JP4310750B2 - ストレプトマイセス属に属するネマデクチン生産能を有する菌株、該菌株を用いるネマデクチンの製造法 - Google Patents
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Description
本発明はストレプトマイセス属に属するネマデクチン生産能を有する菌株、該菌株を用いるネマデクチンの製造法に関し、更に詳しくはネマデクチン生産能を有するストレプトマイセス属に属する微生物を用いるC−13ヒドロキシルネマデクチン及びC−13グリコシルネマデクチンの製造法及びストレプトマイセス・シアネオグリセウス・サブスピーシーズ・ノンシアノゲナスに属する菌株に関する。
ネマデクチンα R1=H R2=CH(CH3)2
β R1=H R2=CH3
γ R1=CH3 R2=CH3
δ R1=CH3 R2=CH(CH3)2
ネマデクチンのC−13位が飽和する理由はネマデクチンアグリコン部分の生成に関与するネマデクチンポリケチド合成酵素(ネマデクチンPKS)のモジュール7がKS−AT−DH−ER−KR−ACPという構成をしている為めである。飽和したC−13位について化学合成的に立体選択的修飾をもたらすことは構造上困難であり、下記構造のエバーメクチンのように糖付加による抗昆虫・抗寄生虫活性の上昇への期待がもてるにもかかわらず、化学合成による誘導体の製造はなされていなかった。
上記のように、化学合成ではネマデクチンのC−13位に立体選択的に水酸基を導入することやその水酸基を配糖化することは困難とされていた構造を、本発明者らは、鋭意研究の結果、分子遺伝学的手法によってC−13グリコシルネマデクチン生産菌を作製することにより立体選択的に配糖化されたネマデクチンを効率的に取得することに成功した。
本発明はこのような知見に基いて完成されたものであり、その目的は分子遺伝学的手法によってC−13グリコシルネマデクチン生産菌を作製し、立体選択的に配糖化されたネマデクチンを効率的に取得することができ、その生物活性の改善を期待し得る、ストレプトマイセス属に属するネマデクチン生産能を有する菌株を提供するものである。
本発明の他の目的は、ネマデクチンを生産するストレプトマイセス属に属する微生物に、ネマデクチン類似化合物を生産する微生物のDNAを導入してC−13ヒドロキシルネマデクチン及びC−13グリコシルネマデクチンを生産蓄積させ採取するネマデクチンの製造法を提供するものである。
なお、本菌株は、ストレプトマイセス・シアネオグリセウス・サブスピーシーズ・ノンシアノゲナス(Streptomyces cyaneogriseus subsp.noncyanogenus)ΔnemA4::vph attBTG1::aveA4−aveA3−aveE attBφC31::aveRとして、特許手続上の微生物の寄託の国際的承認に関するブタペスト条約に基ずき日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6(郵便番号305−8566)[AIST Tsukuba Central 6,1−1,Higashi 1−Chome Tsukuba−shi,Ibaraki−ken 305−8566 Japan]の独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(International Patent Organism Depositary National Institute of Advanced Industrial Science and Technology)に寄託した。受託日は平成15年6月6日であり、受託番号はFERM BP−8395である。
さらにまた、エバーメクチンの配糖化及びオレアンドロース生合成に関与するaveBI−BVIII遺伝子群を導入した菌株を作製し、C−13グリコシルネマデクチン生産株を作製した。
なお、本菌株は、ストレプトマイセス・シアネオグリセウス・サブスピーシーズ・ノンシアノゲナス(Streptomyces cyaneogriseus subsp.noncyanogenus)ΔnemA4::vph attBTG1::aveA4−aveA3−aveE attBφC31::aveR attBR4::aveB1−BVIIIとして、特許手続上の微生物の寄託の国際的承認に関するブタペスト条約に基ずき日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6(郵便番号305−8566)[AIST Tsukuba Central 6,1−1,Higashi 1−Chome Tsukuba−shi,Ibaraki−ken 305−8566 Japan]の独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(International Patent Organism Depositary National Institute of Advanced Industrial Science and Technology)に寄託した。受託日は平成15年6月6日であり、受託番号はFERM BP−8394である。
本発明はストレプトマイセス・シアネオグリセウス・サブスピーシーズ・ノンシアノゲナスに属する菌株を培地で培養し、培養物中にC−13グリコシルネマデクチンを生産蓄積させ、該培養物よりC−13グリコシルネマデクチンを採取するC−13グリコシルネマデクチンの製造法である。また、本発明は、ストレプトマイセス・シアネオグリセウス・サブスピーシーズ・ノンシアノゲナスに属し、C−13ヒドロキシルネマデクチン及びC−13グリコシルネマデクチン生産能を有する菌株である。
以上のごとく、ネマデクチンを生産するストレプトマイセス属に属する微生物に、ネマデクチン類似化合物を生産する微生物のDNAを導入してC−13ヒドロキシルネマデクチン及びC−13グリコシルネマデクチンを生産蓄積せしめたという報告は未だ知られていない。
従って、本発明はストレプトマイセス・シアネオグリセウス・サブスピーシーズ・ノンシアノゲナスに属し、C−13位配糖化ネマデクチン生産能を有する菌株を提供するものである。
更に本発明はストレプトマイセス・シアネオグリセウス・サブスピーシーズ・ノンシアノゲナスに属し、C−13位水酸化ネマデクチン生産能を有する菌株を提供するものである。
更に本発明はストレプトマイセス・シアネオグリセウス・サブスピーシーズ・ノンシアノゲナスに属し、C−13位水酸化ネマデクチン生産能を有する微生物を培地で培養し、培養物中にC−13位水酸化ネマデクチンを生産蓄積させ、該培養物よりC−13位水酸化ネマデクチンを採取するC−13位水酸化ネマデクチンの製造法を提供するものである。
更に本発明はストレプトマイセス・シアネオグリセウス・サブスピーシーズ・ノンシアノゲナスに属し、C−13位配糖化ネマデクチン生産能を有する微生物を培地で培養し、培養物中にC−13位配糖化ネマデクチンを生産蓄積させ、該培養物よりC−13位配糖化ネマデクチンを採取するC−13位配糖化ネマデクチンの製造法を提供するものである。
更に本発明はストレプトマイセス・シアネオグリセウス・サブスピーシーズ・ノンシアノゲナスに属し、ストレプトマイセス・アベルミチリスのエバーメクチンアグリコン生合成遺伝子群を保有するC−13位水酸化ネマデクチン生産能を有する微生物及びその製造法を提供するものである。
更に本発明はストレプトマイセス・シアネオグリセウス・サブスピーシーズ・ノンシアノゲナスに属し、ストレプトマイセス・アベルミチリスのエバーメクチンアグリコン生合成遺伝子群を保有するC−13位配糖化ネマデクチン生産能を有する微生物及びその製造法を提供するものである。
更に本発明はストレプトマイセス・シアネオグリセウス・サブスピーシーズ・ノンシアノゲナスに属し、ネマデクチンアグリコン生合成遺伝子群nemA3−4オペロンのKS10をコードする領域にバイオマイシン耐性遺伝子を挿入したネマデクチン非生産性の菌株(KS10挿入変位株)を提供するものである。
更に本発明はストレプトマイセス・シアネオグリセウス・サブスピーシーズ・ノンシアノゲナスに属し、上記KS10挿入変位株にストレプトマイセス・アベルミチリスのエバーメクチンアグリコン生合成遺伝子群aveA3−4を保有し、NemA1−2及びAVES3−4とのハイブリッドPKSを形成しうる微生物を提供するものである。
更に本発明はストレプトマイセス・シアネオグリセウス・サブスピーシーズ・ノンシアノゲナスに属し、NemA1−2及びAVES3−4とのハイブリッドPKSを形成しうる微生物でストレプトマイセス・アベルミチリスのエバーメクチン生合成遺伝子群の制御遺伝子aveRを保有する菌株を提供するものである。
更に本発明はストレプトマイセス・シアネオグリセウス・サブスピーシーズ・ノンシアノゲナスに属し、NemA1−2及びAVES3−4とのハイブリッドPKSを形成しうる微生物でストレプトマイセス・アベルミチリスのエバーメクチン生合成遺伝子群の制御遺伝子aveR及びエバーメクチン配糖化およびオレアンドロース生合成遺伝子群aveBI−BVIIIを保有する菌株を提供するものである。
第2図はネマデクチンKS10領域のSalI部位vph挿入断片の制限酵素地図であり、矢印は転写方向を示す。
第3図はC−13ヒドロキシルネマデクチンの1H−NMRスペクトルである。
第4図はC−13ヒドロキシルネマデクチンの13C−NMRスペクトルである。
第5図はC−13グリコシルネマデクチンの1H−NMRスペクトルである。
第6図はC−13グリコシルネマデクチンの13C−NMRスペクトルである。
(1)ネマデクチンPKS、KS10をコードするDNA断片のサブクローニング
ネマデクチンアグリコン合成酵素遺伝子を含むコスミドDNAのうち、モジュール10のKSドメイン(NEM−KS10)をコードするDNAを含むコスミドDNAを制限酵素BamHI(宝酒造社製、日本国)で消化した後、アガロースゲル電気泳動し、KS10領域を含有する3.0kbのDNA断片をジーンクリーンIIキット(バイオ101社製、米国)を用いて分離・精製した。また、プラスミドpUC19(宝酒造社製、日本国)は、BamHIで消化した後、alkaline phosphatase(Calf intestine)(宝酒造社製、日本国)で脱リン酸化した。NEM−KS10を含む3.0kb断片とpUC19のBamHI消化物、各々約0.1μgをLigation High(東洋紡社製、日本国)を用いて、16℃で16時間反応することで連結させた。
このDNA連結反応物10μlと大腸菌DH5αのコンピテントセル(日本ジーン社製、日本国)を接触させることにより、形質転換を行った。形質転換株の選択には、50μg/mlのアンピシリン(和光純薬社製、日本国)を含有した20mlのLB寒天培地を用い、0.1mol/Lイソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド(IPTG)水溶液、2%5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−β−D−ガラクトシド(X−gal、ナカライテスク社製、日本国)のジメチルホルムアミド(ナカライテスク社製、日本国)溶液を、あらかじめ各々50μl塗布しておいた。組換えプラスミドを保持する形質転換株のコロニーは、β−ガラクトシダーゼ活性を失っているため、X−galを分解できず、白色を呈する。この白コロニーをエーゼで拾い、10mlのLB培地に植菌し、37℃で16時間、振盪培養後、アルカリ法にて菌体からプラスミドを抽出・精製した。得られた組換えプラスミドの一部を制限酵素BamHIで消化し、3.0kbのDNA断片がpUC19に挿入されているプラスミドpUC19::NEM−KS10が得られていることを確認した。
(2)ストレプトマイセス・シアネオグリセウス・サブスピーシーズ・ノンシアノゲナス(Streptomyces cyaneogriseus sp.noncyanogenus)NRRL 15773由来BamHI 3.0kb DNA断片の末端配列の決定
はじめにサイクルシークエンス反応の鋳型DNAの調製を行なった。実施例1−(1)で得た組換えプラスミドpUC19::NEM−KS10に、ExpandTaqDNAポリメラーゼ緩衝液(Roch社製、米国)、dATP、dGTP、dCTP、dTTP、配列番号1に記載の5’−GTGCTGCAAGGCGATTAAGTTGG−3’の塩基配列を有する合成DNA、配列番号2に記載の5’−TCCGGCTCGTATGTTGTGTGGA−3’の塩基配列を有する合成DNAをプライマーセットとして添加し、ExpandTaqDNAポリメラーゼ(Roch社製、米国)を加えた後、96℃で5分間処理した後、96℃で30秒間、70℃で3分間の反応を1サイクルとして30サイクル繰り返した。反応終了後、エキソヌクレアーゼI(アマシャムファルマシアバイオテック社製、米国)及びアルカリフォスファターゼ(アマシャムファルマシアバイオテック社製、米国)を加え、37℃で15分間反応させた後、80℃で10分間処理して両酵素を失活させた。両酵素を失活させた後、これを鋳型DNAとしてIR標識プライマー(アロカ社製、日本国)及びThermo sequenase Fluorescent labelled primer cycle sequencing kit with 7−deaza−dGTP(アマシャムファルマシアバイオテック社製、米国)を添加し、サイクルシークエンス反応を行った。反応終了後、反応停止液を加え、混合し試料溶液とした。
この試料溶液を90℃、2分間加熱し、氷冷した後、シーケンス電気泳動を行った。電気泳動装置はDNAシーケンサーModel 4000シリーズ(LI−COR社製、米国)を使用し、電気泳動後のイメージの解析はBase Image IR Software Version 2.30のImage Analysis Version 2.10で行った。得られた各DNA断片の塩基配列をもとに、そのアミノ酸配列についてBLAST検索を行った結果、一端はS.avermitilis aveA4と相同性の高い配列、反対側の末端にはS.avermitilisのreductaseと相同性の高い配列が見いだされた。これらの塩基配列から、BamHI断片のネマデクチンPKS遺伝子の転写方向を確認した(第1図参照)。
(3)NEM−KS10領域へのバイオマイシン耐性遺伝子(viomycin phosphotransferase;vph)の挿入
pUC19::NEM−KS10を制限酵素BamHIで消化した後、アガロースゲル電気泳動し、KS10領域を含有する3.0kbのDNA断片を分離・精製した。また、pBluescript SK+(東洋紡社製、日本国)をBamHIで消化して得た約3.0kbのDNA断片0.1μgとNEM−KS10を含むBamHI断片0.1μgを混合し、Ligation High(東洋紡社製、日本国)を用いて、16℃で16時間反応することで連結させた。このDNA連結反応物10μlと大腸菌DH5αのコンピテントセルを接触させることにより形質転換を行い、pBluescript SK+にNEM−KS10断片を連結した組換えプラスミドpBluescript SK+::NEM−KS10を得た。さらに、pBluescript SK+::NEM−KS10を制限酵素HindIII(宝酒造社製、日本国)及びSstI(GIBCO BRL社製、米国)で消化し、アガロースゲル電気泳動して得た約3.0kbのNEM−KS10を含有するDNA断片と、プラスミドpUC19をHindIII及びSstIで制限酵素消化した約2.7kbのDNA断片を各々0.1μgずつ混合し、Ligation Highを用いて、16℃で16時間反応することで連結させた。このDNA連結反応物10μlを用いて大腸菌DH5αの形質転換を行い、pUC19−Bgl(pUC19のマルチクローニングサイトの両端EcoRIとHindIIIの外側にBglII切断配列AGATCTを挿入させたもの)にNEM−KS10断片を連結した組換えプラスミドpUC19−Bgl::NEM−KS10を得た。
vphはプラスミドpUC19::vphを制限酵素EcoRI(宝酒造社製、日本国)及びPstI(宝酒造社製、日本国)で消化した後、アガロースゲル電気泳動し、vphを含む1.7kbのDNA断片を分離・精製することによって得た。このvphを含む1.7kbのEcoRI/PstI DNA断片はBKL kit(宝酒造社製、日本国)を用いて37℃で15分間反応することでDNA末端の平滑化を行った。pUC19−Bgl::NEM−KS10を制限酵素SalI(宝酒造社製:日本国)で消化した後、BKL kitを用いてSalI切断部位の平滑末端化を行った。平滑末端化した断片と上記の平滑末端化したvph1.7kbのDNA断片と混合し、Ligation Highを用いてDNAの連結を行なった。このDNA連結反応物10μlを用いて大腸菌DH5αを形質転換し、KS10領域内にvphを挿入した組換えプラスミドpUC19−Bgl::NEM−KS10−vphを得た(第2図参照)。なお、形質転換体の選択には50μg/mlのアンピシリン及び150μg/mlのツベラクチノマイシンN含有のLB培地を用いた。
pUC19−Bgl::NEM−KS10−vphを制限酵素BglII(宝酒造社製、日本国)で消化した後、アガロースゲル電気泳動し、KS10−vph領域を含有する4.7kbのDNA断片を分離・精製した。放線菌用ベクタープラスミドpGM160を制限酵素BamHIで消化した後、アガロースゲル電気泳動し、6.8kbのDNA断片を分離・精製した。さらに、alkaline phosphatase(Calf intestine)を用いてDNA5’末端の脱リン酸化を行った。このpGM160 BamHI消化物とNEM−KS10−vph領域を含有する4.7kbのDNA断片を各々0.1μgずつ混合し、Ligation Highを用いてDNAの連結を行った。このDNA連結反応物10μlを用いて大腸菌DH5αを形質転換し、組換えプラスミドpGM160::NEM−KS10−vphを得た。なお、形質転換体の選択には50μg/mlのアンピシリン及び150μg/mlのツベラクチノマイシンN含有のLB培地を用いた。pGM160::NEM−KS10−vphを用いて大腸菌GM2929 hsdS::Tn10の形質転換を行った。なお、形質転換体の選択には30μg/mlのクロラムフェニコール(和光純薬社製、日本国)、50μg/mlのアンピシリン及び150μg/mlのツベラクチノマイシンN含有のLB培地を用いた。大腸菌GM2929 hsdS::Tn10の形質転換体から非メチル化プラスミドDNA pGM160::NEM−KS10−vphを調製した。
(4)ストレプトマイセス・シアネオグリセウス・サブスピーシーズ・ノンシアノゲナス(Streptomyces cyaneogriseus sp.noncyanogenus)NRRL 15773からのプロトプラストの調製
凍結(−30℃)保存してあるストレプトマイセス・シアネオグリセウス・サブスピーシーズ・ノンシアノゲナスの胞子懸濁液を50mlの30%w/vショ糖、0.5%w/vグリシン、5mM MgCl2を含むYEME培地(500ml容三角フラスコ)に移植し、ロータリーシェーカーで30℃、48時間培養した。菌体を3000rpm、10分間遠心して集め、20mlのP10培地を加えよく懸濁した後、3000rpm、10分間遠心して菌体を洗浄した。洗浄した菌体に1mg/mlの卵白リゾチーム含有のP10培地を加えて懸濁し、30℃で30分間保温してプロトプラストを生じさせた。10mlのP10培地を加えてよく混合した後、プロトプラスト懸濁液を綿栓フイルターに通しリゾチームで未消化の菌糸を除去した。綿栓フィルターを通過したプロトプラスト懸濁液を3000rpm、10分間遠心し、プロトプラストを沈澱させた。上清を除き10mlのP10培地でよく懸濁した後、3000rpm、10分間遠心しプロトプラストを沈澱させた。再度P10培地を10ml加え、プロトプラストを懸濁、遠心してプロトプラストを洗浄した。得られた洗浄プロトプラストを5mlのP10培地に懸濁し、0.1mlずつ滅菌したエッペンドルフチューブに分注した後、−80℃で保存した。
(5)染色体上のネマデクチンPKS、KS10領域にバイオマイシン耐性遺伝子(viomycin phosphotransferase;vph)を挿入した遺伝子交換体の作成
実施例1−(3)で得た組換えプラスミドpGM160::NEM−KS10−vph約1μgと実施例1−(4)で得たストレプトマイセス・シアネオグリセウス・サブスピーシーズ・ノンシアノゲナスのおよそ5×108個のプロトプラストを滅菌したエッペンドルフチューブに入れ、直ちに500μlの25%ポリエチレングリコールMW1000溶液(2.5%ショ糖、0.05%KH2PO4、0.1M CaCl2、50mM Tris−マレイン酸、pH8.0)を加えて混合し、室温で1分間放置した。次に、450μlのP10培地を加えてよく混合した後、その100μlずつをR2YE寒天培地上にのせ、2.5mlの軟寒天培地とともに塗り広げた。30℃で20時間培養した後、200g/mlのチオストレプトン(シグマ社製、米国)含有の軟寒天培地2.5mlを重層した。30℃で5日間培養し、チオストレプトンに耐性な形質転換体を得た。
R2YE寒天培地表面に生育したチオストレプトンに耐性の形質転換体を無菌的にかきとり、ホモジナイザーで菌糸を切断し、YMS寒天培地に塗り広げた。37℃で4日間培養し、胞子が着生したものをマスタープレートとしてツベラクチノマイシンN含有YMS寒天培地にレプリカした。30℃で2日間培養し、ツベラクチノマイシンに耐性のコロニーを選択し、それぞれをYMS寒天培地上に塗布した。これを30℃で5日間培養して胞子が着生したものをマスタープレートとし、20μg/mlチオストレプトン含有YMS寒天培地にレプリカして30℃で2日間培養した。ツベラクチノマイシンに耐性、チオストレプトンに感受性となった株を選択し、染色体上のネマデクチンPKS、KS10領域にvphが挿入したことをSouthern hybridization法で確認するとともにネマデクチンを生産しないことを確認した。得られたそれぞれの菌株はストレプトマイセス・シアネオグリセウス・サブスピーシーズ・ノンシアノゲナスΔnemA4::vph株(Streptomyces cyaneogriseus subsp.noncyanogenus ΔnemA4::vph)とした。
なお、本菌株は、ストレプトマイセス・シアネオグリセウス・サブスピーシーズ・ノンシアノゲナス(Streptomyces cyanogriseus subsp.noncyanogenus)ΔnemA4::vphとして、特許手続上の微生物の寄託の国際的承認に関するブタペスト条約に基ずき日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6(郵便番号305−8566)[AIST Tsukuba Central 6,1−1,Higashi 1−Chome Tsukuba−shi,Ibaraki−ken 305−8566 Japan]の独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(International Patent Organism Depositary National Institute of Advanced Industrial Science and Technology)に寄託した。受託日は平成15年6月6日であり、受託番号はFERM BP−8393である。
(6)ストレプトマイセス・エバーミチリス(Streptomyces avermitilis)由来エバーメクチンアグリコン合成酵素遺伝子aveA3−4の取得
ストレプトマイセス・エバーミチリスの染色体DNAを制限酵素EcoRIで消化し、低融点アガロースゲル電気泳動した後、aveA3−4全体を含有する配列番号3に記載の39912bpのDNA断片をゲルごと切り出し、フェノール抽出、フェノールクロロホルム抽出、アルコール沈澱することにより分離・精製した。また、染色体組込み型ベクタープラスミドpTG1int−cosを制限酵素EcoRIで消化した後、アガロースゲル電気泳動し、5.2kbのDNA断片を分離・精製した。このEcoRI消化したpTG1int−cosをalkaline phosphatase(Calf intestine)を用いてDNA5’末端の脱リン酸化を行った後、約0.5μgをaveA3−4全体を含有する39912bpのDNA断片約2μgと混合し、Ligation kit ver.2(宝酒造社製、日本国)のI液およびII液を用いて、25℃で10分間反応することで連結させた。
このDNA連結反応物をアルコール沈澱後、DNAを2μlのTE緩衝液に溶解した。これをReadyToGo Lambda Packaging Kit(アマシャムファルマシアバイオテック社製、米国)のPackaging Extractに加え、さらに23μlの滅菌水を加え室温で2時間放置した後、0.5mlのファージ希釈緩衝液(SM緩衝液)および30μlのクロロホルムを加え、転倒混和した。次いで、13200rpmで30秒間遠心し、上清を新たな滅菌エッペンドルフチューブに移し、ラムダファージパッケージング溶液を得た。
(7)エバーメクチンアグリコン合成酵素遺伝子aveA3−4を保有する大腸菌BL21 recA欠損株の取得
実施例1−(6)で得たラムダファージパッケージング溶液を用いて大腸菌BL21 recA欠損株を宿主としてトランスダクションを行った。宿主大腸菌BL21 recA欠損株をLB培地を用いて、37℃、一晩振盪培養したものを0.4%麦芽糖添加LB培地に1%となるように加え、37℃、3時間振盪培養した。遠心分離により菌体を回収し、10mM硫酸マグネシウム溶液を用いて洗浄した。さらに遠心分離により菌体を回収し、適量の10mM硫酸マグネシウム溶液に懸濁して宿主菌液を得た。この宿主菌液と実施例1−(6)で得たラムダファージパッケージング溶液をエッペンドルフチューブ内で1:1の割合で混合し、室温で30分間静置した。その後、LB培地を加え、30℃で1.5時間振盪したものをカナマイシン(50μg/ml)含有LA培地上に塗布し、30℃で一晩培養した。カナマイシン耐性のコロニーを96穴テストプレートにライブラリーとして培養し、その中から配列番号4に記載の合成DNAとハイブリダイズするコスミドDNAを保有するクローンを選択した。エバーメクチンアグリコン合成酵素遺伝子aveA3−4を保有する組換えプラスミドDNAは、カナマイシン(50μg/ml)含有LB培地を用いて一晩培養した菌体から常法にしたがってアルカリ法で精製した。
実施例1−(5)で得たネマデクチンPKSモジュール10領域vph挿入株の胞子懸濁液を50mlの30%w/vショ糖、0.5%w/vグリシン、5mM MgCl2を含むYEME培地(500ml容三角フラスコ)に移植し、ロータリーシェーカーで30℃、48時間培養した。菌体を3000rpm、10分間遠心して集め、20mlのP10培地を加えよく懸濁した後、3000rpm、10分間遠心して菌体を洗浄した。洗浄した菌体に1mg/mlの卵白リゾチーム含有のP10培地を加えて懸濁し、30℃で30分間保温してプロトプラストを生じさせた。10mlのP10培地を加えてよく混合した後、プロトプラスト懸濁液を綿栓フィルターに通しリゾチームで未消化の菌糸を除去した。綿栓フィルターを通過したプロトプラスト懸濁液を3000rpm、10分間遠心し、プロトプラストを沈澱させた。上清を除き10mlのP10培地でよく懸濁した後、3000rpm、10分間遠心しプロトプラストを沈澱させた。再度P10培地を10ml加え、プロトプラストを懸濁、遠心してプロトプラストを洗浄した。得られた洗浄プロトプラストを5mlのP10培地に懸濁し、0.1mlずつ滅菌したエッペンドルフチューブに分注した後、−80℃で保存した。
このプロトプラストに実施例1−(7)で作製したpTG1int−cos::aveA3−4約1μgを加え、直ちに500μlの25%ポリエチレングリコールMW1000溶液(2.5%ショ糖、0.05%KH2PO4、0.1M CaCl2、50mM Tris−マレイン酸、pH8.0)を加えて混合し、室温で1分間放置した。次に、450μlのP10培地を加えてよく混合した後、その100μlずつをR2YE寒天培地上にのせ、2.5mlの軟寒天培地とともに塗り広げた。30℃で20時間培養した後、100μg/mlのネオマイシン(シグマ社製、米国)含有の軟寒天培地2.5mlを重層した。30℃で5日間培養し、ネオマイシンに耐性な形質転換体を得た。R2YE寒天培地表面に生育したネオマイシンに耐性の形質転換体を無菌的に2μg/mlネオマイシン含有YMS寒天培地に塗り広げた。得られたそれぞれの菌株はストレプトマイセス・シアネオグリセウス・サブスピーシーズ・ノンシアノゲナスΔnemA4::vph attBTG1::aveA4−aveA3−aveE株とした。
配列番号5に記載のエバーメクチン生合成遺伝子群の転写制御遺伝子aveRを含む制限酵素AgeI DNA断片を連結したベクタープラスミドpUCBM21::aveRを制限酵素XbaIおよびHindIIIで消化し、アガロースゲル電気泳動し、aveRを含有する3.27kbのDNA断片を分離・精製した。染色体組込み型ベクタープラスミドpUC19aad3”−intΦC31のXbaIおよびHindIII認識部位にaveR含有3.27kb XbaI−HindIII断片を連結し、大腸菌BL21ΔrecAを形質転換した。
実施例2で得たストレプトマイセス・シアネオグリセウス・サブスピーシーズ・ノンシアノゲナスΔnemA4::vph attBTG1::aveA4−aveA3−aveE株の胞子懸濁液を50mlの30%w/vショ糖、0.5%w/vグリシン、5mM MgCl2を含むYEME培地(500ml容三角フラスコ)に移植し、ロータリシェーカーで30℃、48時間培養した。菌体を3000rpm、10分間遠心して集め、20mlのP10培地を加えよく懸濁した後、3000rpm、10分間遠心して菌体を洗浄した。洗浄した菌体に1mg/mlの卵白リゾチーム含有のP10培地を加えて懸濁し、30℃で30分間保温してプロトプラストを生じさせた。10mlのP10培地を加えてよく混合した後、プロトプラスト懸濁液を綿栓フィルターに通しリゾチームで未消化の菌糸を除去した。綿栓フィルターを通過したプロトプラスト懸濁液を3000rpm、10分間遠心し、プロトプラストを沈澱させた。上清を除き10mlのP10培地でよく懸濁した後、3000rpm、10分間遠心しプロトプラストを沈澱させた。再度P10培地を10ml加え、プロトプラストを懸濁、遠心してプロトプラストを洗浄した。得られた洗浄プロトプラストを5mlのP10培地に懸濁し、0.1mlずつ滅菌したエッペンドルフチューブに分注した後、−80℃で保存した。このプロトプラストに上記で得たプラスミドDNA pUC19aad3”−intΦC31::aveR約1μgを加え、直ちに500μlの25%ポリエチレングリコールMW1000溶液(2.5%ショ糖、0.05%KH2PO4、0.1M CaCl2、50mM Tris−マレイン酸、pH8.0)を加えて混合し、室温で1分間放置した。
次に、450μlのP10培地を加えてよく混合した後、その100μlずつをR2YE寒天培地上にのせ、2.5mlの軟寒天培地とともに塗り広げた。30℃で20時間培養した後、スペクチノマイシン3mg/ml含有軟寒天培地2.5mlを重層した。30℃で5日間培養しスペクチノマイシンに耐性な形質転換体を得た。R2YE寒天培地表面に生育したスペクチノマイシンに耐性の形質転換体を無菌的に300μg/mlスペクチノマイシン含有YMS寒天培地に塗り広げた。得られたそれぞれの菌株はストレプトマイセス・シアネオグリセウス・サブスピーシーズ・ノンシアノゲナスΔnemA4::vph attBTG 1::aveA4−aveA3−aveE attBφC31::aveR株とした。
実施例3で得た染色体上ネマデクチンPKSモジュール7vph挿入株にaveA3−4およびaveRを組み込んだ株をネマデクチン種培地に植菌し、30℃で3日間振盪培養したもの1mLを500mL容三角コルベンに分注したネマデクチン生産培地50mLに加えた。これを28℃で5日間、180rpmで振盪培養した後、3000rpmで10分間遠心し、菌体を回収した。得られた菌体をアセトンで懸濁し、室温で1時間攪拌した後、菌体とアセトン層を分取し、アセトン層について溶媒留去した。溶媒乾固した物質に水およびクロロホルムを加え攪拌した後、クロロホルム層を分取し、無水硫酸ナトリウムを加え脱水処理を行った。クロロホルム層の溶媒留去を行い、得られた残留物を粗抽出物とした。粗抽出物をごく少量のクロロホルムに溶解し、クロロホルムで平衡化したシリカゲル(シグマ社製、米国)カラムに通塔し、クロロホルムで洗浄した後、25%v/v酢酸エチル/クロロホルムで洗浄し、C−13ヒドロキシルネマデクチンを含まない画分を除去した。次いで、40%v/v酢酸エチル/クロロホルムで溶出される画分を除去し、50%v/v酢酸エチル/クロロホルムでC−13ヒドロキシルネマデクチンを多く含む画分を集めた後、得られた溶出液を減圧乾固して黄色油状の物質を得た。次いで、得られた黄色油状の物質は以下の条件でHPLCを用いて分離・精製した。
Pegasil ODSカラム(ODS 3μm、カラムサイズ20φmm×250mm;センシュー科学社製、日本国)を用い、アセトニトリル50%、メタノール18%、水32%の混合溶媒を移動相、検出246nm、流速8mL/minで分離した時、保持時間28分の成分を単離した。得られた化合物は、1H−NMRスペクトル(第3図参照)データ、及び13C−NMRスペクトル(第4図参照)データおよびマススペクトルデータ(M+1=629)によってその構造を解析し、下記式で表されるC−13ヒドロキシルネマデクチンα(分子式:C36H52O9)であることを確認した。
配列番号6記載の11041bpのDNA断片、すなわちaveBI−BVIII全体を含有するDNAを連結したpUC19::aveBI−BVIIIを制限酵素XbaIおよびHindIIIで消化し、aveBI−BVIII全体を含有するDNA断片を低融点アガロースゲル電気泳動した後、フェノール抽出、フェノールクロロホルム抽出、アルコール沈澱することにより分離・精製した。また、染色体組込み型ベクタープラスミドpUC19intR4−tsrを制限酵素XbaI−HindIIIで消化した後、アガロースゲル電気泳動し、11kbのDNA断片を分離・精製した。これらのDNA断片をLigation Highを用いて連結し、このDNA連結反応物10μlを用いて大腸菌BL21ΔrecAを形質転換し、組換えプラスミドpUC19intR4−tsr::aveBI−BVIIIを得た。なお、形質転換体の選択には50μg/mlのアンピシリン含有のLB培地を用いた。
実施例3で得たストレプトマイセス・シアネオグリセウス・サブスピーシーズ・ノンシアノゲナスΔnemA4::vph attBTG1::aveA4−aveA3−aveE attBφC31::aveR株の胞子懸濁液を50mlの30%w/vショ糖、0.5%w/vグリシン、5mM MgCl2を含むYEME培地(500ml容三角フラスコ)に移植し、ロータリシェーカーで30℃、48時間培養した。菌体を3000rpm、10分間遠心して集め、20mlのP10培地を加えよく懸濁した後、3000rpm、10分間遠心して菌体を洗浄した。洗浄した菌体に1mg/mlの卵白リゾチーム含有のP10培地を加えて懸濁し、30℃で30分間保温してプロトプラストを生じさせた。10mlのP10培地を加えてよく混合した後、プロトプラスト懸濁液を綿栓フィルターに通しリゾチームで未消化の菌糸を除去した。綿栓フィルターを通過したプロトプラスト懸濁液を3000rpm、10分間遠心し、プロトプラストを沈澱させた。上清を除き10mlのP10培地でよく懸濁した後、3000rpm、10分間遠心しプロトプラストを沈澱させた。再度P10培地を10ml加え、プロトプラストを懸濁、遠心してプロトプラストを洗浄した。得られた洗浄プロトプラストを5mlのP10培地に懸濁し、0.1mlずつ滅菌したエッペンドルフチューブに分注した後、−80℃で保存した。このプロトプラストに実施例5で得たプラスミドDNA pUC19intR4−tsr::aveBI−BVIII約1μgを加え、直ちに500μlの25%ポリエチレングリコールMW1000溶液(2.5%ショ糖、0.05%KH2PO4、0.1M CaCl2、50mM Tris−マレイン酸、pH8.0)を加えて混合し、室温で1分間放置した。
次に、450μlのP10培地を加えてよく混合した後、その100μlずつをR2YE寒天培地上にのせ、2.5mlの軟寒天培地とともに塗り広げた。30℃で20時間培養した後、チオストレプトン200μg/ml含有軟寒天培地2.5mlを重層した。30℃で5日間培養しチオストレプトンに耐性な形質転換体を得た。R2YE寒天培地表面に生育したチオストレプトンに耐性の形質転換体を無菌的に20μg/mlチオストレプトン含有YMS寒天培地に塗り広げた。得られたそれぞれの菌株はストレプトマイセス・シアネオグリセウス・サブスピーシーズ・ノンシアノゲナスΔnemA4::vph attBTG1::aveA4−aveA3−aveE attBφC31::aveR attBR4::aveBI−BVIIIとした。
実施例6で得た染色体上ネマデクチンPKSモジュール10のvph挿入株にaveA3−4,aveRおよびaveBI−BVIIIを組み込んだ株をネマデクチン種培地に植菌し、30℃で3日間振盪培養したもの1mLを500mL容三角コルベンに分注したネマデクチン生産培地50mLに加えた。これを28℃で5日間、180rpmで振盪培養した後、3000rpmで10分間遠心し、菌体を回収した。得られた菌体をアセトンで懸濁し、室温で1時間攪拌した後、菌体とアセトン層を分取し、アセトン層について溶媒留去した。溶媒乾固した物質に水およびクロロホルムを加え攪拌した後、クロロホルム層を分取し、無水硫酸ナトリウムを加え脱水処理を行った。クロロホルム層の溶媒留去を行い、得られた残留物を粗抽出物とした。粗抽出物をごく少量のクロロホルムに溶解し、クロロホルムで平衡化したシリカゲル(シグマ社製、米国)カラムに通塔し、クロロホルムで洗浄した後、30%v/v酢酸エチル/クロロホルムで洗浄し、C−13グリコシルネデクチンを含まない画分を除去した。次いで、40%v/v酢酸エチル/クロロホルムで溶出される画分、50%v/v酢酸エチル/クロロホルムで溶出される画分を集めた後、得られた溶出液をそれぞれ減圧乾固して黄色油状の物質を得た。次いで、得られた黄色油状の物質をHPLCを用いて分離・精製した。
カラムはPegasil ODS(3μm、カラムサイズ20φ×250mm;センシュー科学社製)を使用し、アセトニトリル・メタノール・水を55:18:27の割合で混合したものを移動層として用いた。流速は6mL/minに設定し、246nmの吸収を指標に、保持時間120分の成分を分取した。得られた化合物は1H−NMRスペクトル(第5図参照)データ、及び13C−NMRスペクトル(第6図参照)データ、マススペクトルデータ(M+1=917)によってその構造を解析し、下記式C−13グリコシルネマデクチンα(分子式:C50H76O15)であることを確認した。
前記の各実施例において使用した各種培地および緩衝液の組成は以下に示す通りである。
ファージ希釈緩衝液(SM緩衝液)
Tris塩酸(pH7.5) 10mM
塩化ナトリウム 100mM
硫酸マグネシウム7水和物 10mM
サイクルシーケンス反応停止液
ブロモフェノールブルー 0.02%
EDTA(pH8.0) 20mM
ホルムアミド 95%
YEME培地
酵母エキス(Difco社製) 3g
麦芽エキス(Oxoid社製) 3g
ペプトン (Difco社製) 5g
グルコース 10g
ショ糖 300g
蒸留水 1000ml
pH無調整、121℃、1分間高圧蒸気滅菌。
微量元素溶液
塩化第2鉄6水和物 200mg
塩化亜鉛 40mg
塩化第2銅2水和物 10mg
塩化マンガン4水和物 10mg
ホウ酸ナトリウム10水和物 10mg
モリブデン酸アンモニウム4水和物 10mg
蒸留水 1000ml
P10培地
ショ糖 103g
硫酸カリウム 0.25g
塩化マグネシウム6水和物 2.03g
微量元素溶液 2.0ml
蒸留水 800ml
121℃、15分間の高圧蒸気滅菌後、以下の組成のものを無菌的に加える。
0.5%リン酸1カリウム 10ml
3.68%塩化カルシウム2水和物 100ml
0.25M TES*(pH7.2) 100ml
*N−トリス(ヒドロキシメチル)メチル−2−アミノエタンスルホン酸
R2YE寒天培地
ショ糖 103g
硫酸カリウム 0.25g
塩化マグネシウム6水和物 10.12g
グルコース 10g
カザミノ酸(Difco社製) 0.1g
寒天 22g
蒸留水 800ml
121℃、15分間の高圧蒸気滅菌後、以下の組成のものを無菌的に加える。
微量元素溶液 2ml
0.5%リン酸1カリウム 10ml
3.68%塩化カルシウム2水和物 80ml
20%L−プロリン 15ml
0.25M TES(pH7.2) 100ml
10%酵母エキス(Difco社製) 50ml
1M 水酸化ナトリウム 5ml
軟寒天培地
ショ糖 103g
塩化マグネシウム6水和物 10.12g
寒天(Difco社製) 6.5g
蒸留水 820ml
121℃、15分間の高圧蒸気滅菌後、以下の組成のものを無菌的に加える。
3.68%塩化カルシウム2水和物 80ml
0.25M TES*(pH7.2) 100ml
YMS寒天培地
麦芽エキス(Difco社製) 10g
酵母エキス(Difco社製) 4g
可溶性澱粉(Difco社製) 4g
寒天 20g
蒸留水 1000ml
2M水酸化カリウムでpH7.4とした後、121℃、15分間高圧蒸気滅菌する。滅菌終了後、塩化マグネシウム、硝酸カルシウムを各々10mM、8mMと成るように加える。
LA培地
トリプトン(Oxoid社製) 10g
酵母エキス(Oxoid社製) 5g
塩化ナトリウム 5g
寒天 15g
蒸留水 1000ml
2M水酸化カリウムでpH7.2とした後、121℃、15分間高圧蒸気滅菌する。
ネマデクチン生産菌種培地
グルコース 10g
デキストリン 20g
酵母エキス 5g
NZ−アミンA 5g
炭酸カルシウム 1g
蒸留水 1000ml
pH無調整、121℃、15分間高圧蒸気滅菌する。
ネマデクチン生産培地
グルコース 50g
綿実粉 25g
炭酸カルシウム 7g
蒸留水 1000ml
pH無調整、121℃、15分間高圧蒸気滅菌する。
産業上の利用分野
以上のごとく本発明は、ネマデクチンを生産するストレプトマイセス属に属する微生物に、ネマデクチン類似化合物を生産する微生物のDNAを導入してC−13ヒドロキシルネマデクチン及びC−13グリコシルネマデクチンを生産蓄積せしめて、採取することができる。このように、分子遺伝学的手法によってC−13グリコシルネマデクチン生産菌を作製することで立体選択的に配糖化されたネマデクチンを効率的に取得することができ、抗昆虫・抗寄生虫等の生物活性の改善が期待される。
Claims (9)
- ストレプトマイセス・シアネオグリセウス・サブスピーシーズ・ノンシアノゲナスに属し、C−13位配糖化ネマデクチン生産能を有するストレプトマイセス・シアネオグリセウス・サブスピーシーズ・ノンシアノゲナス(Streptomyces cyaneogriseus subsp. noncyanogenus) ΔnemA4::vph attB TG1 ::aveA4−aveA3−aveE attBφ C31 ::aveR attB R4 ::aveB1−BVIII (FERM BP−8394)である菌株。
- ストレプトマイセス・シアネオグリセウス・サブスピーシーズ・ノンシアノゲナスに属し、C−13位水酸化ネマデクチン生産能を有するストレプトマイセス・シアネオグリセウス・サブスピーシーズ・ノンシアノゲナス(Streptomyces cyaneogriseus subsp. noncyanogenus) ΔnemA4::vph attB TG1 ::aveA4−aveA3−aveE attBφ C31 ::aveR(FERM BP−8395)である菌株。
- 請求項1記載のストレプトマイセス・シアネオグリセウス・サブスピーシーズ・ノンシアノゲナスに属し、C−13位配糖化ネマデクチン生産能を有する微生物を培地で培養し、培養物中にC−13位配糖化ネマデクチンを生産蓄積させ、該培養物よりC−13位配糖化ネマデクチンを採取することを特徴とするC−13位配糖化ネマデクチンの製造法。
- 請求項2記載のストレプトマイセス・シアネオグリセウス・サブスピーシーズ・ノンシアノゲナスに属し、C−13位水酸化ネマデクチン生産能を有する微生物を培地で培養し、培養物中にC−13位水酸化ネマデクチンを生産蓄積させ、該培養物よりC−13位水酸化ネマデクチンを採取することを特徴とするC−13位水酸化ネマデクチンの製造法。
- 請求項1記載のストレプトマイセス・シアネオグリセウス・サブスピーシーズ・ノンシアノゲナスに属し、ストレプトマイセス・アベルミチリスのエバーメクチンアグリコン生合成遺伝子群を保有するC−13位配糖化ネマデクチン生産能を有する微生物。
- 請求項2記載のストレプトマイセス・シアネオグリセウス・サブスピーシーズ・ノンシアノゲナスに属し、ストレプトマイセス・アベルミチリスのエバーメクチンアグリコン生合成遺伝子群を保有するC−13位水酸化ネマデクチン生産能を有する微生物。
- ストレプトマイセス・シアネオグリセウス・サブスピーシーズ・ノンシアノゲナスに属し、KS10挿入変異株にストレプトマイセス・アベルミチリスのエバーメクチンアグリコン生合成遺伝子群aveA3−4を保有し、NemA1−2及びAVES3−4とのハイブリッドPKSを形成する菌株。
- ストレプトマイセス・シアネオグリセウス・サブスピーシーズ・ノンシアノゲナスに属し、NemA1−2およびAVES3−4とのハイブリッドPKSを形成する微生物でストレプトマイセス・アベルミチリスのエバーメクチン生合成遺伝子群の制御遺伝子aveRを保有する菌株。
- ストレプトマイセス・シアネオグリセウス・サブスピーシーズ・ノンシアノゲナスに属し、NemA1−2及びAVES3−4とのハイブリッドPKSを形成する微生物でストレプトマイセス・アベルミチリスのエバーメクチン生合成遺伝子群の制御遺伝子aveR及びエバーメクチン配糖化およびオレアンドロース生合成遺伝子群aveB1−BVlll を保有する菌株。
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