JP4305821B2 - 連続溶融金属めっき用ロール - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、鋼板に亜鉛めっき等の金属めっきを施す際に溶融金属浴中に浸漬して用いられるシンクロールやサポートロール等の連続溶融金属めっき用ロールに関する。
【0002】
【従来の技術】
連続溶融金属めっき装置は、表面を清浄、活性化した鋼板を亜鉛等の溶融金属浴中に浸漬、走行させながら連続的にめっきを行うものである。その際、シンクロールやサポートロール等の連続溶融金属めっき用ロールが溶融金属浴中に浸漬されて用いられる。溶融亜鉛の場合、浴中温度は約480℃になる。シンクロールは、溶融金属浴中の底部に配置され、浴中に送られてきた鋼板の進行方向を上方の浴面側に変えるものである。通常、シンクロールの回転動力は、鋼板の走行移動によって駆動トルクが付与される。また、サポートロールは、一対のロールからなりシンクロールを通過した後の浴面に近い位置に設けられ、外部のモータによりスピンドルを介して駆動され、鋼板を挟み込み、鋼板のパスラインを保ち、シンクロールを通過した際に生じる鋼板の反りを矯正する。
【0003】
従来の連続溶融金属めっき用ロールとして、例えば特許文献1には、ロール胴部とロール軸部を窒化ケイ素系セラミックスにより中空状に形成し、ロール胴部の両端部にロール軸部を嵌合または螺合により接合した連続溶融金属めっき用ロールが記載されている。これは耐食性、耐熱性、耐摩耗性に優れる、ロールを軽量化でき回転しやすい、ロールを浴中から引き揚げた際に割れを防止できる、ロール全体をセラミックスにより長尺化できるという利点を有する。
【0004】
特許文献2には、ロール胴部とロール軸部を窒化ケイ素系セラミックスにより中空状に形成し、ロール軸部をロール胴部内面にねじ接合し、ねじの山部および谷部に平坦部を形成した連続溶融金属めっき用ロールが記載されている。また、熱膨張係数がセラミックスに近い耐熱性無機接着剤などの緩衝材をねじ間に介在させたり、ねじの表面にめっきや溶射を施すことが記載されている。これは前述の文献の利点に加えて、ねじの破壊を防止できるという利点を有する。
【0005】
【特許文献1】
特開2001−89836号公報
【特許文献2】
特開2002−161347号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
連続溶融金属めっき用サポートロールの場合、ロールの駆動軸はロールを駆動させるスピンドルシャフトにより回転させられ、一方ロール胴部も鋼板から摩擦力を受け鋼板の進行方向に回転させられる。しかしながら、ロールを駆動させるスピンドルシャフトおよびロールのクラッチ部は自在継手の形式をとるため、スピンドルシャフトが常に一様な回転をしてもロール駆動軸は一様な回転をせず速度変動を生じる。
【0007】
この速度変動により、前記従来の連続溶融金属めっき用ロールはロール胴部のねじ接合が緩められ、ロール軸部がロール胴部から抜けて外れやすいという問題があった。
【0008】
また、ロール胴部とロール軸部を接合して組立てる際やロールを金属めっき浴に浸漬させる際、あるいは実機で使用中にトルクが付加される際に、ロール胴部とロール軸部のねじ接合部に応力集中が発生し、未だねじ接合部に割れが生じやすい課題は残っていた。
【0009】
そこで、本発明はこのような事情に鑑みて、従来の連続溶融金属めっき用ロールの改良を図り、使用中にロール軸部がロール胴部から抜けることを防止するとともに、ロール軸部とロール胴部との接合部に割れが発生することを抑えた溶融金属浴中に浸漬して用いられる連続溶融金属めっき用ロールを提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
第1の本発明の連続溶融金属めっき用ロールは、ロール胴部とロール軸部をセラミックスにより中空状に形成し、ロール胴部の両端部にロール軸部を焼嵌めまたは冷嵌めにより嵌合して接合した溶融金属浴中に浸漬して用いられる連続溶融金属めっき用ロールにおいて、ロール軸部の外周面に突起状の凸部を形成し、ロール胴部の内周面に該凸部に対応する凹部を形成し、ロール軸部の凸部をロール胴部の凹部に嵌合して接合したことを特徴とする。
【0011】
第2の本発明の連続溶融金属めっき用ロールは、凹凸部を第1の本発明と逆にしたものであり、ロール胴部とロール軸部をセラミックスにより中空状に形成し、ロール胴部の両端部にロール軸部を焼嵌めまたは冷嵌めにより嵌合して接合した溶融金属浴中に浸漬して用いられる連続溶融金属めっき用ロールにおいて、ロール胴部の内周面に突起状の凸部を形成し、ロール軸部の外周面に該凸部に対応する凹部を形成し、ロール胴部の凸部をロール軸部の凹部に嵌合して接合したことを特徴とする。
【0012】
前記本発明において、突起状の凸部は最大高さが10〜1000μmであることを特徴とする。また、前記突起状の凸部はその表面の少なくとも一部に応力集中を避けるための曲面部を有することを特徴とする。また、セラミックスが窒化ケイ素系セラミックスであることを特徴とする。
【0013】
【作用】
本発明の連続溶融金属めっき用ロールは、接合手段として従来技術のようなねじ接合を採用しないため、使用中に回転トルクが付与されてもロール軸部が回転して緩んでロール胴部から抜けることがない。ロール軸部(またはロール胴部)の凸部と、ロール胴部(またはロール軸部)の凹部との嵌合手段としては焼嵌めまたは冷嵌めが望ましい。
【0014】
また、突起状の凸部の最大高さは10〜1000μmが望ましい。最大高さが10μm未満では接合固定効果が十分でなく、1000μmを超えると接合部に割れが発生しやすくなる。
【0015】
また、前記突起状の凸部は、接合部への応力集中を避けるため、尖った角部を取り除いた曲面部(R部)を形成するのが望ましい。これにより、ロール軸部とロール胴部との接合部に割れが発生することを防止できる。
【0016】
本発明の連続溶融金属めっき用ロールは、ロール胴部、ロール軸部がセラミックスからなるので、溶融金属浴に対して十分な耐食性、耐熱性、耐摩耗性を有する。セラミックスのなかでも窒化ケイ素やサイアロン等の窒化ケイ素系セラミックスは、熱膨張係数が約3×10-6/℃と小さく耐熱衝撃性に優れ、高温高強度を有するので好ましい。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、連続溶融金属めっき装置のサポートロールにサイアロンセラミックスを適用した実施例について説明する。図4は連続溶融金属めっき装置の概略を示す。図4において、焼鈍炉から送出された鋼板1は、酸化防止のスナウト2を通り、亜鉛の溶融金属浴3の中に浸漬される。そして、鋼板1は溶融金属浴3中の底部に懸架されたシンクロール4により進行方向を変えられ浴面側に上昇する。次いで、浴面に近い位置に浸漬、支持された一対のロールからなるサポートロール5で鋼板1を挟み込み、鋼板1の反りや振動を防止する。続いて、溶融金属浴3面の上方にあるガスワイピング6によって高速ガスを吹き付け、そのガス圧、吹き付け角度により付着めっきの厚さを均一に調整する。このようにして、めっきが施された鋼板1は次の工程に送られる。この連続溶融金属めっき装置に、本発明の特徴を有するサポートロール5を装備した。
【0018】
図1は本発明の一例であるサポートロール5の概略断面図を示す。図1において、サポートロール5は、中空円筒状のロール胴部7の片端部内にロール軸部8、ロール胴部7の他端部内に別のロール軸部8を嵌合することにより構成される。サポートロール5は、溶融金属浴に対して優れた耐食性、耐熱衝撃性、高温高強度特性を有するサイアロンセラミックスにより形成した。
【0019】
本実施例では、次のようにサポートロール5のロール胴部7を作製した。まず、平均粒径0.8μmのα−Si3N4粉末:87重量%、平均粒径0.5μmのAl2O3粉末:5重量%、平均粒径0.5μmのAlN固溶体粉末:3重量%、平均粒径1.0μmのY2O3粉末:5重量%を配合し、バインダーとしてポリビニルブチラールを原料粉末100重量部当たり0.5重量%を加えて撹拌して得た混合物を、1000kg/cm2の圧力でCIP成形した。次に、常圧、窒素雰囲気下、1750℃で5時間焼結してサイアロンセラミックス焼結体を得た。
【0020】
得られたサイアロンセラミックス焼結体は理論密度の99%の密度を有し、常温におけるビッカース硬度Hvが1580、常温における3点曲げによる曲げ強さが100kgf/mm2であった。この焼結体を所定の形状に機械加工して中空円筒状のロール胴部7を作製した。また、ロール軸部8も、ロール胴部7と同様にサイアロンセラミックス焼結体で作製した。
【0021】
図2は本発明のロール軸部8の概略図を示す。図2において、ロール軸部8の外周面に円柱状に突起した凸部9を加工により1個形成した。凸部9の最大高さを100μmとした。
【0022】
また、ロール胴部7は、外径210mm、内径165mm、長さ1500mmの中空円筒体に作製した。ロール胴部7の外周面は鋼板1が接触して通板される面である。そして、ロール軸部8の凸部9に対し嵌合の位置や大きさが対応するように、ロール胴部7の内周面に凹部10を形成した。
【0023】
このようなロール胴部7、ロール軸部8を用意した後、まず誘導加熱炉でロール胴部7全体を約600℃に加熱し所定時間保持した。その後、常温状態にしたロール軸部8をロール胴部7の開口端部内に挿入し、ロール軸部8の凸部9とロール胴部7の凹部10の位置を合わせ、焼嵌めることにより本発明のサポートロールを組立てた。
【0024】
焼嵌め温度は500〜900℃が好ましい。500℃未満では焼嵌め作業がし難く、900℃を超えると焼嵌め時の室温のロール軸部8との接触による熱衝撃によりセラミックスが割れる可能がある。ロール胴部7にロール軸部8を接合した際に焼嵌め応力を避けるために嵌合率は0〜0.02%とするのが好ましい。
【0025】
また、ロール軸部の凸部とロール胴部の凹部の嵌合面間に、緩衝材として金属めっきなどを施すと接合部に発生する応力集中を一層緩和できる。
【0026】
図3は本発明の他形態のロール軸部8の概略図を示す。図3において、ロール軸部8の外周面に突起した凸部9を同一の円周軸上の軸対象部に2個形成した。本発明において、凸部9は複数個形成してもよい。また、凸部9は同一の円周軸上のみならず、異なる円周軸上に形成してもよい。
【0027】
このように構成した本発明のサポートロール5を図4に示す連続溶融金属めっき装置において、板厚が2mm、板幅が1300mmのSUS300系ステンレス鋼板を亜鉛めっき処理したところ、約1ヶ月の連続使用後、サポートロール5は侵食、摩耗が殆ど見られなく、また使用中にロール軸部がロール胴部から抜けることがなく、ロール軸部とロール胴部との接合部に割れは見られなかった。また、ロール自重が軽いので回転しやすく、起動および鋼板の走行速度の変化に良好に追従し、さらに摩耗によるロールや鋼板の振動の発生を抑えられるので高品質なめっき特性の鋼板が得られた。
【0028】
以上、サポートロールの実施例について述べたが、本発明はシンクロールなど各種の連続溶融金属めっき用ロールに適用できることは言うまでもない。
【0029】
【発明の効果】
本発明の連続溶融金属めっき用ロールは、使用中にロール軸部がロール胴部から抜けることを防止でき、ロール軸部とロール胴部との接合部に割れが発生することを防止できる。また、耐食性、耐熱性、耐摩耗性等に優れ耐用寿命が永くなる。ロール自重が軽量なので鋼板の走行速度の変化に良好に追従して回転する。したがって、高品質なめっき特性の鋼板を安定して生産できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一例であるサポートロールの概略断面図を示す。
【図2】本発明のロール軸部の概略図を示す。
【図3】本発明の他形態のロール軸部の概略図を示す。
【図4】連続溶融金属めっき装置の概略を示す図である。
【符号の説明】
1 鋼板、 2 スナウト、 3 溶融金属浴、 4 シンクロール、
5 サポートロール、 6 ガスワイピング、 7 ロール胴部、
8 ロール軸部、 9 凸部、 10 凹部
Claims (5)
- ロール胴部とロール軸部をセラミックスにより中空状に形成し、ロール胴部の両端部にロール軸部を焼嵌めまたは冷嵌めにより嵌合して接合した溶融金属浴中に浸漬して用いられる連続溶融金属めっき用ロールにおいて、ロール軸部の外周面に突起状の凸部を形成し、ロール胴部の内周面に該凸部に対応する凹部を形成し、ロール軸部の凸部をロール胴部の凹部に嵌合して接合したことを特徴とする連続溶融金属めっき用ロール。
- ロール胴部とロール軸部をセラミックスにより中空状に形成し、ロール胴部の両端部にロール軸部を焼嵌めまたは冷嵌めにより嵌合して接合した溶融金属浴中に浸漬して用いられる連続溶融金属めっき用ロールにおいて、ロール胴部の内周面に突起状の凸部を形成し、ロール軸部の外周面に該凸部に対応する凹部を形成し、ロール胴部の凸部をロール軸部の凹部に嵌合して接合したことを特徴とする連続溶融金属めっき用ロール。
- 前記突起状の凸部は最大高さが10〜1000μmであることを特徴とする請求項1または2に記載の溶融金属浴中に浸漬して用いられる連続溶融金属めっき用ロール。
- 前記突起状の凸部はその表面の少なくとも一部に曲面部を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の溶融金属浴中に浸漬して用いられる連続溶融金属めっき用ロール。
- セラミックスが窒化ケイ素系セラミックスであることを特徴とする請求項1または2に記載の溶融金属浴中に浸漬して用いられる連続溶融金属めっき用ロール。
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