JP4326200B2 - ブローダウンタンク - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、気液二相流体を気体と液体に分離する気液分離タンクに関し、特に原子力発電プラントに用いられるブローダウンタンクに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
飽和蒸気等の気液二相流体を気体と液体に分離する方法として、円筒形タンクの円筒壁内面の円周接線方向に流体を流入し、円筒壁内面に沿って旋回流を発生させる方法が広く用いられている。この方法は、気液二相流体が旋回流になると、比重の大きい液滴は遠心力により円筒壁内面に当たり落下して液相となり、比重の軽い気体は上部に集まり気相となり、気体と液体とを分離する方法である。これにより気液二相流体は分離され、気体はタンク上方より排出され、液体はタンク下方より排出される。ここで、タンク内に滞留する液相は旋回しているためタンク中心の液位が低下しており、液相に蒸気泡を巻き込むキャリーアンダ現象が生じて、タンク下方より排出される液体に蒸気泡が混入する場合がある。このように、蒸気泡が液体に混入すると、蒸気泡がつぶれる際に蒸発潜熱が発生し、液体が加熱され、本来タンク上方から蒸気として取り出す熱量が減ってしまう。
【0003】
そのため、特許文献1では、旋回流を減少させるために、ドレン溜内に設けられたじゃま板が従来例として紹介されている。また、タンク円筒下部に設けられた下部ノズルから、上部ノズルと反対回りに液体を流入させて、液相内の旋回流を減少させ、気泡の巻き込みを防止する発明が開示されている。
また、特許文献2では、ドレン溜内に縦向きに十字型の旋回流防止板が配置され、ドレンの旋回を抑え、ドレンの水面が揺動せずドレンレベルの制御を容易にする発明が開示されている。さらに、ドレンの水面の上位には、タンク中心付近に円板状の仕切板が設けられ、ドレン溜のドレンが蒸気となって持ち去られるのを防止している。
【0004】
【特許文献1】
特開平10−57710号公報(第2−3頁、図1,3)
【特許文献2】
実開平6−29613号公報(第2頁、図1,2)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特許文献1に記載された発明では、新たに下部ノズル及びポンプを設ける必要があり、さらに、下部ノズルから逆向きに流入させる旋回流の流量を制御するためのポンプ制御部も必要となり、コストの高い装置になってしまうという問題点がある。
また、特許文献2に記載された発明のように、ドレン溜内に旋回流防止板を設けたのでは、ドレンの速度の速い旋回流を旋回流防止板が直接受け止めるので、旋回流防止板が振動したり破損するという問題点がある。
【0006】
この発明は、このような課題を解決するためになされたもので、ドレン溜内での旋回流の発生を防止し、ドレンにより生じるキャリーアンダ現象による熱量損失を防止することができるブローダウンタンクを、容易な構造で且つ低コストで提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
この発明に係るブローダウンタンクは、上部に気液二相流体を導入する二相流体供給口を有する気水分離室及び下部にドレン溜を有し、内周面の周方向に気液二相流体を導入して蒸気とドレンとに分離するブローダウンタンクにおいて、二相流体供給口より下方で且つドレン溜のドレンの水面より上方に位置し、ブローダウンタンク内周面に環状に形成され、タンク本体の内周面からタンク本体の中心に向かって半径方向に延びる底面部と底面部の一端から垂直に立設する側面部からなり上方が開口した箱状体と、箱状体の底面部に固定されドレン溜の水面下まで延びる下降管とを有し、気水分離室で分離されたドレンの旋回を抑制する旋回緩衝部材を備えたことを特徴とするものである。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下に、この発明の実施の形態、その他の形態、及び変形例を図面に基づいて説明する。図中、同一符号は、同一又は対応部分を示すものとする。
その他の形態1.
図1に示されるように、このその他の形態1に係るブローダウンタンク1は、蒸気発生器(以下SGと略す)ブローダウンの熱回収用に用いられるタンクであり、略円筒状であって、胴部2a、底部2b、頂部2cを有するタンク本体2を備えている。その底部2bには液体排出管3,頂部2cには気体排出管4が接続されている。胴部2aには気液二相流体であるSGブローダウン水5をブローダウンタンク1内に供給する二相流体供給管6が設けられている。二相流体供給管6は、タンク本体2との接続部に、円筒内周接線方向に向いた二相流体供給口7を備えている。タンク本体2の内部には、上部にブローダウン水5が気体と液体に分離される気水分離室8が形成され、下部に分離された液体であるドレン9が溜まるドレン溜10が形成されている。
【0010】
また、タンク本体2の内周面2dであって、二相流体供給口7より下方で且つドレン溜10のドレン面9aより上方には、上方が開口した箱状体であるドレン受けボックス11が設けられている。図2(a)及び(b)に詳細に示されるように、ドレン受けボックス11は、内周面2dに沿って環状に設けられ、タンク本体2の内周面2dからタンク本体2の中心に向かって半径方向に延びる底面部11aと、底面部11aの一端から垂直に立設する側面部11bとを備えている。底面部11a及び側面部11bは、タンク本体2の内周面2dに沿って周全体に亘って形成されている。
【0011】
次に、その他の形態1に係るブローダウンタンク1の作用を図1に基づいて説明する。
二相流体供給管6からタンク本体2内に導入されたブローダウン水5は、矢印12に示すような旋回流となり、内周面2dに沿って落下しながら蒸気13とドレン9とに気水分離される。ブローダウン水5のうち、分離された蒸気13は気体排出管4から排出される。また、内周面2dにあたって液滴となったドレン9は、旋回しながらドレン受けボックス11に滞留する。ドレン受けボックス11内に入ったドレン9は徐々に旋回速度が減少した後、ドレン受けボックス11の上方からあふれ出し、ドレン溜10内に落下する。ドレン溜10内に落下したドレン9は旋回速度成分が失われているので、ドレン溜10内に旋回流が発生するのが抑制される。これにより蒸気の巻き込みが防止され、キャリーアンダ現象による熱量損失を防止できる。このような容易な構造で且つ低コストのドレン受けボックス11が、ドレン9の旋回を抑制する旋回緩衝部材として機能し、液体排出管3からの熱量損失を防止できるため、ブローダウンタンク1自体の気水分離効率を改善でき、ブローダウンタンク1の小型化を図ることができる。
【0012】
その他の形態2.
次に、図3を参照しながら、ブローダウンタンクのその他の形態2を説明する。この形態の特徴部分であるドレン受けボックス21は、図1に示したその他の形態1と同様に、環状に形成された底面部11a及び側面部11bを有する箱状体から構成され、さらに、底面部11aには、周方向に約60°の間隔をおいて、排出孔22としての貫通穴が設けられている。
【0013】
このように形成されたドレン受けボックス21の作用を説明する。前述したように、ブローダウン水5のうち、内周面2dにあたって液滴となったドレン9は、旋回しながらドレン受けボックス21に滞留する。ドレン受けボックス21内に入ったドレン9は、ドレン受けボックス21に滞留しながら徐々に旋回速度が減少した後、排出孔22を介してドレン溜10に落下する。これにより、ドレン9は、排出孔22を通ってドレン溜10内に徐々に落下するので、ドレン溜10内に旋回流が発生するのをさらに抑制できる。
【0014】
その他の形態3.
次に、図4を参照しながら、ブローダウンタンクのその他の形態3を説明する。この形態の特徴部分であるドレン受けボックス31は、図1に示したその他の形態1と同様に、環状に形成された底面部11a及び側面部11bを有する箱状体から構成され、さらに、周方向に約60°の間隔をおいて配置され、底面部11aに対して垂直な6枚の仕切板32を備えている。
【0015】
このように形成されたドレン受けボックス31の作用を説明する。内周面2dにあたって液滴となったドレン9は、旋回しながらドレン受けボックス31に滞留する。ドレン受けボックス31内に入ったドレン9は、仕切板32に衝突して旋回速度が失われた後、ドレン受けボックス31の上方からあふれ出しドレン溜10内に落下する。このように仕切板32を設けることによりドレン9の旋回を確実に停止できる。
【0016】
本発明の実施の形態.
次に、図5を参照しながら、この発明に係るブローダウンタンクの実施の形態を説明する。この発明の特徴部分であるドレン受けボックス41は、図1に示したその他の形態1と同様に、環状に形成された底面部11a及び側面部11bを有する箱状体から構成され、さらに、底面部11aには、周方向に約60°の間隔をおいて、貫通穴42が設けられている。この貫通穴42には、細長円筒状の下降管43の一端が固定されている。下降管43の他端は、ドレン溜10の水面9aの下方まで延びている。ここで、下降管43は、ドレン溜10の水面9a下まで延びる排出管を構成する。
【0017】
このように形成されたドレン受けボックス41の作用を説明する。ドレン受けボックス41内に入ったドレン9は、ドレン受けボックス41に滞留しながら徐々に旋回速度が減少した後、下降管43を介してタンク本体2の底部2b付近まで導かれる。これにより、ドレン9は、ドレン溜10の水面9aに直接落下しないので、ドレン溜10内にドレン9の流れをさらに安定化させることができ、キャリーアンダ現象がさらに発生しにくくなる。
【0018】
その他の形態4.
次に、図6を参照しながら、ブローダウンタンクのその他の形態4を説明する。この形態の特徴部分である旋回緩衝部材としてのドレン受け板51は、タンク本体2の内周面2dに沿って、環状に水平に形成された板状の底面部材52と、周方向に約45°の間隔をおいて配置され、底面部材52に対して垂直な8枚の仕切板53とを備えている。
【0019】
このように形成されたドレン受け板51の作用を説明する。内周面2dにあたって液滴となったドレン9は、旋回しながら落下してドレン受け板51の底面部材52に流入して底面部材52上を旋回する。底面部材52上を旋回するドレン9は、仕切板53に衝突して旋回速度が失われ後、仕切板53に沿って、タンク本体2の中心側へ移動し、底面部材52の内縁からドレン溜10内に落下する。このように底面部材52上に仕切板53を設けることによりドレン9の旋回を確実に停止できる。
【0020】
その他の形態5.
次に、図7を参照しながら、ブローダウンタンクのその他の形態5を説明する。この形態の特徴部分であるドレン受け板61は、環状に形成された板状の底面部材52と、周方向に約45°の間隔をおいて配置され、底面部材52に対して垂直な8枚の仕切板53とを備えている。さらに、底面部材52には、ドレン溜10の水面9aの下方まで延びる8つのスカート部材62が設けられている。このスカート部材62は、底面部材52に固定される水平フランジ部62aと、この水平フランジ部62aから斜め下方に向かって延びるスカート部62bとから構成される。スカート部62bは、円錐面の一部に相当する湾曲面から構成されている。
【0021】
このように形成されたドレン受け板61の作用を説明する。内周面2dにあたって液滴となったドレン9は、旋回しながらドレン受け板61の底面部材52に流入して旋回する。底面部材52上を旋回するドレン9は、仕切板53に衝突して旋回速度が失われた後、仕切板53に沿って、タンク本体2の中心側へ移動し、さらに、スカート部材62の上を斜めに緩やかに下って、ドレン9の水面9aまで到達する。このように底面部材52からドレン9の水面9aの下方までスカート部材62を設けることにより、ドレン9は、底面部材52からドレン溜10の水面9aまで緩やかに導かれるので、ドレン溜10内のドレン9の流れをさらに安定化させることができ、キャリーアンダ現象がさらに発生しにくくなる。
なお、スカート部材62は、底面部材52から斜め下方に向けて設けたが、これに限定されるものではなく、底面部材52の内縁から水面9aの下方まで垂直に垂らしてもよい。
【0022】
上述した実施の形態、及びその他の形態1〜5に係るブローダウンタンクは、二相流体供給口7より下方で且つドレン溜10のドレン9の水面9aより上方に位置する旋回緩衝部材として、ドレン受けボックス11,21,31,41,ドレン受け板51,61を備えていたが、さらに、これらの実施の形態及びその他の形態に、図8及び9に示すような旋回緩衝部材をドレン9の水面9a下に追加して設けてもよい。
【0023】
図8は、図2に示すその他の形態1に用いられたドレン受けボックス11のほかに、ドレン溜10のドレン9の水面9aより下方に、タンク本体2の内周面2dから中心に向かって延びる矩形の板状体71を追加したものである。板状体71は、周方向に約45°の間隔をおいて配置されている。ドレン受けボックス11から溢れ出てドレン溜10に落下したドレン9に旋回速度が残存していても、この板状体71によりドレン9の旋回速度はさらに減少して、ドレン溜10内の旋回流を確実に抑制することができる。また、気水分離室8において、当初有してしたドレン9の旋回速度は、ドレン受けボックス11により急激に小さくなっているので、板状体71が破損することもない。
【0024】
図9は、図2に示すその他の形態1に用いられたドレン受けボックス11のほかに、ドレン溜10のドレン9の水面9aより下方に、水平棒状体81を追加したものである。水平棒状体81は、水平に配置され且つ一端が内周面2dにより固定されて、他端がドレン溜10の中心で合流する8本の平板状の棒材からなる。
ドレン受けボックス11から溢れ出てドレン溜10に落下したドレン9に旋回速度が残存していても、この水平棒状体81によりドレン9の旋回速度はさらに減少して、ドレン溜10内の旋回流を確実に抑制することができる。
【0025】
なお、気水分離室8におけるドレン9の旋回速度が小さい場合等、状況によっては、図8や図9に示した変形例において、図8の板状体71や図9の水平棒状体81のみを用いることもできる。
また、上述した実施の形態では、原子力発電プラントに用いられるSGブローダウンタンクを例に挙げて説明したが、この発明は、円筒壁内面に沿って旋回流を発生させ気液二相流体を気体と液体に分離する気水分離タンクに広く適用することができる。
【0026】
【発明の効果】
この発明によれば、二相流体供給口より下方で且つドレン溜のドレンの水面より上方に位置し、ブローダウンタンク内周面に環状に形成され、タンク本体の内周面からタンク本体の中心に向かって半径方向に延びる底面部と底面部の一端から垂直に立設する側面部からなり上方が開口した箱状体と、箱状体の底面部に固定されドレン溜の水面下まで延びる下降管とを有する旋回緩衝部材を備えたので、箱状体内に入ったドレンは、箱状体に滞留しながら徐々に旋回速度が減少した後、下降管を介してタンク本体の底部付近まで導かれる。これにより、ドレンは、ドレン溜の水面に直接落下しないので、ドレン溜内にドレンの流れをさらに安定化させることができ、キャリーアンダ現象がさらに発生しにくくなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 その他の形態1に係るブローダウンタンクの正面断面図である。
【図2】 その他の形態1に係るブローダウンタンクの要部を示す図であり、(a)は平面図、(b)は正面断面図である。
【図3】 その他の形態2に係るブローダウンタンクの要部を示す図であり、(a)は平面図、(b)は正面断面図である。
【図4】 その他の形態3に係るブローダウンタンクの要部を示す図であり、(a)は平面図、(b)は正面断面図である。
【図5】 本発明の実施の形態に係るブローダウンタンクの要部を示す図であり、(a)は平面図、(b)は正面断面図である。
【図6】 その他の形態4に係るブローダウンタンクの要部を示す図であり、(a)は平面図、(b)は正面断面図である。
【図7】 その他の形態5に係るブローダウンタンクの要部を示す図であり、(a)は平面図、(b)は正面断面図である。
【図8】 この発明の実施の形態に係るブローダウンタンクの他の変形例を示す図であり、(a)は平面図、(b)は正面断面図である。
【図9】 この発明の実施の形態に係るブローダウンタンクの他の変形例を示す図であり、(a)は平面図、(b)は正面断面図である。
Claims (1)
- 上部に気液二相流体を導入する二相流体供給口を有する気水分離室及び下部にドレン溜を有し、内周面の周方向に気液二相流体を導入して蒸気とドレンとに分離するブローダウンタンクにおいて、
前記二相流体供給口より下方で且つ前記ドレン溜の前記ドレンの水面より上方に位置し、前記ブローダウンタンク内周面に環状に形成され、タンク本体の内周面から該タンク本体の中心に向かって半径方向に延びる底面部と該底面部の一端から垂直に立設する側面部からなり上方が開口した箱状体と、前記箱状体の底面部に固定され前記ドレン溜の水面下まで延びる下降管とを有し、前記気水分離室で分離された前記ドレンの旋回を抑制する旋回緩衝部材を備えたことを特徴とするブローダウンタンク。
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