JP4314718B2 - 硬化性フラックス - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体パッケージをプリント配線板に搭載する際の半田接続に関し、さらには、半導体チップを半導体搭載用基板にフリップチップ半田接続により搭載する際の、硬化性フラックスに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年の電子機器の高機能化並びに軽薄短小化の要求に伴い、電子部品の高密度集積化、さらには高密度実装化が進んできており、これらの電子機器に使用される半導体パッケージは、従来にも増して益々小型化かつ多ピン化が進んできている。
【0003】
半導体パッケージはその小型化に伴って、従来のようなリードフレームを使用した形態のパッケージでは、小型化に限界がきているため、最近では回路基板上にチップを実装したものとして、BGA(Ball Grid Array)や、CSP(Chip Scale Package)といった、エリア実装型の新しいパッケージ方式が提案されている。これらの半導体パッケージにおいて、半導体チップの電極と、従来型半導体パッケージのリードフレームの機能とを有する、半導体搭載用基板と呼ばれるプラスチックやセラミックス等各種絶縁材料と、導体配線で構成される基板の端子との電気的接続方法として、ワイヤーボンディング方式やTAB(Tape Automated Bonding)方式、さらにはFC(Flip Chip)方式などが知られているが、最近では、半導体パッケージの小型化に有利な、FC接続方式を用いたBGAやCSPの構造が盛んに提案されている。
【0004】
BGAやCSPのプリント配線板への実装には、半田ボールで形成されたバンプによる、半田接合が採用されている。この半田接合には、フラックスが用いられ、ソルダーペーストが併用されることもある。特に半田ボールが使用される理由は、半田供給量を制御し易く、多量の半田を供給できるので、バンプが高くできるためである。また、BGAやCSPの作製工程における、半導体チップの電極と半導体搭載用基板の端子との電気的接続方法にも、半田接合が使われる場合が多い。
【0005】
一般に、半田接合のためには、半田表面と対する電極の、金属表面の酸化物などの汚れを除去すると共に、半田接合時の金属表面の再酸化を防止して、半田の表面張力を低下させ、金属表面に溶融半田が濡れ易くする、半田付け用フラックスが使用される。このフラックスとしては、ロジンなどの熱可塑性樹脂系フラックスに、酸化膜を除去する活性剤等を加えたフラックスが用いられている。
【0006】
しかしながら、接合後にこのフラックスが残存していると、高温、多湿時に熱可塑性樹脂が溶融し、活性剤中の活性イオンも遊離するなど、電気絶縁性の低下やプリント配線の腐食などの問題が生じる。そのため現在は、半田接合後の残存フラックスを洗浄除去し、上記のような問題を解決しているが、洗浄剤の環境問題や、洗浄工程によるコストアップなどの欠点がある。
【0007】
また、半導体パッケージの小型化かつ多ピン化は、バンプの微細化を促し、接合強度、信頼性の低下が懸念されている。そこで、バンプ接続部分の信頼性を得るため、チップと基板との間隙に、アンダーフィルと呼ばれる絶縁樹脂を充填して、バンプ接続部分を封止、補強する検討も盛んである。しかし、これには技術的難易度の高いアンダーフィルを充填し、硬化させる工程が必要となるため、製造工程が複雑で製造コストが高くなる問題がある。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、半導体パッケージの搭載時における、半田接合のこのような現状の問題点に鑑み、半田接合後の残存フラックスの洗浄除去が必要なく、高温、多湿雰囲気でも電気絶縁性を保持し、接合強度、信頼性の高い半田接合を可能とする、硬化性フラックスを提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
即ち本発明は、エポキシ樹脂(A)と、イミダゾール環及びカルボン酸基の両成分を有し、且つエポキシ樹脂(A)の硬化剤として作用する化合物(B)とを、必須成分とすることを特徴とする硬化性フラックスであり、さらには、この硬化性フラックスにより、樹脂補強されたことを特徴とする半田接合部である。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明は、イミダゾール環及びカルボン酸基の両成分を有し、且つエポキシ樹脂(A)の硬化剤として作用する、化合物(B)の添加量が0.3wt%以上10wt%以下であり、これにより得られる硬化性フラックスの、半田接合温度における溶融粘度が50Pa・s以下であることを特徴とする。
【0011】
本発明に用いる化合物(B)のイミダゾール環は、三級アミンの不対電子に起因する還元作用があり、さらに、カルボン酸基も強い還元性を有しているため、半田および金属表面の酸化物などの汚れを除去し、半田接合のフラックスとして作用する。
【0012】
更に、イミダゾール環は、エポキシ樹脂(A)をアニオン重合する際の硬化剤としても作用し、さらには、カルボン酸基もエポキシ樹脂(A)の硬化剤としても働くため、良好な硬化物を得ることができ、半田接合後の洗浄除去が必要なく、高温、多湿雰囲気でも電気絶縁性を保持し、接合強度、信頼性の高い半田接合を可能とする。
【0013】
本発明による硬化性フラックスは、イミダゾール環の三級アミンの不対電子に起因する還元性と、カルボン酸基の強い還元性を有している。そのため、エポキシ樹脂(A)と、その硬化剤としてのイミダゾール環のみを有する化合物とを、必須成分とする硬化性フラックスに比較して、著しく還元性が向上し、半田接合の歩留まりが向上するところに最大の特徴がある。
【0014】
このイミダゾール環及びカルボン酸基の両成分を有する化合物(B)の添加量は、0.3wt%以上10wt%以下である。化合物(B)のイミダゾール環及びカルボン酸基の両成分が還元性を有しているため、その添加量が0.3wt%以上であれば還元性を有する。その添加量が0.3wt%より少ない場合は、還元性が弱くフラックス作用を有しない。また、10wt%より多い場合は、硬化反応が急激に進行し、半田接合時における硬化性フラックスの流動性が低下し、半田接合を阻害するため好ましくない。さらに、得られる硬化物が脆く十分な強度の半田接合部が得られない。より好ましくは、化合物(B)の添加量は0.5wt%以上8wt%以下が良い。
【0015】
本発明による硬化性フラックスの、半田接合温度における溶融粘度は、50Pa・s以下であることが好ましい。半田接合温度における溶融粘度が50Pa・sより大きい場合、半田ボールが硬化性フラックス層を貫通できず、半田接合ができない。但し、その他の配合剤の使用により、半田接合時における溶融粘度を、50Pa・s以下に制御できれば何ら問題はない。この目的のために、溶剤を加えても良い。本発明の硬化性フラックスは、半田接合部周辺をリング状に補強する形で硬化するため、従来のフラックスによる半田接合と比較して、接合強度、信頼性を大幅に向上させることができる。
【0016】
化合物(B)と組合わせて用いるエポキシ樹脂(A)としては、ビスフェノール系、フェノールノボラック系、アルキルフェノールノボラック系、ビフェノール系、ナフトール系やレソルシノール系などの、フェノールベースのエポキシ樹脂や、脂肪族、環状脂肪族や不飽和脂肪族などの骨格をベースとして変性されたエポキシ化合物が挙げられる。
【0017】
一方、イミダゾール環及びカルボン酸基の両成分を有する化合物(B)としては、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾリウムトリメリテイト、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテイト等が挙げられる。また、これらをエポキシアダクト化したものや、マイクロカプセル化したものも使用できる。これらは単独で使用しても2種類以上を併用しても良い。
【0018】
【実施例】
以下、実施例により更に具体的に説明するが、本発明はこれによって何ら限定されるものではない。まず、エポキシ樹脂(A)と、その硬化剤として作用する化合物(B)とを配合して、硬化性フラックスワニスを調製し、その特性評価のため、半田ボールシェア強度試験、温度サイクル試験、および絶縁抵抗試験を行った。実施例および比較例の評価結果は、まとめて表1に示した。
【0019】
(実施例1)
ビスフェノールF型エポキシ樹脂(RE−404S、日本化薬(株)製、EP当量165)30gと、クレゾールノボラックエポキシ樹脂(EOCN−1020−65、日本化薬(株)製、EP当量200)70gを、シクロヘキサノン60gに溶解し、硬化剤として1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテイト(2PZCNS−PW、四国化成工業(株)製、融点175℃〜183℃)0.5g添加し、硬化性フラックスワニスを作製した。
【0020】
(実施例2)
1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテイト0.5gに代えて、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテイト3gを用いた以外は、実施例1と同様にして、硬化性フラックスワニスを作製した。
【0021】
(実施例3)
1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテイト0.5gに代えて、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテイト10gを用いた以外は、実施例1と同様にして、硬化性フラックスワニスを作製した。
【0022】
(比較例1)
1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテイト0.5gに代えて、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテイト0.1gを用いた以外は、実施例1と同様にして、硬化性フラックスワニスを作製した。
【0023】
(比較例2)
1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテイト0.5gに代えて、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテイト15gを用いた以外は、実施例1と同様にして、硬化性フラックスワニスを作製した。
【0024】
(比較例3〜4)
市販のフラックスを使用し、半田接合後、イソプロピルアルコールで洗浄したものを比較例3、洗浄していないものを比較例4とした。
【0025】
1.半田ボールシェア強度試験
厚さ125μmの銅板(EFTEC64T、古川電気工業(株)製)を用いて、ランド径400μm、ランドピッチ1mmを含む評価用回路を形成し、そのリードフレームを半導体封止材(EME−7372、住友ベークライト(株)製)でモールド封止した後、片面から研磨して、前記の評価用回路を露出させ、20mm角の評価用パッケージを作製した。研磨の仕上げには、JIS−R6252に規定された、耐水研磨紙1000番を使用した。これをイソプロピルアルコールで洗浄した後、80℃で30分乾燥して、半田接合評価用パッケージとした。
【0026】
得られた評価用パッケージの評価用回路露出面に、実施例1〜3,比較例1〜2で得られた硬化性フラックスワニスを、それぞれ塗布し、80℃で10分乾燥して、厚さ20μmの硬化性フラックス膜を形成した。実施例1〜3,比較例1〜2の硬化性フラックス、および、比較例3〜4として市販のフラックスをそれぞれ塗布した、評価用パッケージ回路のランド上に、500μm径の半田ボール(Sn−Pb系共晶半田、千住金属鉱業(株)製)60個を搭載し、ピーク温度240℃に設定されたリフロー炉を通して、半田ボールを評価用パッケージに接合させた。その後、実施例1〜3,比較例1〜2については、150℃で60分熱処理して、硬化性フラックスを硬化させた。
【0027】
次に、得られた半田ボール付き評価用パッケージの、半田ボールシェア強度を測定した。それぞれ60個の平均値を求め、その結果はまとめて表1に示したが、比較例1では、半田ボールの接合が出来なかったので、次の温度サイクル試験および絶縁抵抗試験は中止した。
【0028】
2.温度サイクル試験
温度サイクル(TC)試験用プリント配線板に、市販のフラックスを塗布し、前記で得られた、実施例および比較例の半田ボール付き評価用パッケージを搭載して、ピーク温度240℃に設定されたリフロー炉を通した後、実施例1〜3,比較例2については、150℃で60分熱処理して硬化性フラックスを硬化させ、評価用パッケージ実装基板をそれぞれ10個ずつ作製した。この評価用パッケージ実装基板は、評価用パッケージ、および試験用プリント配線板を介して、60個の半田ボール接合部が直列につながるように回路設計されている。
【0029】
得られた評価用パッケージ実装基板の導通を確認後、−50℃で10分、125℃で10分を1サイクルとするTC試験を実施した。TC試験1000サイクル後の断線不良数の結果をまとめて表1に示した。比較例3については、評価用パッケージ実装後、イソプロピルアルコールで洗浄した。
【0030】
3.絶縁抵抗試験
半田メッキが施された導体間隔150μmのくし形パターンを有する、絶縁信頼性試験用プリント配線板を使用し、このプリント配線板に実施例1〜3,比較例2で得られた硬化性フラックスワニスを、それぞれ塗布し、80℃で10分乾燥して厚さ20μmの硬化性フラックス膜を形成した。比較例4として、市販のフラックスを塗布した試験用プリント配線板も準備した。ピーク温度240℃に設定されたリフロー炉を通した後、実施例1〜3,比較例2については、150℃で60分熱処理して硬化性フラックスを硬化させ、試験用プリント配線板とした。
【0031】
このプリント配線板の絶縁抵抗を測定した後、85℃/85%の雰囲気中で、直流電圧50Vを印加し、1000時間経過後の絶縁抵抗を測定した。測定時の印加電圧は100Vで1分とし、絶縁抵抗をまとめて表1にした。
【0032】
【表1】
Figure 0004314718
【0033】
表1に示した評価結果から分かるように、本発明の硬化性フラックスを用いた実施例の場合、従来のフラックスを用いた場合に比べて、半田ボールシェア強度では、1.5〜1.8倍という高い値を示し、また、TC試験では、断線不良の発生はほとんどなくなった。しかし、本発明の化合物(B)である、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテイトを用いても、その添加量の少ない比較例1では、半田ボールの接合が出来なかった。絶縁抵抗試験でも、比較例では大幅に低下し、あるいは絶縁抵抗の低下によってショートを起こしているのに対して、実施例ではほとんど低下を示さず、本発明の硬化性フラックスの効果が明白である。
【0034】
【発明の効果】
本発明の硬化性フラックスは、半田接合後の残存フラックスの洗浄除去を必要とせず、高温、多湿雰囲気でも電気絶縁性を保持し、また、硬化性フラックスが半田接合部周辺をリング状に補強する形で硬化するため、接合強度と信頼性の高い半田接合を可能にするので、半導体パッケージのプリント配線板への搭載における工程を簡素化して、製造コストを抑制し、また、半田接合の信頼性向上に極めて有用である。

Claims (4)

  1. エポキシ樹脂(A)と、イミダゾール環及びカルボン酸基の両成分を有し、且つエポキシ樹脂(A)の硬化剤として作用する化合物(B)とを、必須成分とすることを特徴とする硬化性フラックス。
  2. 硬化剤として作用する化合物(B)の添加量が、0.3wt%以上10wt%以下であることを特徴とする、請求項1記載の硬化性フラックス。
  3. 半田接合温度における溶融粘度が、50Pa・s以下であることを特徴とする、請求項1または請求項2記載の硬化性フラックス。
  4. 請求項1または請求項2記載の硬化性フラックスにより、樹脂補強されたことを特徴とする半田接合部。
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