JP4304450B2 - 真空排気装置 - Google Patents
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Description
このコールドトラップは、極低温に冷却された面(以下、コールドパネルという)と接するようにガスを通過させ、このような通過するガスに含まれる水蒸気を冷却して氷に凍結して捕集する装置であり、真空チャンバ内に水蒸気の少ない真空環境を得ることができる。
コールドトラップの水蒸気除去により、ターボ分子ポンプに水蒸気をあらかじめ取り除いたガスを流入させて、真空チャンバの排気速度を向上させることができる。また、コールドトラップは冷却温度を適宜設定することにより、他のガス(例えば、Br2,NH3,Cl2,CO2等)も凍結捕集することができる。
特許文献1には、液体窒素により冷却するコールドトラップについて記載されており、また、特許文献2には、GM方式(ギフォード・マクマホン方式)のヘリウム冷凍機を利用するコールドトラップについて記載されている。
コールドパネルの再生には、外部ヒータによる加熱方法や、または、コールドパネル近傍に配管を配置しておき、ガスなどの冷媒を加熱して流すことにより、コールドパネルの温度を上昇させるようにする方法が行われている。しかし、コールドパネルの再生に関し、従来技術によるコールドトラップには以下のような課題がある。
(1)冷媒として使用する液体窒素の補給、保管設備が必要であり、ランニングコストも高い。
(2)特許文献1の図1で示すように、コールドパネル(コールドトラップ50)の再生に液体窒素を加熱した窒素ガスを用いているが、間接的な加熱のためコールドパネル(コールドトラップ50)の温度上昇に時間を要し、生成の立ち上がりが遅い。
(1)GM方式のヘリウム冷凍機3(特許文献2の図1,図2参照)は、配管8(低温端)が低温になるまでの立ち下がり時間が長いため、一旦立ち下げたら負荷に関係なく定格で連続運転する必要がある。また、原理的に冷凍機の効率が低いため消費電力が大きい。
(2)特許文献2の図1,図2で示すように、コールドパネル(パネル6)の再生は、GM式のヘリウム冷凍機を運転したまま行うため、冷凍機3の配管8(冷却端部)の温度を上げるための加熱手段に容量が大きなものが必要となる。
(3)冷凍機3には機械的な膨張ピストンが存在するため、シリンダ内を封止するガスシールを使用している。このガスシールに使用される樹脂部分の耐熱温度、および、ガス放出等の諸条件により、再生温度が100℃以下程度に制限され、再生の効率が悪くなり、再生時間がかかる。
ケーシング内にコールドパネルを備えるコールドトラップと、当該コールドトラップから流出したガスを排気するターボ分子ポンプと、当該ターボ分子ポンプによりガスが排気される真空チャンバと、前記コールドパネルの温度を制御する温度制御手段と、から構成される真空排気装置であって、
前記真空チャンバは、真空チャンバ内の圧力を計測する圧力計測手段を備え、
前記コールドトラップは、前記コールドパネルを加熱する加熱手段と、圧縮機、膨張機および冷却端を有し、少なくとも前記ケーシングの内部に冷却端が前記コールドパネルに熱的に接続されて配置される冷凍機と、前記コールドパネルの温度を計測する温度計測手段と、を備え、
前記温度制御手段は、前記圧力計測手段、前記加熱手段、前記冷凍機および前記温度計測手段が接続され、前記圧力計測手段が計測した真空チャンバ内の圧力および前記温度計測手段が計測したコールドパネルの温度に基づき、前記真空チャンバの圧力を所定圧力に維持しつつ、コールドパネルの温度を目標温度とするように、冷凍機または加熱手段を制御することを特徴とする。
請求項1記載の真空排気装置において、
前記温度制御手段は、
前記真空チャンバの圧力が所定圧力より上昇した場合には、前記コールドパネルの温度が低下するように冷凍機または加熱手段を制御し、
前記コールドパネルの温度が目標温度より低く、かつ、前記真空チャンバの圧力が所定圧力以下の場合には、コールドパネルの温度が上昇するように、冷凍機または加熱手段を制御することを特徴とする。
請求項1または請求項2に記載の真空排気装置において、
真空排気装置の通常運転中にコールドパネルを再生するに際し、
前記温度制御手段は、前記圧力測定値に基づき再生時のコールドパネルの目標温度と温度上昇時間とを設定することを特徴とする。
請求項1〜請求項3の何れか一項に記載の真空排気装置において、
前記加熱手段は、前記コールドパネルに内蔵されることを特徴とする。
請求項1〜請求項4の何れか一項に記載の真空排気装置において、
前記コールドパネルは、低温域における熱伝導率が大きい純チタンを材料とすることを特徴とする。
請求項1〜請求項4の何れか一項に記載の真空排気装置において、
前記コールドパネルは、低温域における熱伝導率が大きい銅または銅合金を材料とすることを特徴とする。
請求項6に記載の真空排気装置において、
前記コールドパネルは、その表面に耐食性を向上させる保護層を形成したことを特徴とする。
請求項1〜請求項7の何れか一項に記載の真空排気装置において、
前記コールドパネルは、水分子を凍結捕集するトラップ面を、突起体を多数形成した凹凸面またはなし地面として表面積を大きくし、トラップ面以外の外表面を放射率の小さな光沢面とすることを特徴とする。
コールドトラップ10は、ケーシング11と、コールドパネル12と、ヒータ13と、パルスチューブ冷凍機14と、温度センサ15と、端子部16と、コントローラ17と、電源18と、を備えている。
外周パネル12aは略円筒体であり、その内側に棒やパイプなどである支持部12cが取り付けられる。内周パネル12bは、外周パネル12aの内側に収納できる大きさの略円筒体であり、支持部12cに支持固定されている。これら外周パネル12a、内周パネル12b、支持部12cは熱的に接続されている。このコールドパネル12は、ケーシング11内の略中央に設置される。
また、純チタンは水蒸気・ガスに対して錆びないため耐食性が高いという利点もある。
また、外周パネル12aおよび内周パネル12bの外側面(ケーシング11の胴部11aに相対向する面)ではできるだけ放射率の小さな鏡面(光沢面)に仕上げて放射率を小さくするように構成する。これにより常温側から侵入する熱量を低減できる。
なお、ヒータ13は、コールドパネル12の外周面パネル12aおよび内周面パネル12bにほぼ均一に設置できればシーズヒータのような線状ヒータでも良い。また、コールドパネル12の外周面パネル12aおよび内周面パネル12bを鋳物として製造する場合には、鋳込みヒータとしても良く、各種ヒータの採用が可能である。
外周パネル12aは、このパルスチューブ冷凍機14の冷却端14aに熱的に接続されており、外周パネル12a、支持部12c、内周パネル12bという経路を経てコールドパネル12全体が、パルスチューブ冷凍機14により冷却される。
端子16は、ヒータ13に接続された電流線および温度センサ15に接続された信号線をケーシング11から引き出すために設けられる。この端子16は真空下で使用できるものであり、例えばハーメチック等が用いられる。
電源18は、コントローラ17を介してヒータ13やパルスチューブ冷凍機14へ電源を供給する。このコールドトラップ10の温度制御系は図3で示すようになる。なお、圧力センサ19については後述する。
コールドトラップ10はこのように構成される。
これらコールドトラップ10およびターボ分子ポンプ20により真空排気装置100が構成される。
真空チャンバ30内のガスが排気され始めると、真空チャンバ30内のガスの圧力が低下し始める。真空チャンバ30内のガスの圧力の低下とともに真空チャンバ30の水分は水蒸気へと気化する。これらの水蒸気を含むガスが、ゲートバルブ40を経てコールドトラップ10を通過する。
例えば、コールドパネル12の所定温度の一例として水蒸気のみを凍結捕集する最適な温度である120K〜150K(−153℃〜−123℃)の範囲内の温度を選択して制御し、コールドパネル12に水蒸気を凍結捕集して吸着させるようにする。
これにより、真空チャンバ30内の水分が吸着され、水分以外の分子はターボ分子ポンプ20で高い圧縮比に圧縮されて排気される。
例えば、従来技術のGM式の冷凍機では、一旦稼働させたならば負荷に関係なく定格で連続運転していたが、本形態のコールドトラップ10では、パルスチューブ冷凍機14の運転を、コールドパネル10の吸着能力に応じた最適な温度となるような電力とするだけでよく、無駄な電力消費を回避できる。
本方法では、凝結した氷を急速に高温加熱して全て水蒸気とし、コールドトラップ10内から排気除去して、コールドパネル12を急速に再生するというものである。以下、図1,図3,図4を参照しつつ時系列的に説明する。
(2)図1,図3で示すように、コントローラ17がパルスチューブ冷凍機14の運転を停止するように制御する。
(3)コントローラ17がヒータ13を制御し、コールドパネル12を一気に300℃まで加熱する。コントローラ17は温度センサ15から出力される温度計測信号に基づいて、立ち上がり時間が最短となるように温度制御する。
(4)ケーシング11の胴部11aに設けた図示しない再生排気口から気化した水蒸気を排出する。なお、再生排気口の下流には図示しない真空ポンプが接続され、高速に排気する。
(5)コントローラ17がパルスチューブ冷凍機14の運転を再開するように制御する。
(6)図4で示すように、真空チャンバ30とコールドトラップ10との間に設けたゲートバルブ40を開き、ターボ分子ポンプ20による真空チャンバ40内の排気を継続する。
本方法では、真空排気装置100を通常運転している最中に、コールドパネル12に凍結した氷を少しづつ水蒸気に昇華し、コールドトラップ10内からターボ分子ポンプ20を経て少しづつ排気除去して、コールドパネル12を緩速(ゆっくり)に再生するというものである。
(2)コントローラ17は、この圧力計測信号から算出した圧力に対応する水蒸気の飽和温度を図示しないメモリから読み出す。例えば10−8Pa に対応する飽和温度は約130Kである。
(5)以下、コールドパネル12の温度を飽和温度130Kに近づけるように徐々に上昇させて、コールドパネル12を徐々に再生する。ここで温度上昇時間は予め実験等により最適な時間を図示しないメモリに登録するようにしても良い。
なお、温度上昇が急激すぎると、水蒸気分子の増大により真空チャンバ30内の真空度が低下するため、コントローラ17は、圧力センサ19から出力される圧力計測信号から得られる圧力値を監視し、圧力が急激に上昇しないようにヒータ13(またはパルスチューブ冷凍機14)の温度を上昇させていき、圧力値が上昇(真空度が低下)したならば、ヒータ13を停止させる(またはパルスチューブ冷凍機14による冷却温度の低下させる)ような制御を行うようにしてもよい。
例えば、図5で示すように、真空チャンバ30の上流にコールドトラップ10を、また、下流にターボ分子ポンプ20を接続してもよい。
なお、銅または銅合金のコールドパネルには水蒸気による錆を発生させないように保護層を形成して耐食性を向上させ、装置寿命を長くしている。
10 :コールドトラップ
11 :ケーシング
11a :胴部
11b :フランジ
12 :コールドパネル
12a :外周パネル
12b :内周パネル
12c :支持部
13 :ヒータ
14 :パルスチューブ冷凍機
14a :冷却端
14b :膨張機
14c :圧縮機
15 :温度センサ
16 :端子部
17 :コントローラ
18 :電源
19 :圧力センサ
20 :ターボ分子ポンプ
30 :真空チャンバ
40 :ゲートバルブ
Claims (8)
- ケーシング内にコールドパネルを備えるコールドトラップと、当該コールドトラップから流出したガスを排気するターボ分子ポンプと、当該ターボ分子ポンプによりガスが排気される真空チャンバと、前記コールドパネルの温度を制御する温度制御手段と、から構成される真空排気装置であって、
前記真空チャンバは、真空チャンバ内の圧力を計測する圧力計測手段を備え、
前記コールドトラップは、前記コールドパネルを加熱する加熱手段と、圧縮機、膨張機および冷却端を有し、少なくとも前記ケーシングの内部に冷却端が前記コールドパネルに熱的に接続されて配置される冷凍機と、前記コールドパネルの温度を計測する温度計測手段と、を備え、
前記温度制御手段は、前記圧力計測手段、前記加熱手段、前記冷凍機および前記温度計測手段が接続され、前記圧力計測手段が計測した真空チャンバ内の圧力および前記温度計測手段が計測したコールドパネルの温度に基づき、前記真空チャンバの圧力を所定圧力に維持しつつ、コールドパネルの温度を目標温度とするように、冷凍機または加熱手段を制御することを特徴とする真空排気装置。 - 請求項1記載の真空排気装置において、
前記温度制御手段は、
前記真空チャンバの圧力が所定圧力より上昇した場合には、前記コールドパネルの温度が低下するように冷凍機または加熱手段を制御し、
前記コールドパネルの温度が目標温度より低く、かつ、前記真空チャンバの圧力が所定圧力以下の場合には、コールドパネルの温度が上昇するように、冷凍機または加熱手段を制御することを特徴とする真空排気装置。 - 請求項1または請求項2記載の真空排気装置において、
真空排気装置の通常運転中にコールドパネルを再生するに際し、
前記温度制御手段は、前記圧力測定値に基づき再生時のコールドパネルの目標温度と温度上昇時間とを設定することを特徴とする真空排気装置。 - 請求項1〜請求項3の何れか一項に記載の真空排気装置において、
前記加熱手段は、前記コールドパネルに内蔵されることを特徴とする真空排気装置。 - 請求項1〜請求項4の何れか一項に記載の真空排気装置において、
前記コールドパネルは、低温域における熱伝導率が大きい純チタンを材料とすることを特徴とする真空排気装置。 - 請求項1〜請求項4の何れか一項に記載の真空排気装置において、
前記コールドパネルは、低温域における熱伝導率が大きい銅または銅合金を材料とすることを特徴とする真空排気装置。 - 請求項6に記載の真空排気装置において、
前記コールドパネルは、その表面に耐食性を向上させる保護層を形成したことを特徴とする真空排気装置。 - 請求項1〜請求項7の何れか一項に記載の真空排気装置において、
前記コールドパネルは、水分子を凍結捕集するトラップ面を、突起体を多数形成した凹凸面またはなし地面として表面積を大きくし、トラップ面以外の外表面を放射率の小さな光沢面とすることを特徴とする真空排気装置。
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