JP4308380B2 - ミシンの枠駆動方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ミシンの枠駆動方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来のミシン50として、軸線方向の一端側にフランジ部52aを有し下糸を内蔵する略筒状の内釜52と、該内釜52に対して相対回転自在に設けられるとともにフランジ部52aの近傍を通過する剣先53aを有する外釜53とを含む釜51と、前記軸線方向を向く針穴54aを有するとともに該針穴54aに上糸Tが挿通された状態でフランジ部52aと剣先53aの通過経路との間を通って上下動される針54と、加工布Wが張設されるとともに該加工布Wの針落下位置が針54の下方にくるように釜51の上方で水平移動される駆動枠(図示略)とを備えたものを例示する。
【0003】
このミシン50では、針54が下死点から上昇するときに、下死点から少し上がったところで針穴54aの剣先通過経路側に形成される上糸TのループTaを剣先53aで引掛け、外釜53が回ることにより上糸Tと下糸とを絡ませて、加工布Wに縫い目を形成するようになっている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、釜51と針54との相対位置が外釜53の剣先53aの通過経路に針54をできるだけ近づけるように調節されているため、内釜52のフランジ部52aと針54との隙間Gが広くなっている。このため、針54や上糸Tの種類や加工布Wの素材等の条件によっては、針54が下死点から少し上がった所で、針54のフランジ部側に上糸TのたわみTbができて、針54の剣先通過経路側における上糸TのループTaが小さくなったり、ループTaができなかったりする現象が生ずるときがある。図5はこの現象が生ずるときの様子を示している。同図(a)が針54が下死点のときの状態を示し、ここから同図(b)、同図(c)の順に針が上昇したときの状態を示している。このように上糸TのループTaの形成が不十分なときは、図5(c)に二点鎖線で示すように外釜53の剣先53aで上糸Tを引っ掛けるときに剣先53aで上糸Tを切断したり(糸切れ)、剣先53aが上糸Tを引掛けずに目飛びが発生したりすることがあるという問題がある。
【0005】
本発明の目的は、上記課題を解決し、糸切れや目飛びの発生を防止することができるミシンの枠駆動方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明のミシンの枠駆動方法は、軸線方向の一端側にフランジ部を有し下糸を内蔵する略筒状の内釜と、該内釜に対して相対回転自在に設けられるとともに前記フランジ部の近傍を通過する剣先を有する外釜とを含む釜と、前記軸線方向を向く針穴を有するとともに該針穴に上糸が挿通された状態で前記フランジ部と前記剣先の通過経路との間を通って上下動される針と、加工布が張設されるとともに該加工布の針落下位置が前記針の下方にくるように前記釜の上方で水平移動される駆動枠とを備え、前記針落下位置で前記上糸に前記下糸を絡ませるために、前記加工布を貫通した前記針が下死点から上昇するときに前記針穴の剣先通過経路側に形成される上糸のループを前記剣先で引っかけるミシンの枠駆動方法において、前記針が前記加工布を貫通してから前記剣先が上糸のループを引っ掛けるまでに、前記駆動枠を平面から見て前記針から前記フランジ部に向かう方向に駆動することにより、前記フランジ部と前記針との隙間が狭くなるように、前記加工布を介して前記針を前記フランジ部側に寄せ移動することを特徴としている。
【0007】
前記寄せ移動の移動量としては、特に限定されないが、針の剛性、針や糸の太さ、針穴から加工布の表面までの距離、加工布の目地の広がりやすさ等に応じて適宜設定することができる。
【0008】
前記ミシンの枠駆動方法においては、特に限定されないが、前記寄せ移動した後、寄せ移動する前の位置に戻すことなく次の針落下位置に前記駆動枠を移動するようにした態様を例示できる。
【0009】
【発明の実施の形態】
図1〜図4は本発明を実施した実施形態のミシンの枠駆動方法を示している。このミシン1は、図1に示すように針板2の下方に設けられた、下糸Uを内蔵する釜3と、針板2及び該釜3の上方で上下動される針棒(図示略)の先端に取着された針4と、針板2に載置されて水平移動される駆動枠5とを備えている。
【0010】
釜3は、下糸Uを内蔵するボビンケース10が着脱可能に取り付けられる内釜11と、該内釜11に対して相対回転自在に設けられた外釜12とを含んでいる。
【0011】
内釜11は、略筒状に形成された、底部13aを有する筒部13と、該筒部13の軸線方向の反底部側の端部に形成されたフランジ部14とを備えている。フランジ部14の筒部側の面の前方には、筒部13の周壁面に針落ち穴15が形成されている。また、フランジ部14の反筒部側の面には内釜11を回り止めするための回り止め部材(図示略)が嵌合する凹部14aが形成されている。
【0012】
外釜12は、内釜11の筒部13の底部側を抱持した状態で、該内釜11と相対回転自在に設けられており、外釜12の回転とともにフランジ部14の筒部側の面の前方を通過する剣先16を有している。剣先16は、後述するように針落下位置で上糸Tに下糸Uを絡ませるために、ミシン1の正面から見て針4と交差するときに針4の先端側に形成される上糸TのループTaを引っ掛けるようになっている。
【0013】
針4は、針幹6と、ミシン1の正面から見て外釜12の剣先16と交差する先端部7とを備えている。針4の先端部7には、上糸Tを挿通する針穴4aが形成されており、針4は該針穴4aが内釜11の軸線方向を向くように前記針棒に取着されている。針穴4aにはフランジ部側から上糸Tが挿通される。そして、この針4は、針穴4aに上糸Tが挿通された状態でフランジ部14と剣先16の通過経路との間を通って内釜11の針落ち穴15に落下するように上下動される。
【0014】
駆動枠5は、加工布Wが張設された状態で、該加工布Wの針落下位置が針4の下方にくるように、図示しない枠駆動機構により駆動されるようになっている。
【0015】
次に、このように構成されたミシン1の枠駆動方法を図2及び図3を参照しながら説明する。図2(a)及び図3(a)は、針落下位置において加工布Wを貫通した針4が下死点にある状態を示している。上糸Tは、加工布Wを貫通するときに針穴4aの上縁部において折り返され、上糸Tの該折り返し部Tcが該上縁部に係止されることにより針4の下降とともに加工布Wの下側に引き込まれている。この状態では、上糸Tが緊張された状態にあり、針4の前後に弛みは生じていない。
【0016】
ここで、図3(a)における内釜の軸線方向の各部の寸法を以下に例示する。なお、下記寸法は例示であって、特に限定されない。
・針落ち穴15の幅:約2.5mm
・針4の針幹6の太さ:約0.75mm
・平面から見た剣先16の針落ち穴15内への突出長さ:約0.5mm
・平面から見た剣先16と針4の針幹6との隙間:約0mm
・針4とフランジ部との隙間G:約1.25mm
なお、針4をその針幹6の太さが異なるものに変更すると、それに応じて隙間Gが変わってくる。例えば、針4をその針幹6の太さが1mmのものに変更すると、隙間Gは1mmとなる。
【0017】
この状態から図2(b)及び図3(b)の状態を経て、図2(c)及び図3(c)の状態へと針4が上昇するにつれて、上糸Tが弛み、針穴4aの下縁で折り返し部Tcが押し上げられることによって、上糸TのループTaが形成される。このループTaは、針4の上昇とともに拡大する。この上昇時に駆動枠5を平面から見て針4からフランジ部14に向かう方向に寄せ駆動する。
【0018】
この寄せ移動の移動量としては、隙間Gが約1.25mm狭くなり、隙間Gが0mmとなるような量が最大移動量となる。但し、この移動量を大きくすると加工布Wの生地が傷むおそれがあるため、隙間Gが約0.5mm狭くなるような量とすることが好ましく、さらに好ましくは隙間Gが0.2〜0.3mm狭くなるような量である(例示であって、特に限定されない。)。
【0019】
この寄せ移動により、針4とフランジ部14との隙間Gが狭くなるため、この隙間Gにおける上糸TのたわみTbは針穴4aを通って針4の剣先通過経路側に押し出され、図3(c)に示すように針4の剣先通過経路を越えて上糸TのループTaが大きく形成される。このため、剣先16で上糸TのループTaを確実に引っ掛けることができる。この後、外釜12の回転とともに上糸TのループTaは拡大され、内釜11と外釜12との間を通されることにより、上糸Tに下糸Uが絡み、加工布Wに縫い目が形成されるようになっている。
【0020】
なお、特に限定されないが、前記寄せ移動した後、次に駆動枠5を移動するときは、該寄せ移動する前の位置に戻すことなく移動するように駆動枠5を駆動することができる。
【0021】
図4は、例えば針落下位置A→針落下位置Bの順に縫製する場合の駆動枠5の駆動方法を示している。ここで、図4に示すように内釜11の軸線方向をY方向(図4における下側が正の方向)、該Y方向の直交方向をX方向(図4における右側が正の方向)とし、針落下位置Aから針落下位置Bへの駆動枠5のY方向における移動量をΔY、同X方向における移動量をΔXとし、Y方向への寄せ移動量をΔYsとする。
【0022】
まず、針落下位置Aにおいて駆動枠5をY方向にΔYp移動することによって、寄せ移動する。すると、針4の直下に位置Pがくる。次に、駆動枠5をY方向にΔY−ΔYp、X方向にΔX移動すると、針4の直下に次の針落下位置Bがくる。
【0023】
このように、寄せ移動した後、寄せ移動する前の針落下位置Aに戻すことなく次の針落下位置Bに駆動枠5を移動するようにしているので、次の針落下位置Bまでの移動量を小さくすることができ、駆動枠5の移動を効率的に行うことができる。
【0024】
なお、本発明は前記実施形態の構成に限定されず、例えば以下のように、発明の趣旨から逸脱しない範囲で適宜変更して具体化することもできる。
(1)駆動枠5の寄せ移動を、例えば針4が加工布Wに突き刺さった直後から開始すること。
【0025】
(2)寄せ移動した後、寄せ移動する前の位置に一旦戻してから、次の針落下位置に駆動枠5を移動すること。
【0026】
【発明の効果】
以上詳述したように、請求項1の発明に係るミシンの枠駆動方法によれば、糸切れや目飛びの発生を防止することができるという優れた効果を奏する。
【0027】
上記効果に加え、請求項2の発明に係るミシンの枠駆動方法によれば、駆動枠の移動を効率的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を具体化した実施形態のミシンの側断面である。
【図2】同ミシンの枠駆動方法を示すミシンの正断面図である。
【図3】同枠駆動方法を示すミシンの側断面図である。
【図4】同枠駆動方法を示すミシンの平面図である。
【図5】従来のミシンの動作を示す側断面図である。
【符号の説明】
1 ミシン
3 釜
4 針
4a 針穴
5 駆動枠
11 内釜
12 外釜
12a 剣先
14 フランジ部
A 針落下位置
B 次の針落下位置
G フランジ部と針との隙間
T 上糸
Ta ループ
U 下糸
W 加工布

Claims (2)

  1. 軸線方向の一端側にフランジ部を有し下糸を内蔵する略筒状の内釜と、該内釜に対して相対回転自在に設けられるとともに前記フランジ部の近傍を通過する剣先を有する外釜とを含む釜と、前記軸線方向を向く針穴を有するとともに該針穴に上糸が挿通された状態で前記フランジ部と前記剣先の通過経路との間を通って上下動される針と、加工布が張設されるとともに該加工布の針落下位置が前記針の下方にくるように前記釜の上方で水平移動される駆動枠とを備え、
    前記針落下位置で前記上糸に前記下糸を絡ませるために、前記加工布を貫通した前記針が下死点から上昇するときに前記針穴の剣先通過経路側に形成される上糸のループを前記剣先で引っかけるミシンの枠駆動方法において、
    前記針が前記加工布を貫通してから前記剣先が上糸のループを引っ掛けるまでに、前記駆動枠を平面から見て前記針から前記フランジ部に向かう方向に駆動することにより、前記フランジ部と前記針との隙間が狭くなるように、前記加工布を介して前記針を前記フランジ部側に寄せ移動することを特徴とするミシンの枠駆動方法。
  2. 前記寄せ移動した後、寄せ移動する前の位置に戻すことなく次の針落下位置に前記駆動枠を移動する請求項1記載のミシンの枠駆動方法。
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