JP4318377B2 - 水蓄熱空調システム - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は水蓄熱空調システムに関するものであり、特に、熱ポンプの吸込側の水の温度を調整することにより該熱ポンプの吸込側と出口側との温度差を最適な温度に確保して、該熱ポンプの高効率運転を行う水蓄熱空調システムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来の水蓄熱空調システムを図4により説明する。蓄熱材料としての水Wを収容した蓄熱槽1に安い夜間電力を用い、蓄熱してそれを昼間に冷房又は暖房に利用している空調システムであるが、図に於ては冷房の場合について説明する。
【0003】
夜間に冷凍機としての熱ポンプ10を運転し、該蓄熱槽1の終端部1b近傍内のストレーナ2aより往管4a、三方弁8を通り、ポンプ9aで該水Wを汲上げて冷水Wを作り、戻り管4bで再び該蓄熱槽1の始端部1a近傍に戻す回路を夜間循環稼動させることにより該蓄熱槽1内の該水Wを5℃まで冷却して蓄える。
【0004】
該三方弁8は該熱ポンプ10の効率を向上させるために該熱ポンプ10より戻る管4b近傍の冷水Wをストレーナ2bより管5を通じて往管4aに供給してバランス良く混合するために設けられる。尚、該熱ポンプ10の運転効率が最も良いとされる吸込10aと出口10bとの温度差は略7℃とされている。その為、該熱ポンプ10の吸込10aの温度は12℃を目標とし、出口10bの温度は5℃に固定して該熱ポンプ10を運転する。
【0005】
次に、電気料金の高い昼間に於ては、前記したように夜間に冷やしておいた該蓄熱槽1内の冷水Wを空調機11に送り冷房を行う。該蓄熱槽1の該始端部1a近傍より該冷水Wをストレーナ2cよりポンプ9bで汲上げて往管3aを通り、該空調機11の冷水コイル(図示せず)に流入させて冷風を送気ファン(図示せず)で吹出し口(図示せず)より室内に吹出すようにする。該空調機11からの該冷水Wの戻りは、温度制御バルブ7b及び戻り管3bを通り該蓄熱槽1の該終端部1b近傍に戻り循環を繰り返す。
【0006】
尚、該往管3aの該ポンプ9bの上部近傍には、該ポンプ9bの圧力制御によって絞り切れない該冷水Wを該蓄熱槽1に戻す管6aを設け、バルブ7a及び管6bを通り該蓄熱槽1に戻す。このように、途中で該冷水Wを該蓄熱槽1に戻す回路を設けることにより、該空調機11の負荷状態を視て該蓄熱槽1の温度差を確保するように制御する。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
前記従来の夜間の蓄熱に於ては、冷凍機としての熱ポンプの運転初期の段階では蓄熱槽の終端部の水温が略20℃と高いので該熱ポンプの吸込温度を略12℃に保つことができ、且つ、出口温度を5℃に固定して、温度差を最適な略7℃に確保することができ、該熱ポンプの運転効率も最高に発揮することができる。
【0008】
しかし、該熱ポンプを介して水を循環させていくと、徐々に該蓄熱槽の終端部の水温は下がり略10℃の低温度になってしまうと共に、該熱ポンプの吸込温度を12℃に保つことができなくなり、且つ、吸込と出口の温度差を7℃に確保することも困難となり、該熱ポンプの運転効率も落ちる。又、水温低下の状態によっては、凍結防止のための安全回路が作動し、該熱ポンプが自動停止し、該蓄熱槽内の水を全て5℃まで冷却することができない。
【0009】
そこで、蓄熱槽の水の温度を熱ポンプの吸込側に於て最適な温度に調整すると共に、該熱ポンプの吸込側と出口側の温度差を常時一定に確保して、該熱ポンプの高効率運転を可能にすると同時に、該蓄熱槽内の水を全て目標とする5℃に冷却することを可能にするために解決すべき技術的課題が生じてくるのであり、本発明はこの課題を解決することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記目的を達成するために提案されたものであり、蓄熱槽より水をポンプで汲み上げ、熱ポンプを介して該蓄熱槽に戻す冷媒回路を備える水蓄熱空調システムに於て、該蓄熱槽と該熱ポンプとの該冷媒回路内に三方弁を設け、該水を建物の躯体に送る回路と該熱ポンプに送る回路に分岐させると共に、該躯体内に該水を通過させることにより蓄熱させた後、該熱ポンプに送る回路に戻して該熱ポンプの吸込と出口との温度差を常時最適な温度に確保する水蓄熱空調システム、及び蓄熱槽より水をポンプで汲み上げ、熱ポンプを介して該蓄熱槽に戻す冷媒回路を備える水蓄熱空調システムに於て、該蓄熱槽と該熱ポンプとの該冷媒回路内に三方弁を設け、該水を空調機に送る回路と該熱ポンプに送る回路に分岐させると共に、該空調機からの通風を建物の躯体に吹き付けることにより該躯体内に蓄熱させた後、該水を該空調機から該熱ポンプに送る回路に戻すことにより、該熱ポンプの吸込と出口との温度差を常時最適な温度に確保する水蓄熱空調システムを提供するものである。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図1乃至図3に従って詳述する。尚、従来例と同一構成部分については同一の符号を用いて説明するものとする。
【0012】
図1は水蓄熱空調システムの構成を示し、安価な夜間電力を使って熱エネルギーを蓄え、昼間の空調に使うシステムである。図に於ては冷房の場合について説明する。夜間の蓄熱に於て初期の段階では蓄熱槽1の終端部1bの近傍の水温が高いので、ストレーナ2aより冷媒回路となる往管4a、三方弁8を通り、ポンプ9aで水Wを汲上げて、後述する三方弁12を通り冷媒回路14を経て冷凍機としての熱ポンプ10の吸込10a側より該水Wを該熱ポンプ10に入れ、冷水を作る。
【0013】
又、該蓄熱槽1の該終端部1b近傍の水温と始端部1a近傍の水温とは、該熱ポンプ10の運転によって冷水温度が異なる。従って、該熱ポンプ10の運転効率を向上させるために該三方弁8に該熱ポンプ10より戻る管4b近傍の冷水Wをストレーナ2bより管5を通じて供給して、該冷水Wをバランス良く混合する。この為、該熱ポンプ10の運転効率が最も良いとされる吸込10aの温度を12℃とし、出口10bの温度を5℃に固定して該熱ポンプ10を運転する。
【0014】
該熱ポンプ10を運転し続け、冷媒回路4a,14,4bに該冷水Wを循環させていくと該冷水Wの温度が徐々に下がり、該熱ポンプ10の吸込10aの温度を12℃に維持されなくなったとき、三方弁12の温度センサ(図示せず)によって該冷水Wの送水方向を切替え該冷媒回路14への送水を停止すると共に、建物の躯体20に送る回路(往管)13aに送水する。該躯体20に送る回路(往管)13aは、該躯体20の床スラブ21内のコンクリートCに所定長さ埋設される管を通り戻り管13bを経て該熱ポンプ10の吸込10a側に送る回路14に接続して、該冷水Wを送水する。
【0015】
このように、該冷水Wを該床スラブ21内を通過させることにより、該床スラブ21を冷やす(蓄熱)ことで該冷水Wの温度が上昇する。尚、該三方弁12に於ては、一方の回路14を停止し一方の回路13aに送水したが、冷水温度によっては両方向へ送水するようにしてもよく、又、該躯体20の循環回路は該床スラブ21に限らず壁等に循環させてもよい。更に、該躯体20内への循環方法は螺旋状や端部をループ状に配管する等、該躯体20の形状等により適宜決定される。
【0016】
該躯体20に蓄熱することにより、初期の状態と同じく該熱ポンプ10の該吸込10aの温度を12℃近傍に調整することができ、出口10bの温度を5℃に固定して該吸込10aの温度と該出口10bとの温度差を常時7℃に確保することができる。又、温度差7℃を確保することにより、該熱ポンプ10の高効率運転を可能にすると同時に、該蓄熱槽内の該水Wを全て目標とする5℃に冷却することを可能にする。
【0017】
次に、電気料金の高い昼間に夜間に冷やしておいた該冷水Wを空調機11に送り冷房を行なう。該蓄熱槽1より該空調機11を通り該蓄熱槽1に戻る循環回路3a,3bは従来例と同じため、その説明は省略する。尚、室内の冷房状態によっては該空調機11の運転と該熱ポンプ10の追掛運転とを同時に行うこともできる。以上、冷房の場合について説明したが、暖房のときにも温水を躯体蓄熱させることができる。
【0018】
次に、図2及び図3に従って第2の実施の形態を説明する。図2は夜間に於ての空調機11による該躯体20への蓄熱状態を示す空調システムの構成図であり、該空調機11は建物の該躯体20内の機械室26に設置される。該空調機11内に組み込まれた冷水コイル(図示せず)への該冷水Wの供給は、前記の実施の形態と同じく該蓄熱槽1から該ポンプ9aで汲み上げて、該三方弁12を介して該回路(往管)13aへ送り、更に、サプライヘッダ16aを経由して往管17aに接続して行う。又、該空調機11からの該冷水Wの戻りは、該空調機11の近傍に配設され、該冷水Wの循環を自動的に制御するバルブ15cを通り、戻り管17bよりリターンヘッダ16bに入り、戻り管3bにより該蓄熱槽1の該終端部1b近傍に戻り循環を繰り返す。
【0019】
更に、該リターンヘッダ16b近傍に配設された温度制御バルブ15bの制御によって、該冷水Wを該戻り管13bを経て該熱ポンプ10の該吸込10a側に送る該回路14に送られ、該三方弁12からの該冷水Wと合流して該熱ポンプ10で再び5℃の冷水を作り、該戻り管4bにより該蓄熱槽1の該始端部1aの近傍に戻り循環を繰り返す。尚、図中の破線で示す回路は後述する冷房時の回路を示すものである。
【0020】
次に、該空調機11による該躯体20への蓄熱方法を説明する。該空調機11の上部より給気用ダクト18を建物の該躯体20の上階の床スラブ21と下階の天井23との天井裏空間22に設置すると共に、該給気用ダクト18の上部には所定間隔で冷風を該床スラブ21に吹き付けるための空気吹出し口を有するダンパ19aを設け、且つ、該給気用ダクト18の下部にも所定間隔で冷風を部屋25に吹き出すための空気吹出し口24aを有するダンパ19cを設ける。又、該部屋25の該天井23の所定箇所には、該部屋25の空気を吸い込むための吸込口24bを有するダンパ19bを設ける。該躯体20への蓄熱時には、該ダンパ19b及び19cを閉鎖すると共に、該ダンパ19aを開放して該空調機11の送気ファン(図示せず)から送られる冷風を該床スラブ21の下部に吹き付けて、該床スラブ21を冷却して該躯体20内に蓄熱される。
【0021】
次に、図3により昼間に於ての冷房時の空調システムを説明する。電気料金の高い昼間に於ては、夜間に冷やしておいた該冷水Wを該空調機11に送り冷房を行う。該空調機11内への該冷水Wの供給は、該蓄熱槽1の該始端部1a近傍より該ポンプ9bで汲み上げ該往管3aを通り、該サプライヘッダ16a近傍に配設された温度制御バルブ15aの制御によって該サプライヘッダ16aを経由して該往管17aに接続して行う。又、該空調機11からの該冷水Wの戻りは該空調機11の近傍に配設され、該冷水Wの循環を自動的に制御する該バルブ15cを通り、該戻り管17bより該リターンヘッダ16bに入り、該戻り管3bにより該蓄熱槽1の該終端部1b近傍に戻り循環を繰り返す。尚、図中の破線で示す回路は、前記の夜間蓄熱時の回路を示すものである。
【0022】
次に、該空調機11による冷房方法を説明する。前記ダンパ19b及び19cを開放し、該空気吹出し口24aから冷風を該部屋25内に吹き出し、該部屋25を冷房すると共に、該吸込口24bから環空気A1 を吸い込み該天井裏空間22を通り、該躯体20に設けられた貫通孔27を通り該空調機11に戻る。この時、該ダンパ19aは閉鎖し、冷風は該空気吹出し口24a方向のみに送る。
【0023】
従って、該環空気A1 は該天井裏空間22を通過するとき、夜間に冷却された該床スラブ21と接触(図中A2 で示す)することでプレクーリングされて、該空調機11への負荷を軽減させることができる。又、該空調機11の上部には、環空気A3 の吸込口28を設ける。
【0024】
尚、本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り種々の改変を為すことができ、そして、本発明が該改変されたものに及ぶことは当然である。
【0025】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1記載の発明は蓄熱槽と熱ポンプとの冷媒回路内に三方弁を設けて、該蓄熱槽の水を建物の躯体に送る回路と該熱ポンプに送る回路に分岐させているので、該三方弁で切替え及び該躯体への送水温度制御が行える。又、該躯体内に該水を通過させて該躯体に蓄熱させて該熱ポンプに送る回路に戻しているので、該熱ポンプの吸込側の温度を最適な温度に調整することができ、且つ、該熱ポンプの吸込と出口との温度差を常時最適な温度に確保して該熱ポンプの高効率運転が行える。更に、該熱ポンプの出口温度を固定でき、蓄熱槽内の水を全て最適な温度にすることができるので、蓄熱槽効率が大幅に向上する。又、躯体に蓄熱が行われているので、その分空調負荷の低減が図れると共に蓄熱槽を小型化することができる。
【0026】
請求項2記載の発明は、蓄熱槽と熱ポンプとの冷媒回路内に三方弁を設けて、水を空調機に送る回路と該熱ポンプに送る回路に分岐させて、該空調機からの通風を建物の躯体に吹き付けることにより該躯体内に蓄熱させた後、該水を該空調機から該熱ポンプに送る回路に戻しているので、前記請求項1記載の発明と同様に該熱ポンプの吸込側の温度を最適な温度に調整することができ、且つ、該熱ポンプの吸込と出口との温度差を常時最適な温度に確保して、該熱ポンプの高効率運転が行える。又、該空調機は室内への通風用にも兼用することができるので、設備費を減少させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態を示し、躯体蓄熱状態を示す水蓄熱空調システムの構成図。
【図2】他の実施の形態を示し、空調機を用いて夜間に於ての躯体蓄熱状態を示す水蓄熱空調システムの構成図。
【図3】昼間に於ての冷房時を示す水蓄熱空調システムの構成図。
【図4】従来の水蓄熱空調システムの構成図。
【符号の説明】
1 蓄熱槽
4a,4b 冷媒回路
9a ポンプ
10 熱ポンプ
10a 吸込
10b 出口
11 空調機
12 三方弁
13a,13b 冷媒回路
14 冷媒回路
20 躯体
W 水(冷水)

Claims (2)

  1. 蓄熱槽より水をポンプで汲み上げ、熱ポンプを介して該蓄熱槽に戻す冷媒回路を備える水蓄熱空調システムに於て、該蓄熱槽と該熱ポンプとの該冷媒回路内に三方弁を設け、該水を建物の躯体に送る回路と該熱ポンプに送る回路に分岐させると共に、該躯体内に該水を通過させることにより蓄熱させた後、該熱ポンプに送る回路に戻して該熱ポンプの吸込と出口との温度差を常時最適な温度に確保することを特徴とする水蓄熱空調システム。
  2. 蓄熱槽より水をポンプで汲み上げ、熱ポンプを介して該蓄熱槽に戻す冷媒回路を備える水蓄熱空調システムに於て、該蓄熱槽と該熱ポンプとの該冷媒回路内に三方弁を設け、該水を空調機に送る回路と該熱ポンプに送る回路に分岐させると共に、該空調機からの通風を建物の躯体に吹き付けることにより該躯体内に蓄熱させた後、該水を該空調機から該熱ポンプに送る回路に戻すことにより、該熱ポンプの吸込と出口との温度差を常時最適な温度に確保することを特徴とする水蓄熱空調システム。
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