JP4317599B2 - 徐放性製剤 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、塩基性基を有する生体内分解性ポリマーおよび酸性基を有する生理活性物質徐放性製剤およびこれに用いる徐放性製剤用基剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
生理活性物質を含有する優れた徐放性製剤を開発するために、その物質の物理的特性を考慮して種々の試みがなされている。現在、酸性基を有する生理活性物質の徐放化法として、高分子重合物を壁物質とするマイクロカプセル中に塩基性物質を薬物保持物質として含ませ、その中に酸性の水溶性薬物を封入する徐放化方法が特開平2−124814号公報に記載されている。
ジャーナル・オブ・ザ・コレアン・ケミカル・ソサイエティ(Journal of the Korean Chemical Society),第34巻、第2号、第203から210頁、1990年には、3−アミノ−1−プロパノールがポリ(1−ラクチド)の末端カルボキシル基にエステル結合された化合物が合成中間体として記載されている。
Macromol. Chem., 196巻 3891−3903頁(1995年)にはポリ(L−ラクチド)ポリ(α−アミノ酸)ブロック重合物の合成におけるN−カルボキシアンヒドリドのポリ(ラクチド)−OCH2CH2CH2−NH2 による重合およびその合成が記載されている。
J. POLYM. SCI. PART A:POLYM., CHEM., 31巻,275−278頁(1993)にはω−アミノポリ(ε−カプロラクトン)が合成中間体として記載されている。
WO 94/21229号公報には、ポリマーの少なくとも一方の末端にアミノ酸が結合したものなどからなる分散助剤を含むエアロゾル組成物が記載されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
乳酸−グリコール酸共重合物などのような生体内分解性ポリマーは、塩基性薬物の徐放性製剤用基剤としては満足できる程度まで達しているが、酸性基を有する生理活性物質に関しては、生理活性の保持、取り込み率、投与後初期の漏出抑制および長期間にわたる一定した徐放性などの点において満足すべき結果は得られていない。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記の問題を解決するため鋭意研究を行った結果、塩基性基が導入された生体内分解性ポリマーを徐放性製剤用基剤として用いると、酸性基を有する生理活性物質の活性を低下させることなく、マイクロカプセルへの取り込み率が向上し、投与後初期の漏出が抑制され、さらに長期間にわたる一定した徐放性を示すことを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、
(1)保護されていてもよい塩基性基を有する生体内分解性ポリマーおよび酸性基を有する生理活性物質を含有してなる徐放性製剤、
(2)生体内分解性ポリマーが保護されていてもよい塩基性基を少なくとも末端に有する前記(1)記載の徐放性製剤、
(3)生体内分解性ポリマーが保護されていてもよい塩基性基が末端カルボキシル基に導入された生体内分解性ポリマーである前記(1)記載の徐放性製剤、
(4)生体内分解性ポリマーが保護されていてもよい塩基性基を有するチオエステル化、エステル化またはアミド化されたカルボキシル基を末端に有する前記(1)記載の徐放性製剤用基剤、
(5)生体内分解性ポリマーが脂肪族ポリエステルである前記(1)記載の徐放性製剤、
【0005】
(6)脂肪族ポリエステルがα−ヒドロキシカルボン酸のポリマーである前記(5)記載の徐放性製剤、
(7)脂肪族ポリエステルが乳酸及びグリコール酸のホモポリマーもしくはコポリマーである前記(5)記載の徐放性製剤、
(8)乳酸及びグリコール酸のホモポリマーもしくはコポリマーの重量平均分子量が約2000以上である前記(7)記載の徐放性製剤、
(9)乳酸/グリコール酸の組成比が約100/0〜約30/70(モル/モル%)である前記(7)記載の徐放性製剤、
(10)塩基性基が(i)環状アミノ基、(ii)核酸塩基あるいは(iii)それぞれ置換されていてもよいアミノ基、アミジノ基、グアニジノ基、アンモニウム基、環状アミノ基および核酸塩基から選ばれた1ないし5個の置換基を有する炭化水素基である前記(1)記載の徐放性製剤、
(11)式:Poly−CO−NHR'−X'〔式中、Poly はポリマーの主鎖を、R'は2価の炭化水素基を、X'はそれぞれ保護されていてもよいアミノ、アミジノ、環状アミノまたは核酸塩基をそれぞれ示す〕で表わされる生体内分解性ポリマー、
(12)Poly がα−ヒドロキシカルボン酸のホモポリマーもしくはコポリマーである前記(11)記載の生体内分解性ポリマー、
【0006】
(13)α−ヒドロキシカルボン酸が乳酸または/およびグリコール酸である前記(12)記載の生体内分解性ポリマー、
(14)R'が炭素数1〜15の炭化水素基である前記(11)記載の生体内分解性ポリマー、
(15)X'が保護されていてもよいアミノ基である前記(11)記載の生体内分解性ポリマー、
(16)式:Poly−COO−R''−X'〔式中、Poly はα−ヒドロキシカルボン酸のホモポリマーもしくはコポリマーの主鎖を、R''はC1-4アルキル基で置換されていてもよいエチレン基を、X'はそれぞれ保護されていてもよい、アミノ、アミジノ、環状アミノまたは核酸塩基をそれぞれ示す。〕で表わされる生体内分解性ポリマー、
(17)式:H2N−R'−X'〔式中、各記号は前記(11)の記載と同意義を示す。〕で表される保護された塩基性基を有する化合物と式:Poly−COOH〔式中、各記号は前記(11)の記載と同意義を示す。〕で表わされるポリマーまたはその活性誘導体とを反応させることを特徴とする(11)記載の生体内分解性ポリマーの製造法、
(18)保護されていてもよい塩基性基を有する生体内分解性ポリマーを基剤として用いることを特徴とする酸性基を有する生理活性物質の徐放性製剤の徐放性改善方法、
(19)保護されていてもよい塩基性基を有する生体内分解性ポリマーを含有してなる酸性基を有する生理活性物質のための徐放性製剤用基剤、
(20)保護されていてもよい塩基性基を有する生体内分解性ポリマーの、酸性基を有する生理活性物質の徐放性製剤用基剤の製造のための使用に関する。
【0007】
本発明において、用語「生体内分解性ポリマー」としては、生体内に投与後、生体組織に適合して生体への障害反応などを示さないものであれば特に限定されない。例えば、生体内で代謝分解されて、最終的には体外に排出されるものが好ましく、特に、水に難溶または不溶である生体内分解性高分子重合物などが汎用される。該「生体内分解性ポリマー」としては、例えば「ドラッグデリバリーシステム、第3章(CMC,1986年)」などに記載されるものなどが挙げられるが、その具体例としては、以下のものなどが用いられる。
(1)脂肪酸ポリエステル類:
▲1▼α−ヒドロキシカルボン酸類(例えば、グリコール酸、乳酸、ヒドロキシ酪酸など)、ヒドロキシジカルボン酸類(例えば、リンゴ酸など)、ヒドロキシトリカルボン酸類(例えば、クエン酸など)などの一種以上から合成されたホモポリマー(単独重合体)、コポリマー(共重合体)あるいはこれらの混合物など、β−ポリ−α−ベンジルマレート、ポリ−3−ヒドロキシブタン酸、
▲2▼ポリラクチド類(例えば、グリコライド、ラクタイド、ベンジルマロラクトナート、マライドジベンジルエステル、3−〔(ベンジルオキシカルボニル)メチル〕−1,4−ジオキサン−2,5−ジオン)などの一種以上から合成されたホモポリマー、コポリマーあるいはこれらの混合物など、
▲3▼ポリラクトン類(例えば、β−プロピオラクトン、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン、N−ベンジルオキシカルボニル−L−セリン−β−ラクトンなどの一種以上から合成された単独重合体、共重合体あるいはこれらの混合物、これらはα−ヒドロキシ酸の環状2量体であるグリコライド、ラクタイドなどとも共重合が可能である、
▲4▼ポリエチレンアジペート、
(2)ポリアンヒドリド類(例えば、ポリ〔1,3−ビス(p−カルボキシフェノキシ)メタン〕、ポリ(テレフタル酸−セバシン酸無水物など)、
(3)ポリカーボネート類(例えば、ポリ(オキシカルボニルオキシエチレン)、スピロオルソポリカーボネートなど)、
(4)ポリオルソエステル類(例えば、ポリ{3,9−ビス(エチリデン−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5,5〕ウンデカン−1,6−ヘキサンジオール}など)、
(5)ポリアミノ酸類(例えば、ポリ−γ−ベンジル−L−グルタミン酸、ポリ−L−アラニン、ポリ−γ−メチル−L−グルタミン酸など)、
(6)ポリアミド類(例えば、ポリ−α,β〔N−(2−ヒドロキシエチル)〕−D,L−アスパルトアミド、ポリ−γ−グルタミン酸ベンジルエステルなど)、
(7)ポリ−α−シアノアクリル酸エステル類(例えば、ポリ−α−シアノアクリル酸イソブチルなど)、
(8)ポリホスファゼン類(例えば、ポリジアミノホスファゼンなど)、
(9)ポリデプシペプチド(例えば、3−〔4−(ベンジルオキシカルボニルアミノ)ブチル〕−6−メチルモルホリン−2,5−ジオンのホモポリマー、またはこれとラクトン類(例えば、εーカプロラクトンなど)、ラクチド類(例えば、グリコライド、ラクチドなど)とのコポリマーなど)などが挙げられる。これらは、適宜の割合で混合して用いてもよい。重合の形式はランダム、ブロック、グラフトのいずれでもよい。該「生体内分解性ポリマー」としては、例えば脂肪酸ポリエステル類〔例えば、α−ヒドロキシカルボン酸類(例えば、グリコール酸、乳酸、ヒドロキシ酪酸など)、ヒドロキシジカルボン酸類(例えば、リンゴ酸など)、ヒドロキシトリカルボン酸類(例えば、クエン酸など)などの一種以上から合成された単独重合体、共重合体あるいはこれらの混合物など〕が汎用される。
前記脂肪酸ポリエステル類中、α−ヒドロキシカルボン酸類(例えば、グリコール酸、乳酸、ヒドロキシ酪酸など)の一種以上から合成された単独重合体または共重合体が生体内適合性および生体内分解性の観点から好ましい。また、これらの共重合体は適宜混合して使用してもよい。
【0008】
該「α−ヒドロキシカルボン酸類」が分子内に光学活性中心を有する場合は、D−体、L−体およびD,L−体の何れでもよいが、D−体/L−体(モル/モル%)が約75/25ないし約25/75の範囲のものが好ましい。このD−体/L−体(モル/モル%)は、特に約60/40ないし約30/70の範囲のものが汎用される。該「α−ヒドロキシカルボン酸類」の重合体の例としては、例えばグリコール酸と他のα−ヒドロキシカルボン酸類との共重合体が挙げられ、該「α−ヒドロキシカルボン酸類」としては、例えば乳酸、2−ヒドロキシ酪酸などが好ましい。α−ヒドロキシカルボン酸類の重合体は、例えばポリ乳酸、乳酸−グリコール酸共重合体、2−ヒドロキシ酪酸−グリコール酸共重合体などが好ましく、特に乳酸−グリコール酸ポリマー(以下、乳酸−グリコール酸重合体と称することもあり、特に明示しない限り、乳酸、グリコール酸の単独重合体及び共重合体を総称する)が汎用される。該乳酸−グリコール酸重合体の組成比(乳酸/グリコール酸)(モル/モル%)は本発明の目的が達成される限り特に限定されないが、約100/0ないし約30/70のものが用いられる。該組成比の好ましい例としては、約90/10ないし約40/60であり、特に約80/20ないし約45/55のものが汎用される。該乳酸−グリコール酸重合体は、重量平均分子量が例えば約2,000ないし約70,000のものなどが用いられ、約3,000ないし約20,000のものが好ましい。特に約5,000ないし15,000のものが汎用される。また、該乳酸−グリコール酸重合体は、分散度(重量平均分子量/数平均分子量)が約1.2ないし約4.0のものが好ましく、特に約1.5ないし約3.5のものが汎用される。
【0009】
本明細書での重量平均分子量および分散度とは、重量平均分子量が120,000、52,000、22,000、9,200、5,050、2,950、1,050、580、162の9種類のポリスチレンを基準物質としてゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算の分子量および算出した分散度をいう。測定は、GPCカラムKF804Lx2(昭和電工製)、RIモニターL−3300(日立製作所製)を使用し、移動相としてクロロホルムを用いた。
以下に、末端に遊離のカルボキシル基を有する生体内分解性ポリマーについて述べる。末端基定量による数平均分子量は以下のようにして算出した分子量をいう。
約1〜3gの生体内分解性ポリマーを、アセトン(25ml)とメタノール(5ml)の混合溶媒に溶解し、フェノールフタレインを指示薬としてこの溶液中にカルボキシル基を室温(20℃)での撹拌下0.05Nアルコール性水酸化カリウム溶液で速やかに滴定して、末端基定量による数平均分子量を次式で算出した。
末端基定量による数平均分子量=20000×A/B
A:生体内分解性ポリマーの質量(g)
B:滴定終点までに添加した0.05Nアルコール性水酸化カリウム溶液の量(ml)
【0010】
該「2−ヒドロキシ酪酸−グリコール酸共重合体」としては、本発明の目的が達成される限り特に限定されないが、例えばグリコール酸が約10ないし約75モル%、残りが2−ヒドロキシ酪酸である場合が好ましい。さらに好ましくは、グリコール酸が約20ないし約75モル%の場合である。特に、グリコール酸が約30ないし約70モル%のものが汎用される。該「2−ヒドロキシ酪酸−グリコール酸共重合体」は、重量平均分子量が、例えば約2,000ないし約20,000のものが好ましい。該「2−ヒドロキシ酪酸−グリコール酸共重合体」は、分散度(重量平均分子量/数平均分子量)が、例えば約1.2ないし4.0のものが好ましく、特に約1.5ないし3.5のものが汎用される。
該「α−ヒドロキシカルボン酸類」としては、本発明の目的が達成される限り特に限定されないが、そのポリマーの好ましい例としては乳酸の単独重合体(ポリ乳酸)が挙げられる。該「ポリ乳酸」は、重量平均分子量が、例えば約2,000ないし約20,000のものが好ましく、特に約5,000ないし約15,000のものが汎用される。
【0011】
該「2−ヒドロキシ酪酸−グリコール酸共重合体」は、さらにポリ乳酸と混合して使用してもよい。該「ポリ乳酸」としては、D−体、L−体およびこれらの混合物の何れでもよいが、例えばD−体/L−体(モル/モル%)が約75/25ないし約20/80の範囲のものが用いられる。D−体/L−体(モル/モル%)は、約60/40ないし約25/75であるものが好ましく、特に約55/45ないし約25/75であるものが汎用される。該ポリ乳酸は、重量平均分子量が、例えば約1,500ないし約20,000のものが用いられ、約1,500ないし約10,000のものが好ましい。また、該ポリ乳酸は、分散度が約1.2ないし約4.0のものが用いられ、特に約1.5ないし約3.5のものが汎用される。
【0012】
2−ヒドロキシ酪酸−グリコール酸共重合体とポリ乳酸とを混合して使用する場合、その混合比が、例えば約10/90ないし約90/10(重量%)であるものが用いられる。その混合比は、約20/80ないし約80/20の場合が好ましく、特に約30/70ないし約70/30の場合が汎用される。
前記「生体内分解性ポリマー」は、保護されていてもよい塩基性基を有する。該「保護されていてもよい塩基性基」としては、酸性基を有する生理活性物質の酸性基との間で酸塩基相互作用を示し、pKaが8以上である基(例えば、大有機化学、別巻2、第584〜613頁に記載されている解離定数8以上のアミンなど)であれば特に限定されない。従って本発明においては、保護された塩基性基を有するポリマーであってもこのpKa値を有するものであれば、基剤として用いることができる。しかし、本発明の目的をより効果的に達成するためには、保護されていてもよい塩基性基を生体内分解性ポリマーの末端に導入することが望ましい。さらに望ましいのは、生体内分解性ポリマーの末端カルボキシル基のみ、あるいは末端カルボキシル基および末端ヒドロキシル基の両末端に保護されていてもよい塩基性基が導入されている場合である。該「保護されていてもよい塩基性基」は、生体内分解性ポリマー中にエステル結合、チオエステル結合またはアミド結合によって導入される場合、すなわち末端カルボキシル基がエステル化、チオエステル化またはアミド化された基を有するものが望ましい。該「アミド結合」は、
【化1】
Figure 0004317599
〔式中、A1環およびA2環はそれぞれ5ないし7員環を示す。ただし、式中のN以外はすべて炭素原子である。〕の場合も含む。酸−塩基相互作用の観点からすれば、生体内分解性ポリマーに導入される塩基性基は保護基を有しないものが好ましい。塩基性基がヒドロキシル基、アミノ基および/またはチオール基を有する場合、本発明の本質を逸脱しない範囲で、その基の数に応じて該「生体内分解性ポリマー」が結合していてもよい。
【0013】
該「保護されていてもよい塩基性基」の「塩基性基」としては、例えば(i)環状アミノ基、(ii)核酸塩基あるいは(iii)それぞれ置換されていてもよい、アミノ基、アミジノ基、グアニジノ基、アンモニウム基、環状アミノ基および核酸塩基から選ばれた1ないし5個の置換基を有する炭化水素基などが用いられる。
該「環状アミノ基」としては、例えばピロリジニル基、ピロリニル基、ピペリジル基、イミダゾリジニル基、イミダゾリニル基、ピラゾリジニル基、ピラゾリニル基、ピペラジニル基、ピペラジノ基、インドリニル基、イソインドリニル基、キヌクリジニル基、モルホリノ基、モルホリニル基などが挙げられる。
該「核酸塩基」としては、例えば6−アミノプリニル基、6−アミノ−2−プリニルオキシ基、4−アミノ−2−ピリミジニルオキシ基、5−メチル−2,4−ピリミジニルオキシ基、2,4−ピリミジニルオキシ基などが挙げられる。
該「アミノ基、アミジノ基、グアニジノ基、アンモニウム基」が有する水素は、下記の炭化水素基で置換されていてもよい。
該「炭化水素基」としては、例えばアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基などが挙げられる。
該「アルキル基」としては、例えば炭素数1〜24(C1-24)アルキル基(例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、1−メチルプロピル、イソブチル、t−ブチル、n−ペンチル、1−メチルブチル、n−ヘキシル、4−メチルペンチル、n−ヘプチル、1−プロピルブチル、n−オクチル、1−メチルヘプチル、1−プロピルペンチル、n−ノニル、n−デシル、ウンデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、1−プロピルヘキシル、1−メチルオクタデシル、ヘキシルエチル、4−エチル−5−メチルオクチル、4−イソプロピル−5−プロピルデシルなど)などが挙げられる。該「アルキル基」は、さらに1ないし3個のC2-6アルケニル基(例えば、ビニルなど)、C2-6アルキニル基(例えば、エチニルなど)、C3-6シクロアルキル基(例えば、シクロヘキシルなど)、C6-10アリール基(例えば、フェニルなど)またはC7-14アラルキル基(例えば、ベンジルなど)などを有していてもよい。これらの例としては、例えばビニルエチル、ベンジルエチルなどが挙げられる。
該「アルケニル基」としては、例えばC2-15アルケニル基(例えば、ビニル、1−プロペニル、アリル、イソプロペニル、1−ブテニル、2−ブテニル、3−ブテニル、1−ペンテニル、2−ペンテニル、1−ヘキシル、2−ヘキシル、1−ヘプテニル、1−オクテニル、ノネニル、2−メチルプロペン−1−イル、1−メチルプロペン−1−イル、1−メチルアリル、2−メチルアリル、ジメチルヘキセニル、4−プロピル−2−ペンテニル、1−ドデシル、1−トリデセニル、2−ノニル−2−ブテニルなど)などが挙げられる。
該「アルキニル基」としては、例えば、C2-6アルキニル基(例えば、エチニル、1−プロピニル、2−プロピニルなど)などが挙げられる。
該「シクロアルキル基」としては、例えばC3-10シクロアルキル基(例えば、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニルなど)などが挙げられる。
該「アリール基」としては、例えばC6-14アリール基(例えば、フェニル、トリル、ナフチルなど)などが挙げられる。
該「アラルキル基」としては、例えばC7-14アラルキル基(例えば、ベンジル、フェネチルなど)などが挙げられる。
前記アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アリール基およびアラルキル基は1ないし3個のC1-10アルキル基、C2-10アルケニル基、C3-10シクロアルキル基、C6-10のアリール基またはC7-14アラルキル基で置換されていてもよい。
前記「塩基性基」は、例えばエステル結合、チオエステル結合、アミド結合などによって生体内分解性ポリマー中に導入される。
該「アミノ基、アミジノ基、グアニジノ基、アンモニウム基、環状アミノ基、核酸塩基」は、以下の保護基を有していてもよい。
【0014】
該「塩基性基」が有していてもよい「保護基」としては、例えば、新実験化学講座第14巻、第2555頁以降に記載されている保護基などが用いられるが、目的とする生体内分解性ポリマーが得られるならば特に限定されない。例えばアシル誘導体(例えば、ホルミル、アセチル、ベンゾイルなど)、ウレタン型誘導体〔例えば、ベンジルオキシカルボニル、t−ブトキシカルボニル、2−(p−ビフェニル)イソプロポキシカルボニル、ジイソプロピルメチルオキシカルボニル、ピペリジノオキシカルボニル、β−(p−トルエンスルホニル)エトキシカルボニル、β−ヨードエトキシカルボニル、8−キノリニルオキシカルボニル、β,β,β−トリクロロエトキシカルボニル、イソブチルオキシカルボニル、シクロペンチルオキシカルボニル、シクロヘキシルオキシカルボニル、L−メンチルオキシカルボニル、1−アダマンタニルオキシカルボニル、4−メトキシベンジルオキシカルボニル、4−デシルオキシベンジルオキシカルボニル、4−ニトロベンジルオキシカルボニル、フルフリルオキシカルボニル、ジフェニルメトキシカルボニル、9−フルオレニルメトキシカルボニルなど〕、アルキル誘導体(例えば、チオフェノキシカルボニル、チオベンジルオキシカルボニルなど)、アルケニル誘導体(例えば、アリルなど)、アリール誘導体(例えば、2,4−ジニトロフェニル、テトラヒドロピラニルなど)、N−ニトロソ誘導体(例えば、ニトロソなど)、N−ニトロ誘導体(例えば、ニトロなど)、ホスホリル誘導体(例えば、ベンジルホスホリル、ジフェニルホスホリルなど)、スルフェニル誘導体(例えば、アリールスルフェニル、トリフェニルメチルスルフェニル、3−ニトロ−2−ピリジンスルフェニルなど)、スルホニル誘導体(例えば、ベンジルスルホニル、アリールスルホニルなど)、トリアルキル誘導体などが用いられる。
該「生体内分解性ポリマー」の末端カルボキシル基には、例えば、N−ベンジルオキシカルボニル−アミノメタノール、2−(N−ベンジルオキシカルボニル)−アミノエタノール、2−(N−ベンジルオキシカルボニル)アミノ−4−メチル−ペンタン−1−オール、2−(N−ベンジルオキシカルボニル)アミノ−3−フェニル−プロパン−1−オール、2−(N−t−ブトキシカルボニル)アミノ−3−フェニル−プロパン−1−オール、2−(N−t−ブトキシカルボニル)アミノ−3−メチル−ブタン−1−オール、2−(N−t−ブトキシカルボニル)アミノ−4−メチル−ペンタン−1−オール、2−(N−t−ブトキシカルボニル)アミノ−3−メチル−ペンタン−1−オール、2−(N−t−ブトキシカルボニル)アミノ−3−フェニル−プロパン−1−オール、2−(ベンジルオキシカルボニル)アミノ−4−(t−ブトキシカルボニル)−ブタン−1−オール、1−アミノプロパン−2−オール、1−アミノプロパン−3−オール、1−アミノブタン−2−オール、1−アミノ−3−ブテン−2−オール、2−アミノブタン−1−オール、2−アミノブタン−3−オール、1−アミノ−2−メチルプロパン−2−オール、2−アミノ−2−メチルプロパン−1−オール、2−アミノヘキサン−1−オール、3−アミノヘプタン−4−オール、1−アミノオクタン−2−オール、5−アミノオクタン−4−オール、3−アミノノナン−4−オール、1−アミノプロパン−3−オール、3−アミノブタン−1−オール、1−アミノブタン−4−オール、1−アミノペンタン−5−オール、1,2−ジアミノプロパン−3−オール、1,3−ジアミノプロパン−2−オール、1−アミノ−2,2−ビス(アミノメチル)プロパン−1−オール、N−(2−ヒドロキシエチル)エチレンジアミン、N−(2−ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン、N−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピル)エチレンジアミン、1−アミノプロパン−2,3−ジオール、2−アミノプロパン−1,3−ジオール、2−アミノ−2−メチルプロパン−1,3−ジオール、2−アミノ−2−エチルプロパン−1,3−ジオール、2−アミノ−2−オキシメチルペンタン−1−オール、2−アミノ−2−オキシメチル−3−メチルブタン−1−オール、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、1−アミノ−2,2−ビス(オキシメチル)プロパン−3−オール、2,2−ビス(アミノメチル)プロパン−1,3−ジオール、1−アミノ−2,2−ビス(アミノメチル)プロパン−1−オール、N−(2−ヒドロキシエチル)エチレンジアミン、N−(2−ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン、N−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピル)エチレンジアミン、N−モノベンジルオキシカルボニルアミナル、N−モノベンジルオキシカルボニル(n−プロピル)アミナル、N−モノベンジルオキシカルボニル(i−プロピル)アミナル、N−モノベンジルオキシカルボニル(i−ブチル)アミナル、N−モノベンジルオキシカルボニル(ベンジル)アミナル、N−モノベンジルオキシカルボニル−エチレンジアミン、3−(t−ブトキシカルボニルアミノ)−3−ベンジルプロピルアミン、3−(t−ブトキシカルボニルアミノ)−3−(i−ブチル)プロピルアミン、3−(ベンジルオキシカルボニルアミノ)プロピルアミン、2−ベンジルオキシカルボニルアミノエタンチオールなどが導入されている場合が好ましい。
本発明において用いられる「保護されていてもよい塩基性基を有する生体内分解性ポリマー」は、塩基性基の効果が酸性基の効果よりも大きいものであってもよく、より好ましくは酸性を示す基を含まないことが望ましい。
【0015】
本発明において用いられる「保護されていてもよい塩基性基を有する生体内分解性ポリマー」の好ましいものとしては、例えば以下の構造式で表されるものなどが用いられる。
【化2】
Figure 0004317599
式(Ia)において、Polyは生体内分解性ポリマーの主鎖、AはO、NHまたはS、Xは(i)環状アミノ基、(ii)核酸塩基あるいは(iii)アミノ基、アミジノ基、グアニジノ基、アンモニウム基、環状アミノ基および核酸塩基から選ばれた1ないし5個の置換基を有する炭化水素基を示す。
式(Ib)において、Polyは生体内分解性ポリマーの主鎖、Xは(i)環状アミノ基、(ii)核酸塩基あるいは(iii)アミノ基、アミジノ基、グアニジノ基、アンモニウム基、環状アミノ基および核酸塩基から選ばれた1ないし5個の置換基を有する炭化水素基、A1環は5ないし7員環を示す。
式(Ic)において、Polyは生体内分解性ポリマーの主鎖、Yは(i)水素原子、(ii)環状アミノ基、(iii)核酸塩基あるいは(iv)アミノ基、アミジノ基、グアニジノ基、アンモニウム基、環状アミノ基および核酸塩基から選ばれた1ないし5個の置換基を有する炭化水素基、A2環は5ないし7員環を示す。
式(Id)において、Polyは生体内分解性ポリマーの主鎖、AはO、NHまたはS、Xは(i)環状アミノ基、(ii)核酸塩基あるいは(iii)アミノ基、アミジノ基、グアニジノ基、アンモニウム基、環状アミノ基および核酸塩基から選ばれた1ないし5個の置換基を有する炭化水素基を示す。
式(Ie)において、Polyは生体内分解性ポリマーの主鎖、Xは(i)環状アミノ基、(ii)核酸塩基あるいは(iii)アミノ基、アミジノ基、グアニジノ基、アンモニウム基、環状アミノ基および核酸塩基から選ばれた1ないし5個の置換基を有する炭化水素基、A1環は5ないし7員環を示す。
式(If)において、Polyは生体内分解性ポリマーの主鎖、Xは(i)環状アミノ基、(ii)核酸塩基あるいは(iii)アミノ基、アミジノ基、グアニジノ基、アンモニウム基、環状アミノ基および核酸塩基から選ばれた1ないし5個の置換基を有する炭化水素基、Yは(i)水素原子、(ii)環状アミノ基、(iii)核酸塩基あるいは(iv)アミノ基、アミジノ基、グアニジノ基、アンモニウム基、環状アミノ基および核酸塩基から選ばれた1ないし5個の置換基を有する炭化水素基、A2環は5ないし7員環を示す。
式(Ig)において、Polyは生体内分解性ポリマーの主鎖、AはO、NHまたはS、Xは(i)環状アミノ基、(ii)核酸塩基あるいは(iii)アミノ基、アミジノ基、グアニジノ基、アンモニウム基、環状アミノ基および核酸塩基から選ばれた1ないし5個の置換基を有する炭化水素基、R0は炭化水素基を示す。
Polyで表される用語「生体内分解性ポリマーの主鎖」は、前記「生体内分解性ポリマー」の主鎖部分を示す。
XおよびYで表される用語「環状アミノ基」、「核酸塩基」および「アミノ基、アミジノ基、グアニジノ基、アンモニウム基、環状アミノ基および核酸塩基から選ばれた1ないし5個の置換基を有する炭化水素基」は、前記と同様のものなどを示す。また、これらは前記と同様の保護基で保護されていてもよい。
0で表される「炭化水素基」は、前記と同様のものなどが用いられる。
Polyは、α−ヒドロキシカルボン酸のホモポリマーまたはコポリマー(前記と同様)の主鎖である場合が好ましく、特に乳酸−グリコール酸重合体(前記と同様)の主鎖である場合が汎用される。
AはOまたはNHである場合が好ましい。
XおよびYは、1ないし3個の保護されていてもよいアミノ基を有する炭化水素基が好ましい。該「アミノ基の保護基」および「炭化水素基」は前記と同様のものなどが用いられる。
【0016】
本発明においては、式(Ia)で表される生体内分解性ポリマーが好ましい。
式(Ia)において、−A−Xは好ましくは
式−NH−R'−X'または−OR''−X''〔式中、R'およびR''は2価の炭化水素基を、X'およびX''はそれぞれ保護されていてもよい。アミノ、アミジノ、グアニジノ、アンモニウム、環状アミノまたは核酸塩基(好ましくは保護されていてもよいアミノ基)を示す〕で表わされる基である。R'およびR''で表わされる2価の炭化水素基としては、前記の炭化水素基から誘導される2価の基が挙げられる。
R'で表わされる2価の炭化水素基は、C1-15アルキレン基(例、メチレン、エチレン、プロピレン、テトラメチレン、3,3−ジメチルペンタメチレン等)、C2-15アルケニレン基(例、ビニレン、プロペニレン、メチルプロペニレン、ジメチルプロペニレン等)、C3-10シクロアルキレン基(例、シクロプロピレン、1,3−シクロペンチレン、3−シクロヘキセン−1,2−イレン等)、C6-10アリレン基(例、フェニレン、ナフチレン等)等が挙げられ、これらは1ないし3個のC1-4アルキル基、C2-4アルケニル基、C3-10シクロアルキル基およびC6-10アリール基で置換されていてもよい。R'は好ましくは、2価のC1-10炭化水素基、好ましくはC1-8炭化水素基である。
R'で表わされる基の好ましい様態の1つとしては、C1-6アルキレン基が挙げられる。
R''で表わされる炭化水素基としては、C1-4アルキル基で置換されていてもよいエチレン基が好ましい。
【0017】
前記式において−A−Xで表される基の好ましい例としては、例えばアミノメチルオキシ基、2−アミノエチルオキシ基、1−アミノプロパン−2−オキシ基、1−アミノプロパン−3−オキシ基、1−アミノブタン−2−オキシ基、1−アミノ−3−ブテン−2−オキシ基、2−アミノブタン−1−オキシ基、2−アミノブタン−3−オキシ基、3−アミノブタン−1−オキシ基、1−アミノブタン−4−オキシ基、1−アミノ−2−メチルプロパン−2−オキシ基、2−アミノ−2−メチルプロパン−1−オキシ基、1−アミノペンタン−5−オキシ基、2−アミノヘキサン−1−オキシ基、3−アミノヘプタン−4−オキシ基、1−アミノオクタン−2−オキシ基、5−アミノオクタン−4−オキシ基、3−アミノノナン−4−オキシ基、1,2−ジアミノプロパン−3−オキシ基、1,3−ジアミノプロパン−2−オキシ基、1−アミノ−2,2−ビス(アミノメチル)プロパン−1−オキシ基、1,2−ジアミノプロパン−2−オキシ基、2−(2−アミノエチル)アミノエチルオキシ基、3−(2−アミノエチル)アミノプロパン−2−オキシ基、3−アミノプロパン−1,2−ジオキシ基、2−アミノプロパン−1,3−ジオキシ基、2−アミノ−2−メチルプロパン−1,3−ジオキシ基、2−アミノ−2−プロピルプロパン−1,3−ジオキシ基、2−アミノ−2−(1−メチル)エチルプロパン−1,3−ジオキシ基、アミノメタン−トリス(メトキシ)基、2−アミノエタン−トリス(メトキシ)基、2,2−ビス(アミノメチル)プロパン−1,3−ジオキシ基、アミノメチルアミノ基、1−アミノブチルアミノ基、1−アミノ−2−メチルプロピルアミノ基、1−アミノ−3−メチルブチルアミノ基、1−アミノ−2−フェニルエチルアミノ基、2−アミノエチルアミノ基、3−アミノ−4−フェニルブチルアミノ基、3−アミノ−5−メチルヘキシルアミノ基、3−アミノプロピルアミノ基、2−アミノエチルチオ基、2−アミノ−2−メチルエチルオキシ基、2−アミノ−2−(1−メチルエチル)エチルオキシ基、2−アミノ−2−(2−メチルプロピル)エチルオキシ基、2−アミノ−2−(1−メチルプロピル)エチルオキシ基、2−アミノ−2−ベンジルエチルオキシ基、2−アミノブタン−1,3−ジオキシ基、2−アミノ−2−(4−アミノブチル)エチルオキシ基、2,6−ジアミノヘキサン−1,5−ジオキシ基、2−アミノ−2−(3−グアニジノプロピル)エチルオキシ基、2−アミノ−2−(カルバモイルメチル)エチルオキシ基、2−アミノ−2−(2−カルバモイルエチル)エチルオキシ基、2−アミノ−2−(2−メチルチオエチル)メチルエチルオキシ基、2−アミノ−2−(オキシフェニルメチル)メチルエチルオキシ基、2−アミノ−2−(5−イミダゾリルメチル)エチルオキシ基、2−アミノ−2−(3−インドリルメチル)エチルオキシ基などが挙げられる。
【0018】
本発明において用いられる「保護されていてもよい塩基性基を有する生体内分解性ポリマー」のさらに好ましいものとしては、例えば(i)乳酸−グリコール酸重合体の末端カルボキシル基にモノ−またはジ−アミノアルキル(例えば、2−アミノエチル、2−アミノ−1−(アミノメチル)エチルなど)を含む化合物をエステル結合させたもの、(ii)乳酸−グリコール酸重合体の末端カルボキシル基に、L−アミノ酸のカルボキシル基を還元してヒドロキシル基に誘導した化合物(例えば、L−アラニノール、L−リシリノール、L−アルギノールなど)をエステル結合させたもの、(iii)乳酸−グリコール酸重合体の末端ヒドロキシル基にL−α−アミノ酸(例えば、L−グリシン、L−アラニン、L−リシン、L−アルギニンなど)、β−アミノ酸(例えば、β−アミノプロピオン酸、β−グアニジノプロピオン酸など)、γ−アミノ酸(例えば、γ−アミノブタン酸、γ−グアニジノブタン酸など)を結合させたもの、あるいはこれらを組み合わせて、乳酸−グリコール酸重合体の両末端に塩基性基を有するものなどが挙げられる。
【0019】
本発明の徐放性製剤に含まれる、酸性基を有する生理活性物質としては、例えばスルホン基、カルボキシル基、リン酸基、ヒドロキサム酸基などの遊離基またはその塩などを有する生理活性物質などが挙げられ、生理活性物質分子が全体として酸性を示すものであれば分子中にアミノ基等の塩基性基をも有しているものも含まれる。塩基性基と酸性基との相方を有する生理活性物質としては、生理活性ペプチド等がその例示として挙げられる。この生理活性物質が有する薬効は特に制限されないが、例えば向知能薬(例えば、アルツハイマー治療薬、老人性痴呆症治療薬、脳梗塞治療薬、一過性脳虚血発作治療薬など)、疼痛治療薬、循環器疾患治療薬(例えば、高血圧治療薬、血栓治療薬、心不全治療薬、虚血性心疾患治療薬、心筋梗塞治療薬、狭心症治療薬、末梢循環障害治療薬等)、骨、関節疾患治療薬(例えば、骨粗鬆症治療薬、関節リュウマチ治療薬など)、感染症治療薬(例えば、細菌、ウイルス、AIDS、B型肝炎、C型肝炎または帯状疱疹治療薬など)、糖尿病治療薬、動脈硬化治療薬、高脂血症治療薬、アレルギー性疾患治療薬(例えば、喘息治療薬、アトピー性皮膚炎治療薬など)、消化器疾患治療薬(例えば、胃潰瘍治療薬、十二指腸潰瘍治療薬、膵炎治療薬など)、癌治療薬(例えば、前立腺癌治療薬、乳癌治療薬など)などが用いられる。
【0020】
本発明で用いられる生理活性物質の塩は、好ましくは薬理学的に許容される塩が用いられる。薬理学的に許容される塩としては、無機塩基との塩、有機塩基との塩、塩基性または酸性アミノ酸との塩等が用いられる。このような塩を形成させ得る無機塩基としては、アルカリ金属(例、ナトリウム,カリウム等)、アルカリ土類金属(例、カルシウム、マグネシウム等)が、有機塩基としては、例えばトリメチルアミン,トリエチルアミン,ピリジン,ピコリン,N,N−ジベンジルエチレンジアミン,ジエタノールアミン等が、無機酸としては、塩酸,臭化水素酸,ヨウ化水素酸,リン酸,硝酸,硫酸等が、有機酸としては、ギ酸,酢酸,トリフルオロ酢酸,シュウ酸,酒石酸,フマール酸,マレイン酸,メタンスルホン酸,ベンゼンスルホン酸,p−トルエンスルホン酸,クエン酸等が、塩基性または酸性アミノ酸としては、例えばアルギニン、リジン、アスパラギン酸、グルタミン酸等が用いられる。本発明において用いられる生理活性物質の塩は、中性ないし酸性塩であるが酸性塩が好対象である。
【0021】
本発明の基剤あるいはこれからなる徐放性製剤は、生理活性物質以外に、例えば分散剤(Tween 80、HCO−60などの界面活性剤;カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ヒアルロン酸ナトリウムなどの多糖類;硫酸プロタミン;ポリエチレングリコール400など)、保存剤(例えば、メチルパラベン、プロピルパラベンなど)、等張化剤(例えば、塩化ナトリウム、マンニトール、ソルビトール、ブドウ糖など)、油脂類(例えば、ゴマ油、コーン油など)、リン脂質(例えば、レシチンなど)、賦形剤(例えば、乳糖、コーンスターチ、マンニトール、セルロースなど)、結合剤(例えば、ショ糖、アラビアゴム、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、デキストリンなど)、崩壊剤(例えば、カルボキシメチルセルロースカルシウムなど)などを含んでいてもよい。
【0022】
本発明で用いられる「保護されていてもよい塩基性基を有する生体内分解性ポリマー」の製造法としては、例えば以下の方法などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
本発明で用いられる「保護されていてもよい塩基性基を有する生体内分解性ポリマー」は、保護されていてもよい塩基性基を有する化合物と環状エステル化合物とを開環重合および/またはエステル交換反応に付すことによって製造することができる。
具体的には、保護された塩基性基を有し、かつ活性水素を有する官能基(例えば、ヒドロキシル基、チオール基、アミノ基、イミノ基など)を有する化合物〔I〕と環状エステル化合物とをエステル交換触媒を用いて、開環重合および/またはエステル交換反応に付すことにより、保護された塩基性基がエステル、チオエステルまたはアミド結合によってカルボキシル末端に導入された生体内分解性ポリマー〔II〕が得られる。
【0023】
該「環状エステル化合物」とは、例えば環内に少なくとも1つのエステル結合を有する環状化合物を示す。具体的には、例えばラクトン類(例えば、β−プロピオラクトン、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトンなど)、ラクチド類(例えば、グリコリド、L−ラクチド、D−ラクチド、DL−ラクチド、meso−ラクチドなど)およびモルホリン−2,5−ジオンなどが挙げられ、これらは2種類以上を同時に用いてもよい。
該「エステル交換触媒」としては、例えば有機スズ系触媒(例えば、オクチル酸スズ、ジラウリル酸ジ−n−ブチルスズ、テトラフェニルスズなど)、アルミ系触媒(例えば、トリエチルアルミニウムなど)、亜鉛系触媒(例えば、ジエチル亜鉛)などが挙げられる。
【0024】
重合方法は、反応物を融解状態で行う塊状重合法または反応物を適当な溶媒(例えば、ベンゼン、トルエン、デカリン、ジメチルホルムアミドなど)に溶解して行う溶液重合法を用いればよい。重合温度は特に限定されるものではないが、塊状重合の場合、反応開始時に反応物を融解状態に至らしめる温度以上、通常100ないし300℃であり、溶液重合の場合、通常室温ないし100℃であり、反応温度が反応溶液の沸点を越えるときは、凝縮器を付けて還流するか、または耐圧容器内で反応させればよい。重合時間は重合温度、そのほかの反応条件や目的とするポリマーの物性などを考慮して適宜定められるが、例えば10分から72時間である。反応後は、必要であれば反応混合物を適当な溶媒(例えば、アセトン、ジクロロメタン、クロロホルムなど)に溶解し、酸(例えば、塩酸、無水酢酸など)で重合を停止させた後、常法によりこれを目的物を溶解しない溶媒(例えば、メタノール、エタノール、水、エーテルなど)中に混合するなどして析出させ、単離すればよい。ついで、生体内分解性ポリマー〔II〕を、保護基に応じた脱保護反応に付すことにより、生体内分解性ポリマーのカルボキシル末端に、塩基性基がエステル、チオエステルまたはアミド結合によって導入された生体内分解性ポリマー〔III〕が得られる。保護された塩基性基を有するカルボン酸を活性アシル体(例えば、酸無水物、酸クロリドなど)〔IV〕に誘導して、生体内分解性ポリマー〔II〕のヒドロキシル末端と反応させることにより、生体内分解性ポリマーの両末端に保護された塩基性基を有する生体内分解性ポリマー〔V〕が得られる。あるいは、公知の方法(例えば、無触媒脱水重縮合法など)で合成された生体内分解性ポリマーのヒドロキシル末端と活性アシル体〔IV〕とを反応させて、ヒドロキシル末端に保護された塩基性基を有する生体内分解性ポリマー〔VI〕が得られる。ついで、生体内分解性ポリマー〔VI〕の末端カルボキシル基を公知の方法で活性化し、化合物〔I〕と反応させて、両末端に保護された塩基性基を有する生体内分解性ポリマー〔V〕が得られる。ついで、生体内分解性ポリマー〔V〕を、保護基に応じた脱保護反応に付すことにより、両末端に塩基性基を有する生体内分解性ポリマー〔VII〕が得られる。
【0025】
環外に保護された塩基性基を有する環状化合物を単独重合、あるいは塩基性基不含環状化合物(例えば、グリコリド、ラクチド、ε−カプロラクトンなど)と共重合し、その後公知の方法により脱保護して、側鎖位にアミノ基を有する生体内分解性ポリマーを合成することができる。
前記製造工程の一例を以下に示すが、これに限定されるものではない。
【化3】
Figure 0004317599
【化4】
Figure 0004317599
該「A、A1、A2、XおよびY」の定義は前記と同意義を示す。該「2価の炭化水素基」は、前記「炭化水素基」からさらに水素原子1つを取り除いた2価の基を示し、その間にアミド結合を含んでいてもよい。間にアミド結合を含む炭化水素としては、例えば−CH2−CONH−CH2−などが挙げられる。
本発明の保護されていてもよい塩基性基を有する生体内分解性ポリマーは、保護されていてもよい塩基性基を有する化合物〔I〕と公知の方法(例えば、無触媒脱水縮合重合法等)により得られた生体内分解性ポリマーとを、所望により脱水剤および/または官能基の活性化剤を用いて、縮合反応させることにより得ることができる。
【0026】
該縮合反応に関与するアミノ基、カルボキシル基等は公知の手段で活性化しておいてもよく、縮合反応の際に、カルボキシル基の活性化を行ってもよい。活性化は、自体公知の方法により行えばよく、このような方法としては、例えば活性エステル[置換フェノール類(例、ペンタクロロフェノール、2,4,5−トリクロロフェノール、2,4−ジニトロフェノール、p−ニトロフェノール等)、N−置換イミド類(例、N−ハイドロキシ−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミド、N−ハイドロキシスクシンイミド、N−ハイドロキシ−1,2,3−ベンゾトリアゾール等)等とのエステル]、原料のカルボン酸に対するカルボン酸無水物、アジド等を形成させる方法、酸クロライド法、酸化還元法(向山法)、混合酸無水物法、N,N'−ジシクロヘキシルカルボジイミド法、N,N'−ジシクロヘキシルカルボジイミド−アディティブ法、ウッドワード試薬Kを用いる方法、ベンゾトリアゾール−1−イル−オキシ−トリス(ジメチルアミノ)−ホスホニウムヘキサフルオロホスフェイト(BOP試薬)を用いる方法等が挙げられる。
【0027】
縮合反応は、通常、反応を阻害しない溶媒中で行われる。このような溶媒としては、ジメチルホルムアミド等のアミド類、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素類、エタノール、メタノール等のアルコール類、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類、酢酸エチル等のエステル類、N−メチルピロリドン、N−メチルモルホリン、水等である。反応温度は好ましくは約−30℃〜約50℃である。反応温度は、さらに好ましくは約0℃〜約40℃である。反応時間は例えば約10分〜約24時間である。
上記縮合反応で得られたポリマーが保護基を有する場合、該保護基は自体公知の方法により脱離できる。このような方法としては、エステル結合、アミド結合に影響を与えずに保護基を除去することが可能な方法であればいずれを用いてもよいが、具体的には、例えば酸化、還元、酸処理等の方法が挙げられる。
ここにおいて、酸化方法としては例えばヨウ素、重金属(例、水銀塩、銀塩、タリウム塩等)等による酸化が挙げられる。
還元方法としては、例えば触媒(例、パラジウム炭素、パラジウム黒、酸化白金等)を用いる接触還元、液体アンモニウム中でのナトリウムによる還元、ジチオスレイトールによる還元等が挙げられる。
酸処理方法としては、例えば無機塩(例、フッ化水素、臭化水素、塩化水素等)あるいは有機塩(例、トリフルオロ酢酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸等)またはこれらの混合物等による酸処理が挙げられる。酸処理の際、カチオン・スカベンジャー(例、アニソール、フェノール、チオアニソール等)を適宜添加することが好ましい。
【0028】
前記のようにして得られた生体内分解性ポリマーは、徐放性製剤を製造するための基剤として用いることができる。
本発明の基剤に対する生理活性物質の重量比は、例えばポリペプチドの場合、約0.001ないし約40%(w/w)、好ましくは約0.02ないし約30%(w/w)、より好ましくは約0.1ないし約20%(w/w)であり、非ペプチドの場合、約0.01ないし約80%(w/w)、好ましくは約0.1ないし約50%(w/w)である。
【0029】
本発明の徐放性基剤を含む徐放性製剤は、例えば水中乾燥法、相分離法、噴霧乾燥法あるいはこれらに準ずる方法によって製造される。
以下に、徐放性製剤として、例えばマイクロカプセルを製造する場合の製造方法について記述する。ここで、用語「マイクロカプセル」はマイクロスフェア・マイクロカプセル、マイクロパーティクル等を総称するものである。
(1)水中乾燥法(o/w法)
本方法においては、まず生理活性物質の有機溶媒溶液を作製する。本発明の徐放性製剤の製造の際に使用する有機溶媒は、沸点が120℃以下であることが好ましい。該「有機溶媒」としては、例えばハロゲン化炭化水素(例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素など)、アルコール類(例えば、エタノール、メタノールなど)、アセトニトリル、アセトンなどが挙げられ、ジクロロメタン、アセトニトリルなどが好ましく、ジクロロメタンが最も汎用される。これらは適宜の割合で混合して用いてもよい。生体内分解性ポリマーの有機溶媒溶液中の濃度は、生体内分解性ポリマーの分子量、有機溶媒の種類などによって異なるが、一般的には約0.01ないし約80%(w/w)から選ばれ、約0.1ないし約70%(w/w)のときが好ましく、特に約1ないし約60%のときが汎用される。
このようにして得られた生体内分解性ポリマーの有機溶媒溶液中に、生理活性物質を添加し、溶解させる。この際、生理活性物質の添加量は、生理活性物質:生体内分解性ポリマーの重量比の上限が約1:2まで、好ましくは約1:3までとなるようにする。
ついで、このようにして調製された有機溶媒溶液をさらに水相中に加えて、タービン型攪拌機などを用いてo/wエマルションを形成させた後、油相溶媒を蒸発させ、マイクロカプセルを製造する。この際の水相体積は一般的には油相体積の約1倍ないし約10,000倍から選ばれ、好ましくは、約2倍ないし約5,000倍から選ばれる。特に約5倍ないし約2,000倍から選ばれる場合が汎用される。
【0030】
前記外水相中に乳化剤を加えてもよい。該乳化剤としては、一般的に安定なo/wエマルションを形成できるものであれば特に限定されないが、例えばアニオン性界面活性剤(例えば、脂肪酸石鹸、N−アシルアミノ酸、アルキルエーテルカルボン酸塩、アシル化ペプチド、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸の塩ホルマリン重縮合物、メラミンスルホン酸の塩ホルマリン重縮合物、ジアルキルスルホコハク酸エステル塩、アルキルスルホ酢酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、N−アシルメチルタウリン、硫酸化油、高級アルコール硫酸エステル塩、第2級高級アルコール硫酸エステル塩、アルキルエーテル硫酸塩、第2級高級アルコールエトキシサルフェート、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、モノグリサルフェート、脂肪酸アルキロールアマイドの硫酸エステル塩、アルキルエーテルリン酸エステル塩、アルキルリン酸エステル塩など)、非イオン性界面活性剤(例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、単一鎖長ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン2級アルコールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンステロールエーテル、ポリオキシエチレンラノリン誘導体、アルキルフェノールホルマリン縮合物の酸化エチレン誘導体、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアキルエーテル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、脂肪酸モノグリセリド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、しょ糖脂肪酸エステル、脂肪酸アルカノールアミド、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルアミンオキサイドなど)、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体(例えば、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油5,10,20,40,50,60,100E.O.、ポリオキシエチレンヒマシ油など)、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、レシチン、ゼラチン、ヒアルロン酸などが挙げられる。これらは適宜組み合わせて使用してもよい。外水相中の乳化剤の濃度は、例えば約0.001%ないし約20%(w/w)であり、好ましくは約0.01%ないし約10%(w/w)である。特に約0.05%ないし約5%(w/w)の濃度のものが汎用される。
前記のo/w法においては、生理活性物質を生体内分解性ポリマーの有機溶媒溶液中に分散させる方法、すなわちs/o/w法によりマイクロカプセルを製造してもよい。
【0031】
(2)水中乾燥法(w/o/w法)
本方法においては、まず生体内分解性ポリマーの有機溶媒溶液を製造する。このとき用いられる有機溶媒は前記と同様のものが用いられる。この際、生体内分解性ポリマーの有機溶媒溶液中の濃度は、生体内分解性ポリマーの分子量、有機溶媒の種類などによって異なるが、一般的には約0.01ないし約80%(w/w)から選ばれる。好ましくは約0.1ないし約70%(w/w)から選ばれ、特に約1ないし約60%である場合が汎用される。内水相として生理活性物質の水分散液を使用する。生理活性物質の水分散液中の濃度は、例えば約10%(w/v)ないし約90%(w/v)である。前記した生理活性物質の水分散液を生体内分解性ポリマーの有機溶媒溶液に乳化、分散し、w/oエマルションを製造する。乳化操作は、公知の分散方法により行われる。乳化操作は、例えばタービン型撹拌機、ホモジナイザーなどを用いて行われる。この際、内水相と生体内分解性ポリマーの重量比の上限が約1:2まで、好ましくは約1:3までとなるようにする。内水相と生体内分解性ポリマーの有機溶媒溶液との比率は1:1,000(v/v)ないし1:1(v/v)であり、1:100(v/v)ないし1:5(v/v)の場合が好ましい。その比率は、特に1:50(v/v)ないし1:5(v/v)の場合が最も好ましい。
ついで、このようにして製造されたw/oエマルションをさらに水相中に加えて、w/o/wエマルションを製造し、油相溶媒を蒸発させマイクロカプセルを製造する。具体的操作は前記(1)に準ずる。
本発明の徐放性製剤は、例えば前記で得られたマイクロカプセルをそのまま、あるいはこのマイクロカプセルまたは球状、針状、ペレット状、フィルム状、クリーム状の医薬組成物を原料物質として種々の剤型に製剤化し、投与することができる。該剤型としては、例えば非経口剤(例えば、筋肉内、皮下、臓器などへの注射または埋め込み剤;鼻腔、直腸、子宮などへの経粘膜剤など)、経口剤(例えば、硬カプセル剤、軟カプセル剤、顆粒剤、散剤、懸濁剤など)などが挙げられる。
本発明の徐放性製剤に含有される生理活性物質の含有量は、例えばポリペプチドの場合、約0.001ないし約40%(w/w)、好ましくは約0.02ないし約30%(w/w)、より好ましくは約0.1ないし約20%(w/w)であり、非ペプチドの場合、約0.01ないし約80%(w/w)、好ましくは約0.1ないし約50%(w/w)である。
【0032】
本発明の徐放性製剤が注射剤である場合、前記の方法で得られたマイクロカプセルを分散剤(例えば、Tween 80,HCO−60などの界面活性剤;カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ヒアルロン酸ナトリウムなどの多糖類;硫酸プロタミン、ポリエチレングリコールなど)、保存剤(例えば、メチルパラベン、プロピルパラベンなど)、等張化剤(例えば、塩化ナトリウム、マンニトール、ソルビトール、ブドウ糖など)、局所麻酔剤(例えば、塩酸キシロカイン、クロロブタノールなど)などとともに水性懸濁剤とするか、植物油(例えば、ゴマ油、コーン油など)あるいはこれにリン脂質(例えば、レシチンなど)を混合したもの、または中鎖脂肪酸トリグリセリド(例えば、ミグリオール812など)とともに分散して油性懸濁剤として徐放性注射剤とする。
【0033】
本発明の徐放性製剤がマイクロカプセルである場合、その平均粒子径は、約0.1ないし約300μmであり、好ましくは、約1ないし約150μm、さらに好ましくは約2ないし約100μmである。
マイクロカプセルを無菌製剤にするには、製造全工程を無菌にする方法、ガンマ線で滅菌する方法、防腐剤を添加する方法などが挙げられるが、特に限定されない。
【0034】
本発明の徐放性製剤は、哺乳動物(例えば、ヒト、牛、豚、イヌ、ネコ、マウス、ラット、ウサギなど)に対して安全に用いることができる。
本発明の徐放性製剤は、使用する生理活性物質により予防・治療薬としての適用が異なるが、例えば前記の各生理活性物質の適応症等に用いられる。
【0035】
本発明の徐放性製剤の投与量は、生理活性物質の種類と含有量、放出の持続時間、対象疾病、対象動物、性別、年齢などによって種々異なるが、生理活性物質の有効濃度が体内で保持される量であれば特に制限されない。本発明の製剤の投与量としては、一般に知られている生理活性物質の有効量が投与されればよく、例えば成人一人当たり生理活性物質として約0.0001ないし約100mg/kg体重の範囲から適宜選ぶことができる。生理活性物質がエンドセリンアンタゴニストであり、阻血性心疾患等に有効な薬物であるシクロ〔D−α−アスパルチル−3−〔(4−フェニルピペラジン−1−イル)カルボニル〕−L−アラニル−L−α−アスパルチル−D−2−(2−チエニル)グリシル−L−ロイシル−D−トリプトフィル〕2ナトリウム塩を成人の高血圧症等の患者に対して注射で投与する場合、薬効成分1回量として、約1mg/kg体重ないし約20mg/kg体重で用いられる。また、その投与回数は、1日ないし3日あるいは1週間ないし3カ月に1回など状況によって適宜選ぶことができる。
【0036】
【発明の実施の形態】
以下に実施例、実験例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、これらは本発明を限定するものではない。
【実施例】
実施例1
N−(2−ヒドロキシエチル)カルバミン酸ベンジル(東京化成製)0.5114gに酢酸エチル0.6mlを加え40℃で溶解した後、室温で放置した。析出した結晶を0.5μmPTFEフィルターで濾取し、n−ヘキサンで洗浄、五酸化二リン存在下で一夜減圧乾燥した。
この結晶117.5mgを50mlの3口フラスコに入れ乾燥窒素下60ないし64℃で融解したところに、トリエチルアルミニウムの15%トルエン溶液450μlを入れ、続いて直ちにL−ラクチド867.9mgを投入、容器を密栓してフラスコ内の空隙部が完全にオイルに浸るまで沈め、110℃に昇温して4時間重合反応を行った。反応終了後、反応物をクロロホルム10mlに溶かして、塩酸/メタノール1mlを加えて5時間攪拌した。この溶液を0.2μmPTFEフィルターで濾過した後、減圧濃縮してからメタノール50mlへ攪拌下、滴下した。攪拌を1夜継続した。析出したポリマーを遠沈(20000rpm,10℃,30分)した。これをメタノール、ついでジエチルエーテルで洗浄して減圧乾燥し、白色粉体の、末端カルボキシル基に2−(N−ベンジルオキシカルボニル)アミノエタノールがエステル結合したポリ(L−ラクチド)を得た。
GPCによる数平均分子量(以下、Mnと略記する)=4,400、重量平均分子量(以下、Mwと略記する)=6,000。ポリマーの1H−NMR(CDCl3)から、ポリ(L−ラクチド)に由来するシグナルδ=1.58ppm(doublet,CH3)、5.17ppm(quartet,CH)およびフェニルシグナルδ=7.34−7.35ppmを確認した。
【0037】
実施例2
オクチル酸スズは市販品を減圧蒸留(169℃,2.7mmHg)して用いた。50mlの3口フラスコに、L−ラクチド1.2316gとN−(2−ヒドロキシエチル)カルバミン酸ベンジル0.3336gを入れ、100℃に昇温して融解した。乾燥窒素下でオクチル酸スズ50μlを加え、140℃で4時間重合反応を行った。反応終了後、反応物をクロロホルム2mlに溶かして、メタノール20mlに攪拌しながら滴下した。遠沈(20000rpm,10℃,30分)して回収したポリマーを再びクロロホルム2mlで溶かし0.2μmPTFEフィルターで濾過した後、メタノール20mlに滴下した。析出したポリマーを遠沈回収してジエチルエーテルで洗い、減圧乾燥して白色粉体の、末端カルボキシル基に2−(N−ベンジルオキシカルボニル)アミノエタノールがエステル結合したポリ(L−ラクチド)を得た。
GPCによるMn=3,700、Mw=4,500。ポリマーの1H−NMR(CDCl3)から、ポリ(L−ラクチド)に由来するシグナルδ=1.58ppm(doublet,CH3)、5.17ppm(quartet,CH)およびフェニルシグナルδ=7.35ppmを確認した。これらのピーク面積比から末端基定量法に基づいて求めた数平均分子量はMn=2,800。
【0038】
実施例3
50mlの3口フラスコに、DL−ラクチド6.0106gと2−(N−ベンジルオキシカルボニル)アミノエタノール195.55mgを入れ、125℃に昇温して融解した。乾燥窒素下でオクチル酸スズ50μlを加え、150℃で3時間重合反応を行った。反応終了後、反応物にクロロホルム5ml入れ一夜振盪して溶解した後、これをメタノール100mlに攪拌しながら滴下した。遠沈(4,800rpm,5℃,20分)して回収したポリマーをアセトン/エタノールで再沈殿精製した。再度遠沈して回収したポリマーをジオキサン3mlに溶解後、凍結乾燥して、末端カルボキシル基に2−(N−ベンジルオキシカルボニル)アミノエタノールがエステル結合したポリ(DL−ラクチド)を得た。
GPCによるMn=8,200、Mw=14,100。生成ポリマーの1H−NMR(CDCl3)から末端基定量法に基づいて求めた数平均分子量はMn=10,500。
【0039】
実施例4
50mlの3口フラスコに、DL−ラクチド7.7760gと2−(N−ベンジルオキシカルボニル)アミノエタノール126.81mgを入れ、125℃に昇温して融解した。乾燥窒素下でオクチル酸スズ50μlを加え、150℃で3時間重合反応を行った。反応終了後、反応物にアセトン5ml入れ一夜振盪して溶解した後、これをエタノール320mlに攪拌しながら滴下した。デカントで上澄みを捨てて得られた沈殿をアセトン/エタノールで再沈殿精製した。この沈殿をジオキサンに溶解して凍結乾燥し、末端カルボキシル基に2−(N−ベンジルオキシカルボニル)アミノエタノールがエステル結合したポリ(DL−ラクチド)を得た。GPCによるMn=9,100、Mw=21,100。
【0040】
実施例5
実施例3で得られたポリマー233.7mgを酢酸エチル20mlに溶かしてマグネチックスターラーで激しく攪拌しながら、まず窒素を10分バブリングした後にパラジウムカーボン(5%)128mgを加えて、更に10分バブリングを続けた。この後水素バブリングに切り替え、室温で6.5時間反応させた。ついで窒素で反応器中の残存水素を追い出し、反応溶液を0.1μmPTFEフィルターで濾過して触媒を除去した。この濾液を濃縮、減圧乾燥して、末端カルボキシル基に2−アミノエタノールがエステル結合したポリ(DL−ラクチド)を得た。
GPCによるMn=8,000、Mw=15,000。なお、ベンジルオキシカルボニル基の脱離が完全に進行したことは、生成ポリマーの1H−NMR(CDCl3)の7.35ppmのシグナルの消失よって確認した。また、生成ポリマーのクロロホルム溶液をキーセロゲル60シリカゲルプレートにキャピラリーチューブを用いてスポットして乾燥した。これに、ニンヒドリンの0.5%n−ブタノール溶液を噴霧後、ドライヤーで加熱したところ発色した。このことからアミノ基の存在を確認した。
【0041】
実施例6
実施例2で得られたポリマー247.5mgを酢酸エチル20mlに溶かしてマグネチックスターラーで激しく攪拌しながら、まず窒素を10分バブリングした後にパラジウムカーボン(5%)140.3mgを加えて、更に10分バブリングを続けた。この後水素バブリングに切り替え、室温で8.5時間反応させた。ついで窒素で反応器中の残存水素を追い出し、反応溶液を0.1μmPTFEフィルターで濾過して触媒を除去した。この濾液を濃縮、減圧乾燥して、末端カルボキシル基に2−アミノエタノールがエステル結合したポリ(L−ラクチド)を得た。
GPCによるMn=3,200、Mw=4,100。なお、ベンジルオキシカルボニル基の脱離が完全に進行したことは、生成ポリマーの1H−NMR(CDCl3)の7.35ppmのシグナルの消失よって確認した。また、生成ポリマーのクロロホルム溶液をキーセロゲル60シリカゲルプレートにキャピラリーチューブを用いてスポットして乾燥した。これに、ニンヒドリンの0.5%n−ブタノール溶液を噴霧後、ドライヤーで加熱したところ発色し、このことからアミノ基の存在を確認した。
【0042】
実施例7
50mlの3口フラスコに、DL−ラクチド12.2207gと2−(N−ベンジルオキシカルボニル)アミノエタノール477.1mgを入れ、125℃に昇温して融解した。乾燥窒素下でオクチル酸スズ70μlを加え、150℃で3時間重合反応を行った。反応終了後、反応物にアセトン10mlを入れ一夜振盪して溶解した後、これを冷エタノール400mlに攪拌しながら滴下した。デカントで上澄みを捨てて得られた沈殿をアセトン/エタノールで再沈殿精製した。沈殿の一部を取り、減圧乾燥してGPC、1H−NMR(CDCl3)を測定した。GPCによりMn=6,300、Mw=11,600。生成ポリマーの1H−NMR(CDCl3)から末端基定量法に基づいて求めた数平均分子量はMn=7,700。
残りの沈殿すべてを酢酸エチル20mlに溶かして、パラジウムカーボン2.5417g、反応8時間の条件で実施例5の方法に準じて反応を行い、末端カルボキシル基に2−アミノエタノールがエステル結合したポリ(DL−ラクチド)を得た。
GPCによるMn=5,800、Mw=11,900。なお、ベンジルオキシカルボニル基の脱離が完全に進行したことは、生成ポリマーの1H−NMR(CDCl3)の7.35ppmのシグナルの消失によって確認した。また、生成ポリマーのクロロホルム溶液をキーセロゲル60シリカゲルプレートにキャピラリーチューブを用いてスポットして乾燥した。これに、ニンヒドリンの0.5%n−ブタノール溶液を噴霧後、ドライヤーで加熱したところ発色し、このことからアミノ基の存在を確認した。
【0043】
実施例8
2−(N−ベンジルオキシカルボニル)アミノエタノール0.5090gを50mlの3口フラスコに入れ、乾燥窒素下75℃で融解したところに、トリエチルアルミニウムの15%トルエン溶液2mlを入れた。続いて直ちにL−ラクチド 5.2160gを投入、容器を密栓してフラスコ内の空隙部が完全にオイルに浸るまで沈め、150℃に昇温して30分間重合反応を行った。反応終了後、反応物をクロロホルム10mlに溶かした(溶液A)。このうち2ml分取したものに塩酸/メタノールを加えて5時間攪拌した。この溶液をクロロホルム/エタノールで2回再沈殿精製して、末端カルボキシル基に2−(N−ベンジルオキシカルボニル)アミノエタノールがエステル結合したポリ(L−ラクチド)を得た。
GPCによるMn=5,200、Mw=7,300。ポリマーの1H−NMR(CDCl3)から末端基定量法に基づいて求めた数平均分子量はMn=8,500。
【0044】
実施例9
実施例8の溶液Aから2ml分取してクロロホルム4ml加えて希釈したものに無水酢酸1ml加えて6.5時間還留した。反応液を濃縮した後、クロロホルム/エタノールで3回再沈殿精製して、ヒドロキシ末端がアセチル化され、さらに末端カルボキシル基に2−(N−ベンジルオキシカルボニル)アミノエタノールがエステル結合したポリ(L−ラクチド)を得た。
GPCによるMn=5,500、Mw=7,800。ポリマーの1H−NMR(CDCl3)から、ポリ(L−ラクチド)に由来するシグナルδ=1.58ppm(doublet,CH3)、5.17ppm(quartet,CH)およびフェニルシグナルδ=7.35ppm、末端アセチルのメチルプロトンδ=2.13ppm(singlet)を確認した。ポリマーの1H−NMR(CDCl3)から末端基定量法に基づいて求めた数平均分子量はMn=7,600。
【0045】
実施例10
3口フラスコに、2−(N−ベンジルオキシカルボニル)アミノエタノール1.0642g、DL−ラクチド23.7392g、グリコリド6.2648gを入れて、125℃で溶融した。これに乾燥窒素下でオクチル酸スズ50μl加えて密栓し、フラスコ内の空隙部が完全にオイルに浸るまで沈め、150℃に昇温して3時間重合反応を行った。反応終了後、反応物をアセトン34mlで溶解してエタノール1500mlに攪拌下混合してポリマーを析出させた。上澄みをデカントで除去し、アセトン30mlを加えて沈殿を溶解した。この溶液を再びエタノール1500mlに攪拌下混合した。回収したポリマーを減圧乾燥した。
GPCによるMn=6,500、Mw=14,500。生成ポリマーの1H−NMR(CDCl3)からL/G(モル比)=75.3/24.7。また末端基定量法に基づいて求めた数平均分子量はMn=7,100。
【0046】
実施例11
フェノールレッド(和光純薬製)2mgを水0.05mlに懸濁し、実施例7で得られた、塩基性基を有するポリマー1gをジクロロメタン1.2mlに溶解した液に加え、小型ホモジナイザー(ポリトロン、キネマチカ社製、スイス)で60秒混合してW/O型エマルションを得た。このエマルションを、あらかじめ17℃に冷却しておいた0.1%(w/v)ポリビニルアルコール(ゴーセノールEG−40,日本合成化学工業製)水溶液400ml中に注入し小型ホモジナイザー(オートホモミキサー、TOKUSHU KIKA社製)で7000rpmに攪拌してW/O/W型エマルションとした。この後、W/O/W型エマルションを室温で3時間攪拌しながらジクロロメタンの揮散によって内部のW/O型エマルションを固化させた後、この懸濁液を125μmメッシュで篩下、ついで遠心分離機で捕集した。これを再び水に分散させて再度遠心分離を行い、遊離薬物を洗浄した除去した。
捕集したマイクロカプセルは凍結乾燥によって脱溶媒および脱水をより完全とした後、粉末として得られた(ロットNo.A)。
比較のために、ポリマーを重量平均分子量12,000のPLA(和光純薬製)に換えて前記と同様の方法によりマイクロカプセルを調製した(ロットNo.B)。
【0047】
実験例1(放出試験)
マイクロカプセルの各20mgを10mlバイアルに計り取り、0.05%(w/v)Tween80(和光純薬製)を含むダルベッコりん酸緩衝液(Ca,Mg不含、和光純薬製)10mlを加えて密栓した。これを37℃、120spmで振盪し、所定時間後この懸濁液をフィルター濾過し、濾液の558nm紫外吸収から定量した。
両マイクロカプセルの仕込み含量に対する実現含量の百分率(トラップ率)および放出試験1日後のマイクロカプセル中の薬物含量の初期含量に対する百分率(残存率)を表1に示す。
【表1】
Figure 0004317599
〔表1〕の結果から、本発明のマイクロカプセルは、スルホン基を有するフェノールレッドをほぼ完全にトラップしている。また、初期バーストに関しても、末端にカルボキシル基を有するPLAを用いたマイクロカプセルのそれに比べ飛躍的に小さくなっており、徐放性製剤用基剤として優れていることがわかる。
【0048】
実施例12
エンドセリンアンタゴニストであるシクロ〔D−α−アスパルチル−3−〔(4−フェニルピペラジン−1−イル)カルボニル〕−L−アラニル−L−α−アスパルチル−D−2−(2−チエニル)グリシル−L−ロイシル−D−トリプトフィル〕2ナトリウム塩:Cyclo〔D-α-aspartyl-3-〔(4-phenylpiperazin-1-yl)carbonyl〕-L-alanyl-L-α-aspartyl-D-2-(2-thienyl)glycyl-L-leucyl-D-tryptophyl〕disodium salt(化合物A)200mgを水0.2mlに懸濁し、実施例7で得られた塩基性基を有するポリマー1.8gをジクロロメタン2mlに溶解した液に加え、小型ホモジナイザー(ポリトロン、キネマチカ社製)で60秒混合してW/O型エマルションを得た。このエマルションを、0.1%(v/w)ポリビニルアルコール(ゴーセノールEG−40,日本合成化学工業(製)水溶液400ml中に注入し小型ホモジナイザー(オートホモミキサー、TOKUSHU KIKA社製)で7000rpmで攪拌してW/O/W型エマルションとした。この後、W/O/W型エマルションを室温で3時間攪拌しながらジクロロメタンの揮散によって内部のW/O型エマルションを固化させた後、この懸濁液を125μmメッシュで篩下、ついで遠心分離機で捕集した。これを再び水に分散させて再度遠心分離を行い、遊離薬物を洗浄し、除去した。
捕集したマイクロカプセルは凍結乾燥によって脱溶媒および脱水をより完全とした後、粉末として得られた(ロットNo.C)。
比較のために、前記ポリマーを分子量12,000のポリラクチド(PLA)に換えて上記方法によりマイクロカプセルを調製した(ロットNo.D)。
【0049】
実験例2(放出試験)
マイクロカプセルの各20mgを10mlバイアルに計り取り、0.05%(w/v)Tween80(和光純薬製)を含むダルベッコりん酸緩衝液(Ca,Mg不含、和光純薬製)10mlを加えて密栓した。これを37℃、120spmで振盪し、所定時間後この懸濁液の一部を採取しフィルター濾過して、濾液のHPLC測定から化合物Aを定量した。
両マイクロカプセルの化合物Aの仕込み含量に対する実現含量の百分率(トラップ率)および放出試験1日後のマイクロカプセル中の薬物含量の初期含量に対する百分率(残存率)を〔表2〕に示す。
【表2】
Figure 0004317599
〔表2〕から本発明のマイクロカプセルは、初期バーストをほぼ完全に阻止した。
更に、同試験系での4週までの残存率の経時変化を〔表3〕に示す。
【表3】
Figure 0004317599
〔表3〕から、本発明のマイクロカプセルは、2週まで放出を阻止しており、4週で薬物の放出を確認した。これは、基剤に用いたポリマーの加水分解で新たにカルボキシル基が生成することによって、カルボキシル基を有する薬物と塩基性基を有するポリマーの結合力が弱められ、薬物が放出されたと考えられる。このことから、塩基性基を有するポリマーの生分解速度を共重合比または分子量で制御すれば、任意の放出期間を設計できることは明らかである。
【0050】
実施例13
遊離のヒドロキサム酸基を有する1,1−ビス(4−メトキシフェニル)−1−シアノ−ヘプタンヒドロキサム酸:1,1-Bis(4-methoxyphenyl)-1-cyano-heptanehydroxamic acid(化合物B)100mgと実施例7で得られた、塩基性基を有するポリマー900mgとをジクロロメタン1mlに溶解した。5%(w/v)マンニトールを含む0.1%(w/v)ポリビニルアルコール(ゴーセノールEG−40,日本合成化学工業製)水溶液200ml中に、小型ホモジナイザー(オートホモミキサー、TOKUSHU KIKA社製)で7000rpmで攪拌しながら、この溶液を注入してO/W型エマルションとした。この後、O/W型エマルションを室温で3時間攪拌しながらジクロロメタンの揮散によって内部のエマルションを固化させた後、この懸濁液を75μmメッシュで篩下、ついで遠心分離機で捕集した。これを再び水に分散させて再度遠心分離を行い、遊離薬物を洗浄し除去した。この洗浄操作を2回行った。
捕集したマイクロカプセルに50mgのマンニトールを加えてから、凍結乾燥によって脱溶媒および脱水をより完全とした後、粉末として得られた(ロットNo.E)。
比較のために、用いるポリマーを分子量12,000のPLA(和光純薬製)に換えて上記と同様な方法によりマイクロカプセルを調製した(ロットNo.F)。
【0051】
実験例3(放出試験)
マイクロカプセルの各20mgを10mlバイアルに計り取り、0.05%(w/v)Tween80(和光純薬製)と5%(w/v)G2−β−シクロデキストリン(塩水港精糖製)とを含むダルベッコりん酸緩衝液(Ca,Mg不含、和光純薬製)10mlを加えて密栓した。これを37℃、120spmで振盪し、所定時間後この懸濁液の一部を採取しフィルター濾過して、濾液のHPLC測定から化合物Bを定量した。
両マイクロカプセルの化合物Bの含量および仕込み含量に対する実現含量の百分率(トラップ率)を〔表4〕に示す。また、4週までの放出試験におけるマイクロカプセル中の薬物含量の初期含量に対する百分率(残存率)を〔表5〕に示す。
【表4】
Figure 0004317599
【表5】
Figure 0004317599
本発明のマイクロカプセルでは、従来のマイクロカプセルに比べ、明らかに初期放出が抑制され、ヒドロキサム酸基を有する薬物の優れた徐放効果が得られている。
【0052】
実験例4(in vivo 放出試験)
実施例13で得られた化合物B封入マイクロカプセル(ロットNo.E)230.38mgを、マイクロカプセル投与用分散媒(蒸留水1000mlに、マンニトール50g、カルボキシルメチルセルロースナトリウム0.5g、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエート2g(試薬は全て和光純薬製)を溶解させ、120℃20分間加圧滅菌したもの)11mlを加えて懸濁し、エーテル麻酔下剃毛したラット(日本クレア、SD雄姓、7週齢)の頚背部皮下に1匹当たり0.5ml(化合物B:0.905mg/rat、マイクロカプセル末10.47mg/ラットに相当)ずつ投与した。投与にはテルモシリンジおよびテルモ注射針ネオラスを用いた。同時に投与液0.5mlを投与時と同様、シリンジに吸引後、ガラス遠沈管に採取した。
イニシャルの場合は、アセトニトリル10mlと20mMリン酸緩衝液(pH3)10mlを加えたものを、皮下から採取したマイクロカプセルの場合は、アセトニトリル10mlと20mMリン酸緩衝液(pH3)4mlを加え小型ホモジナイザー(ポリトロン、キネマチカ製)で混合後、20mMリン酸緩衝液(pH3)3mlで刃を2回洗浄した洗液を加えたものを30分間振とう(レシプロシェーカーSR−2s、タイテック製)し、3000rpmで10分間遠心(小型冷却遠心機CF7D形、日立工機製)し、上清をフィルター(エキクロディスク13CR0.45μmPTFE、ゲルマンサイエンス製)ろ過した。これをHPLCにより分析した。HPLCは日立製(L-5020 Culumm Oven, L-4250 UV-VIS Detector, L-6300 Intelligent Pump, AS-4000 Intelligent Auto Sampler, D-2500 Chromato Integrator)のものを用い、以下の条件で分析を行った。
カラム:Inertsil ODS-3(GL Sciences Inc.) 4.6mmID x 150mmL
移動相:20mMリン酸緩衝液(pH3)/アセトニトリル=50/50
流 速:1.0ml/分
検出波長:254nm
温 度:40℃
注入試料量:20μl
比較のために、実施例13に記載したロットNo.Fと同処方で作成したマイクロカプセル(化合物B含有率9.72%、トラップ率108.5%)についても1匹当たりの投与薬物量を同じにして(マイクロカプセル末10.63mg/ラット)、in vivo 放出性を調べた。ロットNo.EおよびロットNo.Fのラット皮下における残存率推移を〔表6〕に示す。
【表6】
Figure 0004317599
本発明のマイクロカプセルでは、従来の基剤を用いたマイクロカプセルと比較して、in vivo においても明らかに放出制御効果が増大している。
【0053】
実施例14
50ml3口フラスコに、2−(N−ベンジルオキシカルボニル)アミノエタノール1.9522gとDL−ラクチド15.0040gを入れ、125℃に昇温して融解した。乾燥窒素下でオクチル酸スズのトルエン溶液(152.5mg/ml)110μlを加え8時間反応した。反応物をクロロホルム110mlで溶解し、水相のpHが6になるまで有機相の水洗を繰り返した。洗浄した有機相を濃縮乾固、次いで真空乾燥して、末端カルボキシル基に2−(N−ベンジルオキシカルボニル)アミノエタノールがエステル結合したポリ(DL−ラクチド)15.5673gを得た。GPCによるMn=1,800、Mw=2,400。ポリマーの1H−NMR(CDCl3)から末端基定量法に基づいて求めた数平均分子量は1,600。
【0054】
実施例15
100ml3口フラスコにN−tert−ブトキシカルボニルアミノエタノール0.3384gを入れ、乾燥窒素下にトルエン5mlを加えて溶解した。ドライアイス/アセトンで冷却しながら、等モルのトリエチルアルミニウムを含むトルエン溶液を加えた。80℃に昇温後これに、DL−ラクチド3.9445gを1,4−ジオキサン8mlに溶解したものを加えた。90℃で4日間反応させた後、一旦溶媒留去し、クロロホルム10mlで再溶解した。1N塩酸30mlを加えて撹拌し、分液後、水相のpHが6になるまで有機相の水洗を繰り返した。洗浄した有機相を濃縮乾固、次いで真空乾燥して、末端カルボキシル基にN−tert−ブトキシカルボニルアミノエタノールがエステル結合したポリ(DL−ラクチド)を得た。GPCによるMn=3,600、Mw=8,200。ポリマーの1H−NMR(CDCl3)でtert−ブトキシ基のシグナルを確認した。
【0055】
実施例16
実施例15で得られたポリマー2.2gをクロロホルム8mlに溶かして氷冷し、これに無水酢酸328μl、トリエチルアミン481μl、ジメチルアミノピリジン17mgを加えて24時間室温で反応させた。反応物をクロロホルムで希釈して水洗分液を5回行った。この有機相を濃縮乾固、次いで真空乾燥して、ヒドロキシル末端がアセチル化され、さらに末端カルボキシル基にN−tert−ブトキシカルボニルアミノエタノールがエステル結合したポリ(DL−ラクチド)を得た。ポリマーの1H−NMR(CDCl3)でアセチル基のシグナルを確認した。GPCによるMn=2,600、Mw=5,800。
【0056】
実施例17
実施例16で得られたポリマー1.85gをトリフルオロ酢酸4mlに溶かして室温で30分撹拌した後、反応物を水に滴下してポリマーを析出回収した。回収ポリマーをクロロホルムに溶かして炭酸水素ナトリウムの飽和水溶液で洗浄分液、さらに水洗分液した。この有機相を濃縮乾固、次いで真空乾燥して、ヒドロキシ末端がアセチル化され、さらに末端カルボキシル基に2-アミノエタノールがエステル結合したポリ(DL−ラクチド)を得た。GPCによるMn=2,600、Mw=5,800。
このポリマーをフェニルイシチオシアネートでラベルしてアミノ基の存在を確認した。
【0057】
実施例18
50ml3口フラスコにN−tert−ブトキシカルボニルアミノエタノール0.3224gを入れ、乾燥窒素下にトルエン1mlを加えて溶解した。ドライアイス/アセトンで冷却しながら、等モルのトリエチルアルミニウムを含むトルエン溶液を加えた。室温に戻してDL-ラクチド3.8778gを加え、130℃で1時間反応させた。反応物をジクロロメタン80mlで溶かした後0.1N塩酸60mlを加えて撹拌し、分液後、水相のpHが6になるまで有機相の水洗を繰り返した。洗浄した有機相を濃縮乾固、次いで真空乾燥して、末端カルボキシル基にN−tert−ブトキシカルボニルアミノエタノールがエステル結合したポリ(DL−ラクチド)を得た。GPCによるMn=4,400、Mw=9,600。
【0058】
実施例19
実施例18で得られたポリマー2gをトリフルオロ酢酸4mlに溶かして室温で30分撹拌した後、反応物を水に滴下してポリマーを析出回収した。回収したポリマーをジクロロメタンに溶かして炭酸水素ナトリウムの飽和水溶液で洗浄分液、さらに水洗分液した。この有機相を濃縮乾固、次いで真空乾燥して、末端カルボキシル基に2-アミノエタノールがエステル結合したポリ(DL−ラクチド)を得た。
【0059】
実施例20
N,N'−ビス(ベンジルオキシカルボニル)−1,3−ジアミノプロパン−2−オール1.0429g、DL−ラクチド12.6172g、グリコリド3.3869gを実施例10の方法に準じて重合反応を行い、末端カルボキシル基にN,N'−ビス(ベンジルオキシカルボニル)−1,3−ジアミノプロパン−2−オールがエステル結合したポリ(DL−ラクチド−co−グリコリド)を得た。GPCによるMn=7,300、Mw=14,900。生成ポリマーの1H−NMR(CDCl3)からL/G(モル比)=74.6/25.4、また末端基定量法に基づいて求めた数平均分子量はMn=10,800。
【0060】
実施例21
N,N'−ビス(ベンジルオキシカルボニル)−1,3−ジアミノプロパン−2−オール1.6744g、DL−ラクチド14.0174gを実施例10の方法に準じて重合反応を行い、末端カルボキシル基にN,N'−ビス(ベンジルオキシカルボニル)−1,3−ジアミノプロパン−2−オールがエステル結合したポリ(DL−ラクチド)を得た。GPCによるMn=6,200、Mw=10,600。ポリマーの1H−NMR(CDCl3)から末端基定量法に基づいて求めた数平均分子量はMn=4,600。
このポリマー4.0404gを実施例6に準じて脱保護反応に付し、末端カルボキシル基に1,3−ジアミノプロパン−2−オールがエステル結合したポリ(DL−ラクチド)を得た。ポリマーの1H−NMR(CDCl3)から算出した脱保護率は97%であった。
【0061】
実施例22
乳酸−グリコール酸共重合体[乳酸/グリコール酸=75/25(モル%)、重量平均分子量12450、数平均分子量4926、和光純薬工業製]8.839gをジメチルホルムアミド25mlに溶解した液に氷冷下でトリエチルアミン0.396mlを加え、続いてドライアイス/アセトンで−20℃に冷却したイソブチルクロルホルメート0.343mlを滴下し、−10℃〜−15℃に保って10分間撹拌した。他方tert−ブチル−N−(6−アミノヘキシル)カルバメート・塩酸塩0.5gをジメチルホルムアミド10mlに溶解し、さらにトリエチルアミン0.271mlを加えた液に前記の活性化乳酸−グリコール酸共重合体/ジメチルホルムアミド溶液を氷冷下で滴下、その後室温で90分間撹拌した。反応液を減圧濃縮し、残渣に5%クエン酸150mlを加えて生じた沈殿物をクロロホルム40mlに溶解して減圧濃縮した。得られた油状物質全量を氷冷下トリフルオロ酢酸20mlに溶解し、そのまま氷冷下で2.5時間撹拌してtert−ブトキシカルボニル基を脱離した。反応液を冷エーテル200ml中へ滴下して生じた沈殿物をジメチルホルムアミド20mlに溶解、減圧濃縮した後、5%炭酸水素ナトリウム150mlを加えた。生じた沈殿物をろ取して5%炭酸水素ナトリウム、精製水でそれぞれ固体洗浄した後に精製水約30mlに分散して凍結乾燥して末端カルボキシル基にヘキシルジアミンがアミド結合した乳酸−グリコール酸共重合体を得た(収量4.79g)。GPCにより得られた重量平均分子量および数平均分子量は次のとおり。Mw=11644、Mn=5057。アミノ基に付加するフェニルイソチオシアネートを生成ポリマーのクロロホルム溶液にトリエチルアミン存在下で加えた溶液を検出波長254nmのGPCで分析したところ、高分子量域に原料に用いた乳酸−グリコール酸共重合体の測定時には現れないピークが検出された。このことからアミノ基の存在を確認した。
【0062】
【発明の効果】
本発明の徐放製剤においては、塩基性基を有する生体内分解性ポリマーを基剤として用いることによって、酸性基を有する生理活性物質の取り込み率の向上、投与後初期の多量の放出(バースト)抑制および長期にわたる一定した徐放性などの効果が得られるため、酸性薬物の徐放性製剤用基剤として非常に有用である。

Claims (12)

  1. 式:Poly−CO−NHR’−X’〔式中、Polyは乳酸及びグリコール酸のホモポリマーならびにコポリマーからなる群より選ばれるポリマーの主鎖を、R’は2価の炭化水素基を、X’はそれぞれ保護されていてもよいアミノ、アミジノ、環状アミノまたは核酸塩基をそれぞれ示す〕または
    式:Poly−COO−R''−X’〔式中、Polyは乳酸及びグリコール酸のホモポリマーならびにコポリマーからなる群より選ばれるポリマーの主鎖を、R''はC 1-4 アルキル基で置換されていてもよいエチレン基を、X’はそれぞれ保護されていてもよい、アミノ、アミジノ、環状アミノまたは核酸塩基をそれぞれ示す。〕で表わされる生体内分解性ポリマーおよび酸性基を有する生理活性物質を含有してなる徐放性製剤。
  2. 生体内分解性ポリマーが保護されていてもよい塩基性基を有するエステル化またはアミド化されたカルボキシル基を末端に有する請求項1記載の徐放性製剤用基剤。
  3. 乳酸及びグリコール酸のホモポリマーもしくはコポリマーの重量平均分子量が2000以上である請求項1記載の徐放性製剤。
  4. 乳酸/グリコール酸の組成比が100/0〜30/70(モル/モル%)である請求項1記載の徐放性製剤。
  5. 塩基性基が(i)環状アミノ基、(ii)核酸塩基あるいは(iii)それぞれ置換されていてもよいアミノ基、アミジノ基、グアニジノ基、アンモニウム基、環状アミノ基および核酸塩基から選ばれた1ないし5個の置換基を有する炭化水素基である請求項1記載の徐放性製剤。
  6. 式:Poly−CO−NHR’−X’〔式中、Polyは乳酸及びグリコール酸のホモポリマーならびにコポリマーからなる群より選ばれる、乳酸/グリコール酸の組成比が100/0〜30/70(モル/モル%)であるポリマーの主鎖を、R’は炭素数1〜15の2価の炭化水素基を、X’はそれぞれ保護されていてもよいアミノ、アミジノ、環状アミノまたは核酸塩基をそれぞれ示す〕で表わされる、重量平均分子量が2,000ないし70,000である生体内分解性ポリマー。
  7. X’が保護されていてもよいアミノ基である請求項6記載の生体内分解性ポリマー。
  8. 式:Poly−COO−R''−X’〔式中、Polyは乳酸及びグリコール酸のホモポリマーならびにコポリマーからなる群より選ばれる、乳酸/グリコール酸の組成比が100/0〜30/70(モル/モル%)であるポリマーの主鎖を、R''はC1-4アルキル基で置換されていてもよいエチレン基を、X’はそれぞれ保護されていてもよい、アミノ、アミジノ、環状アミノまたは核酸塩基をそれぞれ示す。〕で表わされる、重量平均分子量が2,000ないし70,000である生体内分解性ポリマー。
  9. 式:H2N−R'−X'〔式中、各記号は請求項6の記載と同意義を示す。〕で表される保護された塩基性基を有する化合物と式:Poly−COOH〔式中、各記号は請求項6の記載と同意義を示す。〕で表わされるポリマーまたはその活性誘導体とを反応させることを特徴とする請求項6記載の生体内分解性ポリマーの製造法。
  10. 式:Poly−CO−NHR’−X’〔式中、Polyは乳酸及びグリコール酸のホモポリマーならびにコポリマーからなる群より選ばれるポリマーの主鎖を、R’は2価の炭化水素基を、X’はそれぞれ保護されていてもよいアミノ、アミジノ、環状アミノまたは核酸塩基をそれぞれ示す〕または
    式:Poly−COO−R''−X’〔式中、Polyは乳酸及びグリコール酸のホモポリマーならびにコポリマーからなる群より選ばれるポリマーの主鎖を、R''はC 1-4 アルキル基で置換されていてもよいエチレン基を、X’はそれぞれ保護されていてもよい、アミノ、アミジノ、環状アミノまたは核酸塩基をそれぞれ示す。〕で表わされる生体内分解性ポリマーを基剤として用いることを特徴とする酸性基を有する生理活性物質の徐放性製剤の徐放性改善方法。
  11. 式:Poly−CO−NHR’−X’〔式中、Polyは乳酸及びグリコール酸のホモポリマーならびにコポリマーからなる群より選ばれるポリマーの主鎖を、R’は2価の炭化水素基を、X’はそれぞれ保護されていてもよいアミノ、アミジノ、環状アミノまたは核酸塩基をそれぞれ示す〕または
    式:Poly−COO−R''−X’〔式中、Polyは乳酸及びグリコール酸のホモポリマーならびにコポリマーからなる群より選ばれるポリマーの主鎖を、R''はC 1-4 アルキル基で置換されていてもよいエチレン基を、X’はそれぞれ保護されていてもよい、アミノ、アミジノ、環状アミノまたは核酸塩基をそれぞれ示す。〕で表わされる生体内分解性ポリマーを含有してなる酸性基を有する生理活性物質のための徐放性製剤用基剤。
  12. 式:Poly−CO−NHR’−X’〔式中、Polyは乳酸及びグリコール酸のホモポリマーならびにコポリマーからなる群より選ばれるポリマーの主鎖を、R’は2価の炭化水素基を、X’はそれぞれ保護されていてもよいアミノ、アミジノ、環状アミノまたは核酸塩基をそれぞれ示す〕または
    式:Poly−COO−R''−X’〔式中、Polyは乳酸及びグリコール酸のホモポリマーならびにコポリマーからなる群より選ばれるポリマーの主鎖を、R''はC 1-4 アルキル基で置換されていてもよいエチレン基を、X’はそれぞれ保護されていてもよい、アミノ、アミジノ、環状アミノまたは核酸塩基をそれぞれ示す。〕で表わされる生体内分解性ポリマーの、酸性基を有する生理活性物質の徐放性製剤用基剤の製造のための使用。
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