以下図面に基づいて、本発明の実施の形態および実施例について説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照番号を付しその説明は繰返さない。
(実施の形態1)
図1は、本発明に従った評価装置の実施の形態1の模式図である。図1を参照して、本発明に従った評価装置の実施の形態1を説明する。
図1に示すように、本発明に従ったデバイス評価装置としての評価装置30は、半導体デバイスを含む被測定体1と熱的に接続される電子冷却素子としての第1ペルチェ素子9および第2ペルチェ素子31と、被測定体1とペルチェ素子9を介して熱的に接続された発熱部材としてのヒータ8と、第2ペルチェ素子31と熱的に接続された放熱部材としての放熱器11と、ヒータ8と第1および第2ペルチェ素子9、31とへ入力する電力を制御する制御部としての制御装置29とを備える。より具体的には、被測定体1は、グリスを介してベースプレート5と接続される。ベースプレート5の表面において被測定体1の下に位置する領域には溝が形成され、当該溝の内部には被測定体1の温度を測定するための熱電対7が配置されている。ベースプレート5の平面形状のサイズは被測定体1の平面形状のサイズより大きくなっている。また、ベースプレート5を構成する材料としては、熱伝達を効率的に行なえる材料であればどのような材料を用いてもよい。たとえば、ベースプレート5をアルミニウムや銅、あるいはこれらを含む合金などの金属により構成してもよい。
なお、被測定体1の温度を測定する方法としては、熱電対7に変えて、非接触型の温度計(たとえば赤外線温度計)を用いる方法や、被測定体1に含まれるダイオードのVf(順方向電圧)を測定する方法を用いてもよい。この場合、たとえば非接触の温度計であれば被測定体1と対向する任意の位置に配置することができる。
ベースプレート5の下面はグリス3を介して第1ペルチェ素子9の上面と接続されている。第1ペルチェ素子9の下面はグリス3を介して中間ベースプレート6と接続されている。また、第1ペルチェ素子9にはその外周部に外側へ突出したフランジ部10が形成されている。当該フランジ部10にはネジ孔が形成されている。ネジ孔には固定用ネジ12が挿入されている。その固定用ネジ12の先端部は中間ベースプレート6の上部表面に形成された固定用孔に挿入固定されている。つまり、固定用ネジ12は第1ペルチェ素子9のフランジ部10のネジ孔と中間ベースプレート6の上部表面の固定用孔とに挿入固定されることにより、第1ペルチェ素子9と中間ベースプレート6とを接続、固定している。
中間ベースプレート6の平面形状は、第1ペルチェ素子9の平面形状より大きくなっている。つまり、第1ペルチェ素子9の端面より外側に中間ベースプレート6の端面は位置する。そして、中間ベースプレート6の端部には、複数の(図1では2つの)ヒータ8が設置されている。ヒータ8は中間ベースプレート6を挟むような位置に配置されている。なお、ヒータ8は中間ベースプレート6上の任意の位置に配置できるが、図1に示すように第1ペルチェ素子9を挟むような位置に配置してもよい。また、ヒータ8の数は1つでも、3つ以上の複数であってもよい。また、複数のヒータ8は第1ペルチェ素子9を囲むように中間ベースプレート6上に配置されていてもよい。
ヒータ8は中間ベースプレート6の表面に直接固着するように接続されていてもよいが、接着剤、あるいはグリスなどを介して中間ベースプレート6に接続してもよい。また、ヒータ8を第1ペルチェ素子9と同様に固定用ねじなどを用いて固定部材により中間ベースプレート6に接続固定してもよい。
中間ベースプレート6の下面はグリス3を介して第2ペルチェ素子31の上面と接続されている。第2ペルチェ素子31の下面はグリス3を介して放熱器11と接続されている。また、第1ペルチェ素子9と同様に、第2ペルチェ素子31にはその外周部に外側へ突出したフランジ部10が形成されている。当該フランジ部10にはネジ孔が形成されている。ネジ孔には固定用ネジ12が挿入されている。その固定用ネジ12の先端部は放熱器11の上部表面に形成された固定用孔に挿入固定されている。つまり、固定用ネジ12は第2ペルチェ素子31のフランジ部10のネジ孔と放熱器11の上部表面の固定用孔とに挿入固定されることにより、第2ペルチェ素子31と放熱器11とを接続、固定している。
放熱器11は、その上部表面が平坦に形成されている一方、その下部には図1に示すように放熱部となる複数の放熱フィンが形成されている。放熱器11を構成する材料としては、熱伝達を効率的に行なえる材料であればどのような材料を用いてもよい。たとえば、放熱器11をアルミニウムや銅、あるいはこれらの元素を含む合金などの金属により構成してもよい。また、放熱器11には上記放熱フィンに接触して熱を放熱器11から除去するための冷媒17を供給するため、冷媒流路13が接続されている。冷媒流路13は、放熱器11の一方端部からポンプ14、熱交換器15を介して放熱器11の他方端部を接続する循環路を構成している。
冷媒17は、ポンプ14を駆動することによって、たとえば放熱器11の一方端部から放熱器11の放熱フィンに接触するように流動する。放熱フィンに冷媒17が接触することにより、冷媒17は放熱器11から熱を奪う。そして、冷媒17は放熱器11の他方端部に到達した後、放熱器11の他方端部から冷媒流路13を流動して熱交換器15に到達する。熱交換器15では冷媒17と別の媒体(たとえば外気)との間で熱交換が行なわれる結果、冷媒17が冷却される。熱交換器15を通過した冷媒17はポンプ14に到達した後、再びポンプ14の駆動により放熱器11の一方端部へ供給される。図1に示すように、冷媒流路13において放熱器11の下流側に位置する部分には冷媒17の温度を測定するための温度センサ16が配置されている。
放熱器11、第1および第2ペルチェ素子9、31、ベースプレート5および中間ベースプレート6の位置を固定するため、複数の固定部材20が配置されている。固定部材20は、押え部材18a、18bと支持部材19とからなる。押え部材18aはベースプレート5の上部表面の延びる方向と同じ方向に延びるように配置される板状または棒状の形状を有している。押え部材18aの一方端部がベースプレート5の上部表面の端部と接触するように、押え部材18aは配置されている。また、押え部材18bは、放熱器11の上部表面の延びる方向と同じ方向に延びるように配置される板状または棒状の形状を有している。押え部材18bの一方端部が放熱器11の下部において冷媒流路13の外壁面に接触するように、押え部材18bは配置されている。
押え部材18a、18bの他方端部には、押え部材18a、18bを連結固定するための支持部材19が接続されている。支持部材19は、押え部材18a、18bを連結するとともに、押え部材18a、18bを互いに近づく方向へ押圧可能になっている。たとえば、押え部材18a、18bの他方端部に支持部材19を挿通するための穴を形成しておき、その穴に支持部材19の端部を挿入する。そして、支持部材19の端部にネジ溝を形成するとともに、当該端部側からナットなどの固定具をねじ込むことによって、押え部材18a、18bを互いに近づく方向へ押圧する。このようにして、固定部材20によって放熱器11、第1および第2ペルチェ素子9、31、ベースプレート5および中間ベースプレート6の位置を固定できる。
また、被測定体1、ベースプレート5、中間ベースプレート6、第1および第2ペルチェ素子9、31、ヒータ8、放熱器11、固定部材20を内部に保持するように、密閉ケース28が配置されている。密閉ケース28はその内部を外部から隔離できるように構成されている。密閉ケース28を構成する材料としては、その内部を外部から隔離でき、また内部に配置される雰囲気ガスに対する耐性を有する材料であればどのような材料を用いてもよい。
密閉ケース28には、図示しないがその内部の圧力を調整するための圧力調整部材としての排気ポンプが配管を介して接続されていてもよい。また、密閉ケース28には、その内部に所定の雰囲気ガス(たとえばアルゴンガス、窒素ガスなどの不活性ガス、あるいは結露を防止するための乾燥空気など)を供給するための雰囲気ガス供給部材としてのマスフローコントローラが配管を介して接続されていてもよい。マスフローコントローラは、別の配管を介して上記雰囲気ガスの供給源(たとえば雰囲気ガスを蓄積するタンクなど)に接続されていてもよい。
評価装置30は、上述したヒータ8、ペルチェ素子9や被測定体1、ポンプ14や熱交換器15などに対して供給される電力を制御するための制御装置29を備えている。制御装置29は、被測定体用電源21、ヒータ用電源27、第1ペルチェ素子用電源22、第2ペルチェ素子用電源23、冷却系電源24、これらの電源を制御するためのコントローラ26を含む。なお、制御装置29は、コントローラ26として動作するマイクロコンピュータ、各種電源、各種スイッチなどを搭載した専用の制御ボードにより構成してもよいし、一般的なパーソナルコンピュータにおいて制御プログラムと、当該パーソナルコンピュータに接続され各種電源、各種スイッチなどを搭載した装置とにより構成してもよい。被測定体用電源21は、被測定体1に電流センサ25を介して接続線により接続されている。ヒータ用電源27は、ヒータ8に電流センサ25を介して接続線により接続されている。また、第1ペルチェ素子用電源22および第2ペルチェ素子用電源23は、それぞれ第1ペルチェ素子9および第2ペルチェ素子31に電流センサ25を介して接続線により接続されている。冷却系電源24は、ポンプ14および熱交換器15のそれぞれに電流センサ25を介して接続されている。なお、熱交換器15が電流による駆動を必要としないような構成の場合には、冷却系電源24はポンプ14のみに接続されていればよい。また、上述した、被測定体用電源21、ヒータ用電源27、第1ペルチェ素子用電源22、第2ペルチェ素子用電源23、および冷却系電源24は、それぞれ後述するPWM制御や電圧制御などを行なうための制御回路を含むものである。
なお、ここでPWM制御(Pulse Width Modulation control)とは、パルス幅変調制御を意味し、ここでは被測定体1へ入力する電流の電圧をONとOFFとを繰返すパルス波状にし、当該パルス波のONとOFFとの比率(パルス幅)を変化させることによって被測定体へ入力する電力を制御している。また、ここで電圧変更制御とは、被測定体1へ入力する電流の電圧の値を時間とともに変更する制御を意味する。
上述した、被測定体用電源21、ヒータ用電源27、第1ペルチェ素子用電源22、第2ペルチェ素子用電源23、および冷却系電源24のそれぞれは、コントローラ26と接続されており、当該コントローラ26により制御される。また、コントローラ26には、冷媒17の温度を測定する温度センサ16および被測定体1の温度を測定する熱電対7と接続されている。コントローラ26には、これらの温度センサ16や熱電対7からそれぞれ温度の測定データが入力される。コントローラ26は、これらの測定データを評価装置30の制御に用いている。
次に、図1に示した評価装置30を用いた被測定体1のデバイス評価方法(サーマルサイクル試験)を例にして、評価装置30の動作を説明する。図2は、図1に示した評価装置を用いたデバイス評価方法を示すフローチャートである。図3は、図2に示したフローチャートにおけるテスト工程の内容を示すフローチャートである。図2および図3を参照して、図1に示した評価装置を用いたデバイス評価方法を説明する。
図2に示すように、図1に示した評価装置30を用いたデバイス評価方法は、被測定体準備工程(S100)、テスト工程(S200)、および後処理工程(S300)を備える。被測定体準備工程(S100)では、図1に示したベースプレート5上の所定の位置に、グリス3を介して、半導体デバイスを含むモジュールなどの被測定体1を配置する。また、密閉ケース28を密閉することにより、密閉ケース28の外部と、被測定体1が配置された密閉ケース28の内部とを隔離するとともに、密閉ケース28の内部の雰囲気ガスの組成や圧力を所定の条件に調整する。
次に、テスト工程(S200)を実施する。このテスト工程(S200)の具体的な内容は後述する。そして、テスト工程(S200)が終了した後、後処理工程(S300)を実施する。具体的には、テストが終了した被測定体1をベースプレート5上から取出す。
次に、上記テスト工程(S200)の具体的な内容を、図3を参照しながら説明する。図3に示すように、テスト工程(S200)(図2参照)では、まず被測定体1の温度を所定の温度まで上昇させた後、その温度(高温側の維持温度)において所定時間維持する昇温工程(S210)を実施する。この昇温工程(S210)では、具体的にはヒータ用電源27(図1参照)からそれぞれヒータ8へ電力を供給することによりヒータ8から発熱させる。
また、同時に第1ペルチェ素子9に対しては第1ペルチェ素子用電源22から、第1ペルチェ素子9において中間ベースプレート6側からベースプレート5側へ熱を伝えるように電力を供給する(第1ペルチェ素子用電源22について発熱側の電源をONにする)。この結果、ヒータ8から発生した熱が、中間ベースプレート6、第1ペルチェ素子9およびベースプレート5を介して被測定体1に伝えられるため、被測定体1の温度を上昇させることができる。また、被測定体1の温度を高温側の維持温度で一定に保つ場合には、後述するように第1ペルチェ素子用電源22またはヒータ用電源27から出力される電力を制御することにより、被測定体1の温度を上記維持温度で一定に保つことが可能になる。
次に、冷却工程(S220)を実施する。冷却工程(S220)では、上述した高温側の維持温度で一定時間保たれた被測定体1の温度を低下させ、所定の温度(低温側の維持温度)で所定時間維持する。具体的には、後述するように、ヒータ用電源27からの電力の出力をOFFにし、また第1ペルチェ素子用電源22からの電力の出力をベースプレート5側から中間ベースプレート6側へ熱を伝えるように変更する。一方、第2ペルチェ素子用電源23から出力される電力を制御することにより、中間ベースプレート6側から放熱器11側へ熱が伝えられるようにする。この結果、被測定体1の温度を上記低温側の維持温度で維持することができる。
次に、昇温、冷却を所定回数繰返したかどうかを判別する工程(S230)を実施する。この工程(S230)では、上述した昇温工程(S210)および冷却工程(S220)を所定回数繰返したかどうかを判別し、所定回数繰返されていないと判断された場合(NOと判断された場合)には再度昇温工程(S210)、冷却工程(S220)を実施する。また、当該工程(S230)において上記工程が所定回数繰返されたと判断された場合(YESと判断された場合)には、第1ペルチェ素子用電源22や第2ペルチェ素子用電源23、ヒータ用電源27などをOFFにするといった後処理を行なう工程(S240)を実施する。このようにして、テスト工程(S200)を実施できる。
上述した昇温工程(S210)および冷却工程(S220)においては、被測定体1の温度、より具体的には被測定体1に含まれる半導体デバイスの半導体接合温度Tjを高温側または低温側の維持温度で維持するため、第1ペルチェ素子用電源22やヒータ用電源27の出力についてたとえばPWM制御や電圧変更制御を適用できる。以下、テスト工程(S200)においてPWM制御や電圧変更制御を適用した場合について説明する。
なお、図1に示した評価装置30では、後述するように高温サーマルサイクル試験を実施するため、半導体接合温度Tjが高温側の維持温度Tjmaxとなっている状態において、第1ペルチェ素子9、第2ペルチェ素子31の電源がOFFになっているときの評価装置30の系として冷却能力(輻射伝熱、自然対流伝熱、伝導熱伝達などにより決定される、第1ペルチェ素子9、第2ペルチェ素子31の電源がOFFになっているときの評価装置30からの放散熱量)よりヒータ8の発熱量(Qgen)が大きくなるように、評価装置30は設計されている。また、高温サーマルサイクル試験において時間的に早い応答を実現するためには、上記ヒータ8の発熱量(Qgen)をより大きくすることが有効である。なお、このようにヒータ8の発熱量(Qgen)を大きくすることは、ヒータ8へ供給されるヒータ用電源27からの電源電圧を高くすることで容易に実現できる。
また、第1ペルチェ素子9、中間ベースプレート6、第2ペルチェ素子31および放熱器11を介して被測定体1から除去される熱量(Qr)の大きさも大きくすることが好ましい。特に、評価装置30の熱回路を考えると、半導体接合温度Tjの低温側の維持温度Tjminは冷媒17の温度に大きく左右される。つまり、この低温側の維持温度Tjminは冷媒の温度以下にはできない。
(ケース1)
ヒータ8からの発熱量(Qgen)を制御するためヒータ用電源22に対してPWM制御を適用し、また、第1ペルチェ素子用電源23に対してPWM制御を適用することによって、ベースプレート5、第1ペルチェ素子9、中間ベースプレート6、第2ペルチェ素子31および放熱器11を介して被測定体1から除去される熱量(Qr)を制御する場合である。具体的な制御フローは図4に示され、また、電源のON/OFFや温度条件の推移を示すタイミングチャートが図5に示されている。
図4は、本発明によるデバイス評価方法の一例におけるテスト工程を示すフローチャートである。また、図5は、図4に示したフローチャートに従ったテスト工程における電源のON/OFFや温度条件の推移を示すタイミングチャートである。図5では、横軸が時間を示し、縦軸においては5つの特性値について記載されている。つまり、図5の縦軸には、上から半導体デバイスにおける半導体接合温度Tjの変化、図1の熱電対7により測定される被測定体1の温度(モニター温度Tmon)の変化、第1ペルチェ素子用電源22(ペルチェ1駆動電源)のON/OFF、第2ペルチェ素子用電源23(ペルチェ2駆動電源)のON/OFF、ヒータ用電源27(ヒータ電源)のON/OFFが示されている。図4および図5を参照して、本発明によるデバイス評価方法の一例(ケース1)におけるテスト工程を説明する。
図4および図5を参照して、テスト工程では、まず昇温工程(S210)(図3参照)の一部としてヒータ電源をONにし、かつ、ペルチェ1駆動電源を発熱側にONにする工程(S211)を実施する。なお、ここでペルチェ1駆動電源を発熱側にONにするとは、図1に示す第1ペルチェ素子9においてヒータ8に接続された中間ベースプレート6側からベースプレート5側に向けて(つまりヒータ8側から被測定体1側に向けて)熱を移動させるように第1ペルチェ素子9を駆動するため、第1ペルチェ素子用電源22から第1ペルチェ素子9へ電力を供給することを意味する。また、このときペルチェ2駆動電源はOFFになっている。つまり、図1に示した第2ペルチェ素子用電源23から第2ペルチェ素子31に電力が供給されない状態になっている。この工程(S211)は、図5のタイミングチャートでは時点T1において実施される。この時点T1から、図5に示すようにモニター温度Tmonおよび半導体接合温度Tjは上昇を始める。なお、当該テスト工程(S200)の間、被測定体用電源21(図1参照)から被測定体1には通常動作に必要な電源が供給される。
そして、図4の工程(S212)において、半導体接合温度Tjが高温側の維持温度であるTjmaxに到達したかどうかを判断する。この工程(S212)においては、図5の時点T1から時点T2までの間NOと判断されるので、当該工程(S212)は図5の時点T2まで繰返される。
そして、図5の時点T2において、半導体接合温度Tjは高温側の維持温度であるTjmaxに到達し、また、モニター温度Tmonは高温側の維持温度であるTmaxに到達する。なお、半導体接合温度Tjはモニター温度Tmonから演算により求められる。図5から分かるように、モニター温度Tmonの高温側の維持温度Tmaxは半導体接合温度Tjの高温側の維持温度Tjmaxより低くなっている。これは、半導体デバイスが被測定体1の内部に配置されているため、半導体デバイスにおける半導体接合温度Tjより、被測定体1の外部での測定温度であるモニター温度Tmonの方が低くなるためである。
このように時点T2において半導体接合温度TjがTjmaxに到達すると、工程(S212)においてYESと判断され、次の工程(S213)が実施される。当該工程(S213)では、ヒータ電源のPWM制御が開示される。具体的には、図5に示すように、ヒータ電源のON/OFFが所定の間隔で繰返されることにより、ヒータ電源の出力がパルス波状になっている。そして、当該パルス波の幅や間隔(ONの時間とOFFの時間)が適宜制御されることにより、ヒータ8における発熱量Qgenが抑制される。この結果、ヒータ8からの発熱量Qgenと、被測定体1からベースプレート5、第1ペルチェ素子9、中間ベースプレート6、第2ペルチェ素子31を介して放熱器11に伝えられ、冷媒17により除去されたり、輻射伝熱などにより被試験体1から除去される熱量Qrとが所定のバランスとなる。そのため、図5に示すようにモニター温度Tmonおよび半導体接合温度Tjを、それぞれ高温側の維持温度Tmax、Tjmaxに維持することができる。
そして、上記のようなモニター温度Tmonおよび半導体接合温度Tjを一定に維持した状態は図5の時点T2から始まり、所定時間継続される。このとき、図4に示した制御フローでは、工程(S214)において半導体接合温度TjがTjmaxになってから所定時間が経過したか(時点T2から時点T3までの間の時間が経過したか)が判断される。図5の時点T3になるまで、工程(S214)ではNOと判断されるため、工程(S214)が時点T3まで繰返されることになる。このため、時点T3までヒータ電源のPWM制御が継続されることにより、モニター温度Tmonおよび半導体接合温度Tjが、それぞれ高温側の維持温度Tmax、Tjmaxに維持される。
そして、時点T3に到達すると、工程(S214)においてYESと判断されるため、図3の冷却工程(S220)が開始される。具体的には、図5の時点T3において、ヒータ電源をOFFにし、かつ、ペルチェ1駆動電源を吸熱側にONにする工程(S221)が実施される。なお、ここでペルチェ1駆動電源を吸熱側にONにするとは、図1に示す第1ペルチェ素子9においてベースプレート5側から中間ベースプレート6側に向けて(つまり被測定体1側から放熱器11側に向けて)熱を移動させるように第1ペルチェ素子9を駆動するため、第1ペルチェ素子用電源22から第1ペルチェ素子9へ電力を供給することを意味する。また、このときペルチェ2駆動電源はONになる。つまり、図1に示した第2ペルチェ素子用電源23から第2ペルチェ素子31に駆動用の電力が供給される。このようにすれば、被測定体1側から放熱器11に向けて熱の伝達が促進される。この結果、図5に示すように時点T3からモニター温度Tmonおよび半導体接合温度Tjが低下し始める。
その後、図4に示したフローチャートでは、工程(S222)において半導体接合温度Tjが低温側の維持温度Tjminになったかどうかが判断される。そして、図5に示すように半導体接合温度Tjが低温側の維持温度Tjminになる(つまりモニター温度Tmonが低温側の維持温度Tminになる)時点T4まで、上記工程(S222)ではNOと判断される。そのため、時点T4に到達するまで、工程(S222)は繰返される。
そして、図5に示した時点T4になり、半導体接合温度Tjが低温側の維持温度Tjminになると、上記工程(S222)においてYESと判断される。この結果、ペルチェ1駆動電源のPWM制御を開始する工程(S223)が実施される。この工程(S223)が実施されると、図5に示すように、ペルチェ1駆動電源が所定の間隔でON/OFFを繰返す。具体的には、図5に示すように、ペルチェ1駆動電源のON/OFFが所定の間隔で繰返されることにより、ペルチェ1駆動電源の出力がパルス波状になっている。そして、当該パルス波の幅や間隔(ONの時間とOFFの時間)が適宜制御されることにより、第1ペルチェ素子9においてベースプレート5側から中間ベースプレート6側(つまり放熱器11側)へ伝達される熱量Qrが制御される。この結果、ヒータ8からの発熱量Qgenと、被測定体1からベースプレート5、第1ペルチェ素子9、中間ベースプレート6、第2ペルチェ素子31を介して放熱器11に伝えられ、冷媒17により除去される熱量Qrとが所定のバランスとなる。そのため、図5に示すようにモニター温度Tmonおよび半導体接合温度Tjを、それぞれ低温側の維持温度Tmin、Tjminに維持することができる。
そして、上記のようなモニター温度Tmonおよび半導体接合温度Tjを一定に維持した状態は図5の時点T4から始まり、所定時間継続される。このとき、図4に示した制御フローでは、工程(S224)において半導体接合温度TjがTjminになってから所定時間が経過したか(時点T4から時点T5までの間の時間が経過したか)が判断される。図5の時点T5になるまで、工程(S224)ではNOと判断されるため、工程(S224)が時点T5まで繰返されることになる。このため、時点T5までペルチェ1駆動電源のPWM制御が継続されることにより、モニター温度Tmonおよび半導体接合温度Tjが、それぞれ低温側の維持温度Tmin、Tjminに維持される。
そして、時点T5になると、工程(S224)においてYESと判断される。この結果、図4に示した工程(S230)が実施される。工程(S230)では、昇温工程(工程(S211)〜工程(S214))および冷却工程(工程(S221)〜工程(S224))までを所定回数繰返したかを判断する。工程(S230)においてNOと判断された場合、再び工程(S211)以下の工程が順次繰返される。
つまり、図5の時点T5から、再び昇温工程が開始される。時点T5から開始される制御は、丁度時点T1から開始された制御と同様である。つまり、時点T5において、ヒータ電源をONにし、かつ、ペルチェ1駆動電源を発熱側にONにし、かつ、ペルチェ2駆動電源をOFFにする工程(S211)が実施される。この時点T5から、図5に示すようにモニター温度Tmonおよび半導体接合温度Tjは上昇を始める。そして、時点T6になるまで工程(S212)が繰返される。さらに、時点T6において、時点T2の場合と同様に、半導体接合温度Tjは高温側の維持温度であるTjmaxに到達し、また、モニター温度Tmonは高温側の維持温度であるTmaxに到達する。すると、時点T6において時点T2の場合と同様に工程(S212)においてYESと判断され、工程(S213)が実施される。
また、工程(S230)において、YESと判断された場合、つまり昇温工程および冷却工程が所定回数繰返されたと判断された場合、サーマルサイクル試験は終了することになるので、後処理としてのペルチェ1駆動電源、ペルチェ2駆動電源およびヒータ電源をそれぞれOFFにする工程(S241)が実施される。このようにして、ケース1におけるテスト工程(S200)は実施される。
(ケース2)
ヒータ8からの発熱量(Qgen)を制御するためヒータ用電源27についてはON/OFF制御を行なう一方、第1ペルチェ素子用電源22に対してPWM制御を適用し、また、ベースプレート5、第1ペルチェ素子9、中間ベースプレート6、第2ペルチェ素子31および放熱器11を介して被測定体1から除去される熱量(Qr)を制御するためにも第1ペルチェ素子用電源22に対してPWM制御を適用した場合である。具体的な制御フローは図6に示され、また、電源のON/OFFや温度条件の推移を示すタイミングチャートが図7に示されている。
図6は、本発明によるデバイス評価方法の一例におけるテスト工程を示すフローチャートである。また、図7は、図6に示したフローチャートに従ったテスト工程における電源のON/OFFや温度条件の推移を示すタイミングチャートである。図7は基本的に図5と同様の様式で示されており、横軸が時間を示し、縦軸においては5つの特性値について記載されている。つまり、図5の縦軸には、上から半導体デバイスにおける半導体接合温度Tjの変化、図1の熱電対7により測定される被測定体1の温度(モニター温度Tmon)の変化、第1ペルチェ素子用電源22(ペルチェ1駆動電源)のON/OFF、第2ペルチェ素子用電源23(ペルチェ2駆動電源)のON/OFF、ヒータ用電源27(ヒータ電源)のON/OFFが示されている。図6および図7を参照して、本発明によるデバイス評価方法の一例(ケース2)におけるテスト工程を説明する。
図6および図7を参照して、テスト工程では、まず昇温工程(S210)(図3参照)の一部として、図5に示したフローチャートと同様に、ヒータ電源をONにし、かつ、ペルチェ1駆動電源を発熱側にONにし、かつ、ペルチェ2駆動電源をOFFにする工程(S211)を実施する。この工程(S211)は、図7のタイミングチャートでは時点T1において実施される。この時点T1から、図7に示すようにモニター温度Tmonおよび半導体接合温度Tjは上昇を始める。なお、このケース2においても、上述したケース1の場合と同様に、当該テスト工程(S200)の間、被測定体用電源21(図1参照)から被測定体1には通常動作に必要な電源が供給される。
そして、図6の工程(S212)において、半導体接合温度Tjが高温側の維持温度であるTjmaxに到達したかどうかを判断する。この工程(S212)においては、図7の時点T1から時点T2までの間NOと判断されるので、当該工程(S212)は図7の時点T2まで繰返される。
そして、図7の時点T2において、半導体接合温度Tjは高温側の維持温度であるTjmaxに到達し、また、モニター温度Tmonは高温側の維持温度であるTmaxに到達する。このように時点T2において半導体接合温度TjがTjmaxに到達すると、工程(S212)においてYESと判断され、次の工程(S215)が実施される。当該工程(S215)では、ペルチェ1駆動電源のPWM制御が開示される。具体的には、図7に示すように、ペルチェ1駆動電源のON/OFFが所定の間隔で繰返されることにより、ペルチェ1駆動電源の出力がパルス波状になっている。そして、当該パルス波の幅や間隔(ONの時間とOFFの時間)が適宜制御されることにより、ヒータ8から中間ベースプレート6、第1ペルチェ素子9およびベースプレート5を介して被測定体1に伝えられる熱量が制御される(つまり、被測定体1からベースプレート5、第1ペルチェ素子9、中間ベースプレート6、第2ペルチェ素子31および放熱器11を介して冷媒17により除去される熱量Qrが制御される)。なお、ヒータ8からはヒータ電源からの供給電力により所定の発熱量Qgenの発熱が続いている。この結果、ヒータ8からの発熱量Qgenと、被測定体1からベースプレート5、第1ペルチェ素子9、中間ベースプレート6、第2ペルチェ素子31を介して放熱器11に伝えられ、冷媒17により除去される熱量Qrとが所定のバランスとなる。そのため、図7に示すようにモニター温度Tmonおよび半導体接合温度Tjを、それぞれ高温側の維持温度Tmax、Tjmaxに維持することができる。
そして、上記のようなモニター温度Tmonおよび半導体接合温度Tjを一定に維持した状態は図7の時点T2から始まり、所定時間継続される。このとき、図6に示した制御フローでは、工程(S214)において半導体接合温度TjがTjmaxになってから所定時間が経過したか(時点T2から時点T3までの間の時間が経過したか)が判断される。図7の時点T3になるまで、工程(S214)ではNOと判断されるため、工程(S214)が時点T3まで繰返されることになる。このため、時点T3までペルチェ1駆動電源のPWM制御は継続されることにより、モニター温度Tmonおよび半導体接合温度Tjが、それぞれ高温側の維持温度Tmax、Tjmaxに維持される。
そして、時点T3に到達すると、工程(S214)においてYESと判断されるため、図3の冷却工程(S220)が開始される。具体的には、図7の時点T3において、ヒータ電源をOFFにし、かつ、ペルチェ1駆動電源のPWM制御を終了するとともに吸熱側にONにし、かつ、ペルチェ2駆動電源をONにする工程(S225)が実施される。この結果、図7に示すように時点T3からモニター温度Tmonおよび半導体接合温度Tjが低下し始める。なお、時点T3にいたるまでペルチェ1駆動電源はPWM制御されているため、時点T3の直前までペルチェ1駆動電源がON状態になっている場合も考えられる。この場合には、時点T3にペルチェ1駆動電源のPWM制御が終了するとともに、ペルチェ1駆動電源が発熱側にONの状態から吸熱側にONの状態に切替えられる。また、時点T3の直前においてペルチェ1駆動電源がOFFになっている場合にも、時点T3にペルチェ1駆動電源のPWM制御が終了するとともに、ペルチェ1駆動電源がOFF状態から吸熱側にONの状態に切替えられる。
その後、図6に示したフローチャートでは、工程(S222)において半導体接合温度Tjが低温側の維持温度Tjminになったかどうかが判断される。そして、図7に示すように半導体接合温度Tjが低温側の維持温度Tjminになる(つまりモニター温度Tmonが低温側の維持温度Tminになる)時点T4まで、上記工程(S222)ではNOと判断される。そのため、時点T4に到達するまで、工程(S222)は繰返される。
そして、図7に示した時点T4になり、半導体接合温度Tjが低温側の維持温度Tjminになると、上記工程(S222)においてYESと判断される。この結果、ペルチェ1駆動電源のPWM制御を開始する工程(S223)が実施される。この工程(S223)が実施されると、図7に示すように、再びペルチェ1駆動電源が所定の間隔でON/OFFを繰返す。具体的には、図7に示すように、ペルチェ1駆動電源の吸熱側のON/OFFが所定の間隔で繰返されることにより、ペルチェ1駆動電源の出力がパルス波状になっている。そして、当該パルス波の幅や間隔が適宜制御されることにより、第1ペルチェ素子9においてベースプレート5側から中間ベースプレート6側(つまり放熱器11側)へ伝達される熱量Qrが制御される。この結果、ヒータ8からの発熱量Qgenと、被測定体1からベースプレート5、第1ペルチェ素子9、中間ベースプレート6、第2ペルチェ素子31を介して放熱器11に伝えられ、冷媒17により除去される熱量Qrとが所定のバランスとなる。そのため、図7に示すようにモニター温度Tmonおよび半導体接合温度Tjを、それぞれ低温側の維持温度Tmin、Tjminに維持することができる。
そして、上記のようなモニター温度Tmonおよび半導体接合温度Tjを一定に維持した状態は図7の時点T4から始まり、所定時間継続される。このとき、図6に示した制御フローでは、工程(S224)において半導体接合温度TjがTjminになってから所定時間が経過したか(時点T4から時点T5までの間の時間が経過したか)が判断される。図7の時点T5になるまで、工程(S224)ではNOと判断されるため、工程(S224)が時点T5まで繰返されることになる。このため、時点T5までペルチェ1駆動電源のPWM制御が継続されることにより、モニター温度Tmonおよび半導体接合温度Tjが、それぞれ低温側の維持温度Tmin、Tjminに維持される。
そして、時点T5になると、工程(S224)においてYESと判断される。この結果、図6に示した工程(S230)が実施される。工程(S230)では、昇温工程(工程(S211)〜工程(S214))および冷却工程(工程(S221)〜工程(S224))までを所定回数繰返したかを判断する。
工程(S230)においてNOと判断された場合、再び工程(S211)以下の工程が順次繰返される。つまり、図7の時点T5から、再び昇温工程が開始される。時点T5から開始される制御は、丁度時点T1から開始された制御と同様である。つまり、時点T5において、図6の工程(S211)が実施される。この時点T5から、図7に示すようにモニター温度Tmonおよび半導体接合温度Tjは上昇を始める。そして、時点T6になるまで工程(S212)が繰返される。さらに、時点T6において、時点T2の場合と同様に、半導体接合温度Tjは高温側の維持温度であるTjmaxに到達し、また、モニター温度Tmonは高温側の維持温度であるTmaxに到達する。すると、時点T6において時点T2の場合と同様に工程(S212)においてYESと判断され、工程(S215)以下の各工程が順次実施される。
また、工程(S230)において、YESと判断された場合、つまり昇温工程および冷却工程が所定回数繰返されたと判断された場合、サーマルサイクル試験は終了することになるので、後処理としてのペルチェ1駆動電源、ペルチェ2駆動電源およびヒータ電源をそれぞれOFFにする工程(S241)が実施される。このようにして、ケース2におけるテスト工程(S200)は実施される。
(ケース3)
ヒータ8からの発熱量(Qgen)を制御するためヒータ用電源22に対して電圧変更制御を適用し、また、第1ペルチェ素子用電源23に対しても電圧変更制御を適用することによって、ベースプレート5、第1ペルチェ素子9、中間ベースプレート6、第2ペルチェ素子31および放熱器11を介して被測定体1から除去される熱量(Qr)を制御する場合である。具体的な制御フローは図8に示され、また、電源のON/OFFや電圧条件の変更の推移、および温度条件の推移を示すタイミングチャートが図9に示されている。図8は、本発明によるデバイス評価方法の一例におけるテスト工程を示すフローチャートである。また、図9は、図8に示したフローチャートに従ったテスト工程における電源のON/OFFや電圧条件の変更の推移、および温度条件の推移を示すタイミングチャートである。図9では、横軸が時間を示し、縦軸においては5つの特性値について記載されている。つまり、図9の縦軸には、上から半導体デバイスにおける半導体接合温度Tjの変化、図1の熱電対7により測定される被測定体1の温度(モニター温度Tmon)の変化、第1ペルチェ素子用電源22(ペルチェ1駆動電源)のON/OFF、第2ペルチェ素子用電源23(ペルチェ2駆動電源)のON/OFF、ヒータ用電源27(ヒータ電源)のON/OFFが示されている。図8および図9を参照して、本発明によるデバイス評価方法の一例(ケース3)におけるテスト工程を説明する。
図8および図9を参照して、テスト工程では、まず昇温工程(S210)(図3参照)の一部としてヒータ電源をONにし、かつ、ペルチェ1駆動電源を発熱側にONにする工程(S211)を実施する。また、このときペルチェ2駆動電源はOFFになっている。つまり、図1に示した第2ペルチェ素子用電源23から第2ペルチェ素子31に電力が供給されない状態になっている。この工程(S211)は、図9のタイミングチャートでは時点T1において実施される。なお、このとき、ヒータ電源の電圧設定値は最大値(Vmax)に設定され、また、ペルチェ1駆動電源の電圧設定値は発熱側の最大値(+Von)に設定されている。この時点T1から、図9に示すようにモニター温度Tmonおよび半導体接合温度Tjは上昇を始める。なお、当該テスト工程(S200)の間、被測定体用電源21(図1参照)から被測定体1には通常動作に必要な電源が供給される。
そして、図4の工程(S212)と同様に、半導体接合温度Tjが高温側の維持温度であるTjmaxに到達したかどうかを判断工程(S212)を実施する。この工程(S212)においては、図9の時点T2までの間NOと判断されるので、当該工程(S212)は図9の時点T2まで繰返される。そして、図9の時点T2において、半導体接合温度Tjは高温側の維持温度であるTjmaxに到達し、また、モニター温度Tmonは高温側の維持温度であるTmaxに到達する。なお、半導体接合温度Tjはモニター温度Tmonから演算により求められる。
そして、上記工程(S212)においてYESと判断された場合には、図8のヒータ電源の電圧レベルを所定の値に下げる工程(S216)において、ヒータ電源の電圧設定値をVmaxからVminに変更する。具体的には、上記工程(S212)においてYESと判断されたとき(時点T2に到達したとき)、ヒータ電源の電圧設定値をVmaxから低下させる工程を開始する。この工程では、電圧設定値の低下速度(単位時間当りの電圧設定値の変化量)を一定にしておくことが好ましい。この電圧設定値を低下させる工程の結果として図9の時点T3で設定されたヒータ電源の電圧設定の値が、当該電圧設定の下限値(Vmin)となる。なお、工程(S216)は、時点T2に到達する前に開始してもよい。この後、ヒータ電源の電圧設定値はVminに維持される。このように、ヒータ電源の電圧設定値を変更することにより、ヒータ8からの発熱量Qgenと、被測定体1からベースプレート5、第1ペルチェ素子9、中間ベースプレート6、第2ペルチェ素子31を介して放熱器11に伝えられ、冷媒17により除去される熱量Qrとが所定のバランスとなる。そのため、図9に示すようにモニター温度Tmonおよび半導体接合温度Tjを、それぞれ高温側の維持温度Tmax、Tjmaxに維持することができる。
そして、上記のようなモニター温度Tmonおよび半導体接合温度Tjを一定に維持した状態は図9の時点T2から始まり、所定時間継続される。このとき、図8に示した制御フローでは、工程(S214)において半導体接合温度TjがTjmaxになってから所定時間が経過したか(時点T2から時点T4までの間の時間が経過したか)が判断される。図9の時点T4になるまで、工程(S214)ではNOと判断されるため、工程(S214)が時点T4まで繰返されることになる。このため、時点T4までヒータ電源のON状態は継続される。また、ヒータ電源の電圧設定値が時点T3から最小値(Vmin)に維持されていることにより、上述のようにヒータ8からの発熱量(Qgen)と第1ペルチェ素子9などを介した放熱量(Qr)がバランスするため、モニター温度Tmonおよび半導体接合温度Tjが、それぞれ高温側の維持温度Tmax、Tjmaxに維持される。
そして、時点T4に到達すると、工程(S214)においてYESと判断されるため、図3の冷却工程(S220)が開始される。具体的には、図9の時点T4において、ヒータ電源をOFFにし、かつ、ペルチェ1駆動電源を吸熱側にONにし(−Vonmaxに設定し)、かつ、ペルチェ2駆動電源をONにする工程(S225)が実施される。この結果、図9に示すように時点T4からモニター温度Tmonおよび半導体接合温度Tjが低下し始める。
その後、図8に示したフローチャートでは、工程(S222)において半導体接合温度Tjが低温側の維持温度Tjminになったかどうかが判断される。そして、図9に示すように半導体接合温度Tjが低温側の維持温度Tjminになる(つまりモニター温度Tmonが低温側の維持温度Tminになる)時点T5まで、上記工程(S222)ではNOと判断される。そのため、時点T5に到達するまで、工程(S222)は繰返される。
そして、図9に示した時点T5になり、半導体接合温度Tjが低温側の維持温度Tjminになると、上記工程(S222)においてYESと判断される。この結果、第1ペルチェ素子の駆動電源(ペルチェ1駆動電源)の電圧レベルを所定の値に下げる工程(S226)が実施される。工程(S226)では、ペルチェ1駆動電源の電圧設定値を−Vonmaxから−Vonminへ変更する。なお、ペルチェ1駆動電源の電圧設定値について、−Vonmaxから−Vonminへ変更を開始するタイミングは、時点T5より前であってもよい。具体的には、時点T4から所定時間経過したかどうかを判断する工程を実施し、当該工程において所定時間経過したときに、ペルチェ1駆動電源の電圧設定値について−Vonmaxから−Vonminへの変更を開始してもよい。そして、ペルチェ1駆動電源の電圧設定値が時点T6において−Vonminに変更されることにより、第1ペルチェ素子9においてベースプレート5側から中間ベースプレート6側(つまり放熱器11側)へ伝達される熱量Qrが制御される。この結果、ヒータ8からの発熱量Qgenと、被測定体1からベースプレート5、第1ペルチェ素子9、中間ベースプレート6、第2ペルチェ素子31を介して放熱器11に伝えられ、冷媒17により除去される熱量Qrとが所定のバランスとなる。そのため、図9に示すようにモニター温度Tmonおよび半導体接合温度Tjを、それぞれ低温側の維持温度Tmin、Tjminに維持することができる。
そして、上記のようなモニター温度Tmonおよび半導体接合温度Tjを一定に維持した状態は図9の時点T5から始まり、所定時間継続される。このとき、図8に示した制御フローでは、工程(S224)において半導体接合温度TjがTjminになってから所定時間が経過したか(時点T5から時点T7までの間の時間が経過したか)が判断される。図9の時点T7になるまで、工程(S224)ではNOと判断されるため、工程(S224)が時点T7まで繰返されることになる。このため、時点T7までペルチェ1駆動電源の電圧設定値を−Vonminとし、ペルチェ2駆動電源をONとする一方、ヒータ電源をOFFにする制御が継続されることにより、モニター温度Tmonおよび半導体接合温度Tjが、それぞれ低温側の維持温度Tmin、Tjminに維持される。
そして、時点T7になると、工程(S224)においてYESと判断される。この結果、図8に示した工程(S230)が実施される。工程(S230)では、昇温工程(図8の工程(S211)〜工程(S214))および冷却工程(図8の工程(S225)〜工程(S224))までを所定回数繰返したかを判断する。工程(S230)においてNOと判断された場合、再び工程(S211)以下の工程が順次繰返される。
つまり、図9の時点T7から、再び昇温工程が開始される。時点T7から開始される制御は、丁度時点T1から開始された制御と同様である。つまり、時点T7において、ヒータ電源をONにし、かつ、ペルチェ1駆動電源を発熱側にONにし、かつ、ペルチェ2駆動電源をOFFにする工程(S211)が実施される。なお、このとき、ヒータ電源の電圧設定値は最大値(Vmax)に設定され、また、ペルチェ1駆動電源の電圧設定値は発熱側の最大値(+Von)に設定されている。この時点T7から、図9に示すようにモニター温度Tmonおよび半導体接合温度Tjは上昇を始める。そして、図9の時点T8において、半導体接合温度Tjは高温側の維持温度であるTjmaxに到達し、また、モニター温度Tmonは高温側の維持温度であるTmaxに到達する。
また、工程(S230)において、YESと判断された場合、つまり昇温工程および冷却工程が所定回数繰返されたと判断された場合、サーマルサイクル試験は終了することになるので、後処理としてのペルチェ1駆動電源、ペルチェ2駆動電源およびヒータ電源をそれぞれOFFにする工程(S241)が実施される。このようにして、ケース3におけるテスト工程(S200)は実施される。
(ケース4)
ヒータ8からの発熱量(Qgen)を制御するためヒータ用電源27についてはON/OFF制御を行なう一方、第1ペルチェ素子用電源22に対して電圧変更制御を適用することによって、ベースプレート5、第1ペルチェ素子9、中間ベースプレート6、第2ペルチェ素子31および放熱器11を介して被測定体1から除去される熱量(Qr)を制御する場合である。具体的な制御フローは図10に示され、また、電源のON/OFFや電圧条件の変更の推移、温度条件の推移などを示すタイミングチャートが図11に示されている。
図10は、本発明によるデバイス評価方法の一例におけるテスト工程を示すフローチャートである。また、図11は、図10に示したフローチャートに従ったテスト工程における電源のON/OFFや電圧条件の変更の推移、および温度条件の推移を示すタイミングチャートである。図11は基本的に図9と同様の様式で示されており、横軸が時間を示し、縦軸においては5つの特性値について記載されている。つまり、図11の縦軸には、上から半導体デバイスにおける半導体接合温度Tjの変化、図1の熱電対7により測定される被測定体1の温度(モニター温度Tmon)の変化、第1ペルチェ素子用電源22(ペルチェ1駆動電源)のON/OFF、第2ペルチェ素子用電源23(ペルチェ2駆動電源)のON/OFF、ヒータ用電源27(ヒータ電源)のON/OFFが示されている。図10および図11を参照して、本発明によるデバイス評価方法の一例(ケース4)におけるテスト工程を説明する。
図10および図11を参照して、テスト工程では、まず昇温工程(S210)(図3参照)の一部として、図8に示したフローチャートと同様に、ヒータ電源をONにし、かつ、ペルチェ1駆動電源を発熱側にONにし、かつ、ペルチェ2駆動電源をOFFにする工程(S211)を実施する。この工程(S211)は、図11のタイミングチャートでは時点T1において実施される。なお、このとき、ヒータ電源の電圧設定値は最大値(Von)に設定され、また、ペルチェ1駆動電源の電圧設定値は発熱側の最大値(+Vonmin)に設定されている。この時点T1から、図11に示すようにモニター温度Tmonおよび半導体接合温度Tjは上昇を始める。なお、このケース4においても、上述したケース1の場合と同様に、当該テスト工程(S200)の間、被測定体用電源21(図1参照)から被測定体1には通常動作に必要な電源が供給される。
そして、図10の工程(S212)において、半導体接合温度Tjが高温側の維持温度であるTjmaxに到達したかどうかを判断する。この工程(S212)においては、図11の時点T1から時点T2までの間NOと判断されるので、当該工程(S212)は図11の時点T2まで繰返される。
そして、図11の時点T2において、半導体接合温度Tjは高温側の維持温度であるTjmaxに到達し、また、モニター温度Tmonは高温側の維持温度であるTmaxに到達する。このように時点T2において半導体接合温度TjがTjmaxに到達すると、工程(S212)においてYESと判断され、次の工程である第1ペルチェ素子の駆動電源の電圧レベルを所定の値に下げる工程(S217)が実施される。当該工程(S217)では、ペルチェ1駆動電源の電圧設定値を+Vonmaxから+Vonminに変更する。具体的には、図11に示すように、上記工程(S212)においてYESと判断されたとき(時点T2に到達したとき)、ペルチェ1駆動電源の電圧設定値を+Vonmaxから低下させる工程を開始する。この工程では、電圧設定値の低下速度(単位時間当りの電圧設定値の変化量)を一定にしておくことが好ましい。この電圧設定値を低下させる工程の結果として、図11の時点T3で設定されたペルチェ1駆動電源の電圧設定値が、発熱側での電圧設定値の下限値(+Vonmin)となる。なお、工程(S217)は、時点T2に到達する前に開始してもよい。この後、ペルチェ1駆動電源の電圧設定値は+Vonminに維持される。このため、被測定体1からベースプレート5、第1ペルチェ素子9、中間ベースプレート6、第2ペルチェ素子31および放熱器11を介して冷媒17により所定の熱量Qrが除去される。一方、ヒータ8からはヒータ電源からの供給電力により所定の発熱量Qgenの発熱が続いている。この結果、ヒータ8からの発熱量Qgenと、被測定体1からベースプレート5、第1ペルチェ素子9、中間ベースプレート6、第2ペルチェ素子31を介して放熱器11に伝えられ、冷媒17により除去される熱量Qrとが所定のバランスとなる。そのため、図11に示すようにモニター温度Tmonおよび半導体接合温度Tjを、それぞれ高温側の維持温度Tmax、Tjmaxに維持することができる。
そして、上記のようなモニター温度Tmonおよび半導体接合温度Tjを一定に維持した状態は図11の時点T2から始まり、所定時間継続される。このとき、図10に示した制御フローでは、工程(S214)において半導体接合温度TjがTjmaxになってから所定時間が経過したか(時点T2から時点T4までの間の時間が経過したか)が判断される。図11の時点T4になるまで、工程(S214)ではNOと判断されるため、工程(S214)が時点T4まで繰返されることになる。このため、時点T4まで上述した熱量Qrと熱量Qgenとがバランスした状態が継続するため、モニター温度Tmonおよび半導体接合温度Tjが、それぞれ高温側の維持温度Tmax、Tjmaxに維持される。
そして、時点T4に到達すると、工程(S214)においてYESと判断されるため、図3の冷却工程(S220)が開始される。具体的には、図11の時点T4において、ヒータ電源をOFFにし、かつ、ペルチェ1駆動電源を吸熱側にONにし(−Vonmaxに設定し)、かつ、ペルチェ2駆動電源をONにする工程(S225)が実施される。この結果、図11に示すように時点T4からモニター温度Tmonおよび半導体接合温度Tjが低下し始める。
その後、図10に示したフローチャートでは、工程(S222)において半導体接合温度Tjが低温側の維持温度Tjminになったかどうかが判断される。そして、図11に示すように半導体接合温度Tjが低温側の維持温度Tjminになる(つまりモニター温度Tmonが低温側の維持温度Tminになる)時点T5まで、上記工程(S222)ではNOと判断される。そのため、時点T5に到達するまで、工程(S222)は繰返される。
そして、図11に示した時点T5になり、半導体接合温度Tjが低温側の維持温度Tjminになると、上記工程(S222)においてYESと判断される。この結果、第1ペルチェ素子の駆動電源の電圧レベルを所定の値に下げる工程(S226)が実施される。工程(S226)では、ペルチェ1駆動電源の電圧設定値を−Vonmaxから−Vonminへ変更する。なお、ペルチェ1駆動電源の電圧設定値について、−Vonmaxから−Vonminへ変更を開始するタイミングは、時点T5より前であってもよい。具体的には、時点T4から所定時間経過したかどうかを判断する工程を実施し、当該工程において所定時間経過したときに、ペルチェ1駆動電源の電圧設定値について−Vonmaxから−Vonminへの変更を開始してもよい。そして、ペルチェ1駆動電源の電圧設定値が最終的に時点T6において−Vonminに変更されることにより、第1ペルチェ素子9においてベースプレート5側から中間ベースプレート6側(つまり放熱器11側)へ伝達される熱量Qrが小さくなるように制御される。この結果、ヒータ8からの発熱量Qgenと、被測定体1からベースプレート5、第1ペルチェ素子9、中間ベースプレート6、第2ペルチェ素子31を介して放熱器11に伝えられ、冷媒17により除去される熱量Qrとが所定のバランスとなる。そのため、図11に示すようにモニター温度Tmonおよび半導体接合温度Tjを、それぞれ低温側の維持温度Tmin、Tjminに維持することができる。
そして、上記のようなモニター温度Tmonおよび半導体接合温度Tjを一定に維持した状態は図11の時点T5から始まり、所定時間継続される。このとき、図10に示した制御フローでは、工程(S224)において半導体接合温度TjがTjminになってから所定時間が経過したか(時点T5から時点T7までの間の時間が経過したか)が判断される。図11の時点T7になるまで、工程(S224)ではNOと判断されるため、工程(S224)が時点T7まで繰返されることになる。このため、時点T7までペルチェ駆動電源の電圧設定値を−Vonminとし、ペルチェ2駆動電源をONとする一方、ヒータ電源をOFFにする制御が継続されることにより、モニター温度Tmonおよび半導体接合温度Tjが、それぞれ低温側の維持温度Tmin、Tjminに維持される。
そして、時点T7になると、工程(S224)においてYESと判断される。この結果、図10に示した工程(S230)が実施される。工程(S230)では、昇温工程(工程(S211)〜工程(S214))および冷却工程(工程(S225)〜工程(S224))までを所定回数繰返したかを判断する。
工程(S230)においてNOと判断された場合、再び工程(S211)以下の工程が順次繰返される。つまり、図11の時点T7から、再び昇温工程が開始される。時点T7から開始される制御は、丁度時点T1から開始された制御と同様である。つまり、時点T7において、図10の工程(S211)が実施される。この時点T7から、図11に示すようにモニター温度Tmonおよび半導体接合温度Tjは上昇を始める。そして、時点T8になるまで工程(S212)が繰返される。さらに、時点T8において、時点T2の場合と同様に、半導体接合温度Tjは高温側の維持温度であるTjmaxに到達し、また、モニター温度Tmonは高温側の維持温度であるTmaxに到達する。すると、時点T8において時点T2の場合と同様に工程(S212)においてYESと判断され、工程(S217)以下の各工程が順次実施される。
また、工程(S230)において、YESと判断された場合、つまり昇温工程および冷却工程が所定回数繰返されたと判断された場合、サーマルサイクル試験は終了することになるので、後処理としてのペルチェ1駆動電源、ペルチェ2駆動電源およびヒータ電源をそれぞれOFFにする工程(S241)が実施される。このようにして、ケース4におけるテスト工程(S200)は実施される。
(実施の形態2)
図12は、本発明に従った評価装置の実施の形態2の模式図である。図12を参照して、本発明に従った評価装置の実施の形態2を説明する。
図12に示すように、本発明に従ったデバイス評価装置の実施の形態2としての評価装置30は、基本的には図1に示した評価装置30と同様の構成を備えるが、中間ベースプレート6を備えていない点が異なる。
すなわち、図12に示した評価装置30では、ヒータ8がグリス3を介して直接第1ペルチェ素子9と第2ペルチェ素子31との間で、これら第1および第2ペルチェ素子9、31のそれぞれに接続されている。このような構成であっても、基本的に図1に示した評価装置30と同様の効果を得ることができる。
また、図12に示した評価装置30において、さらにベースプレート5を省略した構成としてもよい。つまり、被測定体1が第1ペルチェ素子9の上面にグリスを介して直接接続されていてもよい。この場合、第1ペルチェ素子9の上面には熱電対7を配置するための凹部を形成する。当該凹部の内部には被測定体1の温度を測定するための熱電対7を配置する。このような構成であっても、基本的に図1に示した評価装置30と同様の効果を得ることができる。
なお、上述した構成では、ベースプレート5(図1参照)を省略し、第1ペルチェ素子9の上部をいわばベースプレートとして利用している。このような構成は、第1ペルチェ素子9の上面の面積と被測定体1の占有面積(被測定体1において第1ペルチェ素子9の上面とグリス3を介して対向する部分の面積)とに大きな差が無いような場合に、被測定体1から第1ペルチェ素子9への熱伝達の条件をあまり劣化させること無く評価装置30の構成を簡略化できる。したがって、評価装置30の構成の簡略化に特に有効である。なお、図12に示した評価装置30では、固定部材20を配置しているが、この固定部材20を用いない構成としてもよい。
次に、上記の実施の形態と重複するものもあるが本発明の実施例を羅列的に挙げて説明する。
この発明に従ったデバイス評価装置としての評価装置30は、電子冷却素子(第1ペルチェ素子9および第2ペルチェ素子31)と発熱部材(ヒータ8)と放熱部材(放熱器11、冷媒流路13、熱交換器15、ポンプ14、冷媒17)と制御部(制御装置29)とを備える。電子冷却素子(第1ペルチェ素子9および第2ペルチェ素子31)は、半導体デバイスを含む被測定体1と熱的に接続される。発熱部材(ヒータ8)は被測定体1と熱的に接続される。放熱部材(放熱器11、冷媒流路13、熱交換器15、ポンプ14)は、電子冷却素子(第1ペルチェ素子9および第2ペルチェ素子31)と熱的に接続される。制御部(制御装置29)は、発熱部材(ヒータ8)と電子冷却素子(第1ペルチェ素子9および第2ペルチェ素子31)へ入力する電力を制御する。
このようにすれば、ヒータ8に電力を入力することによりヒータ8を発熱させて、当該ヒータ8から発生した熱を被測定体1に伝えることにより被測定体1の温度を上昇させることができる。そのため、被測定体1の動作状態とは独立して被測定体1の温度条件を制御した状態でサーマルサイクル試験を実施することができる。したがって、被測定体1の半導体デバイスがSiCを用いたデバイスのように従来のシリコンを用いたデバイスより高温域で動作する場合であっても、ヒータ8で発生させる熱量を制御することにより被測定体1の動作温度域(従来より高温域)における試験を簡単に実施することができる。
上記評価装置30は、図1などに示すように、電子冷却素子(第1ペルチェ素子9および第2ペルチェ素子31)と熱的に接続される被測定体1を少なくとも外気から隔離することが可能な密閉ケース28をさらに備えていてもよい。この場合、密閉ケース28の内部の雰囲気ガスの組成を適宜調整することにより、被測定体1の温度が上昇、下降することにともなって被測定体1の表面に結露が発生することを防止できる。この結果、当該結露により被測定体1に故障などの問題が起きることを防止できる。
また、上記評価装置30において、密閉ケース28は被測定体1、電子冷却素子(第1ペルチェ素子9および第2ペルチェ素子31)、放熱部材の一部(放熱器11、冷媒流路13の放熱器11との接続部)を囲むように形成されていてもよい。この場合、密閉ケース28の内部の雰囲気ガスの組成を適宜調整することにより、被測定体1や電子冷却素子(第1ペルチェ素子9および第2ペルチェ素子31)、放熱部材(放熱器11や冷媒流路13)などの表面において結露が発生することを防止できる。このため、当該結露によって電子冷却素子や放熱部材などに故障が発生する、あるいは電子冷却素子などを正常に動作させることができないため、結果的に試験を正常に行なえないといった問題の発生を防止できる。
上記評価装置30は、被測定体1の温度を測定する温度センサ(熱電対7)をさらに備えていてもよい。この場合、被測定体1の温度を当該温度センサ(熱電対7)により測定できるので、被測定体1の温度変化が試験において予定する温度変化と合致しているかどうかを正確にモニターすることができる。また、当該温度センサ(熱電対7)により被測定体1の温度を正確に測定できるので、当該温度データを評価装置30の制御にフィードバックさせることができる。この結果、評価装置30において正確な温度制御を行なうことができる。
上記評価装置30は、発熱部材(ヒータ8)に供給される電流を測定する発熱部材用電流センサ(ヒータ用電源27に接続された電流センサ25)をさらに備えていてもよい。この場合、ヒータ8に供給される電流の値を測定することで、当該電流の値に影響を及ぼすような評価装置30やヒータ8の異常を迅速に検出することができる。
たとえば、電流センサ25では電流検出センサとしてホール素子やカレントトランスなどを用いることができる。なお、当該電流センサ25において所定の電流値より高い値の電流値が検出されたとき(過電流が検出されたとき)には、コントローラ26によりヒータ8への電力の供給を遮断する。また、同時にコントローラ26により試験が中止され、評価装置30の異常がユーザに報知される。報知手段としては、たとえば評価装置30に設置されるLCDやCRTなどの表示装置にヒータ8へ供給される電流の値が過大になったことを表示してもよいし、または/同時にスピーカなどからアラーム音などを発生させてもよい。
また、電流センサ25において所定の電流値より低い値の電流値が検出されたとき(過小電流が検出されたとき)も、上述の場合と同様に、コントローラ26によりヒータ8への電力の供給を遮断する。また、同時にコントローラ26により試験が中止され、評価装置30の異常がユーザに報知される。報知手段としては、上述したような表示装置やスピーカなどを用いてもよい。
上記評価装置30は、電子冷却素子(第1ペルチェ素子9および第2ペルチェ素子31)に供給される電流を測定する電子冷却素子用電流センサ(第1ペルチェ素子用電源22および第2ペルチェ素子用電源23にそれぞれ接続された電流センサ25)をさらに備えていてもよい。この場合、電子冷却素子(第1ペルチェ素子9および第2ペルチェ素子31)の故障などに伴い、電子冷却素子に供給される電流の値に変化が起きる場合、そのような電子冷却素子の故障に伴う評価装置30の異常を迅速に検出できる。
なお、この電流センサ25において用いる電流検出センサとしては、たとえばホール素子やシャント抵抗などを用いることができる。当該電流センサ25において所定の電流値より高い値の電流値が検出されたとき(過電流が検出されたとき)には、コントローラ26により第1ペルチェ素子9、第2ペルチェ素子31およびヒータ8への電力の供給を遮断する。また、同時にコントローラ26により試験が中止され、評価装置30の異常がユーザに報知される。
また、電流センサ25において所定の電流値より低い値の電流値が検出されたとき(過小電流が検出されたとき)も、上述の場合と同様に、コントローラ26により第1ペルチェ素子9、第2ペルチェ素子31およびヒータ8への電力の供給を遮断する。また、同時にコントローラ26により試験が中止され、評価装置30の異常がユーザに報知される。報知手段としては、上述したような表示装置やスピーカなどを用いてもよい。
上記評価装置30において、放熱部材は、電子冷却素子(第2ペルチェ素子31)に接続されたベース部材(放熱器11)と、ベース部材(放熱器11)から熱を除去するための冷媒17とを含んでいてもよい。上記評価装置30は、冷媒17の温度を測定するための冷媒用温度センサ(冷媒流路13に設置された温度センサ16)をさらに備えていてもよい。この場合、冷媒用の温度センサ16によって冷媒17の温度をモニターできるので、放熱部材において発生した異常(たとえば冷媒流路13などからの冷媒17の漏洩により冷媒量が減少することにより冷却効率が低下した場合など)を迅速に検出することができる。
なお、上述した温度センサ16として熱電対などを用いることができる。そして、温度センサ16において設定温度以上の高い温度を検出したときには、コントローラ26によりヒータ8、第1ペルチェ素子9および第2ペルチェ素子31への電力の供給を遮断する。また、同時にコントローラ26により試験が中止され、評価装置30の異常がユーザに報知される。報知手段としては、上述したような表示装置やスピーカなどを用いてもよい。
上記評価装置30において、被測定体用電源21、第1ペルチェ素子用電源22、第2ペルチェ素子用電源23、冷却系電源24、ヒータ用電源27のそれぞれには、これらの電源への過大な負荷から装置を保護するためにヒューズを設定しておくことが好ましい。この結果、評価装置30が過電流などにより破損することを防止できる。
上記評価装置30において、制御部(制御装置29)は、発熱部材(ヒータ8)へ入力する電力をPWM制御または電圧変更制御により制御可能であってもよい。この場合、ヒータ8から発生する熱量を細かく制御することが可能になる。したがって、ヒータ8から発生した熱によって加熱される被測定体1の温度を相対的に高温状態あるいは相対的に低温状態で温度一定の状態に高い精度で保つことができる。
上記評価装置30において、制御部(制御装置29)は、電子冷却素子(第1ペルチェ素子9および第2ペルチェ素子31)へ入力する電力をPWM制御または電圧変更制御により制御可能であってもよい。この場合、電子冷却素子(第1ペルチェ素子9および第2ペルチェ素子31)における冷却能力を細かく制御することができる。したがって、被測定体1の温度制御を高精度に行なうことができる。
上記評価装置30において、電子冷却素子(第1ペルチェ素子9および第2ペルチェ素子31)は、被測定体1と熱的に接続された被測定体側電子冷却素子(第1ペルチェ素子9)と、放熱部材(ヒータ8)と熱的に接続された放熱側電子冷却素子(第2ペルチェ素子31)とを含んでいてもよい。発熱部材(ヒータ8)は、被測定体側電子冷却素子(第1ペルチェ素子9)と前記放熱側電子冷却素子(第2ペルチェ素子31)とを熱的に接続する接続経路上(第1ペルチェ素子9と第2ペルチェ素子31との挟まれてこれらの接続された中間ベースプレート6上)に位置する。このように、第1ペルチェ素子9と第2ペルチェ素子31との間にヒータ8を配置することで、第1ペルチェ素子9を介してヒータ8からの熱を被測定体1に伝えることができる。したがって、第1ペルチェ素子9を用いて、被測定体1に入力される熱量を精密にコントロールすることができる。
上記評価装置30は、電子冷却素子(第2ペルチェ素子31)を放熱部材(放熱器11の上部表面)へ接続固定する固定部材(フランジ部10および固定用ネジ12)をさらに備えていてもよい。この場合、固定部材(フランジ部10および固定用ネジ12)により電子冷却素子(第2ペルチェ素子31)を放熱部材(放熱器11)へ確実に接続固定することができる。
上記評価装置30では、複数の被測定体1を電子冷却素子(第1ペルチェ素子9)と熱的に接続された状態にしてもよい。この場合、複数の被測定体1に対して同時に評価試験(サーマルサイクル試験)を行なうことができる。たとえば、図1や図12に示した評価装置30では、ベースプレート5の上部表面上に複数の被測定体1を並べて配置してもよい。この場合、ベースプレート5の上面においてそれぞれの被測定体1の下面と対向する位置に溝(凹部)を形成し、当該溝の内部にそれぞれ熱電対を配置することが好ましい。また、本発明の実施の形態2において説明したような、ベースプレート5を省略した構成の評価装置30の場合には、ペルチェ素子9の上部表面上に複数の被測定体1を並べて配置してもよい。この場合、ペルチェ素子9の上面においてそれぞれの被測定体1の下面と対向する位置に溝(凹部)を形成し、当該溝の内部にそれぞれ熱電対を配置することが好ましい。このようにすれば、個々の被測定体1の温度を正確に測定しながら評価試験を行なうことができる。
上記評価装置30では、図1に示すように被測定体1はベースプレート5を介して電子冷却素子(ペルチェ素子9)と接続されていてもよい。ベースプレート5の平面形状は被測定体1の平面形状より大きくてもよい。この場合、被測定体1から発生した熱をベースプレート5である程度拡散させた上で、電子冷却素子(ペルチェ素子9)へ伝達することができる。そのため、電子冷却素子(ペルチェ素子9)において単位面積当りの冷却能力が余り大きくないような場合、ベースプレート5によって熱を伝える面積を大きくした上で、当該ベースプレート5に接続される電子冷却素子(ペルチェ素子9)の吸熱面の面積を大きくすることで、十分な冷却能力を確保することができる。
この発明に従ったデバイス評価方法は、上記評価装置30を用いたデバイス評価方法であって、図2に示すように、電子冷却素子(第1ペルチェ素子9および第2ペルチェ素子31)および前記発熱部材(ヒータ8)に被測定体1を熱的に接続する工程(被測定体準備工程(S100))と、テスト工程(S200)とを備える。テスト工程(S200)では、発熱部材(ヒータ8)に電力を入力することにより、発熱部材(ヒータ8)から発生した熱を被測定体1に伝えることで被測定体1の温度を上昇させる加熱工程(昇温工程(S210))と、電子冷却素子(第1ペルチェ素子9および第2ペルチェ素子31)に電力を入力することにより被測定体1の熱を放熱部材(放熱器11および冷媒17)へ伝達し、被測定体1を冷却する冷却工程(S220)とを、1回以上繰返すように、電力を制御部(制御装置29)により制御する。
このようにすれば、ヒータ8からの発熱を利用して被測定体1の温度を昇温する一方、電子冷却素子(第1ペルチェ素子9および第2ペルチェ素子31)によって被測定体1の熱を放熱部材へ伝達することによって、被測定体1に対するサーマルサイクル試験を簡便に行なうことができる。
上記デバイス評価方法において、電力の制御にPWM制御または電圧制御を用いてもよい。この場合、PWM制御または電圧制御によって、ヒータ8からの発熱量および電子冷却素子(第1ペルチェ素子9および第2ペルチェ素子31)での吸熱量(つまり放熱部材へ伝達される熱量)を正確に制御することができる。したがって、サーマルサイクル試験において高温域および低温域での温度一定の条件を容易に実現できる。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
1 被測定体、3 グリス、5 ベースプレート、6 中間ベースプレート、7 熱電対、8 ヒータ、9 第1ペルチェ素子、10 フランジ部、11 放熱器、12 固定用ネジ、13 冷媒流路、14 ポンプ、15 熱交換器、16 温度センサ、17 冷媒、18a,18b 押え部材、19 支持部材、20 固定部材、21 被測定体用電源、22 第1ペルチェ素子用電源、23 第2ペルチェ素子用電源、24 冷却系電源、25 電流センサ、26 コントローラ、27 ヒータ用電源、28 密閉ケース、29 制御装置、30 評価装置、31 第2ペルチェ素子。