JP4315603B2 - 炎症性腸疾患診断剤 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、炎症性腸疾患診断剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
炎症性腸疾患とは潰瘍性大腸炎やCrohn病などを含む、炎症性の腸および消化管の疾患である。
潰瘍性大腸炎とは、主として粘膜を侵し、しばしば、びらんや潰瘍を形成する大腸の原因不明のびまん性非特異性炎症である。潰瘍性大腸炎は、a) 臨床症状、b) 内視鏡検査または注腸X線検査、c) 生検組織学的検査が診断基準を満たし、他の疾患が除外されることによって診断される。
しかしながら、内視鏡検査は被験者の負担が非常に大きいため、繰返し試験として用いることのできる検査法ではない。さらに、注腸X線検査はX線被曝の問題もある。また、注腸X線検査は症状を増悪させる可能性がある。
Crohn病とは、消化管に浮腫、線維(筋)症や潰瘍を伴う肉芽腫性炎症病変が生じる疾患である。Crohn病は、a) 臨床症状、b) 臨床検査、c) 内視鏡検査またはX線検査、d) 生検組織学的検査が診断基準を満たすことによって診断される。
しかしながら、内視鏡検査は被験者の負担が非常に大きいため、繰返し試験として用いることのできる検査法ではない。さらに、X線検査はX線被曝の問題もある。
かかる状況下、被験者への負担が小さく、かつ結果が短時間で得られる炎症性腸疾患の診断法の開発が望まれるところである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明は、被験者への負担が小さく、かつ正確な検査結果を短時間で得ることができる炎症性腸疾患診断剤を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、13Cで標識された、カルボン酸の一種であるアミノ酸を潰瘍性大腸炎ラットに経肛門投与し、投与後の呼気CO2中の13C濃度および血中アミノ酸濃度または増加率を測定することにより、潰瘍性大腸炎を診断することができることを見出し、本発明を完成するに到った。
本発明の要旨は以下の通りである。
【0005】
〔1〕カルボン酸若しくはその誘導体または薬剤学的に許容できるその塩を含む炎症性腸疾患診断剤。
〔2〕カルボン酸がアミノ酸である〔1〕記載の炎症性腸疾患診断剤。
〔3〕アミノ酸が、グルタミン、グルタミン酸、フェニルアラニンおよびそれらの組み合わせから成る群より選択される〔2〕記載の炎症性腸疾患診断剤。
〔4〕カルボン酸が脂肪酸である〔1〕記載の炎症性腸疾患診断剤。
〔5〕脂肪酸が酪酸である〔4〕記載の炎症性腸疾患診断剤。
〔6〕経肛門投与用製剤である〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の炎症性腸疾患診断剤。
〔7〕投与後の血液中のカルボン酸若しくはその誘導体またはその代謝物の量の測定に用いられる〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載の炎症性腸疾患診断剤。
〔8〕カルボン酸またはその誘導体が13Cまたは14Cで標識されている〔1〕〜〔7〕のいずれかに記載の炎症性腸疾患診断剤。
〔9〕投与後の呼気中の13CO2量または14CO2量の測定に用いられる〔8〕記載の炎症性腸疾患診断剤。
以下、本発明を詳細に説明する。
【0006】
【発明の実施の形態】
本明細書において、「炎症性腸疾患」とは、潰瘍性大腸炎やCrohn病などを含む、炎症性の腸および消化管の疾患である。
「潰瘍性大腸炎」とは、主として粘膜を侵し、しばしば、びらんや潰瘍を形成する大腸の原因不明のびまん性非特異性炎症である。
「Crohn病」とは、消化管に浮腫、線維(筋)症や潰瘍を伴う肉芽腫性炎症病変が生じる疾患である。
本明細書において、「カルボン酸」とは、カルボキシル基を有する化合物をいう。カルボン酸には、アミノ酸、脂肪酸、芳香族カルボン酸なども含まれる。
「アミノ酸」とは、分子内にカルボキシル基とアミノ基を有する化合物をいい、これには、プロリン、ヒドロキシプロリンのようなイミノ酸、分子内にラクタム構造を有する化合物も含まれるものとする。アミノ酸は、L−アミノ酸、D−アミノ酸またはDL‐アミノ酸のいずれであってもよい。
「脂肪酸」とは、脂肪族カルボン酸をいう。
「芳香族カルボン酸」とは、芳香族炭化水素の側鎖にカルボキシル基が結合している酸をいう。
また、本明細書において、「カルボン酸の誘導体」とは、カルボン酸分子内の小部分の化学変化によって生成する化合物をいい、これには、エステル、ラクトン、オルトエステル、無水物、アミド、イミド、ラクタムの他、カルボキシル基が保護されているカルボン酸も含まれるものとする。
本明細書において、「代謝物」とは、カルボン酸若しくはその誘導体または薬剤学的に許容できるその塩を生体に投与した後、その化合物が代謝される過程で生成する化合物をいう。
本明細書において、「13Cまたは14Cで標識」とは、カルボン酸またはその誘導体中の少なくとも1個の炭素原子が13Cまたは14C原子で置き換えられていることにより、カルボン酸またはその誘導体分子中の13Cまたは14C原子の存在比が天然存在比より高くなっているものをいう。
【0007】
本発明の炎症性腸疾患診断剤は、カルボン酸若しくはその誘導体または薬剤学的に許容できるその塩を含む。カルボン酸はアミノ酸または脂肪酸であってもよい。アミノ酸としてはグルタミン、グルタミン酸、フェニルアラニンが好ましいが、これに限定されることはない。また、脂肪酸としては酪酸が好ましいが、これに限定されることはない。カルボン酸またはその誘導体は、13Cまたは14Cで標識されていてもよい。13Cまたは14C原子は、カルボン酸またはその誘導体の主鎖または側鎖中に存在してもよいし、カルボン酸またはその誘導体が保護されている場合には、保護基中に存在してもよい。カルボン酸中のカルボキシル基の保護基としては、低級アルキル基、ベンジル基、低級アルカノイルオキシアルキル基などを例示することができる。カルボン酸がアミノ酸である場合、カルボキシル基の保護基としては、メチル基、エチル基、ベンジル基、t−ブチル基、p−ニトロベンジル基、N'−置換ヒドラジド基などを挙げることができ、リジン、オルニチン残基中のω−アミノ基の保護基としては、ベンジルオキシカルボニル基、p−トルエンスルホニル基、2−クロロベンジルオキシカルボニル基、BOC基などを挙げることができ、アルギニン残基中のグアニジノ基の保護基としては、ニトロ基、メトキシベンジルオキシカルボニル基、p−トルエンスルホニル基などを挙げることができ、セリン残基、チロシン残基等の水酸基を含むアミノ酸残基中の水酸基の保護基としては、ベンジル基、t−ブチル基などを挙げることができ、ヒスチジン残基中のイミダゾール基の保護基としては、ベンジルオキシカルボニル基、ベンジルオキシメチル基などを挙げることができ、システイン残基中のメルカプト基の保護基としては、ベンジル基、トリチル基などを挙げることができ、メチオニン残基中のチオエーテルの保護基としては、スルホキシドなどを挙げることができ、トリプトファン残基中のインドール基の保護基としては、ホルミル基などを挙げることができる。13Cまたは14Cで標識されているカルボン酸またはその誘導体を、以下、「13C−または14C−標識カルボン酸またはその誘導体」という。
【0008】
本発明において使用するカルボン酸またはその誘導体は、市販のものを使用することができる。
また、本発明において使用する13C−または14C−標識カルボン酸またはその誘導体は、市販のものをそのまま使用してもよいし、市販のものから公知の方法で合成することもできる。例えば、13C−標識カルボン酸は、第4版実験化学講座22有機合成化学IV(日本化学会編、丸善刊、1992年)等に記載の方法により製造することができるが、その一例について、以下に説明する。
グリニャール試薬やアルキルリチウムは二酸化炭素と反応してカルボン酸を生成する事は公知である。こうした反応を利用して、有機金属化合物と13C−二酸化炭素を反応させて、酸で処理する事により13C−標識カルボン酸が得られる。例えばノルマルプロピルマグネシウムハライドやノルマルプロピルリチウムと13C−二酸化炭素を有機溶媒に溶解し、窒素やアルゴン等の不活性ガス雰囲気下で反応させ、無機酸等で処理する事により、13C−標識酪酸を製造することができる。
13C−標識カルボン酸の誘導体である13C−標識エステル類、13C−標識ラクトン類、13C−標識オルトエステル類、13C−標識アミド、13C−標識イミド、13C−標識ラクタム類は、第4版実験化学講座22有機合成化学IV(日本化学会編、丸善刊、1992年)等に記載の方法により製造することができるが、その一例について、以下に説明する。
カルボン酸とアルコールの脱水反応によりエステルが生成することは公知である。こうした反応を利用して13C−標識カルボン酸とアルコールを触媒存在下脱水反応させて、13C−標識エステル類が得られる。例えば、13C−標識酪酸とメタノールを有機溶媒に溶解し、無機酸等の触媒を加え、脱水反応を行う事により、13C−標識酪酸メチルを製造することができる。
また、13C−標識アミノ酸は、第4版実験化学講座22有機合成化学IV(日本化学会編、丸善刊、1992年)等に記載の方法により製造することができるが、その一例について、以下に説明する。
アルデヒドにシアン化アルカリとアンモニアを作用させ、得られるアミノニトリルを加水分解することによりアミノ酸が生成する事は公知である。こうした反応を利用して、アルデヒドに13C−シアン化アルカリとアンモニアを反応させて、酸で加水分解する事により13C−標識アミノ酸が得られる。例えばアセトアルデヒドとアンモニアと13C−シアン化アルカリを溶媒に溶解し、反応させ、無機酸等で処理する事により、13C−標識D,L−アラニンが得られる。さらに得られた13C−標識D,L−アラニンを酵素や光学活性物質を用いて光学分割することにより、13C−標識L−アラニンおよび13C−標識D−アラニンを製造することができる。
14C−標識カルボン酸は、13C−標識カルボン酸と同様の方法を用いて13C−二酸化炭素を1 4C−二酸化炭素に変えることにより製造することができる。
1 4C−標識カルボン酸の誘導体である1 4C−標識エステル類、1 4C−標識ラクトン類、1 4C−標識オルトエステル類、1 4C−標識アミド、1 4C−標識イミド、1 4C−標識ラクタム類は、13C−標識カルボン酸誘導体と同様の方法で13C−カルボン酸を1 4C−標識カルボン酸に変えることにより製造することができる。
また、14C−標識アミノ酸は、13C−標識アミノ酸と同様の方法を用いて13C−シアン化アルカリを1 4C−シアン化アルカリに変えることにより製造することができる。
上記の13C−または14C−標識カルボン酸(13C−または14C−標識アミノ酸および脂肪酸を含む)は、塩の形で得ることもできる。塩としては、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸などの無機酸との塩;蟻酸、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、コハク酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、クリフルオロ酢酸などの有機酸との塩;ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属との塩;カルシウムなどのアルカリ土類金属との塩;アンモニウム、エタノールアミン、トリエチルアミン、ジシクロヘキシルアミンなどの有機アミンとの塩などを挙げることができる。
【0009】
本発明の炎症性腸疾患診断剤は、カルボン酸若しくはその誘導体、13C−若しくは14C−標識カルボン酸若しくはその誘導体、または薬剤学的に許容できるその塩を単独で、あるいは賦形剤または担体と混合し、錠剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、液剤等に製剤化されたものであるとよい。賦形剤または担体としては、当分野で常套的に使用され、薬剤学的に許容されるものであればよく、その種類及び組成は適宜変更される。例えば、液状担体としては水が用いられる。固体担体としては、ヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロース誘導体、ステアリン酸マグネシウムなどの有機酸塩などが使用される。液剤の場合、一般に滅菌水、生理食塩水、各種緩衝液が望ましい。また、凍結乾燥製剤として用いたりすることもできる。
【0010】
カルボン酸若しくはその誘導体、13C−若しくは14C−標識カルボン酸若しくはその誘導体、または薬剤学的に許容できるその塩の製剤中における含量は、製剤の種類により異なるが、通常1〜100 重量%、好ましくは50〜100 重量%である。例えば、液剤の場合には、カルボン酸若しくはその誘導体、13C−若しくは14C−標識カルボン酸若しくはその誘導体、または薬剤学的に許容できるその塩の製剤中における含量は、1〜100重量%が好ましい。カプセル剤、錠剤、顆粒剤、散剤の場合は、カルボン酸若しくはその誘導体、13C−若しくは14C−標識カルボン酸若しくはその誘導体、または薬剤学的に許容できるその塩の製剤中における含量は、約10〜100 重量%、好ましくは50〜100 重量%であり、残部は担体である。
本発明の炎症性腸疾患診断剤の投与量は、投与による血中カルボン酸またはその誘導体濃度(量)の増加、呼気CO2中の13Cまたは14C濃度の増加、血中13C−または14C−標識カルボン酸またはその誘導体濃度(量)の増加、または投与した化合物由来の代謝物を確認できる量が必要であり、患者の年齢、体重、検査目的により異なるが、例えば1回当たりの投与量は成人の場合、1〜2000mg/kg体重程度である。
【0011】
本発明の炎症性腸疾患診断剤を用いる検査は、好ましくは、カルボン酸若しくはその誘導体または薬剤学的に許容できるその塩を被験者に経肛門投与する。
本発明の炎症性腸疾患診断剤を用いる検査は、カルボン酸若しくはその誘導体または薬剤学的に許容できるその塩を被験者に投与し、血中のカルボン酸若しくはその誘導体、または代謝物を測定する検査により行うことができる。また、カルボン酸若しくはその誘導体または薬剤学的に許容できるその塩の複数種を組み合わせて使用してもよい。具体的には、投与後の血中のカルボン酸若しくはその誘導体の濃度(量)、または代謝物濃度(量)を測定し、投与後一定時間(例えば30分、1時間)経過後における血中のカルボン酸若しくはその誘導体の濃度(量)、または代謝物濃度(量)の増加率、あるいは投与後一定時間までのカルボン酸若しくはその誘導体の濃度(量)、または代謝物濃度(量)の積算または経時変化(立ち上がりの傾き、傾きの変化、ピークの時間等)のデータから炎症性腸疾患の診断を行う。
【0012】
また、本発明の炎症性腸疾患診断剤を用いる検査は、13C−若しくは14C−標識カルボン酸若しくはその誘導体または薬剤学的に許容できるその塩を被験者に投与し、投与後の呼気CO2中の13C濃度または14C濃度の増加を測定する呼気テストにより行うこともできる。また、13C−若しくは14C−標識カルボン酸若しくはその誘導体または薬剤学的に許容できるその塩の複数種を組み合わせて使用してもよい。13C−標識化合物を使用する場合の具体例では、投与後の呼気CO2中の13C濃度を測定し、投与後一定時間(例えば1時間、2時間、3時間)経過後における呼気CO2中の13C濃度の増加率(Δ13C(‰))、あるいは投与後一定時間までの呼気CO2中の13C濃度の増加率(Δ13C(‰))の積算または経時変化(立ち上がりの傾き、傾きの変化、ピークの時間等)のデータから炎症性腸疾患の診断を行う。あるいは、13C−若しくは14C−標識カルボン酸若しくはその誘導体または薬剤学的に許容できるその塩を被験者に投与し、血中の13C−若しくは14C−標識カルボン酸若しくはその誘導体、または代謝物を測定する検査を行ってもよい。また、13C−若しくは14C−標識カルボン酸若しくはその誘導体または薬剤学的に許容できるその塩の複数種を組み合わせて使用してもよい。具体的には、投与後の血中の13C−若しくは14C−標識カルボン酸若しくはその誘導体の濃度(量)、または代謝物濃度(量)を測定し、投与後一定時間(例えば30分、1時間)経過後における血中13C−若しくは14C−標識カルボン酸若しくはその誘導体濃度(量)、または代謝物濃度(量)の増加率、あるいは投与後一定時間までの血中13C−若しくは14C−標識カルボン酸若しくはその誘導体濃度(量)、または代謝物濃度(量)の積算または経時変化(立ち上がりの傾き、傾きの変化、ピークの時間等)のデータから炎症性腸疾患の診断を行う。
あるいは、13C−若しくは14C−標識カルボン酸若しくはその誘導体または薬剤学的に許容できるその塩を被験者に投与し、13C濃度(量)若しくは14C濃度(量)を測定する検査を行ってもよい。また、13C−若しくは14C−標識カルボン酸若しくはその誘導体または薬剤学的に許容できるその塩の複数種を組み合わせて使用してもよい。具体的には、投与後の血中の13C濃度(量)若しくは14C濃度(量)を測定し、投与後一定時間(例えば30分、1時間)経過後における血中13C濃度(量)若しくは14C濃度(量)の増加率、あるいは投与後一定時間までの血中13C濃度(量)若しくは14C濃度(量)の積算または経時変化(立ち上がりの傾き、傾きの変化、ピークの時間等)のデータから炎症性腸疾患の診断を行う。
【0013】
ここで、血中のカルボン酸若しくはその誘導体の濃度(量)、13C−若しくは14C−標識カルボン酸若しくはその誘導体の濃度(量)、または代謝物濃度(量)の測定は、全血、血清、血漿をそのまま、あるいは、分離・精製などの操作を行った後に、比色法、蛍光光度法、ニンヒドリン等を用いた化学的方法、酵素化学的測定方法、微生物を用いる方法、クロマトグラフィー法、ガスクロマトグラフ−質量分析法(GC−MS)、赤外分光法、質量分析法、光電音響分光法、NMR(核磁気共鳴)法等で行うことができる。
血中の13C濃度(量)の測定は、全血、血清、血漿をそのまま、あるいは、分離・精製などの操作を行った後に、ガスクロマトグラフ−質量分析法(GC−MS)、赤外分光法、質量分析法、NMR(核磁気共鳴)法等で行うことができる。
また、血中の14C濃度(量)すなわち放射能の測定は全血、血清、血漿をそのまま、あるいは、分離・精製などの操作を行った後に、GM計数管、液体シンチレーションカウンター、固体シンチレーションカウンター、オートラジオグラフィー、電離箱法などで行うことができる。
呼気CO2中の13C濃度の測定は、ガスクロマトグラフ−質量分析法(GC−MS)、赤外分光法、質量分析法、光電音響分光法、NMR(核磁気共鳴)法等で行うことができる。
また、呼気CO2中の14C濃度すなわち放射能の測定は、呼気CO2を直接あるいは溶媒等にトラップした後、GM計数管、液体シンチレーションカウンター、固体シンチレーションカウンター、オートラジオグラフィー、電離箱法などで行うことができる。
以下に、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらに何ら影響されることはない。以下の実施例において、アミノ酸は特にことわらない限り、L体である。
【0014】
【実施例】
〔実施例1〕 1−13C−グルタミン 呼気テストおよび血中グルタミン濃度測定
1−1 方法
潰瘍性大腸炎ラットと対照ラットに 1−13C−グルタミンを経肛門投与し、投与後の呼気CO2中の13C濃度の増加率(Δ13C(‰))の経時変化を測定する1−13C−グルタミン呼気テストを行った。さらに、1−13C−グルタミンを経肛門投与した前後の血清グルタミン濃度の変化を測定した。
Okayasuらの方法(Okayasu et al. Gastroenterology 98:694(1990))に従い、8 週齢の SD 系雄性ラット(Shizuoka Laboratory Animal Centerより購入)に4〜5%デキストラン硫酸ナトリウム(DSS)を7日間自由飲水させ潰瘍性大腸炎ラットを作成した。また、対照には蒸留水を自由飲水させ、飼料は両群に同じ物を与えた。潰瘍性大腸炎ラットもしくは対照ラットの、体重、DSSもしくは蒸留水投与後の肝重量/体重比、血清総蛋白、血清アルブミンの変化を測定した。さらに、便を採取し糞便中の細菌学的検討をおこなった。また、呼気テスト後、大腸、直腸を摘出し10%ホルマリンで固定し病理学的検討をおこなった。
【0015】
潰瘍性大腸炎ラットおよび対照ラットを、Pentobarbitalで麻酔し、手術台に固定した。頭部に呼気吸引用のキャップを被せ、精製水に溶解した1−13C−グルタミン(CIL社より購入)50mg/kgを経肛門投与した。ストロークポンプ(バリアブル・ストロークポンプ VS−500、(株)柴田科学工業)を用いて呼気を約 100 ml/minの速度で吸引し、そのまま13CO2アナライザー EX−130S ((株)日本分光)のフローセルに導入した。呼気吸引用のキャップとストロークポンプの間にはパーマピュアドライヤー( MD−050−12P、Perma Pure INC. )を設置して呼気中の水蒸気を除去した。
【0016】
13CO2アナライザーから出力されるデータはAD変換した後パーソナルコンピュータ(Apple Power Macintosh 8500)に取込み、データ処理ソフトウェア Lab VIEW (National Instruments)を用いて 5秒間隔で 100msec毎 10 点のデータを積算平均し、13Catom%、Δ13C(‰)、炭酸ガス濃度(%)に変換することで連続測定13C−呼気テストを行った。変換したデータはリアルタイムで画面表示した後、ハードディスク中に保存した。吸引呼気中の炭酸ガス濃度は 3± 0.5 %に維持した。
尚、Δ13C(‰)は各時点の呼気CO2中の13C濃度 (13C tmin)とCO2標準ガスの13C濃度(13C std)から下式により算出した。
【0017】
【数1】
【0018】
1−13C−グルタミンの経肛門投与後、Δ13C(‰)を90分間測定した。呼気テスト終了の12時間後、同一個体に生理食塩水に溶解した1−13C−グルタミンを大腿静脈より投与し(25mg/kg)、投与後の呼気CO2中の13C濃度の増加率(Δ13C(‰))を30分間測定した。
また、1−13C−グルタミンの経肛門投与前、および投与後90分に血液を採取し、血清を調整した。血清を除蛋白処理し、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によりグルタミンを分離後、ニンヒドリン試薬を反応させて吸光度を測定し、血清グルタミン濃度を算定した。
【0019】
1−2 結果
潰瘍性大腸炎群は全て病理学的にMatts分類でGrade2−4の変化を認めた。体重(図1)、肝重量/体重比(図2)、血清総蛋白(図3)、血清アルブミン(図4)、腸内細菌学叢(表1)に関しては、潰瘍性大腸炎群および対照群に有意な差は認められなかった。
【表1】
1−13C−グルタミンの経肛門投与による呼気テストは、対照ラット、潰瘍性大腸炎ラットともに、測定を終了した90分後までΔ13C(‰)値が増加を続けたが、潰瘍性大腸炎ラットのΔ13C(‰)値は90分までの各時間において対照ラットよりも小さかった(図5)。特に投与後40分以降、Δ13C(‰)値は潰瘍性大腸炎ラットで対照ラットに比べ、有意に(p<0.01)低下した。
それに対し、同一個体を用いて行った1−13C−グルタミンの経静脈投与による呼気テストでは、潰瘍性大腸炎群、対照群の両群に差は認められなかった(図6)。
また、1−13C−グルタミンの経肛門投与前後の血清グルタミン濃度の増加率(投与後グルタミン濃度/投与前グルタミン濃度)は潰瘍性大腸炎群で対照群に比較し有意に(p<0.01)低下していた(図7)。
したがって、1−13C−グルタミンの経肛門投与後の呼気テストおよび血中グルタミン量の測定によって、潰瘍性大腸炎の診断が可能である。
【0020】
〔実施例2〕 1−13C−酪酸呼気テスト
2−1 方法
潰瘍性大腸炎ラットと対照ラットに 1−13C−酪酸ナトリウムを投与し、投与後の呼気CO2中の13C濃度の増加率(Δ13C(‰))の経時変化を測定する1−13C−酪酸呼気テストを行った。
実施例1と同様にして作成した潰瘍性大腸炎ラットおよび対照ラットに、精製水に溶解した1−13C−酪酸ナトリウム(ICON社より購入)10mg/kgを経肛門投与し、実施例1に記載の方法に従って、呼気CO2中の13C濃度の増加率(Δ13C(‰))の経時変化を測定した。また、潰瘍性大腸炎ラットおよび対照ラットに、生理食塩水に溶解した1−13C−酪酸ナトリウム10mg/kgを大腿静脈より投与し、実施例1に記載の方法に従って、呼気CO2中の13C濃度の増加率(Δ13C(‰))の経時変化を測定した。
【0021】
2−2 結果
1−13C−酪酸ナトリウムの経肛門投与による呼気テストは、対照ラット、潰瘍性大腸炎ラットともに、投与後急速にΔ13C(‰)値は増加し、10−15分でピークに達し、以後急速に減少した(図8)。1−13C−酪酸ナトリウム投与後5分および10分のΔ13C(‰)値は潰瘍性大腸炎ラットで対照ラットに比べ、有意に(p<0.05)低下した。
それに対し、1−13C−酪酸ナトリウムの経静脈投与による呼気テストでは、潰瘍性大腸炎群、対照群の両群に差は認められなかった(図9)。
したがって、1−13C−酪酸ナトリウムの経肛門投与後の呼気テストによって、潰瘍性大腸炎の診断が可能である。
【0022】
〔製剤例1〕 (液剤)
1−13C−グルタミン 2重量部に対し、精製水を加え全量を100重量部として、これを溶解後ミリポアフィルターを用いて除菌ろ過した。この濾液をバイアル瓶にとり、密封して液剤を得た。
〔製剤例2〕 (液剤)
1−13C−酪酸ナトリウム 10重量部に対し、精製水を加え全量を100重量部として、これを溶解後ミリポアフィルターを用いて除菌ろ過した。この濾液をバイアル瓶にとり、密封して液剤を得た。
【0023】
【発明の効果】
本発明により、被験者への負担が小さく、正確な検査結果を短時間で知ることができる炎症性腸疾患診断が可能となった。本発明の炎症性腸疾患診断剤は、副作用がなく安全に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 SD系雄性ラットに4〜5%デキストラン硫酸ナトリウム(DSS)もしくは蒸留水を7日間自由飲水させた時のDSSもしくは蒸留水投与後の潰瘍性大腸炎群(UC)および対照群(CONT)の体重を示す。バーはSDを示す。
【図2】 SD系雄性ラットに4〜5%デキストラン硫酸ナトリウム(DSS)もしくは蒸留水を7日間自由飲水させた時のDSSもしくは蒸留水投与後の潰瘍性大腸炎群(UC)および対照群(CONT)の肝重量(LW)/体重(BW)比を示す。バーはSDを示す。
【図3】 SD系雄性ラットに4〜5%デキストラン硫酸ナトリウム(DSS)もしくは蒸留水を7日間自由飲水させた時のDSSもしくは蒸留水投与後の潰瘍性大腸炎群(UC)および対照群(CONT)の血清総蛋白を示す。バーはSDを示す。
【図4】 SD系雄性ラットに4〜5%デキストラン硫酸ナトリウム(DSS)もしくは蒸留水を7日間自由飲水させた時のDSSもしくは蒸留水投与後の潰瘍性大腸炎群(UC)および対照群(CONT)の血清アルブミンを示す。バーはSDを示す。
【図5】 1−13C−グルタミンの経肛門投与後の呼気CO2中の13C濃度の増加率(Δ13C(‰))の経時変化を示す。0分で潰瘍性大腸炎ラットおよび対照ラットに1−13C−グルタミンを経肛門投与した。バーはSDを示す。
【図6】 1−13C−グルタミンの静脈内投与後の呼気CO2中の13C濃度の増加率(Δ13C(‰))の経時変化を示す。0分で潰瘍性大腸炎ラットおよび対照ラットに1−13C−グルタミンを静脈内投与した。バーはSDを示す。
【図7】 1−13C−グルタミンの経肛門投与前後の、潰瘍性大腸炎群(UC)および対照群(CONTROL)の血清グルタミン濃度の増加率(投与後グルタミン濃度/投与前グルタミン濃度)を示す。
【図8】 1−13C−酪酸ナトリウムの経肛門投与後の呼気CO2中の1 3C濃度の増加率(Δ13C(‰))の経時変化を示す。0分で潰瘍性大腸炎ラット(UC)および対照ラット(C)に1−13C−酪酸ナトリウムを経肛門投与した。バーはSDを示す。
【図9】 1−13C−酪酸ナトリウムの静脈内投与後の呼気CO2中の13C濃度の増加率(Δ13C(‰))の経時変化を示す。0分で潰瘍性大腸炎ラット(UC)および対照ラット(C)に1−13C−酪酸ナトリウムを静脈内投与した。バーはSDを示す。
Claims (2)
- カルボン酸若しくはその誘導体または薬剤学的に許容できるその塩を含む経肛門投与用の炎症性腸疾患診断剤であって、前記カルボン酸が13C標識グルタミン及び/又は13C標識酪酸であり、前記誘導体が、前記カルボン酸のエステル、ラクトン、オルトエステル、無水物、アミド、イミド又はラクタムであるか、あるいはカルボキシル基が保護されている前記カルボン酸である前記診断剤。
- 投与後の呼気中の13CO2量の測定に用いられる請求項1記載の炎症性腸疾患診断剤。
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