JP4313923B2 - 光ic - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、光通信または光ファイバジャイロに用いることができ、偏光子機能を有する光ICに関し、特にその消光比を改善することができる光ICに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、この偏光子機能を有する光ICは、例えば、光通信または光ファイバジャイロ(FOG)に用いられる。FOGとは角速度によって光ファイバループ(センシングコイルとも言う)を回る右回り光と左回り光との間に位相差が生じるというサニャック効果を利用した角速度センサである。このFOGにおいて、光ICの役割には、光の合分波器、即ち一つの光を右回り光と左回り光に分けたり、それらを再び合わせたりする役割、位相変調器、即ち右回り光と左回り光に意図的に位相差を加える役割、または偏光子、即ち余分な偏光成分を除去する役割等がある。
【0003】
このうちの偏光子としての役割の必要性について説明する。FOGでは、本来センシングコイルを互いに逆回りに回る一対の光についてサニャック効果を利用して角速度を検出している。サニャック効果によって発生した位相差は右回り光と左回り光を合波・干渉させることで光強度の変化として検出することができる。しかし、この一対の光以外の光が発生すると本来の干渉光以外の干渉光成分が新たに発生してしまうことになり、これがFOGのバイアス誤差の原因となる。
【0004】
特に、本来の一対の光の偏光方向とは直交する偏光成分が発生すると、これらは重大な誤差を引き起こす。この本来の一対の光とは直交する偏光成分は、本来の偏光成分と一般的に位相が異なるものであるが、そればかりでなく、FOG周辺の環境温度が変わるとそれらの屈折率温度係数が異なることによって、結果としてバイアスの周期的な変動を引き起こしてしまう。従って、この有害な偏光成分が発生しないようにすることが重要であるが、発生してしまった場合には、偏光子でこれを除去することが必要となる。
【0005】
そこで、たとえば、プロトン交換法によってLiNbO3やLiTaO3基板上に作製された光導波路に、基板結晶の異常光線に相当する偏光成分(TE波)のみ伝搬させ、常光線に相当する偏光成分(TM波)は基板結晶内に漏洩させることによって偏光子機能を得る原理となった光ICが開発されている。しかしながら、この基板結晶内に漏れたTM波のうちいくらかは基板の裏面で反射して再び基板の表面側に戻り、光ICと接続されたファイバに再結合してしまう。この割合は非常に小さいものではあるが、光ICの消光比の向上、即ち偏光子機能をさらに向上させるためには、この反射光がファイバに再結合するのを防ぐ必要がある。
【0006】
従来、この光ICの基板裏面からの反射波がファイバに再結合するのを防ぎ、消光比を改善するための方法としては、例えば、特許第2791414号公報、特許第2737030号公報、特開平11−132772号公報に記載されたものが知られている。
【0007】
特許第2791414号公報には、光ICの光導波路と平行な2つの側面及び裏面を光を散乱する程度の粗面とするか、または光ICの側面及び裏面を反射防止膜または吸収膜で覆うことが記載されている。
【0008】
特開平11−132772号公報には、光ICの裏面に吸収膜を蒸着し、接着膜を介してマウントに付設することが記載されている。
【0009】
また、特許第2737030号公報には、その一つの実施例として、光ICの裏面に導波路と45度の角度をなす微小溝アレイを多数設けることが記載されている。この微小溝アレイによって基板結晶裏面を荒らして、基板結晶内に漏れたTMモード光を約90度の角度に偏向し、光ファイバと再結合するのを防いでいる。または、光ICの裏面に等間隔な複数の変形部を作り、光IC裏面に到達した漏れ光を変形部のどれかにあてることによって減衰させることが記載されている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、かかる従来の光ICにおける消光比改善では、以下のような問題点がある。
【0011】
即ち、特許第2791414号公報記載のように光ICの裏面に粗面を形成する場合、粗面ならなんでも良いわけではなく、反射光がなくなるような、即ち裏面に到達した光が全散乱されるような粗面の条件を満足する必要がある。この適切な条件はかなり限定された条件であり、これを満足するためには加工装置に対してかなり精密な条件が要求される。この条件管理は困難であり、よって最適な粗面を歩留まり良く製造することは困難であり、消光比のばらつきが大きくなる。また、基板を粗面にするということは、基板に無数の傷を付けるということであり、基板を破損するおそれがあるという課題もある。
【0012】
また、特許第2791414号または特開平11−132772号のように、光ICの裏面を反射防止膜や吸収膜で覆う場合、裏面に付ける膜の屈折率や厚さに関して適切な条件で膜付けしないと反射光をなくすことはできない。例えば、膜の屈折率が基板の屈折率よりも小さい場合、入射角は全反射を起こす臨界角度以下になっていなければならないが、かかる条件を満足させるような入射角とすることは基板の形状(長さと厚さとの関係)から通常、困難である。膜の屈折率が基板の屈折率よりも大きい場合でも、膜の屈折率及び厚さが所望の値となるように、成膜装置の成膜条件を厳しく管理する必要がある。この装置を最適条件に管理することは困難であり、所望の膜を歩留まり良く付けることは困難であり、消光比のばらつきが大きくなる。また、付着強度の強い膜を付けることも困難であり、膜が剥がれやすいという問題もある。吸収膜を蒸着するのも困難である。
【0013】
また、特許第2737030号に記載されたような光ICの裏面に45度の角度の微小溝アレイを設ける場合、広い範囲に渡って多数の微小溝を形成しなければならず、45度の角度であれば何でも良いわけではなく、各溝の深さやピッチ、形状を最適にしなければならず、その加工が大変であり歩留まり良く加工するのは困難であるという課題がある。また、基板に多数の微小溝アレイを形成するために、基板の損傷度が高くなり、破損させる危険性もあるという問題がある。
【0014】
光ICに変形部を設ける場合も、変形部の形状、寸法およびその変形部を設ける位置の調整が大変であるという問題がある、また、多数の変形部を形成しなければならないため、多数の溝を形成する場合と同様に、損傷度が高くなり、破損させる危険性があるという問題がある。
【0015】
本発明はかかる課題に鑑みなされたもので、歩留まり良く作製でき、また基板を破損する危険性も低減することができる光ICを提供することをその目的とする。
【0016】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために請求項1記載の発明は、LiNbO 3 またはLiTaO 3 結晶基板と、該基板の表面にプロトン交換法により作製された光導波路とからなり、該光導波路は、基板結晶の異常光線に相当する一方の偏光成分を伝搬させ、基板結晶の常光線に相当する他方の偏光成分を基板に漏洩させる、光ICにおいて、
基板裏面に前記光導波路の全長に略対向して光導波路と略平行に伸びる溝が形成され、該溝は、基板裏面に対して非垂直で且つ非平行で、且つ光導波路から漏洩された偏光成分が基板面での反射を経ずに到達可能な溝面を有しており、該溝面は、該漏洩された偏光成分を入射角=反射角の法則に従って反射させ、該反射した偏光成分を光導波路からそれる方向へと反射させるようになっている、ことを特徴とする。光ICの入力部から光導波路へと結合した光のうち、TE波は光導波路内をそのまま伝搬し、出力部へと向かう。一方、TM波は光ICの光導波路内に拘束されることなく、基板内に円錐状に漏れ広がる。そのTM波のうち、基板裏面の光導波路に対向する部分に達したものは、溝の基板表面側の面で入射角=反射角の法則に従って反射する。光導波路と略平行に伸びる溝の基板表面側の面は、主として基板裏面に対して非垂直で且つ非平行となっているため、光導波路からそれる方向へと反射し、光導波路から離反する方向へと伝搬する。従って、光導波路の出力部で再結合することを阻止することができる。
【0017】
請求項2記載の発明は、前記溝が、その横断面形状が三角形または多角形であることを特徴とする。溝の横断面形状を三角形または多角形とすることにより、溝の基板表面側の面を斜面とすることができる。斜面によって、反射される光を確実に光導波路からそれる方向へと反射させることができる。
【0018】
また、請求項3記載の発明は、請求項2記載の前記溝の横断面形状の三角形または多角形の頂点が、光導波路の真下からずれていることを特徴とする。頂点を光導波路の真下における溝の面を斜面とすることができ、最も再結合の可能性の高い光導波路の真下で反射する光を光導波路からそれる方向へと確実に反射させることができる。
【0020】
請求項4記載の発明は、請求項1ないし3記載の光ICを光合分波器及び偏光器として使用した光ファイバジャイロを要旨とするものである。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、図面を用いて本発明の実施の形態を説明する。図1ないし図6は、本発明の実施形態による光ICを表しており、光IC10は、例えばLiNbO3またはLiTaO3のような異方性光学結晶からなる基板12上に光導波路14が設けられて構成されている。光導波路14は、プロトン交換法等により作製することができる。この実施形態の光IC10は、光の合分波器及び偏光器を兼ねており、光導波路14は、その入力側の光導波路14aが1つの入力側ファイバ16と結合されており、その中間部で2つの光導波路14b、14bに分岐されて、該2つの光導波路14b、14bがそれぞれ2つの出力側ファイバ18と結合されている。
【0022】
基板12の裏面には、図2に示すように、光導波路14と略平行に且つ光導波路14の略直下に、三角溝12aが1本形成されている。この三角溝12aは、その横断面形状が上に凸となった三角形状をしている。三角溝12aは、光導波路14を作製した後に、基板12を裏返して、ダイシングソーの切削ブレードを基板12の中央部で且つ光導波路14と平行になるようにして、1回通すことにより形成することができる。光IC10は通常、1枚のウエハから複数本とれるようになっているが、本発明の場合には、複数のチップの切り離しと、三角溝12aの形成とをダイシングソーによる1つの工程で行うことができ、工程の増加を防ぐことができる。さらに、この三角溝12aを形成するに当たっては、従来公報の構成と異なり、後で説明するようにその精度を厳密に管理する必要がなく、簡単に形成することができる。
【0023】
以上のように構成される光IC10の作用を説明する。入力側ファイバ16から光IC10の光導波路14に結合した光のうち、TE波は光IC10の光導波路内14(14a、14b)をそのまま伝搬し、反対側の出力側ファイバ18に再結合する。一方、TM波は光IC10の光導波路14内に拘束されること無く、基板12結晶中に円錐状に漏れ広がる。そのうちの基板12裏面に到達されたものは、図3に示すように、基板12裏面に形成された溝12aの溝面において入射角=反射角の法則に従って反射されるが、図4及び図5に示すように、この反射波は、光導波路14から遠ざかる方向へと反射し、出力側ファイバ18に到達しないため、再結合が起こらない。
【0024】
図6は、この再結合が起こらないための条件を求めるための説明断面図である。基板の厚さをhとし、三角溝12aの斜面の基板12の裏面に対してなす角度(底角)をθとし、図示の如く、光導波路14に対して直交し且つ基板12表裏面に平行方向にX軸、上下方向にY軸をとるものとすると、三角溝12aの一辺の溝面は、
【0025】
【数1】
と表せる。ここでxcは、三角溝12aの底辺の一端にある頂点のx座標である。三角溝12aの斜面で反射した反射光が、再び基板12表面に到達したときの到達位置x2は、次の式で表される。
【0026】
【数2】
ここで、φはX−Y平面において見て、基板12中を漏れるTM波とX軸とのなす角度である。どのようなφに対しても、または再結合が起こり得るようなφ(即ち、φ≦tan-1(2h/x1))に対して、
【0027】
【数3】
を満足させるような範囲のθ及びxcを選択すれば良い。なお、入力側ファイバ16のx座標は0、一方の出力側ファイバ18のx座標はx1、他方の出力側ファイバ18のx座標は−x1としている。θとxcとの組み合わせによって、上記式を満足させることは簡単にでき、その組み合わせ範囲は広い。例えば、基板12の厚さが1.0mm、x1=150μmである場合、一例として三角溝12aの形状及び寸法は、頂角ξ=π−2θ=150°、溝底辺=700μmとすることができる。しかしながら、同じ溝底辺の長さの条件の下で、頂角は30°〜170°の間の許容範囲を持っている。頂角を小さくすれば、溝底辺が小さくなり溝深さが大きくなり、頂角を大きくすれば、溝底辺が大きくなり溝深さが小さくなる。また、三角溝12aを形成する必要のある溝底辺の最小限範囲は、三角溝12aが無いとした場合に、入力側ファイバから出たTM波が裏面で反射されて出力側ファイバに到達する可能性のある±x1/2の範囲となる。この範囲をカバーしていれば、三角溝12aの頂点のx座標は必ずしも、x=0、即ち入力側ファイバと同じ位置にある必要はなく、二等辺三角形である必要もない。光導波路14の構成によっては、むしろ、三角溝12aの頂点を光導波路14の真下よりもずらすことにより、最も再結合の可能性の高い光導波路14の真下で反射する光を光導波路14からそれる方向へと確実に反射させることができる場合もある。
【0028】
具体的には、例えば、頂角150°、溝底辺700μmで、基板厚さを1mmとした場合に、三角溝のずれは150μmまで許容される。実際にどの程度の頂角及び溝底辺とするかは、ダイシングソーによって切削することができる溝底辺の大きさ及び基板の厚さに対する溝深さの割合の設定値による。基板の厚さに対して溝深さがあまり大きくなりすぎないように決定すると良いが、三角溝加工における寸法精度は非常に緩やかなものとなる。
【0029】
また、溝は、図示した三角溝のような溝の基板表面側の面が斜面となったものに限らず、曲面となった溝12’aでも良い(図7(a))。または多角形状の溝12”aでも良い(図7(b))。少なくとも|x|≦x1/2の範囲で、基板12の裏面に対して非垂直で且つ非平行な面を、主として基板表面側に持った溝であれば良い。
【0030】
また、上記説明では、主に裏面で1回の反射を行う1次反射について主に考慮したが、1回目の反射でTM波が光導波路14からそれてしまうため、2次以上の反射の影響も小さいものと考えられる。
【0031】
図8にこの光ICをFOGに用いた場合を例示する。図において、20は光源、22は光結合器、24はセンシングコイル、26は検出器である。本発明の光IC10は、偏光器及び光合分波器として使用される。
【0032】
但し、図1に示したような1つの入力側導波路と、2つの出力側導波路を備えた光合分波器に用いた例に限らず、1つの導波路のみを有する偏光子としてのみ機能する光ICまたは光変調器として機能する光ICにも同様に適用することができる。この場合には、1つの導波路に対向して、基板の裏面に導波路と平行に溝を形成すればよい。別の言い方をすると、入力側と出力側とを結ぶ線に平行に且つ対向するように裏面に溝を形成すればよい。この場合は、溝の頂角及び溝底辺の条件がより緩やかになる。
【0033】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明よれば、基板裏面に溝を形成し、溝の基板表面側の面で光を反射させて、光導波路からそらす方向へと伝搬させることにより、光導波路の出力側に再結合するのを防ぎ、光の消光比を改善することができる。溝は多数形成する必要がなく、また、溝の位置及び溝の形状の精度の許容範囲が大きいため、基板を破損させる危険性も低減でき、歩留まりよく作製することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による光ICの実施形態を表す斜視図である。
【図2】図1の光ICの底面図である。
【図3】図1の3−3線に沿って見た断面図であり、一点鎖線は光導波路の入力側から基板裏面へ漏れ広がるTM波を表す。
【図4】図1の3−3線に沿って見た断面図であり、一点鎖線は基板裏面で反射したTM波を表す。
【図5】図1の光ICの平面図であり、一点鎖線は、光導波路の入力側から基板裏面へ漏れ広がり、さらに裏面及び溝部で反射したTM波を表す。
【図6】TM波の再結合が起こらないための条件を求めるための説明断面図である。
【図7】(a)及び(b)は溝の他の例を表す図3相当図である。
【図8】本発明による光ICを光ファイバジャイロに用いた構成ブロック図である。
【符号の説明】
10 光IC
12 基板
12a、12’a、12”a 溝
14 光導波路
Claims (4)
- LiNbO 3 またはLiTaO 3 結晶基板と、該基板の表面にプロトン交換法により作製された光導波路とからなり、該光導波路は、基板結晶の異常光線に相当する一方の偏光成分を伝搬させ、基板結晶の常光線に相当する他方の偏光成分を基板に漏洩させる、光ICにおいて、
基板裏面に前記光導波路の全長に略対向して光導波路と略平行に伸びる溝が形成され、該溝は、基板裏面に対して非垂直で且つ非平行で、且つ光導波路から漏洩された偏光成分が基板面での反射を経ずに到達可能な溝面を有しており、該溝面は、該漏洩された偏光成分を入射角=反射角の法則に従って反射させ、該反射した偏光成分を光導波路からそれる方向へと反射させるようになっている、ことを特徴とする光IC。 - 前記溝は、その横断面形状が三角形または多角形であることを特徴とする請求項1記載の光IC。
- 前記溝の横断面形状の三角形または多角形の頂点は、光導波路の真下からずれていることを特徴とする請求項2記載の光IC。
- 請求項1ないし3のいずれか1項に記載の光ICを光合分波器及び偏光器として使用した光ファイバジャイロ。
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