JP4309176B2 - X線装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ターゲットに電子ビームを照射してX線を発生させるX線装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種のX線を発生させるX線装置としては、マイクロフォーカスX線発生装置に用いる透過型マイクロフォーカスX線発生管球がある。
【0003】
そして、反射型マイクロフォーカスX線発生管球の場合には、大半で寿命の問題は存在しなかった。一方、透過型マイクロフォーカスX線管発生管球は、小型で検査物とX線源を接近して配設できるため、拡大倍率を大きくでき、超精密なX線透過検査ができる。ところが、透過型マイクロフォーカスX線発生管球の場合には、ターゲットに電子ビームを照射してX線を発生させているが、ターゲットの微小面積に大きな電力の電子ビームを照射し、この電子ビームのエネルギのほとんどが熱となるため、ターゲットが劣化してターゲットに寿命の問題がある。そこで、透過型マイクロフォーカスX線発生装置では開放型としてターゲットを定期的に交換する必要があり、構造は複雑になり大型で高価なものである。
【0004】
近年、小型で構成の簡単な封止切りの透過型マイクロフォーカスX線発生管球が開発されているが、ターゲットの熱的な劣化のために寿命が短くなり、焦点サイズが5μmのもので2W程度の入力がターゲットの限界である。
【0005】
そこで、たとえばターゲットの寿命を延ばす構造として、真空容器内に電子ビームを照射する陰極およびこの陰極からの電子ビームを照射してX線を発生するターゲットを配設し、このターゲットを電子ビームの軸方向に対して直交する方向に移動可能に配設し、このターゲットを真空容器の外部の磁石により移動させ、電子ビームが照射されるターゲットの位置を異ならせ、ターゲットの電子ビームが照射されるある位置が寿命になった場合に、磁石によりターゲットを移動させて初期の性能を回復するものが知られている(たとえば特許文献1参照)。
【0006】
【特許文献1】
特開平3−22331号公報(第2頁−第3頁、第1図)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述のように真空容器内のターゲットを移動させる場合、ターゲット自体を移動可能にするとともに、ターゲットを移動させるための磁石を配設するなど構造が複雑になる。また、ターゲットの移動を忘れるとX線の発生量が減少してしまう問題を有している。
【0008】
また透過型ターゲットの場合は、電子ビーム位置を移動し忘れ同位置で長時間作動させ続けるとX線管の破壊の可能性につながる。
【0009】
本発明は、上記問題点に鑑みなされたもので、簡単な構成で確実に長寿命化を図ったX線装置を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、電子ビームを照射する陰極と、この電子ビームが照射されてX線を発生するターゲットと、このターゲット上に照射される電子ビームの照射位置を移動させる移動手段と、電子ビームからの同一の照射位置での照射時間を計時する計時手段と、この計時手段で計時された時間が所定時間に達すると報知する報知手段と、電子ビームの照射位置の移動の回数を計測する回数計時手段と、この回数計時手段で計測された回数が所定回数に達すると電子ビームの照射を停止させる停止手段とを具備したもので、電子ビームを照射してX線を発生させていた照射位置が寿命になっても、ターゲットの他の位置に移動手段により電子ビームの照射位置を移動させることができるため、照射位置をターゲットの寿命になってない位置に変えることにより初期の性能を得ることができ、長寿命化を図れるとともに、電子ビームからの同一の照射位置での照射時間を計時あるいは移動回数の回数を回数計時手段に記憶し、所定時間達することにより報知あるいは停止することにより、移動忘れが無くなりX線の発生量の低下及びX線管の破壊の可能性を確実に防止できる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施の形態のマイクロフォーカスX線装置の透過型のマイクロフォーカスX線発生管球を図面を参照して説明する。
【0012】
図1に示すように、1はX線を照射し検査するX線装置としての真空管であるマイクロフォーカスX線発生装置で、このマイクロフォーカスX線発生装置1は透過型のマイクロフォーカスX線発生管球2を備え、このマイクロフォーカスX線発生管球2は、真空気密を保つ真空容器としての真空外囲器3を有し、この真空外囲器3は円筒状の筒状部4を有し、この筒状部4には真空排気用の排気管を取り付ける排気管取付部5が形成されている。なお、この排気管は真空排気後封止切りされる。
【0013】
また、筒状部4の基端側には、円環のフランジ状の管球取付金具6が取り付けられる。この管球取付金具6は、この管球取付金具6を固定するねじなどを挿通するねじ挿通孔7が複数形成され、この管球取付金具6の背面側には、冷却用の油がこの管球取付金具6に沿って漏出することを防止する図示しないOリングを装着する装着溝8が全周にわたって形成されている。
【0014】
さらに、筒状部4の基端側となる管球取付金具6の背面側には、基端側が閉塞された二重筒状のガラス容器11が位置し、このガラス容器11の開放している外筒の先端には、金属性の円環状の外筒接続体12がガラス容器11に溶着されるなどして一体的に取り付けられ、この外筒接続体12が管球取付金具6に溶接されて気密に封止されている。また、ガラス容器11の内筒の内周側には内筒を閉塞する閉塞部13が形成されている。さらに、ガラス容器11の内筒の先端には、金属性の円環状の内筒接続体14がガラス容器11に溶着されるなどして一体的に取り付けられ、この内筒接続体14の先端には支持体15が接続されている。
【0015】
そして、この支持体15の先端には環状板の保持体16が取り付けられ、この保持体16の内部には陰極保持体17が取り付けられ、この陰極保持体17に陰極18が装着されている。この陰極18は図示しないフィラメントを内蔵し、このフィラメントを加熱して熱電子となり電子ビームを放出する。また、陰極18はフィラメント21を有し、このフィラメント21にはガラス容器11の閉塞部13を気密状態で貫通するフィラメント端子22が接続され、このフィラメント端子22からフィラメント21を介して、外部からの電力が陰極18に供給される。
【0016】
また、保持体16には、一体的に形成された電子レンズとなる静電型の集束電極体23が取り付けられ、この集束電極体23および陰極18により微小焦点電子銃が形成されている。この集束電極体23は、保持体16に棒状の電極保持絶縁体24が取り付けられ、この電極保持絶縁体24は陰極側から、マイナス数百Vの電圧を印加する第1集束電極25、プラス数kVの電圧を印加する第2集束電極26、やや大きめの間隙を介してプラス数kVの電圧を印加する第3集束電極27が所定の寸法に従い順次配設されている。また、第1集束電極25、第2集束電極26の中心には図示しない電子ビーム挿通孔が開口形成され、第3集束電極27の中心には、第1集束電極25および第2集束電極26の電子ビーム挿通孔との延長軸上に直線的に連通する電子ビーム挿通孔28が電子ビームの照射方向に沿って直線的に配設されている。
【0017】
一方、筒状部4の先端側には、先端に向けて径小となる蓋体31が取り付けられ、この蓋体31の先端には取付部32が形成され、この取付部32には開口33が形成され、取付部32にはターゲット保持体34が保持され、このターゲット保持体34は開口35を有し、このターゲット保持体34に窓となる透過型のターゲット36が真空外囲器3の一部として気密に取り付けられている。このターゲット36は、第1集束電極25の電子ビーム挿通孔、第2集束電極26の電子ビーム挿通孔28および第3集束電極27の電子ビーム挿通孔28を介して陰極18に対向して配設されている。また、ターゲット36は、真空気密の隔壁を目的とし厚さ数百μmのX線の透過損失が少ないX線透過窓となるベリリウム薄板やAl基板等を基板とし、このベリリウム薄板等の真空側に例えば約5μmないし10μmのX線の発生性能が優れているタングステン等のX線源となる薄膜を成膜して形成されている。ベリリウム薄板等は、真空気密の隔壁の目的で、X線の透過損失が少ない材料として選ばれている。なお、タングステン薄膜厚さは、電子ビームの潜り込む深さと発生したX線の減衰量とに基づき設計されている。
【0018】
さらに、図2にも示すように、真空外囲器3の外周には移動手段としての磁石部40が取り付けられ、この磁石部40は真空外囲器3と間隙を介して円環状の磁石保持体41がたとえば手動により回転自在に取り付けられ、磁石保持体41の径方向に沿って対向し電子ビームが通過する経路で約10ガウスないし50ガウスの強さの磁束を形成する永久磁石42,42が異なる極が対向した状態で方向性を持って配設されている。また、真空外囲器3の周囲には、掘込構造が採られて例えば18°毎に20箇所に円錐状の係止孔43が形成されている。一方、図3に示すように、磁石保持体41には90°毎に4箇所に穴溝44が径方向に沿って形成され、この穴溝44にはボール押しスプリング45が挿入され、このボール押しスプリング45の先端には穴溝44に挿入可能な大きさの位置決め用のボール46が位置している。そして、ボール押しスプリング45により磁石保持体41のボール46が真空外囲器3の中心方向に付勢されて真空外囲器3の係止孔43に係止されることにより、所定の位置に位置決めされる。なお、対向する永久磁石42の周方向の中心を結ぶ線はターゲット36の中心を通り、永久磁石42の電子ビームの軸方向に沿った位置は、中心が陰極18の先端ないし最もターゲット36側に位置する第3集束電極27の間のLの中に含まれる位置に位置する。
【0019】
また、マイクロフォーカスX線発生装置1のマイクロフォーカスX線発生管球2には、X線制御器47が接続され、このX線制御器47はX線照射および停止させる駆動電源となる停止手段としての機能を有する駆動回路48を有するとともに、この駆動回路48を制御する制御回路49を有している。そして、この制御回路49は、X線が照射されている状態のいわゆるターゲット照射の時間を計時する計時手段としての機能を有するターゲット照射時間カウンタ、ターゲット照射位置を移動させた回数を計数する回数計時手段としてのターゲット照射時間リセットカウンタおよびたとえばランプあるいはブザーなどで警告などをする報知手段および駆動回路48を停止させるX線停止手段としての機能を有している。
【0020】
なお、数μmの焦点径に数Wのエネルギが入力されるため入射される電子の衝撃や発生する熱により徐々にタングステン薄膜などのX線源の成膜面が高温になって劣化、損傷し、経時的に徐々にX線の発生量が低下するため、タングステン薄膜等のX線源の寿命が数百時間ないし1000時間程度で寿命となる。また、特に、ターゲット36の焦点の大きさが10μm以下の場合には劣化が大きい。そこで、タングステン薄膜などのX線源の寿命となる数百時間、たとえば300時間から800時間程度をX線量低下前に予め警告を報知する警告設定時間とし、さらに、たとえば寿命の1000時間程度をX線の照射を停止させるX線停止設定時間とする。
【0021】
次に、上記実施の形態の動作について図6に示すフローチャートを参照して説明する。
【0022】
まず、陰極18に電圧を印加すると、フィラメントが加熱されて熱電子となり電子ビームを放出し、集束電極体23を介してターゲット36に照射される。具体的には、陰極18から放出された電子ビームは、第1集束電極25のマイナス数百Vの電圧の電子レンズで集束され、第2集束電極26および第3集束電極27のプラス数kVの電圧でさらに集束され、ターゲット36に約100kVの電圧で印加され、焦点の大きさが10μm以下、具体的には2μmないし5μmたとえば約5μmの直径の電子ビームとなって、ターゲット36の真空側面に結像する。
【0023】
また、磁石部40の永久磁石42により形成される磁界により、永久磁石42の位置に従い電子ビームはターゲット36の中心よりややずれた位置に結像する。
【0024】
そして、このターゲット36の真空側面に結像した電子ビームは、このターゲット36のタングステン薄膜に衝突してX線となり、このX線はベリリウム薄板を透過して外部に取り出され、精密検査装置のX線源として利用される(ステップ1)。また、X線の照射の開始によりターゲット照射時間カウンタの計時を開始する(ステップ2)。
【0025】
このように、ターゲット照射時間を計時を開始した後には、ターゲット照射時間カウンタに加算されてX線照射時間を計時し、ターゲット照射時間が所定時間の警告設定時間以上になったかを判断し(ステップ3)、ターゲット照射時間が警告設定時間以上になると制御回路49ではターゲット照射時間超過警告でX線の発生量が低下するおそれがある警告を報知手段により報知する(ステップ4)。
【0026】
この警告により、使用者は磁石部40の磁石保持体41を真空外囲器3の中心を回転軸として18°手動あるいは機械的に回動させ、ボール46がボール押しスプリング45の付勢に抗して穴溝44内に収容され、隣合う係止孔43の位置で再びボール押しスプリング45により磁石保持体41のボール46が真空外囲器3の中心方向に付勢されて真空外囲器3の係止孔43に係止されることにより、18°移動した所定の位置に位置決めされる。そして、この磁石保持体41の回動により、永久磁石42により形成される磁界の径方向の角度が変わることにより、永久磁石42の位置に従い電子ビームはターゲット36の以前照射された位置と異なる、たとえば5010μmから100μm程度ずれた位置に結像する。この電子ビームの結像位置の変更により、図5に示すように、電子ビームはターゲット36の新しいタングステン薄膜等のX線源の位置に衝突することになり、X線はターゲット36の新しい位置で初期性能と等しいX線量を発生する。なお、この動作は、磁石保持体41の所定の停止位置に従い磁界の方向との関係も含め、全部で20通りのターゲット36の照射位置を設定できる。また、磁石保持体41の回動により最初の位置からX線の照射位置が順次動いていくが、寿命終了までにおよそ0.3mm以下の動きであり、X線を照射した後の検査装置の受像側の調整は不要である。
【0027】
このようにターゲット36の照射位置が変化したか否かを判断する(ステップ5)。なお、ターゲット36の照射位置が変化したか否かについては、磁石部40の移動に従い自動的に連動させても、操作者が磁石部40を移動した旨の入力をするようにしても良い。
【0028】
また、ステップ5でターゲット36の照射位置が変化していないとされた場合にはターゲット照射時間超過警告をしたままの状態で、ステップ3でターゲット照射時間が警告設定時間より短いと判断された場合とともに、X線を照射した状態を維持したまま、ターゲット照射時間が警告設定時間より長い所定時間であるX線停止設定時間以上になったかを判断し(ステップ6)、ターゲット照射時間がX線停止設定時間より短い場合にはステップ2に戻る。
【0029】
そして、ステップ6でターゲット照射時間カウンタで計時されているターゲット照射時間がX線停止設定時間以上になったと判断されると、制御回路49では駆動回路48を制御しマイクロフォーカスX線発生管球2への電源を停止して電子ビームの発生を停止、ターゲット照射によるX線の発生を停止させる(ステップ7)。また、ターゲット照射時間がX線停止設定時間以上になると制御回路49ではターゲット照射時間超過停止警告でX線の発生量が低下しターゲットが損傷するおそれがある警告を報知手段により報知する(ステップ8)。さらに、ターゲット36の照射位置が変化したか否かを判断する(ステップ9)。
【0030】
また、ステップ9でターゲット36の照射位置が変化したと判断された場合にはX線の発生を停止させた状態を維持し、ステップ5でターゲット36の照射位置が変化したと判断された場合とともに、照射時間超過警告またはターゲット照射時間超過停止警告を解除し(ステップ10)、ターゲット照射時間カウンタがリセットされる(ステップ11)。なお、このターゲット照射時間カウンタのリセットも、ターゲット照射位置の移動の機構と連動しても、作業者が手動で入力しても良い。そして、このターゲット照射時間カウンタのリセットにより、ターゲット照射時間リセットカウンタの移動回数が加算される(ステップ12)。
【0031】
さらに、ターゲット照射時間リセットカウンタで移動回数が加算されると、ターゲット照射時間リセットカウンタが所定回数移動されたか、たとえば磁石部40が移動可能な全ての20箇所の全ての位置で所定時間経過したかを判断し(ステップ13)、ターゲット照射時間リセットカウンタが所定回数移動されたと判断されない場合には、再びターゲット照射時間が警告設定時間より長い所定時間であるX線停止設定時間以上になったかを判断し(ステップ14)、ターゲット照射時間がX線停止設定時間より短い場合にはX線オン操作可能な待機状態でステップ1に戻る。すなわち、ステップ7でX線の照射が停止されている場合があるので、ステップ1でX線を照射状態にする。一方、ターゲット照射時間が警告設定時間より長い所定時間であるX線停止設定時間以上の場合には、ステップ2に戻る。
【0032】
また、ステップ13でターゲット照射時間リセットカウンタが所定回数移動されたと判断された場合には、制御回路49では駆動回路48を制御しマイクロフォーカスX線発生管球2への電源を停止して電子ビームの発生を停止、ターゲット照射によるX線の発生を停止させる(ステップ15)。さらに、制御回路49ではマイクロフォーカスX線管2からのX線の発生量が低下し損傷するおそれがある警告を報知手段により報知する(ステップ16)。
【0033】
このようにターゲット36の1つの照射位置に対して所定のX線照射時間毎に磁石保持体41を順次回転させることで、焦点サイズが数μmの封止切り透過型のマイクロフォーカスX線発生管球2として、1万時間を越える寿命を実現できた。
【0034】
また、ターゲット36への電子ビーム照射時間を管理することにより、ターゲット照射時間が警告設定時間以上になると制御回路49ではターゲット照射時間超過警告でX線の発生量が低下するおそれがある警告を報知手段により報知することにより、X線量の低下を事前に警告し、ターゲット照射時間がX線停止設定時間以上になると制御回路49ではターゲット照射時間超過停止警告でX線の発生量が低下し損傷するおそれがある警告を報知手段により報知することにより、X線量の低下や破損を事前に警告し、ターゲット照射時間リセットカウンタが所定回数移動されたと判断された場合には、制御回路49では駆動回路48を制御しマイクロフォーカスX線発生管球2への電源を停止して電子ビームの発生を停止、ターゲット照射によるX線の発生を停止させるとともに、制御回路49ではマイクロフォーカスX線発生管球2からのX線の発生量が低下し損傷するおそれがある警告を報知手段により報知することにより、マイクロフォーカスX線発生管球2の交換時期を把握することが可能になり、X線量の低下およびX線管の破損の可能性を確実に防止することができる。
【0035】
さらに、永久磁石42の磁力を強くすると一度の磁石保持体41の回動による移動距離は大きくなり、目的あるいは装置の大きさにあわせて移動量を設定調整できる。なお、永久磁石42で電子の焦点をずらす方式では、電子レンズとなる第1集束電極25、第2集束電極26および第3集束電極27の性能を悪化させないでターゲット36に結像させることが必要である。
【0036】
また、永久磁石42の強さと焦点寸法の移動と焦点直径の寸法と寿命時間との関係から、永久磁石42の最適位置を設定する。なお、永久磁石42の電子ビームの軸方向に沿った位置は、第1集束電極25からターゲット36までの間にあれば、照射位置となる焦点位置を移動することは可能であるが、第3集束電極27からターゲット36までの間にあると、磁石保持体41の回動に伴なって焦点サイズが不均一になったり周辺がボケたりするなど不安定となり、性能が劣化するおそれがある。したがって、永久磁石42の電子ビームの軸方向に沿った位置は、陰極18から第3集束電極27の間にあることにより、陰極18から放出される電子の初期段階で磁界によるスピンがかかることにより焦点形状の歪みやボケを最小にできる。
【0037】
次に、他の実施の形態を図7を参照して説明する。
【0038】
この図7に示す実施の形態は、真空外囲器3の外周に係止孔43を有さない従来のものに、真空外囲器3に断面L字状の環状の外付け金具51を嵌合させ、この外付け金具51に、図1ないし図6に示す実施の形態の係止孔43と同様に係止孔52を形成し、この外付け金具51の周囲に、磁石部40の磁石保持体41を真空外囲器3に対して回転自在に取り付け、この係止孔52に磁石保持体41のボール46を係止させるものである。
【0039】
このように、マイクロフォーカスX線発生管球2自体を改造することなく外付け金具51を真空外囲器3に取り付け、この外付け金具51に磁石保持体41を取り付けることにより、従来の磁石部40を有さないマイクロフォーカスX線発生管球2も、電子ビームを移動させることができるようになり、長寿命化を図ることができるようになる。
【0040】
また、他の実施の形態を図8を参照して説明する。
【0041】
この図8に示す実施の形態は、基本的には図1ないし図6に示す実施の形態と同様であるが、磁石部60は永久磁石42に代えて真空外囲器3の周囲に等間隔に12個の電磁石61を固定して配設したものである。
【0042】
そして、選択的に対向する電磁石61に異なる極が対向するように通電して磁界を発生させ、電子ビームをターゲット36の周方向に沿った異なる位置に12箇所、さらに、電磁石61の磁界の強さを変化させることにより、ターゲット36の径方向の異なる位置も変更できる。
【0043】
このように形成すれば、機械的に動く部分をなくして、電磁石61を選択的に通電させるとともに、電流を変化させる電気的制御のみで、ターゲット36の任意の位置に電子ビームを照射でき、電子ビームの照射位置を移動できる。
【0044】
なお、電磁石61の磁束は、第1集束電極25ないし第3集束電極27の集束に影響を与えない範囲の強さとし、集束に悪影響を与えないようにする。
【0045】
さらに、他の実施の形態を図9を参照して説明する。
【0046】
この図9に示す実施の形態は、基本的には図8に示す実施の形態と同様に電磁石を用いるものであるが、磁石部65は真空外囲器3の周囲に90°毎の等間隔で2対で合計4個の電磁石66を固定して配設し、対向する電磁石66を結ぶ線が直交しており、これら電磁石66の通電を制御する制御手段67を有している。
【0047】
そして、制御手段67により、4つの電磁石66の通電量および電流方向を制御することにより、直交する2つの磁束の方向および強さを変化させて、任意の磁束を合成できるため、ターゲット36の任意の位置に電子ビームを照射できる。したがって、少ない電磁石66でターゲット36の任意の位置に電子ビームを照射でき、電子ビームの照射位置を移動できる。
【0048】
【発明の効果】
本発明によれば、電子ビームを照射してX線を発生させていた照射位置が寿命になっても、ターゲットの他の位置に移動手段により電子ビームの照射位置を移動させることができるため、照射位置をターゲットの寿命になってない位置に変えることにより初期の性能を得ることができ、長寿命化を図ることができるとともに、電子ビームの照射時間などの管理により、照射位置の移動を忘れることがなくなり、X線の照射量の低下及びX線管の破壊の可能性を確実に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態のマイクロフォーカスX線発生装置を示すブロック図である。
【図2】同上マイクロフォーカスX線発生管球の図3に示すI−I断面図である。
【図3】同上平面図である。
【図4】同上真空外囲器の係止孔を拡大して示す断面図である。
【図5】同上磁界と電子ビームの照射位置およびX線の発生する位置との関係を示す模式図である。
【図6】同上マイクロフォーカスX線発生装置の動作を示すフローチャートである。
【図7】同上他の実施の形態のマイクロフォーカスX線発生管球の外付け金具を拡大して示す断面図である。
【図8】同上また他の実施の形態のマイクロフォーカスX線発生管球を示す平面図である。
【図9】同上さらに他の実施の形態のマイクロフォーカスX線発生管球を示す平面図である。
【符号の説明】
1 X線装置としてのマイクロフォーカスX線発生装置
18 陰極
25 第1集束電極
26 第2集束電極
27 第3集束電極
36 ターゲット
40,60,65 移動手段としての磁石部
49 計時手段、放置手段、停止手段および回数計時手段としての機能を有する制御回路
66 電磁石
67 制御手段
Claims (7)
- 電子ビームを照射する陰極と、
この電子ビームが照射されてX線を発生するターゲットと、
このターゲット上に照射される電子ビームの照射位置を移動させる移動手段と、
電子ビームからの同一の照射位置での照射時間を計時する計時手段と、
この計時手段で計時された時間が所定時間に達すると報知する報知手段と
を具備したことを特徴とするX線装置。 - 計時手段で計時された照射時間が報知手段に報知させる所定時間より長い所定時間に達すると電子ビームの照射を停止させる停止手段を
具備したことを特徴とする請求項1記載のX線装置。 - 電子ビームの照射位置の移動の回数を計測する回数計時手段と、
この回数計時手段で計測された回数が所定回数に達すると電子ビームの照射を停止させる停止手段とを
具備したことを特徴とする請求項1記載のX線装置。 - 電子ビームを照射する陰極と、
この電子ビームが照射されてX線を発生するターゲットと、
このターゲットに照射される電子ビームの照射位置を移動させる磁石部と、
電子ビームの照射位置の移動の回数を計測する回数計時手段と、
この回数計時手段で計測された回数が所定回数に達すると電子ビームの照射を停止させる停止手段と
を具備したことを特徴とするX線装置。 - 移動手段は、電子ビームの軸方向を中心として周囲を回転可能な磁石部の回転により電子ビームの照射位置を変化させる手段である
ことを特徴とする請求項1ないし4いずれか記載のX線装置。 - 磁石部は、電子ビームを挟んで対向した複数対の電磁石と、これら電磁石で形成される合成磁界を変化させる制御手段とを備えた
ことを特徴とする請求項5記載のX線装置。 - ターゲットと陰極との間に複数の集束電極を具備し、
磁石部は電子ビームの軸方向の位置が最もターゲット側の集束電極と陰極との間に位置する
ことを特徴とする請求項5記載のX線装置。
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