JP4304392B2 - 非木材パルプの漂白方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、非木材パルプの漂白方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
非木材パルプとは、木材繊維以外の繊維質から得られるパルプである。製紙用に利用される非木材植物では、コウゾ、ミツマタ、ガンピ、アマ、タイマ、ケナフ、チョマ、ジュート、サンヘンプ、ワタ、単子葉植物では、マニラ麻、サイザル麻、エスパルト、竹、イネワラ、ムギワラ、砂糖きびバガス、アシがある。
【0003】
これらの植物は、蒸解処理によりパルプ化される。蒸解処理としては、ソーダ法(NaOH)、亜硫酸塩法(Na2SO4、NaOH)、クラフト法(Na2S、NaOH)、ソーダ灰法(Na2CO3)などがある。蒸解後ビーターで叩解、洗浄を行う。次いで、除塵後、ポーチャー、タワーなどで漂白される。漂白方法としては、麻類のパルプ(アマ、タイマ、ジュートなど)は次亜塩素酸ナトリウム、塩素−アルカリ−次亜塩素酸ナトリウムの3段で漂白される。木本じん皮のパルプは晒粉、次亜塩素酸ナトリウム、亜塩素酸ナトリウムなどで漂白される。マニラ麻パルプは用途に応じて、過酸化水素、晒粉、塩素などで漂白される。穀物ワラのパルプは次亜塩素酸塩1段、塩素−アルカリ−次亜塩素酸ナトリウムの3段で漂白される。砂糖きびバガスのパルプについては、次亜塩素酸塩、過酸化水素、塩素−アルカリ−次亜塩素酸ナトリウムの3段で漂白される。
【0004】
非木材パルプを高白色度に漂白する方法として、特開昭54−68402号公報には靱皮繊維を酵素でパルプ化した後、酸化剤或いは還元剤或いはこれらの組み合わせで漂白するとしている。この方法は、塩素系漂白剤或いはその組み合わせで漂白した場合高白色度のパルプが得られるが、ダイオキシン或いはクロロホルム等の有機塩素化合物が生成し環境を汚染するとの問題がある。酸化剤として過酸化水素を使用した場合、効果的な安定剤が使用されていないので、高白色度のパルプを得る事はできない。
【0005】
特開昭60−181390号公報では椰子の実の繊維の漂白方法として過酸化水素を主成分とする漂白剤による漂白方法が記載されている。この漂白方法では、過酸化水素の他に苛性ソーダ、ソーダ塩、界面活性剤で漂白する方法であるが、過酸化水素の安定剤としてソーダ塩を主成分(ケイ酸ソーダと思われる)とする過酸化水素安定剤を使用する事が記載されているが、この安定剤だけでは十分に過酸化水素を安定させる事はできない。また過酸化水素単独では高白色度に漂白する事はできない。
【0006】
特開昭63−264991号公報では靱皮原料をシュウ酸またはシュウ酸塩、過酸化水素または過酸化水素発生剤、アルカリ金属の炭酸塩、キレート化剤及び水からなる混合液またはこれにアントラキノン類を加えた混合液を用い、60〜130℃の温度で蒸解する方法が記載されている。この方法は蒸解について開示している方法であり、また過酸化水素を蒸解薬品として用いているため、原料中の重金属による過酸化水素の分解、及び高アルカリの蒸解条件に過酸化水素を添加しているため、過酸化水素が分解する等の要因で高白色度にする事は難しい。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、高白色度の非木材パルプの製造において、塩素系漂白剤使用量を大幅に削減し、ダイオキシンおよびクロロホルム等の有機塩素化合物の生成を抑えて、高白色度の非木材パルプを得ることにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、非木材パルプの漂白方法について鋭意研究を重ねた結果、次亜塩素酸塩と同時にキレート化剤で非木材パルプを処理することにより、次段の過酸化物処理の効率が大幅に向上し、極めて効果的に高白色度化された非木材パルプが得られる事を見いだし、本発明に到達した。
【0009】
すなわち、本発明は非木材パルプを次亜塩素酸塩とキレート剤を併用して漂白し、次いで過酸化物で漂白することを特徴とする非木材パルプの漂白方法に関するものである。さらに本発明は、木材パルプ、古紙パルプの漂白にも使用することができる。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明のキレート剤併用次亜塩素酸塩処理(HQまたはHQ段と略する場合がある)は、パルプの状態にもよるが、たとえばパルプ濃度1〜40重量%、好ましくは2〜30重量%、更に好ましくは5〜20重量%、温度は5〜80℃、好ましくは10〜60℃、処理時間は5〜300分、好ましくは30〜180分、pHは5〜13、好ましくは6〜11で実施される。HQ段処理後のパルプは脱水機により分離され、好ましくは洗浄を受ける。
【0011】
次亜塩素酸塩の使用量は、製品の要求白色度、製品中の許容有機塩素化合物量及び排水中の許容有機塩素化合物により異なるが、絶乾パルプあたり0.2〜1.0重量%である。この範囲以下では次亜塩素塩によるパルプ中の重金属の溶出効果が弱く、この範囲以上ではキレート剤が次亜塩素酸塩によって壊されるために重金属補足効果が弱くなり、次段の過酸化物漂白を効率良く行うことができない。
【0012】
使用されるキレート剤は、アミノカルボン酸系キレート剤及び、一般式(1)で表されるアミノアルキルリン酸系キレート剤から選ばれた少なくとも1種類のキレート剤である。
(X2O3PCH2)2・N・[(CH2)m・N・CH2PO3X2]n・CH2PO3X2 (1)
(式中のXは水素、アンモニウムまたはアルカリ金属を示し、mは2〜3の整数、nは0〜3の整数を示す。)
【0013】
アミノカルボキシレート系キレート剤として、具体的にはエチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、N−ヒドロキシエチルエチレンジアミン−N,N',N"−トリ酢酸(HEDTA)、ニトリロトリ酢酸(NTA)、シクロヘキサンジアミン四酢酸(CyDTA)等、及びそれらの塩、アミノアルキルリン酸系キレート剤としてアミノトリメチレンホスホン酸(ATMP)、エチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸(EDTMP)、ジエチレントリアミンペンタメチレンホスホン酸(DTPMP)、プロピレンジアミンテトラメチレンホスホン酸(DPTPMP)等、およびそれらの塩が挙げられる。その使用量はパルプ及び用水中に含まれる重金属量によって異なるが、絶乾パルプ当たり0.01〜5.0重量%、好ましくは0.05〜1.0重量%である。
【0014】
HQ段後のパルプは、過酸化物による漂白工程に供される(PまたはP段と略する場合がある)。この処理においてパルプは過酸化物により漂白作用を受ける。過酸化物段における過酸化物としては、過酸化水素、過酸化水素と無機塩類との付加物、過酸化ソーダ、過硫酸塩類、過ギ酸、過酢酸等の無機及び有機の過酸化物が使用でき、一般には過酸化水素が好適に使用される。過酸化物の使用量は、100重量%過酸化水素換算で絶乾パルプあたり0.05〜10重量%、好ましくは0.5〜5重量%である。
【0015】
過酸化物として過酸化水素を使用する場合のアルカリ剤としては、苛性ソーダ、苛性カリ、石灰、ソーダ灰等が使用できる。中でも苛性ソーダは安価であることから好適に使用できる。アルカリ剤の使用量は、NaOH換算で絶乾パルプあたり0.1〜5重量%、好ましくは0.5〜3.0重量%である。アルカリ剤の使用量がこれより多くても少なくても漂白効果が低くなる。
【0016】
本発明の過酸化物段のパルプ濃度は5〜35重量%、好ましくは10〜30重量%である。温度は35〜90℃、好ましくは40〜70℃である。処理時間は15〜300分、好ましくは30〜180分である。
【0017】
本発明のP段は前段でHQ処理を実施しているために安定剤なしでも、高白色度の漂白非木材パルプが得られるが、非木材パルプの種類によっては過酸化物安定剤を使用した方がより好ましい場合がある。安定剤としては、ケイ酸ソーダ、マグネシウム化合物、キレート剤等が使用される。ケイ酸ソーダの使用量は、絶乾パルプあたり1〜10重量%である。マグネシウム化合物としては、硫酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、硝酸マグネシウム化合物が使用できるが、一般には硫酸マグネシウムが使用される。マグネシウム化合物の使用量は、マグネシウムイオンとして0.005〜1.0重量%、好ましくは0.01〜0.5重量%である。キレート剤としてはHQ段で使用されるものと同様なものが使用できる。その使用量は絶乾パルプあたり0.01〜5重量%、好ましくは0.05〜1.0重量%である。
【0018】
本発明法のHQ−Pによって得られた漂白パルプは、そのままでもかなり高い白色度を示すが、更に多段の漂白工程を付加したフル漂白により、いっそう高い白色度を示すパルプを得ることができる。たとえば、HQ−P漂白後、さらに過酸化物で漂白を行うこともでき、さらに高白色度の非木材パルプを得ることができる。後続の過酸化物段はP段条件と同様の条件で行うことができる。
【0019】
【実施例】
次に実施例により本発明を具体的に説明する。各薬品の使用量は絶乾パルプ当たりの重量%で示し、過酸化水素の使用量は、100%過酸化水素換算である。使用した非木材パルプ及び分析評価の方法は、下記のとおりである。
パルプ種:マニラ麻パルプ
ハンター白色度:40.4%
金属量:Cu1.6ppm Fe58ppm Mn95ppm
分析評価
・白色度:JIS−P8123(ハンター白色度法)
・金属量:ICP発光分光分析装置
・AOX:EPAMETHOD 9020法
【0020】
実施例1
マニラ麻パルプについて、下記条件に従ってHQ−Pによる漂白を行った。HQ−P(次亜塩素酸塩+キレート剤処理後、洗浄し、過酸化物漂白)
1)NaClO2:0.5%、DTPA量:0.2%、パルプ濃度:5%、処理時間:2時間、処理温度:50℃の条件で処理した。
2)処理後、水にてパルプ濃度2.5%に希釈した後、パルプ濃度20%に脱水した。
P(過酸化物漂白)
1)H2O2:1.5%、NaOH量:0.8%、ケイ酸ソーダ量:5%、パルプ濃度:20%、処理時間:3h、処理温度:70℃の条件で処理を行った。
2)反応終了後、水にてパルプ濃度0.8%に希釈・離解し、亜硫酸水でpH5.5に調整後ブフナーロート上にて脱水した。
3)1夜風乾後ハンター白色度を測定した。
【0021】
比較例1〜4
実施例1のHQ処理のキレート剤を使用せず、次亜塩素酸使用量を0.5%、1.5%、3.0%、5.0%と変化させた以外は、実施例1と同様な漂白を行った(H−P)。
【0022】
比較例5
実施例1のHQ段の次亜塩素酸塩を使用しない以外は、実施例1と同様な漂白を行った(Q−P)。実施例1、比較例1〜5の漂白結果を第1表に示す。また、実施例1、比較例1、比較例5でのHQ、H、Q処理後のパルプ中の重金属量を第2表に示す。また実施例1、比較例1〜5の有機ハロゲン化合物(AOX)量を第3表に示す。
【0023】
【0024】
第1表より、HまたはQの一方のみの処理だけでは不十分であった白色度が、双方を同時に用いて処理を行うことのより飛躍的に改善されている。
【0025】
【0026】
第2表より、次亜塩素酸塩、キレート剤単独に比べ、両者を併用した場合に著しい金属除去効果が見られた。特に過酸化物分解活性の強いMnの除去に効果的である。
【0027】
【0028】
第3表より、本発明では非常に少ない有機ハロゲン化合物の排出で高白色度の非木材パルプの漂白が可能である。
【0029】
実施例2〜10
実施例1の次亜塩素酸塩の使用量を0.05%、0.1%、0.2%、0.75%、1.0%、1.25%、1.5%、2.0%、3.0%と変化させた以外は、実施例1と同様に行った。
【0030】
比較例6〜12
キレート剤を使用しない以外は、実施例2〜10と同様に行った。実施例2〜10、比較例6〜12の結果を第4表に示す。
【0031】
【0032】
第4表より、本発明の場合は少ない次亜塩素酸塩量で高白色度のパルプを得る事ができた。また、次亜塩素酸塩の量は0.2以下でも1.0%以上でも重金属の除去効率は低下した。
【0033】
【発明の効果】
本発明によれば、金属含有量の多い非木材パルプの漂白において、効率的に金属を除去し、高白色度の非木材パルプを得る事ができる。その結果、次亜塩素酸塩の使用量を大幅に低減できるため、有機ハロゲン化合物の副生を大幅に軽減させることが可能となり、漂白排水による環境汚染を防止できる。また、本発明の実施にあたっては、現在使用している次亜塩素酸塩の漂白装置にキレート剤を添加するだけでできるので、大きな付加的投資を必要としない。
Claims (4)
- 非木材パルプを次亜塩素酸塩とキレート剤を併用して漂白し、次いで過酸化物で漂白することを特徴とする非木材パルプの漂白方法。
- キレート剤がアミノカルボキシル系キレート剤および一般式(1)で表されるアミノアルキルリン酸系キレート剤から選ばれた少なくとも1種である請求項1記載の漂白方法。
(X2O3PCH2)2・N・[(CH2)m・N・CH2PO3X2]n・CH2PO3X2 (1)
(式中のXは水素、アンモニウムまたはアルカリ金属を示し、mは2〜3の整数、nは0〜3の整数を示す。) - 次亜塩素酸塩が有効塩素換算で絶乾パルプあたり0.2〜1.0重量%である請求項1記載の漂白方法。
- 過酸化物が過酸化水素である請求項1記載の漂白方法。
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