JP4301697B2 - ボイラ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はボイラに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来技術による大型ボイラの一例を図7、8を参照して説明する。
ボイラ100は、火炉102と、該火炉102の上方部位に形成された火炉出口に連通するように火炉102に連結された後部煙道104とを具備しており、火炉102の上方の内部空間から後部煙道104へかけて過熱器106a、再熱器106b、節炭器106cが配設されている。火炉102および後部煙道104はその天井において複数の吊り下げボルト110によりボイラ鉄骨108から吊り下げ支持されている。火炉102の比較的下方部位の火炉側壁には複数の燃焼器114が配設されており、燃焼器114から火炉102の内部空間に供給された燃料および燃焼用空気が燃焼し、燃焼ガスが上方へ流動して火炉出口から後部煙道104内へ流出する。燃焼ガスは、後部煙道104から更に煙道112を介して煙突(図示せず)から大気中に放出される。
【0003】
更に図8を参照すると、火炉102の内圧に対して火炉102を補強するために、火炉102の外部に複数のバックステイ116が水平方向に延設されており、該バックステイ116は、火炉102の外面に沿って鉛直方向に延設された複数のサポートプレート112を介して火炉102の外面に固定されている。また、水平方向に隣接するバックステイ116の間は、コーナ金物118およびコーナリンク118aにより、互いに水平方向に移動できるように連結されている。なお、図8において参照番号122は断熱材、124は火炉外装板を示している。
【0004】
また、火炉102において燃焼器114が配設されている領域では燃焼反応に基づく熱放射を直接受けるために、非常に熱負荷が高くなっている。そのために、従来から、火炉102において燃焼空間を包囲する領域では、火炉102を形成する水管内の流体の流速を高め、管内部熱伝達率を高くしている。図8を参照すると、燃焼器114が配設されている領域を画成する水冷壁102bは、複数の水管を鉛直方向から所定角度、例えば19°〜27°傾斜させて互いに平行に配向し隣接する水管をフィンを介して溶接して、前記水管が螺旋状に火炉側壁を巡るように形成すると共に、その上方の熱負荷の比較的低い領域を画成する水冷壁102aは、複数の水管を鉛直方向に互いに平行に配向して隣接する水管をフィンを介して溶接した水冷壁にて形成し、水冷壁102bの水冷壁の各水管を上側の水冷壁102aの水冷壁のうち隣接する2本の水管に接続している。これにより、燃焼器114が配設された領域の水冷壁102の水管内における流体の流速をその上部の水冷壁102における流速の二倍に高めている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
図7のボイラ100では、火炉102の内部空間で生成される高温の燃焼ガスを火炉102の内部で上方へ流動させ、後部煙道104内を上方から下方へ流動させるように構成されているために、過熱器106a、再熱器106b、節炭器106c等の多くの重量物がボイラ100の上方部位に配置される。従って、ボイラ100は上方部位が重く下方部位が軽くなるために、その最上部から吊り下げボルト110によりボイラ鉄骨109に吊り下げ支持しなければならない。そのために、ボイラ100は、地震や風等の外力による水平方向の変位量が、ボイラの下側に行くほど大きくなり、上記外力からボイラを安定的に支持するために多量のダンパを要すると共に、ボイラ鉄骨108も最上部まで頑健な部材にて形成しなければならない。更に、ボイラ100の過熱器106a、再熱器106b、節炭器106c等の多くの重量物をボイラ鉄骨108に吊り下げるための高所作業用のクレーンも大型のものを用いなければなない問題がある。
【0006】
更に、図8において、火炉102の水冷壁102bを形成する水管が鉛直方向から傾斜しているために、その上側の水冷壁102aから吊り下げるように支持することが難しく、特に、水冷壁102bを形成する水管の内圧の鉛直方向成分が、重力の作用する方向と一致するために、水管に水冷壁102bの自重を作用させると水管の破断を招く虞がある。
【0007】
そのために、従来技術では、鉛直方向に延設されたサポートプレート112を水平方向に多数配設し、各サポートプレート112を多数のサポートプレート固定具112aにより水冷壁102bに固定して、水冷壁102bの重量を可及的に均等にサポートプレート112に負荷すると共に、所謂スカラッププレート114を通じて各サポートプレート112に負荷される重量を上側の水冷壁102aに均等に分散、伝達するようにしている。サポートプレート112、サポートプレート固定具112a、スカラッププレート114を構成する多数の部品が必要となり、かつ、その点検、補修作業のために多くの時間と労力が必要となる。
【0008】
本発明はこうした従来技術の問題点を解決することを技術課題としており、重心位置を低減したボイラを提供することを主たる目的としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の本発明は、火炉の下方部位に火炉出口を設け、火炉内部において火炉出口よりも上方に燃焼空間を形成すると共に、炉底高さ以上の高さにおいて火炉出口から後部煙道を概ね水平方向に延設させ、前記後部煙道内に少なくとも過熱器と再熱器とを配設しボイラであって、さらに後述の特徴を有する。
【0010】
請求項1に記載のボイラによれば、後部煙道は火炉の天井よりも炉底の近傍に配置されるので、前記後部煙道内に配置される重量物である過熱器および再熱器を従来技術よりも格段に低い地上高さに配置することが可能となり、ボイラの据付作業が容易になる。特に、後部煙道内に配置される過熱器および再熱器をボイラ鉄骨に吊り下げるためのクレーンとして小型のものを使用可能となる。また、重量物を低位置に配置しているために、請求項1のボイラでは重心位置が低くなり、地震や風に対するボイラの水平方向の安定性も改善される。
【0012】
また、請求項1のボイラにおける前記火炉は、前記燃焼空間を包囲する火炉上部と、前記火炉上部の下側に一体的に形成された火炉下部とを有して成り、前記火炉出口は前記火炉下部に形成される。そして、前記火炉上部は、複数の水管を鉛直方向に対して所定角度傾斜させて互いに平行に配置し、前記水管の各間をフィンにより溶接した水冷壁により形成され、前記火炉下部は複数の水管を鉛直方向に互いに平行に配置し、前記水管の各間をフィンにより溶接した水冷壁により形成される。これにより、放射伝熱の熱流束の高い、つまり熱負荷の高い火炉上部を形成する水管内の流体の流速を高めることが可能となる。
【0013】
更に、従来技術では、水管を斜めに配向した水冷壁と鉛直に配向した水冷壁との間の接続部に多数の補助部材すなわちスカラッププレートを配置して、水管を斜めに配向した水冷壁の自重を、その上部の鉛直に配向した水冷壁に均等に伝達する必要があったものを、請求項1の発明によれば、水管を鉛直に配向した水冷壁から成る火炉下部の上側に、水管を斜めに配向した水冷壁から成る火炉上部を配置することにより、この火炉上部の重量を鉛直に配向した水冷壁から成る火炉下部に担持させることが可能となる。請求項1の発明では、このように、水管を鉛直に配向した水冷壁が水管を斜めに配向した水冷壁を下側から担持しているために、スカラッププレートは不要または非常に少数のスカラッププレートで足り、かつ、長期間にわたり火炉の信頼性を維持可能となる。また、スカラッププレートの数を低減することにより点検、補修作業が軽減される。
【0014】
そして、請求項1の発明においては、前記火炉は、火炉下部の側壁において前記火炉出口と前記後部煙道の天井壁との間の接合部の高さに隣接する領域でボイラ鉄骨に吊り下げ支持する。これにより、上記のように水管を斜めに配向した水冷壁からなる火炉上部を、水管を鉛直に配向した水冷壁からなる火炉下部で支障なく担持できるうえ、前記ボイラの熱変形または熱伸びにより前記火炉出口と前記後部煙道との間の接合部に発生する曲げ応力を除去または可及的に低減可能となる。更に、このように構成することにより、ボイラは低い位置でボイラ鉄骨に吊り下げ支持されるので、ボイラの全重量をボイラの天井から吊り下げ支持していた従来技術と比較して、ボイラの重量を支持するために頑健に形成する必要のあるボイラ鉄骨の部分の高さを実質的に半減することが可能となる。これにより、ボイラ鉄骨全体を高い強度の材料にて形成する必要がなくなり、ボイラ鉄骨の下方部分のみを強度の高いまたは太い材料にて形成し、ボイラの水平方向の揺れまたは振動からボイラを安定させるボイラ鉄骨の上方部分は、強度の低い材料または細い材料を用いることが可能となる。
請求項2の発明によれば、さらに、過熱器および再熱器と共にボイラの製造工場において前記後部煙道を複数のモジュールとして形成し、前記ボイラを据え付ける現場において前記複数のモジュールを互いに接続するようできる。これにより、据付作業が容易になると共に工事期間を短縮可能となる。
【0015】
請求項3の発明によれば、請求項1または2の発明において、前記火炉支持装置は、前記火炉側壁を前記ボイラ鉄骨に対して水平方向に移動自在に吊り下げ支持できるようにする。これにより、火炉の内圧や熱変形または地震、風により火炉側壁が水平方向に移動したときに、火炉支持装置へ作用する力を低減可能となる。
請求項4の発明によれば、さらに、前記火炉支持装置は、火炉下部の水冷壁に取着された板状のベース部材と、一端において前記ベース部材に対して回動自在に連結された吊り下げ棒とを具備し、前記吊り下げ棒が、その他端において前記ボイラ鉄骨に揺動自在に連結されている。
【0016】
請求項5の発明によれば、請求項1から4のいずれかの発明において、前記後部煙道の下流端に絞り部を設け、該絞り部を介して煙道を連結、前記煙道に逆U字状に屈曲した屈曲部を設け有しており、該屈曲部において鉛直上方に延びる部分に節炭器を配置する。これにより、前記火炉の下流側設備の水平方向の長さが低減される。
請求項6の発明によれば、請求項1から5のいずれかの発明において、前記屈曲部における鉛直下方に延びる部分に乾式脱硝装置を配置する。この場合、脱硝用アンモニア水を燃焼ガスに供給するための装置またはノズルを前記乾式脱硝装置の上流側、前記屈曲部の鉛直上方に延びる部分に配置する。これにより前記煙道内の燃焼ガス流に噴霧されたアンモニア水溶液および該アンモニア水溶液から蒸発するアンモニア蒸気は、燃焼ガスと共に前記屈曲部に沿って流れ方向を急激に変化させるために、燃焼ガスへの混合、蒸発作用が促進され、前記乾式脱硝装置における脱硝効率を高めることが可能となり、かつ、燃焼ガス中へ噴霧すべきアンモニア水溶液の流量も低減可能となる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面を参照して本発明の好ましい実施形態を説明する。
本実施形態によるボイラ10は、火炉12と、火炉12の下方部に形成された火炉出口12cから概ね水平に延設された後部煙道14とを具備している。本実施形態おいて後部煙道14は、火炉12の炉底の高さ以上の高さにおいて概ね水平方向に延設されている。これにより、ボイラ10の全高を低減可能となると共に、後述するボイラ鉄骨の高さを低減可能となる。
【0018】
火炉12は概ね直方体形状に形成されており、図2に示すように燃焼空間を包囲する火炉上部12aと、該火炉上部12aの下側に設けられた火炉下部12bとを有し、火炉上部12aの側壁には複数の燃焼器18が設けられている。火炉下部12bは、火炉上部12aと一体となって火炉12を形成しており、破線で示す火炉出口12cを介して後部煙道14に連通している。なお、本明細書において、火炉出口12cと後部煙道14の天井壁との間の接合部12dの高さを基準高さH0 と定義する。
【0019】
火炉12を形成する側壁(火炉側壁)は、複数の水管を平行に配置し、隣接する水管をフィンを介して溶接してパネル状に一体化した所謂水冷壁にて形成することができる。火炉12の天井および炉底を形成する天井壁および炉底壁もまた水冷壁にて形成することができる。火炉側壁を水冷壁にて形成する場合には、一般的に水管を鉛直方向に配向して形成することができる。然しながら、特に、大型ボイラでは、前記燃焼空間における熱放射の熱流束が高いために、水冷壁を形成する水管の内部熱伝達を高めることが望ましい。そこで、本実施形態では、図1、6から理解されるように、火炉下部12bは複数の水管を鉛直方向に互いに平行に配向して隣接する水管をフィンを介して溶接した水冷壁にて形成し、前記燃焼空間を包囲する火炉上部12aを画成する水冷壁は、複数の水管を鉛直方向から所定角度、例えば19°〜27°傾斜させて互いに平行に配向し隣接する水管をフィンを介して溶接して、前記水管が螺旋状に火炉側壁を巡るように形成すると共に、火炉下部12bの水冷壁の水管のうち隣接する2本の水管を火炉上部12aの水冷壁の1本の水管に接続して、火炉上部12aの水管内における流体の流速を火炉下部12bにおける流速の二倍に高めている。
【0020】
図6を参照すると、火炉12の内圧に対して火炉12を補強するために、火炉12の外部に複数のバックステイ38が水平方向に延設されており、該バックステイ38は、火炉12の外面に沿って鉛直方向に延設された複数のサポートプレート44を介して火炉12の外面に固定されている。また、水平方向に隣接するバックステイ38の間は、コーナ金物46およびコーナリンク46aにより、互いに水平方向に移動できるように連結されている。なお、図6において参照番号50は断熱材、52は火炉外装板を示している。
【0021】
ここで、従来技術によるボイラ100では、水冷壁102bの重量を均等に上側の水冷壁102aに伝達するために非常に多数のサポートプレート112が配設されているが、本実施形態によれば、サポートプレート44は主として火炉12の内圧をバックステイ38に伝達するための部材であるので、従来技術と比較して格段に少数のサポートプレートで足りる。また、本実施形態では、従来技術で説明したスカラッププレートは設けられていない。
【0022】
後部煙道14には燃焼ガスの流れ方向に上流から下流へ一次過熱器16a、二次過熱器16b、三次過熱器16c、二次再熱器16d、一次再熱器16eが順次配設されている。本実施形態では、節炭器は、後部煙道14の下流側に接続された煙道15に配置されている。火炉12および後部煙道14はボイラ鉄骨20により吊り下げ支持されており、ボイラ鉄骨20は、火炉12および後部煙道14の重量を支持する下部鉄骨20aと、火炉上部12aを主として水平方向に保持する上部鉄骨20bを有している。
【0023】
後部煙道14は、その最下流に設けられた絞り部14aを介して煙道15に接続されている。煙道15は、絞り部14aの下流側で鉛直上方へ屈曲した後に鉛直下方へ屈曲して逆U字状に形成された屈曲部15aを有しており(図3参照)、この屈曲部15aにおいて鉛直上方へ延びる部分には節炭器26が配設され、下流側の鉛直下方へ延びる部分に乾式脱硝装置22および再生式空気予熱器24が配設されている。煙道15において乾式脱硝装置22の上流側、好ましくは、屈曲部15aの鉛直上方に延びる部分において節炭器26の下流側に、脱硝用アンモニア水を燃焼ガスに供給するためのアンモニア水供給装置としてアンモニア水ノズル22aが配設されており、アンモニア源(図示せず)からのアンモニア水溶液が煙道15内の燃焼ガス流へ噴霧される。更に、煙道15は、再生式空気予熱器24から更に図3の紙面に対して垂直方向に屈曲して煙突(図示せず)に接続されている。
【0024】
以下、特に図4、5を参照して火炉12の吊り下げ支持構造を説明する。
既述の説明から明らかなように、ボイラ10は、従来技術によるボイラ100と異なり、後部煙道14が火炉下部12bに連結されている。そのために、従来技術と同様に火炉12の天壁からボイラ10を吊り下げ支持すると、ボイラ10の熱変形による鉛直方向の変位は火炉12の底部において最大となり、火炉出口12cと後部煙道14の天井壁との間の接合部12dに非常に大きな曲げ応力を生じる。このボイラ10の熱変形により接合部12dに発生する曲げ応力を除去または可及的に低減するために、火炉12は、火炉下部12bの側壁において基準高さH0 に可及的に近い高さで後述する吊り下げ支持装置によりボイラ鉄骨20に吊り下げ支持されている。特に本実施形態では、この吊り下げ装置を取着すべき部位として、火炉下部12bの側壁において後部煙道14の上側直近部位を選択している。より詳細には、火炉下部12bの側壁において、後部煙道14の上面に形成された作業用空間である所謂ペントハウス42の天井面42aの上方部位を選択している。
【0025】
図5を参照して、ボイラ10の吊り下げ支持装置を説明する。
吊り下げ支持装置は、ボイラ鉄骨20に取り付けられた鉄骨側ブラケット32、ボイラ10の火炉下部12bの側面に取り付けられたボイラ側ブラケット36、鉄骨側ブラケット32とボイラ側ブラケット36の間を連結する吊り下げ棒34を具備し、火炉下部12bの四囲を包囲する火炉側壁に沿って複数設けられている。ボイラ側ブラケット36は、ボイラ10の火炉下部12bの側面に取り付けられるベース部材36cと、該ベース部材36cに連結されている一対のブラケット部材36aとを具備しており、吊り下げ棒34は、その一端においてピン36dによりブラケット部材36aに回動自在に連結されている。吊り下げ棒34は、他端において球面座34aにより鉄骨側ブラケット32に対して揺動自在に連結されている。特に、本実施形態では、火炉12は、平行に所定間隔で平行に配設された水管12eの各間をフィン12fにて溶接、一体化した水冷壁により画成されており、隣接する水管12eの間にパッド36cが掛け渡され水管12eに溶接されており、ベース部材36bがパッド36cに溶接されている。
【0026】
以下、本実施形態の作用を説明する。火炉上部12aは図2に示すように燃焼空間を包囲しており、該燃焼空間において燃焼器18からの燃料および燃焼用空気が混合、燃焼する。火炉12では、主として燃焼空間で生成された高温の燃焼ガスからの放射熱により火炉12を画成する水冷壁の水管を流通する水が加熱され蒸発する。こうして生成された燃焼ガスは、放射伝熱により温度を低下させつつ前記燃焼空間から火炉下部12bへ向け下方へ流動し、火炉出口12cから後部煙道14へ流入する。
【0027】
後部煙道14に流入した燃焼ガスは、熱交換器16a〜16eとの熱交換により蒸気を加熱して温度を低下させながら、絞り部14aから煙道15へ流入する。既述したように、後部煙道14は従来技術と比較して格段に低い位置に配置されるので、その内部に配設される過熱器および再熱器、すなわち熱交換器16a〜16eと共に製造工場において複数のモジュールとして形成し、ボイラ10を設置する現場において前記複数のモジュールを互いに接続して組み立てることができる。その際に使用するクレーンも従来技術のようにモジュール化された煙道をボイラの最上部の近傍まで吊り下げる必要がないので、比較的小型のクレーンを用いることができる。
【0028】
煙道15に流入すると、燃焼ガスは絞り部14aの下流側で煙道15の鉛直上方へでは、先ず、節炭器26との熱交換により水を加熱して燃焼ガスの温度が更に低下する。節炭器26は、節炭器26の下流側における燃焼ガスの温度が乾式脱硝装置22における脱硝作用に最適な温度となるように伝熱面積を決定されている。燃焼ガスは節炭器26から更に下流へ流動し、アンモニア水ノズル22aからのアンモニア水溶液の噴霧を受け、アンモニア蒸気を含有して乾式脱硝装置22へ流入する。乾式脱硝装置22では、燃焼ガスは触媒との接触を通じて脱硝作用を受け、次いで、再生式空気予熱器24において押し込み通風ファン30からの空気を加熱してその温度を更に低下して煙突から大気中に排出される。
【0029】
本実施形態では、煙道15を逆U字形に屈曲させた屈曲部15aを設けて、乾式脱硝装置22を屈曲部15aの鉛直下方へ延びる部分に配設すると共に、アンモニア水ノズル22aを屈曲部15aの鉛直上方へ延びる部分において節炭器26の下流側に配設している。これにより煙道15内の燃焼ガス流に噴霧されたアンモニア水溶液および該アンモニア水溶液から蒸発するアンモニア蒸気は、燃焼ガスと共に屈曲部15aに沿って流れ方向を急激に変化させるために燃焼ガスへの混合、蒸発作用が促進され、乾式脱硝装置22における脱硝効率を高めることが可能となり、かつ、燃焼ガス中へ噴霧すべきアンモニア水溶液の流量も低減可能となる。
【0030】
また、本実施形態によるボイラ10のように、後部煙道14を火炉12の炉底近傍から炉底の高さ以上の空間において概ね水平に延設させた構成では、後部煙道14の水平方向の長さが必然的に長くなるために、後部煙道14および煙道15を含めた火炉12の下流側設備の設置面積が大きくなる。本実施形態では、節炭器26を屈曲部15aに配置することにより、火炉12の下流側設備の水平方向の長さを低減している。
【0031】
既述の説明から明らかなように、本実施形態による火炉12は、燃焼領域を包囲する火炉上部12aと、該火炉上部12aの下側に一体的に連結される火炉下部12bとを有し、好ましくは、火炉上部12aは水管を斜めに配向した水冷壁より形成され、火炉下部12bは水管を鉛直に配向した水冷壁により形成されている。こうした構成により、放射伝熱の熱流束の高い火炉上部12aを形成する水管内の流体の流速を高める効果を奏する。更に、本実施形態のように、水管を鉛直に配向した水冷壁から成る火炉下部12bの上側に、水管を斜めに配向した水冷壁から成る火炉上部12aを配置することにより、火炉上部12aの重量を火炉下部12bに担持させることが可能となる。
【0032】
他方、図に示すような従来技術によるボイラ100では、燃焼空間は、火炉102内の下方領域に形成されるので、火炉102の下方部の側壁を本実施形態の火炉上部12aの水冷壁の如く水管を斜めに配向、形成した水冷壁により形成しなければならない。つまり、水管を斜めに配向した水冷壁は、鉛直に配向した水冷壁から吊り下げられることとなる。このように、水管を斜めに配向した水冷壁を鉛直に配向した水冷壁から吊り下げ支持すると、重力の方向と水管内圧の作用する方向が一致するために、水管には重力と水管内圧とが重畳作用する。そのために、従来技術によるボイラ100では、水管を斜めに配向した水冷壁と鉛直に配向した水冷壁との間の接続部に多数の補助部材すなわちスカラッププレートを配置して、水管を斜めに配向した水冷壁の自重を、その上部の鉛直に配向した水冷壁に均等に伝達しなければならない。
【0033】
本実施形態では、既述したとおり、水管を鉛直に配向した水冷壁が斜めに配向した水冷壁を下側から担持しているために、スカラッププレートは不要または非常に少数のスカラッププレートで足り、かつ、長期間にわたり火炉12の信頼性を維持可能となる。また、スカラッププレートの数を低減することにより、点検、補修作業が軽減される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明実施形態によるボイラの一部を判断して示す斜視図である。
【図2】図1のボイラの側断面図である。
【図3】煙道の側断面図である。
【図4】図1のボイラの火炉と後部煙道の部分拡大断面図である。
【図5】火炉支持装置の詳細図であり、(a)は側面図、(b)は正面図、(c)は火炉支持装置のパッドを示す図である。
【図6】図1のボイラの炉壁コーナ部の拡大斜視図である。
【図7】従来技術によるボイラの側断面図である。
【図8】図7のボイラの炉壁コーナ部の拡大斜視図である。
【符号の説明】
10…ボイラ
12…火炉
12a…火炉上部
12b…火炉下部
14…後部煙道
16a…一次過熱器
16b…二次過熱器
16c…三次過熱器
16d…二次再熱器
16e…一次再熱器
18…燃焼装置
20…ボイラ鉄骨
20a…ボイラ鉄骨下部
20b…ボイラ鉄骨上部
22…乾式脱硝装置
24…再生式空気予熱器
26…節炭器

Claims (6)

  1. 火炉の下方部位に火炉出口を設け、火炉内部において火炉出口よりも上方に燃焼空間を形成すると共に、炉底高さ以上の高さにおいて火炉出口から後部煙道を概ね水平方向に延設させ、前記後部煙道内に少なくとも過熱器と再熱器とを配設したボイラであって、
    前記火炉は、前記燃焼空間を包囲する火炉上部と、前記火炉上部の下側に一体的に形成された火炉下部とを有し、前記火炉出口が前記火炉下部に形成され、
    前記火炉上部が、複数の水管を鉛直方向に対して所定角度傾斜させて互いに平行に配置し、前記水管の各間をフィンにより溶接した水冷壁により形成され、前記火炉下部が複数の水管を鉛直方向に互いに平行に配置し、前記水管の各間をフィンにより溶接した水冷壁により形成され、
    前記ボイラは、前記火炉下部の側壁において前記火炉出口と前記後部煙道の天井壁との間の接合部の高さに隣接する領域でボイラ鉄骨に吊り下げ支持するための複数の火炉支持装置を具備して成ることを特徴とするボイラ。
  2. 前記後部煙道は、その内部に配設される過熱器および再熱器と共に製造工場において複数のモジュールとして形成され、前記ボイラを設置する現場において前記複数のモジュールを互いに接続して組み立てられる請求項1に記載のボイラ
  3. 前記火炉支持装置が、前記火炉下部の側壁を前記ボイラ鉄骨に対して水平方向に移動自在に吊り下げ支持する請求項1または2に記載のボイラ。
  4. 前記火炉支持装置が、火炉下部の水冷壁に取着された板状のベース部材と、一端において前記ベース部材に対して回動自在に連結された吊り下げ棒とを具備し、前記吊り下げ棒が、その他端において前記ボイラ鉄骨に揺動自在に連結されている請求項に記載のボイラ。
  5. 前記後部煙道の下流端に絞り部を設け、該絞り部を介して煙道が連結されており、前記煙道が逆U字状に屈曲した屈曲部を有しており、節炭器が、前記屈曲部において鉛直上方に延びる部分に配置されている請求項1からの何れか1項に記載のボイラ。
  6. 前記後部煙道の下流端に絞り部を設け、該絞り部を介して煙道が連結されており、前記煙道が逆U字状に屈曲した屈曲部を有しており、乾式脱硝装置が、前記屈曲部において鉛直下方に延びる部分に配置され、前記屈曲部の鉛直上方に延びる部分にアンモニア水供給装置が配設されている請求項1からの何れか1項に記載のボイラ。
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