JP4325839B2 - 光アイソレータ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、主として光通信システムや光計測機器等に用いられる光通信モジュール、半導体レーザモジュール、光増幅器等のパッシブ光デバイスとして好適な光アイソレータに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
光アイソレータは、光ファイバでの光通信技術におけるキーデバイスの1つであり、光通信モジュール、半導体レーザモジュール、光増幅器等において、光路系の光部品からのレーザダイオード光源側への反射戻り光の防止や、光ファイバアンプ内の光の共振の発生を防止するために用いられている。これらの光アイソレータは、レーザダイオード光源と光ファイバとの間、あるいは2本の光ファイバの間に、偏光子、ファラデー回転子、および他の一方の偏光子(検光子とも言う)を組み合わせ、更にファラデー回転子の周囲に上記ファラデー回転子を飽和磁化させるための永久磁石を配設させたものである。
【0003】
具体的に偏波依存型光アイソレータは、例えば「1段型」の場合には、2枚の偏光子の偏光透過方向の相対角度が約45度になるように対面配置させ、それらの偏光子の間に、飽和磁場内で所定の波長においてファラデー回転角が約45度となる厚みを有するファラデー回転子を1枚配置させて、互いに保持固定させたものであり、順方向の光を通過させ、一方で逆方向の光を遮断させる作用を有するものである。
【0004】
そして、上記の光アイソレータに対しては、昨今、小型化及び量産化による低価格化が強く望まれており、製造における組立工数を減じ、あるいは各部品間の光学調整の作業を軽減させるための方策の1つとして、平板状の偏光子と平板状の45度ファラデー回転子と直方体の磁石とを平板状の取り付け基板に設置した構造を有する光アイソレータが提案されている。
【0005】
図8は、その光アイソレータの一例を示す構成概略図である。図8に示すように、従来の光アイソレータ100は、平板状の偏光子1、1と、平板状の45度ファラデー回転子2と、直方体の磁石3、3が、平板状の取付基板4に設置されている構成である(例えば、特許文献1参照。)。
【0006】
【特許文献1】
特開平10−227996号公報 (第2−4頁、第1図)
【0007】
前記光アイソレータ100は組立前において、前記偏光子1、1と、ファラデー回転子2の側面即ち光透過領域に垂直な面に、真空蒸着プロセスによりクロムの金属膜層を成膜した後、その上に金の金属膜層を形成して、半田付けによる固着が可能な状態としてあり、一方で、取付基板4の一面および磁石3、3の一面には、湿式法によりニッケル、金がメッキされて、半田付けが可能な状態としている。そして、半田泊を用いて、還元雰囲気中に一定の温度にて、各光学素子(前記偏光子1、1及びファラデー回転子2)および磁石3、3を取付基板4の面上に組み立て固定している。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、図8に示すような光アイソレータ100は、以下に示す幾つかの問題点があった。
【0009】
まず第一に、偏光子1、1とファラデー回転子2は、それぞれ独立して取付基板4に半田固定されるため、それぞれの側面の面積に応じた固定強度しか得られない。従って薄型の光学素子では固定強度が比較的弱くなり、光アイソレータの衝撃試験で不良となる懸念がある。
【0010】
また、偏光子1、1とファラデー回転子2とを、近接させて取付基板4に半田固定した場合には、近接の程度によって偏光子1、1の一面とファラデー回転子の最近接の一面との間で多重反射による干渉が生じるという懸念があった。
【0011】
本発明は前記各問題点に鑑み、少なくとも2枚以上の偏光子と少なくとも1枚以上のファラデー回転子とを一体化してなる光アイソレータにおいて、高い固定強度を有することが可能となる手段を提供すると共に、量産性も向上する新規な光アイソレータを提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
以上の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、
少なくとも2枚以上の偏光子と1枚以上のファラデー回転子の各光学素子の面上に金属膜層を成膜し、前記金属膜層上に半田層を重ねることで、前記各光学素子が応力緩衝材を介して一体化されて成る光アイソレータにおいて、
応力緩衝材は、前記偏光子及び前記ファラデー回転子の熱膨張係数の間の値の熱膨張係数を有する材料から構成され、
前記ファラデー回転子の光入射面及び光出射面に垂直な面上と、前記光入射面及び前記光出射面における、光透過領域以外で且つ光透過領域の中心高以下の前記光入射面及び前記光出射面の面上とに、前記金属膜層を成膜し、
更に、前記各偏光子の光入射面及び光出射面に垂直な面上と、前記光入射面又は/及び前記光出射面における、光透過領域以外の前記光入射面又は/及び前記光出射面の面上とに、前記金属膜層を成膜し、
更に、前記応力緩衝材は前記各光学素子の光透過領域に該当する面上に開口部を設けると共に、前記開口部を設けた面に垂直な面上と、前記垂直な面と隣り合う前記開口部を設けた2つの面の前記開口部以外で、且つ前記開口部の中心高以下の、前記垂直な面と面続きになっている前記開口部を設けた面上とに、前記金属膜層を成膜し、
前記各光学素子の光入射面及び光出射面に垂直な面上と、前記応力緩衝材の開口部を設けた面に垂直な面上に成膜した前記金属膜層によって、前記各光学素子と前記応力緩衝材とが前記取付基板に固定されることを特徴とする光アイソレータを提供するものである。
【0013】
更に、請求項2に記載の発明は、前記ファラデー回転子の前記光入射面及び前記光出射面の面上における、光透過領域以外の金属膜層の成膜を、光入射面または光出射面それぞれの面の面積の25%以下とすることを特徴とする請求項1記載の光アイソレータを提供するものである。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る光アイソレータについて、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、前記従来の技術に係る光アイソレータ100と重複する箇所には同一番号を付し、重複する説明は省略、又は簡略化して記載する。図1は本発明の光アイソレータの一例を示す斜視概略図である。
【0015】
図1に示すように、光アイソレータ16は、1枚の平板状の45度ファラデー回転子2の両面にそれぞれ2枚の平板状の偏光子1、1が応力緩衝材5を介して一体化されることで構成されている。各光学素子(偏光子1、1とファラデー回転子2)と応力緩衝材5とは金属膜層及び半田層(どちらも図示せず)によって積層状に一体固定され、取付基板4上に半田層(図示せず)の溶融固化により固定されている。又、取付基板4と直方体の永久磁石3、3は、第2の取付基板6に、半田の溶融固化によって一体化されている。
【0016】
次に図2に、前記ファラデー回転子2に成膜される金属膜層7のパターニングの一例を示す。図2に示すように、金属膜層7は、平板状の45度ファラデー回転子2の側面10、即ち光透過領域8に垂直な面の一面の領域と、その側面10と隣り合う2つの面11、11(以下、必要に応じて光入出射面と云う。)における光透過領域8以外の面上とに、マスキング法およびスパッタリング法を併用してパターニングすることによって成膜形成されるものである。前記3つの面10、11、11は面続きになっているので一回のパターニングによって同時に金属膜層7を成膜させることが可能となる。この際、前記2つの面11、11上に成膜させる金属膜層7、7の面積を、光透過領域8の中心位置9以下の高さ(以下、中心高tと記す。)の領域に限定する。金属膜層7、7の成膜面積を中心高t以下に限定することにより、図示しない半田層を金属膜層7、7上に重ねて半田接合する時に、ファラデー回転子2に掛かる応力歪みを著しく低減させることが可能となる。
【0017】
なお、図2のではファラデー回転子2の光入射面11、11上の成膜面積として、中心高t以下の領域内に限定する例を示しているが、図3に示すように、光入出射面11、11の面積の25%以下に面積限定して金属膜層7を成膜させても構わない。なお、図2および図3に示す例では、光透過領域8が円形型であることを図示しているが、特に円形型に限らず、正方型や長方型や八角型であっても構わない。
【0018】
図4は、本発明の光アイソレータ16に係る偏光子1に成膜される金属膜層7のパターニングの一例を示す斜視概略図である。図4に示すように、金属膜層7は、偏光子の側面12即ち光透過領域8に垂直な面の一面の領域と、その側面12と隣り合う2つの面上の光透過領域8以外の面上の片面13のみ、マスキング法およびスパッタリング法を併用して、パターニングすることにより成膜される。前記2つの面12、13は面続きになっているので一回のパターニングによって同時に金属膜層7を成膜させることが可能となる。なお、この例では、光透過領域8が円形型であることを図示しているが、特に円形型に限らず、正方型や長方型や八角型であっても構わない。なお、一般的に偏光子は、半田接合時に係る応力歪みは低いことから、光透過領域8近傍の金属膜層7の領域は、特に形状としては問題とならずに、光透過領域8を確保してさえすれば良い。
【0019】
そして、図5は、本発明の光アイソレータ16に係る応力緩衝材5に成膜された金属膜層のパターニングの一例を示す斜視概略図である。図5に示すように、金属膜層7は、予め前記光学素子の光透過領域8に該当する面上が抜かれることによって構造的に開口部17が設けられた応力緩衝材5の、側面14即ち開口部17を設けた面15、15に垂直な面の一面の領域と、その側面14と隣り合う2つの面15、15上における開口部17以外の面上とに、マスキング法およびスパッタリング法を併用してパターニングすることによって成膜形成されるものである。前記3つの面14、15、15は面続きになっているので一回のパターニングによって同時に金属膜層7を成膜させることが可能となる。
【0020】
なお、この成膜させる金属膜層7、7の面積は、開口部17の中心位置9以下の高さ(以下、中心高tと記す。)の領域に限定する。つまり、少なくとも前記ファラデー回転子2の金属膜層7の面積とほぼ同じとする。しかし、やや大きい程度であることが特に好ましい。なお、この図示例では、予め開口部17が円形型であることを図示しているが、特に円形型に限らず、正方型や長方型や八角型であっても構わない。
【0021】
ここで、応力緩衝材5の熱膨張係数は、偏光子1、1及びファラデー回転子2の熱膨張係数のほぼ中間の値となるように材料を選択することが好ましい。例えば、偏光子1の熱膨張係数が5.1×10−6℃-1であり、ファラデー回転子2の熱膨張係数が10.6×10−6℃-1である場合には、応力緩衝材5の熱膨張係数が5.1×10−6℃-1〜10.6×10−6℃-1の範囲内であれば、偏光子1とファラデー回転子2の熱膨張係数の差による影響を低減でき、熱により生じる応力歪みや室温への冷却の際に生じるクラックを少なくすることができる。そして、例えば、応力緩衝材5の材質としてはチタン(Ti)やクロム(Cr)などを使用することができる。そして、その厚さは、取り扱いの作業性の観点から約100〜200μmとすることが、特に好ましい。
【0022】
なお、金属膜層を成膜させる処理装置としては、スパッタリング装置を使用し、スパッタリングターゲットには金属膜層7となる金属素材を使用する。またスパッタリングターゲットの形状は、例えば直径6インチ、厚さ3mmのものなどを使用することができる。そして、マスキング(図示せず)は、光透過領域を避けるようにパターニングして配置させるとよい。
【0023】
そして、図6は、金属膜層7の構成を示す例である。この図示例では、偏光子1(或いはファラデー回転子2若しくは応力緩衝材5)の面上に、Cr/Pt/Auの3層の金属薄膜層からなる金属膜層7がマスキング法およびスパッタリング法を併用して成膜されている。このような半田接合用の金属膜層は、十分な固定強度を確保することが可能である。ここで、第1層であるCr層は、光学素子との密着力を確保し、第2層であるPt層は、半田の拡散を防止する。そして、第3層であるAu層は、半田の濡れ性を促進させ、半田接合層を形成し、安定した半田付けが可能となる。なお、金属膜層7は十分な密着強度を確保することができればよいため、Cr/Pt/Auに限らずにCr/Ni/AuやTi/Pt/Auなどの別の金属薄膜層を用いても良い。
【0024】
そして、スパッタリング工程の際には、スパッタリングガスとして、例えばアルゴンなどを用いるのが好ましい。そして、スパッタ条件を任意に設定し、RFパワー、スパッタ圧力、基板間距離、基板回転数、アルゴン流量などを調整する。これにより、一定の厚さを有する金属膜層を偏光子の少なくとも片面、及びファラデー回転子並びに応力緩衝材の両面に、マスキング法およびスパッタリング法を併用し、パターニングして成膜することが出来る。ここで、金属膜層7の厚さは、スパッタリング装置の能力またはスパッタリング工程の工数、さらには金属膜層の熱伝導率や作業性の観点から、約2μm以下とすることが望ましい。
【0025】
なお、偏光子1とファラデー回転子2の両面には、各光学素子と空気層の屈折率の差により生じるフレネル反射を防止し、光アイソレータの挿入損失を低減させるために、予め金属膜層7を成膜させる前に、対空気層用の無反射コート(図示せず)を施しておくことが望ましい。
【0026】
図7は、本発明の光アイソレータ16の製造方法の一例の作業工程を説明するための斜視図である。ここで、光アイソレータ16は、1段型(偏光子2枚及びファラデー回転子1枚)の光アイソレータを例としているため、2枚の偏光子1の偏光透過方向は、光入射方向にそれぞれ相対的に45度の角度を有するように構成されている。なお、図7において、図中の偏光子1面上の両端に矢印をもつ符号は、偏光透過方向をそれぞれ示している。
【0027】
まず、ファラデー回転子2面上または応力緩衝材5、5面上の、金属膜層のどちらか一方の上に、或いはその両方の金属膜層上に、半田層(図示せず)をマスキング法および蒸着法を併用して、パターニングして重ねるように成膜させる。そして、同様に偏光子1、1面上または応力緩衝材5、5面上の、金属膜層のどちらか一方の上に、あるいはその両方の金属膜層上に、半田層(図示せず)をマスキング法および蒸着法を併用して、パターニングして重ねるように成膜させる。そして、取付基板4にも、半田付けが可能となるように金属膜層を成膜させ、その後に半田層を成膜させる。
【0028】
そして、図7に示すように、取付基板4上に、偏光子1、応力緩衝材5、ファラデー回転子2、応力緩衝材5、偏光子1の順で、それぞれの部品の1辺を基準として配置する。それぞれの部品の1辺とは、各部品の前記側面10或いは12、或いは14である。なお、偏光子1は、それぞれ偏光透過方向が光入射方向を中心に45度相互に回転した位置となるように配置させる。
【0029】
ここで、半田層は、例えばAu/Snを用いることが可能であり、蒸着法により成膜されるAu/Sn膜は、蒸着材料であるAu/Sn共晶半田(80%/20%)の融点(280℃)とほぼ同じである。そして、厚さが略5μmの半田層をマスキング法などを用いて、金属膜層上に成膜することができる。なお、半田層は、Au/Sn膜に限らずに、Au/Snより溶融温度が高い半田層としてAu/Geなどの別の組成の共晶半田材料も用いることも可能である。
【0030】
そして、これらの部品と永久磁石3、3(図示せず)とを、前記第2の取付基板6(図示せず)上に配置させて、高温炉内で半田層(図示せず)を溶融させて一体化させ、その後永久磁石3、3を着磁することにより、光アイソレータ16を得る。なお、高温炉の内部の雰囲気は、還元雰囲気である窒素などであることが好ましい。
【0031】
若しくは、図7に示すように、偏光子1とファラデー回転子2とを応力緩衝材5、5を介して、取付基板4上に配置させた後に、まず高温炉内で半田層(図示せず)を溶融させて一体化する。こうすることで、まず各光学素子が応力緩衝板5、5を介して積層状に一体化されると共に、一体化された前記各光学素子と応力緩衝板5、5とが取付基板4に固定される(以下、必要に応じて、光アイソレータユニット18と云う。)。その後に、光アイソレータユニット18と永久磁石3、3(図示せず)とを、第2の取付基板6(図示せず)上に配置させて、高温炉内で半田層(図示せず)を溶融させて一体化させ、その後永久磁石3、3を着磁することにより、光アイソレータ16を得る。
【0032】
なお、金属膜層上に半田層を蒸着法により成膜させる方法以外にも、半田泊を使用して半田泊を溶融固化することにより、光学素子近傍の半田層を形成しても当然に良い。
【0033】
なお、応力緩衝材5、5が無い場合には、偏光子1、1及びファラデー回転子2とを、金属膜層7及び半田層を介して積層し、高温炉内にて前記半田層を溶融することにより一体化することが可能ではあるが、偏光子1とファラデー回転子2の熱膨張係数差が比較的大きいため、半田層の溶融固化後の冷却時に偏光子1或いはファラデー回転子2にクラックが生じてしまう。或いは、冷却時の応力歪みがファラデー回転子2に掛かり、その特性を著しく低下させ、そのために製造歩留が悪化してしまうという問題が生じることが明らかとなっている。そのために、偏光子1、1とファラデー回転子2との間にはこのような応力緩衝材5、5は欠かすことができない。また、このような応力緩衝材5、5は一定の厚みを有するので、ファラデー回転子2と偏光子1、1との多重反射を低減させることが出来る。
【0034】
なお、半田層の溶融固化は、例えば電気炉内で半田層の溶融温度以上の温度にて、不活性気体中において、光学素子に一定の荷重をかけて行う。そして、半田層の溶融固化時に発生する接合部の応力歪みによる光学素子の特性の悪化を防止するために、溶融固化後は光アイソレータを室温まで徐々に冷却することが好ましい。
【0035】
ここで、偏光子1は、平板型構造であるガラス偏光子であり、タイプとしてはガラス基板に誘電体粒子を内包するタイプや、ガラス基板上に誘電体を積層するタイプなどがあり、いずれも偏光透過方向に対して直交する偏光方向の入射光を吸収・遮断する作用を有していて、例えばコーニング社製「ポーラコア」などを用いることができる。
【0036】
ここで、45度ファラデー回転子2は、液相エピタキシャル成長法(LPE法)により作製したビスマス置換希土類鉄ガーネット等の単結晶板などが用いられ、上記のファラデー回転子に界磁磁石により光入射方向の飽和磁場が印加されている場合に、入射光の偏光面を光軸まわりに正確に45度回転させるために、光の進行方向に対して所定の厚さを有するように構成されている。
【0037】
そして、永久磁石3、3は、例えばサマリウムコバルト(Sm-Co)系磁石やネオジ(Nd-Fe-B)系磁石、フェライト磁石などが用いることができるが、特にサマリウムコバルト磁石は高い磁石材料特性が得られ小型化に適しており、また温度安定性及び耐酸化性に優れていることから用いられている。前記永久磁石3、3は、45度ファラデー回転子2の周囲に、光軸に平行に配置・固定され、さらに光軸に平行に着磁されている。
【0038】
なお、組立にあたり、取付基板4および第2の取付基板6というように、別個として取り扱うように上記では説明しているが、当然に取付基板4の寸法・材質によっては、第2の取付基板6は不要である。
【0039】
ところで、上述までの説明においては、偏光子1及び応力緩衝材5、5は、それぞれ組立時の段階まで個別に独立して取り扱うように説明してきたが、組立時に一体化して取り扱うことが可能なように、以下に示す方法によって製作しても良い。
【0040】
まず、予め、複数で連続していて一定の距離で配置された開口部を有した一定の長さのバー状の応力緩衝材と、長さがほぼ同じバー状の偏光子とを用意する。次に、所定の形状にて、バー状の応力緩衝材およびバー状の偏光子に金属膜層を形成する。さらに、バー状の応力緩衝材もしくはバー状の偏光子のどちらか一方の金属膜層状に、或いはその両方の金属膜層状に、Au/Sn蒸着膜を形成する。そして、バー状の偏光子と応力緩衝材とを半田接合して一体化したのちに、所定のピッチで切断する。このような方法を用いると、偏光子と応力緩衝材とが一体化されているために、組立時に部品を取り扱い易くなる。
【0041】
【実施例】
上記の内容から、図1に示す本発明に係る光アイソレータ16を10台製作した。そして、比較のため同時に、図8に示す従来の光アイソレータ100も10台製作した。
【0042】
まず、偏光透過方向が光入射方向を中心に45度相互に回転した位置となる偏光子20個(いずれも1mm角、厚さ0.2mm)と45度ファラデー回転子10個(1mm角、厚さ0.45mm)と応力緩衝材20個(材質チタン、1mm角、厚さ0.02mm、φ0.7mmのアパーチャ)を用意した。そして、これらの偏光子およびファラデー回転子および応力緩衝材の、側面および光透過領域以外の面上にCr/Pt/Auの金属薄膜層をマスキング法およびスパッタリング法を併用して成膜させた。ここで、ファラデー素子は、図2に示すように金属膜層の領域が光透過領域の中心高t以下となるように成膜されている。その後、その金属膜層上にマスキング法および蒸着法により、Au/Snの半田層を成膜させた。次に、それらの部品を取付基板上に配置させ、永久磁石および第2の取付基板とともに、高温炉(温度300℃)内において窒素雰囲気中で、半田を溶融固化して一体化させ、その後永久磁石を着磁して、図1に示す本発明に係る光アイソレータを製作した。なお、平板状の取付基板および第2の取付基板の一面および直方体の永久磁石の一面には、あらかじめ湿式法によりニッケル、金がメッキされて、半田付けが可能な状態としている。
【0043】
また、従来の光アイソレータについては、寸法が同様の偏光子20個および45度ファラデー回転子10個を用いて、それぞれの光学素子の側面にのみ、Cr/Pt/Auの金属膜層をマスキング法およびスパッタリング法を併用して成膜させて、その後その金属膜層上にマスキング法および蒸着法により、Au/Snの半田層を成膜させた。次に、それらの部品を取付基板上に配置させ、永久磁石とともに、高温炉(温度300℃)内において窒素雰囲気中で、半田を溶融固化して一体化させ、その後永久磁石を着磁して、図8に示す従来の光アイソレータ100を製作した。なお、平板状の取付基板の一面および直方体の永久磁石の一面には、予め湿式法によりニッケル、金がメッキされて、半田付けが可能な状態としている。
【0044】
なお、永久磁石は寸法が2mm×1.4mm×0.85mmである、サマリウムコバルト磁石を用いた。また、本発明に係る光アイソレータ製作時に用いた、取付基板は、ジルコニアの厚さ0.25mmの平板を1.1mm×2mmに切り出したものを用い、第2の取付基板は、寸法が3.5mm×2mm×0.25mmである、ステンレス(SUS430)を用いた。そして、従来の光アイソレータ製作時に用いた、取付基板は、寸法が3.5mm×2mm×0.25mmである、ステンレス(SUS304)を用いた。
【0045】
このようにして製作された、図1に示す本発明に係る光アイソレータ16および図8に示す従来の光アイソレータ100について、全数につき評価波長範囲1550nmプラスマイナス30nmにおいて逆方向損失のピーク値を室温にて評価した。その後、光学素子の抜去強度試験を行い、抜去強度の評価をおこなった。その結果を表1に示す。
【0046】
【表1】
【0047】
表1で示すように、光アイソレータの逆方向損失のピーク値の平均値および光学素子の抜去強度の平均値は、本発明に係る光アイソレータでは、それぞれ43.0dBおよび587.7gfであり、一方、従来の光アイソレータでは、それぞれ42.7dBおよび160.2gfであった。
【0048】
このように、逆方向損失のピーク値の平均値に関しては、本発明に係る光アイソレータと従来の光アイソレータとでは大差が見られず、また、ファラデー回転子への応力歪みが見られていないことが判明した。
【0049】
しかしながら、光学素子の抜去強度の平均値に関しては、本発明に係る光アイソレータは、従来の光アイソレータと比較して、約4倍向上していることが判明した。これは、本発明の光アイソレータの全ての光学素子が応力緩衝材を介して光透過領域で一体化されていると共に、各部品の側面の全領域でも取付基板と接合固定されているためである。一方、従来の光アイソレータの抜去強度が約4分の1である原因は、光学素子が個々に独立して取付基板に接合固定されており、それぞれの側面の面積に応じた固定強度しか得られないことに起因している。以上説明したように、明らかに本発明に係る光アイソレータは、光学素子の抜去強度が飛躍的に向上している。
【0050】
なお、上記のいずれの発明の実施形態の例も、1段型(偏光子2枚および45度ファラデー回転子1枚)の光アイソレータの構成を用いたが、本発明は必ずしも図示のものに限らず、1.5段型(偏光子3枚および45度ファラデー回転子2枚)であっても、或いは、2段型(偏光子4枚および45度ファラデー回転子2枚)の光アイソレータであっても、上記本発明の実施形態の例と同様の効果を得ることができる。その際、必要に応じて偏光子の光入出射面の両面に成膜を施すことは云うまでも無い。
【0051】
【発明の効果】
以上、本発明に依れば、各光学素子及び応力緩衝材に金属膜層を成膜させる箇所を、各部品の側面即ち光透過領域又は開口部に垂直な面の一面の領域と、その側面と隣り合う光透過領域又は開口部以外の面上とすることにより、側面とその側面に隣り合う面とは面続きになっているので一回のパターニングによって同時に金属膜層を成膜させることが可能となる。従って、成膜工程の工程数と所要時間を短縮することが出来るため量産性に優れる光アイソレータを実現することが可能となる。
【0052】
更に、光アイソレータの各部品を側面で取付基板に固定すると共に、前記側面と隣りあう面上でも各光学素子同士を応力緩衝材を介して固定するので、固定強度を引き上げることが可能になり、更に、金属膜層が面続きに成膜される分、半田接合する際の固定強度はより大きくなる。よって、従来に比べ抜去強度を大幅に向上させることが可能となり衝撃試験での光アイソレータの不良率を解消することが出来る。
【0053】
更に、偏光子とファラデー回転子とは、応力緩衝材を介して一体化されているために、偏光子の一面と最近接のファラデー回転子の一面との間で生じる、多重反射による干渉を解消することも可能となる。
【0054】
更に、ファラデー回転子と偏光子を半田接合により一体化するにあたり、特にファラデー回転子の光入射面の面上に成膜させる金属膜層の面積を、光入射面の面積の25%に制限することによって、上記各効果に加え、光学素子と応力緩衝材との必要十分な固定強度を確保しつつファラデー回転子に発生していた応力歪みを著しく低減させて、光アイソレータの特性劣化を回避して、光学素子のクラックを著しく低減させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の光アイソレータの一例を示す斜視概略図である。
【図2】 本発明の光アイソレータに係る、45度ファラデー回転子へ成膜される金属膜層のパターニングの一例を示す斜視概略図である。
【図3】 本発明の光アイソレータに係る、45度ファラデー回転子へ成膜される金属膜層のパターニングの別の一例を示す斜視概略図である。
【図4】 本発明の光アイソレータに係る、偏光子へ成膜される金属膜層のパターニングの一例を示す斜視概略図である。
【図5】 本発明の光アイソレータに係る、応力緩衝材へ成膜される金属膜層のパターニングの一例を示す斜視概略図である。
【図6】 本発明の光アイソレータに係る、金属膜層の構成の一例示す部分断面図である。
【図7】 本発明の光アイソレータの製造方法の一例の工程を説明するための斜視図である。
【図8】 従来の光アイソレータの一例を示す斜視概略図である。
【符号の説明】
1 偏光子
2 45度ファラデー回転子
3 永久磁石
4 取付基板
5 応力緩衝材
6 第2の取付基板
7 金属膜層
8 光透過領域
9 中心位置
16 光アイソレータ
Claims (2)
- 少なくとも2枚以上の偏光子と1枚以上のファラデー回転子の各光学素子の面上に金属膜層を成膜し、前記金属膜層上に半田層を重ねることで、前記各光学素子が応力緩衝材を介して一体化されて成る光アイソレータにおいて、
応力緩衝材は、前記偏光子及び前記ファラデー回転子の熱膨張係数の間の値の熱膨張係数を有する材料から構成され、
前記ファラデー回転子の光入射面及び光出射面に垂直な面上と、前記光入射面及び前記光出射面における、光透過領域以外で且つ光透過領域の中心高以下の前記光入射面及び前記光出射面の面上とに、前記金属膜層を成膜し、
更に、前記各偏光子の光入射面及び光出射面に垂直な面上と、前記光入射面又は/及び前記光出射面における、光透過領域以外の前記光入射面又は/及び前記光出射面の面上とに、前記金属膜層を成膜し、
更に、前記応力緩衝材は前記各光学素子の光透過領域に該当する面上に開口部を設けると共に、前記開口部を設けた面に垂直な面上と、前記垂直な面と隣り合う前記開口部を設けた2つの面の前記開口部以外で、且つ前記開口部の中心高以下の、前記垂直な面と面続きになっている前記開口部を設けた面上とに、前記金属膜層を成膜し、
前記各光学素子の光入射面及び光出射面に垂直な面上と、前記応力緩衝材の開口部を設けた面に垂直な面上に成膜した前記金属膜層によって、前記各光学素子と前記応力緩衝材とが前記取付基板に固定されることを特徴とする光アイソレータ。 - 前記ファラデー回転子の前記光入射面及び前記光出射面の面上における、光透過領域以外の金属膜層の成膜を、光入射面または光出射面それぞれの面の面積の25%以下とすることを特徴とする請求項1記載の光アイソレータ。
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