JP4319763B2 - 共振器の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明はマイクロ波〜ミリ波周波数帯における発振器やフィルタ等のデバイスに用いられる誘導結合型磁気共振器と称される共振器の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
この種の共振器はYIG(イットリウム・アイアン・ガーネット)などのフェリ磁性体の単結晶球がカップリングループの中心に配置されてなるもので、図4にこのような構成を有する共振器を用いて構成された発振器の概略構造を示す。
つぼ形磁気コア11には励磁用のコイル12が配設され、このつぼ形磁気コア11と板状磁気コア13とによって磁気回路が構成されている。板状磁気コア13の内面側には発振回路等が構成された集積回路基板14が搭載固定され、さらに支持具15が取り付けられている。
【0003】
支持具15に支持された支持棒16の先端にはYIG球17が取り付けられており、このYIG球17は図に示したように、つぼ形磁気コア11の中心軸11a上に位置すると共に、集積回路基板14に実装されたカップリングループ18の中心に位置するものとされている。図中、19は同軸コネクタを示す。
図5は図4における共振器部分の詳細を示したものであり、カップリングループ18はこの例ではループ素材としてリボンを用いたものとなっており、図5Bに示したようにその中間部が半円形をなすものとされている。
【0004】
カップリングループ18の一端は集積回路基板14の電極21に固定され、他端はこの例では集積回路基板14の電極22上に実装されたチップコンデンサ23の電極23aに固定されている。
支持具15には支持穴24が貫通形成され、この支持穴24に支持棒16は挿通されて支持されている。なお、支持棒16の基端には支持具15の側面に突き当てられる大径部16aが設けられている。
【0005】
支持具15の両端には取り付け穴25が形成されており、この取り付け穴25を使用し、ネジ止めにて支持具15は板状磁気コア13に固定されている。図中、26はネジを示す。
図6は上記のような構成を有する共振器の従来の製造方法を工程順に示したものであり、以下各工程について説明する。なお、集積回路基板14上の電極21,22及びチップコンデンサ23の図示は省略している。
【0006】
(1)カップリングループ18を実装する集積回路基板14を板状磁気コア13に搭載する。
(2)軸状のループ成形治具31をXYZ3軸ステージ32に取り付け、このステージ32を調整してループ成形治具31の先端を集積回路基板14上の所定のループ成形位置まで移動させる。ループ成形治具31は例えば所定の径を有するパイプまたは丸棒よりなる。
【0007】
(3)幅が1mm弱程度のリボン(ループ素材)の一端を集積回路基板14上の電極に固定した後、リボンをループ成形治具31の周面に沿わせる形で半円形の形状に成形し、他端をチップコンデンサの電極に固定してカップリングループ18を形成する。電極への固定は例えば熱圧着により行われる。
(4)ループ成形治具31及びステージ32を取り外す。
(5)YIG球17を取り付けた支持棒16を支持具15の支持穴24に挿通支持させ、YIG球17がカップリングループ18の中心に位置するように、支持具15の位置を調整して板状磁気コア13に支持具15をネジ止め固定する。なお、支持棒16は、その大径部16aが支持具15に接着固定される。
【0008】
このようにしてカップリングループ18の成形とYIG球17の位置決めが行われ、共振器が完成する。
上記においてはループ素材としてリボンを用い、半円形に成形してカップリングループ18を構成しているが、例えばループ素材として外径50μm弱程度のワイヤを用いる場合もあり、また半円形に限らず、円形あるいはらせん形に成形する場合もある。なお、ループ素材としてワイヤを用いる場合は電極に超音波ボンディングすることもできる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記のような構成を有する共振器においては、YIG球17のカップリングループ18に対する位置精度が悪く、カップリングループ18の中心に位置していない場合、YIG球17に一様な高周波磁界が印加されず、不要モードが励起されて発振特性や通過特性が著しく劣化するといった問題が生じ、また個々のデバイスの特性のばらつきとして現れ、歩留りの大幅な悪化を招くものとなることから、YIG球17を高精度に位置決めすることが要求される。
【0010】
しかるに、上述した従来の製造方法においてはYIG球17を保持した支持棒16を支持具15に挿通支持させ、その支持具15の板状磁気コア13に対する取り付け位置を調整することによってYIG球17の位置決めを行うものとなっているため、その作業は容易ではなく、YIG球17を高精度に位置決めするために時間がかかるものとなっていた。
また、支持具15の取り付け位置の調整はネジ26に対する取り付け穴25の大きさの余裕分を使用して行うものであるため、この余裕分により支持具15を前後(支持棒16の軸方向)・左右にずらすことはでき、つまり前後・左右方向の位置調整は一応行えるものの、上下方向にはずらすことはできないため、上下方向においてYIG球17の位置を調整する必要がある場合には、例えば支持具15と板状磁気コア13との間にスペーサを挟み込んだり、あるいは板状磁気コア13の支持具15取り付け面を削り込んだりするといったことが行われ、これらの点で生産性が極めて低く、その結果共振器を用いるデバイスのコスト高の原因となっていた。
【0011】
この発明の目的は上述した問題点に鑑み、生産性の向上を図ることができ、よってコストの低減を図ることができる共振器の製造方法を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明によれば、フェリ磁性体の単結晶球がカップリングループの中心に位置され、支持具の支持穴に挿通支持された支持棒の先端に、上記単結晶球が保持されている共振器は、上記支持穴に軸状をなすループ成形治具を挿通支持させ、そのループ成形治具の周面にループ素材を沿わせることにより、カップリングループを成形すると共に、その成形位置でカップリングループを電極に固定し、固定後、ループ成形治具を支持穴から取り外して、その支持穴に上記単結晶球を保持した支持棒を挿通支持させることによって製造される。
【0013】
請求項2の発明では、請求項1の発明において、ループ成形治具及び支持棒の基端に大径部をそれぞれ設け、それら大径部を上記支持具に突き当てることにより、ループ成形治具及び支持棒位置決めをそれぞれ行う。
請求項3の発明では、請求項2の発明において、ループ成形治具の先端側にマーカを形成して、そのマーカ位置を上記成形位置とする。
【0014】
【発明の実施の形態】
この発明の実施の形態を図面を参照して実施例により説明する。
図1はこの発明による共振器の製造方法の一実施例を工程順に示したものである。なお、カップリングループ18は図5と同様に、その一端が集積回路基板14の電極21に固定され、他端が集積回路基板14の電極22上に実装されたチップコンデンサ23の電極23aに固定されるが、それら電極21,22及びチップコンデンサ23の図示は省略している。以下、各工程について説明する。
【0015】
(1)カップリングループ18を実装する集積回路基板14を板状磁気コア13に搭載する。
(2)YIG球17を保持した支持棒16支持用の支持具15を板状磁気コア13の所定の位置にネジ26を用い、ネジ止め固定する。そして、支持具15の支持穴24にループ成形治具31を挿通支持させ、その先端を集積回路基板14上の所定の位置に位置させる。
【0016】
(3)従来と同様に、リボン(ループ素材)の一端を集積回路基板14上の電極に固定した後、リボンをループ成形治具31の周面に沿わせ、半円形の形状に成形してカップリングループ18を形成し、他端をチップコンデンサの電極に固定する。電極への固定は例えば熱圧着により行う。
(4)ループ成形治具31を支持穴24から取り外す。
(5)YIG球17を保持した支持棒16を支持穴24に挿通させ、支持棒16の位置をその軸方向(前後方向)に調整してYIG球17をカップリングループ18の中心に位置させる。位置決め後、支持棒16を支持具15に接着固定して、共振器が完成する。
【0017】
このように、この例によれば共振器の構成部品である支持具15を初めに板状磁気コア13に取り付け、その支持具15によってループ成形治具31を支持するものとなっており、つまりループ成形治具31と支持棒16とが同じ支持穴24によって位置決め支持されるものとなっているため、カップリングループ18の中心軸上にYIG球17の中心が必然的に位置するものとなる。
従って、上下・左右方向の調整は不要であり、前後方向の調整のみで簡単にYIG球17をカップリングループ18の中心に位置させることができる。
【0018】
図2はYIG球17の位置決めをさらに簡易に行えるようにした構成及び製造方法を示したものであり、この例ではループ成形治具31及び支持棒16の基端に、支持具15の側面と突き当たる大径部31a及び16aがそれぞれ設けられる。また、ループ成形治具31の先端側にマーカ31bが設けられる。このマーカ31bはカップリングループ18を成形する際の位置を規定するもので、例えばけがき線とされる。
【0019】
図2における工程(1)〜(5)は図1の工程(1)〜(5)と対応しており、以下図1における作業、組立と異なる点について説明する。
工程(2)において、ループ成形治具31はその大径部31aが支持具15の側面に突き当てられて支持穴24に支持される。これにより、ループ成形治具31は位置決めされ、カップリングループ18の成形位置を示すマーカ31bが所定の位置に位置決めされる。
【0020】
工程(3)におけるカップリングループ18の成形・固定はマーカ31bの位置を基準として行われる。この例ではループ素材であるリボンの一側縁がマーカ31bの線に揃えられている。
工程(5)において、支持棒16はその大径部16aが支持具15の側面に突き当てられて支持穴24に支持され、その状態で支持具15に接着固定される。
つまり、この例では前後方向においてもカップリングループ18の位置とYIG球17の位置が、それらの中心が必然的に一致するように構成され、組み立てられるため、カップリングループ18の中心にYIG球17を位置させるための細かな位置調整作業は一切不要となり、よって共振器を極めて簡易に製造することができるものとなる。
【0021】
図3は上述したような製造方法を適用できる共振器の他の構成、配置例を示したものであり、図3Aはループ素材としてワイヤを用い円形ループとしたカップリングループ18を具備する共振器を示したものである。なお、図2と対応する部分には同一符号を付してある。
図3Bは板状磁気コア13上に共振器を構成した例を示したものであり、YIG球17及びカップリングループ18が磁気コア13の板面と対向するものとなっている。図3Cも同様に磁気コア13上に共振器が構成されたものであるが、この例では集積回路基板14に切欠き部14aを設け、その切欠き部14aに共振器を位置させたものとなっている。
【0022】
上述した例ではフェリ磁性体の単結晶球をいずれもYIGよりなるものとしているが、これに限らず、例えばバリウムフェライト等の他の材料も用いられる。
また、支持具15が固定される部材は板状磁気コア13に限るものではなく、さらにカップリングループ18が搭載固定される部材も集積回路基板14以外のものであってもよい。
【0023】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1の発明によればフェリ磁性体の単結晶球をカップリングループの中心に位置決めするための調整作業は前後方向(支持棒の軸方向)のみ行えばよく、上下・左右方向は調整不要となるため、その分簡易に組み立てることができ、よって生産性が向上し、コストの低減を図ることができる。
しかも、請求項2の発明では前後方向の調整作業も不要とすることができ、つまり従来行っていた上下・左右・前後の3方向の細かな調整作業を全て不要とすることができるため、さらに生産性が向上するものとなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】請求項1の発明の実施例を説明するための工程図。
【図2】請求項2の発明の実施例を説明するための工程図。
【図3】共振器の他の構成・配置例を示す図、Aはカップリングループを円形ループとした例、Bは磁気コア上に共振器を構成した例、Cは集積回路基板の切欠き部に共振器を構成した例を示す。
【図4】共振器を具備する発振器の概略構造を示す断面図。
【図5】図4における共振器部分の詳細を示す図、Aは平面図、Bはその断面図、Cはその正面図。
【図6】共振器の従来の製造方法を説明するための工程図。

Claims (3)

  1. フェリ磁性体の単結晶球がカップリングループの中心に位置されてなり、支持具の支持穴に挿通支持された支持棒の先端に、上記単結晶球が保持された構造とされている共振器の製造方法であって、
    上記支持穴に軸状をなすループ成形治具を挿通支持させ、
    そのループ成形治具の周面にループ素材を沿わせることにより、上記カップリングループを成形すると共に、その成形位置でカップリングループを電極に固定し、
    上記固定後、上記ループ成形治具を上記支持穴から取り外して、その支持穴に上記単結晶球を保持した支持棒を挿通支持させることを特徴とする共振器の製造方法。
  2. 請求項1記載の共振器の製造方法において、
    上記ループ成形治具及び支持棒の基端に大径部をそれぞれ設け、
    それら大径部を上記支持具に突き当てることにより、上記ループ成形治具及び支持棒位置決めをそれぞれ行うことを特徴とする共振器の製造方法。
  3. 請求項2記載の共振器の製造方法において、
    上記ループ成形治具の先端側にマーカを形成し、
    そのマーカ位置を上記成形位置とすることを特徴とする共振器の製造方法。
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