JP4310022B2 - アレーアンテナのキャリブレーション方法及びキャリブレーション装置 - Google Patents

アレーアンテナのキャリブレーション方法及びキャリブレーション装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、複数のアンテナ素子を備えたアレーアンテナが最適な指向性パターンを得るためのキャリブレーション方法及びキャリブレーション装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
複数のアンテナ素子に最適な位相と振幅を設定し所望の指向性パターンを実現するアレーアンテナにおいては、シミュレーションや計算にて最適な位相と振幅を各アンテナ素子に設定したとしても、指向性パターンを測定する際、実際には電波環境の影響や位相調整器、振幅調整器などの部品の誤差の影響等により所望の指向性パターンが得られなかった。
【0003】
このため、例えば、特開平11−27031号公報記載のものは、図8に示すように、S1にて、アレーアンテナからの放射電力を複数の測定点で測定し、S2にて、放射電力の実測値Pomとアレーアンテナの各アンテナ素子の励振振幅Aと励振位相Pの初期値から導かれる放射電力の計算値の差を表す評価関数Fを設定する。この評価関数Fは数1式によって表される。
【0004】
【数1】
Figure 0004310022
【0005】
この数1式は、励振振幅Aと励振位相Pの関数であり、S3にて、第1段階として、AとPに初期値を代入し、最急降下法等の非線形計画法を用いて評価関数Fが最小になる励振位相Pを求める。次に、S4にて、第2段階として、第1段階で求めた励振位相Pを評価関数Fの初期値として与え、再度、この評価関数Fを励振振幅Aと励振位相Pの両方を変化させて最小化することにより、所望の指向性パターンを実現するのに最適な励振振幅Aと励振位相Pを求めることができるというものである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、この公報のものは、複数点での放射電力を測定した後に評価関数Fを作成し、励振振幅Aと励振位相Pを変数とし、この変数の値を2段階に分けて繰り返し変化させていき、評価関数Fが最小になるように励振振幅Aと励振位相Pを算出するため、複雑な計算を繰り返し行わなければならず、このため計算量が多くなるという問題があった。しかも、アンテナ素子が増加するとその増加に応じて計算量がさらに増加するという問題があった。
【0007】
請求項1乃至5記載の発明は、アレーアンテナのキャリブレーションを少ない計算量で簡単に行うことができるアレーアンテナのキャリブレーション方法を提供する。
【0008】
請求項6記載の発明は、アレーアンテナのキャリブレーションを少ない計算量で簡単に行うことができるアレーアンテナのキャリブレーション装置を提供する。
【0011】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の発明は、複数のアンテナ素子を備えたアレーアンテナの各アンテナ素子に所望の指向性パターンを得るのに適した重み係数を設定するアレーアンテナのキャリブレーション方法において、所望の指向性パターンを得るのに適した各アンテナ素子の重み係数からなる重み係数群とこの重み係数群によるアレーアンテナの指向性パターンをアレーアンテナから見て所定角度ずつ変化させる角度毎にシミュレーションにより算出し、先ず、この算出した重み係数群をアレーアンテナに設定して指向性パターンを、アレーアンテナを所定角度ずつ変化させながら測定し、この測定した所定角度毎の指向性パターンのレベルと算出した指向性パターンの各方向毎のレベルとの差の絶対値をそれぞれ求め、この差の絶対値を全ての方向について加算した合計を測定した指向性パターンと算出した指向性パターンとの比較結果とし、この比較結果が所定値を満足するか否かを判断し、所定値を満足する場合はこの設定した重み係数群を最適な重み係数群とし、所定値を満足しない場合は、比較結果が所定値を満足するまで、算出した重み係数群の任意の重み係数を変更した重み係数群をアレーアンテナに設定して指向性パターンを測定し、この測定した指向性パターンと算出した指向性パターンとの比較を繰り返すアレーアンテナのキャリブレーション方法にある。
【0012】
請求項2記載の発明は、複数のアンテナ素子を備えたアレーアンテナの各アンテナ素子に所望の指向性パターンを得るのに適した重み係数を設定するアレーアンテナのキャリブレーション方法において、所望の指向性パターンを得るのに適した各アンテナ素子の重み係数からなる重み係数群とこの重み係数群によるアレーアンテナの指向性パターンをアレーアンテナから見て所定角度ずつ変化させる角度毎にシミュレーションにより算出し、先ず、予め設定した範囲内において測定方向を決めてこの算出した重み係数群とこの重み係数群の任意の重み係数を変更した複数の重み係数群をアレーアンテナに順次設定してそれぞれ指向性パターンの特定方向のレベルを測定し、次に、測定方向を変化させて、算出した重み係数群とこの重み係数群の任意の重み係数を変更した複数の重み係数群をアレーアンテナに順次設定してそれぞれ指向性パターンの特定方向のレベルを測定し、この測定を測定方向を変化させて繰り返し行ない、測定した指向性パターンの中で、シミュレーションにより角度毎に算出したアレーアンテナの指向性パターンに最も近い指向性パターンを選択し、この選択した指向性パターンを得るための重み係数群を最適な重み係数群とするアレーアンテナのキャリブレーション方法にある。
【0013】
請求項記載の発明は、請求項1または2記載のアレーアンテナのキャリブレーション方法において、測定方向の範囲を設定し、指向性パターンの測定をその範囲内で局所的に行うことにある。
【0014】
請求項記載の発明は、複数のアンテナ素子を備えたアレーアンテナと、所望波方向と不要波方向の情報に基づいてアレーアンテナの各アンテナ素子毎に設定する適切な重み係数からなる重み係数群とアレーアンテナの指向性パターンをアレーアンテナから見て所定角度ずつ変化させる角度毎に算出するシミュレーション手段と、このシミュレーション手段で算出した重み係数群の任意の重み係数を変更した複数の重み係数群を求める重み係数決定手段と、シミュレーション手段で算出した重み係数群及び重み係数決定手段で求めた複数の重み係数群をアレーアンテナに順次設定する設定手段と、この設定手段がアレーアンテナに重み係数群を設定する毎にアレーアンテナの指向性パターンを、アレーアンテナを所定角度ずつ変化させながら測定する指向性測定手段と、この測定指向性測定手段により測定した所定角度毎の指向性パターンのレベルとシミュレーション手段で算出した指向性パターンの各方向毎のレベルとの差の絶対値をそれぞれ求め、この差の絶対値を全ての方向について加算した合計を測定した指向性パターンと算出した指向性パターンとの比較結果とする比較手段と、、この比較手段の比較結果によりシミュレーション手段で算出した指向性パターンに最も近い指向性パターンを選択し、この選択した指向性パターンを得るための重み係数群を最適な重み係数群としてアレーアンテナに設定する設定手段とを備えたアレーアンテナのキャリブレーション装置にある。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
(第1の実施の形態)
図1はアレーアンテナのキャリブレーション装置を示すブロック図で、アレーアンテナ装置1は、複数のアンテナ素子2からなるアレーアンテナと、各アンテナ素子2が送受信する信号にそれぞれ位相と振幅の重み係数を与える重み付け器3と、この各重み付け器3からの受信信号を加算する加算器4を設けている。なお、ここでは受信系についてのみ記載したが、前記アレーアンテナ装置には同相分配器等からなる送信系も備えている。
【0016】
キャリブレーション装置は、加算器4からの受信信号をデジタル信号に変換するA/D変換器11、このA/D変換器11からのデジタル信号を取込んでキャリブレーション処理を行うデジタル信号処理部12を備えている。
【0017】
前記デジタル信号処理部12は、所望波方向と不要波方向の情報に基づいてシミュレーション上最適な各アンテナ素子2毎の重み係数を重み係数群として算出すると共に前記アレーアンテナの指向性パターンを算出するシミュレーション部13と、このシミュレーション部13で算出した重み係数群を基準にしてアンテナ素子2中の任意の重み係数を変更した複数の重み係数群を求める重み係数決定手段と前記シミュレーション部13で算出した重み係数群及び前記重み係数決定手段で求めた複数の重み係数群を前記アレーアンテナに順次設定する設定手段とを備えた重み係数決定・設定部14と、この重み係数決定・設定部14の設定手段が前記アレーアンテナに重み係数群を設定する毎に前記A/D変換器11からのデジタル信号によって前記アレーアンテナの指向性パターンを測定する指向性測定部15と、前記シミュレーション部13で算出した指向性パターンと前記指向性測定部15が測定した各重み係数群毎の指向性パターンを比較する比較演算部16と、この比較演算部16の比較結果により前記シミュレーション部13で算出した指向性パターンに最も近い指向性パターンを実現する重み係数群を最適重み係数として選択し決定する最適重み係数決定部17と、前記シミュレーション部13で算出した各アンテナ素子2毎の重み係数からなる重み係数群とアレーアンテナの指向性パターン、この算出した重み係数群中の任意の重み係数を変更した複数の重み係数群及び前記指向性測定部15が測定した実際の指向性パターンをそれぞれ格納する記憶装置18と、指向性パターンを測定するために前記アレーアンテナ装置1の測定方向、すなわち、角度を調整する方向制御部19と、これに全体を制御する制御部20によって構成される。
【0018】
図2はキャリブレーション装置のキャリブレーション制御を示す流れ図で、S11にて、シミュレーション部13は、所望波方向には指向性を向け、干渉波や妨害波などの到来する不要波方向には指向性を向けないようにヌル点を形成するよう、各アンテナ素子12の位相と振幅の重み係数を算出し、記憶装置18に格納する。すなわち、所望波方向と不要波方向の情報をもとにシミュレーションを行い、シミュレーション上最適な各アンテナ素子2の重み係数とアレーアンテナの指向性パターンを算出する。なお、シミュレーションには、各種のアルゴリズムを用いた方法が考えられるが、例えば、MSNアルゴリズムをシミュレーションに用い、所望波と不要波の到来方向情報から各アンテナ素子2の重み係数と指向性パターンを算出する。指向性パターンは、例えば、アレーアンテナから見て−90°〜90°の範囲で1°ずつ角度を変化させることを想定して指向性パターンの各角度毎のレベルを算出する。
【0019】
続いて、S12にて、重み係数決定・設定部14は前記シミュレーション部13が算出した重み係数をアレーアンテナの各アンテナ素子2に与えるためにそれぞれ対応する重み付け器3に設定し、S13にて、指向性測定部15はA/D変換器11からのデジタル信号によってアレーアンテナの指向性パターンを測定し、その測定結果を記憶装置18に格納する。この測定は、例えば、アレーアンテナ装置1を回転台に設置し、方向制御部19で回転台を−90°〜90°の範囲を角度を1°ずつ変化させる回転駆動を行いながら図1に示すように一定距離離れた送信アンテナ31からシグナルジェネレータ32が発生する基準信号を送信し、これをアレーアンテナで受信し、A/D変換器11からのデジタル信号を各角度毎に測定し、−90°〜90°の範囲におけるアレーアンテナの指向性パターンを測定する。
【0020】
続いて、S14にて、シミュレーション部13で算出した指向性パターンと指向性測定部15で測定した指向性パターンとを比較演算部16で比較演算する。これは、例えば−90°〜90°の範囲で1°毎に測定した指向性パターンの各方向毎のレベルとシミュレーションで1°毎に算出した指向性パターンの各方向毎のレベルとの差の絶対値をそれぞれ求める。そして、この差をすべての方向について加算した合計を比較結果として前記記憶装置18に格納する。
【0021】
続いて、S15にて、指向性パターンの測定を続行するか終了するかを判断する。これは、例えば、予め指向性パターンの測定回数を決めておき、その回数だけ指向性パターンの測定が行われたかどうかで判断する。あるいは、指向性パターンの測定を続行するか終了するかどうかを、測定者に入力させた指示入力に基づいて行ってもよい。
【0022】
例えば、指向性パターンの測定回数が予め設定した回数より少ない場合には、S16にて、重み係数決定・設定部14の重み係数決定手段が、シミュレーションで算出した各アンテナ素子2の重み係数からなる重み係数群を基準にしてこの重み係数群中の少なくとも一つの重み係数を変更し、記憶装置18に格納する。そして、再度、S13にて、重み係数決定・設定部14の設定手段が、アレーアンテナ装置1の各重み付け器3にこの変更した重み係数を設定する。そして、指向性測定部15により再度−90°〜90°の範囲で1°ずつ角度を変化させて指向性パターンを測定する。
【0023】
重み係数決定・設定部14の重み係数決定手段により、各アンテナ素子2の重み係数からなる重み係数群中の任意の重み係数を変更する方法としては、例えば、アンテナ素子2中の1つの素子の重み係数を、繰り返し前記指向性パターンの測定毎、ある範囲で少しずつ変化させ、残りの素子の重み係数は固定するように決定する方法や、2つあるいは3つ以上の素子の重み係数を同時に、前記指向性パターンの測定毎、ある範囲で少しずつ変化させ、残りの素子の重み係数は固定するように決定する方法などがある。このようにしてアレーアンテナ全体から見た場合の重み係数群を変化させる。
【0024】
そして、S14にて、変更した重み係数群において、シミュレーション部13で算出した指向性パターンと指向性測定部15で測定した指向性パターンとを比較演算部16で比較演算する。そして、両者の指向性パターンの各方向毎のレベルとの差の絶対値をすべての方向について加算した合計を比較結果として前記記憶装置18に格納する。
【0025】
そして、このような制御による指向性パターンの測定回数が予め設定した指向性パターンの測定回数になると、S15にて、指向性パターンの測定が終了する。そして、S17にて、最適重み係数決定部17が、記憶装置18に記憶された加算合計値の最も小さい重み係数群を最適重み係数と決定し、S18にて、重み係数決定・設定部14の設定手段は、この決定した重み係数群の各重み係数を前記各アンテナ素子2の重み係数としてアレーアンテナ装置1の各重み付け器3に設定してキャリブレーションを終了する。
【0026】
表1は、アンテナ素子数がN個の場合において、所望波方向を−30°、不要波方向を60°として、シミュレーションで算出した各アンテナ素子の最適振幅重み係数及び最適位相重み係数と、この算出した重み係数を実際に各アンテナ素子に与えるCASE1の各アンテナ素子の振幅重み係数及び位相重み係数と、このCASE1の各重み係数からなる重み係数群を基準にアンテナ素子に与える重み係数を任意に変化させたCASE2〜4の各アンテナ素子の振幅重み係数及び位相重み係数を示している。
【0027】
なお、変化させた重み係数を太字で示し、CASE2はアンテナ素子2-1の振幅と位相の重み係数を変化させ、CASE3はアンテナ素子2-2の振幅と位相の重み係数を変化させ、CASE4はアンテナ素子2-2と2-3の振幅と位相の重み係数を変化させている。
【0028】
【表1】
Figure 0004310022
【0029】
図3は、シミュレーションで算出した−90°〜90°の範囲の指向性パターンとCASE1〜4の重み係数群を設定したときの−90°〜90°の範囲の指向性パターンを表したグラフである。図中グラフaはシミュレーションで算出した指向性パターンを示し、グラフbはCASE1の重み係数群を設定したときに測定した指向性パターンを示し、グラフcはCASE2の重み係数群を設定したときに測定した指向性パターンを示し、グラフdはCASE3の重み係数群を設定したときに測定した指向性パターンを示し、グラフeはCASE4の重み係数群を設定したときに測定した指向性パターンを示している。
【0030】
表2は、シミュレーションで算出した−90°〜90°の範囲の指向性パターンの1°毎のレベルと、CASE1〜4の重み係数群を重み付け器3に設定して実際に−90°〜90°の範囲で測定した指向性パターンの1°毎のレベルを示している。
【0031】
【表2】
Figure 0004310022
【0032】
表3は、前記CASE1〜4の重み係数群を重み付け器3に設定して実際に測定した指向性パターンの1°毎のレベルと前記シミュレーションにより算出した指向性パターンの1°毎のレベルの差の絶対値及びこの差を−90°〜90°にわたって加算合計した結果を示している。
【0033】
【表3】
Figure 0004310022
【0034】
この表3からCASE1の場合は、シミュレーションによって算出した指向性パターンと差の加算合計が542.90dBとなり、CASE2の場合は、シミュレーションによって算出した指向性パターンと差の加算合計が328.34dBとなり、CASE3の場合は、シミュレーションによって算出した指向性パターンと差の加算合計が29.60dBとなり、CASE4の場合は、シミュレーションによって算出した指向性パターンと差の加算合計が201.98dBとなる。
【0035】
従って、加算合計がもっとも少ないCASE3のときの重み係数群が最適な重み係数群となり、この重み係数群の各重み係数を各アンテナ素子2に対応した重み付け器3に設定してキャリブレーションを終了することになる。
【0036】
このようなキャリブレーションを行えば、複雑な計算は不要となり、少ない計算量で簡単に各アンテナ素子2に対して最適な振幅重み係数と位相重み係数を設定することができる。また、アンテナ素子数が増加しても計算量の増加は最初のシミュレーション時のみであり、全体として計算量が多大に増加することはない。
【0037】
なお、この実施の形態では、−90°〜90°の範囲を方向を1°ずつ変えて指向性パターンの測定を行ったが必ずしもこれに限定するものではなく、例えば、方向を0.5°ずつあるいは2°ずつなど任意に設定できるものである。また、この実施の形態では、実際に重み係数を設定して指向性パターンを測定する重み係数群の種類を4種類としたがこれに限定するものでないのは勿論である。
【0038】
(第2の実施の形態)
なお、全体のハード構成は図1と同様である。
【0039】
図4はキャリブレーション装置のキャリブレーション制御を示す流れ図で、S21にて、シミュレーション部13は、所望波方向には指向性を向け、干渉波や妨害波などの到来する不要波方向には指向性を向けないようにヌル点を形成するよう、各アンテナ素子2の位相と振幅の重み係数を算出し、記憶装置18に格納する。この算出はS11と同様である。
【0040】
続いて、S22にて、指向性パターンの測定を行う。この指向性パターンの測定制御は図5に基づいて行うようになっている。すなわち、S31にて、先ず重み係数決定・設定部14はシミュレーション部13が算出した重み係数をアレーアンテナの各アンテナ素子2に与えるためにそれぞれ対応する重み付け器3に設定し、S32にて、方向制御部19はアレーアンテナ装置1を−90°の方向に設定し、この状態で指向性測定部15はA/D変換器11からのデジタル信号によってアレーアンテナの指向性パターンの−90°のレベルを測定し、その測定結果を記憶装置18に格納する。
【0041】
次にS33にて、重み係数決定・設定部14の重み係数決定手段が、シミュレーションで算出した各アンテナ素子2の重み係数からなる重み係数群を基準にしてこの重み係数群中の少なくとも一つの重み係数を変更し、記憶装置18に格納する。そして、S34にて、重み係数決定・設定部14の設定手段が、アレーアンテナ装置1の各重み付け器3にこの変更した重み係数群を設定して指向性測定部15によりアレーアンテナの指向性パターンの−90°のレベルを測定し、この結果を記憶装置18に格納する。
【0042】
続いて、S39にて、指向性パターンの測定を続行するか終了するかを判断する。これは、例えば、予め指向性パターンの測定回数を決めておき、その回数だけ指向性パターンの測定が行われたかどうかで判断する。あるいは、指向性パターンの測定を続行するか終了するかどうかを、測定者に入力させた指示入力に基づいて行ってもよい。
【0043】
例えば、指向性パターンの測定回数が予め設定した回数より少ない場合には、S33にて、重み係数決定・設定部14の重み係数決定手段が、シミュレーションで算出した各アンテナ素子2の重み係数からなる重み係数群を基準にしてこの重み係数群中の少なくとも一つの重み係数を変更し、記憶装置18に格納する。そして、S34にて、重み係数決定・設定部14の設定手段が、アレーアンテナ装置1の各重み付け器3にこの変更した重み係数群を設定して指向性測定部15によりアレーアンテナの指向性パターンの−90°のレベルを測定し、この結果を記憶装置18に格納する。そして、指向性パターンの測定回数が予め設定した回数になるまでこれを繰り返す。
【0044】
次に、S35にて、方向制御部19によりアレーアンテナ装置1を1°回転させて−89°の方向に設定する。そして、この状態で、S36にて、重み係数決定・設定部14の設定手段は、シミュレーション部13が算出した重み係数をアレーアンテナの各アンテナ素子2に与えるためにそれぞれ対応する重み付け器3に設定し、S37にて、指向性測定部15はA/D変換器11からのデジタル信号によってアレーアンテナの指向性パターンの−89°のレベルを測定し、その測定結果を記憶装置18に格納する。
【0045】
続いて、S41にて、指向性パターンの測定を続行するか終了するかを判断する。指向性パターンの測定回数が予め設定した回数より少ない場合には、S38にて、各アンテナ素子2に設定する重み係数を、S33にて変更した重み係数群に変更する。これは、重み係数決定・設定部14の重み係数決定手段が、記憶装置18に格納されている測定回数分の変更した重み係数群を順次読み出し、それぞれの指向性パターンの−89°のレベルを測定し、結果を記憶装置18に格納する。
【0046】
次に、S35にて、方向制御部19によりアレーアンテナ装置1を1°回転させて−88°の方向に設定する。
【0047】
こうして、S40にて、シミュレーションで算出した重み係数群及びこれを基準にして任意の重み係数を変更した複数の重み係数群について、−90°〜90°の範囲における各指向性パターンの1°毎のレベルの測定とその測定結果の記憶装置18への格納が終了すると、S22の指向性パターンの測定制御を終了する。
【0048】
続いて、S23にて、シミュレーション部13で算出した指向性パターンと、指向性測定部15で測定した指向性パターンとを比較演算部16で比較演算する。これは、−90°〜90°の範囲で1°毎に測定した指向性パターンの各方向毎のレベルとシミュレーションで1°毎に算出した指向性パターンの各方向毎のレベルとの差の絶対値をそれぞれ求める。そして、この差をすべての方向について加算した合計を比較結果として前記記憶装置18に格納する。
【0049】
続いて、S24にて、最適重み係数決定部17が加算合計値の最も小さい重み係数群を最適重み係数群と決定し、S25にて、重み係数決定・設定部14はこの決定した重み係数群の各重み係数を前記各アンテナ素子2の重み係数としてアレーアンテナ装置1の各重み付け器3に設定してキャリブレーションを終了する。
【0050】
このように、指向性パターンを測定するのに、1つの方向について、シミュレーションで算出した重み係数を設定して指向性パターンのその方向でのレベルを測定し、次にシミュレーションで算出した重み係数からなる重み係数群の任意の重み係数を変更した重み係数を設定して指向性パターンの同じ方向でのレベルを測定し、これを複数回繰り返してから方向を1°変更し、再度シミュレーションで算出した重み係数を設定して指向性パターンの次の方向でのレベルを測定し、そして前記変更した重み係数を設定して指向性パターンの同じ方向でのレベルを測定する制御を−90°〜90°の範囲に対して行っても、前述した実施の形態と同様、複雑な計算は不要となり、少ない計算量で簡単に各アンテナ素子2に対して最適な振幅重み係数と位相重み係数を設定することができる。しかも、アレーアンテナを−90°〜90°の範囲で何回も繰り返し回動させる必要がなくキャリブレーションを効率的にできる。
【0051】
なお、この実施の形態では、−90°〜90°の範囲を方向を1°ずつ変えて指向性パターンの測定を行ったが必ずしもこれに限定するものではなく、例えば、方向を0.5°ずつあるいは2°ずつなど任意に設定できるものである。
【0052】
(第3の実施の形態)
なお、全体のハード構成は図1と同様である。
【0053】
図6はキャリブレーション装置のキャリブレーション制御を示す流れ図で、S41にて、シミュレーション部13は、所望波方向には指向性を向け、干渉波や妨害波などの到来する不要波方向には指向性を向けないようにヌル点を形成するよう、各アンテナ素子2の位相と振幅の重み係数を算出し、記憶装置18に格納する。この算出はS11と同様である。
【0054】
続いて、S42にて、重み係数決定・設定部14は前記シミュレーション部13が算出した重み係数をアレーアンテナの各アンテナ素子2に与えるためにそれぞれ対応する重み付け器3に設定し、S43にて、指向性測定部15はA/D変換器11からのデジタル信号によってアレーアンテナの指向性パターンを測定し、その測定結果を記憶装置18に格納する。この測定は、アレーアンテナ装置1の方向を−90°〜90°の範囲で角度を1°ずつ変化させながら送信アンテナ31からの基準信号をアレーアンテナで受信し、A/D変換器11からのデジタル信号を各角度毎に測定する。
【0055】
続いて、S44にて、シミュレーション部13で算出した指向性パターンと、指向性測定部15で測定した指向性パターンとを比較演算部16で比較演算する。これは、例えば、−90°〜90°の範囲で1°毎に測定した指向性パターンの各方向毎のレベルとシミュレーションで1°毎に算出した指向性パターンの各方向毎のレベルとの差の絶対値をそれぞれ求める。そして、この差をすべての方向について加算した合計を比較結果として記憶装置18に格納する。
【0056】
続いて、S45にて、比較結果と予め設定した所定値とを比較し、比較結果が所定値以上であれば、S46にて、重み係数決定・設定部14の重み係数決定手段が、シミュレーションで算出した各アンテナ素子2の重み係数からなる重み係数群を基準にしてこの重み係数群中の少なくとも一つの重み係数を変更し、記憶装置18に格納する。そして、重み係数決定・設定部14の設定手段が、アレーアンテナ装置1の各重み付け器3にこの変更した重み係数群を設定する。
【0057】
この状態で、再度、S43にて、指向性測定部15により方向を−90°〜90°の範囲で1°ずつ角度を変化させて指向性パターンを測定し、S44にて、シミュレーション部13で算出した指向性パターンと指向性測定部15で測定した指向性パターンとを比較演算部16で比較演算し、両者の指向性パターンの各方向毎のレベルとの差の絶対値をすべての方向について加算した合計を比較結果として記憶装置18に格納する。そして、S45にて、比較結果と予め設定した所定値を比較する。
【0058】
こうして、比較結果が所定値より小さくなるまで設定する重み係数の変更を行い、比較結果が所定値より小さくなるとそのときに設定されている重み係数からなる重み係数群を最適重み係数群としてキャリブレーションを終了する。
【0059】
このようにしても前述した実施の形態と同様、複雑な計算は不要となり、少ない計算量で簡単に各アンテナ素子2に対して最適な振幅重み係数と位相重み係数を設定することができる。また、所定値よりも比較結果が小さいことが判断されるとそのときに設定されている重み係数からなる重み係数群が最適重み係数群となるので、前述した各実施の形態のように指向性パターンの測定制御の後に改めて最適な重み係数群を決定するような処理は不要となる。
【0060】
なお、前述した各実施の形態では指向性パターンを測定する範囲を−90°〜90°の全方向に設定した場合について述べたが必ずしもこれに限定するものではない。
【0061】
例えば、ある方向の指向性特性に関しては少なくともシミュレーションで求めた指向性特性に近い特性が得られるように重み係数を設定し、特に妨害波などの不要波方向だけに重点をおき、その方向には少なくとも指向性が向かないようシミュレーションと同じ特性を得たい場合がある。このような場合は、以下のような重み係数のキャリブレーションを行う。
【0062】
図7は、不要波方向を60°として、50°〜70°の範囲でシミュレーションを行って算出した指向性パターンとCASE1〜4の重み係数群を設定したときの50°〜70°の範囲の指向性パターンを表したグラフである。すなわち、このグラフは不要波方向及びその近傍の指向性パターンの状態を示している。
【0063】
図中グラフaはシミュレーションで算出した指向性パターンを示し、グラフbはCASE1の重み係数群を設定したときに測定した指向性パターンを示し、グラフcはCASE2の重み係数群を設定したときに測定した指向性パターンを示し、グラフdはCASE3の重み係数群を設定したときに測定した指向性パターンを示し、グラフeはCASE4の重み係数群を設定したときに測定した指向性パターンを示している。
【0064】
表4はシミュレーションで算出した50°〜70°の範囲の指向性パターンの1°毎のレベルと、CASE1〜4の重み係数群を重み係数器3に設定して実際に50°〜70°の範囲で測定した指向性パターンの1°毎のレベルを示している。
【0065】
【表4】
Figure 0004310022
【0066】
表5は、前記CASE1〜4の重み係数群を重み付け器3に設定して実際に測定した指向性パターンの1°毎のレベルと前記シミュレーションにより算出した指向性パターンの1°毎のレベルとの差の絶対値及びこの差を50°〜70°にわたつて加算合計した結果を示している。
【0067】
【表5】
Figure 0004310022
【0068】
この表5からCASE1の場合は、シミュレーションによって算出した指向性パターンと差の加算合計が134.53dBとなり、CASE2の場合は、シミュレーションによって算出した指向性パターンと差の加算合計が79.86dBとなり、CASE3の場合は、シミュレーションによって算出した指向性パターンと差の加算合計が11.51dBとなり、CASE4の場合は、シミュレーションによって算出した指向性パターンと差の加算合計が57.85dBとなる。
【0069】
従って、加算合計がもっとも少ないCASE3のときの重み係数群が最適な重み係数群となり、この重み係数群の各重み係数を各アンテナ素子2に対応した重み付け器3に設定してキャリブレーションを終了することになる。
【0070】
このようなキャリブレーションを行っても不要波方向を含む最低限必要とする局所方向の指向性特性については少なくともシミュレーションで算出した指向性特性に近い特性が得られるので、良好なキャリブレーションができる。しかも、測定する角度の範囲を狭くできるので、より迅速なキャリブレーションができる。なお、このようなキャリブレーションを行っても前述した各実施の形態と同様の作用効果が得られるものである。
【0071】
そして、この場合においても、50°〜70°の範囲を方向を1°ずつ変えて指向性パターンの測定を行うものに限定するものではなく、方向を0.5°ずつあるいは2°ずつなど任意に設定できるものである。また、指向性パターンを測定する重み係数群の種類も4種類に限定するものでない。
【0072】
【発明の効果】
請求項1乃至記載の発明によれば、アレーアンテナのキャリブレーションを少ない計算量で簡単に行うことができるアレーアンテナのキャリブレーション方法を提供できる。
【0073】
請求項記載の発明によれば、さらに、比較結果が所定値を満足するとその時点で設定した重み係数群を最適重み係数群としてキャリブレーションを終了するので、指向性パターンの測定制御の後に改めて最適な重み係数群を決定するような処理を不要にできるアレーアンテナのキャリブレーション方法を提供できる。
【0074】
請求項記載の発明によれば、さらに、アレーアンテナを同じ角度範囲で何回も繰り返し回動させる必要がなくキャリブレーションを効率的にできるアレーアンテナのキャリブレーション方法を提供できる。
【0075】
請求項記載の発明によれば、さらに、指向性パターンを測定する角度範囲を狭くできるので、より迅速なキャリブレーションができるアレーアンテナのキャリブレーション方法を提供できる。
【0076】
請求項記載の発明によれば、アレーアンテナのキャリブレーションを少ない計算量で簡単に行うことができるアレーアンテナのキャリブレーション装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態を示すブロック図。
【図2】同実施の形態におけるキャリブレーション制御を示す流れ図。
【図3】同実施の形態におけるシミュレーションで算出した指向性パターンとCASE1〜4の重み係数群を設定したときの指向性パターンを示すグラフ。
【図4】本発明の第2の実施の形態におけるキャリブレーション制御を示す流れ図。
【図5】図4のキャリブレーション制御における指向性測定制御を詳細に示す流れ図。
【図6】本発明の第3の実施の形態におけるキャリブレーション制御を示す流れ図。
【図7】不要波方向及びその近傍のシミュレーションで算出した指向性パターンとCASE1〜4の重み係数群を設定したときの指向性パターンを示すグラフ。
【図8】従来例を説明するための流れ図。
【符号の説明】
1…アレーアンテナ装置
2…アンテナ素子
3…重み付け器
12…デジタル信号処理部
13…シミュレーション部
14…重み係数決定・設定部
15…指向性測定部
16…比較演算部
17…最適重み係数決定部
18…記憶装置
19…方向制御部
20…制御部

Claims (4)

  1. 複数のアンテナ素子を備えたアレーアンテナの各アンテナ素子に所望の指向性パターンを得るのに適した重み係数を設定するアレーアンテナのキャリブレーション方法において、
    所望の指向性パターンを得るのに適した前記各アンテナ素子の重み係数からなる重み係数群とこの重み係数群による前記アレーアンテナの指向性パターンを前記アレーアンテナから見て所定角度ずつ変化させる角度毎にシミュレーションにより算出し、
    先ず、この算出した重み係数群を前記アレーアンテナに設定して指向性パターンを、前記アレーアンテナを前記所定角度ずつ変化させながら測定し、この測定した所定角度毎の指向性パターンのレベルと算出した指向性パターンの各方向毎のレベルとの差の絶対値をそれぞれ求め、この差の絶対値を全ての方向について加算した合計を測定した指向性パターンと算出した指向性パターンとの比較結果とし、この比較結果が所定値を満足するか否かを判断し、所定値を満足する場合はこの設定した重み係数群を最適な重み係数群とし、
    所定値を満足しない場合は、比較結果が所定値を満足するまで、算出した重み係数群の任意の重み係数を変更した重み係数群を前記アレーアンテナに設定して指向性パターンを測定し、この測定した指向性パターンと算出した指向性パターンとの比較を繰り返すことを特徴とするアレーアンテナのキャリブレーション方法。
  2. 複数のアンテナ素子を備えたアレーアンテナの各アンテナ素子に所望の指向性パターンを得るのに適した重み係数を設定するアレーアンテナのキャリブレーション方法において、
    所望の指向性パターンを得るのに適した前記各アンテナ素子の重み係数からなる重み係数群とこの重み係数群による前記アレーアンテナの指向性パターンを前記アレーアンテナから見て所定角度ずつ変化させる角度毎にシミュレーションにより算出し、
    先ず、予め設定した範囲内において測定方向を決めてこの算出した重み係数群とこの重み係数群の任意の重み係数を変更した複数の重み係数群を前記アレーアンテナに順次設定してそれぞれ指向性パターンの特定方向のレベルを測定し、
    次に、測定方向を変化させて、前記算出した重み係数群とこの重み係数群の任意の重み係数を変更した複数の重み係数群を前記アレーアンテナに順次設定してそれぞれ指向性パターンの特定方向のレベルを測定し、この測定を測定方向を変化させて繰り返し行ない、測定した指向性パターンの中で、シミュレーションにより角度毎に算出した前記アレーアンテナの指向性パターンに最も近い指向性パターンを選択し、この選択した指向性パターンを得るための重み係数群を最適な重み係数群とすることを特徴とするアレーアンテナのキャリブレーション方法。
  3. 測定方向の範囲を設定し、指向性パターンの測定をその範囲内で局所的に行うことを特徴とする請求項1または2に記載のアレーアンテナのキャリブレーション方法。
  4. 複数のアンテナ素子を備えたアレーアンテナと、所望波方向と不要波方向の情報に基づいて前記アレーアンテナの各アンテナ素子毎に設定する適切な重み係数からなる重み係数群と前記アレーアンテナの指向性パターンを前記アレーアンテナから見て所定角度ずつ変化させる角度毎に算出するシミュレーション手段と、このシミュレーション手段で算出した重み係数群の任意の重み係数を変更した複数の重み係数群を求める重み係数決定手段と、前記シミュレーション手段で算出した重み係数群及び前記重み係数決定手段で求めた複数の重み係数群を前記アレーアンテナに順次設定する設定手段と、この設定手段が前記アレーアンテナに重み係数群を設定する毎に前記アレーアンテナの指向性パターンを、前記アレーアンテナを前記所定角度ずつ変化させながら測定する指向性測定手段と、この測定指向性測定手段により測定した所定角度毎の指向性パターンのレベルと前記シミュレーション手段で算出した指向性パターンの各方向毎のレベルとの差の絶対値をそれぞれ求め、この差の絶対値を全ての方向について加算した合計を測定した指向性パターンと算出した指向性パターンとの比較結果とする比較手段と、この比較手段の比較結果により前記シミュレーション手段で算出した指向性パターンに最も近い指向性パターンを選択し、この選択した指向性パターンを得るための重み係数群を最適な重み係数群として前記アレーアンテナに設定する設定手段とを備えたことを特徴とするアレーアンテナのキャリブレーション装置。
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