JP4321919B2 - 信号処理方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、キャリア信号に重畳された目的信号を複素データとして取り出す信号処理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
無線通信システム等では、データを複素数として取り扱うことが一般的である。受信信号から複素数データを求めるため、2個のアナログミキサを用い、キャリアと同じ周波数をもつ2種類の正弦波をリファレンス信号として乗算する直交検波方式が従来より用いられている。図25に上記2個のアナログミキサを用いる受信装置のブロック図を示す。
【0003】
上記2種類の信号は、位相が90度シフトされた信号であり、通常、コサイン、サインの信号を使用する。乗算器であるミキサの出力には、周波数ゼロ近傍と、キャリアの2倍の周波数近傍にスペクトルを持つ信号が現れる。この2倍の周波数成分をローパスフィルタで除去することによって、周波数ゼロ近傍のベースバンド信号のみを取り出すことができる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、アナログ素子であるミキサを使用する限り、実数チャンネルI(in−phase:同相成分)、虚数チャンネルQ(quadrature:直交成分)の両チャンネルの信号の位相、振幅のマッチングをとることが非常に困難になる。また、アナログ部品の特性のバラツキ、温度変化、経年変化による特性劣化の問題を抱えている。
【0005】
そこで、アナログフロントエンドの段階でA/D変換し、ディジタル処理で目的信号の復調を行うことが考えられるが、キャリア周波数の2倍よりも高い周波数で直接サンプリングすることはデータ量が増加し、ハードウェアの規模が大きくなるなどのため、キャリア周波数の2倍よりも低い周波数でサンプリングするアンダーサンプリングが考えられる。
【0006】
しかし、アンダーサンプリングされた離散時間信号には多くの折り返しスペクトルが含まれているため、これを除去するための急峻なフィルタリングが必要である。また、サンプリングされた実数値信号を複素数データに変換するためには極めて複雑な指数演算が必要である。これらの演算をリアルタイムで処理するためには極めて高速な処理装置が必要となるという問題点があった。
【0007】
この発明は、アンダーサンプリングでサンプリングされた信号を極めて簡略な処理でフィルタリングするとともに複素データ化することのできる信号処理方法を提供することを目的とする。
【0008】
さらに、この発明は、信号の持つ最高周波数の少なくとも2倍の周波数でサンプリングした信号を極めて簡略な処理でフィルタリングするとともに複素データ化することのできる信号処理方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明は、目的信号の中心周波数f0が、周波数f=±f S /4に写像されるようなサンプリング周波数fSでサンプリングされたサンプリングデータを順次入力し、
入力された時系列に列ぶサンプリングデータを実数部および虚数部に交互に分岐する分岐処理、
時系列に列ぶ実数部および虚数部において、順次入力されたサンプリングデータの符号を1つおきに反転するシフト処理、
デジタルフィルタの係数を1つずつ交互に、シフト処理された実数部のサンプリングデータおよび虚数部のサンプリングデータに乗算し、実数部、虚数部毎に乗算結果を集計して実数部データ、虚数部データとする複素化処理、
を有することを特徴とする。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、順次入力されるサンプリングデータは、目的信号の中心周波数f 0 であるキャリア周波数fCに対して、k=0,1,2,…として、fS=4fC/(4k+1)またはfS=4fC/(4k+3)となるようなサンプリング周波数fSでサンプリングされたサンプリングデータであることを特徴とする。
【0011】
請求項3の発明は、請求項1、2の発明において、デジタルフィルタは、フィルタ長が偶数であることを特徴とする。
【0012】
請求項4の発明は、請求項1、2の発明において、デジタルフィルタは、フィルタ長が奇数であることを特徴とする。
【0013】
この発明は、図1(A)に示すようなキャリアに重畳された目的信号を離散時間信号として復元するためのものである。この目的信号は周波数軸上では、同図(B)のようにキャリア周波数を中心とするスペクトルとして現れる。この信号を、たとえば、fS =4f0 となるようなサンプリング周波数fS でサンプリングすると、図2(A)に示すようなスペクトルが周波数軸上に写像される。このうちハッチングしたスペクトルを取り出して復元する。なお、この図では0〜πに写像されたスペクトルを復元するようにしているが、−π〜0に写像されたスペクトルを復元するようにしてもよい。また、信号を、たとえば、fS =4f0 /3となるようなサンプリング周波数fS でアンダーサンプリングすると0〜πに写像されるスペクトルが反転するが、これを演算で再度反転して復元してもよい。
【0014】
このスペクトルは、上記したようにfS =4f0 でサンプリングされたものであるため、そのサンプリング点は、同図(C)の複素平面、同図(B)の時間軸に示すような4点(+I,+Q,−I,−Q)であると考えることができる。
【0015】
したがって、図3(A)に示すようにこれを交互に実数部および虚数部に分岐し、さらに実数部、虚数部において1つおきに符号を反転することによって、実数部データ、虚数部データを復元することができる。この処理を、周波数軸で考えると、図2(A)に示す中心周波数がπ/2(fS /4)シフトされたスペクトルをベースバンドにシフトする処理になっている。すなわち、この処理によりスペクトルの中心周波数f0 が0にシフトされる。
【0016】
しかし、図3(B)に示すようにこの実数部データと虚数部データは、交互でありそれぞれ1サンプリング時刻ずつずれたものになっている。また、図2(A)に示すようにアンダーサンプリングした場合には、目的のスペクトル以外に折り返しスペクトルが発生している。この不要スペクトルを除去するためにローパスフィルタのフィルタ演算を行うが、このときサンプリング時刻のずれに合わせて間隔をあけてフィルタ演算を行うことにより、フィルタの補間効果によってサンプリング時刻のずれを解消することができる。すなわち、図4に示すようにサンプリング時刻がずれていてもその時刻に合わせたフィルタ係数を乗算することにより、その時刻に合わせた重み付けが行われ、フィルタからの出力はそのフィルタ長の中心時刻のものとして扱うことができるようになる。
【0017】
【発明の実施の形態】
図5は、受信信号をミキサによってダウンコンバートすることなく、アンダーサンプリングによってA/D変換を行うダイレクトサンプリング方式を用いる受信回路のブロック図を示している。同図(A)は無線システムの受信復調回路を示し、同図(B)は超音波システムの受信復調回路を示している。同図(A)において、アンテナ1から入力された高周波信号はアンプ2、4でプリアンプされ、バンドパスフィルタ3で狭い周波数帯域に帯域制限されたのち、A/D変換器5でA/D変換される。A/D変換されたサンプリングデータはDSP6に入力され、DSP6内で目的信号が復元される。また同図(B)は、アンテナ1に代えてトランスデューサ1’を備えているが、これ以外は同図(A)の構成と同様である。このように、これらのブロック図を比較すると、センサ部の構成や使用されるキャリア周波数が異なることを除けばほぼ同様の構成であり、処理形態は同一である。このようなアンダーサンプリングによる目的信号の復調は、狭帯域信号を用いる無線機、レーダ、ソナー、魚群探知機、超音波診断装置、超音波流量計等に利用でき、一般に電波、超音波、音波等の波動を扱う測定装置に応用可能である。
【0018】
≪アンダーサンプリングの説明≫
まず、アンダーサンプリングにおいてエイリアシングを生じない条件について説明する。アンダーサンプリングを利用する場合、エイリアシングを避けるため、可能な限り目的信号以外の不要波を抑えた狭帯域信号(バンドパス信号)を用いる。また、アンダーサンプリングでは多くの写像スペクトルが生じるが、DSP等によってディジタル信号処理を行うためには、できるかぎり低い周波数領域、たとえば中心周波数がゼロ(DC)の写像スペクトルを用いたほうが後の計算が容易である。ただし、そうでない場合であっても、DCからのシフト分はシステム設計時に確定できるためDSPの演算でDCへ逆にシフトが可能である。この実施形態では、このシフトを符号の反転のみで行うようにしている。
【0019】
図6は、A/D変換器のサンプリングによって写像スペクトルがどのように形成されるかを示す図である。この図において入力信号は上記帯域制限されたバンドパス信号であり、入力信号帯域幅B、入力信号の最高周波数fMAX 、サンプリング周波数fS である。また、元のアナログ信号のスペクトルを影付きで示している。
【0020】
図6(A)はfMAX の2倍の周波数でサンプリングしたときを示している。同図(B)はfMAX の2倍よりも高い周波数でサンプリングしたときを示している。同図(C)はfMAX =1.5Bの信号をfS =3Bでサンプリングしたとき、すなわち、fMAX の2倍の周波数でサンプリングしたときを示している。同図(D)は中間周波数または狭帯域周波数で信号を処理する場合を示しており、fS >2fMAX となるfS でサンプリングしたときを示している。同図(E)は中間周波数がさらに高くなった場合の処理例を示しており、fS <fMAX となるfS でサンプリングしたときを示している。同図(F)は(E)と同じ入力信号をfS =2.5Bでサンプリングした場合を示している。これらの方式では、写像スペクトルがDCからfS /2の間に発生しているがこの写像スペクトル(の高域と低域)が反転している。同図(G)は中間周波数がさらに高くなった場合を示しており、このときもDCからfS /2の間に発生した写像スペクトルが反転している。同図(H)は中間周波数がさらに高くなった場合を示しており、このときはDCからfS /2の間に発生した写像スペクトルは反転せずに元のスペクトルの完全な複製になっている。
【0021】
この図から明らかなように、アンダーサンプリングによってDC付近に発生する写像スペクトルが反転するかしないかは、DCと元の信号領域の間に何個の写像スペクトルが発生するかによって決まる。元の信号領域をカウントに入れる場合、折り返し回数をNとすれば、Nが偶数のとき反転、奇数のとき反転なしとなる。
【0022】
fMAX =N・B ,N=1,2,3,…
が成立するとき、最小サンプリング周波数fS =2Bが可能である。たとえば同図(G)、(H)では、元の信号領域をカウントに入れない場合、写像スペクトルの個数は3と8であるため、それぞれ反転スペクトルと非反転スペクトルとなっている。なお、この反転、非反転はシステム設計の段階でキャリア周波数に対してサンプリング周波数をどう設定するかによって決定することができる。ただし、DSP等を用いてFFTで周波数処理を行う場合には、ディジタル信号処理の段階でスペクトルデータを反転することは容易であるため、スペクトルの反転・非反転はほとんど問題にならない。
【0023】
図7は、以上のことをもとにして求めたアンダーサンプリングを行った場合の入力信号帯域幅B、入力信号最高周波数fMAX 、サンプリング周波数fS の関係を示す図である。同図の実線がアンダーサンプリングに要求される最低サンプリング周波数の条件である。
【0024】
ここで、サンプリング周波数fS でサンプリングされた入力信号を連続時間信号として扱うと、周波数スペクトル上ではこの信号を周期fS で繰り返す周期信号として考えることができる。すなわち、fS /2ごとに非反転のスペクトルと反転したスペクトルが現れ、fS で繰り返す。
【0025】
以下、バンドパス信号をサンプリングする場合に、適切なサンプリング周波数を選択するための条件について説明する。
【0026】
図8は、連続波バンドパス信号の正の周波数成分(反転しない写像スペクトル)を0≦Ω≦πに写像する場合を示している。以下、入力信号の周波数帯域(すなわち目的信号のスペクトル)の下限周波数、上限周波数をそれぞれfL 、fU とする。
【0027】
なお、同図に示すスペクトルは、所望周波数スペクトルのみとしてもよく、所望周波数スペクトルにガードバンドが加わったスペクトルと考えてもよい。図8(A)は元の連続波信号を示している。図8(B)は、サンプリング周波数がfS であるサンプリング信号の周波数スペクトルδS (f)を表している。この図の場合には、信号帯域の下限周波数であるfL がサンプリング周波数fS の整数倍になるように調節してある(fL =k・fS )。またサンプリング周波数fS は信号の帯域幅B=fU −fL の2倍に設定してある(fS =2B)。ただし、kは整数である。これから、サンプリング周波数fS は一意に決定される。
【0028】
すると、周波数帯域の上端周波数fU 、周波数スペクトルの中心周波数f0 は、
fU =(k+1/2)fS
f0 =fL +B/2=(k+1/4)fS
とそれぞれ表現できる。この関係から、サンプリング周波数fS は、
【数1】
と決定される。
【0029】
図8(C)は、サンプリング周波数fS でA/D変換されたディジタルデータの周波数スペクトルX(Ω)を示している。この図8(C)から、0〜2πの周波数帯域のうち、元信号の正の周波数領域fL 〜fU に対応する写像スペクトルが占有する帯域は0〜π領域であり、負の周波数スペクトル成分がπ〜2πまたは−π〜0の領域を占めている。なお、周波数スペクトルの中心周波数f0 はΩ=π/2に写像される。
【0030】
また、図9は、バンドパス信号の正の周波数成分を−π≦Ω≦0に写像した場合の周波数スペクトルの関係を示す図である。この場合には、信号帯域の上限周波数fU をサンプリング周波数fS の整数倍とする(fU =k・fS )。すると、
fL =(k−1/2)fS
f0 =fL +B/2=fU −B/2=(k−1/4)fS
と表現できる。この関係から、サンプリング周波数fS は、
【数2】
と求まる。なお、(数2)式では、k=0のときサンプリング周波数fS が負になるのでk=1からとなる。または、
【数3】
とも表現してもよい。
【0031】
図9においては、バンドパス信号の正の周波数成分が−π≦Ω≦0に写像され、0≦Ω≦+πの領域にはX(f)の負の周波数成分が写像される。すなわち、0≦Ω≦+πの領域に写像された信号は、元のスペクトルに対して周波数成分の高域と低域が反転したスペクトルになっている。
【0032】
図8、図9に示した例は、信号周波数帯域の下限周波数fL 、上限周波数fU がそれぞれサンプリング周波数の整数倍になる特別な場合であり、これら2例のアンダーサンプリングについては、上述したように、DCと元の信号との間に折り返される写像スペクトルが何個発生するかによってスペクトルの反転、反転なしを割り出すことができる。図8の場合には、DCと元の信号の間に偶数個の複製が発生するためスペクトル反転はおこらない。図9の場合には、DCと元の信号との間に奇数個の複製が折り返されるため、スペクトル反転が発生する。
【0033】
このように、図8、図9の例は下限周波数fL 、上限周波数fU およびサンプリング周波数fS の間の条件が整った特別な場合である。以下は、このような条件を満たさないより一般的な場合を考える。
図10は、上記条件を満たさない一般的なサンプリング周波数fS でアンダーサンプリングした場合の周波数スペクトル形状の例を示す図である。上記条件を満たさない場合は、この図に示すように隣り合う写像スペクトルが接することなく間隔が開いている。しかし、この場合であっても図11に示すように、サンプリング周波数fS の整数倍(k・fS )の周波数で区切られる領域(図中破線で示した領域)をガードバンドを付加した周波数帯域を考えれば、図8の場合と全く同様に考えることができる。また、折り返しの写像スペクトルの位置によっては図9と同様に考え処理することができる。このように、下限周波数fL または上限周波数fU がサンプリング周波数fS の整数倍になる場合と、図10のような場合とを区別する必要はない。
【0034】
なお、サンプリング周波数fS が低すぎると、図12に示すように写像される正の周波数スペクトル成分と負のスペクトル成分が重なり合い、エイリアシングが発生する。すなわち、エイリアシングを避けるためには信号帯域幅Bの2倍以上のサンプリング周波数fS が必要である。
【0035】
以上のように、信号周波数帯域の下限周波数fL 、上限周波数fU がサンプリング周波数fS の整数倍である図8、図9の場合、上記条件を満たさない図10の場合ともにベースバンド(DC)付近でスペクトルを復元することができる。これに基づいて、元の信号を復元するために必要な一般的な条件を、信号周波数帯域の下限周波数fL 、上限周波数fU 、サンプリング周波数fS から明らかにする。ただし、周波数帯域幅B=fU −fL とする。
【0036】
図13は、元の連続波入力バンドパス信号のスペクトルと同じ周波数領域に写像されるスペクトル(k=0のインパルスに対する正の周波数スペクトル成分)をスペクトル0+ とし、第m番目のインパルス(k=m)によって写像される負の周波数スペクトル成分が、周波数軸上でスペクトル0+ の右側(高い周波数側)に現れ、(m−1)番目のインパルス(k=m−1)によって写像される負の周波数スペクトル成分が、スペクトル0+ の左側(低い周波数側)に現れる場合を示した図である。図中のスペクトル部に記入しているm- はk=mの位置にあるインパルスによる負の周波数スペクトルの写像スペクトルである。m−1- は、k=m−1による負の周波数スペクトルの写像スペクトルである。なお、ここでは全て連続時間信号として取り扱っている。
【0037】
同図において、第m番目のインパルスに対する周波数スペクトルシフトによって図10(A)に示しているオリジナルスペクトルのゼロ周波数は周波数m・fS に移動する。これによって、元の負の周波数−fU は、m・fS −fU に移動する。ただし、m=0の場合は、周波数ゼロにあるインパルスによる元のスペクトル自身の元と同じ周波数位置への写像に対応するためm=0は除く。このことから、サンプリングによって元の周波数スペクトルの両側に折り返しの写像スペクトルが現れるためには、mは1以上の整数である必要があることがわかる。そしてmには上限が存在するがこれについては後述する。
【0038】
サンプリング周波数fS はスペクトルの周波数帯域幅Bの2倍以上の値が必要であるから、
fS ≧2B …(1)
の条件が成立する。そして、図13(C)から、
(m−1)fS −fL ≦fL …(2)
および
fU ≦m・fS −fU …(3)
が同時に成立する。また、周波数帯域幅B=fU −fL から
fU /B=1+fL /B≧1 …(4)
の条件が求まり、さらに(1)式から
fS /B≧2
が得られる。
【0039】
そして、(2)、(3)式から
【数4】
が得られる。また、fU =f0 +B/2の関係式を用いて、(数4)式をスペクトルの中心周波数f0 とサンプリング周波数fS の関係に書き換えると
【数5】
が得られる。ただし、m=1のときfS 上限周波数は無限大である。
【0040】
次に、バンドパス信号を保存するために必要な最小サンプリング周波数を調べる。最小サンプリング周波数は、図13の関係からサンプリング周波数fS を徐々に下げていたとき、図14のように信号周波数帯域の上限周波数fU と写像されるスペクトルの下端周波数mfS −fU が一致する場合の値であることがわかる。すなわち、これ以下にサンプリング周波数を下げるとエイリアシングが発生することから、(4)式の等号が成立するサンプリング周波数が所望最小値であることが分かる。
【0041】
すなわち、(4)式から最小サンプリング周波数fS は
fS =(2/m)fU …(5)
ただし、m=1,2,3,…
で与えられる。ところが、mは任意の自然数をとるわけではなく、スペクトル0+ よりも高い周波数側である右真横に負側スペクトルの写像が発生するように設定するため最大値が存在する。(5)式から、
m=2fU /fS
が得られ、(1)式から
m=2fU /fS ≦fU /B …(13)
が得られる。これからmの最大整数値は〔fU /B〕となり、m=1,2,3,…,〔fU /B〕の値をとりうることがわかる。ただし、〔X〕はXを超えない最大整数を表すとする。結果的に最小サンプリング周波数fS は、mが最大値のとき得られ、
fS =(2/m)fU , m=〔fU /B〕
で与えられる。このときfU /Bが整数であれば最小サンプリング周波数は2Bである。また、このときにはfL /Bも整数である。
【0042】
(数4)式の不等号を満足する値は、図15の影付きの領域となる。また、上記最小サンプリング周波数を図中の太い実線で示している。同図において、(5)式からmの各整数値に対して最小サンプリング周波数fS を規定する直線が決定されるが、例えばm=1のときfU /Bが2〜3の範囲になると、m=2のfS /Bの値の方が小さくなる。mが大きくなってもこの関係は同様であり、fU /B=m+1以上でmによって決定されるfS /Bの値よりも(m+1)によって決定されるfS /Bの値の方が小さくなるというジグザグ形状の関係となる。
【0043】
以上から、所望のサンプリング周波数fS は、図15の太い実線上か、影付きの領域内の値を選択すればよいことがわかる。ただし、効率上の観点からは可能なかぎり低いサンプリング周波数fS を選択することが望まれるため、太い実線上の値である必要最小サンプリング周波数を選択すればよい。
【0044】
≪複素サンプリング手法の説明≫
以下は、上で説明した必要最小サンプリング周波数を用いてベースバンド領域に目的信号の非反転スペクトルが写像されるようにアンダーサンプリングを行う場合の処理について説明する。まず、複数エンベロープz(t) を持つアナログバンドパス信号x(t) を考える。
【0045】
【数6】
ここで、z(t) は中心周波数ゼロ、全周波数帯域幅B(−B/2≦f≦+B/2)の周波数スペクトルを持つ複素数信号とする。すなわち、x(t) は目的信号z(t) によって変調されたキャリア信号であり、中心周波数ω0 (=2πf0 )、全帯域幅Bを持つ変調されたアナログ信号である。
【0046】
例えば無線通信の場合には、複素信号z(t) で表される音声信号やディジタルデータでキャリア周波数ω0 を振幅変調した信号がx(t) に対応する。この変調信号x(t) から、目的信号である音声信号やディジタルデータz(t) を再生する操作が復調である。またアクティブソナーの場合には、送信周波数ω0 で出力された超音波信号が目的物で反射し、ドップラ周波数成分が重畳された反射エコー信号がx(t) に対応する。そして、このドップラ周波数成分自身が複素エンベロープz(t) であり、これを抽出する操作が復調である。
【0047】
複素エンベロープz(t) の再生は、このバンドパス信号x(t) に、
【数7】
を乗算する復調処理により、以下のように行うことができる。
【0048】
【数8】
ただし、*は複素共役数を表す。ベースバンドへの復調過程である(数8)式で生成される最終行第2項の2倍周波数成分は、この信号をローパスフィルタに通すことによって除去することができる。この結果、目的とする複素信号z(t) を求めることができる。
【0049】
まず最初に(数6)式に示すバンドパス信号x(t) を、プリアンプ後、サンプリング周波数fS (=1/TS )で駆動されるA/D変換器でサンプリングすると、次のディジタル信号が得られる。
【0050】
【数9】
このサンプリング部では、(数9)式に示す実際の複素乗算を避けるために、サンプリング後にスペクトルの中心周波数ω0 (=2πf0 )が連続周波数に換算してfS /4に写像されるサンプリング周波数fS を設定する。すなわち、
【数10】
に設定する。すると、
【数11】
となるため、
【数12】
が成立する。これらの関係を(数9)式に代入すると、
【数13】
が得られる。これ以降、サンプリング周波数fS =1/Tsでサンプリングされたアナログ信号x(nTs) およびz(nTs) をディジタルデータとしてx[n] 、z[n] と表記する。そうすると上記(数13)式は、
【数14】
となる。ここで、(数12)式を変形すると、
【数15】
であるから
【数16】
は、z[n] の信号を離散角周波数π/2で変調していることと同じである。すなわち、離散周波数軸に沿ってz[n] の離散周波数スペクトルがプラス側にπ/2だけ並行移動(シフト)されていることに相当している。中心周波数f0 =0のz(t) の周波数スペクトルが、アンダーサンプリングによるディジタル化によって中心角周波数π/2の離散周波数スペクトルに写像される。図16に、このアンダーサンプリング処理によって、離散周波数軸上にどのように周波数スペクトルが写像されるかを示しておく。
【0051】
仮に、元のアナログ複素エンベロープ信号z(t) を
【数17】
とし、サンプリング周波数fS =1/TS によるサンプリング後のディジタル信号z[n] を
【数18】
とすると、元のアナログ信号x(t) は、
【数19】
であり、サンプリング周波数fS =1/TS によるサンプリングを行うと、
【数20】
が得られる。
【0052】
ここでアナログの複素エンベロープ信号z(t) を
【数21】
で示す実装部xC (t) と虚数部xS (t) に分解する。それぞれのサンプリング後の信号z(n・ T S ) 、xC (n・ T S ) およびxS (n・ T S ) をディジタル信号として、z[n] 、実数部xC [n] 、虚数部xS [n] と表記する。
【0053】
次に、アンダーサンプリングによって得られる中心角周波数π/2の離散周波数スペクトルを持つディジタル信号を、ベースバンド信号に復調する処理を行う。復調処理は離散周波数スペクトルをマイナス側にπ/2シフトすればよいので、
【数22】
で示される離散複素指数関数c[n] を用いる。すなわち、(数14)式に(数22)式を乗算して周波数シフトするため、
【数23】
が得られる。この(数23)式から、アンダーサンプリング後に得られるディジタルデータx[n] に離散複素指数関数c[n] を乗算し復調することによって、複素エンベロープ信号z[n] が得られることが分かる。
【0054】
ここで、サンプリングされたデータの偶数番をn=2m、奇数番をn=2m+1と表す。まず、n=2m(m=0,±1,±2,±3,...)である偶数番目サンプルを考えると、
【数24】
であるから、(数23)式は、
【数25】
になる。同様に、n=2m+1である奇数番目のサンプルを考えると、
【数26】
であるから、
【数27】
が成立する。
【0055】
このように、中心周波数ω0 (=2πf0 )がfS /4に写像されるサンプリング周波数fS を設定することにより、離散複素エンベロープz[n] の実数部、虚数部をそれぞれ(数25)式、(数27)式で求めることができる。
【0056】
これらの関係式によって、サンプリングされたディジタル実数データx[n] から中心周波数ゼロのベースバンド信号である離散複素エンベロープ信号z[n] の実数部と虚数部をそれぞれ求めることができ、
【数28】
と表現することができる。しかしながら、(数28)式は実数部と虚数部のサンプル時刻がそれぞれ2m、2m+1と異なっている。すなわち、実数部の値はアナログ信号のサンプリング時刻が2mTS のものであり、虚数部の値はアナログ信号のサンプリング時刻が(2m+1)TS のものであり、それぞれ異なっている。復調後のデータに処理を加えるためには、実数部、虚数部とも同時刻にサンプリングされたものであることが望まれる。このため、(数28)式の実数部と虚数部の一方または両方を補間することによって互いに同時刻のデータを生成する。この処理を不要スペクトルを除去するフィルタ処理と同時に行う。
【0057】
図17に、図5のDSPにおいて上記復調方式を実行するためのブロック図を示す。このブロック図においては、分配部11がサンプリングされた離散実数データx[n] を、そのデータが偶数番目であるか奇数番目であるかに応じて、交互に実数部・虚数部に分配する。実数部・虚数部の各処理部では、乗算器12,13がデータの番号mに応じて1つおきにデータの符号を反転(−1を乗算)し、実数データおよび虚数データを復元する。そして、ローパスフィルタ14,15にこのデータを入力することによって不要スペクトルを除去するとともに、実数データ、虚数データを同サンプリング時刻のデータに補間処理する。データが1つずつ実数部と虚数部に分配されるため、実数データx[n] の転送レートは、サンプリング周波数fS と等しいが、複素数データに変換後の転送レートはfS /2となる。また、その複素数データの周波数領域は−fS /4〜fS /4(−B/2〜B/2)である。
【0058】
以上は、偶数番目サンプルをn=2m、奇数番目サンプルをn=2m+1として処理を行った場合であるが、以下、偶数番目サンプルをn=2m、奇数番目のサンプルをn=2m−1として処理する場合について説明する。
【0059】
まず、上記(数23)式の偶数番目のサンプルについては、上記の場合と同様にn=2mとおくため、同様に(数25)式により離散複素エンベロープz[n] の実数部を割り出すことができる。また、奇数番目サンプルをn=m−1とおくので、
【数29】
から、
【数30】
になる。したがって、奇数番目のサンプルをn=2m−1とした場合には、離散複素エンベロープz[n] の実数部と虚数部をそれぞれ(数25)式および(数30)式で求めることができる。これによって、サンプリングされたディジタル実数データx[n] から中心周波数ゼロのベースバンド信号である離散複素エンベロープz[n] の実数部と虚数部がそれぞれ求まり、
【数31】
で表現される。
【0060】
この(数31)式も、「奇数番目2m+1」の場合と同様に実数部と虚数部のサンプリング時刻が異なっているため、上記と同様に、ローパスフィルタによる補間によってサンプリング時刻を揃える。
【0061】
図18に、図5のDSPにおいて上記復調方式を実行するためのブロック図を示す。このブロック図における処理は、離散実数データx[n] の実数部・虚数部への振り分けの先後が異なる以外は、図17に示したものと同様である。
【0062】
≪≪ローパスフィルタの設計≫
図17および図18に示したローパスフィルタをどのように構成するかについて説明する。
まず、実数データ、虚数データの両方をサンプリング周期の半分TS /2だけ前後にずらせるような補間によって両データのサンプリング時刻を揃えるローパスフィルタについて説明する。図17の場合には実数データをTS /2だけ進めて虚数データをTS /2だけ遅らせる。図18の場合には実数データをTS /2だけ遅らせて虚数データをTS /2だけ進める。
【0063】
まず、最初にインタポレーション(補間)を考える。インタポレーションを行うために、まず実数部データ列および虚数部データ列のそれぞれに1つおきにゼロデータを挿入し、データレートがサンプリング周波数fS の実数データ、虚数データを作る。実際の実数データと虚数部の0データ、実際の虚数データと実数部の0データが対応するようにする。次に、この実数部データ列および虚数部データ列をローパスフィルタに入力する。このローパスフィルタ(インタポレータ)には偶数長のFIRフィルタを用いる(TS =1/fS )。以下にこの手順を詳細に説明する。
【0064】
図19に、ゼロデータを1個挿入する場合のインタポレーション手順を示す。一例として、フィルタ長が偶数L=8の場合を示している。
【0065】
図19(A)に、図17に示している入力信号x[n] の偶数番目(n=2m)を実数データに、奇数番目(n=2m+1)を虚数データに分配する場合を、同図(B)には図18に示している入力信号x[n] の奇数番目(n=2m−1)を虚数データに、偶数番目(n=2m)を実数データに分配する場合を示す。この分配によって、複素数としてのデータレートは、サンプリング周波数fS の1/2に減少する。しかし、これらのデータに対してインタポレーション用のゼロデータを挿入するため、複素数データとしてのデータレートは2倍のfS に戻る。ところが、図19に示すように挿入するゼロデータとフィルタ係数間の乗算結果はゼロであり、フィルタ演算結果には影響を与えない。このため、ゼロデータおよびこれらに対応するフィルタ係数を除くことが可能である。このようにして挿入したゼロデータに対応するフィルタ係数を除去したフィルタ係数と実数、虚数との関係を図20に示す。このように、0データを挿入しても結局、データレートはサンプリング周波数fS の1/2に減少することが分かる。
【0066】
図21は、最終的なローパスフィルタのフィルタ係数の構成を示す図である。インタポレータ用ローパスフィルタh[n] ,n=0,1,2,3,…,(L−2),(L−1)は、入力信号x[n] の偶数番目(n=2m,n=0,2,4,…,(L−2))を実数データに、奇数番目(n=2m+1,n=1,3,5,…,(L−1))を虚数データに分配するとき、元の偶数長フィルタの偶数番係数(n=0,2,4,…)が実数用に、奇数番係数(n=1,3,5,…)が虚数用に分割される。
【0067】
また、入力信号x[n] の偶数番目(n=2m)を実数データに、奇数番目(n=2m−1)を虚数データに分配する場合には、元の偶数長フィルタの奇数番係数(n=1,3,5,…)が実数用に、偶数番係数(n=0,2,4,…)が虚数用に分割される。
【0068】
このように入力信号x[n] の奇数番目(2m+1または2m−1)の取り方による分配によって(A),(B)は逆の係数パターンをもつことになる。元のフィルタ長をL(偶数)とすると、実数用,虚数用フィルタ長はともにL/2になる。
【0069】
以上の説明では、実数部データ、虚数部データをともに半サンプリング周期ずらすことによってサンプリング時刻を揃えるようにしたが、サンプリング時刻をそろえるのはこれが唯一の方法ではなく、実数部と虚数部のデータのサンプリング時刻が揃うのであればどの様な設定でもよい。
【0070】
以下、実数部のデータはそのまま用い、虚数部のデータを1サンプル周期ずらすことで実数部と虚数部のデータのサンプリング時刻を揃える方式について説明する。
(数28)式、(数31)式に示すようにサンプリング時刻2mTS に虚数部のデータは存在しない。この2mTS データを生成するため、ここでは図22のように奇数長のローパスフィルタを用いる。同図は、0データを挿入してデータレートをfS にした場合を示している。奇数長のローパスフィルタのフィルタ係数が実数部、虚数部に交互に振り分けられるため、処理が中央のサンプリング時刻のデータを中心にして左右対称になり、出力データは、中央のサンプリング時刻のフィルタリングデータとして出力される。
【0071】
実数部側では奇数番係数に対応するデータは0であるため、偶数番係数のみの演算となり、中央のサンプリング時刻に対応するデータである2mのデータとして出力される。一方、虚数部側では偶数番係数に対応するデータは0であるため、奇数番係数のみの演算となり、2m−1と2m+1の中間である2mのデータとして出力される。
【0072】
図23は、実際のローパスフィルタの係数を示す図である。実際には0データを挿入せずにこの係数を入力された実数データ、虚数データに対して乗算すればよい。
【0073】
≪反転スペクトルの場合≫
アンダーサンプリングによって、ベースバンド付近(0〜π)に現れる離散データの周波数スペクトルが反転するかどうかは、入力信号帯域幅B、入力信号対向周波数fMAX (中心周波数f0 )、サンプリング周波数fS の関係によって決定される。いままでは、スペクトルが反転しない場合について説明をしてきたが、以下は、アンダーサンプリングでスペクトルを反転させた場合の処理およびフィルタ構成について説明する。
【0074】
まず、アナログバンドパス信号x(t) のサンプリングを実行する。この場合において、(数9)式までの処理はスペクトルを反転させない場合と同様である。ここで、サンプリング前のアナログ信号の周波数スペクトル中心周波数ω0 (=2πf0 )が、連続周波数に換算して3fS /4に写像されるサンプリング周波数fS を設定する。すなわち、サンプリング周波数fS を、
【数32】
とする。すると、
【数33】
となるため、
【数34】
が成立する。これらの関係を前記(数9)式に代入すると、
【数35】
が得られる。この(数35)式をデジタル信号として書き換えると、
【数36】
となる。
【0075】
ここで、前記(数12)式と同様に(数34)式を変形すると、
【数37】
であるから、
【数38】
は、z[n] の信号を離散角周波数3π/2(または−π/2)で変調していることと同じである。すなわち、離散周波数軸に沿ってz[n] の離散周波数スペクトルがプラス側に3π/2だけ並行移動(シフト)されていることに相当している。または、z[n] の離散周波数スペクトルがマイナス側にπ/2シフトされていることに相当している。中心周波数f0 =0のz(t) の周波数スペクトルが、アンダーサンプリングによるディジタル化によって中心角周波数3π/2の離散周波数スペクトルに写像される。または、中心角周波数−π/2に写像されると考えても同じである。図24に、アンダーサンプリングによって、離散角周波数軸上にどのようにち周波数スペクトルが写像されるかを示しておく。
【0076】
仮に、元のアナログ複素エンベロープ信号z(t) を
【数39】
とし、サンプリング後のディジタル信号z[n] を
【数40】
とすると、元のアナログ信号x(t) は
【数41】
であり、サンプリング後には
【数42】
が得られる。
【0077】
次にアンダーサンプリングによって得られる中心角周波数3π/2の離散周波数スペクトルをもつディジタル信号を、ベースバンド信号に復調する処理を行う。復調処理は離散周波数スペクトルをマイナス側に3π/2シフトすればよいので
【数43】
で示される離散複素指数関数c[n] を用いる。(数36)式に(数43)式を乗算すると、
【数44】
が得られる。
【0078】
まず、n=2m(m=0,±1,±2,±3,...)、奇数番目サンプルをn=2+1として処理を行う。まず、n=2mである偶数番目サンプルを考えると、
【数45】
であるから、(数44)式は、
【数46】
になる。
【0079】
同様に、n=2m+1である奇数番目のサンプルを考えると、
【数47】
であるから、
【数48】
が成立する。
【0080】
これから、離散複素エンベロープz[n] の実数部と虚数部がそれぞれ(数46)式と(数48)式の関係式で求まることが分かる。
【0081】
これらの関係式によって、サンプリングされたディジタル実数データx[n] から中心周波数ゼロのベースバンド信号である離散複素エンベロープ信号z[n] の実数部と虚数部をそれぞれ求めることができ、
【数49】
と表現できる。
【0082】
この(数49)式の実数部と虚数部も1サンプル周期分ずれているが、この場合もスペクトルが非反転の場合と同様に図17に示した構成で補間することができる。
【0083】
また、偶数番目サンプルをn=2m、奇数番目のサンプルをn=2m−1として処理する場合、奇数番目のサンプルは、上記非反転の場合と同様に、
【数50】
となる。すなわち、離散複素エンベロープz[n] の実数部と虚数部がそれぞれ(数25)式と(数50)式の関係式で求めることができる。
【0084】
これによって、サンプリングされたディジタル実数データx[n] から中心周波数ゼロのベースバンド信号である離散複素エンベロープz[n] の実数部と虚数部がそれぞれ求まり、
【数51】
で表現される。この条件でも、実数部のサンプリング時刻と虚数部のサンプリング時刻が1つずつずれているが、この場合もスペクトルが非反転の場合と同様に図18に示す構成で補間し、サンプリング時刻を揃えることができる。
【0085】
このように、スペクトルが反転するも非反転の場合と同様のローパスフィルタを用い、このローパスフィルタで補間することによって実数部・虚数部ともに同時刻の複素数データを得ることができる。
【0086】
【発明の効果】
以上のようにこの発明によれば、サンプリング周波数fS によるサンプリングによってスペクトルの中心周波数f0 が、f0 =±fS /4となったサンプリングデータを分岐し、符号を反転し、実際の半分の量のフィルタ演算を行うという極めて簡略な演算によって、スペクトルをベースバンドにシフトするとともにデータを複素化することができるため、簡略な構成でダイレクトアンダーサンプリング等が可能になるとともに、無線通信などのリアルタイム処理が容易になるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明が適用される目的信号が重畳されたキャリア信号を示す図である。
【図2】上記目的信号が重畳されたキャリア信号をサンプリング周波数fS (=4f0 )でサンプリングしたときのスペクトル等を示す図である。
【図3】上記サンプリングデータを複素データ化する処理を示す図である。
【図4】上記複素データの実数データと虚数データのサンプリング時刻を補間によって一致させる処理を示す図である。
【図5】この発明が適用される通信装置およびソナー装置のブロック図である。
【図6】アンダーサンプリングを行った場合の写像スペクトルの発生パターンを示す図である。
【図7】アンダーサンプリングを行う場合の最低サンプリング周波数の条件を示す図である。
【図8】バンドパス信号の周波数スペクトルとこれを反転しないようにサンプリングした場合の写像スペクトルを示す図である。
【図9】バンドパス信号の周波数スペクトルとこれを反転するようにサンプリングした場合の写像スペクトルを示す図である。
【図10】バンドパス信号を異なる条件でサンプリングした場合の写像スペクトルを示す図である。
【図11】ガードバンドをバンド幅に加える処理を示す図である。
【図12】サンプリング周波数がバンド幅よりも狭い場合のエイリアシングの発生を示す図である。
【図13】サンプリング前の周波数スペクトルとアンダーサンプリング後の写像スペクトル群との関係を示す図である。
【図14】サンプリング周波数を最低サンプリング周波数に設定した場合のスペクトル分布を示す図である。
【図15】バンド幅および信号の最高周波数に応じて要求されるサンプリング周波数の条件を示す図である。
【図16】アンダーサンプリングによって生じる写像スペクトルの分布を示す図である。
【図17】サンプリングデータの複素化、ローパスフィルタリングおよび補間を行う信号処理部(DSP)のブロック図である。
【図18】サンプリングデータの複素化、ローパスフィルタリングおよび補間を行う信号処理部(DSP)のブロック図である。
【図19】実数部・虚数部の両方を補間する場合に、0データを挿入した場合のローパスフィルタの例を示す図である。
【図20】0データを省いた場合のローパスフィルタの例を示す図である。
【図21】実数側および虚数側のフィルタ係数を示す図である。
【図22】虚数部のみを補間する場合に、0データを挿入した場合のローパスフィルタの例を示す図である。
【図23】0データを省いた場合のローパスフィルタの例を示す図である。
【図24】スペクトルを反転させるアンダーサンプリングによって生じる写像スペクトルの分布を示す図である。
【図25】従来のアナログミキサを用いて受信信号を複素化するソナー装置の構成を示す図である。
【符号の説明】
1…アンテナ、
1′…トランスデューサ、
2…高周波プリアンプ、
3…バンドパスフィルタ、
4…高周波アンプ、
5…(アンダーサンプリング用の)A/Dコンバータ、
6…DSP、
11…分配部、
12,13…乗算器、
14,15…ローパスフィルタ
Claims (4)
- 目的信号の中心周波数f0が、周波数f=±f S /4に写像されるようなサンプリング周波数fSでサンプリングされたサンプリングデータを順次入力し、
入力された時系列に列ぶサンプリングデータを実数部および虚数部に交互に分岐する分岐処理、
前記時系列に列ぶ実数部および虚数部において、順次入力されたサンプリングデータの符号を1つおきに反転するシフト処理、
デジタルフィルタの係数を1つずつ交互に、シフト処理された実数部のサンプリングデータおよび虚数部のサンプリングデータに乗算し、実数部、虚数部毎に乗算結果を集計して実数部データ、虚数部データとする複素化処理、
を有する信号処理方法。 - 前記順次入力されるサンプリングデータは、目的信号の中心周波数f 0 であるキャリア周波数fCに対して、k=0,1,2,…として、fS=4fC/(4k+1)またはfS=4fC/(4k+3)となるようなサンプリング周波数fSでサンプリングされたサンプリングデータである請求項1に記載の信号処理方法。
- 前記デジタルフィルタは、フィルタ長が偶数である請求項1または請求項2に記載の信号処理方法。
- 前記デジタルフィルタは、フィルタ長が奇数である請求項1または請求項2に記載の信号処理方法。
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