JP4318450B2 - 難燃性樹脂組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、環境面で好ましい難燃性に優れ、かつ優れた外観を有し、さらに耐熱性と靱性を同時に高いレベルで満足する樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
易燃性合成樹脂の難燃化としては、一般には従来よりハロゲン系化合物、リン系化合物、およびこれらの併用やさらには三酸化アンチモンとを添加する等の難燃化手法が用いられてきた。
しかしながら、これら従来よりの難燃剤は有害であると言われており、最近では特に環境面からハロゲン、アンチモン、リンなどを含有しない難燃性樹脂組成物が求められている。
【0003】
環境に好ましい難燃性樹脂組成物としては、従来より金属水酸化物を多量に配合した材料が開発されているが材料の比重が大幅にアップするだけでなく、耐衝撃性や成形流動性の低下が大きく実用性に乏しいのが現状である。
特定のシリコーン化合物を配合することにより難燃化された樹脂組成物が開示されている。(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6参照)
【0004】
さらに、シリコーン化合物を添加しても難燃性が得られ難いために、シリコーン化合物とパーフルオロアルカンスルホン酸金属塩とを併用したポリカーボネート樹脂系の難燃性樹脂組成物が開示されている。しかしながら、パーフルオロアルカンスルホン酸金属塩はフッ素を含んでおり、ハロゲンを用いない難燃樹脂組成物とは言えないだけでなく、ポリカーボネート樹脂以外では難燃効果がほとんど見られない。(特許文献7、特許文献8、特許文献9参照)
【0005】
ポリカーボネート樹脂以外のハロゲン系難燃剤を含まない代表的難燃樹脂として、リン系難燃剤を添加したポリフェニレンエーテルおよびそれとポリスチレンとのポリマーブレンド物が知られている。また、シリコーン化合物を配合したポリフェニレンエーテル系樹脂の難燃樹脂組成物が開示されているが、難燃性、外観、耐熱性、靱性などのバランスにおいて、満足できるものではなかった。(特許文献10、特許文献11参照)
ポリフェニレンエ−テル系樹脂と液晶ポリマーとシリコーンポリマーを配合することにより、難燃性と耐熱性と耐衝撃性が優れる樹脂組成物が開示されているが、外観と難燃性のバランスにおいて十分ではなかった。(特許文献12参照)
【0006】
【特許文献1】
特公昭62−60421号公報
【特許文献2】
特許第1684119号公報
【特許文献3】
特許第1935582号公報
【特許文献4】
特開平10−139964号公報
【特許文献5】
特開平11−140294号公報
【特許文献6】
特開平11−222559号公報
【特許文献7】
特許第2719486号公報
【特許文献8】
特許第2746519号公報
【特許文献9】
特開平11−217494号公報
【特許文献10】
特許第1935582号公報
【特許文献11】
特公平8−32825号公報
【特許文献12】
特開2002−105309号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、環境面で好ましい難燃性に優れ、かつ優れた外観を有し、さらに耐熱性と靱性を同時に高いレベルで満足する樹脂組成物を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者は上記課題を達成する技術を鋭意検討した結果、ポリフェニレンエーテル系樹脂、液晶ポリエステルに、特定の熱重量減少分を有するシリコーン化合物を添加することによって、優れた難燃性と外観を両立することができ、かつ耐熱性と靱性を同時に高いレベルで達成できることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、
1.(a)ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2−メチル−6−エチル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2−メチル−6−フェニル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2,6−ジクロロ−1,4−フェニレンエーテル)、2,6−ジメチルフェノールと2,3,6−トリメチルフェノールの共重合体、2,6−ジメチルフェノールと2−メチル−6−ブチルフェノールの共重合体、から選ばれ、還元粘度(0.5g/dl、クロロホルム溶液、30℃測定)が0.15〜1.0dl/gの範囲にあるポリフェニレンエーテル系樹脂60〜99重量部と、(b)液晶ポリエステル40〜1重量部と、(a)と(b)の合計量100重量部に対して、(c)熱重量分析において、300℃における熱重量減少分が2重量%以上30重量%未満であるシリコーンポリマー0.1〜5重量部からなるポリフェニレンエーテル系樹脂組成物。
2.シリコーンポリマーの熱重量減少分が2重量%以上10%未満であることを特徴とする上記1に記載の樹脂組成物、
3.シリコーンポリマーが、アミノ基、水酸基、エポキシ基、フェニル基の中から選ばれる少なくとも1種以上の基を分子内に含有することを特徴とする上記1または2に記載の樹脂組成物、
4.シリコーンポリマーが、アミノ基を分子内に含有することを特徴とする上記1または2に記載の樹脂組成物、
【0010】
5.シリコーンポリマーのアミノ当量が300以上であることを特徴する上記4に記載の樹脂組成物、
6.シリコーンポリマーが、25℃において、粘度が10mm2/s以上である液体であることを特徴とする上記1〜5のいずれかに記載の樹脂組成物、
7.(d)I価、II価、III価またはIV価の金属元素を含有する化合物を、(a)と(b)の合計量100重量部に対して、0.1〜10重量部含有することを特徴とする上記1〜6のいずれかに記載の樹脂組成物、
8.(d)I価、II価、III価またはIV価の金属元素が亜鉛元素であることを特徴とする上記7に記載の樹脂組成物、
9.(d)I価、II価、III価またはIV価の金属元素を含有する化合物が、ZnOであることを特徴とする上記7に記載の樹脂組成物、
を提供するものである。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本願発明について具体的に説明する。
本発明の(a)ポリフェニレンエーテル系樹脂とは、(式1)の繰り返し単位構造
【0012】
【化3】
【0013】
(R1、R4は、それぞれ独立して、水素、第一級もしくは第二級の低級アルキル、フェニル、アミノアルキル、炭化水素オキシを表わす。R2、R3は、それぞれ独立して、水素、第一級もしくは第二級の低級アルキル、フェニルを表わす。)からなり、還元粘度(0.5g/dl、クロロホルム溶液、30℃測定)が、0.15〜1.0dl/gの範囲にあるホモ重合体及び/または共重合体である。
さらに好ましい還元粘度は、0.20〜0.70dl/gの範囲、最も好ましくは0.40〜0.60の範囲である。
【0014】
このポリフェニレンエーテル系樹脂の具体的な例としては、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2−メチル−6−エチル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2−メチル−6−フェニル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2,6−ジクロロ−1,4−フェニレンエーテル)等が挙げられ、さらに、2,6−ジメチルフェノールと他のフェノール類(例えば、2,3,6−トリメチルフェノールや2−メチル−6−ブチルフェノール)との共重合体のようなポリフェニレンエーテル共重合体も挙げられる。中でもポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)、2,6−ジメチルフェノールと2,3,6−トリメチルフェノールとの共重合体が好ましく、さらにポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)が好ましい。
【0015】
本発明で使用する(a)ポリフェニレンエーテルの製造方法の例として、米国特許第3306874号明細書記載の第一銅塩とアミンのコンプレックスを触媒として用い、2,6−キシレノールを酸化重合する方法がある。
米国特許第3306875号、同第3257357号および同第3257358号の明細書、特公昭52−17880号および特開昭50−51197号および同63−152628号の各公報等に記載された方法も(a)ポリフェニレンエーテルの製造方法として好ましい。
本発明の(a)ポリフェニレンエーテル系樹脂は、重合行程後のパウダーのまま用いてもよいし、押出機などを用いて、窒素ガス雰囲気下あるいは非窒素ガス雰囲気下、脱揮下あるいは非脱揮下にて溶融混練することでペレット化して用いてもよい。
【0016】
本発明の(a)ポリフェニレンエーテル系樹脂は、種々のジエノフィル化合物により官能化されたポリフェニレンエーテルも含まれる。種々のジエノフィル化合物には、例えば無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸、フェニルマレイミド、イタコン酸、アクリル酸、メタクリル酸、メチルアリレート、メチルメタクリレート、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、ステアリルアクリレート、スチレンなどの化合物が挙げられる。さらにこれらジエノフィル化合物により官能化する方法としては、ラジカル発生剤存在下あるいは非存在下で押出機などを用い、脱揮下あるいは非脱揮下にて溶融状態で官能化してもよい。あるいはラジカル発生剤存在下あるいは非存在下で、非溶融状態、すなわち室温以上、かつ融点以下の温度範囲にて官能化してもよい。この際、ポリフェニレンエーテルの融点は、示差熱走査型熱量計(DSC)の測定において、20℃/分で昇温するときに得られる温度−熱流量グラフで観測されるピークのピークトップ温度で定義され、ピークトップ温度が複数ある場合にはその内の最高の温度で定義される。
【0017】
本発明の(a)ポリフェニレンエーテル系樹脂には、ポリフェニレンエーテル樹脂単独又はポリフェニレンエーテル樹脂と芳香族ビニル系重合体との混合物であり、さらに他の樹脂が混合されたものも含まれる。芳香族ビニル系重合体とは、例えば、アタクティックポリスチレン、シンジオタクティックポリスチレン、ハイインパクトポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン共重合体などが挙げられる。ポリフェニレンエーテル樹脂と芳香族ビニル系重合体との混合物を用いる場合は、ポリフェニレンエーテル樹脂と芳香族ビニル系重合体との合計量に対して、ポリフェニレンエーテル樹脂が70wt%以上、好ましくは80wt%以上、さらに好ましくは90wt%以上である。
【0018】
本発明の(b)液晶ポリエステルはサーモトロピック液晶ポリマーと呼ばれるポリエステルで、公知のものを使用できる。例えば、p−ヒドロキシ安息香酸およびポリエチレンテレフタレートを主構成単位とするサーモトロピック液晶ポリエステル、p−ヒドロキシ安息香酸および2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸を主構成単位とするサーモトロピック液晶ポリエステル、p−ヒドロキシ安息香酸および4,4′−ジヒドロキシビフェニルならびにテレフタル酸を主構成単位とするサーモトロピック液晶ポリエステルなどが挙げられ、特に制限はない。本発明で使用される(b)液晶ポリエステルとしては、下記構造単位(イ)、(ロ)、および必要に応じて(ハ)および/または(ニ)からなるものが好ましく用いられる。
【0019】
【化4】
【0020】
【化5】
【0021】
【化6】
【0022】
【化7】
【0023】
ここで、構造単位(イ)、(ロ)はそれぞれ、p−ヒドロキシ安息香酸から生成したポリエステルの構造単位と、2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸から生成した構造単位である。構造単位(イ)、(ロ)を使用することで、優れた耐熱性、流動性や剛性などの機械的特性のバランスに優れた本発明の熱可塑性樹脂組成物を得ることができる。上記構造単位(ハ)、(ニ)中のXは、下記(式2)よりそれぞれ任意に1種あるいは2種以上選択することができる。
【0024】
【化8】
【0025】
構造式(ハ)において好ましいのは、エチレングリコール、ハイドロキノン、4,4′−ジヒドロキシビフェニル、2,6−ジヒドロキシナフタレン、ビスフェノールAそれぞれから生成した構造単位であり、さらに好ましいのは、エチレングリコール、4,4′−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノンであり、特に好ましいのは、エチレングリコール、4,4′−ジヒドロキシビフェニルである。構造式(ニ)において好ましいのは、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ジカルボキシナフタレンそれぞれから生成した構造単位であり、さらに好ましいのは、テレフタル酸、イソフタル酸である。
【0026】
構造式(ハ)および構造式(ニ)は、上記に挙げた構造単位を少なくとも1種あるいは2種以上を併用することができる。具体的には、2種以上併用する場合、構造式(ハ)においては、1)エチレングリコールから生成した構造単位/ハイドロキノンから生成した構造単位、2)エチレングリコールから生成した構造単位/4,4′−ジヒドロキシビフェニルから生成した構造単位、3)ハイドロキノンから生成した構造単位/4,4′−ジヒドロキシビフェニルから生成した構造単位、などを挙げることができる。
【0027】
また、構造式(ニ)においては、1)テレフタル酸から生成した構造単位/イソフタル酸から生成した構造単位、2)テレフタル酸から生成した構造単位/2,6−ジカルボキシナフタレンから生成した構造単位、などを挙げることができる。ここでテレフタル酸量は2成分中、好ましくは40wt%以上、さらに好ましくは60wt%以上、特に好ましくは80wt%以上である。テレフタル酸量を2成分中40wt%以上とすることで、比較的に流動性、耐熱性が良好な樹脂組成物となる。液晶ポリエステル(b)成分中の構造単位(イ)、(ロ)、(ハ)、(ニ)の使用分割は特に限定されない。ただし、構造単位(ハ)と(ニ)は基本的にほぼ等モル量となる。
【0028】
また、構造単位(ハ)、(ニ)からなる構造単位(ホ)を、(b)成分中の構造単位として使用することもできる。具体的には、1)エチレングリコールとテレフタル酸から生成した構造単位、2)ハイドロキノンとテレフタル酸から生成した構造単位、3)4,4′−ジヒドロキシビフェニルとテレフタル酸から生成した構造単位、4)4,4′−ジヒドロキシビフェニルとイソフタル酸から生成した構造単位、5)ビスフェノールAとテレフタル酸から生成した構造単位、などを挙げることができる。
【0029】
【化9】
【0030】
本発明の(b)液晶ポリエステル成分には、必要に応じて本発明の特徴と効果を損なわない程度の少量の範囲で、他の芳香族ジカルボン酸、芳香族ジオール、芳香族ヒドロキシカルボン酸から生成する構造単位を導入することができる。本発明の(b)成分の溶融時での液晶状態を示し始める温度(以下、液晶開始温度という)は、好ましくは150〜350℃、さらに好ましくは180〜320℃である。
【0031】
本発明で用いられる(c)シリコーンポリマーは、4種のシロキサン単位(M単位:R3SiO0.5、D単位:R2SiO1 . 0、T単位:RSiO1.5、Q単位:SiO2 . 0)のいずれかが重合してなるオルガノポリシロキサンである。
さらに、窒素雰囲気下、開始温度30℃、終了温度600℃、昇温速度20℃/分、という条件下における熱重量分析を実施し、300℃における熱重量減少分が2重量%以上30重量%未満であるシリコーンポリマーである。この熱重量減少分(w0%)は、開始温度におけるシリコーンポリマーのサンプルの重量%を100%とした時、300℃におけるサンプルの重量%をw1%とし、
w0(%)=100−w1
にて得られる値である。この熱重量減少分は、難燃性と外観のバランスの観点から、2重量%以上が好ましく、より好ましくは2.5重量%以上である。一方、添加シリコーンのロス分の観点から、30重量%未満が好ましく、さらに10%未満が好ましい。すなわち、本発明において、難燃性と外観のバランスの観点から、この熱重量減少分が、2重量%以上30重量%未満であることが重要である。特に、2重量%以上10重量%未満であることが好ましい。
【0032】
さらに難燃性と外観のバランスの観点から、本発明のシリコーンポリマーは、アミノ基、水酸基、エポキシ基、フェニル基の中から選ばれる少なくとも1種以上の基を分子内に含有するものが好ましい。さらに、シリコーンポリマーはアミノ基および/または水酸基を含むことが好ましい。さらに特にはアミノ基が好ましい。このアミノ基は、1級アミン、2級アミン、3級アミン、4級アミンが好ましいが、難燃性の観点から、1級アミン、2級アミンがさらに好ましい。さらに分子内に1級アミン、2級アミンの両方含有していてもよい。また、アミノ基を分子内に含有する場合、難燃性と外観の観点から、アミノ当量は300以上が好ましく、500以上がより好ましく、1000以上がさらにより好ましい。さらに本発明のシリコーンポリマーは、25℃において、粘度が10mm2/s以上である液体であることが好ましい。この粘度は、ブリードアウトの観点から、10mm2/s以上が好ましく、100mm2/s以上がさらに好ましく、150mm2/s以上がさらにより好ましい。本発明の(c)シリコーンポリマーは、D単位が50モル%以上、さらには70モル%以上、さらには、90モル%以上である場合が多い。
【0033】
アミノ基、水酸基、エポキシ基、フェニル基の中から選ばれる少なくとも1種以上の基は、シリコーンポリマーの主鎖に結合していてもよいし、末端に結合していてもよい。
本発明で用いられる(d)I価、II価、III価またはIV価の金属元素を含有する化合物は、金属を含有する無機化合物または有機化合物である。本発明の(d)成分は、本質的に金属元素を主たる構成成分とする化合物である。(d)成分におけるI価、II価、III価またはIV価をとりうる金属元素の具体例として、Li、Na、K、Zn、Cd、Sn、Cu、Ni、Pd、Co、Fe、Ru、Mn、Pb、Mg、Ca、Sr、Ba、Al、Ti、Ge、Sbが挙げられる。中でもZn、Mg、Ti、Pb、Cd、Sn、Sb、Ni、Al、Ge元素が好ましく、さらにはZn、Mg、Ti元素が好ましい。ダート衝撃性を大きく向上させる観点から、I価、II価、III価またはIV価の金属元素がZn元素および/またはMg元素であることが特に好ましい。特にZn元素が好ましい。
【0034】
(d)I価、II価、III価またはIV価の金属元素を含有する化合物の具体例として、上記金属元素の酸化物、水酸化物、アルコキサイド塩、脂肪族カルボン酸塩、酢酸塩が望ましい。さらに、好ましい酸化物の例としては、ZnO、MgO、TiO4、TiO2、PbO、CdO、SnO、SbO、Sb2O3、NiO、Al2O3、GeOなどが挙げられる。また、好ましい水酸化物の例としては、Zn(OH)2、Mg(OH)2、Ti(OH)4、Ti(OH)2、Pb(OH)2、Cd(OH)2、Sn(OH)2、Sb(OH)2、Sb(OH)3、Ni(OH)2、Al(OH)3、Ge(OH)2などが挙げられる。
また好ましいアルコキサイド塩の例としては、Ti(OiPr)4、Ti(OnBu)4などが挙げられる。また好ましい脂肪族カルボン酸塩の例としては、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸チタニウム、ステアリン酸鉛、ステアリン酸カドニウム、ステアリン酸すず、ステアリン酸アンチモン、ステアリン酸ニッケル、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸ゲルマニウムなどが挙げられる。中でも特に好ましい具体例は、ZnO、Mg(OH)2、Ti(OiPr)4、Ti(OnBu)4、酢酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム、が挙げられ、さらにより好ましいのは、ZnOである。
【0035】
本発明における(a)ポリフェニレンエーテル系樹脂の配合量は、60〜99重量部で、好ましくは70〜98重量部で、さらに好ましくは80〜95重量部である。この配合量が99重量部より多いと、流動性が大きく低下してしまう。
この配合量が60重量部より少ないと、比重が大きくなってしまうし、またウェルド強度の低下を招く。
本発明における(b)成分の液晶ポリエステルの配合量は、1〜40重量部で、好ましくは2〜30重量部で、さらに好ましくは5〜20重量部である。この配合量が40重量部より多いと、比重が大きくなってしまい、ウェルド強度の低下を招く。この配合量が1重量部より少ないと、十分な流動性とウェルド強度が得られない。
【0036】
本発明で用いられる(c)シリコーンポリマーの配合量は、(a)成分と(b)成分の合計量100重量部に対して、0.1〜5重量部で、好ましくは0.2〜4重量部で、さらに好ましくは0.5〜2重量部である。この配合量が5重量部より多いと、外観低下を招いたり、シリコーンポリマーがブリードアウトしたり、成形機の計量不良の原因になる。この配合量が0.1重量部より少ないと、十分な難燃性が得られない。
【0037】
本発明で用いられる(d)I価、II価、III価またはIV価の金属元素を含有する化合物は、靱性の中でも、特にダート衝撃性を向上させる場合、非常に有効である。この配合量は、(a)成分と(b)成分の合計量100重量部に対して、0.1〜10重量部で、好ましくは0.2〜5重量部、さらに好ましくは0.4〜3重量部、さらにより好ましくは0.4〜1重量部である。この配合量が、10重量部より多いと、比重が大きくなってしまったり、外観低下を招いたりする。この配合量が0.1重量部より少ないと、本発明の樹脂組成物の靱性において特にダート衝撃性が得られにくい。
【0038】
本発明では、上記の成分の他に、本発明の特徴および効果を損なわない範囲で必要に応じて他の附加的成分、例えば、酸化防止剤、難燃剤(有機リン酸エステル系化合物)、エラストマー(エチレン/プロピレン共重合体、エチレン/1−ブテン共重合体、エチレン/プロピレン/非共役ジエン共重合体、エチレン/アクリル酸エチル共重合体、エチレン/メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン/酢酸ビニル/メタクリル酸グリシジル共重合体およびエチレン/プロピレン−g−無水マレイン酸共重合体、ABSなどのオレフィン系共重合体、ポリエステルポリエーテルエラストマー、ポリエステルポリエステルエラストマー、ビニル芳香族化合物−共役ジエン化合物ブロック共重合体、ビニル芳香族化合物−共役ジエン化合物ブロック共重合体の水素添加物)、可塑剤(オイル、低分子量ポリエチレン、エポキシ化大豆油、ポリエチレングリコール、脂肪酸エステル類等)、難燃助剤、耐候(光)性改良剤、ポリオレフィン用造核剤、スリップ剤、各種着色剤、離型剤等を添加してもかまわない。
【0039】
本発明の樹脂組成物は種々の方法で製造することができる。例えば、単軸押出機、二軸押出機、ロール、ニーダー、ブラベンダープラストグラフ、バンバリーミキサー等による加熱溶融混練方法が挙げられるが、中でも二軸押出機を用いた溶融混練方法が最も好ましい。この際の溶融混練温度は特に限定されるものではないが、通常150〜350℃の中から任意に選ぶことができる。
このようにして得られる本発明の樹脂組成物は、従来より公知の種々の方法、例えば、射出成形、押出成形、中空成形により各種部品の成形体として成形できる。これら成形体は、特に難燃性が要求される用途、例えば、自動車用耐熱部品あるいは事務機器用耐熱部品に好適である。自動車用耐熱部品は例えば、オルタネーターターミナル、オルタネーターコネクター、ICレギュレーター、ライトディヤー用ポテンショメーターベース、エンジン冷却水ジョイント、キャブレターメインボディー、キャブレタースペーサー、冷却水センサー、油温センサー、ブレーキパットウェアーセンサー、スロットルポジションセンサー、クランクシャフトポジションセンサー、エアーフローメーター、ブレーキバット磨耗センサー、暖房温風フローコントロールバルブ、ラジエーターモーター用ブラッシュホルダー、ウォーターポンプインペラー、タービンべイン、ワイパーモーター関係部品、デュストリビュター、スタータースィッチ、スターターリレー、トランスミッション用ワイヤーハーネス、ウィンドウウォッシャーノズル、エアコンパネルスィッチ基板、ヒューズ用コネクター、ホーンターミナル、電装部品絶縁板、ステップモーターローター、ブレーキピストン、ソレノイドボビン、点火装置ケースなどの部品、ホイールキャップ、ランプソケット、ランプハウジング、ランプエクステンション、ランプリフレクターなどが好適である。中でも軽量性、耐熱性、難燃性、機械特性のバランスからランプエクステンション、ランプリフレクターが好適である。また、事務機器用耐熱部品は、例えば、エアコン部品、タイプライター部品、ワードプロセッサー部品などに代表される家庭、事務電気製品部品、オフィスコンピューター関連部品、電話機関連部品、ファクシミリ関連部品、複写機関連部品などに好適である。
本発明を以下、実施例に基づいて説明する。但し本発明はその主旨を越えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
【0040】
【製造例1】
ポリフェニレンエーテル(PPE−1)の製造例
2,6−ジメチルフェノールを酸化重合して得た還元粘度0.42のパウダー状のポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)である。
【0041】
【製造例2】
液晶ポリエステル(LCP−1)の製造例
窒素雰囲気下において、p−ヒドロキシ安息香酸、2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸、無水酢酸を仕込み、加熱溶融し、重縮合することにより、以下の理論構造式を有する液晶ポリエステル(LCP−1)を得た。なお、組成の成分比はモル比を表す。
【0042】
【化10】
【0043】
【製造例3】
液晶ポリエステル(LCP−2)の製造例
窒素雰囲気下において、p−ヒドロキシ安息香酸、ポリエチレンテレフタレート、無水酢酸を仕込み、加熱溶融し、重縮合することにより、以下の理論構造式を有する液晶ポリエステル(LCP−2)を得た。なお組成の成分比はモル比を表す。
【0044】
【化11】
【0045】
各樹脂組成物の成形と物性評価を、以下の方法に従って実施した。
(1)成形
得られたペレットを、シリンダー温度330/330/320/310℃、射速85%、金型温度90℃に設定した射出成形機[IS−80EPN:東芝機械(株)社製]を用いて成形を行った。
(2)熱重量減少分(w0%)
島津マクロ熱重量測定装置(TGA―51、島津製作所(株)製)を用い、シリコーンポリマーをサンプルとして、窒素雰囲気下、開始温度30℃、終了温度600℃、昇温速度20℃/分、という条件下において熱重量分析を実施する。
【0046】
熱重量減少分(w0%)は、以下の式において算出した。
w0(%)=100−w1 …(式3)
w1(%):300℃におけるサンプルの重量%
(開始温度におけるシリコーンポリマーのサンプルの重量%を100%)
【0047】
(3)難燃性
(3−1)平均燃焼時間
厚み1.6mm×長さ127mm×幅12.7mmのASTMタンザク試験片に成形し、Underwriters LaboratoriesのUL−94垂直燃焼試験に基ずき、燃焼試験を実施した。すなわち、5本の試験片について燃焼試験を実施し、10秒間の接炎後、炎を離してから炎が消えるまでの燃焼時間をt1(秒)とし、再び10秒間の接炎後、炎を離してから炎が消えるまでの燃焼時間をt2(秒)とし、各5本について、t1とt2の平均燃焼時間を求めた。
【0048】
(3−2)最大燃焼時間
上記燃焼試験時、各5本のt1とt2、すなわちあわせて10点の中から最大の燃焼時間を選んだ。
(3−3)UL
Underwriters LaboratoriesのUL−94規格に準拠して、V−0、V−1、V−2の判定を実施した。
【0049】
(3−4)滴下の有無
上記燃焼試験時、各5本のt1とt2、すなわちあわせて10点のうち、1点でも滴下があるか否かを判断した。
○:10点とも滴下のなかったもの。
×:1点でも滴下のあったもの。
(3−5)5V
(3−1)と同様の試験片を用い、Underwriters LaboratoriesのUL−94規格に準拠して、5V試験を実施し、以下の判定をした。
○:合格
×:不合格
【0050】
(4)外観
長さ90mm、幅50mm、厚さ2.5mmの平板状成形片を成形(サイドゲート)し、特にゲート付近の成形品表面を目視で観察し、以下の基準に基づき、外観を判定した。
○:ゲート付近に全く花びら状の模様が見られない。
△:ゲート付近に花びら状の模様が少量、認められる。
×:ゲート付近に花びら状の模様が多量、認められる。
【0051】
(5)耐熱性
厚み3.2mm×長さ127mm×幅12.7mmのASTMタンザク試験片に成形した。得られた成形片を用いて、ASTM−D648に準拠して、1.82MPa荷重下での荷重たわみ温度を測定した。
(6)引張り特性
オートグラフ(AG−5000、島津製作所(株)社製)、厚み3.2mmのASTMダンベル試験片を用い、チャック間距離115mm、試験速度20mm/minで引っ張り試験を実施し、破断伸び(%)を測定した。この値が大きいほど、靱性が高いことを意味する。
【0052】
(7)耐衝撃性
(ダート衝撃および延性破壊)
長さ90mm、幅50mm、厚さ2.5mmの平板状成形片を成形し、ダートインパクトテスター(東洋精機(株)社製)を用い、落下荷重6.5kg、落下高さ100cmにて測定を行い、破壊の際の亀裂エネルギーと伝搬エネルギーの和である全吸収エネルギーの値をダート衝撃(J)とした。大きい方が、耐衝撃性に優れることを意味する。また、破壊試験後の平板試験片を厚み方向から見たときに、おもりの落下した部分が延びたように変形しているものを延性破壊、完全にくりぬかれ、変形がなく、フラットなものを脆性破壊と定義する。以下の判断基準に基づいて延性破壊性の判定を行った。試験回数n=5とした。
m/5:5回試験したうち、m回、延性破壊を示す。(m=0〜5)mの値が大きいほど、延性破壊する再現性が高いことを意味する。
【0053】
【実施例1〜10、比較例2〜3】
ポリフェニレンエーテル(PPE−1)と液晶ポリエステル(LCP−1〜LCP−2)とシリコーンポリマー(Si−1〜Si−8)を表1に示す割合(重量部)で、フィード側のZONE1を270℃、ZONE2〜7およびダイスヘッドを310℃に設定したベントポート付き二軸押出機(ZSK−25;WERNER&PFLEIDERER社製)を用いて、溶融混練し、ペレットとして得た。このペレットを用い、上に示した方法により、成形加工し、物性評価を実施した。各シリコーンポリマーの熱重量減少分(w0%)を上に示した方法により求め、物性評価結果と併せて、表1に示した。
【0054】
なお、表中の(c)成分は、以下のものを用い、以下のように略すことがある。
Si−1:アミノ変性シリコーン、SF8417、東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製、粘度(25℃):1,200mm2/sの液体、アミノ当量:1,800
Si−2:アミノ変性シリコーン、WT1250、旭化成・ワッカーシリコーン(株)製、粘度(25℃):200mm2/sの液体、アミノ当量:4,000
【0055】
Si−3:アミノ変性シリコーン、WT1650、旭化成・ワッカーシリコーン(株)製、粘度(25℃):1,000mm2/sの液体、アミノ当量:1,700
Si−4:メチルフェニル変性シリコーン、SH710、東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製、粘度(25℃):500mm2/sの液体
Si−5:アミノ変性シリコーン、X−22−1660B−3、信越化学工業(株)製、粘度(25℃):550mm2/sの液体、アミノ当量:2,200
Si−6:エポキシ変性シリコーン、SF8411、東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製、粘度(25℃):8,000mm2/sの液体、エポキシ当量:3,000
【0056】
Si−7:ストレートシリコーンオイル(ジメチルシリコーン)、SH200、東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製、粘度(25℃):1,000mm2/sの液体
Si−8:シリコーンパウダー、架橋タイプ、R−900、東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製、白色粉末
【0057】
【比較例1】
シリコーンポリマーを用いなかったこと以外は実施例1と同様に成形加工し、物性評価を実施し、その結果を表1に示した。
【0058】
【表1】
【0059】
表1が示す結果より、シリコーンポリマーの熱重量減少分が、2重量%以上30重量%未満であることが、得られる樹脂組成物の難燃性と外観を両立させる観点から、重要であることがわかる。さらにハロゲンやリン元素を含まないので、環境面で好ましい材料である。
【0060】
【実施例11〜16、比較例5】
ポリフェニレンエーテル(PPE−1)と液晶ポリエステル(LCP−1)とシリコーンポリマー(Si−1〜Si−7)と、(d)成分として酸化亜鉛(特級グレード、和光純薬(株)製、表中「ZnO」と略すことがある。)を表2に示す割合(重量部)で、配合したこと以外は、実施例1と同様に成形加工し、物性評価を実施し、その結果を表2に示した。
【0061】
【比較例4】
シリコーンポリマーを用いなかったこと以外は実施例11と同様に成形加工し、物性評価を実施し、その結果を表2に示した。
【0062】
【比較例6〜7】
(c)成分としてシリコーンポリマー(Si−9、Si−10)を用いたこと以外は、実施例11と同様に成形加工し、物性評価を実施し、その結果を表2に示した。
ただし、(c)成分は以下のものを用い、以下のように略すことがある。
Si−9:ストレートシリコーンオイル(ジメチルシリコーン)、SH200、東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製、粘度(25℃):12,500mm2/sの液体
Si−10:ストレートシリコーンオイル(ジメチルシリコーン)、SH200、東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製、粘度(25℃):350mm2/sの液体
【0063】
【表2】
【0064】
表2が示す結果より、(d)I価、II価、III価またはIV価の金属元素を含有する化合物と、(c)熱重量分析において、300℃における熱重量減少分が2重量%以上30重量%未満であるシリコーンポリマーが、難燃性と外観と靱性、特にダート衝撃特性の優れたバランスにおいて、非常に重要であることがわかる。
【0065】
【発明の効果】
本発明により、環境面で好ましい難燃性に優れ、かつ優れた外観を有し、さらに耐熱性と靱性を同時に高いレベルで満足する樹脂組成物を提供することが可能となった。
Claims (9)
- (a)ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2−メチル−6−エチル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2−メチル−6−フェニル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2,6−ジクロロ−1,4−フェニレンエーテル)、2,6−ジメチルフェノールと2,3,6−トリメチルフェノールの共重合体、2,6−ジメチルフェノールと2−メチル−6−ブチルフェノールの共重合体、から選ばれ、還元粘度(0.5g/dl、クロロホルム溶液、30℃測定)が0.15〜1.0dl/gの範囲にあるポリフェニレンエーテル系樹脂60〜99重量部と、(b)液晶ポリエステル40〜1重量部と、(a)と(b)の合計量100重量部に対して、(c)熱重量分析において、300℃における熱重量減少分が2重量%以上30重量%未満であるシリコーンポリマー0.1〜5重量部からなるポリフェニレンエーテル系樹脂組成物。
- シリコーンポリマーの熱重量減少分が2重量%以上10%未満であることを特徴とする請求項1に記載の樹脂組成物。
- シリコーンポリマーが、アミノ基、水酸基、エポキシ基、フェニル基の中から選ばれる少なくとも1種以上の基を分子内に含有することを特徴とする請求項1または2に記載の樹脂組成物。
- シリコーンポリマーが、アミノ基を分子内に含有することを特徴とする請求項1または2に記載の樹脂組成物。
- シリコーンポリマーのアミノ当量が300以上であることを特徴する請求項4に記載の樹脂組成物。
- シリコーンポリマーが、25℃において、粘度が10mm2/s以上である液体であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の樹脂組成物。
- (d)I価、II価、III価またはIV価の金属元素を含有する化合物を、(a)と(b)の合計量100重量部に対して、0.1〜10重量部含有することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の樹脂組成物。
- (d)I価、II価、III価またはIV価の金属元素が亜鉛元素であることを特徴とする請求項7に記載の樹脂組成物。
- (d)I価、II価、III価またはIV価の金属元素を含有する化合物が、ZnOであることを特徴とする請求項7に記載の樹脂組成物。
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