JP4305279B2 - ガスセンサ素子の製造方法 - Google Patents
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Description
特に、三元触媒を用いて効率よく排気ガスを浄化するためには車両用エンジンの燃焼室において空燃比が特定の値となるように制御することが重要である。
上記用途に使用するガスセンサとして、特許文献1に示されるようなものを一例として挙げることができる。他に、上記排気ガスフィードバックシステムにおいて使用するガスセンサとして、排気ガス中の酸素濃度を検出するガスセンサや、排気ガス中の大気汚染物質であるNOx濃度を直接測定するNOxセンサが知られている。
そして各センサには、それぞれA/Fセンサ素子、酸素センサ素子、NOxセンサ素子等といったガスセンサ素子が内蔵され、これらの素子がガス濃度等の検出を担っている。
その中のひとつとして、限界電流式のガスセンサ素子として機能するガスセンサ素子が知られている。
このものは、酸素イオン導電性固体電解質板と、該固体電解質板の少なくとも一方の表面に設けた被測定ガス側電極と基準電極とを有し、上記被測定ガス側電極と対面する被測定ガス室と、該被測定ガス室と外部雰囲気とを結ぶと共に拡散抵抗を備えた導通孔を有する。
特に検出精度においては、ターボシステム、ディーゼルエンジンシステムのような、排気ガスの温度変動、圧力変動の大きい環境での使用を念頭に、環境要因にまつわる変動率の低い、センサ性能が要求されている。
拡散形態でどちらが支配的かに関する決定は拡散抵抗の細孔径にのみ依存するため、温度変動、圧力変動にはトレードオフの関係がある。
そのため、ガスセンサ素子の拡散構造によって温度変動と圧力変動に関する依存量を共に減らすことは難しく、市場の要求に応じて設計的に温度変動と圧力変動のバランス最適化が行われているにすぎない。
更に、上記多孔質体、ピンホール、スリット構造を適宜組み合わせて、クヌーセン拡散と分子拡散の寄与度を調整し、所望の温度変動特性、及び圧力変動特性を有するガスセンサ素子を得る試みもあった。
しかしながら、いったん焼成を終えたガスセンサ素子について導通孔の孔径の調整を行うことは困難であるため、温度特性、圧力特性の調整は困難である。
一部で、ピンホールやスリット構造の導通孔の外部に多孔質体からなる導通孔を前置し、これを研削、研磨することによって出力を調整すると共にクヌーセン拡散と分子拡散の寄与度を調整する方法が考えられているが、この方法は研削量というひとつのパラメータで、出力、温度、圧力特性という3種類の特性を制御する必要があり、実質的に調整は困難である。
ガスセンサ素子製造用のグリーンシートを所望の枚数積層してなる未焼積層体を準備し、かつ上記未焼積層体の内部に、焼成後は上記被測定ガス室となる空間部を設けてなると共に、該空間部と上記外部雰囲気との間を連絡する様に有機物からなる複数本の糸を上記積層したグリーンシートの間に挟み込んで配設し、
その後、上記未焼積層体を焼結すると共に上記有機物からなる糸を焼失せしめ、上記被測定ガス室と上記外部雰囲気との間を貫通する上記導通孔を形成することを特徴とするガスセンサ素子の製造方法にある(請求項1)。
しかしながら、上記孔径の導通孔を得るには、従来知られたスリット構造を利用するか、スリットやピンホールに対し多孔質体を組み合わせた構成を利用するしか方法がなく、前述したようにこれらの構成を製造する際には、精密な孔径の再現が難しかった。
その後、上記未焼積層体を焼結することで、上記有機物からなる糸は焼失して、有機物からなる糸と同径の複数本の導通孔が残る。有機物からなる糸として径が均一なものを用いれば導通孔の孔径を精密に制御することができる。
また、有機物の糸の本数は、焼成後に形成される導通孔の数に等しくなる。そして、導通孔の総断面積に応じてガスセンサ出力が定まる。従って、有機物の糸の本数を調整することにより、所望の出力を得ることができる。
また、本発明から製造されるガスセンサ素子は、導通孔に拡散抵抗が備わっていることから、いずれも限界電流式のガスセンサ素子に適しており、更にガスセンサ素子製造用のグリーンシートを所望の枚数積層してなる未焼積層体から作製するため、積層型のガスセンサ素子に適する。
即ち、未焼積層体を製造する際に、複数の有機物の糸を所定のグリーンシート間に挟みこみ、加圧積層する。これにより、焼成後には被測定ガス室となる空間部と、外部雰囲気との間を結ぶ位置に、上記糸を配設する(実施例1)。
本発明にかかる製造方法から得たガスセンサ素子は、エンジン冷始動時に発生するリッチシフト現象の低減に効果を得ることができる。
上記リッチシフトとは、エンジン始動直後、ガスセンサ素子の検出値に基づいて得たエンジンにおける空燃比が、実際の空燃比よりもリッチ側を示す現象である。エンジンの燃焼制御はガスセンサ素子の検出値に基づいて行われるため、リッチシフト状態にある排気ガスフィードバックシステムはエンジンに対する燃料供給を抑制するため、エンジンの正常作動に問題が生じるおそれがある。
上記リッチシフト現象は、数時間単位の長時間、自動車等の車両の排気管に放置したガスセンサ素子において確認される現象である。詳細なメカニズムは不明ながら、原因がガスセンサ素子に付着した水分にあることが再現実験等から明らかとなっている。更に、上記水分は、その大部分が多孔質体(特にアルミナ製)に付着していることも判明している。
本発明にかかる製造方法により得たガスセンサ素子の導通孔は、有機物からなる糸が焼失することで形成されるため、多孔質体と比較して表面積が小さくなる。更に、多孔質体からなる導通孔は複雑かつ微細な迷路構造となるが、本発明の導通孔は、それに比べれば比較的直通で孔径が大きい構造となる。従って、水分が多孔質体に比べて付着し難く、リッチシフトが発生し難い。
0.5μmより細い場合、糸の強度が弱くなるため、取り扱いが困難となってガスセンサ素子の製造が難しくなるおそれがある。30μmより太い場合は、ガスセンサ素子の製造工程において糸が変形しやすくなり、断面が扁平状に歪んだ導通孔が形成されてしまうおそれがある。
次に、上記複数本の糸を焼失させることにより形成させる各々の導通孔は、他の導通孔と交差することなく貫通していることが好ましい(請求項3)。この場合には、各導通孔はそれぞれ単独で被測定ガス室と外部雰囲気との間に貫通している。
そのため、導通孔の行路長のバラツキが少なく、ガス拡散抵抗にもバラツキが少なく、ガスセンスサ素子の出力安定性が向上する。
そのため、有機物の糸の本数は、焼成後に形成される導通孔の数に等しくなる。そして、導通孔の総断面積に応じてガスセンサ出力が定まる。従って、有機物の糸の本数を調整することで、容易に所望の出力を得ることができる。
上記糸は有機物からなり、従って炭素を含有する。炭素以外の元素として、水素、酸素、窒素、ホウ素、燐、硫黄及びハロゲンのいずれか1種以上の元素を含み、他の元素を含有しない有機物は、加熱により未焼積層体の中に残滓を残すことなく焼失することができる。
従って、ガスセンサ素子の焼成の際になんら有害な痕跡を残すことなく、所望の孔径を有する導通孔を得ることができる。
なお、上記有機物の具体的な素材としては、ポリエチレン、塩化ビニル等を用いることができる。
これにより、より容易かつ効果的に導通孔の形成を行うことができる。
また、上記有機物の糸の配設場所としては、後述する実施例3に示すごとく、焼成後に遮蔽層となる遮蔽層用グリーンシートが例示できる。
次に、請求項1〜5のいずれかの方法により製造してなり、酸素イオン導電性固体電解質板と、該固体電解質板の少なくとも一方の表面に設けた被測定ガス側電極と基準電極とを有し、上記被測定ガス側電極と対面する被測定ガス室と、該被測定ガス室と外部雰囲気とを結ぶと共に拡散抵抗を備えた導通孔を有することを特徴とするガスセンサ素子がある(請求項6)。
本発明にかかる実施例について、図1〜図6を用いて説明する。
本例にかかるガスセンサ素子1は、図1〜図3に示すごとく、酸素イオン導電性固体電解質板11と、該固体電解質板11の少なくとも一方の表面に設けた被測定ガス側電極21と基準電極22とを有し、上記被測定ガス側電極21と対面する被測定ガス室171と、該被測定ガス室171と外部雰囲気とを結ぶと共に拡散抵抗を備えた導通孔131を有するガスセンサ素子1である。
このようなガスセンサ素子1を製造するに当たり、図4、図5に示すごとく、ガスセンサ素子1製造用のグリーンシートを所望の枚数積層してなる未焼積層体3を準備し、かつ上記未焼積層体3の内部に、焼成後は上記被測定ガス室171となる空間部371を設けてなると共に、上記空間部371と上記外部雰囲気とを結ぶように有機物からなる糸331を配設し、その後、上記未焼積層体3を焼結すると共に上記有機物からなる糸331を焼失せしめることで、上記被測定ガス室171と上記導通孔131を形成してなる。
本例のガスセンサ素子1は、自動車エンジンの排気系に設置して、空燃比フィードバック制御に用いるA/Fセンサに内蔵して使用する限界電流式のガスセンサ素子である。
図1、図2に示すごとく、酸素イオン導電性の固体電解質板11の一方の面111にアルミナ絶縁板12、被測定ガス室形成用のスペーサ13、ガス不透過の遮蔽板14を積層し、また他方の面112に基準電極22と対面する基準ガス室形成用のスペーサ15、発熱部23を備えたヒータ基板16を積層してなる。
上記アルミナ絶縁板12は被測定ガス側電極配設用の窓部120が設けてあり、該窓部において被測定ガス側電極21が固体電解質板11と接するようこれを配置する。
上記アルミナ絶縁板12の一方の面121には、被測定ガス側電極21と導通するリード部211及び端子部212が設けてある。また、固体電解質板11の他方の面112には基準電極22、これと導通するリード部221及び内部端子部222が設けてある。内部端子部222は、アルミナ絶縁板12の面121に設けた端子部223とスルーホール119、129を介して内部端子部222との間の導通が確保される。
ヒータ基板16の面161には通電により発熱する発熱部23と、該発熱部23と導通するリード部231が設けてある。ヒータ基板16の面162には端子部232が設けてあり、該端子部232はリード部231とスルーホール169にて導通が確保される。
基準ガス室172は、スペーサ15に設けた溝部150と固体電解質板11にて囲まれた空間から形成される。
また、本例のガスセンサ素子1において、上記固体電解質板11、各電極21、22等以外の遮蔽板14、スペーサ13、15、アルミナ絶縁板12、ヒータ基板16はアルミナから構成されている。
遮蔽板14用、スペーサ13用、アルミナ絶縁板12用、固体電解質板11用、スペーサ15用、ヒータ基板16用のグリーンシート34、33、32、31、35、36をそれぞれ作成し、必要に応じて窓部330、320、溝部350を各グリーンシート33、32、35に設ける。
次いで、固体電解質板用のグリーンシート31、アルミナ絶縁板用のグリーンシート32に印刷部41、42、420を設ける。この印刷部41、42、420が焼成後に被測定ガス側電極21や基準電極22等となる。
また、グリーンシート36には印刷部43、430を設ける。この印刷部43、430は焼成後に発熱部等になる。
次いで、各グリーンシート31〜36を積層圧着して、未焼積層体3となす。
このようにして得た未焼積層体3を焼結することで、各グリーンシートをセラミック板となすと共に糸331を焼失せしめて導通孔131を形成して、本例にかかるガスセンサ素子1となす。
その後、上記未焼積層体3を焼結することで、上記有機物からなる糸331は焼失して、有機物からなる糸331と同径の導通孔131が残る。
本例では、有機物からなる糸331として直径が均一で12μmであるものを用いているため、導通孔131の孔径を10μmと精密に制御することができる。ここで、糸331の直径と導通孔131の孔径が異なっているが、この理由は以下に示される。糸331は焼成工程においては比較的低温(600℃以下)で消失し、導通孔131が形成される。その後、高温(1200℃以上)で焼成される際に焼成収縮し、それに伴って上記導通孔131も収縮する。そのため、用意した糸の直径に対して、20%程細い孔径の導通孔が得られる。
また、糸331はポリエチレンからなるため、焼成の際に糸331は残滓を残すことなくきれいに焼失することができる。勿論、ポリエチレン以外の所定の有機物を用いることで同様の導通孔形成効果を得ることができる。
本例は、実施例1と異なる方法でスペーサ33に導通孔131を形成する方法について説明する。
実施例1と同様に、遮蔽板用、スペーサ用、アルミナ絶縁板用、固体電解質板用、ヒータ基板用のグリーンシートをそれぞれ作成し、必要に応じて窓部、溝部を各グリーンシートに設ける。
次いで、固体電解質板やアルミナ絶縁板用のグリーンシート、ヒータ基板用のグリーンシートにそれぞれ印刷部を設ける。
図7に示すごとく、本参考例においては、有機物であるポリエチレンからなる糸51が絡み合った綿状体5を準備する。この綿状体5を被測定ガス室形成用のスペーサ用のグリーンシート33にこすり付けて、図8に示すごとく、綿状体5を構成する糸51をグリーンシート33に配設する。なお、この綿状体5を構成する糸51はいずれも直径が均一で12μmである。
その後は実施例1と同様の配置にて上記グリーンシートを積層し、圧着して、未焼積層体を得る。この未焼積層体を焼成して糸51を焼失せしめて、孔径10μmの導通孔131を有するセンサ素子1を得る。
得られたガスセンサ素子1における導通孔131は、図9に示すように、側面135から被測定ガス室171に向かって貫通する孔径が均一な多数の細孔からなる。なお、図9には導通孔131となる細孔を1本のみ記載した。
その他詳細は実施例1と同様である。
本例にかかるガスセンサ素子1は、図10に示すごとく、被測定ガス室171と外部雰囲気とを結ぶ導通孔141が遮蔽板14にある。
このガスセンサ素子1を製造するには、実施例1と同様に、遮蔽板用、スペーサ用、アルミナ絶縁板用、固体電解質板用、ヒータ基板用のグリーンシート34、33、32、31、35、36をそれぞれ作成し、必要に応じて窓部330、320、溝部350を各グリーンシート33、32、35に設ける。
次いで、固体電解質板やアルミナ絶縁板用のグリーンシート31、32、ヒータ基板用のグリーンシート36にそれぞれ印刷部41、42、43を設ける。
ただし、本参考例においては、有機物であるポリエチレンからなる、直径12μm、長さ3mm以下の糸341をスラリーにあらかじめ混ぜておき、このスラリーから上記遮蔽板用グリーンシート34を作成するのである。
その結果、グリーンシート34に、図12に示すごとく、糸341が埋設される。ここで、板の厚み方向(図面における上下方向)を貫通する孔の数はグリーンシート34への糸の混入量によって調整することができ(混入量に依存したある確率で貫通孔が形成される)、これによってセンサ出力を調整することが可能である。なお、上記グリーンシート34の厚さは混入した糸の長さ(3mm以下)に対して十分短い0.2mmとした。
得られたガスセンサ素子1における導通孔141は、図10に示すように、ガスセンサ素子1の積層方向(図面における上下方向)に貫通する径が均一な多数の細孔からなる。
その他詳細は実施例1と同様である。
11 固体電解質板
131 導通孔
21 被測定ガス側電極
22 基準電極
3 未焼積層体
Claims (6)
- 酸素イオン導電性固体電解質板と、該固体電解質板の少なくとも一方の表面に設けた被測定ガス側電極と基準電極とを有し、上記被測定ガス側電極と対面する被測定ガス室と、該被測定ガス室と外部雰囲気とを結ぶと共に拡散抵抗を備えた導通孔を有するガスセンサ素子を製造するに当たり、
ガスセンサ素子製造用のグリーンシートを所望の枚数積層してなる未焼積層体を準備し、かつ上記未焼積層体の内部に、焼成後は上記被測定ガス室となる空間部を設けてなると共に、該空間部と上記外部雰囲気との間を連絡する様に有機物からなる複数本の糸を上記積層したグリーンシートの間に挟み込んで配設し、
その後、上記未焼積層体を焼結すると共に上記有機物からなる糸を焼失せしめ、上記被測定ガス室と上記外部雰囲気との間を貫通する上記導通孔を形成することを特徴とするガスセンサ素子の製造方法。 - 請求項1において、上記有機物の糸は直径が0.5〜30μmであることを特徴とするガスセンサ素子の製造方法。
- 請求項1または2において、上記複数本の糸を焼失させることにより形成させる各々の導通孔は、他の導通孔と交差することなく貫通していることを特徴とするガスセンサ素子の製造方法。
- 請求項1〜3のいずれか1項において、上記有機物の糸は炭素を含み、かつ水素、酸素、窒素、ホウ素、燐、硫黄及びハロゲンのいずれか1種以上の元素を含有し、他の元素を含まないことを特徴とするガスセンサ素子の製造方法。
- 請求項1〜4のいずれか1項において、未焼積層体は、焼成後は上記被測定ガス室となる空間部を備えた被測定ガス室形成用グリーンシートを有してなり、上記有機物の糸は上記被測定ガス室用グリーンシートに対し配設することを特徴とするガスセンサ素子の製造方法。
- 請求項1〜5のいずれかの方法により製造してなり、酸素イオン導電性固体電解質板と、該固体電解質板の少なくとも一方の表面に設けた被測定ガス側電極と基準電極とを有し、上記被測定ガス側電極と対面する被測定ガス室と、該被測定ガス室と外部雰囲気とを結ぶと共に拡散抵抗を備えた導通孔を有することを特徴とするガスセンサ素子。
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