JP4325355B2 - ポリエステル系樹脂シートの製造装置および製造方法 - Google Patents

ポリエステル系樹脂シートの製造装置および製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、押出機から熱可塑性樹脂を溶融状態としてシート状に押し出し、この溶融シート状体を移動冷却体に密着させて冷却することにより、均一な厚みを有するとともに表面欠点の少ないシートを製造するポリエステル系樹脂シートの製造装置および製造方法を提供するものである。
従来、押出機のTダイ等から移動冷却体上に溶融状態の熱可塑性樹脂をシート状に押し出して効率よく冷却することにより、均一な厚みおよび幅寸法を有するシートを形成するため、例えば特許文献1に示されるように、移動冷却体に沿って配設されたワイヤ状またはナイフエッジ状の電極に高電圧を印加することより、溶融シート状体に静電荷を付与して移動冷却体に密着させることが行われている。このようにワイヤ状またはナイフエッジ状の電極を用いて溶融シート状体を移動冷却体に静電密着させるように構成した場合には、溶融シート状体および移動冷却体の移動速度を25m/min程度の比較的低速に設定することにより、移動冷却体に溶融シート状体を適正に密着させて効率よく冷却することが可能である。
また、40m/min程度の比較的高速で移動する移動冷却体に溶融シート状体を適正に密着させて効率よく冷却できるようにするため、例えば特許文献2に示されるように、針状、鋸刃状、ワイヤ状またはナイフエッジ状の電極から上記溶融シート状体にストリーマコロナ放電を行って多くの電荷を付与することにより、この溶融シート状体を移動冷却体に静電密着させることが行われている。
さらに、例えば特許文献3に示されるように、ポリエステル樹脂中にアルカリ金属、アルカリ土類金属もしくはそれらの化合物の少なくとも一種を含有させる等により、溶融シート状体を構成する熱可塑性樹脂の溶融比抵抗を低い値に設定した場合には、電極に高電圧を印加することにより溶融シート状体を移動冷却体に静電密着させて溶融シート状体を冷却する際における上記移動冷却体の移動速度を高速化できることが知られている。
特公昭37−6142号公報 特開昭56−105930号公報 特公昭53−40231号公報
上記特許文献1に開示されたワイヤ状またはナイフエッジ状の電極を用いた静電密着法では、溶融シート状体および移動冷却体の移動速度を25m/min以上に高速化すると、移動冷却体の表面に生じる随伴流に応じて形成された空気膜の存在により、上記移動冷却体に対する溶融シート状体の密着性が不充分となって、移動冷却体による溶融シート状体の冷却作用が損なわれることになる。この結果、溶融シート状体が充分に冷却される前に、その結晶化が進んで透明性が低下するとともに、シートの表面に気泡状または筋状の欠点が発生し易く、かつ溶融シート状体が均等に冷却されないことに起因してシートの厚みが不均一になり易いという問題があった。
また、上記特許文献2に開示されたストリーマコロナ放電方式の静電密着法において、溶融シート状体を移動冷却体に密着させて効率よく冷却させることができるのは、溶融比抵抗値が6.0×106(Ω・cm)以下のポリアミド系樹脂等に限られ、例えば0.4×108(Ω・cm)程度の溶融比抵抗値を有するポリエチレンテレフタレート等については、安定したストリーマコロナ放電を行うことができないとされていた。したがって、上記ポリエチレンテレフタレート等の溶融比抵抗値の高い樹脂材料は、ストリーマコロナ放電により移動冷却体に静電密着されるシートの原材料として使用されず、ポリアミド系樹脂等の溶融比抵抗値が小さなものだけが使用されていた。
さらに、上記特許文献3に示されるように、シートの原材料である熱可塑性樹脂中にアルカリ金属等の添加物を混入して溶融シート状体の溶融比抵抗値を低下させることにより、溶融シート状体および移動冷却体の移動速度を高速化しつつ、溶融シート状体と移動冷却体との密着力を確保することにより溶融シート状体を移動冷却体に密着させて効率よく冷却するように構成した場合には、上記溶融シート状体の溶融比抵抗値を低下させるためにその原材料が本来有する無異物性、色調または耐熱性等をある程度犠牲にしなければならないという問題があった。
また、上記特許文献2,3に開示されているように、シートの原材料として溶融比抵抗値が低い熱可塑性樹脂を使用した場合には、電極から移動冷却体に流れる電流が大きくなり過ぎて火花放電を生じ易い傾向があるため、上記移動冷却体に対する溶融シート状体の接触点よりも上流側に電極を設置する等により、上記火花放電の発生を防止する必要がある。このように移動冷却体に対する溶融シート状体の接触点よりも上流側に電極を設置した場合には、溶融シート状体が振動することにより電極に接触して傷付けられ易く、これを防止するためには、溶融シート状体と電極とをある程度離間させる必要がある。このように電極が溶融シート状体から離間した状態となると、両者の間に印加される電圧を高く設定しなければ、上記ストリーマコロナ放電を安定して発生させることができなくなるという問題がある。
本発明は、以上の点に鑑みてなされたものであり、原材料が本来有する特性を低下させることなく、高速でシートを適正に製造することができるポリエステル系樹脂シートの製造装置および製造方法を提供するものである。
請求項1に係る発明は、0.3×10(Ω・cm)以上の溶融比抵抗値を有するポリエステル系樹脂を溶融状態としてシート状に押し出す押出機と、この押出機から押し出された溶融シート状体を冷却する移動冷却体と、溶融シート状体に対してストリーマコロナ放電を行うことにより移動冷却体に溶融シート状体を静電密着させるコロナ放電部とを備えたポリエステル系樹脂シートの製造装置において、上記コロナ放電部に、5μm〜200μmの厚みを備えたテープ状の電極を設け、このテープ状電極を上記移動冷却体に対する溶融シート状体の接触点の近傍に沿って配設するとともに、このテープ状電極と溶融シート状体との間隙を0.5mm〜10mmの範囲内に設定し、上記テープ状電極の先端部に、0.1mm以上の突出量を有する複数の突部を、上記溶融シート状体の搬送方向と直交する方向に沿って配列し、相隣接する突部の設置間隔を上記テープ状電極と溶融シート状体との間隙の5倍未満に設定したものである。
請求項2に係る発明は、上記請求項1に記載のポリエステル系樹脂シートの製造装置において、テープ状電極に設けられた各突部間における突出量のバラツキを0.2mm未満に設定したことをものである。
請求項3に係る発明は、上記請求項1または2に記載のポリエステル系樹脂シートの製造装置において、移動冷却体に対する溶融シート状体の接触点と、テープ状電極の設置位置とのシート搬送方向におけるずれ量を5mm未満に設定したものである。
請求項4に係る発明は、0.3×10(Ω・cm)以上の溶融比抵抗値を有するポリエステル系樹脂を押出機から溶融状態でシート状に押し出す押出工程と、押出機から押し出された溶融シート状体を移動冷却体に密着させて冷却する冷却工程と、冷却後のシート状体を延伸する延伸工程とを備えたポリエステル系樹脂シートの製造方法において、上記移動冷却体に対する溶融シート状体の接触点の近傍に沿って5μm〜200μmの厚みを備えたテープ状の電極が設置されるとともに、このテープ状電極と溶融シート状体との間隙が0.5mm〜10mmの範囲内に設定され、上記テープ状電極の先端部に、0.1mm以上の突出量を有する複数の突部が、上記溶融シート状体の搬送方向と直交する方向に沿って配列され、相隣接する突部の設置間隔が上記テープ状電極と溶融シート状体との間隙の5倍未満に設定されてなるコロナ放電部から、上記冷却工程で溶融シート状体にストリーマコロナ放電を行うことにより、溶融シート状体を移動冷却体に密着させて冷却するものである。
請求項1に係る発明によれば、テープ状電極と移動冷却体との間に所定の電圧を印加してテープ状電極の各突部から溶融シート状体に大電流を流すストリーマコロナ放電を行うことにより、0.3×108(Ω・cm)以上の溶融比抵抗値を有する熱可塑性樹脂からなる溶融シート状体に対して多くの電荷を安定して連続的に付与できるため、上記溶融シート状体および移動冷却体の移動速度を高速に設定した場合においても、移動冷却体に溶融シート状体を適正に密着させて均等に冷却することができる。したがって、シートの原材料である熱可塑性樹脂中に所定の添加物が混入されることにより、原材料が本来有する無異物性、色調または耐熱性等の特性が低下する等の問題を生じることなく、均一な厚みを有するとともに表面欠点のないシートを高速で効率よく製造できるという利点がある。
請求項2に係る発明によれば、テープ状電極に設けられた各突部間における突出量のバラツキが0.2mm未満に設定されることにより、テープ状電極と溶融シート状体との間隙が不揃いとなることが防止されるため、このテープ状電極の先端部から溶融シート状体に対して均一にストリーマコロナ放電を発生させることができる。したがって、上記テープ状電極と移動冷却体との間に印加される電圧を過度に高い値に設定することなく、溶融シート状体に多くの電荷を連続的に付与して移動冷却体に溶融シート状体を適正に密着させることにより、この溶融シート状体を適正かつ効果的に冷却できるという利点がある。
請求項3に係る発明によれば、テープ状電極の設置位置が移動冷却体に対する溶融シート状体の接触点から5mm以上に亘り溶融シート状体の搬送方向の上流側にずれることに起因してストリーマコロナ放電状態が不安定になったり、シートの表面が粗面化されたりする等の弊害を生じるのを防止することができる。また、テープ状電極の設置位置が移動冷却体に対する溶融シート状体の接触点から5mm以上に亘り溶融シート状体の搬送方向の下流側にずれることに起因して溶融シート状体を移動冷却体に適正に密着させることができなくなるという弊害の発生を効果的に防止できるという利点がある。
請求項4に係る発明によれば、押出機から押し出された溶融シート状体を移動冷却体に密着させて冷却する冷却工程で、テープ状電極と移動冷却体との間に所定の電圧を印加してテープ状電極の各突部から溶融シート状体に大電流を流すストリーマコロナ放電を行うことにより、0.3×108(Ω・cm)以上の溶融比抵抗値を有する熱可塑性樹脂からなる溶融シート状体に対して多くの電荷を安定して連続的に付与できるため、上記溶融シート状体および移動冷却体の移動速度を高速に設定しつつ、溶融シート状体を移動冷却体に適正に密着させて均等に冷却することができ、均一な厚みを有するとともに表面欠点のないシートを高速で効率よく製造できるという利点がある。
図1は、本発明に係るシートの製造装置の実施形態を示している。この製造装置は、ホッパー1から投入された熱可塑性樹脂材を加熱混練することにより溶融状態としてTダイ等からなる口金2からシート状に押し出す押出機3と、この押出機3から押し出された溶融シート状体4aを冷却する冷却ローラ等からなる移動冷却体5と、上記溶融シート状体4aにストリーマコロナ放電を行うことにより溶融シート状体4aを移動冷却体5に密着させるコロナ放電部6と、上記移動冷却体5により冷却されたシート状体4bを長手方向に延伸させる第1延伸部7と、上記シート状体4bを幅方向に延伸させる第2延伸部8と、延伸後のシート4cを巻き取る巻取部9とを有している。
上記コロナ放電部6には、図2および図3に示すように、移動冷却体5の周面に対する溶融シート状体4aの接触点Zの近傍に沿って伸びるようにテープ状電極10が設置されている。このテープ状電極10は、鉄またはステンレス鋼等の金属材からなり、その先端部、つまり上記溶融シート状体4aの表面に対向する側の端部には、矩形の切欠きが一定間隔で形成されることにより、所定の突出量Hを有する複数の突部10aが溶融シート状体4aの搬送方向と直交する方向に一定間隔(配列ピッチ)Wで設けられている。また、上記テープ状電極10の突部10aは、移動冷却体5上に位置する溶融シート状体4aと所定の間隙Nを隔てて相対向するように設置されている。
そして、直流高圧電源11から上記テープ状電極10と移動冷却体5との間に所定電圧が印加され、このテープ状電極10から移動冷却体5上の溶融シート状体4aにストリーマコロナ放電が行われることにより、多くの電荷が連続的に付与されて上記溶融シート状体4aが移動冷却体5に静電密着するようになっている。
上記ストリーマコロナ放電とは、例えば正電圧が印加されるテープ状電極10と、アース体である溶融シート状体4aとが橋絡して安定したコロナ放電が行われる状態をいう。すなわち、上記テープ状電極10と移動冷却体5との間に印加される電圧を上昇していくと、最初に暗流状態(持続性のない放電現象)が生じた後、グローコロナ放電状態となり、次いで上記テープ状電極10からの放電により空気がイオン化されて安定した電流が持続的に流れるストリーマコロナ放電状態となる。この状態から、さらに電圧を上昇させると火花放電状態となる。
上記各放電現象を電圧と電流との関係で見ると、暗流領域では、オームの法則が成立する微少電流領域、つまり電圧に比例して電流が流れる領域と、電圧を上げても電流が増加しない領域とがあり、この領域からさらに電圧を上昇させると急激に電流が増加する状態となり、この領域がグローコロナ放電領域であって電極の表面を覆う紫色の発光が認められる。このグローコロナ放電領域からさらに電圧を上げると、ストリーマコロナ放電状態となり、この時には、電極とアース体とを橋絡する発光が見られる。電極に印加される電圧V(kV)と、アース体であるシート状体の幅寸法に対応した電流値I(mA/cm)との関係を具体的に見ると、I<0.025×V−0.12となる領域が暗流領域またはグーコロナ放電領域であって、I≧0.025×V−0.12となる領域がストリーマコロナ放電領域である。
上記のように押出機3から移動冷却体5上に押し出された溶融シート状体4aに対し、上記コロナ放電部6のテープ状電極10からストリーマコロナ放電が行われて多量の電荷が上記溶融シート状体4aに付与されることにより、この溶融シート状体4aが移動冷却体5に静電密着した状態となり、この移動冷却体5に供給される冷却水等の冷却媒体との間で熱交換が行われて上記溶融シート状体4aが冷却されるようになっている。
上記テープ状電極10の厚みは5μm〜200μmの範囲内に設定され、その好適範囲は10μm〜100μmである。上記テープ状電極10の厚みが10μm以下になると、その強度が低下して破断し易くなり、上記テープ状電極10の厚みが100μm以上になると、電場の集中度が低下してストリーマコロナ放電を適正に発生させることが困難となるからである。上記テープ状電極10の先端部における電場の集中度を高めて効率よくストリーマコロナ放電を発生させるためには、上記突部10aの突出量Hを0.1mm以上に設定する必要があり、0.5mm以上に設定することが好ましく、1mm以上に設定することがさらに好ましい。なお、上記突出量Hの最大値については特に限定されるものではないが、20mmを超えても電場の集中度を高めるという機能的なメリットをそれ程向上させることができないので、経済性の面からは上記突出量を20mm以下とすることが好ましい。
上記移動冷却体5に対する溶融シート状体4aの密着力F[Pa]をクローン力として考察すると、下記式のように表される。下記式においてqはシート上の電荷[C]、Eはシートの電場[V/m]、Sは単位時間(1s)当たりに移動するシートの長さと幅寸法により定義されるシートの面積[cm]、iは静電密着電極を流れる電流[A]、Vは電極に印加される電圧[V]、vは移動冷却体5の移動速度[m/s]、wは静電密着により冷却されるシートの幅[m]、kは式k=E/Vで定義される電場集中度[1/m]であり、簡単な形状の場合には解析計算により求められ、複雑な形状の場合には有限要素法を用いた数値計算により求められる。
F[Pa]=q[C]×E[V/m]/S[cm2
=i・V・k/(v・w)[Pa]
上記式から、移動冷却体5に対する溶融シート状体4aの静電密着力は、電極に対する印加電圧Vと電流iと電場集中度kとに応じて定まり、この電場集中度kを高めることにより静電密着力Fを増大させ得ることがわかる。
また、上記テープ状電極10と溶融シート状体4aとの間隙Nが一定値未満になると、テープ状電極10の先端部が溶融シート状体4aに接触して溶融シート状体4aが傷付けられる可能性があり、上記間隙Nが一定値以上となると、ストリーマコロナ放電を適正に発生させるための印加電圧をかなり高くする必要が生じて、火花放電が発生し易くなることが避けられなくなる。このため、上記テープ状電極10と溶融シート状体4aとの間隙Nは、0.5mm〜10mmの範囲内に設定されている。
上記溶融シート状体4aの搬送方向と直交する方向に配列された上記突部10aの設置間隔Wが一定値以上になると、テープ状電極10の各突部10aから溶融シート状体4aへの放電間隔が広くなり過ぎてその間に筋状の密着不良部分が発生し易くなる傾向がある。このような弊害を防止するためには、上記設置間隔Wを、テープ状電極10と溶融シート状体4aとの間隙Nの5倍未満に設定する必要がある。また、上記テープ状電極10に設けられた相隣接する突部10aの設置間隔Wを小さくすると、突部10aの成形が困難になるとともに、全ての突部10aから有効なコロナ放電を発生させることが困難となる傾向があるため、上記設置間隔Wの好適範囲は、テープ状電極10と溶融シート状体4aとの間隙Nの0.1倍〜3倍の範囲内であり、さらに好適な範囲は上記間隙Nの0.2倍〜2倍の範囲内である。
上記溶融シート状体4aの搬送方向と直交する方向に配列されたテープ状電極10の各突部10aの間における突出量Hにバラツキが生じ、溶融シート状体4aと各突部10aとのに間に形成された間隙Nが不均一になると、放電班が発生して密着不良部分が形成され易くなる。これを防止するために印加電圧を上昇させると、溶融シート状体4aに部分的な白化現象が発生し易くなり、この白化現象が生じると、シートの表面荒れ等の欠陥を検査で見つけ出すことが困難であるため、上記テープ状電極10に設けられた各突部10aの間における突出量Hのバラツキを0.2mm未満、好ましくは0.1mm未満に設定して溶融シート状体4aとテープ状電極10との間隙Nが不均一になるのを極力防止するように構成されている。
具体的には、上記テープ状電極10の製造時に各突部10aの先端面を均一に揃えることにより、各突部10aの間における突出量Hのバラツキが所定量以上になるのを防止するとともに、使用に際して上記テープ状電極10に撓みが生じ、あるいは押出機3の口金2から発生した熱により加熱されてテープ状電極10の熱変形が生じた場合等に、このテープ状電極10の取付状態を調整することにより、溶融シート状体4aと各突部10aとのに間に形成される間隙Nのバラツキを一定範囲内とするように構成されている。
また、上記テープ状電極10の設置位置が、移動冷却体5に対する溶融シート状体4aの接触点Zよりも溶融シート状体4aの搬送方向の上流側に大きくずれると、溶融シート状体4aに対して安定したストリーマコロナ放電を発生させることが困難となる。逆に、上記テープ状電極10の設置位置が、移動冷却体5に対する溶融シート状体4aの接触点Zよりも溶融シート状体4aの搬送方向の下流側に大きくずれると、移動冷却体5に対して溶融シート状体4aを適正に密着させることが困難となる。このため、移動冷却体5に対する溶融シート状体4aの接触点Zと、テープ状電極10の設置位置とのシート搬送方向におけるずれ量を5mm未満に設定し、好ましくは3mm未満に設定することにより、上記接触点Zの近傍にテープ状電極10を設置するように構成されている。
上記押出機3により加熱混練されて押し出される熱可塑性樹脂としては、その溶融比抵抗値Rが0.3×108(Ω・cm)以上のものであれば特に限定されないが、以下のような樹脂が想定される。なお、上記溶融比抵抗値Rは、熱可塑性樹脂を真空乾燥した後に、50mmの直径を有する試験管に入れ、窒素雰囲気下で溶融した後、285℃の窒素雰囲気下で上記熱可塑性樹脂中に一対の銅製電極を挿入し、この両電極に直流高圧発生装置から電圧を印加した状態で計測された電流値および電圧値、電極面積および電極間距離に応じ、式R=(V・S/I・L)に基づいて求められる。なお、この式において、Vは電圧値、Sは電極面積、Iは電流値、Lは電極間距離である。
上記溶融比抵抗値の高い熱可塑性樹脂としては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレートもしくはこれらの樹脂を構成するポリマー成分を主成分とした共重合体からなるポリエステル系樹脂が好適に用いられる。
上記の共重合体を用いる場合、そのジカルボン酸成分としてはアジピン酸、セバシン酸、ドデカン二酸等の脂肪族ジカルボン酸;テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,2−ビスフェノキシエタン−p,p′−ジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸;およびこれらのエステル形成誘導体(2,5−ジメチルテレフタル酸等)等が挙げられる。なお、トリメリット酸およびピロメリット酸等の多官能カルボン酸等を用いてもよい。
また、上記共重合体のグリコール成分としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、トリメチロールプロパン、p−キシレングリコール等や平均分子量が150〜2000のポリエチレングリコール等が用いられる。
なお、上記ポリエステル系樹脂の組成物には、例えば帯電防止剤、UV吸収剤または安定剤等からなる各種公知の添加剤を含有させてもよい。
また、溶融比抵抗値の高い上記ポリエステル系樹脂に代え、溶融比抵抗値の低い素材と、各種の添加物(例えば溶融比抵抗値の高い樹脂)とを混合することにより、その溶融比抵抗値を0.3×108(Ω・cm)以上に調整したものを用いてもよい。
上記押出機3により加熱混練される熱可塑性樹脂として、0.3×108(Ω・cm)以上の溶融比抵抗値を有するポリエチレンテレフタレートを使用するとともに、上記構成の製造装置を用いてシートを製造するシートの製造方法について以下に説明する。まず、易滑性の付与を目的とした粒子を必要に応じて配合したポリエチレンテレフタレートのペレットを充分に真空乾燥した後、これを押出機3のホッパー1に供給して加熱混練することにより、口金2から例えば約280℃の温度と、200μm程度の厚みとを有する溶融シート状体4aを押し出して移動冷却体5の周面に接触させる。
上記のようにして移動冷却体5上に押し出された溶融シート状体4aと移動冷却体5との接触点Zの近傍に沿って配設されたテープ状電極10に正電圧を印加し、上記溶融シート状体4aにストリーマコロナ放電を発生させることにより、この溶融シート状体4aに多くの電荷を連続的に付与し、上記溶融シート状体4aを所定速度で搬送しつつ移動冷却体5の周面に静電密着させて冷却する。
すなわち、上記移動冷却体5に対する溶融シート状体4aの接触点Zの近傍に沿って5μm〜200μmの厚みを備えたテープ状の電極10をコロナ放電部6に設けるとともに、このテープ状電極10の先端部に、0.1mm以上の突出量Hを有する複数の突部10aを、上記溶融シート状体4aの搬送方向と直交する方向に沿って配列し、相隣接する突部10aの設置間隔Wを上記テープ状電極10と溶融シート状体4aとの間隙Nの5倍未満に設定するとともに、上記テープ状電極10と溶融シート状体4aとの間隙Nを0.5mm〜10mmの範囲内に設定した状態で、テープ状電極10と移動冷却体5との間に直流の高電圧を印加する。この結果、上記溶融シート状体4aにストリーマコロナ放電が行われることにより、多量の電荷が溶融シート状体4に付与されてこの溶融シート状体4が帯電し、上記移動冷却体5の周面に溶融シート状体4aが静電密着した状態となって効果的に冷却されることになる。
上記移動冷却体5により冷却されたシート状体4bを第1延伸部7に供給してシート状体4bの長手方向に延伸させた後、第2延伸部8に供給してシート状体4bの幅方向に延伸させることにより、所定の幅寸法および厚みを有するシート4cを製造し、これを巻取部9においてロール状に巻き取る。
このように0.3×108(Ω・cm)以上の溶融比抵抗値を有する熱可塑性樹脂を溶融状態としてシート状に押し出す押出機3と、この押出機3から押し出された溶融シート状体4aを冷却する移動冷却体5と、溶融シート状体4aに対してストリーマコロナ放電を行うことにより移動冷却体5に溶融シート状体4aを静電密着させるコロナ放電部6とを備えたシートの製造装置において、上記コロナ放電部6に、5μm〜200μmの厚みを備えたテープ状の電極10を設け、このテープ状電極10を上記移動冷却体5に対する溶融シート状体4aの接触点Zの近傍に沿って配設するとともに、このテープ状電極10と溶融シート状体4aとの間隙Nを0.5mm〜10mmの範囲内に設定し、上記テープ状電極10の先端部に、0.1mm以上の突出量Hを有する複数の突部10aを、上記溶融シート状体4aの搬送方向と直交する方向に沿って配列し、相隣接する突部10aの設置間隔Wを上記テープ状電極10と溶融シート状体4aとの間隙Nの5倍未満に設定したため、原材料が本来有する無異物性、色調または耐熱性等の特性が低下する等の問題を生じることなく、均一な厚みを有するとともに表面欠点のないシートを高速で効率よく製造できるという利点がある。
すなわち、上記のように5μm〜200μmの厚みを有するとともに、0.1mm以上の突出量Hを有する複数個の突部10aが先端部に設けられたテープ状電極10をコロナ放電部6に設け、このテープ状電極10と溶融シート状体4aとの間隙Nを0.5mm〜10mmの範囲内に設定したため、印加電圧を過度に高くすることなく、上記突部10aに電場を集中させて溶融シート状体4aに大電流を流すストリーマコロナ放電を発生させることができ、これにより多量の電荷を溶融シート状体4aに付与してこの溶融シート状体4aを上記移動冷却体5の周面に静電密着させることができる。したがって、上記溶融シート状体4aおよび移動冷却体5の移動速度を、例えば60m/min以上の高速に設定した場合においても、移動冷却体5に溶融シート状体4aを適正に密着させて均等に冷却することができ、シートの表面が粗面化されて透明性が低下する等の弊害を生じることなく、シートの生産性を向上させることができる。
また、上記の構成を有するテープ状電極10を使用することにより、0.3×108(Ω・cm)以上の溶融比抵抗値を有する熱可塑性樹脂を原材料としてシートを製造することが可能となり、上記原材料中にアルカリ金属等を添加して上記溶融比抵抗値を低下させる必要がないため、上記原材料が本来有する無異物性、色調または耐熱性等を損なうことなく、優れた特性を有するシートを効率よく製造できるという利点がある。
しかも、上記のように0.3×108(Ω・cm)以上の溶融比抵抗値を有する熱可塑性樹脂を原材料として使用することにより、上記移動冷却体5に溶融シート状体4aの接触点Zの近傍にテープ状電極10を配設した場合においても、このテープ状電極10から移動冷却体5に流れる電流が大きくなり過ぎて火花放電が生じるのを防止することができる。したがって、上記移動冷却体5に溶融シート状体4aが密着して振動しにくい状態にある上記接触点Zの近傍にテープ状電極10を配設することにより、溶融シート状体4aの振動に起因してテープ状電極10に溶融シート状体4aが接触するという事態の発生を防止することができる。
さらに、上記のようにテープ状電極10の突部10aを溶融シート状体4aに近づけることにより、低電圧で溶融シート状体4aに対するストリーマコロナ放電を適正に行わせて上記溶融シート状体4aを移動冷却体5に静電密着させることができるため、シートの表面が粗面化されて不透明になったり、上記溶融シート状体4aと移動冷却体5との間に空気が部分的に捕捉されてシートの表面に泡状または筋状の欠陥が形成されたりする等の弊害を生じることなく、溶融シート状体4aを効果的に冷却できるという利点がある。
そして、上記テープ状電極10に設けられた相隣接する突部10aの設置間隔Wを上記テープ状電極10と溶融シート状体4aとの間隙Nの5倍未満に設定したため、テープ状電極10の各突部10aから溶融シート状体4aにストリーマコロナ放電が行われる際における相隣接する放電部の間隔が大きくなるのを防止して、均一なストリーマコロナ放電を発生させることができる。このため、上記移動冷却体5に対する密着性が高い部分と低い部分とが交互に発生する現象、つまり筋状の密着不良部分が発生するのを効果的に防止し、溶融シート状体4aの全体を均一に冷却することができるという利点がある。
また、上記実施形態に示すように、テープ状電極10に設けられた各突部10aの間における突出量Hのバラツキを0.2mm未満に設定した場合には、上記溶融シート状体4aの搬送方向と直交する方向に配列されたテープ状電極10の突部10aと溶融シート状体4aとの間隙Nが不均一になることによる放電班の発生を効果的に防止することができる。したがって、印加電圧をそれ程上昇させることなく、上記移動冷却体5に対する溶融シート状体4aの密着不良部分が生じるのを抑制することにより、溶融シート状体4aに部分的な白化現象が発生するのを効果的に防止しつつ、移動冷却体5に溶融シート状体4aを適正に密着させて溶融シート状体4aを効率よく冷却することができる。
さらに、上記実施形態では、移動冷却体5に対する溶融シート状体4aの接触点Zと、テープ状電極10の設置位置とのシート搬送方向におけるずれ量を5mm未満に設定し、好ましくは3mm未満に設定したため、シートの表面が粗面化されたり、シートに穴があいたりする等の弊害を生じることなく、上記溶融シート状体4aを移動冷却体5に適正に密着させることにより、溶融シート状体4aを効果的に冷却できるという利点がある。
すなわち、上記テープ状電極10の設置位置が、移動冷却体5に対する溶融シート状体4aの接触点Zよりも所定値以上に亘り溶融シート状体4aの搬送方向の上流側にずれるのを防止することにより、上記接触点Zの近傍において溶融シート状体4aに安定したストリーマコロナ放電を発生させることができる。このため、上記印加電圧を過度に高い値に設定することなく、上記溶融シート状体4aを移動冷却体5に適正に密着させることが可能となり、溶融シート状体4aを適正に冷却してシートの表面が粗面化されるのを効果的に抑制できるとともに、火花放電が発生してシートに穴があくという事態の発生を効果的に防止できるという利点がある。
また、上記テープ状電極10の設置位置が、移動冷却体5に対する溶融シート状体4aの接触点Zよりも所定値以上に亘り溶融シート状体4aの搬送方向の下流側にずれるのを防止することにより、溶融シート状体4aが移動冷却体5に静電密着する前に冷却、固化が進行するのを防止することができる。このため、移動冷却体5に溶融シート状体4aを適正に密着させて両者の間に空気が部分的に捕捉されるのを抑制することにより、シートの表面に泡状または筋状に欠陥が形成されるのを効果的に防止できるという利点がある。
また、上記のように0.3×10(Ω・cm)以上の溶融比抵抗値を有するポリエステル系樹脂を押出機3から溶融状態でシート状に押し出す押出工程と、押出機3から押し出された溶融シート状体4aを移動冷却体5に密着させて冷却する冷却工程と、冷却後のシート状体4bを延伸する延伸工程とを備え、上記移動冷却体5に対する溶融シート状体4aの接触点Zの近傍に沿って5μm〜200μmの厚みを備えたテープ状の電極10が設置されるとともに、このテープ状電極10と溶融シート状体4aとの間隙Nが0.5mm〜10mmの範囲内に設定され、かつ上記テープ状電極10の先端部に、0.1mm以上の突出量Hを有する複数の突部10aが、上記溶融シート状体4aの搬送方向と直交する方向に沿って配列され、相隣接する突部10aの設置間隔Wが上記テープ状電極10と溶融シート状体4aとの間隙Nの5倍未満に設定されてなるコロナ放電部6から、溶融シート状体4aに対してストリーマコロナ放電を行うことにより、冷却工程で溶融シート状体4aを移動冷却体5に密着させて冷却するようにしたシートの製造方法によれば、上記溶融シート状体4aおよび移動冷却体5の移動速度を高速に設定しつつ、溶融シート状体4aを移動冷却体5に適正に密着させて均等に冷却することができ、均一な厚みを有するとともに表面欠点のないシートを高速で効率よく製造できるという利点がある。
なお、上記実施形態では、冷却後にシート状体4bを第1延伸部7および第2延伸部8によりシートの長手方向および幅方向の二方向に延伸するシートの製造装置および製造方法について説明したが、上記両方向の何れか一方にのみ延伸させるようにしてもよい。一方向延伸の場合は、その力学的剛性から10μm以上の厚みを有するシートが好適に用いられ、二方向延伸の場合には、2μm以上のシートが好適に用いられる。また、上記第1,第2延伸部の7,8の下流部に、シート状体4bをさらに長手方向および幅方向に延伸させる延伸部を設けた構造としてもよい。
また、テープ状電極10の先端部に、矩形の切欠きを一定間隔で形成することにより、所定の突出量Hを有するとともに、矩形に形成された複数の突部10aを設けた上記実施形態に係るA型の電極10に代え、図4に示すように、テープ状電極10の先端部に、先拡がりの切欠きを一定間隔で形成することにより、先窄まりの台形状に形成された複数の突部10bを設けたB型の電極10B、あるいは図5に示すように、V字状の切欠きを一定間隔で形成することにより、先窄まりの三角形状に形成された複数の突部10cを設けたC型の電極10C、または図6に示すように、アーチ状の切欠きを一定間隔で形成することにより、富士山型に形成された複数の突部10dを設けたD型の電極10Dを使用してもよい。
本発明の実施例1a〜1cでは、固有粘度が0.62dl/gのポリエチレンテレフタレート樹脂にCaCO3を含有させた樹脂ペレットと、CaCO3を含有させない樹脂ペレットとを混合して全体で溶融比抵抗値が1.2×108(Ω・cm)に設定された原材料を構成し、これを135℃の温度で約6時間に亘り減圧乾燥(1.3hPa)した後、押出機3に供給して280℃の温度で加熱混練し、450mmの幅寸法を有する押出機3の口金2から溶融状態のシート状体4aとして移動冷却体5上に押し出すようにした。
また、表面温度を20℃に保った金属ロールからなる移動冷却体5の周面に対向するように、10mmの幅寸法と50μmの厚みとを有するステンレス鋼(東洋製箔株式会社製のオーステナイト系SUS316)からなるテープ状電極10を設置した状態で、このテープ状電極10と上記移動冷却体5との間に6.9kV〜10.1kVの電圧を印加して7.8mA〜10.4mAの電流を流し、上記移動冷却体5の移動速度を80m/min、90m/min、100m/minの速度で移動させつつ、260mmの幅寸法と140μmの厚みとを有する溶融シート状体4aを成形するとともに、この溶融シート状体4aの移動冷却体5に対する密着状態を観測することにより下記表1に示すようなデータが得られた。
Figure 0004325355
上記実施例1a〜1cにおけるテープ状電極10として、図3に示すように、その先端部に矩形の切欠きが一定間隔で形成されることにより、2mmの突出量Hと、3mmの幅寸法とを有するとともに、矩形に形成された複数の突部10が設けられたA型の電極を使用した。また、相隣接する突部10の設置間隔Wを6mmに設定するとともに、上記テープ状電極10と溶融シート状体4aとの間隙Nを5mmに設定した。
一方、比較例1a〜1cでは、上記テープ状電極10に代えて30μmの直径を有するタングステンワイヤからなる電極を、移動冷却体5の周面に対する溶融シート状体4aの接触点Zの近傍に設置するとともに、この電極と溶融シート状体4aとの間隙Nを5mmに設定し、かつ上記移動冷却体5の移動速度を30m/min〜35m/minに設定するとともに、上記電極と移動冷却体5との間に印加される電圧値と電流とを種々の値に調節した。また、比較例2a〜2cでは、厚みが20μmに設定されるとともに、先端部に突部10aが形成されていないテープ状の電極を使用し、その他の点は上記比較例1a〜1cと同様に構成した。
上記データから、移動冷却体5の移動速度を80m/minに設定した本発明の実施例1a、90m/minに設定した実施例1bおよび100m/minに設定した実施例1cの何れにおいても、テープ状電極10に設けられた3mmの幅寸法を有する上記突部10aの左右両コーナ部から3mm間隔でストリーマコロナ放電が発生していることが観測され、移動冷却体5に溶融シート状体4aが適正状態で密着していることが確認された。なお、表1において、SCはストリーマコロナ放電現象が見られたことを示し、○印は溶融シート状体4aの全体が完全に冷却され、シートの表面にピン状の泡が形成される等の欠点が見られない状態を示している。また、表1において、△印はシートの表面に薄いピン状の欠点が部分的に認められる状態を示し、×印はシートの全体にピン状の欠点が認められ、あるいは筋状の欠点が認められる状態を示している。
これに対してタングステンワイヤからなる電極を使用した上記比較例1a〜1cまたは突部のないテープ電極を使用した上記比較例2a〜2cでは、移動冷却体5の移動速度を30m/minよりも速くすると、移動冷却体5と溶融シート状体4aとの間に空気の泡が入ったり、筋状の斑が生じたりすることが避けられなかった。これを防止するために、上記印加電圧を上昇させると、火花放電が生じたり、ワイヤが切断されたり、シートに冷却班が生じたり、あるいは移動冷却体5に溶融シート状体が巻付いたりして適正にシートを製造することができなかった。
上記実施例1bと同様に構成された本発明の実施例2aと、突部10bの形状が図4に示すように台形状態に形成されたB型のテープ状電極10Bを使用し、かつテープ状電極10Bと上記移動冷却体5との間に9.8kVの電圧を印加して9.1mAの電流を流すようにした点を除いて上記実施例1bと同様に構成した本発明の実施例2bと、突部10Cの形状が図5に示すように三角形状に形成されたC型のテープ状電極10Cを使用し、かつテープ状電極10と上記移動冷却体5との間に9.6kVの電圧を印加して9.4mAの電流を流すようにした点を除いて上記実施例1bと同様に構成した本発明の実施例2cとにおいて、移動冷却体5に対する密着状態を観測した結果、下記表2に示すようなデータが得られた。このデータから、本発明の実施例2a〜2cでは、電極から溶融シート状体4aに対して所定間隔でストリーマコロナ放電が発生していることが観測され、移動冷却体5に溶融シート状体4aが適正状態で密着していることが確認された。
Figure 0004325355
これに対してA型の電極に設けられた突部10aの突出量Hを0.05mmに設定した点を除いて本発明の上記実施例2aとほぼ同様に構成した比較例3aと、相隣接する突部10aの設置間隔Wを30mmに設定した点を除いて本発明の上記実施例2aとほぼ同様に構成した比較例3bとにおいて、移動冷却体5の移動速度を70m/minに設定した場合には、移動冷却体5に溶融シート状体4aを適正に密着させることができず、比較例3aではシートの表面に薄いピン状の欠点が部分的に認められ、比較例3bではシートの全体にピン状の欠点が認められ、あるいは筋状の欠点が認められた。
また、B型のテープ状電極10Bに設けられた突部10bの突出量Hを0.05mmに設定するとともに、上記テープ状電極10Bと上記移動冷却体5との間に9.8kVの電圧を印加して5.3mAの電流を流すようにした点を除いて本発明の上記実施例2bと同様に構成した比較例4aと、相隣接する突部10bの設置間隔Wを30mmに設定するとともに、テープ状電極10Bと上記移動冷却体5との間に10.5kVの電圧を印加して4.2mAの電流を流すようにした点を除いて本発明の上記実施例2bとほぼ同様に構成した比較例4bとにおいて、移動冷却体5の移動速度を70m/minに設定した場合には、移動冷却体5に溶融シート状体4aを適正に密着させることができず、比較例4aではシートの表面に薄いピン状の欠点が部分的に認められ、比較例4bではシートの全体にピン状の欠点が認められ、あるいは筋状の欠点が認められた。
さらに、図5に示すC型のテープ電極10Cに設けられた突部10cの突出量Hを0.05mmに設定するとともに、上記テープ状電極10Cと上記移動冷却体5との間に9.8kVの電圧を印加して5.6mAの電流を流すようにした点を除いて本発明の上記実施例2cと同様に構成した比較例5aと、相隣接する突部10cの設置間隔Wを30mmに設定するとともに、電極と上記移動冷却体5との間に10.2kVの電圧を印加して4.4mAの電流を流すようにした点を除いて本発明の上記実施例2cと同様に構成した比較例5bとにおいて、移動冷却体5の移動速度を70m/minに設定した場合には、移動冷却体5に溶融シート状体4aを適正に密着させることができず、比較例5aではシートの表面に薄いピン状の欠点が部分的に認められ、比較例5bではシートの全体にピン状の欠点が認められ、あるいは筋状の欠点が認められた。
本発明に係るポリエステル系樹脂シートの製造装置および製造方法によれば、従来では困難であった溶融比抵抗値の高い熱可塑性樹脂からなる溶融シート状体を移動冷却体に適正に静電密着させ、移動冷却体の移動速度を高くした場合においても、上記溶融シート状体を適正に冷却してシートの生産性を高めることができ、産業界に寄与するところが大である。
本発明の実施形態に係るポリエステル系樹脂シートの製造装置の全体構成を示す説明図である。 テープ状電極の設置状態を示す側面図である。 テープ状電極の設置状態を示す正面図である。 テープ状電極の別の例を示す説明図である。 テープ状電極のさらに別の例を示す説明図である。 テープ状電極のさらに別の例を示す説明図である。
符号の説明
3 押出機
4a 溶融シート状体
5 移動冷却体
6 コロナ放電部
7,8 延伸部
10 テープ状電極
10a 突部

Claims (4)

  1. 0.3×10(Ω・cm)以上の溶融比抵抗値を有するポリエステル系樹脂を溶融状態としてシート状に押し出す押出機と、この押出機から押し出された溶融シート状体を冷却する移動冷却体と、溶融シート状体に対してストリーマコロナ放電を行うことにより移動冷却体に溶融シート状体を静電密着させるコロナ放電部とを備えたポリエステル系樹脂シートの製造装置において、上記コロナ放電部に、5μm〜200μmの厚みを備えたテープ状の電極を設け、このテープ状電極を上記移動冷却体に対する溶融シート状体の接触点の近傍に沿って配設するとともに、このテープ状電極と溶融シート状体との間隙を0.5mm〜10mmの範囲内に設定し、上記テープ状電極の先端部に、0.1mm以上の突出量を有する複数の突部を、上記溶融シート状体の搬送方向と直交する方向に沿って配列し、相隣接する突部の設置間隔を上記テープ状電極と溶融シート状体との間隙の5倍未満に設定したことを特徴とするポリエステル系樹脂シートの製造装置。
  2. テープ状電極に設けられた各突部間における突出量のバラツキを0.2mm未満に設定したことを特徴とする請求項1に記載のポリエステル系樹脂シートの製造装置。
  3. 移動冷却体に対する溶融シート状体の接触点と、テープ状電極の設置位置とのシート搬送方向におけるずれ量を5mm未満に設定したことを特徴とする請求項1または2に記載のポリエステル系樹脂シートの製造装置。
  4. 0.3×10(Ω・cm)以上の溶融比抵抗値を有するポリエステル系樹脂を押出機から溶融状態でシート状に押し出す押出工程と、押出機から押し出された溶融シート状体を移動冷却体に密着させて冷却する冷却工程と、冷却後のシート状体を延伸する延伸工程とを備えたポリエステル系樹脂シートの製造方法において、上記移動冷却体に対する溶融シート状体の接触点の近傍に沿って5μm〜200μmの厚みを備えたテープ状の電極が設置されるとともに、このテープ状電極と溶融シート状体との間隙が0.5mm〜10mmの範囲内に設定され、上記テープ状電極の先端部に、0.1mm以上の突出量を有する複数の突部が、上記溶融シート状体の搬送方向と直交する方向に沿って配列され、相隣接する突部の設置間隔が上記テープ状電極と溶融シート状体との間隙の5倍未満に設定されてなるコロナ放電部から、上記冷却工程で溶融シート状体にストリーマコロナ放電を行うことにより、溶融シート状体を移動冷却体に密着させて冷却することを特徴とするポリエステル系樹脂シートの製造方法。
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