JP4437587B2 - 熱可塑性樹脂シートの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱可塑性樹脂シートの製造方法に関し、特に生産性、すなわち高速キャスト性に優れ、得られるシートの品質にも優れた熱可塑性樹脂シートの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の熱可塑性樹脂シートの製造方法では、例えば特公昭37−6142号公報に示されるように、口金から溶融押し出ししたシートを該樹脂のガラス転移温度未満に保たれた移動冷却体上に直流高電圧を印加しながら密着させて急冷し、表面が平滑な非晶質のキャストシートを得、さらに必要に応じて引き続き一軸延伸または二軸延伸する方法が採られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、この様な方法では、次のような欠点が生じることがある。すなわち、溶融した熱可塑性樹脂シートを冷却ドラムに密着急冷して、結晶性の低い、透明で表面平滑なシートを得る最高速度は、シートと冷却媒体との静電密着力の限界から空気の噛み込みを防止出来ないために、40〜60m/分程度より速くすることが出来ず、生産性の悪いものとならざるを得なかった。シートと回転冷却体との密着力を高めるためにはより多くの電荷をシートに与えることが必要であるが、このために印加電圧を高めれば電極とシート間での放電が発生するので、密着力を高めることが困難である。またこのような放電は、回転冷却体にキズを付けるおそれがあるため、シート表面に欠点が発生する原因にもなる。
【0004】
一方、冷却固化したシートを延伸する場合、通常、シートを加熱したロールに接触させながら加熱し、周速度の異なるロール間で延伸を行っている。延伸時にはシートに張力がかかるため、ニップロールなどでシートを延伸ロールに押さえつけているが、シートのロール上での滑りを完全に防止することが難しく、滑りによるキズがシートに発生するなどの問題があった。
【0005】
本発明の課題は、上記従来技術の欠点を解消し、生産性・品質ともに優れた熱可塑性樹脂シートを得ることのできる製造方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上述した問題に鑑み、鋭意検討した結果、熱可塑性樹脂シートへパルス波形電圧を印加しながら回転冷却体またはロールに密着させることによって前記問題が解決できることを見出し、本発明に至った。
【0007】
すなわち、本発明に係る熱可塑性樹脂シートの製造方法は、熱可塑性樹脂シート上に設置した電極に電圧を印加することにより該シートを回転体に密着させる熱可塑性樹脂シートの製造方法において、前記電極に、繰り返し周波数fが200Hz〜30kHzの範囲にあるパルス波形電圧を印加することを特徴とする方法からなる。
【0008】
この方法では、たとえば、熱可塑性樹脂を溶融後、口金から溶融シートとして吐出し、該溶融シート上に設置した電極に前記パルス波形電圧を印加しながら該溶融シートを回転冷却体上に密着冷却固化させる。熱可塑性樹脂の溶融比抵抗としては、108Ω・cm〜1012Ω・cmの範囲にあることが好ましい。
【0009】
上記方法では、たとえば、熱可塑性樹脂シート上に設置した電極にパルス波形電圧を印加しながら該シートをロールに密着させ、該シートを冷却または加熱または搬送または延伸する。
【0010】
このような熱可塑性樹脂シートの製造方法においては、印加されるパルス波形電圧におけるパルスの半値幅が0.1〜10マイクロ秒の範囲にあることが好ましい。また、パルスの立ち上がり時間は0.05〜5マイクロ秒の範囲にあることが好ましい。
【0011】
印加するパルス波形電圧は正電圧とすることもでき、パルスが孤立した1周期の正弦波である態様をすることもできる。
【0012】
パルス波形のピーク電圧は1kV〜20kVの範囲にあることが好ましい。また、パルス波形電圧に1kV〜20kVの直流電圧を重畳させることで、より溶融シートと冷却体との密着力が向上する。
【0013】
電極の温度としては、100℃以上とすることが好ましい。電極としては、ワイヤー状電極、テープ状電極およびロール状電極のいずれかを用いることができる。
【0014】
このような本発明に係る熱可塑性樹脂シートの製造方法は、熱可塑性樹脂がポリエステル組成物である場合に好適である。また、本発明に係る熱可塑性樹脂シートの製造方法は、熱可塑性樹脂シートの製造における各種の工程に適用できるが、本発明に係る方法を用いた後に、熱可塑性樹脂シートを延伸および/または熱処理に供することもできる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明を、望ましい実施の形態とともに詳細に説明する。
本発明は、熱可塑性樹脂シートにパルス波形電圧を印加することで回転体に密着させる熱可塑性樹脂シートの製造方法であり、さらには溶融した熱可塑性樹脂シートへパルス波形電圧を印加しながらキャスティングする熱可塑性樹脂シートの製造方法と熱可塑性樹脂シートへパルス波形電圧を印加しながらロール上で冷却、加熱、搬送、延伸等を行う熱可塑性樹脂シートの製造方法を含む。いずれの場合も、パルス波形電圧を印加することで、熱可塑性樹脂シートが回転体に従来よりも強く密着することから、溶融シートに適用すれば高速キャストが可能になり、固化したシートに適用すればロール上での滑りが抑制されてシート表面キズが防止できる。
【0016】
本発明の方法によれば、電極からの放電を招くことなく多くの電荷を熱可塑性樹脂シートへ注入することができる。この理由は、従来の直流電圧印加に比較し、パルス波形電圧を印加すれば電極での空気のイオン化が起こりやすいためである。電極で多量に発生したイオンは、電極から発生する電気力線に沿って熱可塑性樹脂シートへ到達し熱可塑性樹脂シートを帯電させる。つまり、従来の直流電圧印加に比較して熱可塑性樹脂シートの帯電量が多くなるのである。熱可塑性樹脂シートと回転体との密着力は熱可塑性樹脂シートの帯電量に対応するため、熱可塑性樹脂シートの密着力が高まる。このため、溶融熱可塑性樹脂シートを回転冷却体上で高速キャストすることが可能となり、さらに熱可塑性樹脂シートをロールを用いて処理や加工する場合においては、ロール上でシートが滑ることを防止できるのである。また、本発明の方法は、電極からの放電が起こりにくいため、回転体を放電によって傷付けることもなく、シートの表面欠点が発生しにくいという特徴も持つ。
【0017】
本発明において用いられるパルス波形電圧は、直流電圧のように時間的に定常な電圧とは異なり、時間的に変化する電圧のことである。さらには通常の正弦波のような時間的に連続変化する波形ではなく、孤立した波形と定常な出力の組み合わせからなる。
【0018】
本発明において用いられるパルス波形電圧は、繰り返し周波数fが200Hz〜30kHzの範囲にあることが必要である。200Hz未満である場合、発生する空気のイオン量が少なく、熱可塑性樹脂シートの密着力が小さく、高速キャストやロール上での滑り防止に不十分である。一方、繰り返し周波数が30kHzを越える場合、電極からの放電が起こりやすく、キャストが不安定になったり、ロール上ではビビリが発生するおそれがある。好ましい繰り返し周波数は500Hz〜20kHzの範囲であり、さらに好ましくは1kHz〜15kHzの範囲である。
【0019】
本発明におけるパルス波形としては、パルス幅が短いほど好ましく、その半値幅が0.1〜10マイクロ秒の範囲にあることが好ましい。半値幅とは、パルスがピーク値の50%以上出力されている持続時間のことであり、ピーク値とは時間的に変化する出力から時間的に定常な出力を差し引いた値のことである。さらに、パルス立ち上がり時間としては、0.05〜5マイクロ秒の範囲にあることが好ましい。パルス立ち上がり時間とは、パルス出力が10%から90%まで上昇するまでにかかる時間のことであり、パルス出力とは時間的に変化する出力から時間的に定常な出力を差し引いた値のことである。このように鋭いパルス波形が好ましい。
【0020】
次にパルス波形の形状であるが、正電圧または負電圧の凸形状のみならず、孤立した1周期の正弦波も好ましく用いられる。凸形状である場合には正電圧出力が好ましい。
【0021】
パルス波形のピーク出力は、正電圧、負電圧いずれの場合も1kV〜20kVの範囲が好ましく、さらにはパルス波形電圧に1kV〜20kVの直流電圧を重畳することが好ましい。例えば、正弦波ピーク出力に直流正電圧を重畳すれば正電圧ピークが負電圧ピークよりも大きくなる。
【0022】
本発明で用いるパルス波形電圧は、パルス発信回路と高圧トランスを組み合わせた高周波発生装置によって得ることができ、その出力を熱可塑性樹脂シート上に設置した電極へ印加すればよい。この時、回転体はアース(接地)しておけばよく、熱可塑性樹脂シートに流れる電流値を制限するために、アースと回転体間に電気抵抗を挿入することもできる。
【0023】
本発明では、熱可塑性樹脂シート上に設置した電極へ高電圧を印加するが、このための電極としてはワイヤー状電極やテープ状電極、またはロール状電極を好ましく用いることができる。ワイヤー状電極およびテープ状電極の場合には、これらの電極を熱可塑性樹脂シートから1mm〜50mm離れた位置にシート幅方向に張ればよい。ロール状電極の場合には、直接熱可塑性樹脂シートに接触させて印加することができる。
【0024】
本発明ではさらに、熱可塑性樹脂シートに含有されるオリゴマーなどの揮発成分が電極に析出しないように電極自身を100℃以上に加熱することが好ましい。電極の加熱は、パルスの半値幅が1マイクロ秒以下であるパルス波形電圧を2kHz以上の繰り返し周波数で印加したり、加熱ヒータによって加熱することによって実施することができる。
【0025】
次に本発明で用いる回転体は、溶融シートのキャスティングに使用する場合には形態としてドラムが好ましく、その内部には冷却水などを循環させ、ドラム表面温度を一定に保つことが好ましい。ドラム表面は金属であることが好ましく、例えばハードクロムメッキを施した、表面粗度が0.5S以下の表面を有するものが好ましい。さらに固化したシートの冷却、加熱、搬送、延伸に用いる回転体としては、ロールを用い、必要に応じて冷却、加熱機構を設ける。ロール表面は金属であることが好ましく、例えばハードクロムメッキを施した、表面粗度が0.5S以下の表面を有するものが好ましい。
【0026】
本発明の方法によって得られたシートには、必要に応じてさらに延伸および/または熱処理を施すことができる。延伸は縦一軸延伸、横一軸延伸、逐次二軸延伸、同時二軸延伸など、各種方法によって行うことができ、通常は二軸延伸することによって機械的バランスのとれたシートを得ることができる。延伸は周速度の異なるロール間で行う方法や、クリップによってシートを把持し、該クリップ間隔を変更するテンター方式で行うことができる。延伸倍率は特に限定されないが、一方向へ2〜8倍延伸することが好ましく、さらには3〜6倍程度が好ましい。この延伸時に本発明の方法を用いれば、シートのロール上での滑りキズを抑制できる。なお、延伸はガラス転移温度Tg以上の温度で行えばよい。熱処理は延伸後、必要に応じて所定の温度で行えばよく、必要なシート特性によって適宜条件を設定すればよい。
【0027】
本発明に係る製造方法は、各種の熱可塑性樹脂シート製造に好ましく用いることが出来る。本発明における熱可塑性樹脂とは、加熱によって流動性を示す樹脂であり、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリフェニレンスルフィド、ビニルポリマー、およびそれらの混合体や変性体などから選ばれた樹脂が代表的であり、本発明の場合、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂などが好ましく、特にポリエステル樹脂が好ましい。
【0028】
ポリエステルとは、分子主鎖中にエステル結合を有する高分子化合物であり、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートおよびこれらの共重合体を挙げることができ、中でもポリエチレンテレフタレートとポリエチレンナフタレートおよびこれらの共重合体が好ましく、特にポリエチレンテレフタレートおよびその共重合体が好ましい。これらの高分子化合物の繰替し単位は80以上、好ましくは120以上有るのがよい。固有粘度としては、オルトクロルフェノール(OCP)中での測定値として0.4(dl/g)以上、好ましくは0.55(dl/g)以上であるのがよい。もちろんこれらのポリエステル樹脂には各種の添加剤、例えば滑材、安定剤、酸化防止剤、粘度調整剤、帯電防止剤、着色剤、顔料、液晶ポリエステルなどの樹脂を併用することができる。
【0029】
また、ポリアミド樹脂とは、主鎖中にアミド結合を有する高分子化合物であり、代表的な物としては、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン12、ナイロン11、ナイロン7、ポリメタ/パラキシリレンアジパミド、ポリヘキサメチレンテレフタラミド/イソフタラミド、およびそれらの関連共重合体、混合体などから選ばれたポリアミド化合物である。さらにポリフェニレンスルフィド樹脂としては、分岐構造を実質的に含まない直鎖状の化合物が良い。
【0030】
本発明の方法によってキャスティングを行う場合、熱可塑性樹脂の溶融比抵抗は108Ω・cm〜1012Ω・cmの範囲が好ましい。
【0031】
本発明の熱可塑性樹脂シートの製造方法によれば、熱可塑性樹脂シートを高速キャストによって生産性良く製造することができ、さらにシートのロール加工時に発生する滑りキズが抑制できるために品質の高いシートが製造できる。
【0032】
次に、本発明における熱可塑性樹脂シートの製造方法をポリエチレンテレフタレートシートの製造を例としてより具体的に示す。
原料としてポリエチレンテレフタレート樹脂または必要に応じて他の化合物を添加ブレンドした原料、例えば、液晶ポリマーや他のポリエステル樹脂、さらに酸化珪素、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化チタン、酸化アルミニウム、架橋ポリエステル、架橋ポリスチレン、マイカ、タルク、カオリンなどの無機化合物、エチレンビスステアリルアミド、イオン性高分子化合物アイオノマー等の有機化合物等を添加した原料、一旦溶融させた原料、さらには本発明のシートの回収原料などを混合した原料などを準備し、これを乾燥・脱水した後、一軸押出機、二軸押出機、ベント押出機、タンデム押出機などの溶融押出機に供給し、分子量、例えば固有粘度[η]を極力低下させないように窒素気流下、あるいは真空下で溶融押出する。もちろん、溶融温度は該ポリエステル樹脂の融点Tm以上であることが普通であるが、一旦、該樹脂の融点Tm以上で溶融させた後に該融点Tm以下、該溶融結晶化温度Tmc以上に冷却する、いわゆる過冷却状態で押出を行うこともできる。このような過冷却状態での押出は、該樹脂の熱分解・ゲル化を減少させる効果があるばかりか、低分子量オリゴマーの生成も少なくなるために、ドラム汚れも少なくなりキャストしやすくなるという効果もある。なお、原料中の異物を除去するために、溶融樹脂を適宜のフィルター、例えば、焼結金属、多孔性セラミック、サンド、金網等で濾過しながら押し出すことが好ましい。
【0033】
口金とキャストドラムの位置関係は特に限定はしないが、溶融樹脂シートが鉛直方向へ押し出されるように調整することが安定したキャスティングには好ましい。さらに、該口金から溶融シートを押し出すときのドラフト比(=口金リップ間隔/押出されたシート厚み)は、好ましくは3以上、より好ましくは7〜20の範囲とすることにより、厚みむらの小さい、平面性の良いシートが得られやすい。
【0034】
かくして溶融されたポリエステル樹脂を口金から押し出すのであるが、溶融シートと冷却ドラムが接する地点の上部付近に、たとえばワイヤー状電極をシート幅方向に張っておき、この電極にパルス波形の電圧を印加しながらキャスティングし、冷却体のドラムに密着させて急冷してキャストする。
【0035】
かくして得られたキャストシートは必要に応じて延伸処理を行うが、例えば逐次二軸延伸法であれば、キャストシートをまず予熱ロールによってガラス転移温度Tg以上に加熱し、周速度の異なるロールによって長手方向に2〜8倍延伸し、冷却ロールによってシートを冷却する。このとき予熱ロール、延伸ロール、冷却ロール上でシートへパルス波形電圧を印加すればロール上での滑りが抑制され、シート表面キズの発生が防止できる。次いで長手方向に延伸されたシートはテンター式横延伸機に導かれ、シート両端をクリップによって把持し熱風によってシートをTg以上に加熱する。両端クリップの幅を拡げることでシートを横方向に2〜8倍延伸し、さらに必要に応じて熱風によってシートを熱処理する。
【0036】
〔物性の測定法〕
つぎに本発明の説明に使用した物性の測定法について以下に述べる。
(1)ポリエステル樹脂の固有粘度[η]
25゜Cで、o−クロルフェノールを溶媒として次式より求めた。
[η]= lm[ηsp/c]
比粘度ηspは、相対粘度ηr から1を引いたものである。cは、濃度である。単位はdl/gで表わす。
【0037】
(2)キャスト密着性
キャストドラム上で空気などを噛み込んだり垂れ下がったり、その他のキャスト欠点が何ら見えない場合を○、何らかの欠点が肉眼で見える場合を×とした。
【0038】
(3)キャスト表面性
キャストされたシート表面10m2以上に光を当て、その反射光を肉眼で見てクレーターなどの表面凹凸の有無で判定する。判定基準は次のとおりである。
・全く表面に凹凸が見あたらない・・・○
・表面に凹凸があるが、深さが0.1μm未満と浅く、延伸によって消失する・・・△
・全面に凹凸が見られる ・・・×
【0039】
(4)キャスト剥離性
キャストドラムからの剥離のしやすさであり、判定基準は次のとおりである。
・キャストから自然に剥離するもの ・・・○
・剥離できるが、剥離力が100g/cm以上の時・・・△
・剥離が困難な場合 ・・・×
【0040】
(5)シート表面キズ
延伸されたシートを幅20cmにおいて8等分し、2.5cm角の大きさに切り出しアルミニウム蒸着した。蒸着サンプルを光学顕微鏡で表面を観察し、キズの本数を数えた。なお、キズの本数は8等分した8サンプルの平均本数とした。判定基準は次のとおりである。
・キズが0本であったもの ・・・○
・キズが1本から10本あったもの・・・△
・キズが11本以上あったもの ・・・×
【0041】
(6)熱可塑性樹脂の溶融比抵抗
熱可塑性樹脂を真空乾燥後、内径50mmの試験管に入れ、窒素雰囲気下で溶融後、溶融樹脂中に一対の銅製電極を挿入し、280℃で直流電圧を印加し、次式によって溶融比抵抗を求めた。
[ρ]=(V×S)/(I×D)
Vは印可電圧、Sは電極面積、Iは電流値、Dは電極距離である。
【0042】
【実施例】
実施例により、本発明をさらに詳細に説明する。
実施例1
熱可塑性樹脂として、ポリエチレンテレフタレート(PET)(固有粘度〔η〕=0.63、280℃での溶融比抵抗=3×109Ω・cm)を用い、これに添加剤として平均粒径0.8μmの合成炭酸カルシウム粒子を0.1wt添加した。PET樹脂の含水率が20ppm以下になるように乾燥した後、シリンダー径250mmの公知の溶融押出機に供給して285℃で溶融した後に10μmカットの繊維燒結金属フィルターを通過させて濾過した後、Tダイ口金に導入し、溶融体をシート状に押出した。
【0043】
溶融シートは直径1.5mの表面がハードクロムメッキされた表面粗度0.1Sのキャスティングドラムへ押し出し、さらに溶融シートがドラム上に着地する部分の上部に溶融シートから5mm離れた位置に直径0.15mmのタングステンワイヤー電極を張り、該ワイヤー電極にパルス繰り返し周波数2kHz、立ち上がり時間が1マイクロ秒、半値幅1.5マイクロ秒、ピーク値+8kVのパルス状電圧を印加しながら80m/分の速度でキャスティングした。この時、ドラムには冷却水を通水し、ドラム表面温度を25℃とし、タングステンワイヤーは、該ワイヤーを巻いたロールから新しいワイヤーを送り出しながら電圧を印加した。
【0044】
このようにしてキャスティングした結果、表1に示すように、キャスト密着性、キャスト剥離性が良好であり、さらに得られたシートの表面性も良好であった。
【0045】
かくして得られたキャストシートは厚み120μm、幅850mmであり、厚みむらの小さい、平面性の優れた、表面欠点のない、非晶性のシートであった。
【0046】
続いて、該押出シートをロール式長手方向多段延伸機で延伸温度93℃で3.5倍長手方向に延伸した後Tg以下に冷却した。該ロール式延伸機の冷却ロール上では別途導電性ロールを設置し、該ロールと冷却ロールで一軸延伸シートを挟みながら導電性ロールにはパルス繰り返し周波数2kHz、立ち上がり時間が1マイクロ秒、半値幅1.5マイクロ秒、ピーク値+5kVのパルス電圧を印加した。
【0047】
ロール延伸終了後、続いて該長手方向延伸シートの両端をクリップで把持しながらテンタに導き、延伸温度98℃に加熱された熱風雰囲気中で幅方向に3.5倍延伸後、220℃で定長熱固定、および150℃で幅方向に3%のリラックス熱固定し、厚さ10μmの二軸配向ポリエステルシート(ポリエステルフィルム)を、破れることなく安定な状態で約280m/分という高速で巻取り製膜した。
【0048】
かくして得られたシートは表面欠点が全く無い平面性の優れたシートであった。結果を表1に示す。
【0049】
比較例1
タングステンワイヤーに印加する電圧を直流+8kVとする以外は実施例1と全く同様にしてシートを製膜した。80m/分のキャスト速度ではキャスト密着性および表面性は不良であり、シート幅も変動が大きく、横延伸工程でクリップはずれが頻発した。さらに延伸されたシート表面には空気噛み込みによる凹凸が存在し、品質・生産性ともに劣っていた。十分な品質のフィルムを得るには、キャスト速度を50m/分まで落とすことが必要であった。結果を表1に示す。
【0050】
実施例2、3
パルス波形の繰り返し周波数、パターンを変更する以外は実施例1と全く同様にしてシートを製膜した。いずれの場合にも品質・生産性共に優れていた。結果を表1に示す。
【0051】
実施例4
パルス波形として、パルス繰り返し周波数3kHz、波長2マイクロ秒、ピーク高さ+8kVから−4kVである孤立した1周期の正弦波を用い、これに+2kVの直流高電圧を重畳してタングステンワイヤーへ印加する以外は実施例1と全く同様にしてシートを製膜した。結果を表1に示す。
【0052】
実施例5
実施例1におけるパルス波形の繰り返し周波数を10kHz、パルス半値幅を0.5マイクロ秒、立ち上がり時間を0.2マイクロ秒とし、タングステンワイヤーの巻だしをやめる以外は実施例1と全く同様にしてシートを製膜した。製膜中、タングステンワイヤーは220℃に加熱されており、PETのオリゴマーが付着することは無く、安定した製膜を行うことができた。結果を表1に示す。
【0053】
比較例2
キャスティング速度を50m/分とし、ロール延伸機の冷却ロール上での導電性ロールによるニップおよび印加を中止する以外は比較例1と同様の方法によって製膜を行った。キャスティング速度を50m/分とすることでキャスト工程での問題はなかったが、ロール延伸でのキズが多く発生した。結果を表1に示す。
【0054】
実施例6
ロール延伸機の冷却ロール上での導電性ロールによるニップおよびパルス波形電圧の印加を実施例1と同様におこなう以外は比較例2と同様の方法によって製膜を行った。比較例2で見られたロール延伸でのキズは発生しなくなった。結果を表1に示す。
【0055】
【表1】
【0056】
【発明の効果】
本発明の熱可塑性樹脂シートの製造方法によれば、パルス波形の電圧を溶融シートに印加しながらキャスティングすることにより、キャスティング速度が高速化でき、さらに高品質なシートを生産性良く製造することができる。また、パルス波形の電圧を成形された樹脂シートに印加しながらロールに密着させることにより、冷却、加熱、搬送、延伸などの工程でのロールとの間の滑りを防止できるとともに、ロール表面の傷発生も防止でき、工程の安定化とともに得られるシートの表面品質の向上を達成できる。このようにして製造されたシートは、工業材料、磁気材料、包装材料として好ましく使用することができる。
Claims (14)
- 熱可塑性樹脂シート上に設置した電極に電圧を印加することにより該シートを回転体に密着させる熱可塑性樹脂シートの製造方法において、前記電極に、繰り返し周波数fが200Hz〜30kHzの範囲にあるパルス波形電圧を印加することを特徴とする熱可塑性樹脂シートの製造方法。
- 熱可塑性樹脂を溶融後、口金から溶融シートとして吐出し、該溶融シート上に設置した電極に前記パルス波形電圧を印加しながら該溶融シートを回転冷却体上に密着冷却固化させることを特徴とする、請求項1に記載の熱可塑性樹脂シートの製造方法。
- 熱可塑性樹脂の溶融比抵抗が108Ω・cm〜1012Ω・cmの範囲にあることを特徴とする、請求項2に記載の熱可塑性樹脂シートの製造方法。
- 熱可塑性樹脂シート上に設置した電極にパルス波形電圧を印加しながら該シートをロールに密着させ、該シートを冷却または加熱または搬送または延伸することを特徴とする、請求項1に記載の熱可塑性樹脂シートの製造方法。
- パルスの半値幅が0.1〜10マイクロ秒の範囲にあることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の熱可塑性樹脂シートの製造方法。
- パルスの立ち上がり時間が0.05〜5マイクロ秒の範囲にあることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の熱可塑性樹脂シートの製造方法。
- 印加するパルス波形電圧が正電圧であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の熱可塑性樹脂シートの製造方法。
- パルスが孤立した1周期の正弦波であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の熱可塑性樹脂シートの製造方法。
- パルス波形のピーク電圧が1kV〜20kVの範囲にあることを特徴とする、請求項1〜8のいずれかに記載の熱可塑性樹脂シートの製造方法。
- パルス波形電圧に1kV〜20kVの直流電圧を重畳することを特徴とする、請求項1〜9のいずれかに記載の熱可塑性樹脂シートの製造方法。
- 電極の温度を100℃以上とすることを特徴とする、請求項1〜10のいずれかに記載の熱可塑性樹脂シートの製造方法。
- 電極としてワイヤー状電極、テープ状電極およびロール状電極のいずれかを用いることを特徴とする、請求項1〜11のいずれかに記載の熱可塑性樹脂シートの製造方法。
- 熱可塑性樹脂がポリエステル組成物であることを特徴とする、請求項1〜12のいずれかに記載の熱可塑性樹脂シートの製造方法。
- 熱可塑性樹脂シートを延伸および/または熱処理することを特徴とする、請求項1〜13のいずれかに記載の熱可塑性樹脂シートの製造方法。
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