JP3551366B2 - 低分子画分を高濃度に含むカキ抽出エキスおよびその製造方法 - Google Patents

低分子画分を高濃度に含むカキ抽出エキスおよびその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、カキ抽出エキスおよびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
カキ抽出エキスは、遊離アミノ酸、ミネラル、多糖質などを多量に含み、様々な生理活性および薬理作用を有する食品素材として公知である。カキ抽出エキスを利用した多くの商品が市販されており、調味料としての利用分野にとどまらず、栄養補給を目的とする栄養補助食品としても利用範囲が広がっている。しかしながら、従来のカキ抽出エキスの製造方法は、エキス成分を単に熱水で抽出するといったような一般的な調味料の製造方法と類似したものであり、生理作用や薬理作用を有する成分に重点をおいた抽出方法とはいえなかった。
【0003】
近年、カキの生理活性の研究における新たな分野として、ペプチド画分による高血圧症の予防効果、コレステロールの低下作用、および血糖値の急激な上昇を抑制する作用が認められ、この画分の効率的な抽出法が望まれていた。
【0004】
従来のカキ抽出エキスの製造技術は、一般的な調味料の製造技術の延長として位置付けられていた。そのため、消化管内での消化および吸収に対する考察、ならびに摂取量を増やし長時間摂取した場合の安全性の配慮は、十分なされていなかった。
【0005】
また、従来の製造方法では、生カキを熱水に浸漬して長時間抽出操作を行うため、カキの外套膜が長時間物理的な摩擦を受け、中腸腺内部から様々な有害物質(主に老廃物、重金属、環境汚染物質など)がエキス中に抽出される可能性があった。さらに、食中毒原因物質である小型球形ウイルス(SRSV)なども中腸腺からエキスに混入する危険性があり得る。また、長時間の抽出作業により、生理活性の比較的低い筋肉タンパク質や高分子多糖類などが同時に抽出され、生理活性の高いペプチド等を含む低分子画分の含有量が相対的に低くなり、さらなる濃縮や精製が必要となることも多々あった。
【0006】
さらにまた、最終商品の経時変化ならびに作業特性および加工特性についても改善されるべき点が多く残されていた。
【0007】
また、従来のカキ抽出エキスは、高分子多糖類(グリコーゲンなど)を多く含むことおよび遊離アミノ酸により、噴霧乾燥または凍結乾燥等の非加熱乾燥が比較的困難なものであった。従って、これらの乾燥においては、その吸湿性および難乾燥性のために、賦形剤(デキストリンまたはその他の糖類)を高濃度で配合する必要があった。さらにこのような乾燥を行う際、予め抽出エキスを濃縮しておくことが望ましいが、高分子多糖類等、高分子物質が多い状態では、粘度が上がりすぎるので十分に濃縮できず、乾燥に長時間を要する。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、生理活性に優れた低分子物質を多く含む低分子画分の含有量の高いカキ抽出エキス、およびそのエキスを得るための製造方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題を鑑み鋭意研究した結果、原料となる生カキに対して、抽出前に外套膜のタンパク質を変性させる工程を施すこと、さらに該抽出を水で行うことによって、低分子画分を高濃度に含むカキ抽出エキスを得ることに成功し本発明を成功するに至った。すなわち、本発明は、以下の通りである。
(1)分子量3,000以下の物質からなる低分子画分を40重量%以上含有するカキ抽出エキス。
(2)低分子画分と分子量10,000以上の物質からなる高分子画分との重量比が低分子画分1重量部に対して高分子画分が1.5重量部以下である、上記(1)記載のカキ抽出エキス。
(3)水分含量が13重量%以下である、上記(1)または(2)記載のカキ抽出エキス。
(4)脂質含量が1重量%以下である、請求項1〜3のいずれかに記載のカキ抽出エキス。
(5)乾燥粉末の形態である、上記(1)〜(4)のいずれかに記載のカキ抽出エキス。
(6)アルコール処理物、就中無水エタノール処理物である、上記(1)〜(5)のいずれかに記載のカキ抽出エキス。
(7)生カキの外套膜のタンパク質を変性させた後、該カキを水により抽出することを特徴とする、カキ抽出エキスの製造方法。
(8)前記変性が、95℃〜100℃の熱水に生カキを接触させることによって行なわれるものである、上記(7)記載のカキ抽出エキスの製造方法。
(9)熱水への生カキの接触が30秒〜1分間行なわれる、上記(8)記載のカキ抽出エキスの製造方法。
(10)前記水の温度が5℃〜20℃である、上記(7)〜(9)いずれかに記載のカキ抽出エキスの製造方法。
(11)さらに、前記カキ抽出エキスを固形分50〜65重量%になるまで濃縮する工程を含む、上記(7)〜(10)のいずれかに記載のカキ抽出エキスの製造方法。
(12)さらに、非加熱乾燥方法により乾燥する工程を含む、上記(11)記載のカキ抽出エキスの製造方法。
(13)さらに、アルコール処理工程を含む、上記(12)記載のカキ抽出エキスの製造方法。
(14)上記(7)〜(13)のいずれかに記載の製造方法によって得られる、上記(1)〜(6)のいずれかに記載のカキ抽出エキス。
【0010】
本発明は、分子量3,000以下の物質からなる低分子画分を、40重量%以上含有するカキ抽出エキスを提供する。本明細書中で用いられる「分子量3,000以下の物質」との用語は、生理活性に優れた分子量が3,000以下のペプチド(カルノシン、アンセリン等)、遊離アミノ酸、および有機物を含むミネラル類(有機性ミネラル類)を意味する。分子量が3,000より大きな物質は体内での消化性が劣り、また加工特性も劣るため好ましくない。また本明細書中で用いられる「生理活性」との用語は、高血圧症の予防効果、コレステロールの低下作用、血糖値の急激な上昇を抑制する作用、脂肪代謝の促進などを意味する。本発明のカキ抽出エキスは、低分子画分を総抽出物の40重量%以上含有することを特徴とするが、これにより、体内での消化性が高められる。また、加工特性も高められる。低分子画分を50重量%以上含有するのがより好ましく、55重量%以上含有するのがさらに好ましい。例えば低分子画分を70重量%程度含有するカキ抽出エキスは、該低分子画分に由来する生理活性に優れ、且つエキスとしての全体のバランスにも優れ、従来のカキ抽出エキスでは得られなかった製剤あるいは加工食品等としての有用性を持つ。
【0011】
好適な実施態様において、本発明のカキ抽出エキスは、低分子量画分と分子量10,000以上の物質からなる高分子画分との重量比が、低分子画分1重量部に対して高分子画分が1.5重量部以下、好ましくは1重量部以下、より好ましくは0.8重量部以下である。例えば高分子画分が0.4重量部程度に抑えられたカキ抽出エキスは、低分子画分の相対的濃度が高まり、それによって該低分子画分の有する生理活性作用が有効に利用できる。本明細書中で用いる「分子量10,000以上の物質」との用語は、ミオシン、パラミオシン等のタンパク質、またはグリコーゲン等の多糖類を意味する。本発明において、低分子画分の含有量ならびに高分子画分との重量比は、ゲルろ過クロマトグラフィー等公知の手法により測定し得る。具体的には、カキ抽出エキスをゲルろ過クロマトグラフィーで分子量ごとに分画し、乾燥後、精秤することによって測定され得る。
【0012】
本発明のカキ抽出エキスは、後述の本発明のカキ抽出エキスの製造方法によって好適に製造することができる。すなわち、原料となる生カキの外套膜を変性させた後、水で抽出することにより、低分子画分を高濃度に含有する、すなわち40重量%以上含有する当該カキ抽出エキスが得られる。
【0013】
本発明のカキ抽出エキスは、液状、シロップ状、固体状、等いかなる形態のものであってもよいが、以降の加工処理等を考慮して、乾燥粉末の形態であることが好ましい。この乾燥は後述の非加熱乾燥法によって行うことが好ましい。
【0014】
本発明はまた、上記低分子画分を高濃度に含有するという特徴に加え、水分含量および/または脂質含量が少ないという特徴を併せ持つカキ抽出エキスを提供する。当該カキ抽出エキスは、原料となる生カキの外套膜を変性させた後、水で抽出し、さらに乾燥したエキス粉末をアルコール等の脱水、脱脂作用を有する溶媒で処理することによって好適に得ることができる。より具体的には、アルコール処理物、就中無水エタノール処理物が挙げられる。当該アルコール処理は具体的には後述のアルコール処理法によって行うことができる。当該アルコール処理物は、水分含量、脂質含量ともに少なく、さらに嵩密度が小さくて、流動性に優れている。脂質含量が少ないことにより、保存時に問題となる酸化が抑えられ、従来品でしばしば問題となるカキ抽出エキスの魚臭が改善される。水分含量は13重量%以下、好ましくは12重量%以下、特に7重量%以下であり、脂質含量は1重量%以下、好ましくは0.7重量%以下、特に0.5重量%以下であることが好ましい。アルコール処理の代替として、本発明と同等の効果を有しかつ生体に悪影響を及ぼさないものであれば、各種の有機溶媒による処理を用いることができ、その例として、ヘキサン処理が挙げられる。
【0015】
本発明はまた、生カキの外套膜のタンパク質を変性させた後、該カキを水により抽出することを特徴とするカキ抽出エキスの製造方法を提供する。外套膜のタンパク質を変性させる方法としては、加熱等の手段が挙げられるが、好ましくは、95℃〜100℃の熱水に生カキを、好ましくは、30秒〜1分間、接触させることによって行なわれる。水抽出に使用する水の温度は、好ましくは、5℃〜20℃である。5℃よりも低い水では抽出効率が十分でなく、20℃より高い水では高分子画分の混入が懸念される。本発明のカキ抽出エキスの製造方法によれば、抽出前にカキの外套膜のタンパク質を変性することによって、外套膜の物理的損傷を最小限に留めることができる。これにより、過剰なタンパク質および高分子多糖類の抽出が防止され得る。また、本発明のカキ抽出エキスの製造方法によれば、吸湿性の高いグリコーゲン等の高分子多糖類が抽出されないため、デキストリン等の賦形剤を必要としない。
【0016】
かくして低分子画分を40重量%以上含有し、低分子画分と高分子画分との重量比が低分子画分1重量部に対して高分子画分が1.5重量部以下のカキ抽出エキスが得られる。
【0017】
好適な実施態様において、本発明の製造方法は、さらに、カキ抽出エキスを固形分50〜65重量%になるまで濃縮する工程を含む。この濃縮は、好ましくは、膜ろ過、または真空低温濃縮による。本発明においては前述の如く、予めカキ外套膜の変性処理を行うことにより、タンパク質、多糖類等の高分子の同時抽出による混入を極力抑えているため、固形分50〜65重量%まで濃縮しても沈殿が析出することが極めて少なく、固形分を多く含有する、すなわち高濃度のエキス(低分子画分の絶対量が多くなる)を調製することができる。また、この濃縮工程を行うことによって、以降の乾燥工程がより経済的で効率的なものとなる。
【0018】
好適な実施態様において、本発明の製造方法は、さらに、該濃縮エキスを非加熱乾燥方法により乾燥する工程を含む。当該乾燥を非加熱条件下で行うことにより、熱処理時に生成する恐れのある変異原性物質(例えば、トリプP−1)やメイラード反応物質(例えば、メラノイジン)等、食品衛生上好ましくない物質を排除し得る。この非加熱乾燥方法には、噴霧乾燥法、凍結乾燥法などが挙げられ得る。この非加熱乾燥工程の前には、イオン強度を高めておくことが好ましい。
【0019】
好適な実施態様において、本発明の製造方法は、さらに、アルコール処理工程を含む。ここで「処理」とは、当該アルコールと接触させることを意味し、通常は浸漬することによって行なわれる。当該処理は、処理前のエキスの状態にもよるが、通常30分程度〜数時間、好ましくは2時間程度実施する。当該処理に使用するアルコールは、生体に悪影響を及ぼさないものであれば特に限定されないが、安全性等の点からも無水エタノールが好ましい。アルコール処理の代替として、本発明と同等の効果を有し且つ生体に悪影響を及ぼさないものであれば、各種の有機溶媒による処理を用いることができ、その例として、ヘキサン処理が挙げられる。
【0020】
当該アルコール処理(およびそれと同等の処理を含む)により、エキス粉末の脂質が取り除かれる。このような脂質の除去効果によりエキス粉末の消化吸収性が高められ、さらに粉末の流動特性も改善されるのでエキス粉末の造粒加工および打錠加工が容易となる。当該脂質の除去により、得られるカキ抽出エキスの脂質含量は1重量%以下、好ましくは0.7重量%以下、特に0.5重量%以下となる。脂質含量が1重量%を超えると、該カキ抽出エキス保存時の脂質の酸化が、香味劣化をまねくという問題が顕著となり、さらに上述のような効果が乏しくなる。
【0021】
また、当該アルコール処理(およびそれと同等の処理を含む)により、エキス粉末の水分が取り除かれる。このような水分の除去効果により、得られるカキ抽出エキスの流動特性が改善され、上述の脱脂効果と同様、エキス粉末の造粒加工および打錠加工が容易となる。当該水分の除去により、得られるカキ抽出エキスの水分含量は13重量%以下、好ましくは12重量%以下、特に7重量%以下となる。水分含量が13重量%より大きい場合、粉末が凝集または溶解し、作業性および脱脂効果が劣るからである。
【0022】
さらに、当該アルコール処理(およびそれと同等の処理を含む)により、得られるカキ抽出エキスの嵩密度を低くすることができる。アルコール未処理のものに比べ20重量%程度嵩密度を減少させることができる。より具体的には1.5〜2g/cm程度の嵩密度のカキ抽出エキスが得られる。当該嵩密度の減少により取り扱いが容易となり、また造粒加工および打錠加工が容易となる。
【0023】
本発明のさらに別の実施態様によれば、乾燥工程後に部分的に塊状となった乾燥エキス粉末の粒径を、粉砕機等を用いて人為的に調整することによって、粉末の流動性をさらに高めることができる。
【0024】
【実施例】
実施例1
生カキ200kgを網に入れ、95℃の熱水中に1分間浸漬し、外套膜を加熱変性させた後、直ちに取り出した。15℃の冷水1,000kgを攪拌機付きタンクに貯え、その中に先に調製しておいた加熱処理したカキを入れ、20rpm程度で2時間緩やかに攪拌しながら抽出を行った。次いで、抽出後のカキ等の不溶物を取り除き、膜ろ過を行って抽出エキス(固形分0.3重量%程度)を得た。得られた抽出エキスを濃縮して固形分を4重量%程度まで高めた後、さらに減圧濃縮を行って固形分を50重量%程度まで濃縮した。その後、抽出エキスを噴霧乾燥(ノズル出口温度80℃、スプレー管内温度110℃)して粉末物(2.55kg)を得た。上記固形分はケット水分計を用いて測定した。
【0025】
このエキス粉末に無水エタノール5,000mlを加えて2時間浸漬した後、ろ紙ろ過を行った。これを、風乾して本発明のカキ抽出エキス粉末(2.43kg)を得た。得られたカキ抽出エキス粉末の低分子画分濃度は59重量%であり、高分子画分との重量比は低分子画分1重量部に対して高分子画分およそ0.7重量部であった(後記実験例1参照)。
【0026】
参考例1(従来の熱水抽出法)
生カキを80〜90℃の熱水で1時間程度抽出後、この抽出液をろ過し、そのろ液を30重量%程度まで濃縮する。この濃縮液にデキストリンを加え、噴霧乾燥して粉末を得る。得られたカキ抽出エキス粉末の低分子画分濃度は35重量%であり、高分子画分との重量比は低分子画分1重量部に対して高分子画分およそ1.9重量部であった(後記実験例1参照)。
【0027】
実験例1
低分子画分の割合
実施例1で得られた本発明のカキ抽出エキスならびに参考例1で得られた従来のカキ抽出エキスについて、高分子画分(分子量1万以上)および低分子画分(分子量300〜3,000)の重量比を、ゲルろ過クロマトグラフィーで分子量ごとに分画後、乾燥させて精秤することによって、測定した。結果を表1に示す。
【0028】
【表1】
Figure 0003551366
【0029】
表1に見られるように、参考例1(従来の製造法によるエキス粉末)のカキ抽出エキス中では低分子画分が35重量%であったが、本発明による製造方法では59重量%という高い割合で低分子画分を含むカキ抽出エキスが得られた。
【0030】
消化性
さらに、カキ抽出エキス粉末の消化性を検証した。実施例1および参考例1のカキ抽出エキス粉末について5%水溶液(1.5ml)を胃ゾンデ針によりラットの胃内に強制経口投与し、門脈中の血漿遊離アミノ酸を、血漿試料液にスルホサリチル酸を添加後、遠心分離してタンパク質を除去し、その上澄液をクロマトディスクでろ過し、次いで、このろ液にニンヒドリン試薬を添加して沸騰水中でインキュベートし、氷冷後、570nmで比色定量することによって、経時的に定量し、血漿中の最大濃度ならびに最大濃度に達する迄の時間を算出した。その結果を以下の表2に示す。
【0031】
【表2】
Figure 0003551366
【0032】
本発明のカキ抽出エキス粉末(実施例1)を投与した場合、投与17分後に血漿中の遊離アミノ酸は8.85mMで最高値を示し、その後急激に減少した。一方、従来の製法によるカキ抽出エキス粉末(参考例1)を投与した場合、約27分後に7.98mMで最高値となった。このように、本発明により得られるカキ抽出エキス粉末の消化性は従来の製法によるものと比較して優れていた。
【0033】
実験例2:エタノール処理による消化性の改良
実施例1と同様にして得られたカキ抽出エキス粉末を無水エタノールに2時間浸漬した後、風乾させて(エタノール処理物を得た)。一方、該エタノール処理を行わなかったカキ抽出エキス粉末を比較品(エタノール未処理)として用いた。それぞれについて、消化酵素である胃分泌のペプシンおよび膵臓分泌のパンクレアチンを作用させ、ゲルろ過クロマトグラフィーにより高分子画分(主としてタンパク質が含まれる)および低分子画分(主としてペプチドが含まれる)のピークの変化を調べた。
【0034】
(酵素処理)
エキス粉末10mgをpH2.0の緩衝液1mlに溶解した後、ペプシン0.25mgを加え、37℃1時間作用させた。その後、この反応液をpH7.5に調節し、パンクレアチン0.25mgを加えて1時間作用させた。次いで、この溶液を80℃10分間加熱して酵素を失活させ、12,000rpmで10分間遠心分離して不溶物を取り除いた。この上澄液を、TSK−GEL G3000PWXLカラム(Tosoh社製)を使用したゲルクロマトグラフィーに供した。
【0035】
結果を図1に示す。図1によれば、エタノールで処理したカキ抽出エキス粉末は消化酵素によって高分子画分(分子量1万〜3万程度)が効率的に分解され、そのピークが顕著に小さくなっているのが分かる。一方、エタノールで処理していないカキ抽出エキス粉末は、高分子画分のピークの低下はわずかであった。これらの結果より、カキ抽出エキスは、エタノール処理を施すことにより、体内での消化において、より優れた効果を有することが示唆される。
【0036】
実験例3:非加熱乾燥による消化性の改良
実施例1と同様にして、噴霧乾燥によってカキ抽出エキス粉末を得た(噴霧乾燥品)。カキ抽出エキスの乾燥をドラム乾燥(ドラム温度140℃)によって行う以外は実施例1と同様にして、カキ抽出エキス粉末を得た(ドラム乾燥品)。それぞれ無水エタノールに2時間浸漬した後、風乾させた。それぞれについて実験例2と同様にしてペプシンおよびパンクレアチンを作用させ、ゲルろ過クロマトグラフィーにより高分子画分(主としてタンパク質が含まれる)および低分子画分(主としてペプチドが含まれる)のピークの変化を調べた。ドラム乾燥品についての結果を図2に示す。
【0037】
図1の噴霧乾燥品を消化酵素により処理した場合と比べて、図2のドラム乾燥品では、エタノール処理を行っても高分子画分が十分に消化されていない。ドラム乾燥では、乾燥工程において噴霧乾燥よりも過剰な加熱が行われているためにタンパク質変性をきたし、酵素分解を受け難い状態になっていることが示唆される。
【0038】
また、消化酵素処理時、消化されずに遠心分離による沈殿として得られる不溶物の量を測定した。当該不溶物の量は、消化酵素処理前のエキス粉末重量に対する、遠心分離後上澄液を除いた浸潤沈殿の重量割合(%)で表した。結果を表3に示す。
【0039】
【表3】
Figure 0003551366
【0040】
ドラム乾燥品は噴霧乾燥品よりも不溶物が多く、このことも消化性に劣る要因となっている可能性が示唆される。また、ドラム乾燥では、変異原性物質やメイラード反応物質を生成する可能性があり、当該乾燥時には、これらの有害物質が不溶物として沈殿してくることも考えられる。
【0041】
これらの結果から、乾燥の際に過剰な加熱の少ない本発明の噴霧乾燥エタノール処理品が特に消化性に優れていることがわかった。
【0042】
実験例4:加工特性(エタノール処理による造粒特性の改良)
実施例1と同様にして得られたカキ抽出エキス粉末を無水エタノールに2時間浸漬した後、風乾させた(エタノール処理)。一方、該エタノール処理を行わなかったカキ抽出エキス粉末を比較品(エタノール未処理)として用いた。各カキ抽出エキス粉末に10〜15%の水を添加して混和し、それを押出し造粒機を用いて120メッシュ金網に圧力2kg/cmで押出し、水分を5%程度まで乾燥させることによって、押出し造粒した。得られたカキ抽出エキス粒子を図3に示す。
【0043】
エタノール未処理の場合では、粒径にばらつきがあり微粉末が多く混じっていた。一方、エタノール処理の場合では、粒径が均一なものが得られた。これはエタノール処理をすることにより流動特性が高まったことによると考えられる。
【0044】
実験例5:エタノール処理による物性変化
実施例1と同様にして得られた噴霧乾燥によるカキ抽出エキス粉末の無水エタノール処理品について、その水分量、嵩密度および脂質含量について測定した。測定方法および結果を以下に示す。
【0045】
[測定方法]
水分量:ケット水分計(水分目盛×2)、試料2.5gを精秤。
嵩密度:円柱型ガラス管(直径1.1cm×高さ2.5cm)に粉末を入れ、高さ2cm程度から20回実験台に自然落下させた後、容積と重さを秤量する。
脂質量:塩酸で試料を加水分解後、エチルエーテルと石油エーテルで脂質を抽出し、エーテル画分を濃縮乾固させた後、残渣を秤量する(酸加水分解法)。
【0046】
[結果]
【0047】
【表4】
Figure 0003551366
【0048】
表4のように、エタノール処理品は未処理品に比べ水分量、脂質ともに少なくなっている。また、嵩密度についても未処理品に比べ低くなっている。
【0049】
水分量、嵩密度、脂質量の低下により流動特性が改善されると考えられる。また、カキ抽出エキス粉末は、酸化による強い魚臭の発生により商品価値が著しく低下するが、エタノール処理により脂質が除去されることで当該酸化が抑制できる。
【0050】
実験例6:エタノール処理による香味劣化の抑制
噴霧乾燥品に対する無水エタノール処理による、香味劣化の抑制効果を観察した。
【0051】
[方法]
実施例1と同様にして得られたカキ抽出エキス粉末を無水エタノールに2時間浸漬した後、風乾させた(エタノール処理品)。一方、該エタノール処理を行わなかったカキ抽出エキス粉末を比較品(エタノール末処理品)として用いた。エタノール未処理品および処理品それぞれをシャーレに入れ、65℃の恒温室に5日間および10日間保存したものを試料とした。それぞれの室温保存品(室温:20℃)を対照として、65℃保存品の香味変化の度合いを評価した。試料は蒸留水で500倍に希釈して試飲液とした。
Figure 0003551366
【0052】
結果を表5に示す。
【0053】
【表5】
Figure 0003551366
【0054】
エタノール未処理品は、65℃10日の保存で、室温保存品と比較して有意に香味が劣化していたが、エタノール処理品は香味変化に有意差は認められなかった。これは、エタノール処理によって脂質が除去されているために、経時的な酸化が抑制され、ひいては香味劣化が抑制されたものと考えられる。
【0055】
実験例7:非加熱乾燥により流動特性の改良
実施例1と同様にして、噴霧乾燥によってカキ抽出エキス粉末を得た(噴霧乾燥品)。カキ抽出エキスの乾燥をドラム乾燥(ドラム温度140℃)によって行う以外は実施例1と同様にして、カキ抽出エキス粉末を得た(ドラム乾燥品)。噴霧乾燥品ならびにドラム乾燥品それぞれについて無水エタノール未処理品および無水エタノール処理品を調製した。調製した各試料について粒子の形状を、光学顕微鏡を用いて観察した。噴霧乾燥品とドラム乾燥品の粒子の形状を比較すると、噴霧乾燥品は角が少なく滑らかな形状であるのに対し、ドラム乾燥品は、粒子の形状がいびつで流動特性が噴霧乾燥品よりも劣っていた。噴霧乾燥品は、エタノール処理をすることにより粒子が凝結し大きくなって、さらに流動特性が向上する。
【0056】
【発明の効果】
本発明のカキ抽出エキスは、生理活性を有する低分子画分の割合が高く、従ってさらなる精製工程等を行う必要なく種々の用途に好適に使用できる。特にアルコール処理したカキ抽出エキスは消化性、加工特性に優れ、香味の劣化も少ない。本発明のカキ抽出エキスは本発明のカキ抽出エキスの製造方法によって簡便に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】噴霧乾燥品のエタノール処理の有無による酵素分解性を示す図である。
【図2】ドラム乾燥品のエタノール処理品の酵素分解性を示す図である。
【図3】エタノール処理品とエタノール未処理品(ともに噴霧乾燥品)を押出し造粒法により造粒して得られる、粒子構造を示す写真である。

Claims (6)

  1. 生カキの外套膜のタンパク質を変性させた後、該カキを5℃〜20℃の水により抽出することを特徴とする、カキ抽出エキスの製造方法。
  2. 前記変性が、95℃〜100℃の熱水に生カキを接触させることによって行なわれるものである、請求項記載のカキ抽出エキスの製造方法。
  3. 熱水への生カキの接触が30秒〜1分間行なわれる、請求項記載のカキ抽出エキスの製造方法。
  4. さらに、前記カキ抽出エキスを固形分50〜65重量%になるまで濃縮する工程を含む、請求項のいずれかに記載のカキ抽出エキスの製造方法。
  5. さらに、非加熱乾燥方法により乾燥する工程を含む、請求項記載のカキ抽出エキスの製造方法。
  6. さらに、アルコール処理工程を含む、請求項記載のカキ抽出エキスの製造方法。
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