JP4312490B2 - ゴマ抽出物を含有する増粘安定剤 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ゴマ抽出物を含有する増粘安定剤、または、ゴマ抽出物とキサンタンガムおよび/またはカラギーナンを含有する増粘安定剤、さらには前記増粘安定剤を使用して得られる食品に関する。
【0002】
【従来の技術】
昔からゴマは健康に良い食品といわれ、広く食されてきた。近年になって、このゴマの栄養効果について科学的な研究が活発に行われ、ゴマ種子に存在する様々な生理活性物質についての研究が報告されている。(例えば、非特許文献1参照。)
ゴマ種子に含まれる機能性物質の研究は進んでいるにもかかわらず、食品の物性を改変する物質に着目した研究は少ない。一方、天然の種子由来の抽出物は食品用に広く使用されており、その中にはキサンタンガムおよび/またはカラギーナンと併用するとゲル化や増粘するものがある。このような性質を持つ多糖類は、ローカストビーンガムが代表的なものとしてあげられ、その他にタラガム、グァーガム、グルコマンナン等がある。しかし、このような特質の多糖類は、非常に粘度が高いため扱い難く、食品製造工程中での作業効率が低い。
【0003】
【非特許文献1】
並木満夫,小林貞作,「ゴマの科学」,朝倉書店,1989年10月10日,P.91−197
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は食品製造工程中での作業効率が高い増粘安定剤を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記の目的を達成するため鋭意研究を重ねた結果、増粘安定剤にゴマ抽出物を含有させることにより本発明を完成した。
すなわち本発明は、ゴマ抽出物を含有することを特徴とする増粘安定剤である。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明でいうゴマ抽出物を得るための原料のゴマはゴマ科のゴマ属植物であり、特に限定されるものではないが一般に白ゴマと呼ばれる白や黄色系のゴマ種子、黒ゴマと呼ばれる黒や褐色系のゴマ種子のいずれも用いることができる。またゴマ種子を粉砕または磨り潰したもの、焙煎等の加熱処理を施したもの等の種々のゴマ加工品も使用できる。さらに、ヘキサン、酢酸エチル、アセトン、メタノール等の有機溶媒で脱脂したもの、ゴマ油を搾油した後の搾り粕等も原料として使用できる。
【0007】
本発明でいうゴマ抽出物とは、特に限定されるものではないが、ゴマ種子、ゴマ加工品または脱脂ゴマを溶媒により抽出したものがあげられる。抽出に用いられる溶媒は特に限定されるものではないが、水、含水メタノール、含水エタノール、含水ブタノール、含水プロパノール等があげられ、抽出効率の点から、水を用いるのが好ましい。また、抽出条件については、特に限定されるものではないが、加熱、加熱還流または浸漬があげられ、アルカリ性、中性、酸性のいずれの領域であっても良い。
【0008】
また、次のようにゴマ抽出物を精製し、低分子物質を除去しても、本発明のゴマ抽出物を得ることができる。ゴマ抽出物を最少量の水に溶解し、エタノール、ブタノール、プロパノール等の有機溶媒、または含水エタノール、含水ブタノール、含水プロパノール等の含水有機溶媒の1種または2種以上を添加し、遠心分離またはろ過により残渣をろ集して、室温または乾燥機で乾燥することで精製してもよい。
【0009】
この他の精製方法として、ゴマ抽出物を透析、イオン交換クロマトグラフィー、ゲルろ過クロマトグラフィー等も用いることができる。
【0010】
さらには、ゴマ抽出物を上記方法で精製する以外に酵素処理を行ったゴマ抽出物処理品も、本発明のゴマ抽出物に含まれる。酵素処理に使用する酵素は、特に限定されるものではないが、タンパク質等を分解するプロテアーゼ等があげられる。ここで、プロテアーゼとしては特に限定されるものではないが、例えばパパイン、ペプシン等があげられる。
【0011】
本発明でいうキサンタンガムとは、微生物のキサントモナス・キャンペストリス(Xanthomonas campestris)の発酵により得られ、グルコース、マンノース、グルクロン酸を構成糖とする増粘多糖類である。
【0012】
本発明でいうカラギーナンとは、紅藻類から抽出され、アンヒドロガラクトースとガラクトースの硫酸エステルを構成糖とする増粘多糖類である。カラギーナンは硫酸エステル含量によりκ(カッパ)、ι(イオタ)、λ(ラムダ)があり、本発明においては、特にκカラギーナンが好ましい。
【0013】
前記の製造法によって得られた本発明のゴマ抽出物は、キサンタンガムおよび/またはカラギーナンと混合し水に溶解するとゲルを形成する。このようなゴマ抽出物の性質は食品を増粘、ゲル化させ食感の改良に利用できるため、増粘安定剤、食品、化粧品、医薬品に含有させることができる。
【0014】
増粘安定剤とは、特に限定されるものではないが、水に溶解または分散して機能を発現するもので、食品の粘度を増加させたり、油脂の乳化を安定化させたり、ゲルを形成してゼリー等を作ったり、食品にボディ感を付与したりするものをいう。増粘安定剤としては、増粘剤、安定剤、ゲル化剤等があげられる。
【0015】
ゲルの物性を評価する方法の一つに、動的粘弾性の測定がある。動的粘弾性測定法とは、周期的に振動するひずみを与えて、その応答から試料の粘弾性を測定する方法であり、貯蔵弾性率G’と損失弾性率G”が得られる。G’はゲルの硬さに対応し、G”はゲルのやわらかさに対応している。また損失正接と呼ばれるtanδはtanδ=G”/G’で表されるため、tanδの値が大きいほどゾルの状態となり、tanδの値が小さいほど硬いゲルとなる。
【0016】
また、上記の製造法によって得られた本発明のゴマ抽出物は、キサンタンおよび/またはカラギーナンガムと併用して増粘、ゲル化するローカストビーンガム、その他にタラガム、グァーガム、グルコマンナン等と比較して、粘度が極めて低いことも特徴的である。
【0017】
したがって、このゴマ抽出物を増粘多糖類として食品に使用した場合、粘性が低いため食品の製造工程での作業効率を向上することができる。
次に本発明の効果を実施例に基づき詳しく説明するが、これは、本発明の範囲を限定するものではない。
【0018】
【実施例】
ゴマ抽出物の製造方法
ねりゴマ(九鬼産業(株)製)100gをクロロホルムとメタノールを7:3の比で混合させた有機溶媒400mLに分散させ、攪拌しながら加熱還流を1時間行った。終了後、この懸濁液をろ過により残査を採取し、40℃の乾熱機で乾燥して脱脂したねりゴマ粉末を41.0g得た。この脱脂ゴマ粉末を400mLの水に分散させ、90℃で5分間加熱した。この懸濁液を遠心分離(18000rpm,20分間)により沈殿物を除去した後、凍結乾燥してゴマの水抽出物を得た。上記の方法で得られたゴマの水抽出物2.0gを水50mLに分散させ、90℃で5分加熱して水に溶解し、室温で冷却後、全体で約70%エタノールになるように含水エタノールを加えゴマの水抽出物を析出させた。この懸濁液を遠心分離(8000rpm,20分間)により沈殿物を採取し、40℃の乾熱機で乾燥して含水エタノールで精製し、ゴマ抽出物0.68gを得た。
【0019】
上記の方法にしたがって調製したゴマ抽出物をキサンタンガムと水に混合溶解し調製したゲル状の水溶液の動的粘弾性測定を行った。ローカストビーンガムとキサンタンガムとの配合比が1:1付近のときに硬いゲルを形成するため、同様の配合比率でゴマ抽出物とキサンタンガムが作るゲルの動的粘性弾性を比較した。また、ローカストビーンガムと粘度についても比較した。
【0020】
動的粘弾性の測定条件
動的粘弾性測定装置:レオメトリック社製ARES粘弾性測定システム100 FRTN1
治具:平円板
試料の厚さ:1mm
測定温度:20℃
歪み:1%
周波数範囲:0.1〜1.0Hz
【0021】
試料の調製
実施例1
キサンタンガム(太陽化学(株)製)500mgと上記の製造方法で得られたゴマ抽出物500mgを混合した後、攪拌しながら100mLの水に分散させた。この懸濁液を攪拌しながら90℃で5分間加熱した後、20℃で一昼夜冷却し、測定用の試料溶液を得た。
【0022】
比較例1
キサンタンガム(太陽化学(株)製)500mgとローカストビーンガム(太陽化学(株)製)500mgを混合した後、攪拌しながら100mLの水に分散させた。この懸濁液を攪拌しながら90℃で5分間加熱した後、20℃で一昼夜冷却し、測定用の試料溶液を得た。
【0023】
比較例2
キサンタンガム(太陽化学(株)製)500mgとショ糖500mgを混合した後、攪拌しながら100mLの水に分散させた。この懸濁液を攪拌しながら90℃で5分間加熱した後、20℃で一昼夜冷却し、測定用の試料溶液を得た。
【0024】
調製したゲル状試料溶液の動的粘弾性を測定した結果を図1、図2に示す。
動的粘弾性の測定結果から、貯蔵弾性率G’、損失正接tanδともに、本発明のゴマ抽出物とキサンタンガムの水溶液は、ゾル状態のキサンタンガムとショ糖を混ぜたものよりも、ローカストビーンガムとキサンタンガムの水溶液に近い値となった。この結果は、ゴマ抽出物とキサンタンガムの水溶液がより硬いゲルを形成していることを表している。
【0025】
粘度測定条件
粘度測定装置:ブルックフィールド社製DV−III+レオメーター
測定温度:25℃
回転数:20rpm
【0026】
実施例2
ゴマ抽出物1gを攪拌しながら100mLの水に分散させた。この懸濁液を攪拌しながら90℃で5分間加熱した後、25℃で2時間冷却し、測定用の試料溶液を調製した。
【0027】
比較例3
ローカストビーンガム(太陽化学(株)製)1gを攪拌しながら100mLの水に分散させた。この懸濁液を攪拌しながら90℃で5分間加熱した後、25℃で2時間冷却し、測定用の試料溶液を調製した。
【0028】
比較例4
ショ糖1gを攪拌しながら100mLの水に分散させた。この懸濁液を攪拌しながら90℃で5分間加熱した後、25℃で2時間冷却し、測定用の試料溶液を調製した。
調製した試料溶液の粘度を表1に示す。
【0029】
【表1】
Figure 0004312490
【0030】
表1の結果より明らかなように、キサンタンガムおよび/またはカラギーナンとゲル化するローカストビーンガムの水溶液より、ゴマ抽出物の水溶液の方が極めて低い粘度であり、ショ糖の水溶液と同等の粘度であった。
【0031】
【発明の効果】
本発明は、ゴマ抽出物を含有させることにより他の増粘多糖類と比較して、粘度が著しく低く、製造工程中での作業効率の極めて高い増粘安定剤を提供することができ、安定剤、ゲル化剤として食品、化粧品、医薬品に用いることができる。このことは、食品産業上において非常に貢献大である。
【図面の簡単な説明】
【図1】貯蔵弾性率G’と周波数との関係の図である。
【図2】損失正接tanδと周波数との関係の図である。

Claims (2)

  1. ゴマを、水により抽出したゴマ抽出物であって、25℃における1%の水溶液粘度が500mPa・s以下であるゴマ抽出物とキサンタンガムを含有することを特徴とするゲル化剤。
  2. 請求項1記載のゲル化剤を使用して得られる食品。
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