JPWO2006126723A1 - 遺伝子組換え微生物およびそれらの微生物を用いるマクロライド系化合物の製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
そのようなポリケチド化合物の1つとしてプラジエノライドと命名された優れた抗腫瘍活性を示す一群のマクロライド系化合物がある。プラジエノライドは、放線菌ストレプトミセス・エスピー(Streptomyces sp.)Mer−11107株の培養物から見出された化合物群の総称であり、下記式(A)で示される11107B(プラジエノライドBというときがある)をはじめとして50種以上の類縁体が知られている(WO2002/060890参照)。
このようなプラジエノライドのうち、下記式(I)で示される16位水酸化体は、強い抗腫瘍活性等の優れた性質を有しているが、その生産性は11107Bの生産性よりも少なく、効率的な製造は難しかった。
(但し、Rは水素原子または水酸基を示す)
なお、式(I)において、Rが水素原子である化合物をME−282、Rが水酸基である化合物を11107DまたはプラジエノライドDというときがある。
その後、本出願人らの研究グループは、11107Bの16位水酸化反応を行う、プラジエノライド生産菌とは別の放線菌を見出し(WO2003/099813およびWO2004/050890参照)、それらの放線菌から11107Bの16位水酸化反応に関与するDNA(16位水酸化酵素およびそのフェレドキシンをコードするDNA)を取得、同定した(2005年6月9日頒布のWO−A 2005/052152参照)。
また、プラジエノライド生産菌であるストレプトミセス・エスピー(Streptomyces sp.)Mer−11107株から11107Bの生合成に関与するポリペプチドおよびそれらのポリペプチドをコードするDNAについても取得、同定した(2006年1月26日頒布のWO−A 2006/009276参照)。
こうしてストレプトミセス・エスピー(Streptomyces sp.)Mer−11107株またはその改変体を用いて11107B等を生産し、得られた11107B等をそれらの16位水酸化反応を行う他の放線菌により16位水酸化体へと変換することで、これまでより16位水酸化体を効率的に製造できるようになった。しかし、2段階の反応を行うため作業上の手間も2倍となり、より効率的な製造方法の確立が望まれていた。
一方、ポリケチド化合物を生産する菌株に、そのポリケチド化合物を修飾する酵素をコードする遺伝子を発現できる形で導入することにより、導入した酵素により修飾されたポリケチド化合物を直接生産した例は知られている。例えば、テトラセノマイシンCを生産するストレプトミセス・グラウセスセンス(Stroptomyces glaucescens)GLA.0株に、ストレプトミセス・フラジエ(Streptomyces fradiae)Tu2717株の水酸化遺伝子を導入することにより、6−ヒドロキシ−テトラセノマイシンCが直接生産できることが報告されている(J.Bacteriol,1995,vol.177,6126−6136参照)。
また、ポリケチド化合物を修飾する酵素をもつ菌株にそのポリケチド化合物の生合成遺伝子を発現できる形で導入することにより、宿主となる菌株が本来持つ酵素により修飾されたポリケチド化合物が直接生産された例も知られている。例えば、テトラセノマイシンCの6位を水酸化する酵素をもつストレプトミセス・フラジエ(Streptomyces fradiae)Tu2717株に、ストレプトミセス・グラウセスセンス(Streptomyces glaucescens)GLA.0株のテトラセノマイシンCの生合成遺伝子を導入することにより、6−ヒドロキシ−テトラセノマイシンCを直接生産できることが報告されている(J.Bacteriol,1995,vol.177,6126−6136参照)。
さらに、ポリケチド化合物の生合成遺伝子と、そのポリケチド化合物を修飾する酵素をコードする遺伝子の両方を異種菌株に導入することにより、異種菌株による修飾ポリケチド化合物の生産ができる場合がある。例えば、ストレプトミセス・リビダンス(Streptomyces lividans)K4−114株を宿主に、サッカロポリスポラ・エリスレア(Saccharopolyspora erythraea)株由来の6−エリスロノライドB合成酵素をコードする遺伝子とストレプトミセス・アンチビオテカス(Streptomyces antibioticus)ATCC11891株由来のP−450遺伝子の両方を導入することにより、8,8a−ジハイドロキシ−6−エリスロノライドBが直接生産されたことが報告されている(J.Antibiot.,2000,vol.53,502−508参照)。
本発明者らは、前記課題を解決するため、先に分離同定された11107Bの生合成に関与するDNAと11107Bの16位水酸化反応に関与するDNAを両方とも持つ微生物を遺伝子工学の手法により作製(育種)したところ、その培養液に多量の16位水酸化マクロライド系化合物が蓄積されていることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下の[1]〜[21]に関する。
[1] 式(I)
(但し、Rは水素原子または水酸基を示す)で表わされる16位水酸化マクロライド系化合物を生産する能力を有する微生物であって、
(a) 式(II)
(但し、Rは水素原子または水酸基を示す)で表わされるマクロライド系化合物の生合成に関与するポリペプチドを一部にまたは全体としてコードするDNA、および
(b) 前記式(II)で表わされるマクロライド系化合物の16位水酸化酵素活性を有するポリペプチドを一部にまたは全体としてコードするDNA、
を有する遺伝子組換え微生物。
[2] 前記(a)で表わされるDNAが、ポリケチド合成酵素活性を有するポリペプチド、7位アセチル化酵素活性を有するポリペプチド、18,19位エポキシ化酵素活性を有するポリペプチドおよび転写調節因子活性を有するポリペプチドを一部にまたは全体としてコードするDNAである[1]記載の遺伝子組換え微生物。
[3] 前記(a)で表わされるDNAが、
(a−1)配列番号1の塩基8340から塩基27935までの連続した塩基配列
(a−2)配列番号1の塩基28021から塩基49098までの連続した塩基配列
(a−3)配列番号1の塩基49134から塩基60269までの連続した塩基配列
(a−4)配列番号1の塩基60269から塩基65692までの連続した塩基配列
(a−5)配列番号1の塩基68160から塩基66970までの連続した塩基配列
(a−6)配列番号1の塩基69568から塩基68270までの連続した塩基配列、および
(a−7)配列番号1の塩基72725から塩基70020までの連続した塩基配列
を含んでなるDNAまたはその改変体である[1]または[2]記載の遺伝子組換え微生物。
[4] 前記(a)で表わされるDNAが、さらに6位水酸化酵素活性を有するポリペプチドを一部にまたは全体としてコードするDNAを含む[2]または[3]記載の遺伝子組換え微生物。
[5] 6位水酸化酵素活性を有するポリペプチドを一部にまたは全体としてコードするDNAが、配列番号1の塩基65707から塩基66903までの連続した塩基配列を含むDNAまたはその改変体である[4]記載の遺伝子組換え微生物。
[6] 前記(b)で表わされるDNAが、
(b−1)配列番号2の塩基1322から塩基2548までの連続した塩基配列、
(b−2)配列番号3の塩基420から塩基1604までの連続した塩基配列、および
(b−3)配列番号4の塩基172から塩基1383までの連続した塩基配列
からなる群より選択されるDNAまたはその改変体である[1]から[5]までのいずれかに記載の遺伝子組換え微生物。
[7] 前記(b)で表わされるDNAが、配列番号2の塩基1322から塩基2548までの連続した塩基配列を含んでなるDNAの改変体であって、以下の1)〜6)からなる群より選択される改変部位を1または2以上有する、[1]から[6]までのいずれかに記載の遺伝子組換え微生物。
1)塩基1592から塩基1594にかけての配列cgcを、アルギニン以外のアミノ酸をコードするコドンに改変した改変部位
2)塩基1655から塩基1657にかけての配列atgを、メチオニン以外のアミノ酸をコードするコドンに改変した改変部位
3)塩基1904から塩基1906にかけての配列cgcを、アルギニン以外のアミノ酸をコードするコドンに改変した改変部位
4)塩基2027から塩基2029にかけての配列cgcを、アルギニン以外のアミノ酸をコードするコドンに改変した改変部位
5)塩基2054から塩基2056にかけての配列atcを、イソロイシン以外のアミノ酸をコードするコドンに改変した改変部位
6)塩基2528から塩基2530にかけての配列ctgを、ロイシン以外のアミノ酸をコードするコドンに改変した改変部位
[8] 前記(b)で表わされるDNAが、配列番号2の塩基1322から塩基2548までの連続した塩基配列を含んでなるDNAの改変体であって、以下の1)〜6)からなる群より選択される改変部位を1または2以上有する、[1]から[6]までのいずれかに記載の遺伝子組換え微生物。
1)塩基1592から塩基1594にかけての配列cgcを、システイン、メチオニンまたはプロリンをコードするコドンに改変した改変部位
2)塩基1655から塩基1657にかけての配列atgを、スレオニンまたはセリンをコードするコドンに改変した改変部位
3)塩基1904から塩基1906にかけての配列cgcを、ロイシン、イソロイシン、プロリン、チロシンまたはフェニルアラニンをコードするコドンに改変した改変部位
4)塩基2027から塩基2029にかけての配列cgcを、ロイシン、イソロイシンまたはプロリンをコードするコドンに改変した改変部位
5)塩基2054から塩基2056にかけての配列atcを、フェニルアラニンまたはバリンをコードするコドンに改変した改変部位
6)塩基2528から塩基2530にかけての配列ctgを、メチオニン、システインまたはイソロイシンをコードするコドンに改変した改変部位
[9] 前記(b)で表わされるDNAが、配列番号2の塩基1322から塩基2548までの連続した塩基配列を含んでなるDNAの改変体であって、以下の1)〜6)からなる群より選択される改変部位を1または2以上有する、[1]から[6]までのいずれかに記載の遺伝子組換え微生物。
1)塩基1592から塩基1594にかけての配列cgcを、システインをコードするコドンに改変した改変部位
2)塩基1655から塩基1657にかけての配列atgを、スレオニンをコードするコドンに改変した改変部位
3)塩基1904から塩基1906にかけての配列cgcを、ロイシンまたはチロシンをコードするコドンに改変した改変部位
4)塩基2027から塩基2029にかけての配列cgcを、ロイシンをコードするコドンに改変した改変部位
5)塩基2054から塩基2056にかけての配列atcを、フェニルアラニンをコードするコドンに改変した改変部位
6)塩基2528から塩基2530にかけての配列ctgを、メチオニンをコードするコドンに改変した改変部位
[10] 前記(a)で表わされるDNAを有する宿主に、異種微生物由来の前記(b)で表わされるDNAを組み込んだ[1]記載の遺伝子組換え微生物。
[11] 前記(b)で表わされるDNAを有する宿主に、異種微生物由来の前記(a)で表わされるDNAを組み込んだ[1]記載の遺伝子組換え微生物。
[12] 前記(a)および(b)で表わされるいずれのDNAも有しない宿主に、異種微生物由来の前記(a)および(b)で表わされるDNAを両方とも組み込んだ[1]記載の遺伝子組換え微生物。
[13] 式(I)で表わされる16位水酸化マクロライド系化合物を生産する能力を有する遺伝子組換え微生物が、ストレプトミセス(Streptomyces)属に属する菌株である[1]から[12]までのいずれかに記載の遺伝子組換え微生物。
[14] 下記の培地30mLを入れた250mL容の三角フラスコに遺伝子組換え微生物を植菌し、25℃で4日間回転振とう培養(220rpm)した後、アセトニトリル270mLを加えて抽出し、得られた抽出液を下記の測定条件でHPLC分析し、式(I)で表わされる16位水酸化マクロライド系化合物を定量したときに、式(I)で表わされる16位水酸化マクロライド系化合物を培養液1L当り50mg以上生産する能力を有する[1]から[13]までのいずれかに記載の遺伝子組換え微生物。
(培地)
溶性デンプン5%、グルコース1%、ファルマメディア3%、CaCO3 0.1%、pH7.5
(HPLC測定条件)
分析装置:Shimadzu HPLC 10Avp
カラム:Develosil ODS UG−3(φ4.6mm×50mm 3μm)
移動相:45%〜55%メタノール(0〜5分)、55%メタノール(5〜13分)、55%〜70%メタノール(13〜21分)、70%メタノール(21〜25分)
流速:1.2mL/分
検出:UV240nm
インジェクション容量:5μL
カラム温度:40℃
[15] [1]から[14]までのいずれかに記載された遺伝子組換え微生物を、栄養培地中で培養し、その培養液から式(I)で表わされる16位水酸化マクロライド系化合物を採取することを特徴とする、式(I)で表わされる16位水酸化マクロライド系化合物もしくはその薬理学上許容される塩またはそれらの水和物の製造方法。
[16] 培養液中にシクロデキストリン類を存在させることを特徴とする[15]に記載の方法。
[17] シクロデキストリン類が、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン、部分メチル化β−シクロデキストリン、ジメチル−β−シクロデキストリン、トリメチル−β−シクロデキストリン、グリコシル−β−シクロデキストリンおよびヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンからなる群から選択されるシクロデキストリン類である[16]に記載の方法。
[18] 配列番号2の塩基1322から塩基2548までの連続した塩基配列を含んでなるDNAの改変体であって、以下の1)〜6)からなる群より選択される改変部位を1または2以上含んでなるDNA改変体。
1)塩基1592から塩基1594にかけての配列cgcを、アルギニン以外のアミノ酸をコードするコドンに改変した改変部位
2)塩基1655から塩基1657にかけての配列atgを、メチオニン以外のアミノ酸をコードするコドンに改変した改変部位
3)塩基1904から塩基1906にかけての配列cgcを、アルギニン以外のアミノ酸をコードするコドンに改変した改変部位
4)塩基2027から塩基2029にかけての配列cgcを、アルギニン以外のアミノ酸をコードするコドンに改変した改変部位
5)塩基2054から塩基2056にかけての配列atcを、イソロイシン以外のアミノ酸をコードするコドンに改変した改変部位
6)塩基2528から塩基2530にかけての配列ctgを、ロイシン以外のアミノ酸をコードするコドンに改変した改変部位
[19] 配列番号2の塩基1322から塩基2548までの連続した塩基配列を含んでなるDNAの改変体であって、以下の1)〜6)からなる群より選択される改変部位を1または2以上含んでなるDNA改変体。
1)塩基1592から塩基1594にかけての配列cgcを、システイン、メチオニンまたはプロリンをコードするコドンに改変した改変部位
2)塩基1655から塩基1657にかけての配列atgを、スレオニンまたはセリンをコードするコドンに改変した改変部位
3)塩基1904から塩基1906にかけての配列cgcを、ロイシン、イソロイシン、プロリン、チロシンまたはフェニルアラニンをコードするコドンに改変した改変部位
4)塩基2027から塩基2029にかけての配列cgcを、ロイシン、イソロイシンまたはプロリンをコードするコドンに改変した改変部位
5)塩基2054から塩基2056にかけての配列atcを、フェニルアラニンまたはバリンをコードするコドンに改変した改変部位
6)塩基2528から塩基2530にかけての配列ctgを、メチオニン、システインまたはイソロイシンをコードするコドンに改変した改変部位
[20] 配列番号2の塩基1322から塩基2548までの連続した塩基配列を含んでなるDNAの改変体であって、以下の1)〜6)からなる群より選択される改変部位を1または2以上含んでなるDNA改変体。
1)塩基1592から塩基1594にかけての配列cgcを、システインをコードするコドンに改変した改変部位
2)塩基1655から塩基1657にかけての配列atgを、スレオニンをコードするコドンに改変した改変部位
3)塩基1904から塩基1906にかけての配列cgcを、ロイシンまたはチロシンをコードするコドンに改変した改変部位
4)塩基2027から塩基2029にかけての配列cgcを、ロイシンをコードするコドンに改変した改変部位
5)塩基2054から塩基2056にかけての配列atcを、フェニルアラニンをコードするコドンに改変した改変部位
6)塩基2528から塩基2530にかけての配列ctgを、メチオニンをコードするコドンに改変した改変部位
[21] [18]から[20]までのいずれかに記載されたDNA改変体によりコードされるポリペプチド。
なお、本明細書における各用語の定義は以下のとおりである。
「遺伝子組換え微生物」とは、遺伝子組換え技術を用いて特定の微生物に別の生物由来の遺伝子を導入した微生物(細菌、放線菌、酵母、糸状菌等)を意味し、それに用いる遺伝子導入の手法は、プラスミド等のベクターを用いた遺伝子組換えだけでなく、相同組換え等の手法も包含する。
「DNAの改変体」とは、
(1)元のDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNA、
(2)元のDNAの塩基配列との相同性が70%以上である塩基配列を有するDNA、
(3)元のDNAの塩基配列と相補的な塩基配列を有するDNA、または
(4)遺伝暗号の縮重のため、元のDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズしないが、(1)項から(3)項までのいずれかの項で定義されたDNAがコードするアミノ酸配列と同じ配列をコードする塩基配列を有するDNA
を意味する。
なお、「ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNA」とは、例えば、元のDNAをプローブとして、コロニー・ハイブリダイゼーション法、プラーク・ハイブリダイゼーション法あるいはサザンハイブリダイゼーション法等を用いることにより得られるDNAを意味し、具体的には、コロニーあるいはプラーク由来のDNAを固定化したフィルターを用いて、0.7〜1.0Mの塩化ナトリウム存在下、65℃でハイブリダイゼーションを行った後、0.1〜2倍濃度のSSC溶液(1倍濃度のSSC溶液の組成は、150mM塩化ナトリウム、15mMクエン酸ナトリウムよりなる)を用い、65℃条件下でフィルターを洗浄することにより同定できるDNAを挙げることができる。
「類縁体」とは、化学構造を特徴づける主骨格が同じで、修飾の様式や側鎖の形状などが異なる化合物を意味する。
「16位水酸化酵素活性」とは、マクロライド系化合物(II)の16位水素原子を水酸基に変換する活性を意味する。
「6位水酸化酵素活性」とは、下記式(B)で表わされるマクロライド系化合物(ME−265というときがある)の6位水素原子を水酸基に変換する活性を意味する。
「ポリケチド合成酵素活性」とは、下記式(E)で表わされるマクロライド系化合物を合成する活性を意味する。
「7位アセチル化酵素活性」とは、下記式(C)で表わされるマクロライド系化合物の7位水酸基をアセチル基に変換する活性を意味する。
(但し、Rは水素原子または水酸基を示す)
「18,19位エポキシ化酵素活性」とは、式(D)で表わされるマクロライド系化合物の18,19位二重結合をエポキシ基に変換する活性を意味する。
(但し、Rは水素原子または水酸基を示す)
「転写調節因子活性」とは、マクロライド系化合物(II)の生合成に関与するポリペプチドをコードするDNAの転写を調節する活性を意味する。
本発明により、マクロライド系化合物(II)の生合成に関与するポリペプチドをコードするDNAおよびマクロライド系化合物(II)の16位水酸化酵素活性を有するポリペプチドをコードするDNAをもつ、16位水酸化マクロライド系化合物(I)を直接発酵生産することが可能な遺伝子組換え微生物を得ることができる。またその遺伝子組換え微生物を培養し培養液中から採取することにより16位水酸化マクロライド系化合物(I)を効率よく生産することができる。
特に16位水酸化酵素活性を有するポリペプチドのアミノ酸配列を一部改変したポリペプチドをコードするDNAを上述の方法に適用することにより、16位水酸化マクロライド系化合物(I)をさらに効率よく選択的に生産することができる。
図2は、Mer−11107株におけるプラジエノライドの生合成に関与するDNAの各ORFとコスミドの対応関係を示した図である。
図3は、プラスミドpKU253の構造を示す図である。
図4は、プラスミドpUC19aph::oriT::intphiC31の構造を示す図である。
[発明の詳細な説明]
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明における、マクロライド系化合物(II)の生合成に関与するポリペプチドをコードするDNAは、当該技術分野で周知の方法(例えば、モレキュラ・クローニング第2版に記載されたコロニーハイブリダイゼーション法)に従って、当該マクロライド系化合物を生産する能力を有する微生物の培養菌体から得ることができる。このような微生物としては、当該マクロライド系化合物を生産する能力を有するものであれば種および株の種類を問うことなく使用できるが、好ましい微生物としてストレプトミセス(Streptomyces)属放線菌に属する菌株を挙げることができる。その一例として、土壌から分離されたストレプトミセス・エスピー(Streptomyces sp.)Mer−11107株を挙げることができる。Mer−11107株は、FERM P−18144として平成12年12月19日付で日本国305−8566茨城県つくば市東1丁目1番3号在の工業技術院生命工学工業技術研究所に寄託され、さらに平成13年11月27日付で日本国305−8566茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6在の独立行政法人産業技術総合研究所、特許生物寄託センター(IPOD)において、国際寄託FERM BP−7812に移管された。
以下、Mer−11107株の場合を例に挙げ、目的のDNAを取得する操作の概要を説明する。まずMer−11107株のゲノムDNAを適当な制限酵素で部分分解したものを、大腸菌内で複製可能なコスミドベクターを適当な制限酵素で分解したものと連結して得た組換えDNAを大腸菌に組込み、形質導入株を得る。次に公知の水酸化酵素(シトクロムP450酵素)遺伝子の断片をプローブとして、先に得られた多数の形質導入株をスクリーニングし、プローブと結合する形質導入株を選択する。そして選択されたコスミド中に存在する水酸化酵素遺伝子と結合するDNAを取得し、配列を決定する。さらにこれを大腸菌に導入し、形質転換された大腸菌が6位水酸化酵素活性をもつことを確認した上で、この6位水酸化酵素をコードするDNAをプローブに用いてサザンハイブリダイゼーションを行い、先に取得した多数の陽性クローン(コスミド)から6位水酸化酵素をコードするDNAに隣接するマクロライド系化合物の生合成遺伝子クラスターを含むコスミドを選択し整列化することにより取得することができる。これらの操作全体についての詳細は、参考例1に記載されており、また本出願人らによるWO−A 2006/009276明細書にも記載されており、これらの記載を参照することができる。
こうして取得されるマクロライド系化合物(II)の生合成に関与するポリペプチドをコードするDNAの周辺領域を含むヌクレオチド配列(コード配列におけるアミノ酸配列)を配列表の配列番号1に示す。
この配列番号1で示されるDNAには、pldA I(塩基8340〜27935)、pldA II(塩基28021〜49098)、pldA III(塩基49134〜60269)、pldA IV(塩基60269〜65692)、pldB(塩基65707〜66903)、pldC(塩基68160〜66970)、pldD(塩基69568〜68270)およびpldR(塩基72725〜70020)の8つのオープン・リーディング・フレーム(ORF)が含まれている。
これらのDNAのうち、pldA I、pldA II、pldA IIIおよびpldA IVには、既に明らかにされている他のポリケチド生合成遺伝子と同様にモジュールと呼ばれる1またはそれ以上の反復単位をそれぞれ含むいくつかの転写解読枠がある。そして各モジュールは後述するとおりポリケチド合成の縮合反応に関与するアシルキャリアータンパク質(ACP)、β−ケトアシルACP合成酵素(KS)、アシル転移酵素(AT)と、β位カルボニル基修飾反応に関与するケトアシル還元酵素(KR)、脱水酵素(DH)およびエノイル還元酵素(ER)から選択されるドメインの全てあるいはいくつかをコードしており最後のモジュールにはポリケチド鎖をポリケチド合成酵素から切り離すチオエステラーゼ(TE)ドメインが存在している。
図1に、Mer−11107株におけるマクロライド系化合物の生合成経路を示した。開始モジュール(loading module)は他のモジュールと違って活性中心のシステインがグルタミンに置換されていることより、pldA Iは初発反応に関与していることがわかる。またモジュール10にはチオエステラーゼ(TE)ドメインがあることより、pldA IVはポリケチド基本骨格の合成の最後の反応に関与していることがわかる。こうしてポリケチドの基本骨格が形成された後、さらに、pldDがコードしている18,19位エポキシ化酵素、pldCがコードしている7位アセチル化酵素およびpldBがコードしている6位水酸化酵素により修飾を受け、マクロライド系化合物(II)が生合成される。なお、マクロライド系化合物(II)のうち、Rが水素原子である化合物は、pldBを欠失させるか、機能を発現しないように改変することにより製造することができる。またpldRはエバーメクチン生合成における転写調節因子をコードする遺伝子aveRとの相同性が高く、マクロライド系化合物の生合成に関与するDNAの転写調節因子をコードしている。
本発明における、マクロライド系化合物(II)の16位水酸化酵素活性を有するポリペプチドをコードするDNAも、当該技術分野で周知の方法(例えば、モレキュラ・クローニング第2版に記載されたコロニーハイブリダイゼーション法)に従って、当該マクロライド系化合物の16位水酸化能を有する微生物の培養菌体から得ることができる。このような微生物としては、当該マクロライド系化合物の16位水素原子を水酸基に変換する能力を有するものであれば種および株の種類を問うことなく使用できるが、好ましい微生物として放線菌に属する菌株を挙げることができる。その例として、土壌から分離された、ストレプトミセス・エスピー(Streptomyces sp.)A−1544株、ストレプトミセス・エスピー(Streptomyces sp.)Mer−11107株あるいはストレプトミセス・エスピー(Streptomyces sp.)A−1560株を挙げることができる。A−1544株は、FERM P−18943として平成14年7月23日付で日本国305−8566茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6在の独立行政法人産業技術総合研究所、特許生物寄託センターに寄託され、さらに平成15年7月30日付で日本国305−8566茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6在の独立行政法人産業技術総合研究所、特許生物寄託センター(IPOD)において、国際寄託FERM BP−8446に移管された。A−1560株は、FERM P−19585として平成15年11月13日付で日本国305−8566茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6在の独立行政法人産業技術総合研究所、特許生物寄託センターに寄託され、さらに平成16年8月19日付で日本国305−8566茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6在の独立行政法人産業技術総合研究所、特許生物寄託センター(IPOD)において、国際寄託FERM BP−10102に移管された。
以下、A−1544株の場合を例に挙げ、目的のDNAを取得する操作の概要を説明する。まずA−1544株のゲノムDNAを調製し、次に公知の水酸化酵素(シトクロム P450酵素)遺伝子の配列情報を基にプライマーを調製してPCR反応を行い、特異的に増幅されたDNA断片を取得し、その配列を決定する。さらに得られた配列情報を基にインバースPCR法(細胞工学14巻、p.591−593,1995年)によって、クローニングされたDNA断片の上流、下流域に広がる周辺領域の塩基配列を増幅、クローニング、配列解析することにより取得することができる。これらの操作全体についての詳細は、参考例2(A−1544株)、参考例3(Mer−11107株)および参考例4(A−1560株)に記載されており、また2005年6月9日頒布のWO−A 2005/052152にも記載されており、これらの記載を参照することができる。
こうしてA−1544株から取得されるマクロライド系化合物(II)の16位水酸化酵素活性を有するポリペプチドをコードするDNA(周辺領域を含む)は配列表の配列番号2に示すとおりである。この配列番号2で示されるDNAには、psmA(塩基1322〜塩基2548)およびpsmB(塩基2564〜塩基2761)の2つのオープン・リーディング・フレーム(ORF)が含まれており、それぞれ、16位水酸化酵素およびフェレドキシンをコードしている。
同様にMer−11107株から取得されるマクロライド系化合物(II)の16位水酸化酵素活性を有するポリペプチドをコードするDNA(周辺領域を含む)は配列表の配列番号3に示すとおりである。この配列番号3で示されるDNAには、bpmA(塩基420〜塩基1604)およびbpmB(塩基1643〜塩基1834)の2つのオープン・リーディング・フレーム(ORF)が含まれており、それぞれ、16位水酸化酵素およびフェレドキシンをコードしている。
A−1560株から取得されるマクロライド系化合物(II)の16位水酸化酵素活性を有するポリペプチドをコードするDNA(周辺領域を含む)は配列表の配列番号4に示すとおりである。この配列番号4で示されるDNAには、tpmA(塩基172〜塩基1383)およびtpmB(塩基1399〜塩基1593)の2つのオープン・リーディング・フレーム(ORF)が含まれており、それぞれ、16位水酸化酵素およびフェレドキシンをコードしている。
また上述した16位水酸化酵素活性を有するポリペプチドをコードする各種DNAの改変体は、次のようにして取得することができる。まず元のDNAの配列情報を基に部位特異的な改変処理を行い、次いで得られた部位特異的DNA改変体を宿主に組み込み、その遺伝子組換え微生物の16位水酸化酵素活性の強さおよび選択性の高さを指標として選択し、取得することができる。部位特異的な改変処理は、例えば元のDNAがクローニングされているプラスミドを鋳型とし、その配列情報を基に設計したプライマーを用いて、市販のキット、例えば、QuickChangeTM Site−Directed Mutagenesis Kit(ストラタジーン社)(Stratagene Co.)など用いて行うことができる。
このような改変体のうち16位水酸化酵素活性が強くしかも選択性が高いものとして、例えばA−1544株から得られる16位水酸化酵素をコードするpsmAの場合、配列番号2の塩基1322から塩基2548までの連続した塩基配列を含み、以下の1)〜6)からなる群より選択される改変部位を1または2以上含んでなるDNA改変体を挙げることができる。
1)塩基1592から塩基1594にかけての配列cgcを、アルギニン以外のアミノ酸、好ましくはシステインをコードするコドンに改変した改変部位
2)塩基1655から塩基1657にかけての配列atgを、メチオニン以外のアミノ酸、好ましくはスレオニンをコードするコドンに改変した改変部位
3)塩基1904から塩基1906にかけての配列cgcを、アルギニン以外のアミノ酸、好ましくはロイシンまたはチロシンをコードするコドンに改変した改変部位
4)塩基2027から塩基2029にかけての配列cgcを、アルギニン以外のアミノ酸、好ましくはロイシンをコードするコドンに改変した改変部位
5)塩基2054から塩基2056にかけての配列atcを、イソロイシン以外のアミノ酸、好ましくはフェニルアラニンをコードするコドンに改変した改変部位
6)塩基2528から塩基2530にかけての配列ctgを、ロイシン以外のアミノ酸、好ましくはメチオニンをコードするコドンに改変した改変部位
本発明の組換え体は、前記「マクロライド系化合物(II)の生合成に関与するポリペプチドをコードするDNA」および「マクロライド系化合物(II)の16位水酸化酵素活性を有するポリペプチドをコードするDNA」を保有する遺伝子組換え微生物であり、以下のA)〜C)に示す方法により作製することができる。
A) 「マクロライド系化合物(II)の生合成に関与するポリペプチドをコードするDNA」を元々もっている宿主に「マクロライド系化合物(II)の16位水酸化酵素活性を有するポリペプチドをコードするDNA」を組み込む。
B) 「マクロライド系化合物(II)の16位水酸化酵素活性を有するポリペプチドをコードするDNA」を元々もっている宿主に「マクロライド系化合物(II)の生合成に関与するポリペプチドをコードするDNA」を組み込む。
C) 「マクロライド系化合物(II)の生合成に関与するポリペプチドをコードするDNA」および「マクロライド系化合物(II)の16位水酸化酵素活性を有するポリペプチドをコードするDNA」の両方とももっていない宿主に、これらのDNAの両方を組み込む。
本発明の組換え体における宿主は、目的のDNAを組み込むことができ、目的の16位水酸化マクロライド化合物を生産できる微生物であれば特に制限はなく使用できるが、好ましい微生物としてストレプトミセス(Streptomyces)属放線菌に属する菌株を挙げることができる。例えば前記A)の場合は、ストレプトミセス・エスピー(Streptomyces sp.)Mer−11107株等、前記B)の場合は、ストレプトミセス・エスピー(Streptomyces sp.)A−1544株、ストレプトミセス・エスピー(Streptomyces sp.)Mer−11107株あるいはストレプトミセス・エスピー(Streptomyces sp.)A−1560株等を挙げることができる。また前記C)の場合は、大腸菌(Escherichia coli)に属する菌株等を挙げることができる。
このような宿主に目的のDNAを組み込み発現させるためには、特に制限はないが、例えばモレキュラー・クローニング第2版、カレント・プロトコールズ・イン・モレキュラー・バイオロジー等に記載された方法を用いて行うことができる。宿主、プラスミド−ベクター系は、目的のDNAが宿主中で安定に保持、発現できる系であれば特に制限はない。またプラスミドは、目的のDNA以外に、自律複製配列、プロモーター配列、ターミネーター配列、薬剤耐性遺伝子等を含んでいてもよく、プラスミドの種類としては、自律複製性プラスミドだけでなく、使用が予定される宿主のゲノムの一定領域と相同の配列をもつ組込み型プラスミドであってもよい。目的のDNAを組み込む部位は、プラスミド上または宿主微生物のゲノム上のいずれでもあってもよい。
宿主として放線菌あるいはその類縁株を宿主とするならば、自律複製型ベクターpIJ6021(Gene,166,133−137(1995))やゲノム組み込み型ベクターKC515〔The bacteria,vol.9,Antibiotic−producing Streptomyces(ed:Queener,S.E.and Day,L.E.),p.119−158,Academic Press,Orlando,Fgla.〕などが利用できる。
自律複製配列としては、rep pIJ101(1988,J.Bacteriol.,170,4634−4651)、rep SCP2(1981,J.Gen.Microbiol.,126,427−442)、pUC19(Gene,33(1),103−119(1985))等を、プロモーター配列としては、ermEp(Mol Microbiol.,1994,Nov;14(3):533−45.)、SnpAp(J Bacteriol.,1992,May;174(9):2797−2808)等を、ターミネーター配列としては、ter(mmr)(Gene,1987;58(2−3):229−41)、fd terminator(Nucleic Acids Res.,5(12),4495−4503(1978))等を、薬剤耐性遺伝子としては、hyg(Nucleic Acids Res.,4(14),1565−1581(1986))、tsr(Mol.Gen.Genet.,199(1),26−36(1985))等を、それぞれ挙げることができる。なお、本発明の遺伝子組換え微生物は当業者であれば本明細書の記載に従って容易に作製することができる。
このようにして調製した遺伝子組換え微生物を培養し、16位水酸化マクロライド系化合物(I)の生産性を、以下の方法により評価、選択することにより、当該マクロライド系化合物の高生産株を得ることができる。すなわち、当該マクロライド系化合物を培養液1L当り50mg以上生産する能力を有する遺伝子組換え微生物は、約40%の確率で、培養液1L当り100mg以上生産する能力を有するものは、約30%の確率で得ることができ、いずれも高い確率で得ることができる。
(生産性評価方法)
培地(溶性デンプン5%、グルコース1%、ファルマメディア3%、CaCO3 0.1%、pH7.5)30mLを入れた250mL容の三角フラスコに遺伝子組換え微生物を植菌し、25℃で4日間回転振とう培養(220rpm)した後、アセトニトリル270mLを加えて抽出し、得られた抽出液を下記の測定条件でHPLC分析し、16位水酸化マクロライド系化合物(I)の蓄積濃度を定量する。
(HPLC測定条件)
分析装置:Shimadzu HPLC 10Avp
カラム:Develosil ODS UG−3(φ4.6mm×50mm 3μm)
移動相:45%〜55%メタノール(0〜5分)、55%メタノール(5〜13分)、55%〜70%メタノール(13〜21分)、70%メタノール(21〜25分)
流速:1.2mL/分
検出:UV240nm
インジェクション容量:5μL
カラム温度:40℃
本発明の遺伝子組換え微生物を栄養源培地に接種し、好気的に培養することにより、その培養液から16位水酸化マクロライド系化合物(I)もしくはその薬理学上許容される塩またはそれらの水和物を採取することができる。
これら遺伝子組換え微生物の培養方法は、原則的には一般微生物の培養方法に準ずるが、通常は液体培養による振とう培養、通気撹拌培養等の好気的条件下で実施するのが好ましい。培養に用いられる培地としては、これらの微生物が利用できる栄養源を含有する培地であればよく、各種の合成、半合成培地、天然培地などいずれも利用可能である。培地組成としては炭素源としてのグルコース、シュークロース、フルクトース、グリセリン、デキストリン、デンプン、糖蜜、大豆油等を単独または組み合わせて用いることができる。窒素源としてはファルマメディア、ペプトン、肉エキス、大豆粉、カゼイン、アミノ酸、酵母エキス、尿素等の有機窒素源、硝酸ナトリウム、硫酸アンモニウムなどの無機窒素源を単独または組み合わせて用いうる。その他例えば塩化ナトリウム、塩化カリウム、炭酸カルシウム、硫酸マグネシウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、塩化コバルト等の塩類、重金属類塩、ビタミンBおよびビオチン等のビタミン類も必要に応じ添加使用することができる。なお、培養中発泡が著しい場合には、各種消泡剤を適宜培地中に添加することもできる。また、必要に応じて薬剤耐性遺伝子を維持するのに必要な薬剤を添加しても良い。消泡剤の添加にあたっては、目的物質の生産に大きな影響を与えない濃度とするのが望ましい。
また本発明の遺伝子組換え微生物を培養し、16位水酸化マクロライド系化合物(I)を製造するに際して、培養液中にシクロデキストリン類を存在させることにより、16位水酸化マクロライド系化合物の蓄積濃度を増大することができる。本発明において使用できるシクロデキストリン類としては、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン、部分メチル化β−シクロデキストリン、ジメチル−β−シクロデキストリン、トリメチル−β−シクロデキストリン、グリコシル−β−シクロデキストリンおよびヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンを挙げることができ、これらを単独または組み合わせて用いることができる。
培養液へのシクロデキストリン類の添加量は、0.5%〜5%が好ましい。添加時期は培養初期、または培養途中で添加しても良い。
培養条件は、当該菌株が良好に生育して16位水酸化マクロライド系化合物(I)を生産し得る範囲内で適宜選択し得る。例えば培地のpHは5〜9程度、通常中性付近とするのが望ましい。培養温度は、通常20〜40℃、好ましくは23〜35℃に保つのがよい。培養日数は2〜12日程度で、通常3〜10日程度である。上述した各種の培養条件は、使用微生物の種類や特性、外部条件等に応じて適宜変更でき、最適条件を選択できるのはいうまでもない。培養液中に蓄積された16位水酸化マクロライド系化合物(I)を分離精製するためには、一般に微生物代謝産物をその培養液から単離するために用いられる分離、精製の方法が利用できる。例えば、メタノール、エタノール、ブタノール、酢酸エチル、クロロホルム、アセトン、トルエン等を用いた有機溶媒抽出、各種のイオン交換クロマトグラフィー、セファデックスLH−20等を用いたゲル濾過クロマトグラフィー、活性炭、シリカゲル、吸着樹脂(ダイヤイオンHP20)等による吸着クロマトグラフィー、もしくは薄層クロマトグラフィーによる吸脱着処理、あるいは逆相カラム等を用いた高速液体クロマトグラフィー等の公知のあらゆる方法がこれにあたるが、ここに示した方法に限定されるものではない。これらの方法を単独あるいは任意の順序に組み合わせ、また反復して用いることにより、16位水酸化マクロライド系化合物(I)を単離・精製することができる。
参考例1:マクロライド系化合物(II)の生合成に関与するポリペプチドをコードするDNAの取得
(1)Mer−11107株の培養およびゲノムDNAの取得
ストレプトミセス・エスピー(Streptomyces sp.)Mer−11107株の菌糸を25mLのTryptic Soy Brothに接種し、28℃、3日間振とう培養した。この結果得られた培養液から、D.A.Hopwoodらの放線菌遺伝子実験書Practical Streptomyces Genetics(The John Innes Foundation,Norwich,England,2000)のIsolation genomic DNA(P162〜170)記載の方法に従ってゲノムDNAを調製した。
(2)Mer−11107株のゲノムライブラリーの調製
滅菌精製水160μLと、Mer−11107株のゲノムDNA溶液(1mg/mL)200μLと、10倍濃度のM緩衝液[100mM Tris−HCl(pH7.5),100mM MgCl2,10mM ジチオスレイトール,500mM NaCl]40μLと制限酵素Sau3AI(1unit/μL)1μLとを混合し、37℃で3分インキュベートした。その後、50μLを取り出し、50μLのフェノール−クロロホルム混液(フェノール:クロロホルム:イソアミルアルコール=25:24:1,容量比)で抽出し、水相を回収し、さらに50μLのクロロホルムで抽出し、再び水相を回収した。この液に5μLの3M酢酸ナトリウム(pH6.0)と150μLのエタノールを加えて、−80℃に30分置き、遠心することで沈殿してくるDNAを回収した。このDNAを70%エタノールで洗浄した後、90μLの滅菌精製水に溶解し、10μLの10倍濃度BAP緩衝液[500mM Tris−HCl(pH9.0),10mM MgCl2]および5μL bacterial alkaline phosphatase(0.5unit/μL、タカラバイオ社)を加えて37℃で3時間インキュベートした。この反応液を100μLのフェノール−クロロホルム混液(フェノール:クロロホルム:イソアミルアルコール=25:24:1,容量比)で抽出し、水相を回収し、さらに100μLのクロロホルムで抽出し、再び水相を回収した。この液に10μLの3M酢酸ナトリウム(pH6.0)と300μLのエタノールを加えて、−80℃に30分置き、遠心することで沈殿してくるDNAを回収した。このDNAを70%エタノールで洗浄した後、20μLのTE緩衝液[10mM Tris−HCl(pH8.0),1mM EDTA]に溶解した。
一方でSuperCos コスミドベクター(Stratagene社)10μgをStratagene社のマニュアルに従い制限酵素XbaIで消化後、calf intestional alkaline phosphatase(タカラバイオ社)によりDNA末端の脱リン酸化を行い、さらに制限酵素BamHIで消化、精製後、10μLのTE緩衝液に溶解した。このコスミドDNA溶液1μLに、前述のMer−11107株DNAのSau3A1部分分解物の溶液2.5μLを加え、さらに滅菌精製水1.5μL、DNA Ligation Kit(タカラバイオ社)のSolution IIを5μL、Solution Iを10μL順次加えた後、23℃で10分インキュベートした。この反応液4μLをGigapack III XL Kit(Stratagene社)を用いてラムダファージにパッケージングした。得られたパッケージング液(全量500μL)について形質導入試験を実施して、コロニー形成能を検定した結果、380cfu(Colony forming unit)/μLであった。
(3)各種プローブの調製
(3−1)ケト合成酵素コード領域を含むプローブの調製
一般にポリケチド合成酵素のケト合成酵素領域(keto synthase domain)において保存されている配列に基づいて以下に示すような配列からなる2種のプライマー、KS−3FおよびKS−4Rを合成した(配列番号5および6参照)。
KS−3F:5’−GACCGCGGCTGGGACGTGGAGGG−3’
KS−4R:5’−GTGCCCGATGTTGGACTTCAACGA−3’
これらのプライマーを用いてPCRを以下の条件にて行った。
(PCR反応液組成)
滅菌精製水 31μL
2倍濃縮GC buffer 50μL
dNTP混合溶液(dATP,dGTP,dTTP,dCTP各2.5mM)16μL
KS−3F(100pmol/μL) 0.5μL
KS−4R(100pmol/μL) 0.5μL
Mer−11107株 total DNA(100ng/μL) 1μL
LA Taq polymerase(5u/μL,タカラバイオ社) 1μL
(反応温度条件)
95℃ 3分
(98℃ 20秒,63℃ 30秒,68℃ 2分) 30サイクル
72℃ 5分
この反応の結果増幅された930bp DNA断片を0.8%アガロースゲル上で電気泳動し、分離した930bp DNA断片を切り出し、SUPREC−01(タカラバイオ社)を用いてDNAを回収精製した。さらに得られたDNA断片10ngを鋳型として反応サイクル数を20サイクルとする以外は前述のPCRと同じ反応条件でケト合成酵素コード領域を含む930bp DNA断片を再増幅した。このDNA断片をSUPREC−02(タカラバイオ社)を用いて濃縮精製して得られた50μLのTE溶液をプローブ溶液とした。
(3−2)シトクロムP450遺伝子領域を含むプローブの調製
シトクロムP450遺伝子プローブを調製するために公知の2種のシトクロムP450遺伝子を放線菌から増幅した。すなわちストレプトミセス・サーモトレランス(Streptomyces thermotolerans)ATCC11416由来ORF−A遺伝子(Biosci.Biotechnol.Biochem.59:582−588,1995)を増幅するために以下に示すような配列からなる2種のプライマー、CB−1FおよびCB−2Rを合成した(配列番号7および8参照)。
CB−1F:5’−ATGACAGCTTTGAATCTGATGGATCCC−3’
CB−2R:5’−TCAGAGACGGACCGGCAGACTCTTCAGACG−3’
一方でストレプトミセス・ベネズエラエ(Streptomyces venezuelae)ATCC15439由来pikC遺伝子(Chem.Biol.5:661−667,1998)を増幅するために以下に示すような配列からなる2種のプライマー、PKC−1FおよびPKC−2Rを合成した(配列番号9および10参照)。
PKC−1F:5’−GTGCGCCGTACCCAGCAGGGAACGACC−3’
PKC−2R:5’−TCACGCGCTCTCCGCCCGCCCCCTGCC−3’
これらのプライマーを用いてPCRを以下の条件にて行った。
(PCR反応液組成)
滅菌精製水 31μL
2倍濃縮GC buffer 50μL
dNTP混合溶液(dATP,dGTP,dTTP,dCTP各2.5mM)16μL
primer−F(100pmol/μL) 0.5μL
primer−R(100pmol/μL) 0.5μL
ATCC11416株またはATCC15439株のゲノムDNA(100ng/μL)1μL
LA Taq polymerase(5u/μL,タカラバイオ社) 1μL
(反応温度条件)
95℃3分
(98℃ 20秒,63℃ 30秒,68℃ 2分) 30サイクル
72℃ 5分
この反応の結果増幅された2種の1.2kb DNA断片をQIAGEN PCR Purification Kit(QIAGEN社)で精製した後、各DNA断片10ng/μLずつを含む等量混合溶液を調製してプローブ溶液とした。
(4)ケト合成酵素コード領域を含むプローブを用いたスクリーニング
前項(2)で調製したMer−11107株のゲノムDNAライブラリーのパッケージング液を使って大腸菌XL−1Blue MR(Stratagene社)を宿主とし、Stratagene社のマニュアルに従って形質導入した。形質導入操作後の菌液を10枚のLB−50μg/mLアンピシリン−1.5%寒天培地シャーレ(内径90mm、高さ15mm)に分注して広げ、37℃で18時間培養した。各シャーレに生育したコロニーをHybondoN+フィルター(amersham biosciences社)に転写し、HybondoN+フィルターに添付のマニュアルに記載された条件でアルカリ処理、中和処理を行い、80℃で2時間乾燥することでフィルター上にコロニー由来のDNAを固定化した。
前項(3−1)にて調製したケト合成酵素領域を含む930bp DNA断片100ngをプローブにしてAlkPhos Direct System(amersham biosciences社)を用いてゲノムDNAライブラリーをコロニーハイブリダイゼーション法でスクリーニングした。ハイブリダイゼーションは塩濃度0.5M NaClで65℃で2時間行った。プローブDNAの標識、ハイブリダイゼーションおよび検出の条件についてはAlkPhos Direct Systemに添付されたマニュアルに記載された条件に従った。試験した約7,600コロニーのうち、アルカリホスファターゼで標識したプローブと強くハイブリダイズした59コロニーを分離した。このコロニーから派生した大腸菌クローンからコスミドを抽出精製した。
(5)シトクロムP450遺伝子領域を含むプローブを用いたプラジエノライド生合成遺伝子領域を有するコスミドクローンの選択確認
前項(4)で得られた各コスミドのDNA溶液2μLをHybondoN+フィルター上にスポットし、添付のマニュアルに記載された条件でアルカリ処理、中和処理を行い、さらに80℃で2時間乾燥することでフィルター上にDNAを固定化した。このフィルターを用いて、前項(3)にて記述したシトクロムP450遺伝子断片をプローブとして、前項(4)と同じ条件でハイブリダイゼーションを行った。この結果プローブと強くハイブリダイズしたコスミド1つを選択し、pKS58と命名した。
pKS58 DNAを制限酵素Sau3AIで部分分解した後、ファージベクターZap Express、BamHI−CIAP処理済(Stratagene社)にライゲーションし、Gigapack III XL Kit(Stratagene社)を用いてラムダファージにパッケージングした。このファージ液を大腸菌XL1−Blue MRF’に感染させて、プラークを形成させた。前項(3−2)で調製したシトクロムP450遺伝子プローブを用いてプラークハイブリダイゼーションを行うことで、約2kbのシトクロムP450遺伝子を含むDNA断片をサブクローニングした。
このシトクロムP450遺伝子DNA断片の配列を決定し、シトクロムP450コード領域とされるN−末端およびC−末端から以下に示すような配列からなる2種のプライマー、PDL58−1FおよびPDL58−2Rを合成した(配列番号11および12参照)。
PDL58−1F:5’−GCCCCGCATATGGATCTGGAAACCCAACTTCTC−3’
PDL58−2R:5’−GCACTAGTCAGCCGCGCTCGACGAGGAGGTG−3’
これらのプライマーを用いてPCRを以下の条件にて行った。
(PCR反応液組成)
滅菌精製水 31μL
2倍濃縮GC buffer 50μL
dNTP混合溶液(dATP,dGTP,dTTP,dCTP各2.5mM)16μL
PDL58−1F(100pmol/μL) 0.5μL
PDL58−2R(100pmol/μL) 0.5μL
pKS58DNA(10ng/μL) 1μL
LA Taq polymerase(5u/μL,タカラバイオ社) 1μL
(反応温度条件)
95℃ 3分
(98℃ 20秒,63℃ 30秒,68℃ 2分)20サイクル
72℃ 5分
この反応の結果増幅された1.2kb DNA断片をQIAGEN PCR Purification Kit(QIAGEN社)で精製した後、制限酵素NdeIとSpeIで分解した。反応後DNAを0.8%アガロースゲル上で電気泳動し、分離した1.2kb DNA断片を切り出し、QIAGEN GelExtraction Kit(QIAGEN社)を用いてDNAを回収精製した。このDNA断片をシトクロムP450遺伝子発現用プラスミドpT7NS−camAB(参考例5およびWO03/087381参照)のNdeIおよびSpeI部位へ挿入することでpPDL96を構築した。
このプラスミドで大腸菌BL21(DE3)を形質転換し、M9CG培地(1.28% Na2HPO4・7H2O、0.3% KH2PO4、0.05% NaCl、0.1% NH4Cl、1%カザミノ酸、0.4%グルコース、1mM MgCl2、100μM CaCl2、50μg/mLアンピシリン)にて菌密度としてOD600(optical density at 600nm)が0.8に達するまで培養した。5−アミノレブリン酸およびIPTGをそれぞれ80μg/mL、0.1mMになるよう添加した後、22℃で25時間培養を継続し、シトクロムP450タンパク質を誘導させた。誘導後、菌体を集めてCV緩衝液[50mM NaPO4(pH7.3)、1mM EDTA、10%グリセロール、1mMグルコース]5mLに懸濁した。この液1mLを試験管に取り、プラジエノライドBの6位デオキシ体であるME−265のDMSO溶液(50mg/mL)を5μL添加して28℃で15時間インキュベートした。この反応液に1mLのアセトニトリルを加えて混合した後、遠心分離して上清を以下の条件にてHPLCで分析することでプラジエノライドBへの変換を認めた。このことからpKS58にプラジエノライド生合成遺伝子領域が含まれていることを確認した。
(HPLCの分析条件)
分析装置:Shimadzu HPLC 10Avp
カラム:Develosil ODS UG−3(φ4.6mm×50mm 3μm)
移動相:45%〜55% メタノール(0〜5分)
55% メタノール(5〜13分)
55%〜70% メタノール(13〜21分)
45% メタノール(21〜25分)
流速:1.2mL/分
検出:UV240nm
インジェクション容量:5μL
カラム温度:40℃
分析時間:25分
保持時間:ME−265;20分、プラジエノライドB;13分
(6)シトクロムP450遺伝子に隣接する生合成遺伝子クラスターを含むコスミドの選定
前項(4)で得られた、59個のコスミドDNAの中で、前項(5)で得られたシトクロムP450遺伝子に隣接する生合成遺伝子クラスターを含むコスミドを選定した。
59個のコスミドDNAを制限酵素EcoRI,BamHIで消化し、得られた各々のDNAをアガロースゲル電気泳動し、エバーメクチンアグリコン合成酵素遺伝子(Proc.Natl.Acad.Sci.USA 96(1999)9509−9514、特開平2000−245457号公報またはWO 00/50605パンフレット参照)のKSドメインのDNA(aveA2のKS6 domain)、ATドメインのDNA(aveA1のAT2 domain)、および前項(5)で得られたシトクロムP450遺伝子をプローブに用いたサザンハイブリダイゼーションを行った。
制限酵素EcoRI,BamHIで消化したDNAの電気泳動パターンと、各プローブでのハイブリダイズしたバンドパターンの結果から、まず、同じ長さでハイブリダイズしたDNA断片を持つコスミドをグループ化した。そのうち、ほぼ同等のパターンを示したコスミドについては1つを残して削除し、残ったものでバンドパターンが部分一致するものについて整列化した。そして、(5)で得られたシトクロムP450遺伝子を含むコスミドpKS58を中心とし、シトクロムP450遺伝子側からポリケチド合成酵素遺伝子を含む側に隣接するコスミドとしてpKS54を選出し、さらにpKS54に隣接するコスミドとしてpKS35を選出した。また、コスミドpKS58とシトクロムP450遺伝子側からポリケチド合成酵素遺伝子を含まない側に隣接するコスミドとしてpKS23を選出した。その結果、図2に示すようにプラジエノライド生合成遺伝子クラスターを包括するコスミドクローンとしてpKS23,pKS58,pKS54,pKS35が選定された。
(7)プラジエノライド生合成遺伝子クラスターの塩基配列の決定
プラジエノライド生合成遺伝子をコードする一群のDNAの塩基配列を決定した。前項(6)で選出した各コスミドを、塩化セシウム法を用いて単離後、HydroShear(Genomic solutions社)を用いて約1kbに剪断し、BKL Kit(タカラバイオ社)を用いて、サブクローン化した。
得られたサブクローンに対し、蛍光標識プライマーを用いたサイクルシークエンス反応(amersham biosciences社)を行い、それぞれの断片の塩基配列を決定(MegaBACE 1000:amersham biosciences社)することにより、プラジエノライドの生合成に関連するDNAを含む約75kbの塩基配列を決定した(配列番号1参照)。
(8)プラジエノライドの6位水酸化酵素遺伝子(pldB)破壊株の作製
前項(7)で決定されたプラジエノライドの生合成に関連するDNAを含む約75kbの塩基配列(配列番号1参照)より、図1に示された生合成経路でプラジエノライドが生合成されることが明らかとなった。そこで、そのうちのシトクロムP450遺伝子pldBのみを破壊することで、プラジエノライドBの6位デオキシ体であるME−265のみを生産する株を取得可能と考え、以下の方法でpldB破壊株を作製した。
配列番号1記載の塩基配列に基づいて、以下に示す配列からなる4種のプライマー、pldB−L−Bgl2F、pldB−L−Hind3R、pldB−R−Hind3FおよびpldB−R−Bgl2R(配列番号13、14、15および16参照)を合成した。
pldB−L−Bgl2F:5’−GGGAGATCTAGAGGCCGGTTACCTCTACGAGTA−3’
pldB−L−Hind3R:5’−GGGAAGCTTGCGATGAGCTGTGCCAGATAG−3’
pldB−R−Hind3F:5’−GGGAAGCTTGAACTGGCGCGACAGTGTCTT−3’
pldB−R−Bgl2R:5’−GGGAGATCTGCAGCGGATCGTCTTCGAGACCCTT−3’
これらのプライマーを用いてPCRを以下の条件にて行った。
(PCR反応液組成)
滅菌精製水 30μL
2倍濃縮GC buffer 50μL
dNTP混合溶液(dATP,dGTP,dTTP,dCTP各2.5mM)16μL
pldB−L−Bgl2FまたはpldB−R−Hind3F(50pmol/μL)1μL
pldB−L−Hind3RまたはpldB−R−Bgl2R(50pmol/μL)1μL
Mer−11107株total DNA(100ng/μL) 1μL
LA Taq polymerase(5u/μL,タカラバイオ社) 1μL
(反応温度条件)
95℃ 3分
(98℃ 20秒,63℃ 30秒,68℃ 2分) 30サイクル
72℃ 5分
この反応の結果、pldB−L−Bgl2FとpldB−L−Hind3Rを用いた反応から、配列番号1の塩基64756から塩基66302を含む1.57kbのDNA断片(DNA断片L1)が増幅され、pldB−R−Hind3FとpldB−R−Bgl2Rを用いた反応から、配列番号1の塩基66849から塩基68368を含む1.54kbのDNA断片(DNA断片R1)が増幅された。DNA断片L1およびR1をQIAGEN PCR purification Kit(QIAGEN社)で精製した後、制限酵素BglIIとHindIIIで消化した。
制限酵素BglIIとHindIIIで消化したDNA断片L1およびR1と、制限酵素HindIIIで消化した2.3kbのハイグロマイシンB耐性遺伝子(pHP45omegahyg:Gene190,315−317,1997由来。以下hygと略記することがある)、および制限酵素BamHIで消化したシャトルベクターpKU253(図3参照)、の計4者をDNA ligation kit ver.2.1(タカラバイオ社)で連結した。こうしてDNA断片L1とR1の間にハイグロマイシンB耐性遺伝子が挿入された形の約5.4kbのDNA断片が、pKU253に挿入された約21.4kbのプラスミドpKU253−L1−hyg−R1が構築された。
得られたpKU253−L1−hyg−R1を、接合大腸菌S17−1へエレクトロポレーション法を用いて形質転換し、S17−1/pKU253−L1−hyg−R1株を得た。得られたS17−1/pKU253−L1−hyg−R1株を、25μg/mLのカナマイシンおよび100μg/mLのハイグロマイシンBを含むLB培地(1%バクトトリプトン、0.5%酵母エキス、0.5%NaCl)10mLに植菌し、30℃で2時間振盪培養後、集菌し、LB培地10mLで2回洗浄後、LB培地5mLに懸濁した。これを供与菌懸濁液とした。
供与菌懸濁液を調製するのと同時進行で、Mer−11107株をTSB培地(Trypto−Soyabroth:日水製薬社)10mLに植菌し、30℃で5時間振盪培養後、集菌し、滅菌水10mLで2回洗浄後、滅菌水1mLに懸濁した。これを受容菌懸濁液とした。得られたS17−1/pKU253−L1−hyg−R1株供与菌懸濁液500μLを、Mer−11107株受容菌懸濁液10μLと混ぜ、Actino Medium No.4寒天培地(日本製薬社)に塗布した。30℃で18時間培養後、2mg/mLのリボスタマイシンを含む2.5mLのSNA(0.8%栄養培地:Difco社、0.4%寒天)を重層した。30℃で7日間培養し、リボスタマイシンに耐性なpKU253−L1−hyg−R1形質転換株を得た。
得られたpKU253−L1−hyg−R1形質転換株を、リボスタマイシンを含まないTSB培地10mLに植菌し、30℃で24時間振盪培養した。pKU253−L1−hyg−R1形質転換株培養液を集菌し、滅菌水10mLで2回洗浄後、滅菌水10mLに懸濁した。適当に希釈した懸濁液を、200μg/mLのハイグロマイシンBを含むYMS寒天培地(0.4%酵母エキス、1%麦芽エキス、0.4%溶性デンプン、2%寒天、10mM塩化カルシウム)に塗布し、30℃で4日間培養した。ハイグロマイシンBを含むYMS寒天培地で生育したシングルコロニーを200μg/mLのハイグロマイシンBを含むYMS寒天培地および200μg/mLのリボスタマイシンを含むYMS寒天培地に植えかえ、30℃で2日間培養した。培養後、ハイグロマイシンB耐性で、リボスタマイシン感受性の株を選択した。得られた菌株は、ゲノム中のpldB遺伝子内の546bp(配列番号1の塩基66303から塩基66848)を欠失し、その間にハイグロマイシンB耐性遺伝子が挿入されたpldB破壊株であり、Mer−11107pldB::hyg株とした。
(9)プラジエノライドの6位水酸化酵素遺伝子(pldB)破壊株のプラジエノライド生産性試験
前項(8)で得られたMer−11107 pldB::hyg株の凍結種母200μLを、種母培地(溶性デンプン2%、大豆粉(味の素社:エスサンミート)2%、酵母エキス0.5%、K2HPO4 0.1%、MgSO4・7H2O 0.25%、CaCO3 0.3%pH無調整)20mLに植菌し、25℃で2日間培養した。得られた種母培養液の300μLを、本培養培地(溶性デンプン5%、グルコース1%、ファルマメディア3%、β−シクロデキストリン2%、CaCO3 0.1% pH7.5)30mLに植菌し、25℃で4日間および5日間培養した。培養終了後、得られた培養液20mLに同量のアセトニトリルを加えて抽出した。その抽出液の一部を分取しアセトニトリルで5倍量に希釈し、以下の条件にてHPLCでプラジエノライドBおよびME−265の量を測定した。測定結果を表1に示す。
(HPLC分析条件)
分析装置:Shimadzu HPLC 10Avp
カラム:Develosil ODS UG−3(φ4.6mm×50mm 3μm)
移動相:45%〜55%メタノール(0〜5分)
55%メタノール(5〜13分)
55%〜70%メタノール(13〜17分)
70%メタノール(17〜35分)
45%メタノール(35〜40分)
流速:1.2mL/分
検出:UV240nm
インジェクション容量:10μL
カラム温度:40℃
分析時間:35分
保持時間:ME−265;22分、プラジエノライドB;16分
(1)ストレプトミセス・エスピーA−1544株のゲノムDNAの調製
グルコース1%、麦芽エキス0.4%、酵母エキス1%からなる培地にA−1544株を接種し、28℃、3日間培養した。得られた培養液を3000rpm、10分間遠心して菌体を集めた。その菌体からBlood & Cell Culture kit(QIAGEN社)を用いてゲノムDNAを調製した。
(2)マクロライド系化合物11107Bの16位水酸化活性を有するタンパク質をコードするDNAの部分的配列のクローニング
ストレプトミセス・セリカラーA3(2)のチトクロムP450(CYP105D5)と推定されるアミノ酸配列を参考にして以下のようなミックス・プライマー(5Dm−3Fおよび5Dm−3R)を設計し作成した(配列番号17および18参照)。
5Dm−3F:5’−TTCGCSCTSCCSGTCCCSTCSATGGTSAT−3’
5Dm−3R:5’−GTTGATSAYSGASGTSGAGAA−3’
コドンの揺らぎを考慮して反応性を高めるために、混合塩基S(=C+G)、Y(=C+T)を使用した。
次に、この2種のプライマー(5Dm−3Fおよび5Dm−3R)と前項(1)で得たA−1544株ゲノムDNAをテンプレートとして用いてPCR反応を行った。PCR反応は、Takara LA Taq(タカラバイオ社)とPCR増幅装置(Biometra社 T Gradient)を用い、変性を98℃、20秒間、アニーリングを50℃、2分間、伸長を68℃、30秒間行う3段階の反応を35回繰り返した。その結果、約500bpの大きさのDNA断片(以下、DNA断片−A1という)が増幅された。このDNA断片−A1は水酸化活性を有するタンパク質をコードするDNAの一部分である可能性が高い。PCR反応にて増幅したDNA断片−A1を、反応液からSUPREC PCR(タカラバイオ社)によって回収した。
次に得られたDNA断片−A1の塩基配列を解析するに足る量のDNA断片−A1を得るために、プラスミドベクターpT7Blue T(Novagen社)にDNA Ligation kit ver.2(タカラバイオ社)を用いてDNA断片−A1を連結し、大腸菌JM109株を形質転換した。その後、アンピシリン(50μg/mL)、X−gal(5−bromo−4−Chloro−3−indolyl−β−D−galactoside;40μg/mL)、IPTG(isopropyl−β−D−thiogalactopyranoside;100μM)を含むL−Broth寒天培地(1.0%バクトトリプトン、0.5%酵母エキス、0.5%NaCl、1.5%寒天)を用いて、形質転換された大腸菌を選択した。こうして分離した形質転換大腸菌のコロニーをアンピシリン(50μg/mL)を含むL−Broth液体培地(1%バクトトリプトン、0.5%酵母エキス、0.5%NaCl)で培養した。増殖した形質転換大腸菌の菌体からプラスミド精製キット(QIAfilter Plasmid Midi Kit,QIAGEN社)を用いてプラスミドDNAの分離精製を行い、一定量のDNA断片−A1を得た。
(3)クローニングされたDNA断片−A1の塩基配列の解析
前項(2)で得られたDNA断片−A1の塩基配列をDNA塩基配列解析装置(PE Biosystems 377XL)を用い、ダイターミネーター・サイクル・シークエンス法で解析した。塩基配列解析の結果、PCR反応で増幅されたDNA断片−A1は電気泳動で約500bpと測定されたが、塩基配列分析の結果、正確には528bpであることが明らかとなった(配列番号2の塩基1775〜塩基2302参照)。クローニングされた前記の528bpのDNA配列の両端には前記のPCR反応の時に使用した2種類のプライマーに対応するDNA配列が見出されたので、前記のPCR反応ではDNA断片−A1がこの2種類のプライマー(5Dm−3Fおよび5Dm−3R)により特異的に増幅されたことが明らかとなった。
(4)DNA断片−A1の周辺領域の解析
前記のとおり、A−1544株由来の水酸化活性を有するタンパク質をコードするDNAの部分的配列が決定されたのでインバースPCR法(細胞工学14巻、p.591−593,1995年)によって、クローニング断片の上流、下流域に広がる周辺領域の塩基配列を増幅、クローニング、配列解析した。すなわち、A−1544株ゲノムDNA(前項(1)参照)をH緩衝液(50mM Tris−HCl,pH7.5,10mM MgCl2,10mM ジチオスレイトール,100mM NaCl)中において制限酵素PstIとSalIでそれぞれ消化した。得られた各制限酵素切断DNA断片をDNA Ligation Kit ver.2(タカラバイオ社)を用いて自己環状化させた。
他方、DNA断片−A1の塩基配列から、以下のようなプライマー(6PIN−2Fおよび6PIN−2R)を設計し作成した(配列番号19および20参照)。
6PIN−2F:5’−GCTGCGCCTGGCCCTGGAGGACATCGAGAT−3’
6PIN−2R:5’−CTGTTCCTCGAAGAACTCGTGGTCGGCGTA−3’
次にこの2種のプライマー(6PIN−2Fおよび6PIN−2R)と前記の自己環状化させたA−1544株ゲノムDNAをテンプレートとして用いてPCR反応を行った。PCR反応は、Takara LA Taq(タカラバイオ社)とPCR増幅装置(Biometra社 T Gradient)を用い、変性を98℃、20秒間、アニーリングと伸長を68℃、5分間行う2段階の反応を35回繰り返した。
この結果、約3.5kbpの大きさのDNA断片(DNA断片−B1)と約2.8kbpの大きさのDNA断片(DNA断片−C1)が増幅したが、これらは、水酸化活性を有するタンパク質をコードするDNAおよびその上流と下流領域を含むDNA配列を有するDNAである可能性が高い。
このPCR増幅反応液からDNA断片−B1およびDNA断片−C1をSUPREC PCR(タカラバイオ社)によって回収した。次に得られたDNA断片−B1およびDNA断片−C1について、塩基配列を解析するに足る量の各DNA断片を得るために、前項(2)と同様にプラスミドベクターpT7Blue T(Novagen社)、DNA Ligation kit ver.2(タカラバイオ社)、大腸菌JM109株およびプラスミド精製キット(QIAfilter Plasmid Midi Kit,QIAGEN社)を用いて、一定量の各DNA断片を得た。
(5)DNA断片−B1(約3.5kbpのサイズ)およびDNA断片−C1(約2.8kbpのサイズ)の塩基配列の解析
前項(4)で得られたDNA断片−B1およびDNA断片−C1の塩基配列をDNA塩基配列解析装置(PE Biosystems 377XL)を用い、ダイターミネーター・サイクル・シークエンス法で解析した。このように塩基配列の解析を行い、DNA断片−B1およびDNA断片−C1配列から、配列番号2に示された3793bpの塩基配列の情報を得た。
この3793bp中のオープン・リーディング・フレーム(ORF)を検索したところ、2種類のタンパク質がコードされていることが判明した。これらのタンパク質のアミノ酸配列をBLAST searchにて検索した結果、配列番号2の塩基1322〜塩基2548にチトクロムP450と高い相同性を有する409個のアミノ酸からなるタンパク質をコードするORF(以下、psmAという)が存在した。そしてpsmAは、ストレプトミセス・セリカラーA3(2)のチトクロムP450(CYP105D5)と推定されるアミノ酸配列と、ストレプトミセス・リビダンスのチトクロムP450(CYP105D4)と推定されるアミノ酸配列に最も高い相同性を有し(相同性72.6%)、さらにストレプトミセス・グリセウスのチトクロムP450soy(SoyC)にも比較的高い相同性を有した(相同性69.4%)。このことからpsmAはチトクロムP450タイプの水酸化酵素をコードする遺伝子である可能性が高いと考えられた。
またpsmAのすぐ下流(配列番号2の塩基2564〜塩基2761)には2Fe−2Sタイプのフェレドキシンに高い相同性を有するタンパク質をコードするORF(以下、psmBという)が存在した。psmBがコードするタンパク質は66個のアミノ酸からなり、ストレプトミセス・セリカラーA3(2)のチトクロムP450(CYP105D5)と推定されるアミノ酸配列のすぐ下流のフェレドキシンと推定されるアミノ酸配列に最も高い相同性を有し(83.3%)、さらにストレプトミセス・グリセウスのフェレドキシンsoy(soyB)にも比較的高い相同性を有した(相同性57.6%)。そのため、psmBは電子伝達を担い、psmAと共に水酸化を行うフェレドキシンをコードしていると考えられた。
(6)プラスミドpTC−DMの構築
pT7NS−caAB(参考例5およびWO03/087381参照)をH緩衝液(50mM Tris−HCl,pH7.5,10mM MgCl2,10mM ジチオスレイトール,100mM NaCl)中で制限酵素NdeIとSpeIにより消化してプラスミド消化物を得た。一方、配列番号2の塩基配列を参考にして、5’末端にNdeIサイトを付加したプライマーDM−NdeF(5’−GCCCCCATATGACGGAACTGACGGACATCA−3’:配列番号33参照)および5’末端にSpeIサイトを付加したプライマーDM−SpeR(5’−GGGCCACTAGTCAGCCGGCCGGTTCGGTCA−3’:配列番号34参照)を設計し作成した。次に、この2種のプライマー(DM−NdeFおよびDM−SpeR)と前項(1)で得たA−1544株ゲノムDNAをテンプレートとして用いてPCR反応を行った。PCR反応は、Takara LA Taq(宝酒造社)とPCR増幅装置(Biometra社 T Gradient)を用い、変性を98℃、20秒間、アニーリングと伸長を68℃、2分間行う2段階の反応を30回繰り返した。このPCR増幅反応液からpsmAおよびpsmBを含む約1.5kbpの大きさのDNA断片をSUPREC PCR(宝酒造社)によって回収した。得られたDNA断片を制限酵素NdeIとSpeIで消化し、その消化物と前記pT7NS−caABプラスミド消化物とを、DNA Ligation Kit ver.2(タカラバイオ)を用いて連結した。これによって、psmAおよびpsmBの両方を内部に含有するDNA断片と、プラスミドpT7NS−camABとが連結された約9.5kbpのサイズのプラスミド(プラスミドpTC−DMというときがある)が構築された。
参考例3:マクロライド系化合物(II)の16位水酸化酵素活性を有するポリペプチドをコードするDNA−2
(1)ストレプトミセス・エスピーMer−11107株ゲノムのDNAの調製
グルコース1%、麦芽エキス0.4%、酵母エキス1%からなる培地にMer−11107株を接種し、28℃、3日間培養した。得られた培養液を3000rpm、10分間遠心して菌体を集めた。その菌体からBlood & Cell Culture kit(QIAGEN社)を用いてゲノムDNAを調製した。
(2)マクロライド系化合物11107Bの16位水酸化活性を有するタンパク質をコードするDNAの部分的配列のクローニング
ストレプトミセス・セリカラーA3(2)のチトクロムP450(CYP105D5)と推定されるアミノ酸配列を参考にして以下のようなミックス・プライマー(5Dm−3Fおよび5D−1R)を設計し作成した(配列番号17および21参照)。
5Dm−3F:5’−TTCGCSCTSCCSGTCCCSTCSATGGTSAT−3’
5D−1R:5’−AGGTGCCCAGCGAGATCATGTT−3’
コドンの揺らぎを考慮して反応性を高めるために、混合塩基S(=C+G)、Y(=C+T)を使用した。
次に、この2種のプライマー(5Dm−3Fおよび5D−1R)と前項(1)で得たMer−11107株ゲノムDNAをテンプレートとして用いてPCR反応を行った。PCR反応は、Takara LA Taq(タカラバイオ社)とPCR増幅装置(Biometra社 T Gradient)を用い、変性を98℃、20秒間、アニーリングを50℃、2分間、伸長を68℃、30秒間行う3段階の反応を35回繰り返した。その結果、約300bpの大きさのDNA断片(以下、DNA断片−A2という)が増幅された。このDNA断片−A2は水酸化活性を有するタンパク質をコードするDNAの一部分である可能性が高い。PCR反応にて増幅したDNA断片−A2を、反応液からSUPREC PCR(タカラバイオ社)によって回収した。
次に得られたDNA断片−A2の塩基配列を解析するに足る量のDNA断片−A2を得るために、プラスミドベクターpT7Blue T(Novagen社)にDNA Ligation kit ver.2(タカラバイオ社)を用いてDNA断片−A2を連結し、大腸菌JM109株を形質転換した。その後、アンピシリン(50μg/mL)、X−gal(5−bromo−4−chloro−3−indolyl−β−D−galactoside;40μg/mL)、IPTG(isopropyl−β−D−thiogalactopyranoside;100μM)を含むL−Broth寒天培地(1.0%バクトトリプトン、0.5%酵母エキス、0.5%NaCl、1.5%寒天)を用いて、形質転換された大腸菌を選択した。こうして分離した形質転換大腸菌のコロニーをアンピシリン(50μg/mL)を含むL−Broth液体培地(1%バクトトリプトン、0.5%酵母エキス、0.5%NaCl)で培養した。増殖した形質転換大腸菌の菌体からプラスミド精製キット(QIAfilter Plasmid Midi Kit,QIAGEN社)を用いてプラスミドDNAの分離精製を行い、一定量のDNA断片−A2を得た。
(3)クローニングされたDNA断片−A2の塩基配列の解析
前項(2)で得られたDNA断片−A2の塩基配列をDNA塩基配列解析装置(PE Biosystems 377XL)を用い、ダイターミネーター・サイクル・シークエンス法で解析した。塩基配列解析の結果、PCR反応で増幅されたDNA断片−A2は電気泳動で約300bpと測定されたが、塩基配列分析の結果、正確には325bpであることが明らかとなった(配列番号3の塩基837〜塩基1161参照)。クローニングされた前記の325bpのDNA配列の両端には前記のPCR反応の時に使用した2種類のプライマーに対応するDNA配列が見出されたので、前記のPCR反応ではDNA断片−A2がこの2種類のプライマー(5Dm−3Fおよび5D−1R)により特異的に増幅されたことが明らかとなった。
(4)DNA断片−A2の周辺領域の解析
前記のとおり、Mer−11107株由来の水酸化活性を有するタンパク質をコードするDNAの部分的配列が決定されたのでインバースPCR法(細胞工学14巻、p.591−593,1995年)によって、クローニング断片の上流、下流域に広がる周辺領域の塩基配列を増幅、クローニング、配列解析した。すなわち、Mer−11107株ゲノムDNA(前項(1)参照)を、K緩衝液(50mM Tris−HCl,pH8.5,10mM MgCl2,1mMジチオスレイトール,100mM KCl)中で制限酵素BamHIで、H緩衝液(50mM Tris−HCl,pH7.5,10mM MgCl2,1mMジチオスレイトール,100mM NaCl)中で制限酵素SalIでそれぞれ消化した。得られた各制限酵素切断DNA断片をDNA Ligation Kit ver.2(タカラバイオ社)を用いて自己環状化させた。
他方、DNA断片−A2の塩基配列から、以下のようなプライマー(7PIN−2Fおよび6PIN−2R)を設計し作成した(配列番号22および20参照)。
7PIN−2F:5’−CCATGATCCTGCTGGTGGCCGGCCATGAGA−3’
6PIN−2R:5’−CTGTTCCTCGAAGAACTCGTGGTCGGCGTA−3’
次にこの2種のプライマー(7PIN−2Fおよび6PIN−2R)と前記の自己環状化させたMer−11107株ゲノムDNAをテンプレートとして用いてPCR反応を行った。PCR反応は、Takara LA Taq(タカラバイオ社)とPCR増幅装置(Biometra社 T Gradient)を用い、変性を98℃、20秒間、アニーリングと伸長を68℃、5分間行う2段階の反応を35回繰り返した。
この結果、約1.3kbpの大きさのDNA断片(DNA断片−B2)と約1.4kbpの大きさのDNA断片(DNA断片−C2)が増幅したが、これらは、水酸化活性を有するタンパク質をコードするDNAおよびその上流と下流領域を含むDNA配列を有するDNAである可能性が高い。
このPCR増幅反応液からDNA断片−B2およびDNA断片−C2をSUPREC PCR(タカラバイオ社)によって回収した。次に得られたDNA断片−B2およびDNA断片−C2について、塩基配列を解析するに足る量の各DNA断片を得るために、前項(2)と同様にプラスミドベクターpT7Blue T(Novagen社)、DNA Ligation kit ver.2(タカラバイオ社)、大腸菌JM109株およびプラスミド精製キット(QIAfilter Plasmid Midi Kit,QIAGEN社)を用いて、一定量の各DNA断片を得た。
(5)DNA断片−B2(約1.3kbpのサイズ)およびDNA断片−C2(約1.4kbpのサイズ)の塩基配列の解析
前項(4)で得られたDNA断片−B2およびDNA断片−C2の塩基配列をDNA塩基配列解析装置(PE Biosystems 377XL)を用い、ダイターミネーター・サイクル・シークエンス法で解析した。このように塩基配列の解析を行い、DNA断片−B2およびDNA断片−C2配列から、配列番号3に示された2329bpの塩基配列の情報を得た。
この2329bp中のオープン・リーディング・フレーム(ORF)を検索したところ、2種類のタンパク質がコードされていることが判明した。これらのタンパク質のアミノ酸配列をBLAST searchにて検索した結果、配列番号3の塩基420〜塩基1604にチトクロムP450と高い相同性を有する395個のアミノ酸からなるタンパク質をコードするORF(以下、bpmAという)が存在した。そしてbpmAは、A−1544株から単離したpsmAのアミノ酸配列に最も高い相同性を有し(相同性67.4%)、さらにストレプトミセス・グリセウスのチトクロムP450soy(SoyC)にも比較的高い相同性を有した(相同性64.8%)。このことからbpmAがチトクロムP450タイプの水酸化酵素をコードする可能性が高いと考えられた。
またbpmAのすぐ下流(配列番号3の塩基1643〜塩基1834)には2Fe−2Sタイプのフェレドキシンに高い相同性を有するタンパク質をコードするORF(以下、bpmBという)が存在した。bpmがコードするタンパク質は64個のアミノ酸からなり、A−1544株から単離したpsmBのアミノ酸配列に最も高い相同性を有し(相同性81.0%)、さらにストレプトミセス・セリカラーA3(2)のチトクロムP450(CYP105D5)と推定されるアミノ酸配列のすぐ下流のフェレドキシンと推定されるアミノ酸配列にも比較的高い相同性を有した(76.2%)。そのため、bpmBは電子伝達を担い、bpmAと共に水酸化を行うものと考えられた。
参考例4:マクロライド系化合物(II)の16位水酸化酵素活性を有するポリペプチドをコードするDNA−3
(1)A−1560株ゲノムのDNAの調製
グルコース1%、麦芽エキス0.4%、酵母エキス1%からなる培地にA−1560株を接種し、28℃、3日間培養した。得られた培養液を3000rpm、10分間遠心して菌体を集めた。その菌体からBlood & Cell Culture kit(QIAGEN社)を用いてA−1560株ゲノムDNAを調製した。
(2)マクロライド系化合物11107Bの16位水酸化活性を有するタンパク質をコードするDNAの部分的配列のクローニング
ストレプトミセス・セリカラーA3(2)のチトクロムP450(CYP105D5)と推定されるアミノ酸配列を参考にして以下のようなミックス・プライマー(5Dm−3Fおよび5Dm−2R)を設計し作成した(配列番号17および23参照)。
5Dm−3F:5’−TTCGCSCTSCCSGTCCCSTCSATGGTSAT−3’
5Dm−2R:5’−CTGGATSGTGTCSCCSGGYTT−3’
コドンの揺らぎを考慮して反応性を高めるために、混合塩基S(=C+G)、Y(=C+T)を使用した。
次に、この2種のプライマー(5Dm−3Fおよび5Dm−2R)と前項(1)で得たA−1560株ゲノムDNAをテンプレートとして用いてPCR反応を行った。PCR反応は、Takara LA Taq(タカラバイオ社)とPCR増幅装置(Biometra社 T Gradient)を用い、変性を98℃、20秒間、アニーリングを50℃、2分間、伸長を68℃、30秒間行う3段階の反応を35回繰り返した。その結果、約750bpの大きさのDNA断片(以下、DNA断片−A3という)が増幅された。このDNA断片−A3は水酸化活性を有するタンパク質をコードするDNAの一部分である可能性が高い。PCR反応にて増幅したDNA断片−A3を、反応液からSUPREC PCR(タカラバイオ社)によって回収した。
次に得られたDNA断片−A3の塩基配列を解析するに足る量のDNA断片−A3を得るために、プラスミドベクターpT7Blue T(Novagen社)にDNA Ligation kit ver.2(タカラバイオ社)を用いてDNA断片−A3を連結し、大腸菌JM109株(Stratagene社)を形質転換した。その後、アンピシリン(50μg/mL)、X−gal(5−bromo−4−chloro−3−indolyl−β−D−galactoside;40μg/mL)、IPTG(isopropyl−β−D−thiogalactopyranoside;100μM)を含むL−Broth寒天培地(1.0%バクトトリプトン、0.5%酵母エキス、0.5%NaCl、1.5%寒天)を用いて、形質転換された大腸菌を選択した。こうして分離した形質転換大腸菌のコロニーをアンピシリン(50μg/mL)を含むL−Broth液体培地(1%バクトトリプトン、0.5%酵母エキス、0.5%NaCl)で培養した。増殖した形質転換大腸菌の菌体からプラスミド精製キット(QIAfilter Plasmid Midi Kit,QIAGEN社)を用いてプラスミドDNAの分離精製を行い、一定量のDNA断片−A3を得た。
(3)クローニングされたDNA断片−A3の塩基配列の解析
前項(2)で得られたDNA断片−A3の塩基配列をDNA塩基配列解析装置(PE Biosystems 377XL)を用い、ダイターミネーター・サイクル・シークエンス法で解析した。塩基配列解析の結果、PCR反応で増幅されたDNA断片−A3は電気泳動で約750bpと測定されたが、塩基配列分析の結果、正確には741bpであることが明らかとなった(配列番号4の塩基616〜塩基1356参照)。クローニングされた前記の741bpのDNA配列の両端には前記のPCR反応の時に使用した2種類のプライマーに対応するDNA配列が見出されたので、前記のPCR反応ではDNA断片−A3がこの2種類のプライマー(5Dm−3Fおよび5Dm−2R)により特異的に増幅されたことが明らかとなった。
(4)DNA断片−A3の周辺領域の解析
前記のとおり、A−1560株由来の水酸化活性を有するタンパク質をコードするDNAの部分的配列が決定されたのでインバースPCR法(細胞工学14巻、p.591−593,1995年)によって、クローニング断片の上流、下流域に広がる周辺領域の塩基配列を増幅、クローニング、配列解析した。すなわち、A−1560株ゲノムDNA(前項(1)参照)を、K緩衝液(50mM Tris−HCl,pH8.5,10mM MgCl2,1mMジチオスレイトール,100mM KCl)中において制限酵素BamHIで、L緩衝掖(10mM Tris−HCl,pH7.5,10mM MgCl2,1mMジチオスレイトール)中において制限酵素KpnIで、H緩衝液(50mM Tris−HCl,pH7.5,10mM MgCl2,1mMジチオスレイトール,100mM NaCl)中において制限酵素SalIでそれぞれ消化した。得られた各制限酵素切断DNA断片をDNA Ligation Kit ver.2(タカラバイオ社)を用いて自己環状化させた。
他方、DNA断片−A3の塩基配列から、以下のようなプライマー(5PIN−2Fおよび6PIN−2R)を設計し作成した(配列番号24および20参照)。
5PIN−2F:5’−CGGAATCCACCAGTGCCTCGGCCAGAACCT−3’
6PIN−2R:5’−CTGTTCCTCGAAGAACTCGTGGTCGGCGTA−3’
次にこの2種のプライマー(5PIN−2Fおよび6PIN−2R)と前記の自己環状化させたA−1560株ゲノムDNAをテンプレートとして用いてPCR反応を行った。PCR反応は、Takara LA Taq(タカラバイオ社)とPCR増幅装置(Biometra社 T Gradient)を用い、変性を98℃、20秒間、アニーリングと伸長を68℃、5分間行う2段階の反応を35回繰り返した。
この結果、約4.5kbpの大きさのDNA断片(DNA断片−B3)と約3.0kbpの大きさのDNA断片(DNA断片−C3)と約1.7kbpの大きさのDNA断片(DNA断片−D3)が増幅したが、これらは、水酸化活性を有するタンパク質をコードするDNAおよびその上流と下流領域を含むDNA配列を有するDNAである可能性が高い。
このPCR増幅反応液からDNA断片−B3およびDNA断片−C3およびDNA断片−D3をSUPREC PCR(タカラバイオ社)によって回収した。次に得られたDNA断片−B3およびDNA断片−C3およびDNA断片−D3について、塩基配列を解析するに足る量の各DNA断片を得るために、前項(2)と同様にプラスミドベクターpT7Blue T(Novagen社)、DNA Ligation kit ver.2(タカラバイオ社)、大腸菌JM109株およびプラスミド精製キット(QIAfilter Plasmid Midi Kit,QIAGEN社)を用いて、一定量の各DNA断片を得た。
(5)DNA断片−B3(約4.5kbpのサイズ)、DNA断片−C3(約3.0kbpのサイズ)およびDNA断片−D3(約1.7kbpのサイズ)の塩基配列の解析
前項(4)で得られたDNA断片−B3、DNA断片−C3およびDNA断片−D3の塩基配列をDNA塩基配列解析装置(PE Biosystems 377XL)を用い、ダイターミネーター・サイクル・シークエンス法で解析した。このように塩基配列の解析を行い、DNA断片−B3、DNA断片−C3およびDNA断片−D3の配列の中から、配列番号4に示された1860bpの塩基配列の情報を得た。
この1860bp中のオープン・リーディング・フレーム(ORF)を検索したところ、2種類のタンパク質がコードされていることが判明した。これらのタンパク質のアミノ酸配列をBLAST searchにて検索した結果、配列番号4の塩基172〜塩基1383にチトクロムP450と高い相同性を有する404個のアミノ酸からなるタンパク質をコードするORF(以下、tpmAという)が存在した。そしてtpmAは、ストレプトミセス・セリカラーA3(2)のチトクロムP450(CYP105D5)と推定されるアミノ酸配列に最も高い相同性を有し(相同性77.4%)、A−1544株から単離したpsmAのアミノ酸配列にも高い相同性を有した(相同性76.6%)。このことからtpmAはチトクロムP450タイプの水酸化酵素をコードする遺伝子である可能性が高いと考えられた。
またtpmAのすぐ下流(配列番号4の塩基1399〜塩基1593)には2Fe−2Sタイプのフェレドキシンに高い相同性を有するタンパク質をコードするORF(以下、tpmBという)が存在した。tpmBがコードするタンパク質は65個のアミノ酸からなり、A−1544株から単離したpsmBのアミノ酸配列に最も高い相同性を有し(相同性87.3%)、ストレプトミセス・セリカラーA3(2)のチトクロムP450(CYP105D5)と推定されるアミノ酸配列のすぐ下流のフェレドキシンと推定されるアミノ酸配列にも高い相同性を有した(82.5%)。そのため、tpmBは電子伝達を担い、tpmAと共に水酸化を行うフェレドキシンをコードしていると考えられた。
参考例5:プラスミドpT7NS−camABの構築
Pseudomonas putida ATCC 17453のゲノムDNAを鋳型にして、以下に示す配列からなるプライマーPRR−1F(配列番号29参照)とPRR−2R(配列番号30参照)を用いて下記の条件でPCRを行った。
PRR−1F:5’−GCCCCCCATATGAACGCAAACGACAACGTGGTCATC−3’
PRR−2R:5’−GCGGATCCTCAGGCACTACTCAGTTCAGCTTTGGC−3’
(反応液組成)
滅菌精製水 15μl
2倍濃縮GC緩衝液I(宝酒造) 25μl
dNTP混合溶液(dATP,dGTP,dTTP,dCTP各2.5mM) 8μl
PRR−1Fプライマー(100pmol/μl) 0.5μl
PRR−2Rプライマー(100pmol/μl) 0.5μl
Pseudomonas putida ATCC 17453ゲノムDNA(10ng/μl)0.5μl
LA Taq(5units/μl,宝酒造) 0.5μl
(温度条件)
95℃ 3分
(98℃ 20秒、63℃ 30秒、68℃ 2分) 30サイクル
72℃ 5分
得られたputidaredoxin reductase遺伝子(camA)およびその遺伝子すぐ下流のputidaredoxin遺伝子(camB)を含む1.5kbの増幅された断片(camAB断片)を制限酵素NdeIおよびBamHIで処理したのち、0.8%アガロースゲルにて電気泳動した。泳動後、このゲルから切り出したcamAB断片を含むゲル切片から同断片をSUPREC−01(宝酒造)を用いて回収・精製した。この断片を大腸菌プラスミドベクターpET11a(Stratagene社)のNdeI部位およびBamHI部位にT4 DNAリガーゼにより連結した後、大腸菌DH5αに形質転換して、プラスミドpT7−camABを構築した。次に以下に示す配列からなる2種の合成オリゴDNA SP−1(配列番号31参照)およびSP−2(配列番号32参照)をアニールして得られるリンカー1分子をこのプラスミドのNdeI部位にT4 DNAリガーゼにより連結し、大腸菌DH5αに形質転換して、プラスミドpT7NS−camABを構築した。
SP−1:5’−TATGCGTCACTAGTCGGGAGTGCGTTA−3’
SP−2:5’−TATAACGCACTCCCGACTAGTGACGCA−3’
[実施例1]pldAプロモーターとpsmABを連結させたプラスミドpPapsmABの作製
psmABをプラジエノライドB生合成遺伝子と連動して発現させるため、プラジエノライドB生合成遺伝子のpldAのプロモーター領域をpsmABと連結させた。配列番号1の塩基配列情報をもとに、pldAのプロモーター領域を増幅するために以下に示すような配列からなる2種のプライマー、pldApro−SpeNdeF(5’末端にSpeIおよびNdeIサイトを付加:配列番号25参照)およびpldApro−NdeR(5’末端にNdeIサイトを付加:配列番号26参照)を合成した。
pldApro−SpeNdeF:5’−GGGCATATGACTAGTAGCCGTGTCCTGCCCGCC−3’
pldApro−NdeR:5’−GGGCATATGTTCGGACGTGAATTCATTCG−3’
これらのプライマーを用いてPCRを以下の条件にて行った。
(PCR反応液組成:東洋紡績社KOD−plus−を使用)
滅菌精製水 71μL
10倍濃縮PCR buffer 10μL
dNTP混合溶液(dATP,dGTP,dCTP,dTTP 各2mM) 10μL
MgSO4(25mM) 4μL
KOD+ 2μL
pldApro−SpeNdeF(50pmol/μL) 1μL
pldApro−NdeR(50pmol/μL) 1μL
pKS35(参考例1(6)10ng/μL) 1μL
(反応条件:Biometra社 T GRADIENTを使用)
95℃ 5分
(98℃ 20秒、63℃ 1分、68℃ 1分)25サイクル
72℃ 5分
この反応の結果、増幅された360bpのDNA断片をQIAquick PCR Purification Kit(QIAGEN社)にて回収した。得られた360bpのDNA断片を制限酵素NdeIで消化した。同様にプラスミドpTC−DM(参考例2(6))を制限酵素NdeIで消化した。得られた360bpのDNA断片の消化物とプラスミド消化物とを、DNA Ligation Kit ver.2.1(タカラバイオ社)を用いて連結した。これにより、pldAプロモーターとpsmABを連結させた、約9.9kbpのサイズのプラスミドpPapsmABを構築した。
[実施例2]組み換え導入用プラスミドの作製
実施例1で調製したプラスミドpPapsmABを制限酵素SpeIで消化した後、BKL Kit(タカラバイオ社)を用いて末端を平滑化した。得られたDNAを0.8%のMolecular Biology Agarose(登録商標、BIO−RAD社)上で電気泳動(Mupid−ex:アドバンス社)し、分離した1.8kbpのpldAプロモーターとpsmABを含むDNA断片(以後、PapsmABというときがある)を切り出し、QIAquick Gel Extraction Kit(QIAGEN社)にて回収精製した。また、図4に示す組み換え導入用ベクターpUC19aph::oriT::intphiC31を制限酵素BamHIで消化した後、BKL Kit(タカラバイオ社)を用いて末端を平滑化した。こうして得られたベクターとPapsmABとをDNA Ligation Kit ver.2.1(タカラバイオ社)を用いて連結した。これにより、PapsmABを組み換え導入用ベクターpUC19aph::oriT::intphiC31に挿入した、組み換え導入用プラスミドpAOC::PapsmABを構築した。
[実施例3]組み換え導入用プラスミドpAOC::PapsmABのMer−11107株への導入
得られたpAOC::PapsmABを、接合大腸菌S17−1(ATCC47055)へエレクトロポレーション法を用いて形質転換し、S17−1/pAOC::PapsmAB株を得た。得られたS17−1/pAOC::PapsmAB株を、25μg/mLのカナマイシンを含むLB培地(1%バクトトリプトン、0.5%酵母エキス、0.5%NaCl)10mLに植菌し、30℃で2時間振盪培養後、集菌し、LB培地10mLで2回洗浄後、LB培地5mLに懸濁した。これを供与菌懸濁液とした。供与菌懸濁液を調製するのと同時進行で、Mer−11107株をTSB培地(Trypto−Soya broth:日水製薬社)10mLに植菌し、30℃で5時間振盪培養後、集菌し、滅菌水10mLで2回洗浄後、滅菌水1mLに懸濁した。これを受容菌懸濁液とした。得られたS17−1/pAOC::PapsmAB株供与菌懸濁液500μLを、Mer−11107株受容菌懸濁液10μLと混ぜ、Actino Medium No.4寒天培地(日本製薬社)に塗布した。30℃で18時間培養後、2mg/mLのリボスタマイシンを含む2.5mLのSNA(0.8%栄養培地:Difco社、0.4%寒天)を重層した。30℃で7日間培養し、リボスタマイシンに耐性なpAOC::PapsmAB形質転換株Mer−11107::pAOC::PapsmAB株を得た。
[実施例4]Mer−11107::pAOC::PapsmAB株のプラジエノライド生産試験
実施例3で得られたMer−11107::pAOC::PapsmAB株とコントロールとして親株のMer−11107株について、プラジエノライドBおよびその16位水酸化体であるプラジエノライドDの生産性を試験した。
Mer−11107::pAOC::PapsmAB株と、Mer−11107株の各々の凍結種母300μLを、種母培地(溶性デンプン2%、大豆粉(味の素社:エスサンミート)2%、酵母エキス0.3%、K2HPO4 0.1%、MgSO・7H2O 0.25%、CaCO3 0.3% pH無調整)60mLに植菌し、25℃で3日間培養した。得られた種母培養液の600μLを、本培養培地(溶性デンプン5%、グルコース1%、ファルマメディア3%、アデカノールLG−126 0.05%、CaCO3 0.1%、pH7.5)60mLに植菌し、25℃で3日間、4日間、5日間および6日間培養した。培養終了後、得られた培養液に対して4倍量のアセトニトリルを加えて抽出した。得られた抽出液についてHPLCにてプラジエノライドBおよびその16位水酸化体であるプラジエノライドDの量を測定した。測定結果を表2に示す。また、HPLCの測定条件を以下に示す。
分析装置:Shimadzu HPLC 10Avp
カラム:Develosil ODS UG−3(φ4.6mm×50mm 3μm)
移動相:45%〜55%メタノール(0〜5分)
55%メタノール(5〜13分)
55%〜70%メタノール(13〜21分)
70%メタノール(21〜25分)
流速:1.2mL/分
検出:UV240nm
インジェクション容量:5μL
カラム温度:40℃
分析時間:25分
保持時間:プラジエノライドB 12.4分
プラジエノライドD 4.3分
[実施例5]Mer−11107::pAOC::PapsmAB株のプラジエノライドD生産におけるβ−CD添加効果
実施例3で得られたMer−11107::pAOC::PapsmAB株におけるプラジエノライドBおよびその16位水酸化体であるプラジエノライドDの生産性について、β−シクロデキストリン(β−CD)の添加効果を調べた。Mer−11107::pAOC::PapsmAB株の凍結種母300μLを、種母培地(溶性デンプン2%、大豆粉(味の素社:エスサンミート)2%、酵母エキス0.3%、K2HPO4 0.1%、MgSO4・7H2O 0.25%、CaCO3 0.3% pH無調整)30mLに植菌し、25℃で3日間培養した。得られた種母培養液の300μLを、β−CDを2%加えた本培養培地(溶性デンプン5%、グルコース1%、ファルマメディア3%、アデカノールLG−126 0.05%、β−CD 2.0%、CaCO3 0.1%、pH7.5)30mL、またはβ−CDを加えない本培養培地(溶性デンプン5%、グルコース1%、ファルマメディア3%、アデカノールLG−126 0.05%、CaCO3 0.1%、pH7.5)30mLに植菌し、25℃で3日間、4日間、5日間および6日間培養した。培養終了後、得られた培養液に対して4倍量のアセトニトリルを加えて抽出した。得られた抽出液についてHPLCにてプラジエノライドBおよびその16位水酸化体であるプラジエノライドDの量を測定した。測定結果を表3に示す。また、HPLCの測定条件を以下に示す。
分析装置:Shimadzu HPLC 10Avp
カラム:Develosil ODS UG−3(φ4.6mm×50mm 3μm)
移動相:45%〜55%メタノール(0〜5分)
55%メタノール(5〜13分)
55%〜70%メタノール(13〜21分)
70%メタノール(21〜25分)
流速:1.2mL/分
検出:UV240nm
インジェクション容量:5μL
カラム温度:40℃
分析時間:25分
保持時間:プラジエノライドB 12.4分
プラジエノライドD 4.3分
[実施例6]Mer−11107::pAOC::PapsmAB株のプラジエノライド生産(2)
実施例3で得られたMer−11107::pAOC::PapsmAB株の凍結種母300μLを種母培地(溶性デンプン2%、大豆粉(味の素社:エスサンミート)2%、酵母エキス0.3%、K2HPO4 0.1%、MgSO4・7H2O 0.25%、CaCO3 0.3% pH無調整)30mLに植菌し、25℃で3日間培養した。得られた種母培養液の300μLを、本培養培地(溶性デンプン5%、グルコース1%、ファルマメディア3%、大豆粉(J−オイルミルズ社:豊年ソイプロ)1%、アデカノールLG−126 0.05%、β−CD 2.0%、CaCO3 0.1%、pH7.5)30mLに植菌し、25℃で3日間、4日間、5日間、6日間および7日間培養した。
培養終了後、得られた培養液に対して4倍量のアセトニトリルを加えて抽出した。得られた抽出液についてHPLCにてプラジエノライドBおよびその16位水酸化体であるプラジエノライドDの量を測定した。測定結果を表4に示す。また、HPLCの測定条件を以下に示す。
分析装置:Shimadzu HPLC 10Avp
カラム:Develosil ODS UG−3(φ4.6mm×50mm 3μm)
移動相:45%〜55%メタノール(0〜5分)
55%メタノール(5〜13分)
55%〜70%メタノール(13〜21分)
70%メタノール(21〜25分)
流速:1.2mL/分
検出:UV240nm
インジェクション容量:5μL
カラム温度:40℃
分析時間:25分
保持時間:プラジエノライドB 12.4分
プラジエノライドD 4.3分
プラジエノライドB;
1H−NMRスペクトル(CD3OD,500MHz):δppm(積分、多重度、結合定数J(Hz)):0.93(3H,d,J=7.0Hz),0.94(3H,d,J=6.8Hz),0.98(3H,t,J=8.0Hz),1.12(3H,d,J=6.8Hz),1.23(3H,s),1.25(1H,m),1.42(2H,m),1.53−1.70(6H,m),1.79(3H,d,J=1.0Hz),2.10(3H,s),2.52(1H,m),2.56(2H,m),2.60(1H,m),2.70(1H,dd,J=2.4,8.3Hz),2.76(1H,dt,J=2.4,5.7Hz),3.56(1H,dt,J=8.3,4.4Hz),3.82(1H,m),5.08(2H,d,J=9.8Hz),5.60(1H,dd,J=9.8,15.2Hz),5.70(1H,dd,J=8.3,15.2Hz),5.74(1H,dd,J=9.8,15.2Hz),6.13(1H,d,J=9.8Hz),6.36(1H,dd,J=9.8,15.2Hz)
プラジエノライドD;
1H−NMRスペクトル(CD3OD,500MHz):δppm(積分、多重度、結合定数J(Hz)):0.93(3H,d,J=7.0Hz),0.95(3H,d,J=6.8Hz),0.98(3H,t,J=8.0Hz),1.23(3H,s),1.30(1H,m),1.36−1.66(9H,m),1.70(1H,dd,J=6.4,14.2Hz),1.82(3H,d,J=1.0Hz),1.90(1H,dd,J=6.4,14.2Hz),2.10(3H,s),2.52(2H,m),2.62(1H,m),2.72(1H,dd,J=2.4,8.3Hz),2.94(1H,dt,J=2.4,5.7Hz),3.55(1H,dt,J=8.3,4.4Hz),3.82(1H,m),5.10((1H,d,J=9.8Hz),5.11(1H,d,J=10.8Hz),5.60(1H,dd,J=9.8,15.2Hz),5.74(1H,dd,J=8.3,15.2Hz),5.92(1H,d,J=15.2Hz),6.18(1H,d,J=10.8Hz),6.57(1H,dd,J=10.8,15.2Hz)
[実施例7]組み換え導入用プラスミドpAOC::PapsmABのMer−11107 pldB::hyg株への導入
実施例3で得られたS17−1/pAOC::PapsmAB株を、25μg/mLのカナマイシンを含むLB培地(1%バクトトリプトン、0.5%酵母エキス、0.5%NaCl)10mLに植菌し、30℃で2時間振盪培養後、集菌し、LB培地10mLで2回洗浄後、LB培地5mLに懸濁した。これを供与菌懸濁液とした。
供与菌懸濁液を調製するのと同時進行で、参考例1(8)で作製したMer−11107 pldB::hyg株をTSB培地(Trypto−Soya broth:日水製薬社)10mLに植菌し、30℃で5時間振盪培養後、集菌し、滅菌水10mLで2回洗浄後、滅菌水1mLに懸濁した。これを受容菌懸濁液とした。得られたS17−1/pAOC::PapsmAB株供与菌懸濁液500μLを、Mer−11107 pldB::hyg株受容菌懸濁液10μLと混ぜ、Actino Medium No.4寒天培地(日本製薬社)に塗布した。30℃で18時間培養後、2mg/mLのリボスタマイシンを含む2.5mLのSNA(0.8%栄養培地:Difco社、0.4%寒天)を重層した。30℃で7日間培養し、リボスタマイシンに耐性なpAOC::PapsmAB形質転換株Mer−11107 pldB::hyg::pAOC::PapsmAB株を得た。
[実施例8]Mer−11107 pldB::hyg::pAOC::PapsmAB株のプラジエノライド生産試験
実施例7で得られたMer−11107 pldB::hyg::pAOC::PapsmAB株とコントロールとして親株のMer−11107 pldB::hyg株について、ME−265およびその16位水酸化体であるME−282の生産性を試験した。Mer−11107 pldB::hyg::pAOC::PapsmAB株と、Mer−11107 pldB::hyg株の各々の凍結種母300μLを、種母培地(溶性デンプン2%、大豆粉(味の素社:エスサンミート)2%、酵母エキス0.3%、K2HPO4 0.1%、MgSO4・7H2O 0.25%、CaCO3 0.3% pH無調整)30mLに植菌し、25℃で3日間培養した。得られた種母培養液の300μLを、β−CDを2%加えた本培養培地(溶性デンプン5%、グルコース1%、ファルマメディア3%、アデカノールLG−126 0.05%、β−CD 2.0%、CaCO3 0.1%、pH7.5)30mLに植菌し、25℃で3日間、4日間、5日間および6日間培養した。培養終了後、得られた培養液に対して4倍量のアセトニトリルを加えて抽出した。得られた抽出液についてHPLCにてME−265およびその16位水酸化体であるME−282の量を測定した。測定結果を表5に示す。また、HPLCの測定条件を以下に示す。
分析装置:Shimadzu HPLC 10Avp
カラム:Develosil ODS UG−3(φ4.6mm×50mm 3μm)
移動相:45%〜55%メタノール(0〜5分)
55%メタノール(5〜13分)
55%〜70%メタノール(13〜17分)
70%メタノール(17〜35分)
流速:1.2mL/分
検出:UV240nm
インジェクション容量:5μL
カラム温度:40℃
分析時間:35分
保持時間:ME−265 21.0分
ME−282 15.6分
前記のMer−11107 pldB::hyg::pAOC::PapsmAB株の培養液に等量のアセトニトリルを添加して得た抽出液約90mLに濾過助剤を加えて混合後、桐山ロート60φ(桐山濾紙No.4)で濾過して菌体を分離した。菌体を水50mLで洗浄して、菌体分離濾液を得た。菌体分離濾液を、酢酸エチル100mLで2回抽出した。無水硫酸ナトリウムにて乾燥後、溶媒を除去して残渣を得た。薄層クロマトグラフィー(MERCK Silicagel 60 F254 0.5mm 展開液;トルエン:アセトン=1:1)により精製し、ME−265を0.5mg、ME−282を12.5mg得た。ME−265及びME−282の1H−NMR分析結果を以下に示す。
ME−265;
1H−NMRスペクトル(CD3OD,500MHz):δppm(積分,多重度,結合定数J(Hz)):0.87(3H,d,J=7.0Hz),0.90(3H,d,J=7.0Hz),0.94(3H,d,J=7.3Hz),0.97(3H,d,J=7.0Hz),1.08(3H,d,J=7.0Hz),1.17−1.21(1H,m),1.24−1.36(2H,m),1.42−1.52(3H,m),1.61−1.66(3H,m),1.74(3H,d,J=1.1Hz),1.89−1.96(1H,m),2.00(3H,s),2.41−2.47(1H,m),2.43(1H,dd,J=5.5,13.9Hz),2.51−2.58(1H,m),2.56(1H,dd,J=3.7,13.9Hz),2.65(1H,dd,J=2.2,8.1Hz),2.72(1H,dt,J=2.2,5.9Hz),3.51(1H,dt,J=4.4,8.4Hz),3.75−3.80(1H,m),4.91(1H,dd,J=8.8,10.6Hz),5.00(1H,d,J=10.6Hz),5.42(1H,dd,J=9.2,15.0Hz),5.49(1H,dd,J=9.2,15.0Hz),5.65(1H,dd,J=8.4,15.0Hz),6.08(1H,d,J=10.6Hz),6.32(1H,dd,J=10.6,15.0Hz)
ME−282;
1H−NMRスペクトル(CD3OD,500MHz):δppm(積分,多重度,結合定数J(Hz)):0.87(3H,d,J=7.0Hz),0.90(3H,d,J=7.0Hz),0.94(3H,t,J=7.3Hz),0.97(3H,d,J=6.6Hz),1.21−1.26(1H,m),1.29−1.37(3H,m),1.34(3H,s),1.44−1.52(2H,m),1.60−1.64(1H,m),1.65(1H,dd,J=6.2,13.9Hz),1.77(3H,d,J=1.1Hz),1.86(1H,dd,J=5.4,13.9Hz),1.89−1.94(1H,m),2.00(3H,s),2.43(1H,dd,J=5.5,13.9Hz),2.50−2.60(1H,m),2.56(1H,dd,J=3.3,13.9Hz),2.66(1H,dd,J=2.2,7.7Hz),2.89(1H,dt,J=2.2,6.2Hz),3.52(1H,dt,J=4.8,8.4Hz),3.75−3.80(1H,m),4.90(1H,overlapped with D2O),5.01(1H,d,J=10.6Hz),5.42(1H,dd,J=9.2,15.0Hz),6.13(1H,d,J=10.6Hz),6.52(1H,dd,J=11.0,15.0Hz)
[実施例9]ermEプロモーターとpsmABを連結させたプラスミドpPepsmABの作製
psmABをermEプロモーターを用いて発現させるため、ermEプロモーター領域をpsmABと連結させた。配列番号2の塩基配列情報をもとに、psmABを増幅するために以下に示すような配列からなる2種のプライマー、eDM−SphF(5’末端にSphIサイトを付加:配列番号27参照)およびeDM−SphR(5’末端にSphIサイトを付加:配列番号28参照)を合成した。
eDM−SphF:5’−TCCCCGCATGCCGGAACTGACGGACATCAC−3’
eDM−SphR:5’−CCCGGGCATGCAGACGACGACGTAGAGGAA−3’
これらのプライマーを用いてPCRを以下の条件にて行った。
(PCR反応液組成:タカラバイオ社LA Taqを使用)
滅菌精製水 17μL
2倍濃縮GC buffer II 25μL
dNTP混合溶液(dATP,dGTP,dCTP,dTTP 各2mM) 5μL
LA Taq 0.5μL
eDM−SphF(50pmol/μL) 0.5μL
eDM−SphR(50pmol/μL) 0.5μL
ストレプトミセス・エスピーA−1544株ゲノムDNA
(参考例2(1)10ng/μL) 1μL
(反応条件:Biometra社 T GRADIENTを使用)
95℃ 3分
(98℃ 20秒、68℃ 4分)30サイクル
68℃ 5分
この反応の結果、増幅された1570bpのpsmABを含むDNA断片をQIAquick PCR Purification Kit(QIAGEN社)にて回収した。得られた1570bpのDNA断片を制限酵素SphIで消化した。同様にプラスミドpSK117(J.Bacteriol.vol.2002 184,6417−6423参照)を制限酵素SphIで消化した。得られた1570bpのpsmABを含むDNA断片の消化物とプラスミド消化物とを、DNA Ligation Kit ver.2.1(タカラバイオ社)を用いて連結した。これにより、ermEプロモーターとpsmABを連結させたプラスミドpPepsmABを構築した。
[実施例10]ermEプロモーターと連結させたpsmABの入った組み換え導入用プラスミドの作製
実施例9で調製したプラスミドpPepsmABを制限酵素KpnIおよびBglIIで消化した後、BKL Kit(タカラバイオ社)を用いて末端を平滑化した。得られたDNAを0.8%のMolecular Biology Agarose(登録商標、BIO−RAD社)上で電気泳動(Mupid−ex:アドバンス社)し、分離した2060bpのermEプロモーターとpsmABを含むDNA断片(以後、PepsmABという)を切り出し、QIAquick Gel Extraction Kit(QIAGEN社)にて回収精製した。また、図4に示す組み換え導入用ベクターpUC19aph::oriT::intphiC31を制限酵素BamHIで消化した後、BKL Kit(タカラバイオ社)を用いて末端を平滑化した。こうして得られたベクターとPepsmABとをDNA Ligation Kit ver.2.1(タカラバイオ社)を用いて連結した。これにより、PepsmABを組み換え導入用ベクターpUC19aph::oriT::intphiC31に挿入した、組み換え導入用プラスミドpAOC::PepsmABを構築した。
[実施例11]天然型psmABの入った組み換え導入用プラスミドの作製
配列番号2の塩基配列を参考にして、5’末端にBglIIサイトを付加したプライマーDM−BglF(5’−CGCATAGATCTTCACCCGAGCGGGTGATCA−3’:配列番号35参照)および5’末端にBglIIサイトを付加したプライマーDM−BglR(5’−TCCCGAGATCTTGAAGGTCCGCGTCACCGT−3’:配列番号36参照)を設計し作成した。次に、この2種のプライマー(DM−BglFおよびDM−BglR)と参考例2(1)で得たA−1544株ゲノムDNAをテンプレートとして用いてPCR反応を行った。PCR反応は、Takara LA Taq(タカラバイオ社)とPCR増幅装置(Biometra社 T Gradient)を用い、変性を98℃、20秒間、アニーリングを63℃、30秒間、伸長を68℃、4分間行う3段階の反応を30回繰り返した。このPCR増幅反応液から天然型のpsmAおよびpsmBを含む約3.5kbpの大きさのDNA断片(以後、PopsmABという)をアガロースゲル電気泳動とSUPREC 01(タカラバイオ社)によって回収した。得られたDNA断片を制限酵素BglIIで消化した。また、図4に示す組み換え導入用ベクターpUC19aph::oriT::intphiC31を制限酵素BamHIで消化した。こうして得られたベクターとPopsmABとをDNA Ligation Kit ver.2.1(タカラバイオ社)を用いて連結した。これにより、PopsmABを組み換え導入用ベクターpUC19aph::oriT::intphiC31に挿入した、組み換え導入用プラスミドpAOC::PopsmABを構築した。
[実施例12]組み換え導入用プラスミドpUC19aph::oriT::intphiC31、pAOC::PepsmABおよびpAOC::PopsmABのMer−11107株への導入
組み換え導入用ベクターpUC19aph::oriT::intphiC31および実施例10および11で得られたpAOC::PepsmABおよびpAOC::PopsmABを、接合大腸菌S17−1(ATCC47055)へエレクトロポレーション法を用いて各々形質転換し、それぞれS17−1/pUC19aph::oriT::intphiC31株、S17−1/pAOC::PepsmAB株およびS17−1/pAOC::PoepsmAB株を得た。得られた3株を、25μg/mLのカナマイシンを含むLB培地(1%バクトトリプトン、0.5%酵母エキス、0.5%NaCl)10mLに植菌し、30℃で2時間振盪培養後、集菌し、LB培地10mLで2回洗浄後、LB培地5mLに懸濁した。これを供与菌懸濁液とした。
供与菌懸濁液を調製するのと同時進行で、Mer−11107株をTSB培地(Trypto−Soya broth:日水製薬社)10mLに植菌し、30℃で5時間振盪培養後、集菌し、滅菌水10mLで2回洗浄後、滅菌水1mLに懸濁した。これを受容菌懸濁液とした。得られた3株の供与菌懸濁液500μLの各々を、Mer−11107株受容菌懸濁液10μLと混ぜ、Actino Medium No.4寒天培地(日本製薬社)に塗布した。30℃で18時間培養後、2mg/mLのリボスタマイシンを含む2.5mLのSNA(0.8%栄養培地:Difco社、0.4%寒天)を重層した。30℃で7日間培養し、リボスタマイシンに耐性なpUC19aph::oriT::intphiC31形質転換株Mer−11107::pAOC株、pAOC::PepsmAB形質転換株Mer−11107::pAOC::PepsmAB株およびpAOC::PopsmAB形質転換株Mer−11107::pAOC::PopsmAB株を得た。
[実施例13]Mer−11107::pAOC株、Mer−11107::pAOC::PepsmAB株およびMer−11107::pAOC::PopsmAB株のプラジエノライド生産試験
実施例12で得られたMer−11107::pAOC株、Mer−11107::pAOC::PepsmAB株およびMer−11107::pAOC::PopsmAB株について、プラジエノライドBおよびその16位水酸化体であるプラジエノライドDの生産性を試験した。Mer−11107::pAOC株、Mer−11107::pAOC::PepsmAB株およびMer−11107::pAOC::PopsmAB株の各々の凍結種母300μLを、種母培地(溶性でんぷん2%、大豆粉(味の素社:エスサンミート)2%、酵母エキス0.3%、K2HPO4 0.1%、MgSO4・7H2O 0.25%、CaCO3 0.3% pH無調整)20mLに植菌し、25℃で2日間培養した。得られた種母培養液の300μLを、本培養培地(溶性デンプン5%、グルコース1%、ファルマメディア3%、CaCO3 0.1%、pH7.5)30mLに植菌し、25℃で4日間培養した。培養終了後、得られた培養液に対して9倍量のアセトニトリルを加えて抽出した。得られた抽出液についてHPLCにてプラジエノライドBおよびその16位水酸化体であるプラジエノライドDの量を測定した。測定結果を表6に示す。また、HPLCの測定条件を以下に示す。
分析装置:Shimadzu HPLC 10Avp
カラム:Develosil ODS UG−3(φ4.6mm×50mm 3μm)
移動相:45%〜55%メタノール(0〜5分)
55%メタノール(5〜13分)
55%〜70%メタノール(13〜21分)
70%メタノール(21〜25分)
流速:1.2mL/分
検出:UV240nm
インジェクション容量:5μL
カラム温度:40℃
分析時間:25分
保持時間:プラジエノライドB 12.4分
プラジエノライドD 4.3分
[実施例14]改変型psmAをふくむpPampsmABの作製
psmAに位置特異的変異を加えるため、実施例1で作製したpPapsmABを鋳型にQuickChangeTM Site−Directed Mutagenesis Kitを用いて変異を導入したpPampsmAB−CLM,pPampsmAB−CLLM,pPampsmAB−CLFM,pPampsmAB−TYを作製した。
まず、以下に示すような配列からなるプライマーR91C−FおよびR91C−R(配列番号37および38参照)を合成し、
R91C−F:5’−TTCGCGGCCGTCTGCGACCGGCGGGTG−3’
R91C−R:5’−CACCCGCCGGTCGCAGACGGCCGCGAA−3’
pPapsmABを鋳型にQuickChangeTM Site−Directed Mutagenesis Kitを用いてPsmAの91番目のアルギニンをシステインに置換するように変異を導入したpPampsmAB−Cを作製した。次に、以下に示すような配列からなるプライマーR195L−FおよびR195L−R(配列番号39および40参照)を合成し、
R195L−F:5’−TCGCAAGGGGCGCTCGAGCGGCTCGAG−3’
R195L−R:5’−CTCGAGCCGCTCGAGCGCCCCTTCCGA−3’
pPampsmAB−Cを鋳型にQuickChangeTM Site−Directed Mutagenesis Kitを用いてPsmAの195番目のアルギニンをロイシンに置換するように変異を導入したpPampsmAB−CLを作製した。次に、以下に示すような配列からなるプライマーL403M−FおよびL403M−R(配列番号41および42参照)を合成し、
L403M−F:5’−ACGATCCAGGGGATGATGGAACTCCCCGTGA−3’
L403M−R:5’−TCACGGGGAGTTCCATCATCCCCTGGATCG−3’
pPampsmAB−CLを鋳型にQuickChangeTM Site−Directed Mutagenesis Kitを用いてPsmAの403番目のロイシンをメチオニンに置換するように変異を導入したpPampsmAB−CLMを作製した。次に、以下に示すような配列からなるプライマーR236L−FおよびR236L−R(配列番号43および44参照)を合成し、
R236L−F:5’−AGCTGGACCGACTCGACGTGGTGGCGCTGG−3’
R236L−R:5’−AGCGCCACCACGTCGAGTCGGTCCAGCTC−3’
pPampsmAB−CLMを鋳型にQuickChangeTM Site−Directed Mutagenesis Kitを用いてPsmAの236番目のアルギニンをロイシンに置換するように変異を導入したpPampsmAB−CLLMを作製した。次に、以下に示すような配列からなるプライマーI244F−FおよびI244F−R(配列番号45および46参照)を合成し、
I244F−F:5’−TGGCGCTGGCCGTCTTCCTGCTCGTGG−3’
I244F−R:5’−CCACGAGCAGGAAGACGGCCAGCGCCACCA−3’
pPampsmAB−CLMを鋳型にQuickChangeTM Site−Directed Mutagenesis Kitを用いてPsmAの244番目のイソロイシンをフェニルアラニンに置換するように変異を導入したpPampsmAB−CLFMを作製した。また、以下に示すような配列からなるプライマーM112T−FおよびM112T−R(配列番号47および48参照)を合成し、
M112T−F:5’−CAGCGGCGGATGACGATCCCGTCGTTC−3’
M112T−R:5’−GAACGACGGGATCGTCATCCGCCGCTG−3’
pPapsmABを鋳型にQuickChangeTM Site−Directed Mutagenesis Kitを用いてPsmAの112番目のメチオニンをトレオニンに置換するように変異を導入したpPampsmAB−Tを作製した。そして、以下に示すような配列からなるプライマーR195Y−FおよびR195Y−R(配列番号49および50参照)を合成し、
R195Y−F:5’−AGGGGCGCGCGAGTACCTCGAGGAGTACCT−3’
R195Y−R:5’−GGTACTCCTCGAGGTACTCGCGCGCCCCTT−3’
pPampsmAB−Tを鋳型にQuickChangeTM Site−Directed Mutagenesis Kitを用いてPsmAの195番目のアルギニンをチロシンに置換するように変異を導入したpPampsmAB−TYを作製した。
[実施例15]2重相同組換えによる導入プラスミドの作製
参考例1(7)プラジエノライド生合成遺伝子クラスターの塩基配列の決定により、決定されたプラジエノライドの生合成に関与するDNAとその周辺のDNAを含む塩基配列を用いて、2重相同組換えによりpsmABまたはその改変体を導入することが可能と考え、以下の方法で、導入用のプラスミドを作製した。
2重相同組換えのための相同配列を増幅させるため、プラジエノライドの生合成に関与するDNAの下流の塩基配列に基づいて、以下に示す配列からなる4種のプライマー、pldout−L−Bgl2F、pldout−L−SphlR、pldout−R−SphlFおよびpldout−R−Bgl2R(配列番号51、52、53および54参照)を合成した。
pldout−L−Bgl2F:5’−GGGAGATCTGCAGGTCATCGGGGGGAAGAACCACA−3’
pldout−L−SphlR:5’−TCTCCAGCCGCATGCGGTCCCGGGTCACCGT−3’
pldout−R−SphlF:5’−CCCGCATGCGGCTGGAGATCATCCAGAGCGCA−3’
pldout−R−Bgl2R:5’−GGGAGATCTAGAACATGCCGGGCCAGAGGCTGAC−3’
これらのプライマーを用いてPCRを以下の条件にて行った。
(PCR反応液組成)
滅菌精製水 30μL
2倍濃縮GC buffer II 50μL
dNTP混合溶液(dATP,dGTP,dTTP,dCTP 各2.5mM)16μL
pldout−L−Bgl2Fまたはpldout−R−SphlF(50pmol/μL)1μL
pldout−L−SphlRまたはpldout−R−Bgl2R(50pmol/μL)1μL
Mer−11107株total DNA(100ng/μL) 1μL
LA Taq polymerase(5u/μL,宝酒造社) 1μL
(反応温度条件)
95℃ 3分(98℃ 20秒,65℃ 30秒,68℃ 3分) 30サイクル
72℃ 5分
この反応の結果、pldout−L−Bgl2Fとpldout−L−SphlRを用いた反応から、2.08kbのDNA断片(DNA断片 LZ)が増幅され、pldout−R−SphlFとpldout−R−Bgl2Rを用いた反応から、2.73kbのDNA断片(DNA断片 RX)が増幅された。DNA断片LZ及びRXをQIAGEN PCR purification Kit(QIAGEN社)で精製した後、制限酵素BglIIとSphIで消化した。
次に、ハイグロマイシン耐性遺伝子を増幅させるため、塩基配列に基づき、以下に示すような配列からなる2種のプライマーhyg−SpeSphFおよびhyg2−SphR(配列番号55および56参照)を合成した。
hyg−SpeSphF:5’−GGGGCATGCGGACTAGTACACCGTCGCCTCGGT−3’
hyg2−SphR:5’−GCCGCATGCGTCAGGCGCCGGGGGCGGTGT−3’
これらのプライマーを用いてPCRを以下の条件にて行った。
(PCR反応液組成)
滅菌精製水 30μL
2倍濃縮GC buffer II 50μL
dNTP混合溶液(dATP,dGTP,dTTP,dCTP 各2,5mM)16μL
hyg−SpeSphF(50pmol/μL) 1μL
hyg2−SphR(50pmol/μL) 1μL
Streptomyces hygroscopicus JCM 4772株 total DNA(100ng/μL)1μL
LA Taq polymerase(5u/μL,宝酒造社) 1μL
(反応温度条件)
95℃ 6分(98℃ 20秒,63℃ 30秒,68℃ 2分) 30サイクル
72℃ 5分
この反応の結果増幅された1.21kbのDNA断片(DNA断片hyg2)をQIAGEN PCR purification Kit(QIAGEN社)で精製した後、制限酵素SphIで消化した。
制限酵素BglIIとSphIで消化したDNA断片LZ及びRXと、制限酵素SphIで消化したDNA断片hyg2、および制限酵素BamHIで消化したシャトルベクターpKU253(図3参照)、の計4者をDNA ligation kit ver.2.1(タカラバイオ社)で連結した。こうしてDNA断片LZとRXの間にDNA断片hyg2が挿入された形の約6.0kbのDNA断片が、pKU253に挿入された約22kbの2重相同組換えによる導入用プラスミドpKU253−LZ−hyg2−RXが構築された。
[実施例16]2重相同組換えによる導入用プラスミドpKU253−LZ−hyg2−RXへのpsmABまたはその改変体の挿入
実施例1で構築したpPapsmABおよび実施例14で構築したpPampsmAB−CLM,pPampsmAB−CLLM,pPampsmAB−CLFM,pPampsmAB−TYを制限酵素SpeIで消化した。制限酵素SpeIで消化した各DNAを0.8%のCertifiedTM Molecular Biology Agarose(BIO−RAD社)上で電気泳動(Mupid−ex:アドバンス社)し、分離した1.8kbpのpldAプロモーターとpsmABまたはその改変体を含むDNA断片(以後、PapsmAB,PampsmAB−CLM,PampsmAB−CLLM,PampsmAB−CLFM,PampsmAB−TYというときがある)を切り出し、QIAquick Gel Extraction Kit(QIAGEN社)にて回収精製した。そうして得られた各DNA断片(PapsmAB,PampsmAB−CLM,PampsmAB−CLLM,PampsmAB−CLFM,PampsmAB−TY)を、実施例15で作製したpKU253−LZ−hyg2−RXを制限酵素SpeIで消化したものとDNA ligation kit ver.2.1(タカラバイオ社)で連結した。こうして各DNA断片(PapsmAB,PampsmAB−CLM,PampsmAB−CLLM,PampsmAB−CLFM,PampsmAB−TY)がpKU253−LZ−hyg2−RXのhyg2の上流に挿入された、約24kbの2重相同組換えによるpsmABまたはその改変体導入プラスミドpKU253−Lz−hyg2−PapsmAB−RX,pKU253−LZ−hyg2−PampsmAB−CLM−RX,pKU253−LZ−hyg2−PampsmAB−CLLM−RX,pKU253−LZ−hyg2−PampsmAB−CLFM−RX,pKU253−LZ−hyg2−PampsmAB−TY−RXが構築された。
[実施例17]2重相同組換えによるMer−11107株へのpsmABまたはその改変体の挿入
得られたpKU253−LZ−hyg2−PapsmAB−RX,pKU253−LZ−hyg2−PampsmAB−CLM−RX,pKU253−LZ−hyg2−PampsmAB−CLLM−RX,pKU253−LZ−hyg2−PampsmAB−CLFM−RX,pKU253−LZ−hyg2−PampsmAB−TY−RXを、それぞれ接合大腸菌S17−1へエレクトロポレーション法を用いて形質転換し、S17−1/pKU253−LZ−hyg2−PapsmAB−RX株,S17−1/pKU253−LZ−hyg2−PampsmAB−CLM−RX株,S17−1/pKU253−LZ−hyg2−PampsmAB−CLLM−RX株,S17−1/pKU253−LZ−hyg2−PampsmAB−CLFM−RX株,S17−1/pKU253−LZ−hyg2−PampsmAB−TY−RX株を得た。得られたS17−1/pKU253−LZ−hyg2−PapsmAB−RX株,S17−1/pKU253−LZ−hyg2−PampsmAB−CLM−RX株,S17−1/pKU253−LZ−hyg2−PampsmAB−CLLM−RX株,S17−1/pKU253−LZ−hyg2−PampsmAB−CLFM−RX株,S17−1/pKU253−LZ−hyg2−PampsmAB−TY−RX株を、それぞれ25μg/mLのカナマイシンおよび100μg/mLのハイグロマイシンBを含むLB培地(1%バクトトリプトン、0.5%酵母エキス、0.5%NaCl)10mLに植菌し、30℃で2時間振盪培養後、集菌し、LB培地10mLで2回洗浄後、LB培地5mLに懸濁した。これを供与菌懸濁液とした。
供与菌懸濁液を調製するのと同時進行で、Mer−11107株をTSB培地(Trypto−Soya broth:日水製薬社)10mLに植菌し、30℃で5時間振盪培養後、集菌し、滅菌水10mLで2回洗浄後、滅菌水1mLに懸濁した。これを受容菌懸濁液とした。S17−1/pKU253−LZ−hyg2−PapsmAB−RX株,S17−1/pKU253−LZ−hyg2−PampsmAB−CLM−RX株,S17−1/pKU253−LZ−hyg2−PampsmAB−CLLM−RX株,S17−1/pKU253−LZ−hyg2−PampsmAB−CLFM−RX株,S17−1/pKU253−LZ−hyg2−PampsmAB−TY−RX株供与菌懸濁液500μLを、Mer−11107株受容菌懸濁液10μLと混ぜ、Actino Medium No.4寒天培地(日本製薬社)に塗布した。30℃で18時間培養後、2mg/mLのリボスタマイシンを含む2.5mLのSNA(0.8%栄養培地:Difco社、0.4%寒天)を重層した。30℃で7日間培養し、リボスタマイシンに耐性なpKU253−LZ−hyg2−PapsmAB−RX,pKU253−LZ−hyg2−PampsmAB−CLM−RX,pKU253−LZ−hyg2−PampsmAB−CLLM−RX,pKU253−LZ−hyg2−PampsmAB−CLFM−RX,pKU253−LZ−hyg2−PampsmAB−TY−RX形質転換株を得た。得られたpKU253−LZ−hyg2−PapsmAB−RX,pKU253−LZ−hyg2−PampsmAB−CLM−RX,pKU253−LZ−hyg2−PampsmAB−CLLM−RX,pKU253−LZ−hyg2−PampsmAB−CLFM−RX,pKU253−LZ−hyg2−PampsmAB−TY−RX形質転換株を、リボスタマイシンを含まないTSB培地10mLにそれぞれ植菌し、30℃で24時間振盪培養した。pKU253−LZ−hyg2−PapsmAB−RX,pKU253−LZ−hyg2−PampsmAB−CLM−RX,pKU253−LZ−hyg2−PampsmAB−CLLM−RX,pKU253−LZ−hyg2−PampsmAB−CLFM−RX,pKU253−LZ−hyg2−PampsmAB−TY−RX形質転換株培養液を集菌し、滅菌水10mLで2回洗浄後、滅菌水10mLに懸濁した。適当に希釈した懸濁液を、200μg/mLのハイグロマイシンBを含むYMS寒天培地(0.4%酵母エキス、1%麦芽エキス、0.4%溶性デンプン、2%寒天、10mM塩化カルシウム)に塗布し、30℃で4日間培養した。ハイグロマイシンBを含むYMS寒天培地で生育したシングルコロニーを200μg/mLのハイグロマイシンBを含むYMS寒天培地および200μg/mLのリボスタマイシンを含むYMS寒天培地に植えかえ、30℃で2日間培養した。培養後、ハイグロマイシンB耐性で、リボスタマイシン感受性の株を選択した。得られた菌株は、ゲノム中のプラジエノライドの生合成に関与するDNAの下流(配列番号1の塩基73362と塩基73369の間)にハイグロマイシンB耐性遺伝子hyg2およびpsmABまたはその改変体が挿入された株であり、各々Mer−11107−ZX::hyg2::PapsmAB株,Mer−11107−ZX::hyg2::PampsmAB−CLM株,Mer−11107−ZX::hyg2::PampsmAB−CLLM株,Mer−11107−ZX::hyg2::PampsmAB−CLFM株,Mer−11107−ZX::hyg2::PampsmAB−TY株とした。
[実施例18]Mer−11107−ZX::hyg2::PapsmAB株,Mer−11107−ZX::hyg2::PampsmAB−CLM株,Mer−11107−ZX::hyg2::PampsmAB−CLLM株,Mer−11107−ZX::hyg2::PampsmAB−CLFM株,Mer−11107−ZX::hyg2::PampsmAB−TY株のプラジエノライド生産
実施例17で得られたMer−11107−ZX::hyg2::PapsmAB株,Mer−11107−ZX::hyg2::PampsmAB−CLM株,Mer−11107−ZX::hyg2::PampsmAB−CLLM株,Mer−11107−ZX::hyg2::PampsmAB−CLFM株,Mer−11107−ZX::hyg2::PampsmAB−TY株の凍結種母、各500μLを種母培地(溶性デンプン2%、大豆粉(味の素社:エスサンミート)2%、酵母エキス0.3%、K2HPO4 0.1%、MgSO4・7H2O 0.25%、CaCO3 0.3% pH無調整)25mLに植菌し、25℃で3日間培養した。得られた種母培養液の300μLを、本培養培地(溶性デンプン5%、グルコース1%、ファルマメディア3%、ソイプロ1%、アデカノールLG−126 0.05%、β−CD 2.0%、CaCO3 0.1%、pH7.5)30mLに植菌し、25℃で6日間培養した。
培養終了後、得られた培養液に対して4倍量のアセトニトリルを加えて抽出した。得られた抽出液についてHPLCにてプラジエノライドD、およびプラジエノライドDの20位水酸化体であるプラジエノライドH13、およびプラジエノライドDの21位ケト体であるプラジエノライドC2、そしてプラジエノライドDの20位水酸化、21位ケト体であるプラジエノライドC3の量を測定した。測定結果を表7に示す。また、HPLCの測定条件を以下に示す。
(HPLCの分析条件)
分析装置:Shimadzu HPLC 10Avp
カラム:Develosil ODS UG−3(4.6×50mm 3μm)
移動相:20%〜35% アセトニトリル(0〜13分)
35%〜100% アセトニトリル(13〜17分)
20% アセトニトリル(17〜22分)
流速:1.0mL/分
検出:UV240nm
インジェクション容量:5μL
カラム温度:40℃
分析時間:22分
保持時間: プラジエノライドH13; 5.5分、
プラジエノライドC3; 8.3分、
プラジエノライドD; 9.0分、
プラジエノライドC2; 11.1分
[配列表]
Claims (21)
- 前記(a)で表わされるDNAが、ポリケチド合成酵素活性を有するポリペプチド、7位アセチル化酵素活性を有するポリペプチド、18,19位エポキシ化酵素活性を有するポリペプチドおよび転写調節因子活性を有するポリペプチドを一部にまたは全体としてコードするDNAである請求項1記載の遺伝子組換え微生物。
- 前記(a)で表わされるDNAが、
(a−1)配列番号1の塩基8340から塩基27935までの連続した塩基配列
(a−2)配列番号1の塩基28021から塩基49098までの連続した塩基配列
(a−3)配列番号1の塩基49134から塩基60269までの連続した塩基配列
(a−4)配列番号1の塩基60269から塩基65692までの連続した塩基配列
(a−5)配列番号1の塩基68160から塩基66970までの連続した塩基配列
(a−6)配列番号1の塩基69568から塩基68270までの連続した塩基配列、および
(a−7)配列番号1の塩基72725から塩基70020までの連続した塩基配列
を含んでなるDNAまたはその改変体である請求項1または2記載の遺伝子組換え微生物。 - 前記(a)で表わされるDNAが、さらに6位水酸化酵素活性を有するポリペプチドを一部にまたは全体としてコードするDNAを含む請求項2または3記載の遺伝子組換え微生物。
- 6位水酸化酵素活性を有するポリペプチドを一部にまたは全体としてコードするDNAが、配列番号1の塩基65707から塩基66903までの連続した塩基配列を含むDNAまたはその改変体である請求項4記載の遺伝子組換え微生物。
- 前記(b)で表わされるDNAが、
(b−1)配列番号2の塩基1322から塩基2548までの連続した塩基配列、
(b−2)配列番号3の塩基420から塩基1604までの連続した塩基配列、および
(b−3)配列番号4の塩基172から塩基1383までの連続した塩基配列
からなる群より選択されるDNAまたはその改変体である請求項1から5までのいずれかの請求項に記載の遺伝子組換え微生物。 - 前記(b)で表わされるDNAが、配列番号2の塩基1322から塩基2548までの連続した塩基配列を含んでなるDNAの改変体であって、以下の1)〜6)からなる群より選択される改変部位を1または2以上有する、請求項1から6までのいずれかの請求項に記載の遺伝子組換え微生物。
1)塩基1592から塩基1594にかけての配列cgcを、アルギニン以外のアミノ酸をコードするコドンに改変した改変部位
2)塩基1655から塩基1657にかけての配列atgを、メチオニン以外のアミノ酸をコードするコドンに改変した改変部位
3)塩基1904から塩基1906にかけての配列cgcを、アルギニン以外のアミノ酸をコードするコドンに改変した改変部位
4)塩基2027から塩基2029にかけての配列cgcを、アルギニン以外のアミノ酸をコードするコドンに改変した改変部位
5)塩基2054から塩基2056にかけての配列atcを、イソロイシン以外のアミノ酸をコードするコドンに改変した改変部位
6)塩基2528から塩基2530にかけての配列ctgを、ロイシン以外のアミノ酸をコードするコドンに改変した改変部位 - 前記(b)で表わされるDNAが、配列番号2の塩基1322から塩基2548までの連続した塩基配列を含んでなるDNAの改変体であって、以下の1)〜6)からなる群より選択される改変部位を1または2以上有する、請求項1から6までのいずれかの請求項に記載の遺伝子組換え微生物。
1)塩基1592から塩基1594にかけての配列cgcを、システイン、メチオニンまたはプロリンをコードするコドンに改変した改変部位
2)塩基1655から塩基1657にかけての配列atgを、スレオニンまたはセリンをコードするコドンに改変した改変部位
3)塩基1904から塩基1906にかけての配列cgcを、ロイシン、イソロイシン、プロリン、チロシンまたはフェニルアラニンをコードするコドンに改変した改変部位
4)塩基2027から塩基2029にかけての配列cgcを、ロイシン、イソロイシンまたはプロリンをコードするコドンに改変した改変部位
5)塩基2054から塩基2056にかけての配列atcを、フェニルアラニンまたはバリンをコードするコドンに改変した改変部位
6)塩基2528から塩基2530にかけての配列ctgを、メチオニン、システィンまたはイソロイシンをコードするコドンに改変した改変部位 - 前記(b)で表わされるDNAが、配列番号2の塩基1322から塩基2548までの連続した塩基配列を含んでなるDNAの改変体であって、以下の1)〜6)からなる群より選択される改変部位を1または2以上有する、請求項1から6までのいずれかの請求項に記載の遺伝子組換え微生物。
1)塩基1592から塩基1594にかけての配列cgcを、システインをコードするコドンに改変した改変部位
2)塩基1655から塩基1657にかけての配列atgを、スレオニンをコードするコドンに改変した改変部位
3)塩基1904から塩基1906にかけての配列cgcを、ロイシンまたはチロシンをコードするコドンに改変した改変部位
4)塩基2027から塩基2029にかけての配列cgcを、ロイシンをコードするコドンに改変した改変部位
5)塩基2054から塩基2056にかけての配列atcを、フェニルアラニンをコードするコドンに改変した改変部位
6)塩基2528から塩基2530にかけての配列ctgを、メチオニンをコードするコドンに改変した改変部位 - 前記(a)で表わされるDNAを有する宿主に、異種微生物由来の前記(b)で表わされるDNAを組み込んだ請求項1記載の遺伝子組換え微生物。
- 前記(b)で表わされるDNAを有する宿主に、異種微生物由来の前記(a)で表わされるDNAを組み込んだ請求項1記載の遺伝子組換え微生物。
- 前記(a)および(b)で表わされるいずれのDNAも有しない宿主に、異種微生物由来の前記(a)および(b)で表わされるDNAを両方とも組み込んだ請求項1記載の遺伝子組換え微生物。
- 式(I)で表わされる16位水酸化マクロライド系化合物を生産する能力を有する遺伝子組換え微生物が、ストレプトミセス(Streptomyces)属に属する菌株である請求項1から12までのいずれかの請求項に記載の遺伝子組換え微生物。
- 下記の培地30mLを入れた250mL容の三角フラスコに遺伝子組換え微生物を植菌し、25℃で4日間回転振とう培養(220rpm)した後、アセトニトリル270mLを加えて抽出し、得られた抽出液を下記の測定条件でHPLC分析し、式(I)で表わされる16位水酸化マクロライド系化合物を定量したときに、式(I)で表わされる16位水酸化マクロライド系化合物を培養液1L当り50mg以上生産する能力を有する請求項1から13までのいずれかの請求項に記載の遺伝子組換え微生物。
(培地)
溶性デンプン5%、グルコース1%、ファルマメディア3%、CaCO3 0.1%、pH7.5
(HPLC測定条件)
分析装置:Shimadzu HPLC 10Avp
カラム:Develosil ODS UG−3(φ4.6mm×50mm 3μm)
移動相:45%〜55%メタノール(0〜5分)、55%メタノール(5〜13分)、55%〜70%メタノール(13〜21分)、70%メタノール(21〜25分)
流速:1.2mL/分
検出:UV240nm
インジェクション容量:5μL
カラム温度:40℃ - 請求項1から14までのいずれかの請求項に記載された遺伝子組換え微生物を、栄養培地中で培養し、その培養液から式(I)で表わされる16位水酸化マクロライド系化合物を採取することを特徴とする、式(I)で表わされる16位水酸化マクロライド系化合物もしくはその薬理学上許容される塩またはそれらの水和物の製造方法。
- 培養液中にシクロデキストリン類を存在させることを特徴とする請求項15に記載の方法。
- シクロデキストリン類が、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン、部分メチル化β−シクロデキストリン、ジメチル−β−シクロデキストリン、トリメチル−β−シクロデキストリン、グリコシル−β−シクロデキストリンおよびヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンからなる群から選択されるシクロデキストリン類である請求項16に記載の方法。
- 配列番号2の塩基1322から塩基2548までの連続した塩基配列を含んでなるDNAの改変体であって、以下の1)〜6)からなる群より選択される改変部位を1または2以上含んでなるDNA改変体。
1)塩基1592から塩基1594にかけての配列cgcを、アルギニン以外のアミノ酸をコードするコドンに改変した改変部位
2)塩基1655から塩基1657にかけての配列atgを、メチオニン以外のアミノ酸をコードするコドンに改変した改変部位
3)塩基1904から塩基1906にかけての配列cgcを、アルギニン以外のアミノ酸をコードするコドンに改変した改変部位
4)塩基2027から塩基2029にかけての配列cgcを、アルギニン以外のアミノ酸をコードするコドンに改変した改変部位
5)塩基2054から塩基2056にかけての配列atcを、イソロイシン以外のアミノ酸をコードするコドンに改変した改変部位
6)塩基2528から塩基2530にかけての配列ctgを、ロイシン以外のアミノ酸をコードするコドンに改変した改変部位 - 配列番号2の塩基1322から塩基2548までの連続した塩基配列を含んでなるDNAの改変体であって、以下の1)〜6)からなる群より選択される改変部位を1または2以上含んでなるDNA改変体。
1)塩基1592から塩基1594にかけての配列cgcを、システイン、メチオニンまたはプロリンをコードするコドンに改変した改変部位
2)塩基1655から塩基1657にかけての配列atgを、スレオニンまたはセリンをコードするコドンに改変した改変部位
3)塩基1904から塩基1906にかけての配列cgcを、ロイシン、イソロイシン、プロリン、チロシンまたはフェニルアラニンをコードするコドンに改変した改変部位
4)塩基2027から塩基2029にかけての配列cgcを、ロイシン、イソロイシンまたはプロリンをコードするコドンに改変した改変部位
5)塩基2054から塩基2056にかけての配列atcを、フェニルアラニンまたはバリンをコードするコドンに改変した改変部位
6)塩基2528から塩基2530にかけての配列ctgを、メチオニン、システインまたはイソロイシンをコードするコドンに改変した改変部位 - 配列番号2の塩基1322から塩基2548までの連続した塩基配列を含んでなるDNAの改変体であって、以下の1)〜6)からなる群より選択される改変部位を1または2以上含んでなるDNA改変体。
1)塩基1592から塩基1594にかけての配列cgcを、システインをコードするコドンに改変した改変部位
2)塩基1655から塩基1657にかけての配列atgを、スレオニンをコードするコドンに改変した改変部位
3)塩基1904から塩基1906にかけての配列cgcを、ロイシンまたはチロシンをコードするコドンに改変した改変部位
4)塩基2027から塩基2029にかけての配列cgcを、ロイシンをコードするコドンに改変した改変部位
5)塩基2054から塩基2056にかけての配列atcを、フェニルアラニンをコードするコドンに改変した改変部位
6)塩基2528から塩基2530にかけての配列ctgを、メチオニンをコードするコドンに改変した改変部位 - 請求項18から20までのいずれかの請求項に記載されたDNA改変体によりコードされるポリペプチド。
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