JP4329068B2 - 山留め合成壁、及び山留め合成壁の構築方法 - Google Patents
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Description
このような中、前記擁壁は鉛直ではなく背面側に傾斜して構築することにより背面に作用する土圧を軽減できることが知られるようになり、特許文献1に示すように、もたれ式擁壁として一般に適用されている。
また、地盤中の山留め位置に挿入したカッターポストを回転させて地盤を掘削しながらそのカッターポストを山留め位置の長さ方向に移動させてその長さ方向に連続した溝を形成するとともに、その溝に固化液を注入して掘削土砂と攪拌させてソイルセメントを製造し、さらに、溝の中に複数の鉄骨造の芯材を所定の離間間隔をもって建て込むことにより、山留め壁本体を構築するため、山留め壁本体を山留め位置の長さ方向に連続した止水性の高い均質で等厚な連続地中壁として造成できる。また、全長にわたって高い精度で所定の傾斜角度を保持できるとともに、鉛直方向全層の土質を混合・攪拌するため、深度方向に強度のばらつきが少ない均質な壁体とすることができる。また、芯材を任意の間隔で配置できる。
一方で、これら地下構造物の自重を利用して土圧の一部をキャンセルできることから、作業の安全性がより向上するとともに、各層毎に床や梁等が構築されることにより、これらが躯体切梁として機能することから、山留め合成壁に作用する土圧を大きく低減でき、山留め壁本体の変形を小さくすることが可能となる。
なお、低下させた水位は、全ての工程が終了した後であれば現状回復を図っても、山留め壁本体と鉄筋コンクリート造の側壁よりなる合成構造の山留め合成壁で抵抗することが可能である。
前記芯材4は、地盤中における山留め位置の深さ方向に延在するとともに、図1(b)の平面図に示すように、複数が山留め位置の長さ方向Xに所定の配置間隔L1をもって並列配置されている。
また、前記ソイルセメント3は、原位置の土壌にセメント等の固化液を添加したセメント安定処理土であり、山留め位置の長さ方向Xに並列配置された複数の芯材4全てを内包するように打設されている。これにより、山留め壁本体2は、いわゆる地中連続壁に構成されている。
なお、本実施の形態では、山留め壁本体2を一般に広く知られているTRD工法にて構築するものである。ここで、TRD工法とは、地中の鉛直方向に挿入したチェーンソー型のカッターを回転させ、地盤を切削しながら水平方向に移動することで連続した溝を掘削し、これと同時に固化液と原位置土を混合・攪拌し、ソイルセメント地中連続壁を造成する工法であり、その手順は、後に示す山留め合成壁1の施工方法で詳述する。
また、このような構成により、山留め壁本体2の表面2a側に位置する地盤を根切りするにつれて、背面2bに作用する土圧により山留め壁本体2に起きあがる現象が生じるため、背面2b側の地盤が弛み土圧はさらに軽減する。したがって、山留め壁本体2は、これらの現象を考慮することにより、合理的な断面設計を実施できるものである。
一般に、土圧係数KNは内部摩擦角φにより大きく変化するがこの比率はそれほど変化しないことが知られており、例に挙げた0.2または0.3程度の勾配Nであっても山留め壁本体2を鉛直軸からみて背面2b側に傾斜して配置する構成は、土圧の低減に大きな効果を有することが分かる。ここで用いた図2及び図3は、福岡正巳著「土圧の謎をやさしく解く」近代図書、2003年6月より抜粋したものである。
また、前記スタッドジベル5には一般に広く用いられている頭部付きスタッドを用いているが、必ずしもこれにこだわるものではなく、側壁6を構成するコンクリートとの定着(付着による一体化)を向上できる形状の部材であれば、鋼材や鉄筋を溶接する等何れを用いても良い。
特に、図1に示すように、切梁を不要とする程度に山留め壁本体2を傾斜して配置し、山留め合成壁1に作用する土圧を低減している場合には、鉄筋コンクリート造の側壁6に応力がほぼ生じないことから、側壁6の壁厚を耐久性に支障のない程度まで一層低減することができる。
なお、図1(a)に示すように、山留め壁本体2の先端部近傍を地盤中の支持層8に達する深さまで根入れし、富調合のソイルセメントで根固めすれば、山留め合成壁1が自身を含めた近傍の荷重を地盤に伝達する杭として機能するため、この部位への杭基礎の構築を省略することもできる。
なお、このような防水層9は、必ずしもゴムアスファルト系の材料にこだわるものではなく、安定した防水性能を発現するものであれば、何れを用いても良い。また、該防水層9は山留め合成壁1に必ずしも設ける必要はない。
まず、図4(a)に示すように、地盤上にTRD掘削機12をセットするとともに、地盤中の山留め位置にチェーンソー型のカッターポスト13を挿入する。このとき、カッターポスト13は、山留め壁本体2に持たせる傾斜角度に対応して鉛直軸より傾斜させた状態で、所定の深さまで建て込む。また、必要に応じて表層地盤改良を併用しても良い。
なお、山留め合成壁1の構築方法は、必ずしも上述する方法にこだわるものではなく、例えば、地上部と地下部の両者を有する構造物の構築に際し、地上部と地下階とを同時に施工できる工法として一般に知られている逆打ち工法を適用することも可能である。これら逆打ち工法を適用した山留め合成壁1の構築方法を以下に示す。
次に、山留め壁本体2の表面2a側の地盤における根切り深さを複数層に分割し、最上層から最下層に向けて、以下に示す第2の工程から第4の工程を各層毎に対して段階的に実施し、図9(b)に示すように、地下構造物とともに山留め合成壁1を構築する。
第2の工程では、地下構造物の分割層の床スラブを構築できる深さまで地盤を根切りした後、山留め壁本体2の表面2aを芯材4による露出面4aが形成されるまではつり、該芯材4の露出面4aにスタッドジベル5を設置する。第3の工程では、根切り底11に分割層の床10を構築する。第4の工程では、図9(a)に示すように、前記芯材4の露出面4aに設置した前記スタッドジベル5を内包するように、山留め壁本体2の表面2aに鉄筋コンクリート造の側壁6を構築する。
なお、最下層に達した際には、第3の工程で根切り底に、床10に代わって鉄筋コンクリート造の底盤7を構築する。
また、第2の工程で山留め壁本体2の表面2a側に位置する地盤の根切り作業中に、背面2b側近傍を所定の深さまで掘削すれば、山留め壁本体2に作用する土圧を低減することができ、より安全で精度良く作業を実施できる。
一方で、これら地下構造物の自重を利用して土圧の一部をキャンセルできることから、作業の安全性がより向上するとともに、各層毎に床や梁等が構築されることにより、これらが躯体切梁として機能することから、山留め合成壁1に作用する土圧を大きく低減でき、山留め壁本体2の変形を小さくすることが可能となる。
なお、低下させた水位は、全ての工程が終了した後であれば現状回復を図っても、山留め壁本体2と鉄筋コンクリート造の側壁6よりなる合成構造の山留め合成壁1で抵抗することが可能である。
2 山留め壁本体
3 ソイルセメント
4 芯材
5 スタッドジベル
6 側壁
7 底盤
8 支持層
9 防水層
10 床
11 根切り底
12 TRD掘削機
13 カッターポスト
14 溝
Claims (7)
- 地盤中における山留め位置の深さ方向に延在し、山留め位置の長さ方向に所定の離間間隔をもって並列配置される複数の鉄骨造の芯材、及び複数の該芯材を埋設するソイルセメントにより構成されてなり、山留め位置の長さ方向に連続するとともに、鉛直軸に対して背面側に傾斜して配置され、背面に作用する土圧の支持に必要な根入れ深さを先端部近傍に確保した山留め壁本体と、
該山留め壁本体の表面に後打ちする鉄筋コンクリート造の側壁よりなり、
前記山留め壁本体は、前記山留め位置に挿入したカッターポストを回転させて地盤を掘削しながら該カッターポストを前記山留め位置の長さ方向に移動させて該長さ方向に連続した溝を形成するとともに、該溝に固化液を注入して掘削土砂と攪拌させてソイルセメントを製造し、さらに、前記溝の中に複数の鉄骨造の芯材を所定の離間間隔をもって建て込むことにより構築されており、
前記芯材には、山留め壁本体の表面に形成された露出面の少なくとも一部分に複数のスタッドジベルを設置されて、
前記側壁に該スタッドジベルが内包されることにより、山留め壁本体と側壁とが一体化した合成構造に構築されることを特徴とする山留め合成壁。 - 請求項1に記載の山留め合成壁であって、
前記山留め壁本体の先端部近傍が、富調合のソイルセメントで形成されるとともに、地盤中の支持層に位置することを特徴とする山留め合成壁。 - 請求項1または2に記載の山留め合成壁であって、
前記山留め壁本体と側壁との間に、防水層が備えられることを特徴とする山留め合成壁。 - 地盤中の山留め位置に挿入したカッターポストを回転させて地盤を掘削しながら該カッターポストを前記山留め位置の長さ方向に移動させて該長さ方向に連続した溝を形成するとともに、該溝に固化液を注入して掘削土砂と攪拌させてソイルセメントを製造し、さらに、前記溝の中に複数の鉄骨造の芯材を所定の離間間隔をもって建て込むことにより、前記山留め位置に、複数の前記芯材と前記ソイルセメントを備える地中連続壁よりなる山留め壁本体を、鉛直軸に対して背面側に傾斜させて構築する第1の工程と、
背面に作用する土圧の支持に必要な根入れ深さを前記山留め壁本体の先端部近傍に確保した上で、前記山留め壁本体の表面側に位置する地盤を所定の深さまで根切りした後、山留め壁本体の表面を前記芯材に露出面が形成されるまではつり、該芯材の露出面にスタッドジベルを設置する第2の工程と、
前記山留め壁本体の表面側に形成された根切り底に、鉄筋コンクリート造の底盤を構築する第3の工程と、
前記芯材の露出面に設置した前記スタッドジベルを内包するように、山留め壁本体の表面に沿って鉄筋コンクリート造の側壁を構築する第4の工程により構成されることを特徴とする山留め合成壁の構築方法。 - 請求項4に記載の山留め合成壁の構築方法において、
第1の工程の後、前記山留め壁本体の表面側の地盤を掘削する際の根切り深さを複数層に分割し、最上層から最下層に向けて各層毎で段階的に第2の工程、鉄筋コンクリート造の底盤に代わり各層毎の根切り底の上に床を構築する第3の工程、および第4の工程を繰り返す逆打ち工法を実施し、
最下層では、第2の工程、根切り底に前記底盤を構築する第3の工程、及び第4の工程を実施することを特徴とする山留め合成壁の構築方法。 - 請求項4または5に記載の山留め合成壁の構築方法において、
第2の工程で、前記山留め壁本体の背面近傍における地盤を、所定深さまで掘削することを特徴とする山留め合成壁の構築方法。 - 請求項4から6のいずれかに記載の山留め合成壁の構築方法において、
第1の工程の後、全ての工程が終了するまで、前記山留め壁本体の背面側の水位を低下させることを特徴とする山留め合成壁の構築方法。
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