JP4329006B2 - 皮下埋め込み式アクセスポート - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
インプラント可能な人体(又は動物)の血管へアクセスする装置(ポート)、特に、透析あるいは血漿交換に必要とされる流量を可能にするたのアクセス装置(ポート)に関する。
【0002】
【従来の技術】
皮下埋め込み式アクセスポートは広く普及している装置であり、一般的に薬液注入用に用いられる。皮下埋め込み式アクセスポートの他の用途として提唱されているのが人工透析用のものである。人工透析用アクセスポートはアメリカですでに開発され、実際の医療現場でも用いられるようになった。このことにより人工透析患者は動脈静脈シャントを形成することなく、皮下に埋め込まれた血管アクセスポートに体表より針を刺すことでの人工透析が可能になった。一般に薬液注入用のポートはシリコンの膜(セプタム)に針を穿刺し体腔とのアクセスルートを確保する。その場合、シリコン膜は薄く、自己修復力、耐久性に限界があるために21ゲージ以上の細い針を使用しないとシリコン膜に穴があき、液漏れの原因となってしまう。一方、一般に人工透析は150ml/分以上(特に欧米では400ml/分程度)の流量を得るために18ゲージ以下の太い針を使用する。このために従来のシリコンの膜を使用した場合、21ゲージ以上の細い針では有効な流量が得られず、さらに血球破砕、溶血などの合併症の危険が高くなるためシリコン膜を使用しないポートが提唱されている。しかし、シリコン膜を使用しないアクセスポートはピンホール状のアクセスルートに体表から穿刺針を挿入しアクセスするために針の固定性と針抜去後に生じるポート内への血液逆流を防止するための逆流防止機構が必要である。
【0003】
シリコン膜を使用しない逆流防止機構を有したアクセスポートは以前から提唱されており、アメリカのバイオリンク社(特願平10−501557)、バスカ社(特願平10−534589)がすでに実用化している。しかし両社のアクセスポートはアクセス針の固定性、安定性の問題を抱えている。アクセス針の固定性に関してであるが、透析に必要な血流量は150ml/分以上であるためにポート内圧が上昇することにより単にポートのアクセス穴にアクセス針を挿入しただけでは刺したアクセス針が外れてしまう危険性が高い。ポートに刺したアクセス針が外れた場合には透析回路を止めない限り大出血の惨事になる。そのためにもアクセス針がポートから抜けるという事態は絶対に避けなければならない。そのためにはアクセス針のロック・固定システムの確立が必要とされる。バイオリンク社、バスカ社のポートはアクセス針のロック・固定システム、逆流防止機構の全てをポートの内部に備えている。そして、それらのアクセス針のロック・固定システムの方式はポート内でアクセス針を周りから締め付けることでアクセス針が抜けないようにしているものである。このシステムはアクセス針のロック・固定システムとアクセス針との間の摩擦力に依存するために、装置が新しい時には安全性がある程度保証される。しかし、通常の人工透析では一年に100回以上使用するために、何年も経過したポートでは安全性の保証が低い。他の方式として、ポートに刺したアクセス針を皮膚面にテープで固定する方法もあるが、固定したテープが外れたり、ポートの皮下での動揺に伴ってアクセス針がポートから外れてしまう危険性が非常に高い。さらにアクセス針のロック・固定システムをポート内に組み込むと、必然的にアクセス針のロック・固定システムと逆流防止機構がポート内に作られることになり、ポートの内部構造が非常に複雑にならざるを得なかった。さらにその場合にはアクセス針のロック・固定システムと逆流防止機構をポート内に作成するためポート自体のサイズが非常に大きくなってしまい皮下に埋め込んでいるものの外観上目立ってしまい、ポートを埋め込むことに対する美容上の問題が生じた。さらにはポートのサイズが大きいために美容上の問題だけではなく留置時の侵襲が大きく、留置後も患者の違和感を生じたり、疼痛を来しうる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
従来のシリコン膜を使用しないアクセスポートはアクセス針のロック、固定システム(以下、ロック手段)をポート本体内に設けていたためにロック手段の交換が不可能であり、ロック手段自体が劣化すればポートの交換の必要があった。また従来のロック手段は針を周りから締め付ける構造のものであり、針の固定性は針と締め付けるものとの間の摩擦力に依存するために針固定のための摩擦力が確実とは言えず、特にポートを透析に使用する場合には流量が150ml/分以上であるために内圧の上昇に耐え得るようなロック手段とは言えず危険極まりない状況であった。また長年使用したものは装置の劣化が生じるため安全性が低くさらに危険度が増していた。そのために安全に、安心して長期間使用できるアクセスポートの実現が第一の課題である。
【0005】
次に、ポート内にロック手段、逆流防止機構の全てを設けるためにポート自体の大きさも薬液注入用のポートよりもサイズが大きくなってしまい、美容上の問題が大きく、更には留置時の侵襲、留置後の疼痛が問題であった。そのために極力サイズを小さくし、外観上目立たず、留置時、後の苦痛を極力抑えたアクセスポートの実現が第二の課題である。
【0006】
次に、シリコン膜を使用しないアクセスポートには抜針した際に生じる逆流を防ぐための逆流防止機構が不可欠である。ポート内にロック手段と逆流防止機構の全てを装備した場合には、スムーズにアクセスが行われるために逆流防止機構と針固定機能をうまく連動させる必要がある。このために非常に複雑な内部構造にならざるを得ず、実現には甚大な技術を要した。そのためポート自体の単価も上昇し現在を取り巻く高額医療の問題を解消するには程遠いデバイスにならざるを得なかった。そのために非常に単純な構造で、技術的にも容易なアクセスポートの実現が第三の課題である。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明におけるアクセスポートは、透析あるいは血漿交換などの液体の体外処理の目的で脱液、返液(供液)を行うため、あるいは体内より液体を抽出したり、体内に液体を供給したりするために直接的、あるいは間接的に血管などの組織に接合された皮下埋め込み式アクセスポートである。本装置は体表より装置のアクセスルートにアクセス針を刺すことによって血管、腹腔などの標的臓器に断続的にアクセスできるようにする。
【0008】
本発明におけるアクセスポートの基本構造として、ポートはアクセス針、アクセス管、あるいはそれに準ずるものによる繰り返しのアクセスが可能なアクセス口と、アクセス針等が侵入するためのアクセスルートと、非アクセス時にポート内への逆流を防止するための逆流防止機構と、アウトレットと、アクセスルートとアウトレットをつなぐ中継路とを備える。即ち、ポートは基本的にアクセス口とアクセスルート、逆流防止機構、中継路、アウトレットを備える。本発明においては脱液用、返液(供液)用として二つのアクセスルートを有するポートを使用することが望ましい。二つのアクセスルートは基本的に独立して別々のアウトレットに中継される。
【0009】
ポートのアウトレット部には、カテーテル、またはカニューレ等の標的臓器との連絡を維持するためのチューブが取り付けられ、チューブの先端は血管あるいは腹腔など液体処理の標的臓器内に位置される。
【0010】
ポートは逆流防止機構が開放した状態に於いてアクセス口からアクセスルート、逆流防止機構、中継路、アウトレットにかけて内腔が連続しており、液体の流れが可能である。またアクセス口はポート内のアクセスルートのポート外面への開口部であり、アクセス針によるポートへのアクセスを可能にする。即ち、アクセス針はアクセス口からアクセスルートへと挿入される。さらにアクセス口からアクセスルート、逆流防止機構、中継路、アウトレットにかけての内腔は実質的に直線構造であるか、緩やかな曲線構造、あるいは屈曲、湾曲した構造であることが望ましく、さらにはポート内腔の変化はほとんどなく、流抵抗を極力抑えたアクセスポートであることが望ましい。
【0011】
さらにはポートにアクセス針を挿入した状態でもアクセス針からアクセスルート、逆流防止機構、中継路、アウトレットにかけての内腔は実質的に直線構造であるか、緩やかな曲線構造、あるいは屈曲、湾曲した構造であることが望ましく、さらにはポート内腔の変化はほとんどなく、流抵抗を極力抑えたアクセスポートであることが望ましい。
【0012】
アクセスポートにアクセス針を挿入した状態でも、抜去した状態でもポート内へ液体が逆流したり、あるいはポート外へ液体が流出したりしないことが望ましい。具体的にはポートにアクセス針を挿入した状態で、逆流防止機構、アクセスルートをはじめとするポート本体とアクセス針との間の密閉性が必要である。また具体的にはポートにアクセス針が挿入されていない状態での逆流防止機構をはじめとするポート本体、ポートに接続するカテーテルなどのチューブ、およびそれらのポート接続部の密閉性が必要である。特に逆流防止機構はアクセス針がポートに挿入されていない時、即ち非アクセス時には、密閉性を確立し、体腔とアクセスルートを遮断し、ポート外に液体が流出しないようにするものでなくてはならない。
【0013】
またアクセスポートはポートに挿入されたアクセス針が偶発的に抜去されてしまわないために、アクセス針をロック・固定する手段を必要とする。そのため本発明では、アクセス針のロック手段をポート外に設けることを提唱する。ポート外でアクセス針を確実に固定するために、2本のアクセス針を平行ではなく角度を成してそれぞれポートのアクセスルートに刺す。即ち、2本のアクセス針の成す角度が1度から359度の範囲内になるようにポートの二つのアクセスルートが配設される。角度を成して刺した2本のアクセス針は体外にて頑丈なプレートなどの固定具に確実に固定される。2本のアクセス針の成す角度は10度から180度が好ましい。さらに好ましくは20度から150度である。
【0014】
このことで2本のアクセス針は抜けようとする力が針と固定具とポートを介してお互いに打ち消され、プレートにアクセス針を固定している限り、アクセス針は決して抜けることがない。2本のアクセス針を挿入した状態でアクセス針が成す角度が変化しないようにポート本体、アクセスルート、アクセス針、前記固定具を含め強固な構造でなくてはならない。また、固定具はポートに挿入したアクセス針が抜けない範囲で、アクセス装置にかかる衝撃を吸収できるような構造体でも構わない。
【0015】
具体的にはアクセス針とアクセス針の固定具はアクセス針の幹部に設けられた突起構造(あるいは陥凹構造)と固定具に設けられた陥凹構造(あるいは突起構造)によって互いが確実に固定される。またアクセス針を固定具に固定する方法は確実に固定できる方法であれば前記方法の限りではない。アクセス針と固定具は強固な材質であり、人為的力によって容易に損傷されることがない。アクセス針はポートに体表から挿入された後、固定具に突起、陥凹構造(あるいは陥凹、突起構造)によって確実に装着される。より固定を十分にするためにアクセス針固定用カバーにて固定具とアクセス針は確実に固定する。また固定具は単一のものでも、複数のピースに分かれたものでも構わない。複数のピースに分かれたものは、それぞれにアクセス針を固定し、複数のピースを結合させる。固定具の針固定面には固定されるアクセス針の形状に合わせて溝が設けられていることが好ましい。この溝に沿って固定することでアクセス針とプレートがなす角度は人為的力によって変化することがない。
さらに好適には固定具に固定されたアクセス針が容易に外れないようにアクセス針のカバー部材を備えた固定具であることが望ましい。
【0016】
ポートに挿入された2本のアクセス針はお互いが一定以上の角度を有するためにポートの軸に対して直角な方向の力はお互いが固定具を介して打ち消し合う。またポートの軸に対して平行な方向の力は針とポート本体によって吸収される。すなわちポート、針、固定具に針が抜けようとする力を分散させる。さらにアクセス針のなす角度が0度から180度に近付くに従って、針が抜けようとする力をプレートを介して打ち消す割合が高くなる。またアクセスルートに挿入され固定具に固定されたアクセス針が人為的外力によって動揺しないために、アクセス針は十分な深さまでポート内に挿入され、さらにはアクセスルートの内径はアクセス針の外径とほぼ等しく密着していなくてはならない。
【0017】
アクセスルートからアウトレット部とその中継路は流抵抗を減ずるために、前述のごとく、直線あるいは緩やかな曲線で連続している。また、ポート出口と液体ルートが直線の場合には脱液用と返液(供液)用のルートが立体的に交叉する形式をとっても構わない。
【0018】
また本発明におけるアクセスポートはポート内に逆流防止機構を装備する必要がある。逆流防止機構はアクセス針、アクセス管、あるいはそれに準ずるものをアクセスポートに挿入−抜去することによって開−閉するバルブ構造体、アクセス針を挿入−抜去することによって開放−クランプする導管クランプ体のいずれの方式でも構わない。
【0019】
逆流防止機構はアクセス針、アクセス管、あるいはそれに準ずるものが直接的触れることによって開閉する前記逆流防止機構、あるいは間接的に開閉するリンク機構を有した前記逆流防止機構のいずれの形式でも構わない。これらの具体的な例としては、アクセス針が直接的に逆流防止弁を開放する形式を提唱しているバイオリンク社(特願平10−501557)のもの、アクセス針を挿入することによってリンク機構を介してクランプされた導管が開放される形式を提唱しているバスカ社(特願平10−534589)のものが好例である。またその他にも逆流防止機構は、アクセス針あるいはそれに準ずるものを挿入することによって液体の流れが可能になり、抜去することによって液体の流れが阻止される構造体であればどのような形式でも構わない。
【0020】
本発明における逆流防止機構はアクセス針のロック手段を具備する必要がなく、ごくシンプルにアクセス針を挿入すれば開放し、アクセス針を抜去すれば閉鎖するという機能だけを有したものでも構わない。
【0021】
また、より安全なアクセスを実現するためには、ポートの逆流防止機構として、二つのアクセスルート共にアクセス針が挿入されている場合、あるいは二つのアクセスルートに同時にアクセス針が挿入される場合に二つのアクセスルートに属する逆流防止機構が共に開放するポートであることが望ましい。またこの場合には一方のルートにしかアクセス針が挿入されていない場合には逆流防止機構は閉鎖していることが望ましい。
【0022】
より具体的には、二つのアクセスルートに属する逆流防止機構を一体化、あるいは連結、あるいは連動させることによって、二つのアクセスルート共にアクセス針が挿入されている場合、あるいは二つのアクセスルートに同時にアクセス針が挿入される場合に二つのアクセスルートに属する逆流防止機構が共に開放するポートであることが望ましい。また好適には、二つのアクセスルートに挿入されたアクセス針のうち、一方のアクセス針がアクセスルートから抜去されても二つの逆流防止機構が共に閉鎖する機能を備えたポートでも構わない。
【0023】
これらの具体的な例としては、デュアルポートにおいて一方のアクセス針が抜去されるとリンク機構を介して他方のアクセスルートに属する逆流防止機構が閉鎖するという形式を提唱しているバスカ社(特表2001ー525701)のものが好例である。
【0024】
また好適には、逆流防止弁にはアクセス針が挿入しやすくするためにアクセス針の先端の形状と合致する構造があることが望ましく、その構造によって無駄なくアクセス針を挿入する力を逆流防止弁に伝えることができ、効率良く逆流防止弁の開閉ができる。
【0025】
また好ましくは、ポートはポート内にある一定以上にアクセス針が進入しないための構造体を備えていることが望ましく、同構造体はアクセスルート、逆流防止機構、アクセスルートとアウトレットを結ぶ中継路のいずれかに配設され、同構造体によって一定の深さだけポート内にアクセス針が挿入される。アクセス針進入防止のための構造体はアクセス針の外面に合致するような構造、例えばアクセス針の厚みの分だけポート内腔が狭小化した形式のものでも、ポート内腔がテーパー状に先細ることによってアクセス針の進入を防止する形式のものでも構わない。これらの具体的な例としては、アクセス針の先端に合致するような構造でアクセス針の進入を防止する形式を提唱しているバイオリンク社(特願平10−501557)のものが好例である。
【0026】
さらにポートの好適な構造として、アクセスルートに接する胴部にはアクセス針が皮下組織に刺さることなく確実にアクセス口からアクセスルートへと挿入されるように、アクセス口の周囲にアクセス針ガイドが配設されることが望ましい。アクセス針ガイドにはアクセス針がアクセス口からアクセスルートに誘導されやすくするための溝が設けられていることが望ましい。また該溝はアクセスルートと連続しており段差がなく滑らかにアクセスルートに移行することが望ましい。体表より刺したアクセス針は前記アクセス針ガイドに設けられた該溝に沿って進めていけばアクセスルートにアクセス針が確実に挿入される。即ち該アクセス針ガイドと該溝があることにより、皮下に埋め込まれ体表から確認できないポートへのアクセスが容易になる。
【0027】
具体的な例としては、該アクセス針ガイドがアクセス口周囲のポート胴部底面側に円板状にアクセス針ガイドが突出しており、さらに同ガイドにはアクセス針がアクセス口からアクセスルートへと誘導されやすくするための溝が設けられているために、アクセス針のアクセスルートへの進入が容易になる。
【0028】
また体表からアクセスルートにアクセス針を挿入するにはピンポイントで狙う必要がある。そのためにアクセスルートの位置を体表から知るためのマーカーとしてポート胴部に突起物、あるいは陥凹物などの加工を施されていることが望ましい。本マーカーを体表から間接的に触れることで針挿入部の位置が把握できる。これにより、より確実なアクセスルートへのアクセス針のアクセスが可能になる。またポートのアクセスルートは皮膚面から穿刺、挿入しやすいように皮膚面に対してやや斜め上方を向いて配設されることが望ましい。
【0029】
またポートのアクセス口、アクセスルート、逆流防止機構はアクセス針がスムーズに通過するようにアレンジされていることが望ましい。本発明のアクセスポートではポート外にアクセス針のロック・固定機構を設けるために、ポート内ではアクセス針がロック・固定される必要がない。そのため、アクセス針はポート内でスムーズに通過することが望ましく、またこれによって、より円滑なポートへのアクセスが可能になる。該アクセス針がスムーズに通過するためのアレンジの手段として、ポートのアクセス口、アクセスルート、逆流防止機構の表面にアクセス針との摩擦抵抗を減ずるようなコーティングがなされていても構わない。
【0030】
また別の形式の該アクセス針がスムーズに通過するためのアレンジの手段として、ポートのアクセス口、あるいはアクセスルート内にボール状あるいは車輪状等の回転体を設け、該回転体の回転によってアクセス針がスムーズに通過するようなシステムでも構わない。
【0031】
またポートの胴部は容易に針を通さない材質であり、また人為的外力によっても容易に変形しないような材質である。
【0032】
またアクセスルート、逆流防止機構、その他ポート内構造体はアクセス針による頻回なアクセスに耐えられるような材質である。
【0033】
またアクセス針を抜去する際にはポート内、カテーテル内を抗凝固剤で補填しアクセス針を抜去する。
【0034】
アクセスポートは皮下に埋め込まれることが望ましいが、ポートの一部が体外に露出しても構わない。
【0035】
また本アクセスシステムに使用するアクセス針はシングルルーメンの中空の針構造体、あるいは内套−外套形式の針構造体のいずれの形式でも構わない。内套−外套形式の場合の内套は中空構造、あるいは中空がない構造のいずれの形式でも構わない。
【0036】
ここでは透析用として適した二つのアクセスルートを有した本発明の例を挙げて説明したが、その他の用途として二つ以上のアクセスルートを有したポートに2本以上のアクセス針を刺し、そのうちの2本以上のアクセス針が1度以上359度以下の角度をなし、いずれかから選択される2本以上のアクセス針を同時に固定具に固定するものは全て本発明に含まれる。また固定具に固定する際には非平行な2本のアクセス針と同時に平行なアクセス針を固定しても構わない。
【0037】
さらには一つ以上のアクセスルートを有する二つ以上のポートを、直接あるいは間接的に結合させることで、その中から選択される二つ以上のアクセスルートが1度以上359度以下の角度をなすような形式でも構わない。
【0038】
また本装置においては任意のルートを脱液ルート、返液(供液)ルートとしても使用可能である。例えば全てのルートを脱液ルートあるいは返液(供液)ルートとして使用できる。また、必要に応じて脱液ルート、返液(供液)ルートを区別して使用できる。
【0039】
また本発明は血液透析、腹膜透析、血漿交換、体液体外処理、体外循環等の液体処理においてのみならず薬液注入、ドレナージ等にも利用できることは言うまでもない。即ち、体内から液体を抽出したり、体内へ液体を供給したりするシステムには全て本発明が利用できる。
【0040】
本発明の装置を使用する場合の流量には特に制限がないが、50ml/分から500ml/分が好ましく、さらに好ましくは100ml/分から250ml/分である。
【0041】
【発明実施の形態】
以下、本発明の実施の形態として実施例を図1から図7に基づいて説明する。
【0042】
図1から図4は本願発明におけるポート1の好適な実施例を示している。ポート1のアクセス口3からハウジング1Aの内部へとアクセスルート2が連続しており、ポート1の二つのアクセスルート2(第1アクセスルート2.1、第2アクセスルート2.2)が約120度を成すように配設されている。ポート1は体表よりのアクセス針8(第1アクセス針8.1、第2アクセス針8.2)でのアクセスが可能な二つのアクセス口3(第1アクセス口3.1、第2アクセス口3.2)と、それぞれのアクセス口3(第1アクセス口3.1、第2アクセス口3.2)に対応したアウトレット6(第1アウトレット6.1、第2アウトレット6.2)を備える。ポート1にはアクセス針8が容易にアクセス口3に挿入されるための手段としてアクセス針ガイド4がポート1底面側より突出している。アクセス針ガイド溝はアクセス針ガイド4の溝であり、このアクセス針ガイド溝5によりスムーズにアクセス針8(第1アクセス針8.1、第2アクセス針8.2)がアクセス口3(第1アクセス口3.1、第2アクセス口3.2)へとアクセスできるようになっている。アクセス針ガイド溝とアクセス口、アクセスルートは段差がないようにスムーズに連続している。
【0043】
図5、6は本願発明におけるアクセス針8(第1アクセス針8.1、第2アクセス針8.2)とアクセス針固定用部材10の好適な実施例を示している。アクセス針8の基部付近にはアクセス針固定用部材取付部9(第1アクセス針固定用部材取付部9.1、第2アクセス針固定用部材取付部9.2)がある。アクセス針固定用部材取付部9はアクセス針固定用部材10のアクセス針固定部11(第1アクセス針固定部11.1、第2アクセス針固定部11.2)と合致するような構造である。また、アクセス針固定用部材10にはアクセス針8を固定するためのアクセス針固定部11(第1アクセス針固定部11.1、第2アクセス針固定部11.2)がある。さらに、アクセス針固定用部材取付部9とアクセス針固定部11は凹凸構造、切り欠き構造、あるいはカバー部材等によってお互いが確実に固定されていても構わない。
【0044】
図7は好適な本願発明の実施形態である。約120度を成す二つのアクセスルート2(第1アクセスルート2.1、第2アクセスルート2.2)に挿入されたアクセス針8(第1アクセス針8.1、第2アクセス針8.2)はアクセス針固定用部材10によって固定されている。このことでアクセス針8が抜けようとする力がポート1とアクセス針固定用部材10とアクセス針8によって打ち消される。ポート1に接続されたカテーテル7は二つのルーメンを有し、それぞれのアクセスルート2に対応している。また、カテーテル7の他端は身体管腔内に位置される。
【0045】
またこれ以外にも、カテーテル7は一つのルーメンを有するもの二本であり、それぞれのアウトレット6に独立して接続されていても構わない。さらに、二本のカテーテル7の他端が同一血管内に配置される場合には、返血が脱血に極力混ざることなく効率的に脱血を行うために、血流に対して脱血ルートのカテーテル先端が返血ルートのカテーテル先端よりも上流に位置していることが望ましい。
【0046】
ポートの逆流防止機構はアクセス針が直接的に逆流防止弁を開放する形式を提唱しているバイオリンク社(特願平10−501557)のもの、あるいはアクセス針を挿入することによってリンク機構を介してクランプされて導管が開放される形式を提唱しているバスカ社(特願平10−534589)のものを踏襲することが望ましい。
【0047】
またその他にも、逆流防止機構はアクセス針が挿入されることによって流体の流れが可能になり、アクセス針を抜去することによって流体のながれが阻止される構造体であれば、この限りではない。
【0048】
また、より安全なアクセスを実現するために、バスカ社(特表2001−525701)が提唱するようにデュアルポートにおいて一方のアクセス針が抜去されると、リンク機構を介して他方のアクセスルート2に属する逆流防止機構が閉鎖するという方式を採っても構わない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本願発明の好適なポート1本体の実施例を示す平面図である。
【図2】アクセス口3からポート1内部へと続くアクセスルート2を点線で示してある。
【図3】本願発明の好適なポート1本体の実施例を示す側面図である。
【図4】図2におけるA−A’線に沿った断面図である。また、アクセス口3からアクセスルート2に挿入されるアクセス針8を示してある。
【図5】本願発明の好適なアクセス針8の実施例を示す平面図である。
【図6】本願発明の好適なアクセス針固定用部材10の実施例を示す平面図である。
【図7】本願発明の好適な実施形態を示す平面図である。
【符号の説明】
1 ポート
1A ハウジング
2 アクセスルート
2.1 第1アクセスルート
2.2 第2アクセスルート
3 アクセス口
3.1 第1アクセス口
3.2 第2アクセス口
4 アクセス針ガイド
4.1 第1アクセス針ガイド
4.2 第2アクセス針ガイド
5 アクセス針ガイド溝
5.1 第1アクセス針ガイド溝
5.2 第2アクセス針ガイド溝
6 アウトレット
6.1 第1アウトレット
6.2 第2アウトレット
7 カテーテル
8 アクセス針
8.1 第1アクセス針
8.2 第2アクセス針
9 アクセス針固定用部材取付部
9.1 第1アクセス針固定用部材取付部
9.2 第2アクセス針固定用部材取付部
10 アクセス針固定用部材
11 アクセス針固定部
11.1 第1アクセス針固定部
11.2 第2アクセス針固定部
Claims (11)
- 身体管腔に経皮的にアクセスするためのアクセスポート(1)であって、
アクセス針(8)とのアクセス口(3)とアウトレット(6)を形成し、
前記アクセス口(3)は、第1アクセス口(3.1)と第2アクセス口(32)とからなり、
前記アウトレット(6)は、前記アクセス口(3)に対応して、第1アウトレット(6.1)と第2アウトレット(6.2)からなり、
ハウジング(1A)内に、前記第1アクセス口(3.1)と前記第1アウトレット(6.1)と連通する第1アクセスルート(2.1)と、前記第2アクセス口(3.2)と前記第2アウトレット(6.2)と連通する第2アクセスルート(2.2)とを形成し、
前記第1アクセス口(3.1)と前記第2アクセス口(3.2)に、それぞれ前記第1アクセス針(8.1)と前記第2アクセス針(8.2)を、10度から180度の角度を有するように、接続して配置し、
前記第1アクセス針(8.1)と前記第2アクセス針(8.2)の途中に、それぞれに対応する第1アクセス針固定用部材取付部(9.1)と第2アクセス針固定用部材取付部(9.2)を装着し、
当該第1アクセス針固定用部材取付部(9.1)と当該第2アクセス針固定用部材取付部(9.2)に、第1アクセス針固定部(11.1)と第2アクセス針固定部(11.2)を形成したプレート状のアクセス針固定用部材(10)を取り付けて、それぞれ前記第1アクセス針(8.1)と前記第2アクセス針(8.2)を、前記第1アクセス口(3.1)と前記第2アクセス口(3.2)と同様の、角度を維持できるように形成し、
前記第1アクセス口(3.1)と前記第2アクセス口(3.2)に、それぞれ第1アクセス針ガイド(4.1)と第2アクセス針ガイド(4.2)を形成し、
当該第1アクセス針ガイド(4.1)と第2アクセス針ガイド(4.2)に、前記第1アクセス針(8.1)と前記第2アクセス針(8.2)が、前記第1アクセス口(3.1)と前記第2アクセス口(3.2)から、前記第1アクセスルート(2.1)と前記第2アクセスルート(2.2)に誘導されやすくするための第1アクセス針ガイド溝(5.1)と第2アクセス針ガイド溝(5.2)を設け、
当該第1アクセス針ガイド溝(5.1)と当該第2アクセス針ガイド溝(5.2)は、前記第1アクセスルート(2.1)と前記第2アクセスルート(2.2)に連続して、段差がなく滑らかに当該第1アクセスルート(2.1)と当該第2アクセスルート(2.2)に移行することができるように形成した、ことを特徴とする皮下埋め込み式アクセスポート(1)。 - 二つの前記アクセスルート(2.1、2.2)に開閉可能な逆流防止機構を含んでおり、その逆流防止機構は前記アクセス針(8.1、8.2)の挿入によって開放され、当該アクセス針(8.1、8.2)内での液体の流れを可能にし、当該アクセス針(8.1、8.2)を抜去することで密閉状態になるような逆流防止機構を含んでいることを特徴とする請求項1に記載の皮下埋め込み式アクセスポート(1)。
- 前記逆流防止機構がバルブ構造である請求項2記載の皮下埋め込み式アクセスポート(1)。
- 前記逆流防止機構が可撓性のある導管をクランプした構造である請求項3記載のアクセスポート(1)。
- 前記アクセス針(8.1、8.2)が直接接触することで開放する逆流防止機構であることを特徴とする請求項2から4いずれか1項に記載の皮下埋め込み式アクセスポート(1)。
- 前記アクセス針(8.1、8.2)の挿入によってリンク機構を介して間接的に開放する逆流防止機構をさらに含んでいることを特徴とする請求項2から4のいずれか1項に記載の皮下埋め込み式アクセスポート(1)。
- 2本の前記アクセス針(8.1、8.2)が同時にそれぞれの前記アクセスルート(2.1、2.2)内に存在することによって開放する逆流防止機構を含んでいることを特徴とする請求項2から6のいずれか1項に記載の皮下埋め込み式アクセスポート(1)。
- 2本の前記アクセス針(8.1、8.2)を同時にそれぞれの前記アクセスルート(2.1、2.2)に挿入することによって開放する逆流防止機構を含んでいることを特徴とする請求項2から6のいずれか1項に記載の皮下埋め込み式アクセスポート(1)。
- 2本の前記アクセス針(8.1、8.2)のうち一方でも前記アクセスルート(2.1、2.2)に存在しない時に二つの前記アクセスルート(2.1、2.2)が閉鎖する逆流防止機構を有していることを特徴とする請求項2から8のいずれか1項に記載の皮下埋め込み式アクセスポート(1)。
- 皮下埋め込み式アクセスポート(1)内に一定以上の前記アクセス針(8.1、8.2)が侵入しないための進入阻止機能をさらに含んでいることを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の皮下埋め込み式アクセスポート(1)。
- 前記アクセス針固定用部材(10)で固定した前記アクセス針(8.1、8.2)をカバーするようなカバー部材を含んでいる請求項1から10のいずれか1項に記載の皮下埋め込み式アクセスポート(1)。
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