JP4297418B2 - ホースライン式打撃掘削装置及び打撃掘削方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、孔内において流体で作動するハンマ機構部を用いた打撃掘削装置に関し、更に詳しく述べると、地上の流体制御装置と孔内の掘削装置本体とを流路として連結するホースを利用し、その巻き上げ・巻き下ろしによって掘削装置本体を昇降し、効率よく迅速に作業が行えるようにしたホースライン式打撃掘削装置に関するものである。この技術は、地盤の掘削の他、例えば地盤試料の採取、地盤の特性評価、構造物の基礎となる杭の打設などに有用である。
【0002】
【従来の技術】
構造物を構築する際には、予め地盤の地質構造や力学的特性を把握して適切な構造物設計を実施する必要がある。そのための地盤調査としてボーリングが多用されている。周知の通り、ボーリング機械には、ロータリ式や打込み式、あるいはそれらを併用した形式があるが、調査を目的とする場合には、ロータリ式が多く使用されている。
【0003】
ロータリ式ボーリング機械の多くは、ボーリングロッドの先端にコアチューブを接続し、それらを回転させながら地盤に押し込むことで掘削を行う方式(ロッド方式)である。この方式は、地盤試料の採取やボーリング孔を利用した原位置試験等を行う場合、ロッドの昇降を繰り返すことになり、深度が進むに従い作業効率が悪くなる。このため、深度の深い大規模な調査ボーリングでは、ロッドの昇降の手間を省いたワイヤライン工法を利用することがある。この工法は、アウタチューブ(ワイヤラインロッド)内先端に着脱自在なインナチューブを孔口より落下させて設置し、所定の深度まで掘削してインナチューブ内に地盤試料を取り込んだ後、ワイヤとその先端に接続されているオーバーショットを利用してインナチューブをウインチで引き上げるもので、ロッド方式に比べると掘削時の作業効率は大幅に向上する。しかし、太いアウタチューブを掘削深度まで挿入するため、機材が大型となり掘削前の段取りに時間を要することやコストが増加することなどから、小規模な調査で利用することは少ない。
【0004】
ロータリ式と打込み式を併用した形式のボーリング機械には、ロータリパーカッションドリル(以下RPDと略記する)あるいはダウンザホールハンマ(以下DTHと略記する)等がある。RPDは地上に打撃力を発生させるドリルヘッドを持ち、それを油圧や空圧で作動させる。掘削方式はロータリ式と同様で、ロッド方式やワイヤライン方式があり、掘屑は掘削流体を利用して地上に排出する。この機械は、打撃機構が地上にあるため、打撃に伴い発生する騒音が大きな問題となる。DTHは、回転力を地上で発生させ、打撃力を孔内で発生させる。打撃機構はコアチューブや掘削刃の直上に設置し、地上からロッドを通して送られる空圧により作動させる。掘削方式は主にロッド方式であるが、ワイヤライン方式も開発されており、掘屑は打撃機構を作動させる空気を利用して地上へ排出させる。この機械は、孔内で打撃を行うためRPDと比較すると騒音は大きく減少するが、空気と共に地上へ噴出する掘屑の処理に労力を要している。
【0005】
これらRPDおよびDTHの打撃機構は、シリンダライナー内のハンマーピストンが圧力流体(油圧、空圧)の供給により往復運動をおこし、このハンマーピストンが直接ロッドや掘削刃を打撃する方式となっている。打撃のエネルギを大きくしたい場合は、高い能力を持った油空圧装置や大型の打撃機構を必要とし、機械全体が大型化する。何れの機械も主に岩盤や転石を含む地盤を早く掘削することを目的としており、小さな打撃力を数多く地盤へ伝えることで、岩を細かく破砕しながら掘進するものである。また、調査よりもアンカーの設置や発破孔の掘削などの工事に多く利用されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、地盤の地質構造や力学的特性を把握するために、地盤試料の採取や原位置試験を同時に行う簡便な手法として、標準貫入試験が多用されている。しかし、標準貫入試験を伴うロータリ式ボーリングでは、ロッドの昇降を頻繁に行う必要があり、その作業に時問と労力を要する。また、確実な試料採取や試験を行うためには、掘削中に泥水を循環させ掘屑の排除や孔壁の崩壊を防止する必要があり、これには作業者の経験や技量を要する。泥水は産業廃棄物であり、その処理の煩わしさや環境への影響も問題となる。
【0007】
泥水などの掘削流体を使用せずに迅速にボーリング調査を行うためには、ケーシングを連行して孔壁の崩壊を防止しながら地盤試料の採取を行うことが考えられる。しかし、そのような方法では孔壁とロッドの間に大きな摩擦力が生じるため、通常のロータリ式ボーリング機械では掘削が困難である。そこで、大きな打撃力をロッドや掘削刃に与えながら掘削することを検討したが、従来の打撃を併用したボーリング機械は、大きな打撃エネルギを発生させるために機械や装備を大型化する必要があり、一般のボーリング調査への適用は難しい。また、打撃貫入によって地盤の力学的特性を把握するためには、単発の打撃が可能で、且つ安定したエネルギを発生させるハンマ機構部が望まれる。さらに、騒音の発生を抑制するためには孔内で打撃することが必要である。このような要望に対応できない。
【0008】
本発明の目的は、掘削の作業効率が高く、多くの場合掘削流体を使用せずに済み、環境に対する負荷が少ない打撃掘削装置を提供することである。本発明の他の目的は、孔内に挿入する打撃掘削装置本体を小型化でき、良好な試料を採取できる打撃掘削装置を提供することである。本発明の他の目的は、単発打撃を可能とし、そのため貫入試験や弾性波による地盤評価に利用可能な打撃掘削装置を提供することである。本発明の更に他の目的は、鉛直孔のみならず、斜孔や水平孔などでの貫入試験も可能な打撃掘削装置を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、流体で作動するハンマ機構部と該ハンマ機構部の下方に位置し地盤を掘削する掘削刃とを具備して孔内に挿入される掘削装置本体と、地上に設置した流体制御装置と、掘削装置本体と流体制御装置との間を流路として連結する柔軟性を有するホースを備え、該ホースもしくはホースに付随したワイヤの上下によって掘削装置本体を孔内で昇降自在としたことを特徴とするホースライン式打撃掘削装置である。圧力流体の流路となっているホースを利用して掘削装置本体を孔内で昇降させることから、「ホースライン式」と称している。
【0010】
孔内に外套管を挿入し、掘削装置本体は該外套管内で昇降可能とする。ここで掘削装置本体は、外套管に対して結合・離脱可能なクランプ機構部を具備しており、掘削装置本体のハンマ機構部は、ホース内を流路とする圧力流体で作動するシリンダと、該シリンダのピストンロッド先端に設けた把持部と、該把持部によって掴み離しされるハンマと、把持部によって掴んだハンマの上昇で弾撥力が蓄えられるスプリングとを具備し、把持部によるハンマの解放時にスプリングの弾撥力でハンマを駆動し打撃力を掘削刃に作用させると共にクランプ機構部による外套管との結合によってスプリングの反力を支えるようにする。鉛直孔を掘削する場合には、ハンマの自重も打撃力として加わる。
【0011】
掘削装置本体のハンマ機構部は複動シリンダ型が好ましい。ホースは、2本のホースを並べてもよいが、外ホースと内ホースの同軸2重構造とし、内ホース内の流路と、内ホースと外ホースの間の流路とを形成し、一方がシリンダ内の一方の領域と、他方がシリンダ内の他方の領域と連通しているようにするのが好ましい。
【0012】
また、ハンマ機構部の下方に位置する掘削刃を、外周に突起部の無い円環状の試料採取用として、外套管の先端部に対して出入り自在とすると、該掘削刃の上部に地盤試料採取管を接続することで地盤試料の採取が可能となる。
【0013】
掘削装置本体の外側に位置する外套管を、先端部に小内径の刃先を有する形状とし、他方、掘削装置本体の掘削刃は外周に突起部を有する形状の外套管連行用であって、該突起部が小内径部分と係合することで掘削刃の外套管先端からの突出長さが制限されるようにし、それによって掘削装置本体による打撃力を外套管に伝達可能とすると、掘削装置本体の進行と共に外套管が連行され、且つ該外套管を残して掘削装置本体のみ上昇可能となる。従って、構造物の基礎となる杭を外套管として使用すると、基礎杭の打設が行えることになる。
【0014】
本発明の打撃掘削装置では、掘削装置本体の掘削刃として、外周に突起部の無い円環状の試料採取用、外周に突出部を有する円環状の外套管連行用、外周に突起部の無い中実コーン状の打撃貫入用、外周に突出部を有する中実コーン状の外套管連行用のいずれかを自由に選択して装着可能とするのが好ましい。このような構成とすると、地盤試料の採取が不要な場合は中実コーン状の掘削刃を用いて打撃掘削でき、地盤試料の採取が必要な場合は円環状の掘削刃を用いて採取が行える。硬い地盤の場合には円環状の掘削刃を用いて掘屑を回収でき、軟らかい地盤の場合には中実コーン状の掘削刃を用いて押し広げるように掘削できる。
【0015】
また本発明は、このようなホースライン式打撃掘削装置を使用し、試料採取用の掘削刃を装着した掘削装置本体によって試料採取管を地盤に打ち込み試料を採取し、引き抜いて地盤試料を回収し、掘削刃を外套管連行用に交換して掘削装置本体によって外套管を連行しながら地盤に打ち込み掘屑を採取し、掘削装置本体を引き抜いて掘屑を回収することを繰り返して地盤を掘削することを特徴とする打撃掘削方法である。あるいは、打撃貫入用の掘削刃を装着した掘削装置本体によって試料採取管を地盤に打ち込み、掘削刃を外套管連行用に交換して掘削装置本体によって外套管を連行しながら地盤に打ち込むことを繰り返して地盤を掘削することを特徴とする打撃掘削方法である。なお、地盤試料の採取と外套管の連行を可能とする掘削刃を装着することにより、地盤試料を採取しながら外套管を連行する構成も可能である。
【0016】
本発明に係るホースライン式打撃掘削装置は、掘削装置本体の孔内位置を検出する深度計を設置し、任意の位置で任意の方向に単発の打撃力で掘削刃を地盤に貫入させると、その貫入抵抗から地盤の特性を評価するのに使用できる。また、地盤に地震計を設置し、孔内の任意の位置でハンマ機構部を作動させると、掘削刃が地盤に与える打撃力により発生する弾性波の伝達を監視して地盤の特性を評価するのにも使用できる。
【0017】
【実施例】
図1は、本発明に係るホースライン式打撃掘削装置の一実施例を示す全体構成図である。この打撃掘削装置は、地上に設置したロータリ式ボーリング機械10と、ボーリング孔12に挿入する掘削装置本体14と、地上に設置した流体制御装置16と、掘削装置本体14と流体制御装置16との間を流路として連結する柔軟性を有するホース18と、該ホース18を巻き上げ巻き降ろしするために地上に設置したホースドラム(ウインチ)20などを備えている。
【0018】
ここではボーリング孔内に外套管22を挿入するように構成しており、その外套管22の連結などにロータリ式ボーリング機械10を使用している。従って、本発明においてロータリ式ボーリング機械10は必須ではない。外套管22は、先端部に小内径の刃先22aを取り付けた構造である。流体制御装置16は、ポンプやバルブユニットなどを備え、圧力流体を制御可能なシステムである。圧力流体としては、油や空気などでもよいが、水を使用することが好ましい。
【0019】
掘削装置本体14は、外套管22に対して結合・離脱可能なクランプ機構部24と、流体で作動するハンマ機構部26と、該ハンマ機構部26の下方に接続される地盤試料採取管28と、該地盤試料採取管28の下端に位置し地盤を掘削する掘削刃30を具備している。クランプ機構部24は、下方への移動は許容するが、上方への移動は阻止する機能を有するものであり、例えばボール・コーン形式のワンウエイクラッチなどでよい。掘削刃30は、外周に突起部の無い円環状の試料採取用、外周に突出部を有する円環状の外套管連行用、外周に突起部の無い中実コーン状の打撃貫入用、外周に突出部を有する中実コーン状の外套管連行用のいずれかを用途や必要に応じて自由に選択し装着可能とする。
【0020】
掘削装置本体のハンマ機構部は、2箇所の流路からなる複動シリンダ型、あるいは1箇所の流路からなるスプリングリターン式の単動シリンダ型など任意であってよい。スプリングリターン式の単動シリンダ型は、ホースが1本(流路が1箇所)でよく、構造が単純であるが、ピストンロッドの戻りを直接確認できず確実性の点で難がある。そのため複動シリンダ型が好ましい。その一例を図2に示す。このハンマ機構部は、複動シリンダ型の例であり、圧力流体で上下動するシリンダ40と、該シリンダ40のピストンロッド42の先端に設けた把持部44と、該把持部44によって掴み離しされるハンマ46と、把持部44によって掴んだハンマ46の上昇で弾撥力が蓄えられるスプリング48とを具備している。
【0021】
シリンダ40の外側は間隔をおいてシリンダ外套管50が取り囲み、その上下両端に上端栓52と下端栓54が設けられる。上端栓52にはホース18が接続され、下端栓54はピストンロッド42が貫通可能となっている。ここでホース18は、外ホース18aと内ホース18bの同軸2重構造であり、内ホース内の流路と、内ホースと外ホースの間の流路が形成されている。そして、内ホース内の流路がシリンダ内の上方領域と連通するように上端栓52に流路が形成され、内ホースと外ホースの間の流路がシリンダ40とシリンダ外套管50の間の空間を介してシリンダ内の下方領域と連通するように、上端栓52及びシリンダ下端壁に流路及び流路穴が形成されている。この実施例では、このように同軸2重構造のホース18で必要な2つの流路を確保している。
【0022】
下端栓54の下方にはハンマ案内管56が設けられ、該ハンマ案内管内を移動可能にハンマ46が収容される。そして、ハンマ46と下端栓54との間に、ハンマ案内管56の内周面に沿ってコイルスプリング48が装着されている。ピストンロッド42の先端に取り付けられている把持部44は、拡開する向きに弾撥力が付与されるようなバネ方式であり、それに対向するハンマ46の中央部には把持部44が拡開した状態で収まる嵌合凹部46aが形成されている。把持部44が嵌合凹部46aに押し込まれた状態では該把持部44が拡開してハンマ46を掴むことができ、把持部44が下端栓54内に引き込まれた状態では該把持部44が狭閉してハンマ46を離すことができる構成である。把持部44によるハンマ46の解放時に、重力とスプリング48の弾撥力とでハンマ46がアンビル58の上部に衝突して打撃力を掘削刃に作用させる。
【0023】
このハンマ機構部の作動順序を以下に示す。まず、地上の流体制御装置より内ホース18bを通ってシリンダ内の上方領域に圧力流体を送ると、ピストンロッド42は押し下げられる(図2のA参照)。この時、シリンダ内の下方領域に溜まっている流体は、シリンダ40とシリンダ外套管50および内ホース18bと外ホース18aがなす空間を流路として流体制御装置へ戻される。ピストンロッド42のストロークエンド(シリンダ下部)で把持部44がハンマ46の嵌合凹部46aに進入し、入口部で一旦狭閉し、更に進入することで拡開してハンマ46を掴む(図2のB参照)。
【0024】
次に、流体制御装置より内ホース18bと外ホース18a、及びシリンダ40とシリンダ外套管50がなす空間を流路としてシリンダ内の下方領域に圧力流体を送ると、ピストンロッド42及びそれに把持部44で連結したハンマ46が押し上げられる(図2のC参照)。この時、下端栓54とハンマ46の間に設置されているスプリング48が圧縮される。また、シリンダ内の上方領域に溜まっている流体は、内ホース18bを介して流体制御装置に戻される。ピストンロッド42のストロークエンド(シリンダ上部)で、把持部44が下端栓54に入り込むために狭閉し、そのためにハンマ46が切り離される。切り離されたハンマ46は、その自重とスプリング48の弾撥力によってアンビル58に衝突する(図2のD参照)。
【0025】
この時の打撃力が、アンビル58の下方の掘削刃に伝達され、掘削装置本体は地盤に貫入する。なお、図2のDにおいて、スプリングによる打撃力を作用させるに際しては、スプリングの反力によって掘削装置本体が上昇しようとすると、クランプ機構部によって掘削装置本体が外套管に固定されるため、スプリングによる打撃力は掘削刃に有効に作用することになる。以上の動作を繰り返し行うことによって、地盤掘削が行われる。従って、バネ定数の異なるスプリングに置き換えたり、あるいはハンマの解放位置を調整することで、打撃力を制御することができる。ハンマの解放位置を調整するには、例えば下端栓にピストンロッド貫通穴を延ばすような円筒状アダプタを取り付ければよい。
【0026】
図1の実施例では、掘削装置本体14から櫓60の頂部に至るようにワイヤ62が設けられており、地盤の貫入抵抗を評価するために櫓頂部の滑車の回転からワイヤの繰り出し量を検出する深度計64を設けている。また、弾性波による動的特性を評価するために地表面に1個乃至複数個のS波速度検出用の地震計66を配置している。更に、それらの計器からの測定データを記録するための測定器68なども設置している。
【0027】
図3に、本発明に係るホースライン式打撃掘削装置による地盤掘削の手順の一例を示す。この例は、地盤試料を採取する場合である。以下の工程A〜工程Fの説明は、図3のA〜Fに対応している。
工程A:地盤試料採取管28の下端に地盤試料採取用の掘削刃30aを装着しておく。この掘削刃30aは、外周に突起部の無い円環状であって、外套管22の先端部に対して出入り自在の構造である。クランプ機構部24、ハンマ機構部26、地盤試料採取管28、掘削刃30aからなる掘削装置本体14を、地上に設置した流体制御装置に連結しているホース18により外套管22内に吊り下げ、孔底まで降ろす。
工程B:流体制御装置からホース18を介して送られた圧力流体によりハンマを作動させ、所定の深度まで掘削装置本体14のみを地盤に打撃貫入し、地盤試料採取管28内に地盤試料70を取り込む。
工程C:地盤に貫入した掘削装置本体をホースにより地上へ引き上げ、地盤試料を回収する。
工程D:掘削装置本体の掘削刃を外套管貫入用に付け替える。この掘削刃30bは、円環状であるが、外套管22の先端部(小内径部分)に対して係合する外周突起部を備え、そのため一定長さ以上下方に突出できない構造である。掘削刃30bに交換した掘削装置本体14をホース18により外套管22内に吊り下げ、外套管先端部に設置する。
工程E:流体制御装置からホース18を介して送られる圧力流体によりハンマを作動させ、その打撃力を掘削刃30bに伝達する。掘削刃30bは外套管22先端部と係合しているため、外套管22も連行される。これによって前記地盤試料の採取深度まで外套管22を貫入する。また、この時発生する掘屑は地盤試料採取管28内に取り込まれる。
工程F:掘削装置本体14をホース18により地上へ引き上げ、地盤試料採取管28内に取り込まれている掘屑を回収する。
【0028】
これらの工程A〜工程Fの操作を繰り返し行うことにより、所定深度まで掘削すると共に、各深度の地盤試料を採取することができる。なお、掘削刃30a,30bには、地盤試料の採取や掘屑の回収を確実に行えるように、必要に応じて内周部に板バネなどからなるコアキャッチャを組み込んでもよい。
【0029】
上記打撃掘削方法において、地盤状況によっては、図3のD〜Fの工程のみでも地盤試料の採取を伴った掘削が可能である。その際、図示しないが、外套管を貫入するための外周に突起のある地盤試料採取用の掘削刃を装着する。また、外套管による掘屑が地盤試料採取管内に取り込まれないように、掘削刃を必要量外套管先端から突出させるなどの配慮を施す。更に、貫入部分の断面積が大きい場合には、必要に応じてスプリングを強化する。
【0030】
図4は、本発明に係る打撃掘削装置による地盤掘削の手順の他の例を示している。この例は、地盤試料を採取せずに単に掘削する場合である。以下の工程A〜工程Fの説明は図4のA〜Fに対応している。
工程A:地盤試料採取管28の下端に打撃貫入用の掘削刃30cを装着する。この掘削刃30cは、中実コーン状であって、外套管22の先端部に対して出入り自在の構造である。なお、この例は地盤試料を採取するものではないので、地盤試料採取管ではなく、単なる連結ロッドを用いてもよい。クランプ機構部24、ハンマ機構部26、地盤試料採取管28、掘削刃30cからなる掘削装置本体14を、地上に設置された流体制御装置に連結しているホース18により外套管22内に吊り下げ、孔底まで降ろす。
工程B:流体制御装置からホース18を介して送られた圧力流体によりハンマを作動させ、所定の深度まで掘削装置本体14のみを地盤に打撃貫入する。
工程C:地盤に貫入した掘削装置本体14のみをホース18により地上へ引き上げる。
工程D:掘削装置本体14の掘削刃を外套管貫入用の掘削刃30dに交換する。この掘削刃30dは、同じ中実コーン状であるが、外套管22の先端部(小内径部分)に対して係合する外周突起部を備え、それによって一定長さ以上下方に突出できない構造である。掘削刃30dに交換した掘削装置本体14をホース18により外套管22内に吊り下げ、外套管22先端部に設置する。
工程E:流体制御装置からホース18を介して送られる圧力流体によりハンマを作動させ、その打撃力を掘削刃30dに伝達する。掘削刃30dは外套管先端部と係合しているため、外套管22も連行される。これによって前記掘削深度まで外套管22を貫入する。
工程F:掘削装置本体14をホース18により地上へ引き上げる。
【0031】
これら工程A〜工程Fの操作を繰り返し行うことにより、所定深度まで掘削することができる。また、上記掘削方法において、地盤状況に応じて、図4のD〜Fの工程のみでも地盤の掘削が可能である。
【0032】
本発明に係る打撃掘削装置では、掘削装置本体の昇降は、孔内ハンマを駆動させるための圧力流体を通すホースを利用する方式(ホースライン方式)としており、そのためロッド方式と比較して作業効率が良く、1日(実稼動6時間程度)に20m程度の掘削が可能である。更に、多くの場合掘削流体を使用せずに、主に打撃貫入のみで掘削を行っているため、作業者の経験や技量を必要としない。掘削流体を稀に使用することもあるが、孔壁との摩擦低減のため、あるいは孔壁保護のため一度流す程度であり、従来工法のように掘屑回収のために循環させる必要がないので使用量は極少量ですむ。従って、掘削流体やその処理に必要なコストも低減できる。
【0033】
また本発明に係る打撃掘削装置では、孔内で打撃を行うため、地上で打撃を行う場合よりも発生する騒音は少ない。このハンマの打撃機構は、スプリングの力によって打撃力を発生させており、このスプリングの線径を太くするなどバネ定数を大きくすることで容易に打撃力を高めることができる。そのため、装置を大型化することなく大きな打撃力を得ることができる。
【0034】
ところで構造物を構築する時に、表層地盤にその構造物を支える強度がない場合は、支持できる強度を持つ地盤の深度まで杭を設置して構造物を支える。この杭の施工方法には、打込み杭工法、中掘り杭工法、場所打ち杭工法などがある。これら中でも、打込み杭工法は支持力の確実性や経済性の面で優れている。しかし、この工法はディーゼルハンマや油圧ハンマにより杭頭部を直接打撃して貫入するため、それに伴い生ずる騒音、振動および油煙の飛散が問題となり、現在ではあまり利用されていない。しかし上記のように、図3あるいは図4に示すような掘削方法によれば、外套管を連行して地盤に打ち込むことができる。従って、基礎杭として使用可能な外套管を用いれば、本発明に係る打撃掘削装置は、打込み杭の施工にも適用可能である。
【0035】
打撃貫入によって地盤の貫入抵抗値を得る代表的な調査手法として、標準貫入試験法(JISAl219)がある。標準貫入試験は、ロッドの先端に標準貫入試験用サンプラを取り付け、これを掘削したボーリング孔の孔底に降ろし、地上においてロッドをハンマ(63.5kg)の自由落下(落下高さ76cm)により打撃貫入して、孔底より15cm〜45cm間の30cmを貫入させるのに必要な打撃回数(N値)を求める試験である。標準貫入試験法によって求められるN値は、複雑な地質構成の我が国の地盤調査によく適合し、構造物の設計指標として長年用いられてきた。一方で、試験孔の掘進ためにボーリングマシンならびにボーリングポンプを必要とするため、経験的な労力と調査に時間を要する他、掘削に伴う孔壁の安定のために泥水の使用を余儀なくされてきた。また、最近では設計荷重(とくに地震外力)の増大や限界状態設計法(信頼性設計)の導入に伴い、標準貫入試験の打撃効率が小さいことやその効率にばらつきが大きいことが問題となってきている。
【0036】
上記のように、地盤の貫入抵抗値は、打撃掘削装置を地盤に貫入する時のハンマの打撃数と打撃に伴う貫入量を計測することで得られる。本発明に係る打撃掘削装置を用いると、ハンマの打撃数は流体制御装置の作動状況を監視すれば計測でき、貫入量は打撃掘削装置の上部に接続されたワイヤの移動量を深度計で計測できる。従って、この打撃掘削装置で計測した貫入抵抗値は、標準貫入試験により得られるN値に換算でき、構造物などの設計に利用できる。
【0037】
また、本発明に係る打撃掘削装置では、駆動部であるシリンダ内の圧力を監視することで単発の打撃が可能である。ハンマにより発生する打撃力は、長大なロッドなどを介在することなく貫入部分に与えられるため、エネルギの損失が少なく安定している。そのためハンマの打撃回数と貫入長を測定することによって、精度の高い地盤の貫入抵抗値を得ることができる。
【0038】
また、ボーリング孔内での打撃を利用して弾性波を発生させ、その弾性波が地盤を伝わる速度などから、地盤の特性を評価する方法は広く普及している。孔内で弾性波を発生させる起震装置としては、孔内発破やソレノイドハンマおよびエアガン等がある。これらの装置によって起震して発生した弾性波を地上や近傍のボーリング孔に設置した地震計(受信器)で受信し、起震から受信までの弾性波速度を計測して地盤の特性を評価している。
【0039】
本発明では、ハンマの打撃によって掘削装置本体が地盤に貫入する際に、弾性波が発生する。この弾性波を地表または近傍のボーリング孔に設置した地震計で受信する。この時の弾性波の伝播時間からその速度を求め、地盤の動的特性を評価することができる。また、打撃貫入に伴って発生した弾性波の最大振幅から地盤の強度を評価する方法が開発されており、その調査手法として本打撃掘削装置を適用することが可能である。弾性波速度による地盤の評価は従来から実施されているが、本装置による弾性波速度の測定は、ボーリング調査(孔掘削)と同時に実施できる利点がある。
【0040】
以上、本発明の好ましい実施例について詳述したが、本発明はかかる構成のみに限定されるものではない。打撃掘削装置にスプリングを組み込まず、ハンマの自重のみで打撃掘削してもよいが、装置が大型化する点で不利である。それに対して打撃掘削装置にスプリングを組み込み、その弾撥力でハンマを駆動する方式とすると、装置を小型化できるし、鉛直孔のみならず斜孔や水平孔の打撃掘削も行うことができ、更に斜孔や水平孔における地盤の貫入抵抗値を得ることも可能である。
【0041】
本発明装置では、基本的には地上の流体制御装置と孔内の掘削装置本体とを繋ぐホースを用いて該掘削装置本体を昇降させるが、ホースにワイヤを付随させて張力を強化し、一緒に上下させて掘削装置本体を昇降させるようにしてもよい。
【0042】
クランプ機構部は、スプリングの弾撥力を利用してハンマを駆動する構成では必須の装置である。前述したボール・コーン形式のワンウエイクラッチのような場合には、外套管の内面に微細な凹凸加工を施してボールとの結合強度を高めるような工夫も有効である。クランプ機構部は、流体の圧力を利用して外套管に対して結合・離脱可能とする構成でもよい。その場合、掘進の度に結合・離脱に圧力流体の流路の切り替えなど煩瑣な作業が必要となるので、クランプ機構部とハンマ機構部との間に流体シリンダならなる給進機構部を設けるのがよい。このような給進機構部を設けると、流体シリンダのストローク内で連続した掘進が可能となる。また、給進機構部を挟むように上部クランプと下部クランプを設け、地上での流体制御によってクランプ機構部と給進機構部の作動を組み合わせ、試料採取管を自在に昇降させることも可能である。
【0043】
【発明の効果】
本発明は上記のように、地上の流体制御装置と、孔内において流体で作動するハンマ機構部を有する掘削装置本体との間を流路となるホースで連結し、孔内のハンマ機構部で打撃掘削し、ホースの巻き上げ・巻き下ろしを利用して掘削装置本体を昇降させる構成であるから、作業効率に優れ、1箇所のボーリング調査に必要な時間とコストを低減することができる。従って、この調査を数多く行うことによって、調査結果の精度も向上し、信頼性の高い調査結果により、確実な設計・施工ができ工事全体の工期やコストの低減も可能になる。
【0044】
特に、掘削装置本体にスプリングを組み込んで、該スプリングの弾撥力を利用してハンマを駆動する構成とすると、装置を小型化でき、鉛直孔のみならず、斜孔や水平孔の貫入試験も可能となる。
【0045】
また本発明に係る打撃掘削装置では、多くの場合掘削流体(泥水など)を使用せず、使用する場合においても使用量は極少量であるため、その管理や処理に要する費用が大幅に削減でき、環境への影響も少なく、作業者の経験や高度な技量を必要としない。
【0046】
更に、本発明に係る打撃掘削装置では、単発の打撃動作が可能であるので、標準貫入試験や弾性波探査の振源としても利用でき、それらの測定を地盤試料の採取と同時に行える。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る打撃掘削装置の一実施例を示す全体構成図。
【図2】そのハンマ機構の構成と動作の説明図。
【図3】本発明装置による地盤掘削方法の一例を示す工程説明図。
【図4】本発明装置による地盤掘削方法の他の例を示す工程説明図。
【符号の説明】
12 ボーリング孔
14 掘削装置本体
16 流体制御装置
18 ホース
20 ホースドラム(ウインチ)
22 外套管
24 クランプ機構部
26 ハンマ機構部
28 地盤試料採取管
30 掘削刃
Claims (9)
- 流体で作動するハンマ機構部と該ハンマ機構部の下方に位置し地盤を掘削する掘削刃とを具備して孔内に挿入される掘削装置本体と、地上に設置した流体制御装置と、掘削装置本体と流体制御装置との間を流路として連結する柔軟性を有するホースを備えた打撃掘削装置であって、
孔内に外套管が挿入され、掘削装置本体は該外套管内を昇降可能であり、掘削装置本体は外套管に対して結合・離脱可能なクランプ機構部を具備しており、掘削装置本体のハンマ機構部は、ホース内を流路とする圧力流体で作動するシリンダと、該シリンダのピストンロッド先端に設けた把持部と、該把持部によって掴み離しされるハンマと、把持部によって掴んだハンマの上昇で弾撥力が蓄えられるスプリングとを具備し、把持部によるハンマの解放時にスプリングの弾撥力でハンマを駆動し打撃力を掘削刃に作用させると共にクランプ機構部による外套管との結合によってスプリングの反力を支えるようにし、前記ホースもしくはホースに付随したワイヤの上下によって掘削装置本体を孔内で昇降自在としたことを特徴とするホースライン式打撃掘削装置。 - 掘削装置本体のハンマ機構部は複動シリンダ型であって、ホースが外ホースと内ホースの同軸2重構造であり、内ホース内の流路と、内ホースと外ホースの間の流路とが形成され、一方がシリンダ内の一方の領域と、他方がシリンダ内の他方の領域と連通している請求項1記載のホースライン式打撃掘削装置。
- ハンマ機構部の下方に位置する掘削刃は、外周に突起部の無い円環状の試料採取用であって、外套管の先端部に対して出入り自在であり、該掘削刃の上部には地盤試料採取管が接続されて地盤試料の採取が可能となっている請求項1又は2記載のホースライン式打撃掘削装置。
- 掘削装置本体の外側に位置する外套管は、先端部に小内径の刃先を有する形状であり、他方、掘削装置本体の掘削刃は外周に突起部を有する形状の外套管連行用であって、該突起部が小内径部分と係合することで掘削刃の外套管先端からの突出長さが制限されるようにし、それによって掘削装置本体による打撃力を外套管に伝達可能とし、掘削装置本体の進行と共に外套管が連行され、且つ該外套管を残して掘削装置本体のみ上昇可能とした請求項1又は2記載のホースライン式打撃掘削装置。
- 掘削装置本体の掘削刃として、外周に突起部の無い円環状の試料採取用、外周に突出部を有する円環状の外套管連行用、外周に突起部の無い中実コーン状の打撃貫入用、外周に突出部を有する中実コーン状の外套管連行用のいずれかを自由に装着可能となっている請求項1又は2記載のホースライン式打撃掘削装置。
- 請求項5記載のホースライン式打撃掘削装置を使用し、試料採取用の掘削刃を装着した掘削装置本体によって試料採取管を地盤に打ち込み試料を採取し、引き抜いて地盤試料を回収し、掘削刃を外套管連行用に交換して掘削装置本体によって外套管を連行しながら地盤に打ち込み掘屑を採取し、掘削装置本体を引き抜いて掘屑を回収することを繰り返して地盤を掘削することを特徴とする打撃掘削方法。
- 請求項5記載のホースライン式打撃掘削装置を使用し、打撃貫入用の掘削刃を装着した掘削装置本体によって試料採取管を地盤に打ち込み、掘削刃を外套管連行用に交換して掘削装置本体によって外套管を連行しながら地盤に打ち込むことを繰り返して地盤を掘削することを特徴とする打撃掘削方法。
- 請求項1乃至5のいずれかに記載のホースライン式打撃掘削装置を使用し、掘削装置本体の孔内位置を検出する深度計を設置し、任意の位置で任意の方向に単発の打撃力で掘削刃を地盤に貫入させ、その貫入抵抗から地盤の特性を評価する地盤評価方法。
- 請求項1乃至5のいずれかに記載のホースライン式打撃掘削装置を使用し、地盤に地震計を設置し、孔内の任意の位置でハンマ機構部を作動させ、掘削刃が地盤に与える打撃力により発生する弾性波の伝達を監視して地盤の特性を評価する地盤評価方法。
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