切られた輸液容器、特に輸液バッグ内の複数の個室へそれぞれ収容し、使用時に輸液バッグを外から押圧して隔離手段を剥離させて混合する形式の輸液入り多室容器が知られている。医療現場において、前記形式の輸液入り多室容器を使用して患者に輸液を投与する場合に、医療現場の不慣れ、人手不足等により、薬液の混合操作を完全に行わずに一部の薬液を投与する可能性がある。輸液成分を収容する区画を完全に開通しないまま患者に投与すると、投与目的のとは異なる薬液が患者の身体に供給され患者に悪影響を与えるおそれがある。
【0003】
輸液成分は本質的に患者へ投与されるものであり、輸液成分の不完全な混合により人体に深刻な影響が生じる可能性は少ない。しかしながら、例えば、糖とアミノ酸を分離収容する形式の高カロリー輸液においては、一方の薬液にカリウムイオンを含むので所定の混合がされない場合、所定値を超える濃度のカリウムイオンが投与され心臓機能に悪影響を与える可能性が存在する。また一方の薬液に葡萄糖を含むので所定の混合がされない場合、所定値を超える濃度の糖液が投与され血管に浸透圧、pH等に起因する痛みを生じる可能性がある。近年、上記の多室容器に分離収容された薬剤を不完全に混合し投与することを防止するための工夫がされている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1(特開平9−327498号公報)に開示される医療用容器は、2つ以上の薬剤を混合する腹膜透析液、静注用輸液剤、液状栄養剤において、各薬剤を確実に容易な操作で無菌的に混合できる医療用容器を提供することを目的とする。この医療用容器においては、第1及び第2の薬剤をそれぞれ収容する第1及び第2の分室11、12の間に解除可能な第1の閉塞手段4が配置され、薬液排出用の栓体6と第1の分室11の間に解除可能な第2の閉塞手段3が配置される。第1の分室11又は第2の分室12を押圧することにより、最初第1の閉塞手段4が解除され、第1及び第2の薬剤が混合され、さらに強く押圧することにより第2の閉塞手段3が解除され、混合液が栓体6を介して排出される。
【0005】
また、特許文献2(実用新案登録第3090256号)は、眼科手術、脳手術等に使用される薬液を収容する多室容器3を開示する。この多室容器3は、開封可能な封止部15により仕切られた第1収容室9及び第2収容室11aを備え、封止部15は、外部からの力で外れたり、或いは破れることで第1収容室9と第2収容室11aが連通される。第2収容室11aは、排出用ポート11の閉鎖された内部空間に設けられる。薬液の使用時に封止部15が開封され、第1収容室9の薬液及び第2収容室11aの薬剤が混合され、排出用ポート11のゴム栓13へ導管16の先端の刺入針16aを刺入し、刺入針16a及び導管16を介し薬液が排出される。
【0006】
特許文献2の多室容器3において、混合前の薬液が使用されるのを防止するため、第2収容室11aの一部が空気で構成される。薬液を投与するため、排出用ポート11を下側にして容器3を吊り掛けると、第2収容室11aの上部に空気の層が形成され、刺入針16aの先端の孔16bがこの空気の層の中に位置され、薬液が排出されない。それ故、使用者は、封止部15が開封されていないことを認識することができる。また、封止部15が開封されていない場合、刺入針16aの先端が充分進入していないときは、第2収容室11a内の薬液が排出されるが、第2収容室11a内の薬液の量が小さいので、使用者は、封止部15が開封されていないことに気づく。
【0007】
【特許文献1】
特開平9−327498号公報
【特許文献2】
実用新案登録第3090256号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
特許文献1の医療用容器は、薬液排出用の栓体6と第1の分室11の間に解除可能な第2の閉塞手段3を設けるので、栓体6と第2の閉塞手段3の間に薬液を収容しない比較的大きな空間が生じる。そのためできるだけ小型にしたい容器の体積を大きくする問題点がある。また、異なる強度の2つの解除可能な閉塞手段を設けることは、多室容器の製造において基本製造ラインの変更を伴い多額の費用と多くの時間を必要とする不利がある。
【0009】
特許文献2の多室容器3は、第2収容室11aが排出用ポート11の内部空間に設けられるものであるので、第2収容室11aの容積を大きくすることができない問題を有する。本発明は、特許文献1、2に見られる多室薬液容器の問題点を解消し、多室薬液容器から混合薬液を投与する場合に混合すべき薬液が確実に混合され投与されるようにすることである。
【0010】
より詳しくは、本発明の目的は、第1及び第2薬液を分離収容する第1及び第2収容室、両室の間に配置される解除可能な隔離手段、並びに第1収容室に連通するポート部材を備える多室容器の使用に際し、第1及び第2薬液の混合を確実に行うようにすることであり、そのため、複数の収容室に薬液が分離収容され投与時に収容室間の隔離手段を連通される形式の多室薬液容器のポート部材に、連通時の圧力上昇又は連通前後の薬液の密度変化を感知した場合のみ薬液の通過を可能にする手段を配置することである。本発明のその他の目的は、特許請求の範囲及び以下の説明で明瞭にされる。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明の複数の薬液を収容するための多室容器は、第1収容室及び第2収容室、両室の間に配置される解除可能な隔離手段、並びに第1収容室に連通するポート部材を備える。ポート部材は薬液の通路及び通路を開閉するための制御部を有する。第1収容室と第2収容室は隔離手段が解除されることにより連通され、両室に収容された薬液を混合させる。制御部は第1収容室と第2収容室が連通されることにより通路を開放し薬液を通過させ患者への投与を可能にする。
【0012】
本発明の多室容器において、第1収容室、第2収容室及び隔離手段は熱可塑性樹脂フィルムにより形成され、隔離手段は薬液を収容した第1収容室又は第2収容室を押圧することにより解除される。隔離手段は熱可塑性樹脂フィルムに形成された弱シール部である。制御部は隔離手段を解除する圧力又はそれ以上の圧力により通路を開放する可動弁体を具備することができる。また制御部は、薬液を通過させるが可動弁体の第1収容室内への移動を阻止する規制体を有することができる。
【0013】
本発明の薬剤入り多室容器は、第1薬液を収容する第1収容室及び第2薬液を収容する第2収容室、両室の間に配置される解除可能な隔離手段、並びに第1収容室に連通するポート部材を備える。ポート部材は、薬液の通路及び通路を開閉するための制御部を有し、第1薬液と第2薬液は、隔離手段が解除されることにより混合されて混合薬液を生成し、制御部は、通路を開閉する可動弁を備え、可動弁は第1薬液と第2薬液の混合薬液により通路を開放可能である。
【0014】
本発明の薬剤入り多室容器において、好ましくは、可動弁は可動弁体及び着座部を含み、可動弁体は第1薬液中にあるとき着座部に着座して通路を閉鎖し、混合薬液中にあるとき着座部から離れて通路を開放する。また、可動弁体は、混合薬液の比重に応じて着座部から離れることができる。好ましくは、可動弁体の比重が1.040〜1.060である。可動弁体は一体又は別体の浮力調整部材を含むことができる。本発明の薬剤入り多室容器において、ポート部材は更に中空針により刺通可能なゴム栓及び膜体を備え、膜体は水蒸気透過性でありゴム栓を薬液から分離するように配置される。第1薬液が還元糖(ブドウ糖)を含有し、第2薬液がアミノ酸を含有するようにできる。また第1薬液がアミノ酸を含有し、第2薬液が還元糖を含有するようにできる。第1薬液及び第2薬液には、人体に必要な電解質成分やビタミン類を含有させることができる。
【0015】
【発明の実施の態様】
図1aは、本発明の第1実施例の薬剤入り多室容器の概略平面図、図1bは、図1aの図B−Bに沿う薬剤入り多室容器の概略断面図である。図1a及び図1bに示すように、薬剤入り多室容器10は、薬液M1収容するための第1収容室11、薬液M2を収容するための第2収容室12、第1収容室11に連通されるポート部材30、及び薬液収容室12に連通されるポート部材40を含む。図1aの多室容器10は、熱可塑性樹脂フィルム13、14を左右側縁部16、16、上下端縁部18、17及び仕切り部20において接着して製造される。左右側縁部16、16及び下端縁部17、上端縁部18は、強シールとされ、第1収容室11と第2収容室12の間の仕切り部20は剥離可能な弱シールとされる。
【0016】
図1aの多室容器10において、仕切り部20の弱シールは、薬液M1収容した第1収容室11又は薬液M2を収容した第2収容室12を外方から押圧することによる薬液M1又は薬液M2の圧力の上昇により剥離される。仕切り部20が剥離されると第1収容室11と第2収容室12が連通され、薬液M1と薬液M2を多室容器10の内部で無菌状態を維持して混合することができる。
【0017】
多室容器10の下端縁部17に薬液を点滴管へ排出するためのポート部材30が配置される。ポート部材30は、薬液の通路32、通路の外方端部を閉じるゴム栓34、通路32を開閉するための制御部36を有する。制御部36は、第1収容室11と第2収容室12が連通され第1薬液及び第2薬液が混合することにより通路32を開放し薬液を通過させる。制御部36が薬液を通過させるときゴム栓34を刺通する図示しない中空針を介し薬液が図示しない点滴管へ排出される。多室容器10の上端縁部18に、薬液を投与するため多室容器10を吊下げるために使用される吊下げ孔28及びポート部材40が配置される。多室容器1の吊下げ孔28は、縁部23のほぼ中央に配置され、輸液投与の際、多室容器1は、吊下げ孔28を利用し、所定高さ位置に吊下げられる。ポート部材40は、第2収容室12へビタミン類や微量元素を注入するため等に使用され、通路42及びゴム栓44を具備する。ポート部材40は、制御部を具備しない。
【0018】
図2aは、本発明の第2実施例の薬剤入り多室容器のポート部材30の概略縦断面図、図2bは、図2aのポート部材30の変形例である。図2aのポート部材30は、一端311及び他端312を有する硬質樹脂製の管状部材31、他端312を閉じるゴム栓34、管状部材31の内部の通路32及び制御部36を備える。管状部材31は、他端312へ向けて幾分拡径されている。ポート部材30は、更にゴム栓34を管状部材31の拡張された他端312に固定するための硬質樹脂製の保持部材33を備える。制御部36は、管状部材31の内面に固着され環状弁座363を形成する弁座部材361、及び環状弁座363を閉鎖する弁板362から成る。
【0019】
図2aのポート部材30において、弁板362は、環状弁座363に対し離間可能に固着されて通路32を閉鎖する構成を有し、薬液を収容した第1収容室又は第2収容室を押圧することにより生じる液圧が隔離手段20を開放すると共に管状部材31の一端311へ作用することにより、環状弁座363から離間し通路32を開放し薬液の流れを可能にする。弁板362を環状弁座363から離間するため必要な圧力は隔離手段20を開放するために必要な圧力と同等又はそれより大きくする。弁板362は、通路32を開放するとき、その全体が環状弁座363から離間して中空針の開口を塞ぐこと等が生じないように、部分的に強固な接着部を設ける等により環状弁座363に係止される。
【0020】
図2aのポート部材30の環状弁座363は、ほぼ管状部材31の軸線35に垂直な平面内に配置される。環状弁座363と弁板362の接触面は、平面又は軸線35上に回転中心を有する回転曲面とすることができる。弁板362は、環状弁座363から一旦離間した後は、混合薬液を連続的に排出可能であるように環状弁座363を閉鎖しないように構成される。弁板362を含む制御部を水蒸気透過性とすることにより、制御部36とゴム栓34の間のポート部材30の内部に水蒸気を存在させ、加熱滅菌時にポート部材30の内部の加熱不足を防止でき、またゴム栓の成分が薬液に溶出することを防止できる。
【0021】
図2bは、図2aのポート部材30の変形例である。図2bにおいて図1aと同様の部材には、同一の符号を付し重複説明を省略する。図2bのポート部材30の制御部36において、管状部材31の内面に固着される弁座部材361は、環状弁座363を形成する弁座部材361、及び環状弁座363を閉鎖する弁板362から成り、環状弁座363は、ポート部材30の軸線35に対して角度αをなす平面内に配置される。角度αを変化させることにより、第1収容室側の液圧の弁板362に作用する面積を適当な値に変えることができる。
【0022】
図2bのポート部材30において、図2aのポート部材30と同様に、弁板362は、環状弁座363に対し離間可能に固着されて通路32を閉鎖する構成を有し、薬液を収容した第1収容室又は第2収容室を押圧することにより生じる液圧が管状部材31の一端311へ作用することにより、環状弁座363から離間し通路32を開放し薬液の流れを可能にする。弁板362は、通路32を開放するとき、その全体が環状弁座363から離間して中空針の開口を塞ぐこと等が生じないように、部分的に強固な接着部を設ける等により環状弁座363に係止される。
【0023】
図2a又は図2bのポート部材30を備える多室容器から混合薬液を投与する場合、もし第1収容室又は第2収容室を押圧することを忘れたり押圧が不十分である等により両室が十分連通されないような場合、即ち両室を連通させるに十分な押圧力が生じない場合には、弁板362が環状弁座363から剥離されず、薬液が制御部36を通過しないので、看護士等の関係者が気づくことができる。
【0024】
図3aは、本発明の第2実施例の薬剤入り多室容器のポート部材30の概略縦断面図、図3bは、図3aのポート部材30に組込まれる規制体37の概略平面図である。図3a及び図3bにおいて、図2a又は図2bと同様の部材には、同一の符号を付し重複説明を省略する。図3aのポート部材30において、制御部36は、管状部材31の内面に固着される弁座部材361と球形弁364を有し、弁座部材361の中央部に球形弁364に係合する球面座365が形成される。球形弁364が球面座365に着座する状態において通路32が閉鎖されている。図3aのポート部材30は、中空針(図示しない)により刺通可能なゴム栓34を備える。制御部を水蒸気透過性とすることにより、制御部36とゴム栓34の間のポート部材30の内部に水蒸気を存在させ、加熱滅菌時にポート部材30の内部の加熱不足を防止できる。
【0025】
図3bに示すようにポート部材30の規制体37は、多数の通孔372を備えるプラスチック製格子371からなる。図3bに示すポート部材30は、薬液を使用しないときは、球形弁364が第1収容室11内の第1薬液M1内にあり、球形弁364の比重が第1薬液M1の比重より大であるため、球形弁364が球面座365に着座し、通路35を閉鎖する。薬液を使用するため第1収容室11内の第1薬液M1と第2収容室12内の第2薬液M2が混合されると両液M1及びM2の混合液の比重は、第1薬液M1より大きくなり、球形弁364を取巻く混合液の比重が球形弁364の比重より大きくなり、そのため球形弁364が図3aに実線で示すように球面座365から離間し浮上し、通路32を開放し薬液を通過させる。球面座365の上方に規制体37が配置され、球形弁364が第1収容室内へ移動しないようにされる。
【0026】
図3aのポート部材30において、球形弁364の比重を適当な値にすることにより、第1薬液M1及び第2薬液M2が混合されたときのみ通路32を開放し薬液の通過が可能とされる。例えば、第1薬液M1(アミノ酸含有薬液)の比重が1.037であり、第1薬液M1と第2薬液M2(ブドウ糖及び電解質含有薬液)の混合薬液の比重が1.052の場合、球形弁364の比重は、1.037と1.052の間の値、例えば1.045とすればよい。球形弁364の比重をこのように選定することにより、図3aのポート部材30をその軸線35が上下方向であるように配置するとき、球形弁364の周りの薬液が第1薬液M1及び第2薬液M2の混合薬液である場合は、混合薬液の比重より小さい比重の球形弁364が混合薬液中を上昇し球面座365から離間し通路32が開放されるが、球形弁364の周りの薬液が第1薬液M1である場合は、第1薬液M1の比重より大きい比重の球形弁364は第1薬液M1中を沈降し球面座365に係合し通路32が閉鎖される。
【0027】
本発明において多室容器に収容する薬液は、高カロリー輸液用の糖・電解質・アミノ酸液のみならず、同様の有効成分を含有する末梢静脈投与用輸液、腹膜透析液である場合も、各室へ収容される薬液の比重が異なれば、同様に扱うことができる。即ち、球形弁364の比重を第1薬液M1の比重と混合薬液の比重の中間に選定することにより、混合薬液が生成されたときのみポート部材の制御部が通路を開放するように構成することができる。球形弁364の形状は、ポート部材中に生じる薬液の流れが円滑であるように流れ抵抗を考慮したものであることが好ましく、例えば、半球と錐体が組み合わされた形状とすることができる。
【0028】
球形弁364の比重を上記のように選定したポート部材30を備える多室容器から薬液を患者に投与するとき、多室容器の隔離手段が薬液を収容した第1収容室又は第2収容室を押圧することにより解除され、第1収容室と第2収容室が連通され、両室の第1薬液M1と第2薬液M2が混合され、その後、多室容器は吊下げた状態にされ、ポート部材30の軸線35が上下方向であるように配置される。またポート部材30のゴム栓34を刺通する中空針によりポート部材30内部の制御部36の下流部が点滴管と連通される。そして第1薬液M1と第2薬液M2が適正に混合され混合薬液が球形弁364の周りにある場合は、混合薬液の比重より小さい比重の球形弁364が混合薬液中を上昇し球面座365から離間し通路32が開放され混合薬液が点滴管へ流出する。
【0029】
上記多室容器からの薬液投与の操作において、もし第1収容室又は第2収容室を押圧することを忘れたり不十分である等により両室が十分連通されず、第1薬液M1と第2薬液M2が適正に混合されないため、球形弁364の周りの薬液が第1薬液M1である場合は、第1薬液M1の比重より大きい比重の球形弁364は第1薬液M1中を沈降し球面座365に係合し通路32が閉鎖され、薬液が点滴管へ流出しない。それ故、看護士等の薬液投与の関係者は第1薬液M1と第2薬液M2の混合がされていないことに気づく。
【0030】
また、球形弁364は、全体的に球形でない可動弁体とすることができ、フロート部を弁座係合面から離間させた形状、例えば、別体の浮力調整部材を備えるものとすることができる。また、球形弁364の周囲の第1薬液M1が混合薬液の比重より大きい場合は、球形弁364が第1薬液M1により浮上し混合薬液内で沈降するような比重、即ち第1薬液M1の比重と混合薬液の比重との中間の比重とし、球形弁364が浮上状態で球面座365に係合し通路32を閉じ、混合薬液内で球面座365から離間し沈降する構成とされる。
【0031】
本発明の多室容器に収容される薬剤の事例は、経中心静脈栄養療法の開始液や維持液として使用できる高カロリー輸液用の糖・電解質・アミノ酸液にビタミン類を加えた輸液製剤である。好適には、第1収容室に糖・電解質が収容され、第2収容室にアミノ酸類が分離収容される。ビタミン類は、第1収容室及び第2収容室から分離した第3の2以上の薬剤収容室に収容されるか、投与に際し、第2収容室に連通するポート部材のゴム栓を刺通した中空針を介して薬液へ付加される。
【0032】
本発明の多室容器は、熱可塑性樹脂で構成される。この熱可塑性樹脂は、耐熱性、機械的強度、柔軟性、耐薬品性、とりわけ成形加工性、ガスバリア性、耐屈曲性、透明性、紫外線遮蔽性などについて収容する薬剤や栄養剤に適した樹脂とされる。多室容器2の樹脂フィルム21、22は、単層構造あるいは二層以上の積層構造の熱可塑性樹脂フィルムとすることができる。熱可塑性樹脂としては、1種または2種以上のものを混合して用いることができる。また分子鎖に官能基を導入し、変性した熱可塑性樹脂を用いることができる。
【0033】
可動弁体は、比較的比重の大きいナイロン、ポリスチレン、ABS樹脂、ポリ塩化ビニル等と、比重1以下の樹脂であるポリエチレン、ポリプロピレンを適宜組み合わせて所望の比重とすることができる。また、可動弁体は、比重1以下で且つ適切な体積を有する樹脂成形体に医療用ガラスをその内部又は外部へ組み込むなどして比重、浮力を調整することができる。
【0034】
多室容器10を形成する熱可塑性樹脂フィルム13、14は、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−α−オレフィン共重合体のごときポリオレフィン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレートのごときポリエステル、ポリアセタール、ポリアミド、ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルサルホン、ポリサルホン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリフェニレンサルファイド、フッ素樹脂、アクリル樹脂、環状ポリオレフィンなどとすることができる。これらの中でも、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−α−オレフィン共重合体、ポリエチレンテレフタレートが好ましい。
【0035】
薬剤収容室11、12は、薬剤の吸着の少ない樹脂で構成することが好ましく、そのような樹脂は、ポリエチレンナフタレート、環状ポリオレフィン、エチレン-テトラフルオロエチレン共重合体、ポリエーテルサルホン及びポリサルホンである。多室容器を形成する樹脂フィルムの表面には、必要に応じて表面処理を施すことができる。このような表面処理法としては、例えばコロナ放電処理、プラズマ処理、火炎処理、スパッタリング処理、溶剤処理、紫外線処理、赤外線処理、オゾン処理、研摩処理などが挙げられる。容器本体を形成するフィルムを積層構造体とする場合は、必要に応じて各層の間にホットメルト接着剤、ポリウレタン接着剤などを使用して各層間の接着強度を向上させることも可能である。
【0036】
【発明の効果】
第1収容室に収容される第1薬液が糖・電解質であり、第2収容室に収容される第2薬液がアミノ酸である形式の高カロリー輸液においては、第1薬液にカリウムイオンを含む。第1薬液のカリウムイオン濃度を第2薬液により薄めることなく、静脈から投与すると心臓機能に悪影響を与える可能性がある。また第1薬液の高濃度の糖液を薄めることなく投与すると、浸透圧のため血管機能に悪影響を与え、痛みを生じることがある。本発明によれば、第1薬液と第2薬液が確実に混合されるので、これらの問題の発生を防止することができる。
【0037】
本発明の多室容器は、従来の多室容器においてポート部材を変更することにより製造可能であり、製造ラインの変更が最少であり、製造工数や費用が少ない利点を有する。本発明において制御部、特に弁板又は可動弁体を水蒸気透過性とすることにより、制御部とゴム栓の間のポート部材の内部に水蒸気を存在させ、加熱滅菌時にポート部材の内部の加熱不足を防止できる。また、制御部によりゴム栓を第1収容室内の薬剤から分離するので、ゴム栓の成分が薬液に溶出することを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1aは、本発明の第1実施例の薬剤入り多室容器の概略平面図、図1bは、図1aの線B−Bに沿う薬剤入り多室容器の概略断面図。
【図2】図2aは、本発明の第2実施例の薬剤入り多室容器のポート部材30の概略縦断面図、図2bは、図2aのポート部材30の変形例の概略縦断面図。
【図3】図3aは、本発明の第2実施例の薬剤入り多室容器のポート部材30の概略縦断面図、図3bは、図3aのポート部材30に組込まれる規制体37の概略平面図である。
【符号の説明】
10:多室容器、11:第1収容室、12:第2収容室、13、14:樹脂フィルム、16:側縁部、17:下方縁部、18:上方縁部、20:仕切り部(隔離手段)、30、40:ポート部材、28:吊り下げ孔、31:管状部材、32,42:通路、33:保持部材、34、44:ゴム栓、35:軸線、37:規制体、361:弁座部材、362:弁板、363:環状弁座、364:球形弁、365:球面座、372:通孔、371:プラスチック製格子、M1:第1薬液、M2:第2薬液。
Claims (7)
- 第1収容室及び第2収容室、両室の間に配置される解除可能な隔離手段、並びに第1収容室に連通するポート部材を備える多室容器であって、
前記ポート部材は薬液の通路及び通路を開閉するための制御部を有し、
第1収容室と第2収容室は隔離手段が解除されることにより連通され、
制御部は第1収容室と第2収容室が連通されることにより通路を開放し薬液を通過させ、
前記制御部は前記隔離手段を解除する圧力又はそれ以上の圧力により通路を開放する可動弁体を具備するものであると共に、環状弁座を含み、前記可動弁体は環状弁座に固着される弁板であり、弁板は水蒸気透過性であることを特徴とする多室容器。 - 前記第1収容室、第2収容室及び隔離手段は熱可塑性樹脂フィルムにより形成され、隔離手段は薬液を収容した第1収容室又は第2収容室を押圧することにより解除される請求項1の多室容器。
- 前記隔離手段は熱可塑性樹脂フィルムに形成された弱シール部である請求項2の多室容器。
- 第1薬液を収容する第1収容室及び第2薬液を収容する第2収容室、両室の間に配置される解除可能な隔離手段、並びに第1収容室に連通するポート部材を備える薬剤入り多室容器であって、
前記ポート部材は薬液の通路及び通路を開閉するための制御部を有し、
第1薬液と第2薬液は隔離手段が解除されることにより混合されて混合薬液を生成し、
制御部は第1薬液と第2薬液が混合されることにより通路を開放可能であり、
前記制御部は前記隔離手段を解除する圧力又はそれ以上の圧力により通路を開放する可動弁体を具備するものであると共に、環状弁座を含み、前記可動弁体は環状弁座に固着される弁板であり、弁板は水蒸気透過性である薬剤入り多室容器。 - 前記第1収容室、第2収容室及び隔離手段は熱可塑性樹脂フィルムにより形成され、隔離手段は薬液を収容した第1収容室又は第2収容室を押圧することにより解除される請求項4の薬剤入り多室容器。
- 前記第1薬液は還元糖を含有し、第2薬液はアミノ酸を含有する請求項4又は5の薬剤入り多室容器。
- 前記第1薬液はアミノ酸を含有し、第2薬液は還元糖を含有する請求項4又は5の薬剤入り多室容器。
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