JP4296785B2 - ベル型焼鈍炉 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱延鋼帯、冷延鋼帯等のコイルをバッチ焼鈍する際に適用するベル型焼鈍炉の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来のベル型焼鈍炉、すなわち、移動炉型のシングルスタック焼鈍炉の断面を図5に示す。
ベル型焼鈍炉は、下部にバーナー3を設置したアウターカバー2と焼鈍雰囲気ガス中への燃焼ガスの侵入を防止するインナーカバー1からなる。インナーカバー1内部には、コンベクター5を挟んでコイル4が積み重ねられており、インナーカバー1内の雰囲気ガスを強制対流させることで対流による伝熱を促進し、焼鈍を行う。なお、図5では、下からコイルA〜Dの4段積みの炉を例示する。
【0003】
このようなシングルスタックのベル型焼鈍炉において、高さ方向の温度の不均一を解消する方法として、すでに特許文献1に開示の雰囲気ガスの強制対流方法や、特許文献2に開示のバーナー制御方法等がよく知られている。
【0004】
【特許文献1】
特開平6-116657号公報
【特許文献2】
特開平6-88138 号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ベル型焼鈍炉を用いたバッチ焼鈍において、その処理能率の向上には積み込むコイルを大型化することが効果的であり、必然的にコイルの外巻部とインナーカバーの隙間は狭くなる。
ところで、アウターカバーに付設のバーナーの燃焼熱が、インナーカバー内部のコイルを昇温するには、雰囲気ガスの伝熱とインナーカバーの輻射熱の両方が寄与することになるが、コイルとインナーカバーの隙間が狭くなると、輻射熱の影響が相対的に大きくなる。
【0006】
そのため、インナーカバー内の雰囲気ガスの強制対流方向の変更やバーナー燃焼量の制御を行うという従来の方法では、インナーカバー内に積み上げたコイルの上下方向の温度差を解消し、すべてのコイルの昇温速度を均一にすることは困難である。
ここで、上下方向の温度差に関しては、焼鈍における均熱時間をある程度取ることで解消するが、各コイルの昇温速度を均一にすることはできない。
【0007】
また、本発明者らは、特に3〜10%程度の水素と窒素の混合ガスである、いわゆるHNガス雰囲気中での焼鈍では、昇温速度によってコイル表面性状に差が生じることがあり、とりわけステンレス鋼のような高Cr鋼では、急激な昇熱によってコイル表層に窒化層が形成され、その後の酸洗の際にムラとなって現れるとの知見を得た。
【0008】
本発明は、上述のような下積みコイルと上積みコイルの昇温速度や到達温度の差を解消し、コイル積み位置の違いがあっても焼鈍条件が同一となるようにするベル型焼鈍炉を提供するものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明のベル型焼鈍炉は、バッチ焼鈍におけるインナーカバーを改良することで炉内の上下方向の温度差および昇温速度差を改善し、均一な焼鈍を可能としたものである。
【0010】
すなわち、本発明は、縦方向に重積した複数のコイルを掩覆してなるインナーカバーと、該インナーカバーをさらに掩覆してなり、下部にバーナーを具備するアウターカバーと、を有してなるコイル焼鈍用のベル型焼鈍炉であって、前記バーナー位置に相当するインナーカバーの外周に防熱板を設置してなり、前記防熱板が、凹凸状の鉄板であって、円筒状のインナーカバーの外周に沿って装設されてなるものである。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明の好適な実施の形態を図1に基づいて説明する。なお、図5において説明した従来のベル型焼鈍炉と同一の部材には同一の番号を付し、ここでの説明を省略する。
本発明は、図1に示すように、バーナー3の火炎により直接加熱されるインナーカバー1の下部に防熱板10を設置するようにしたことを特徴とする。
【0012】
防熱板10を設置することで、インナーカバー1の下部の過昇熱を防止することができ、輻射熱による下積みコイル(特に、コイルAとコイルB)の外巻部の急昇熱を防止できるようになる。
なお、この防熱板10は、図2に示すように、インナーカバー1の外周に沿って凹凸状となるように屈折して装設することを好適とする。すなわち、図2に本発明の別の実施の形態として示す防熱板11は、凹凸状の鉄板12をインナーカバー1の外周に沿って巻き付け、ベルト13で所要の箇所を巻き付けて止めるように構成する。
【0013】
こうすることで、凹凸状の鉄板12の一部のみがインナーカバー1と接することから、防熱板11の変動や変形を防止できる一方、インナーカバー1との間に充分な隙間を確保することができ、インナーカバー1の下部が不均一に昇温されることもなくなる。
なお、図2では、インナーカバー1の外周に沿って凹凸状の鉄板12を巻き付けた例を示したが、巻き付ける鉄板は、図示のように矩形状に凹凸とした形状に限定するものではなく、蛇腹状に折り畳んだ形状としてもよい。
【0014】
【実施例】
図5に示す従来のベル型焼鈍炉と、図1に示す本発明の焼鈍炉を用いて実際の焼鈍をそれぞれ行い、インナーカバー内部での昇温状況を比較した。なお、本発明の焼鈍炉において、防熱板10は、図2に示したようにインナーカバー1の外周に沿って凹凸状となるように屈折して装設した。
【0015】
図3は、図5に示す従来のベル型焼鈍炉において、4つのコイルA〜D(A積み〜D積み)の昇温経過を示すグラフである。なお、BLTはベル温度であり、インナーカバー最上部の温度の推移を示している。
図3では、下積みコイルであるA積みとB積みのコイルの温度の上昇が、上積みコイルであるC積みとD積みのコイルの温度上昇よりも急であり、明らかに炉内での温度上昇が不均一になっている。
【0016】
一方、本発明の防熱板を具備した図1に示すベル型焼鈍炉においては、図4に示すように、4つのコイルA〜D(A積み〜D積み)の昇温経過がほぼ同一となっており、均熱を達成している。
すなわち、図示のように、図3と図4のいずれの場合においても、焼鈍温度は最終的には均一になるものの、従来例(図3)では、その昇温速度はコイル積み位置によってかなり異なり、バーナー部に近い下積みの2コイルの外巻部は上積みコイルに比べてかなり早く昇温する。一方、本発明例(図4)では、このような昇温の不均一が発生することはなく、下積みコイルと上積みコイルの昇温速度と最終到達温度がほぼ等しくなっており、コイル積み位置によらずに同一の条件で焼鈍を行うことが可能となった。
【0017】
【発明の効果】
本発明によって、従来問題となっていた炉内でのコイル積み位置による焼鈍条件の違いを解消することができた。また、特にHNガス雰囲気中での高Cr鋼の焼鈍においても急昇熱による窒化を有効に防止できるようになり、酸洗時のムラの発生を有効に抑えられるようになった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の好適な実施の形態を示すベル型焼鈍炉の模式図である。
【図2】本発明に適用する防熱板の別の好適な実施の形態を示す模式図である。
【図3】ベル型焼鈍炉内で段積みされた各コイルの従来の昇温の推移を示すグラフである。
【図4】ベル型焼鈍炉内で段積みされた各コイルの本発明適用による昇温の推移を示すグラフである。
【図5】従来のベル型焼鈍炉について説明する模式図である。
【符号の説明】
1 インナーカバー
2 アウターカバー
3 バーナー
4 コイル
5 コンベクター
10、11 防熱板
12 凹凸状の鉄板
13 ベルト
Claims (1)
- 縦方向に重積した複数のコイルを掩覆してなるインナーカバーと、該インナーカバーをさらに掩覆してなり、下部にバーナーを具備するアウターカバーと、を有してなるコイル焼鈍用のベル型焼鈍炉であって、前記バーナー位置に相当するインナーカバーの外周に防熱板を設置してなり、
前記防熱板が、凹凸状の鉄板であって、円筒状のインナーカバーの外周に沿って装設されてなることを特徴とするベル型焼鈍炉。
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