JP4302579B2 - 高強度高導電性電子機器用銅合金 - Google Patents

高強度高導電性電子機器用銅合金 Download PDF

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Description

本発明は高強度高導電性電子機器用銅合金に関する。
端子、コネクタ、スイッチ,リレー等の電気・電子機器用のばね材(コネクタ用材)には優れたばね特性、曲げ性、導電性が要求され、従来からりん青銅等が用いられてきたが、近年では電子部品の一層の小型化の要請から高強度高導電性の合金が開発されている。
一般に、Cuに強化元素を添加して高強度化すると導電率が低下し、一方で導電率を上昇させるためCu純度を高めると低強度となる関係がある。そこで、Cu母相中に第二相を晶出させた合金系(複相合金)が開発された。この合金は、強加工することにより第二相がファイバ状に分散され、りん青銅と同等の強度を持ちつつ、母相はCuであるため、導電率が60%IACS(international annealed copper standard、焼鈍標準軟銅に対する電気伝導度の比)を超える高導電性材が得られている。この複相合金系としては、Cu-Cr、Cu-Fe、Cu-Nb、Cu-W、Cu-Ta、Cu-Agなどが知られている(例えば、特許文献1〜7参照)。
特開平9-249925号公報 特開平10-140267号公報 特開平10-8166号公報 特開平06-192801号公報 特開平06-279894号公報 特開平10-53824号公報 特開平10-349085号公報
ところで、上記従来技術の場合、第二相をファイバ状に延伸するための強加工法として、線引き、圧延等の手段が用いられる。この場合、線材であれば、そもそも線方向の強度しか要求されないので、線引きして第二相を延伸するだけで充分な強度が確保される。
また、特許文献4〜7記載の技術は、上記複相合金により圧延材を製造したものであり、第二相が圧延方向に充分延伸されて繊維状になると、圧延直角方向(圧延材の長手方向に圧延が進むとして、圧延材の幅方向をいう)の強度も向上することが記載されている。
しかしながら、これら文献には、曲げ加工性について記載はない。例えば、コネクタを上記圧延材から採取する場合、コネクタの並ぶ方向を圧延材の長手方向とし、各ピンが圧延材の幅方向に延びるようにしてコネクタを打抜くのが通例であるが、上記圧延直角方向に曲げる場合には、この方向の曲げ加工性が低いと、コネクタへ曲げ加工する際、クラックが発生することがある。このような複相合金での問題は、本発明者らが初めて着目したものであり、従来の複相合金について本発明者らが圧延直角方向の曲げ加工性を調査した結果、曲げ加工性が非常に悪いことが判明した。
本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、材料強度の異方性が低減され、曲げ加工性に優れた高強度高導電性電子機器用銅合金の提供を目的とする。
本発明者らは種々検討した結果、Cu母相中に第二相を晶出させた合金系(以下、「複相合金」と称する)の圧延材において、圧延直角断面から見たときの第二相の平均アスペクト比を規定することで、この方向の強度が向上し、曲げ加工性も改善されることを突き止めた。又、第二相の圧延直角断面及び圧延平行断面から見たときの平均アスペクト比の比率を規定することによっても、圧延直角方向の強度が向上し、曲げ加工性も改善される。
圧延直角断面から見たときに圧延直角方向に第二相を延伸させる方法としては、例えば、圧延時の圧延張力を低くする、延伸後に圧延や熱処理を行わない、等が挙げられる。又、逆に圧延張力を高くし、伸び過ぎた第二相を分断させることによりアスペクト比が低減するので、結果としてアスペクト比を調整できる。
上記の目的を達成するために、本発明の高強度高導電性電子機器用銅合金は、質量%でCr、Fe、及びNbの群から選ばれる1種又は2種以上を合計で7%以上20%以下含有し残部Cu及び不可避的不純物からなる圧延材であって、圧延直角断面から見たとき、Cr、Fe、Nbの群から選ばれる1種又は2種以上を含む第二相の平均アスペクト比Atが10≦At≦80で、曲げ加工性に優れたものである。
前記第二相を前記圧延直角断面から見たときの平均アスペクト比Atと、前記第二相を圧延平行断面から見たときの平均アスペクト比ALとが、1<AL/At<20の関係を満たすことが好ましい。
又、本発明の高強度高導電性電子機器用銅合金は、質量%でAgを7%以上20%以下含有し残部Cu及び不可避的不純物からなる圧延材であって、圧延直角断面から見たとき、Agを60%以上含む第二相の平均アスペクト比Atが10≦At≦80で、曲げ加工性に優れたものである。
前記第二相を前記圧延直角断面から見たときの平均アスペクト比Atと、前記第二相を圧延平行断面から見たときの平均アスペクト比ALとが、1<AL/At<20の関係を満たすことが好ましい。
本発明によれば、材料強度の異方性が低減され、曲げ加工性に優れた高強度高導電性電子機器用銅合金が得られる。
以下、本発明に係る高強度高導電性電子機器用銅合金の実施の形態について説明する。なお、本発明において%とは、特に断らない限り、質量%を示すものとする。
<第1の実施形態>
本実施形態の高強度高導電性電子機器用銅合金は、以下の化学成分からなる圧延材であり、圧延直角断面から見たときの第二相の平均アスペクト比Atを所定の範囲とする合金である。
[化学成分]
化学成分として、上記銅合金はCr、Fe、及びNbの群から選ばれる1種又は2種以上を含有する。これらの元素は、合計で7%以上含有されるとCu母相中に第二相として晶出し、いわゆる「複相合金」を構成する。上記元素の合計含有量は、質量%で7〜20%とする。合計含有量が7%未満であると、第二相による複合強化の効果が少なく、20%を超えると鋳造が困難になる等により生産性が低下する。なお、上記元素が1%未満含有されていても第二相は晶出するが,その量が少ないため複合強化としては不充分であり、複合強化として利用する場合に最低限必要な含有量が7%である。
[不可避的不純物]
上記銅合金中の不可避的不純物の含有量は、JISに規格する無酸素銅と同一であるのが好ましい。例えば、JIS H 2123に規格する無酸素形銅C1011における、不純物の含有量と同等にすることができる。
[第二相]
第二相は、Cu及び上記化学成分を含む合金溶湯から鋳造時に上記元素が晶出したものである。第二相はCr、Fe、及びNbの群から選ばれる1種又は2種以上を含み、通常はこれらの元素を主に含む。上記銅合金が2成分系(添加元素がAのみ)の場合、通常、第二相は主として元素Aを含有する。一方、上記銅合金が3成分系(添加元素がA、Bの2種)の場合、例えば、主としてA及びBを含有する第二相(AB相)が存在してもよく、A又はBをそれぞれ含有する第二相が存在してもよい。すなわち、母相以外の相を第二相とすることとする。4成分系以上の場合も同様である。なお、例えばCu-Fe合金の場合、主としてFeを含有する相が第二相であり、Cu-8Cr-8Nb合金の場合、Cr及び/又はNbを主として含む相が第二相である。第二相は、母相であるCuマトリクス内に例えば針状に晶出するが、晶出形態はこれに限定されない。
第二相は、最終工程終了後の圧延組織の断面を研磨した後、SEM(走査型電子顕微鏡)のBSE(反射電子)像により、母相と異なる組成として観察することができる。組織が観察しにくい場合は、エッチング又は電解研磨を行ってもよい。
[第二相の平均アスペクト比At]
図1は、本発明の合金の圧延材組織を模式的に示したものである。この図において、圧延材組織は、Cu母相2のマトリクス中に第二相4が分散されている。そして、「板幅方向を「圧延直角方向T」とし、板の長手方向を「圧延平行方向L」とする。従来の複相合金の場合、第二相は圧延直角方向には殆ど延伸されずファイバ状である。一方、本発明においては、第二相は圧延直角方向にも延伸され、例えばリボン状(舌片状)の形態を示す。なお、従来から公知の他の複相合金において、圧延直角方向にも第二相が延伸されてリボン状(舌片状)になったものが存在する場合があっても、本発明においては、好ましくは第二相の圧延直角方向の長さは従来の複相合金より長い。
次に、アスペクト比について説明する。アスペクト比は、(第二相の伸長長さ)/(第二相の圧延厚み方向での厚さ)で定義される。従って、圧延直角方向に沿う断面(圧延直角断面)から見たアスペクト比Atは、図1のt2/t1で表される。同様に、圧延平行方向に沿う断面(圧延平行断面)から見たアスペクト比ALは、図1のL2/L1で表される。t2、t1、L2、L1は第二相の断面像から求めることができる。通常、圧延直角断面についてSEMのBSE像を得るが、それぞれの第二相におけるt2、t1は、第二相の像におけるt2、t1の最大値を採用すればよい。ALについても同様である。
一つの第二相のt2、t1から算出されるAtを複数個(たとえば100個)の第二相について測定し、得られたAtの平均値を平均アスペクト比Atとした。平均アスペクト比ALも同様である。
なお、隣接する第二相の間隔(圧延方向の距離)をdとする。Cu−Fe合金、Cu−Cr合金、Cu−Ag合金の場合、dが小さくなるほど、強度が高くなる。dは、圧延加工度を高くすることで小さくすることができる。特に、dが1μm以下である場合、高い強度が得られる。例えば、本実施例中で最も強度が高いCu-Ag系合金のdは600nmである。
[Atの規制範囲]
本実施形態において、Atは10〜80とする。Atが10未満であると、圧延直角方向に第二相があまり延伸されず、この方向の複合強化が不充分となって強度が向上しない。一方、Atが80を超えるのは、製造上難しい。
[Atの調整方法]
通常、圧延を行うと組織は圧延平行方向に延伸されるが、圧延直角方向にはあまり延伸されない。そこで、最終的に管理されるAtの値を考慮し、圧延直角方向に第二相の幅t2が伸びるよう、圧延前に晶出物(第二相)をある程度の大きさまで成長させるなどの方法がある。また、圧延時の圧延方向張力を低くすることにより、圧延平行方向への組織の延伸を弱めて圧延直角方向に第二相を延伸させることができる。
[AL/Atの調整方法]
伸び過ぎた第二相は、総冷間圧延加工度を高くする、延伸前の熱処理により調整する、延伸後に再圧延する、延伸後に熱処理を行う、等で分断することができ、平均アスペクト比ALを小さくすることができる。従って、これらの因子を適宜調整することにより、第二相の平均アスペクト比AL、ひいてはAL/Atを調整できる。
たとえば、まず、熱間圧延後、加工度η=1.39(75%)程度の冷間圧延を施し,その後600〜1000℃の温度域で1〜3時間以上の熱処理を行う(最も好ましくは、800℃,1h以上)ことで、一度圧延平行方向に伸びた晶出物を分断させる。分断した第二相はさらに熱処理を加えるとを大きく成長する。熱処理温度が高いほど、又、熱処理時間が長いほど、Atを大きくすることができる。熱処理前の圧延張力は特に限定されない。
次に、熱処理後に冷間圧延を行うが、Atを大きくするには冷間圧延時の一パスあたりの加工度η=0.16~0.36(15〜30%),好ましくはη=0.29(25%)以下程度と低くし,冷間圧延時にかける張力を80MPa〜300Mpa、好ましくは200MPa以下に抑えるとよい。
[製造]
電気銅又は無酸素銅を主原料とし、上記化学成分その他を添加した組成を溶解炉にて溶解し、インゴットを作製する。インゴットを例えば均質化焼鈍、熱間圧延、冷間圧延、焼鈍、冷間圧延、焼鈍を順次行うことで、圧延材が得られる。冷間圧延は、例えば加工度η=3.5以上で行うことが好ましい。
<第2の実施形態>
本実施形態の高強度高導電性電子機器用銅合金は、化学成分として、上記第1の実施形態に代えて、Agを単独で添加する点が相違するが、他の構成は第1の実施形態と変わるところがないので説明を省略する。なお、第2の実施形態において、第二相はAgを60質量%以上含む。たとえば、本実施形態の第二相の組成としては、凝固が非平衡状態であることから、共晶組成であるAg‐28.1%Cu、Ag中へのCu固溶限を示すAg-8.8%Cuなどの複数の組成が挙げられる。なお、Agが60%未満の第二相は観察されないので下限を60%以上とする。但し、本実施形態の合金において、Cu母相中にはAgは60%未満含有されている(Cu中のAg固溶限は8%)。又、本実施形態の合金は、他の複相合金と比較してAg−rich相にCuを多く含有することが圧延後の組織として違う点である。又、本実施形態の合金の圧延前組織(鋳造組織)については、銅母相が先に晶出するか、Ag以外の第二相が先に晶出するか(Cu-Ag合金の場合Cu相)により、その組織形態が大きく異なる特徴がある。
<第3の実施形態>
本実施形態の高強度高導電性電子機器用銅合金は、上記第1の実施形態の規定に加え、平均アスペクト比AtとALとが1<AL/At<20の関係を満たすが、他の構成は変わるところがないので説明を省略する。AL/Atの比を上記範囲に規定することで、曲げ加工性としてMBR/t≦2.5(安全曲げ半径、日本伸銅協会技術標準JBMA T307、「銅および銅合金薄板条の曲げ加工性評価方法、電気部品用銅および銅合金板条の曲げ加工性の評価方法」)で、強度としてYS(降伏強さ)が700MPa以上の材料が得られ、強度と曲げ加工性をともに満足することができる。
ここで、AL/Atの比を規定した理由について説明する。まず、AL/Atが1以下であると、圧延平行方向に強化されずに逆に強度が低下する。そもそも圧延直角方向への第二相の延伸には限度があり、AL/Atの値が小さいことは、第二相の圧延平行方向への延伸が不充分でALが小さいことを意味し、一方向圧延では製造上難しい。
一方、AL/Atが20以上である場合、圧延直角方向への第二相の延伸が充分でなく、この方向での強度や曲げ加工性が劣化する。この場合に圧延直角方向の曲げ加工を行うと、銅母相と第二相の界面で亀裂が入りやすくなる。
なお、複合則を考えたとき、圧延平行方向の強度を高めるにはALをAtより極めて大きくする必要があり、直角方向の強度を高めるにはAtをALより極めて大きくする必要がある。本発明者らの検討により、圧延平行方向及び圧延直角方向の強度、並びに強度の異方性の緩和という要求をいずれもバランスよく満たす範囲が1<AL/At<20であることが判明した。つまり、Atは圧延直角方向の曲げ加工性を改善できる指標であるが、強度,曲げ加工性の異方性についてはAL/Atを指標とした方がよい。なお、以下の実施例では、Atを管理したものに関しては、1<AL/At<20の関係を満たしていた。
<第4の実施形態>
本実施形態の高強度高導電性電子機器用銅合金は、化学成分として、上記第3の実施形態に代えて、Ag単体を用いる点が相違するが、他の構成は第3の実施形態と変わるところがないので説明を省略する。なお、第4の実施形態において、第二相はAgを60%以上含む。第二相の組成は上記第2の実施形態と同様である。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されない。
本発明は電子機器、例えばコネクタに適用可能である。コネクタは、端子が上記高強度高導電性電子機器用銅合金で構成されている。コネクタは公知のあらゆる形態、構造のものに適用でき、通常はオス(ジャック、プラグ)とメス(ソケット、レセプタクル)からなる。端子は、例えば串状の多数のピンが並設され、他のコネクタと嵌合した際に端子同士が電気的に接触するよう、適宜折り曲げられてバネのようになっていることがある。
次に、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
1.試料の製造
<実施例1〜9>
1<AL/At<20を満たさない例
電気銅に表1に示す組成の元素を添加して真空溶解してインゴットを鋳造し、これを均質化焼鈍後、熱間圧延を施し、さらに面削して冷間圧延し、時効処理後、再度冷間圧延を行い、板厚0.05〜0.3mmの試料を得た。均質化焼鈍を十分に行った(850℃以上の温度で3h以上)。又、冷間圧延(含時効後)の圧延条件として、総加工度η3.56〜5.99(97.1〜99.8%),1パスあたりの加工度をη0.16〜0.29(15〜25%),張力を80〜300MPa(冷間圧延の初期パスでは100MPa、板厚が薄くなった後期パスでは200MPa程度)とした(ここで総加工度とは面削後の全冷間圧延加工度である)。又、一部の試料は、面削後にη1.39未満の冷間圧延を行った後、焼鈍650℃以上の温度で焼鈍を行い、その後再び冷間圧延、時効処理、冷間圧延を順に行った。
<実施例10〜27>
1<AL/At<20を満たす例
電気銅に表1に示す組成の元素を添加して真空溶解してインゴットを鋳造し、これを均質化焼鈍後、熱間圧延を施し、さらに面削して総圧延加工度がη1.39〜3.22(75〜96%)の冷間圧延を行い、伸ばされた第二相を分断するために600〜900℃の焼鈍を行い、さらに冷間圧延、時効、冷間圧延を順に行った。第二相を分断するための焼鈍後の総圧延加工度はη2.66〜5.30(93〜99.5%)であり、1パスあたりの加工度をη0.22〜0.43(20〜35%)とし、張力を80MPa〜300MPa以下とした。
<実施例28〜31 Cu−Ag系>
1<AL/At<20を満たさない例
電気銅に表2に示す組成の元素を添加して真空溶解してインゴットを鋳造し、これを均質化焼鈍後、熱間圧延を施し、さらに面削して冷間圧延し、時効処理後、再度冷間圧延を行い、板厚0.05〜0.3mmの試料を得た。均質化焼鈍を十分に行った(850℃以上の温度で3h以上)。又、冷間圧延(含時効後)の圧延条件として、総加工度η3.56〜5.99(97.1〜99.8%),1パスあたりの加工度をη0.16〜0.29(15〜25%),張力を80〜300MPa(冷間圧延の初期パスでは100MPa、板厚が薄くなった後期パスでは200MPa程度)とした(ここで総加工度とは面削後の全冷間圧延加工度である)。
<実施例32〜39 Cu−Ag系>
1<AL/At<20を満たす例
電気銅に表2に示す組成の元素を添加して真空溶解してインゴットを鋳造し、これを600℃以上の温度で3h以上の条件で均質化焼鈍後、熱間圧延を施した。さらに面削して総圧延加工度がη1.39〜3.22(75〜96%)の冷間圧延を行い、伸ばされた第二相を分断するために400〜600℃の焼鈍を行い、冷間圧延、時効、冷間圧延を順に行った。第二相を分断するための焼鈍後の総圧延加工度はη2.66〜5.30(93〜99.5%)であり、1パスあたりの加工度をη0.22〜0.43(20〜35%)とし、張力を80Mpa〜300MPa以下とした。
2.試料の評価
(1)平均アスペクト比Atの算出
上記試料の圧延直角断面を研磨後(1μmダイヤモンドペースト、但し、第二相が小さく観察し難い場合は電解研磨後)、SEMを用いてBSE像を得た。像においてCu母相と色調が異なる部分を第二相とみなし、第2相の厚みt1、伸長長さt2を求めた。t1、t2は個々の第2相の最大値を採った。像において測定したt1、t2からAtを求め、100個の第2相についてそれぞれ求めたAtを平均した。
(2)強度の測定
JIS-Z2241に従い、圧延直角方向及び圧延平行方向の試料の引張強度を測定し、0.2%耐力(YS:yielding strength)を求めた。試料はJISに従って作製した。
(3)曲げ加工性の測定
JISH3110及びH3130に従い、W曲げ試験を行い、圧延直角方向及び圧延平行方向にそれぞれ延びる10mm幅の試料(t:試料厚さ)について最小曲げ半径(MBR)を求めた。そして、以下の基準で曲げ加工性を評価した。
○:MBR/t≦2.5であるもの
×:MBR/t>2.5であるもの
(4)導電率の測定
四端子法にて、試料の導電率を求めた。単位の%IACS(international annealed copper standard)は、焼鈍標準軟銅に対する電気伝導度の比である。
<比較例1〜12>
電気銅に表3に示す組成の元素を添加して真空溶解してインゴットを鋳造し、これを均質化焼鈍後、熱間圧延を施し、さらに面削して冷間圧延し、時効処理後、再度冷間圧延を行い、板厚0.05〜0.3mmの試料を得た。均質化焼鈍を800℃,3hの条件で行った。又、冷間圧延(含時効後)の圧延条件として、総加工度99%,1パスあたりの加工度を30〜36%,張力を350MPa以上(ただし、冷間圧延の初期パスでは150MPa、板厚が薄くなった後期パスでは375MPa程度)とした。
得られた結果を表1〜表3に示す。
各表から明らかなように、各実施例においては、圧延直角方向の強度が圧延平行方向の強度に近く(圧延直角方向の強度が圧延平行方向の強度の90%以上の値)、強度の異方性が低減された。又、各実施例においては、圧延直角方向と圧延平行方向のいずれも曲げ加工性が優れていた。
一方、比較例1〜12の場合、平均アスペクト比Atが10未満となり、圧延直角方向の強度が圧延平行方向の強度より小さく(圧延直角方向の強度が圧延平行方向の強度のほぼ90%未満)又、各比較例においては、圧延直角方向との曲げ加工性が低下した。このようなことから、平均アスペクト比を10以下とすることが必要なことがわかる。
本発明の合金の圧延材組織を模式的に示した図である。
符号の説明
2 Cu母材
4 第二相

Claims (4)

  1. 質量%でCr、Fe、及びNbの群から選ばれる1種又は2種以上を合計で7%以上20%以下含有し残部Cu及び不可避的不純物からなる圧延材であって、圧延直角断面から見たとき、Cr、Fe、Nbの群から選ばれる1種又は2種以上を含む第二相の平均アスペクト比Atが10≦At≦80である、曲げ加工性に優れた高強度高導電性電子機器用銅合金。
  2. 質量%でAgを7%以上20%以下含有し残部Cu及び不可避的不純物からなる圧延材であって、圧延直角断面から見たとき、Agを60%以上含む第二相の平均アスペクト比Atが10≦At≦80である、曲げ加工性に優れた高強度高導電性電子機器用銅合金。
  3. 前記第二相を前記圧延直角断面から見たときの平均アスペクト比Atと、前記第二相を圧延平行断面から見たときの平均アスペクト比ALとが、1<AL/At<20の関係を満す、請求項1に記載の曲げ加工性に優れた高強度高導電性電子機器用銅合金。
  4. 前記第二相を前記圧延直角断面から見たときの平均アスペクト比Atと、前記第二相を圧延平行断面から見たときの平均アスペクト比ALとが、1<AL/At<20の関係を満たす、請求項2に記載の曲げ加工性に優れた高強度高導電性電子機器用銅合金。
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