以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
図1から図14は本発明の第1の実施形態を示したものであり、図1はスペクトル・色再現システムの構成の概略を示すブロック図である。
この第1の実施形態のスペクトル・色再現システムは、撮影照明光5によって照明された被写体6を撮影するカラー画像入力手段たるマルチバンドカメラ1と、このマルチバンドカメラ1から入力されるカラー画像を後述する6原色ディスプレイ3に出力するためのカラー画像に変換する色変換手段たる画像変換装置2と、この画像変換装置2により変換されたカラー画像を例えばスクリーン4に投影するカラー画像出力手段たる6原色ディスプレイ3と、を有して構成されている。
上記マルチバンドカメラ1は、上記撮影照明光5により照明された被写体6を、例えば16バンドのマルチバンド画像データとして撮影して、撮影した画像データを画像変換装置2へ出力するものである。
上記画像変換装置2は、上記マルチバンドカメラ1から入力された16バンドの画像データを、後で詳しく説明するように、6原色ディスプレイ3に表示するための6原色の画像データに変換して、変換後の画像データを該6原色ディスプレイ3へ出力するものである。
上記6原色ディスプレイ3は、画像変換装置2から入力された6原色の画像データを、例えばスクリーン4に投影することにより、観察可能となるように表示するものである。
図2は、マルチバンドカメラ1の構成を示す図である。
被写体6からの入射光は、レンズ1aにより集光され、干渉フィルタ1cを介して所定の波長帯域の光のみの通過が許容された後に、モノクロCCD1e上に結像される。
上記干渉フィルタ1cは、16バンドの帯域に各対応して16枚設けられており、これら16枚の干渉フィルタ1cがフィルタターレット1bに装填されている。そして、このフィルタターレット1bをモータ1dによって回転することにより、上記レンズ1aからモノクロCCD1eへの光路中に、各干渉フィルタ1cが順次挿入されるようになっている。干渉フィルタ1cが光路上に位置するのに同期させて、上記モノクロCCD1eにより撮影を行うことにより、各干渉フィルタ1cに対応する分光感度の16バンドの被写体画像が順次撮影される。
図3は、16バンドでなるマルチバンドカメラ1の分光感度の一例を示す線図である。
このマルチバンドカメラ1は、図3に示すように、380nmから780nmの波長領域において、ほぼ等間隔の16個のピーク感度を有する分光感度となっている。このマルチバンドカメラ1により撮影された16バンドでなるマルチバンド画像データは、上記画像変換装置2に出力されて処理される。
なお、フィルタターレット1bの干渉フィルタ1cを付け替えることにより、16バンドの分光感度を用途に応じて変更することが可能である。
図4は、6原色ディスプレイ3の6原色でなる発光スペクトルを示す線図である。
6原色の発光スペクトルp1(λ),p2(λ),p3(λ),p4(λ),p5(λ),p6(λ)は、380nmから780nmの波長領域においてほぼ等間隔に分布している。
図5は、画像変換装置2の構成を示すブロック図である。
画像変換装置2は、入力プロファイル作成部11と、画像データ入力部12と、色変換部13と、データ記憶部14と、画像データ出力部15と、を有して構成されている。
上記入力プロファイル作成部11は、上記マルチバンドカメラ1から入力したカメラ設定情報と、上記データ記憶部14から入力したデータとに基づき、入力プロファイルを作成するものである。
すなわち、上記入力プロファイル作成部11は、カメラの各バンド毎の撮影時における露出時間および絞り値を、カメラ設定情報として、上記マルチバンドカメラ1から入力する。
一方で、入力プロファイル作成部11は、上記データ記憶部14から、予め測定されている基準露出時間および基準絞り値における、カメラの各バンドの分光感度と、各バンドの階調特性と、撮影照明光スペクトルと、被写分光反射率の統計データと、を入力する。
この画像変換装置2において扱われる、上記カメラの分光感度、撮影照明光スペクトル、被写体分光反射率の統計データ等のスペクトルデータは、全て380nm〜780nmを1nm間隔で刻む401個のデータから構成されている。
入力プロファイル作成部11は、基準露出時間および基準絞り値におけるカメラの各バンドj(j=1〜16)の分光感度h
0j(λ)と、撮影時の絞り値k
ijと、撮影時の露出時間k
ejと、に基づいて、撮影時の分光感度h
j(λ)を次の数式1により算出する。
さらに、入力プロファイル作成部11は、数式1で算出された撮影時の分光感度hj(λ)と、上記撮影照明光スペクトルと、上記被写体分光反射率の統計データと、を含むデータを、タグ形式の所定フォーマットのデータに変換し、入力プロファイルとして上記データ記憶部14に記録する。この入力プロファイルの形式の詳細については、他のプロファイルの説明と合わせて、後で説明する。
次に、上記画像データ入力部12は、マルチバンドカメラ1から入力した色信号である16バンド画像データを記憶して、画素位置毎に16バンド撮影信号として色変換部13に出力するものである。
上記色変換部13は、上記データ記憶部14から、カラー画像入力手段の色再現特性である入力プロファイルと、色空間変換プロファイルと、カラー画像出力手段の色再現特性である表示プロファイルとを入力し、これらのデータを用いて画像データ入力部12から入力した16バンド撮影信号を6原色表示信号に変換して画像データ出力部15に出力するものである。
上記画像データ出力部15は、この色変換部13から入力した色信号である6原色表示信号を記憶して、6原色の画像データとして上記6原色ディスプレイ3へ出力するものである。
図6は、色変換部13の構成を示すブロック図である。
色変換部13は、入力プロファイル入力部21と、色空間変換プロファイル入力部22と、表示プロファイル入力部23と、スペクトルベースカラーマネージメントモジュール(以下、スペクトルベースCMMという。)24と、を有して構成されている。
上記入力プロファイル入力部21は入力プロファイルを、上記色空間変換プロファイル入力部22は色空間変換プロファイルを、上記表示プロファイル入力部23は表示プロファイルを、それぞれ上記データ記憶部14からユーザー設定に従って入力し、各プロファイルのデータをスペクトルベースCMM24に出力するものである。
上記スペクトルベースCMM24は、これら入力プロファイル入力部21、色空間変換プロファイル入力部22、表示プロファイル入力部23からそれぞれ入力したプロファイルのデータを用いて、上記画像データ入力部12から入力した16バンド撮影信号を6原色表示信号に変換し、変換後の6原色表示信号を上記画像データ出力部15に出力するものである。
図7は、スペクトルベースCMM24による撮影信号から表示信号への変換の概念を示す図である。
入力プロファイルは、被写体が反射物である場合には撮影信号と被写体分光反射率との関係を与える情報、被写体が発光物である場合には撮影信号と被写体スペクトルの関係を与える情報、を含んでいる。スペクトルベースCMM24は、このような入力プロファイルを用いることによって、撮影信号を被写体分光反射率または被写体スペクトルに変換することができる。
表示プロファイルは、表示スペクトルと表示信号との関係を与える情報を含むものであり、スペクトルベースCMM24は、この表示プロファイルを用いることによって、表示スペクトルを表示信号に変換することができる。
色空間変換プロファイルは、被写体分光反射率に対して被写体スペクトルを算出するために用いられるレンダリング照明光スペクトルを含むとともに、人の色知覚特性を表す等色関数を必要に応じて含むものである。スペクトルベースCMM24は、このような色空間変換プロファイルを用いることによって、被写体分光反射率に対しては所定照明光下における被写体スペクトルを算出し、被写体スペクトルを人の色知覚特性を必要に応じて考慮した上で、表示スペクトルに変換することができる。
このようにスペクトルベースCMM24では、入力プロファイルや表示プロファイル等のデバイスプロファイルが信号値と分光反射率・スペクトルとの対応関係を与え、分光反射率・スペクトル空間がプロファイル間のインターフェース、すなわちプロファイルコネクションスペース(PCS)となっている。
分光反射率・スペクトルから色を決定するためのレンダリング照明光スペクトルや等色関数の情報は、上記色空間変換プロファイルが提供する仕組みになっており、物理量であるスペクトル情報から心理量である色情報への変換を、デバイスプロファイルとは独立に設定することができるようになっている。
なお、スペクトルベースCMM24の処理手順は、必ずしも図7に示す通りである必要はなく、入出力の条件に応じて計算過程の結合などの最適な処理構成をとることが望ましい。
図8は、スペクトルベースCMM24の構成を示すブロック図である。
上記スペクトルベースCMM24は、処理選択手段たるアルゴリズム選択部31と、信号変換部32と、を有して構成されている。
上記アルゴリズム選択部31は、上述した入力プロファイル入力部21、色空間変換プロファイル入力部22、表示プロファイル入力部23からそれぞれ入力したプロファイルデータと、ユーザー設定と、に基づいて、信号変換部32で使用する色変換アルゴリズムを選択するものである。
ユーザー設定は、スペクトルマッチングと測色マッチングとの何れかを選択する設定を含み、画像変換装置2のユーザーが、色変換を行うときに何れかのマッチングを選択する。
まず、ユーザー設定においてスペクトルマッチングが選択された場合には、アルゴリズム選択部31は、色空間変換プロファイル入力部22から入力した色空間変換プロファイルに等色関数がデータとして含まれるか否かを判定する。
ここで、色空間変換プロファイルに等色関数がデータとして含まれない場合には、アルゴリズム選択部31は、信号変換部32にモデル1信号処理部42(図9参照)を用いるためのアルゴリズム情報を出力する。
また、色空間変換プロファイルに等色関数がデータとして含まれる場合には、アルゴリズム選択部31は、信号変換部32にモデル2信号処理部43(図9参照)を用いるためのアルゴリズム情報を出力する。
一方、ユーザー設定において測色値マッチングが選択された場合には、アルゴリズム選択部31は、色空間変換プロファイル入力部22から入力した色空間変換プロファイルに含まれる等色関数の組の個数を入力する。
ここで、等色関数の組の個数が1である場合には、アルゴリズム選択部31は、信号変換部32にモデル3信号処理部44(図9参照)を用いるためのアルゴリズム情報を出力する。
また、等色関数の組の個数が2以上である場合には、アルゴリズム選択部31は、信号変換部32にモデル4信号処理部45(図9参照)を用いるためのアルゴリズム情報を出力する。
こうしてアルゴリズム選択部31は、選択したアルゴリズム情報と、入力プロファイルと、色空間変換プロファイルと、表示プロファイルと、を上記信号変換部32に出力する。
信号変換部32は、画像データ入力部12から入力した16バンド撮影信号を、上記アルゴリズム選択部31から入力したアルゴリズム情報に基づいて選択された変換方法(モデル1〜4信号処理部42〜45)により、入力プロファイルと、色空間変換プロファイルと、表示プロファイルと、を用いて6原色表示信号に変換し、変換後の6原色表示信号を画像データ出力部15に出力する。
図9は、信号変換部32の構成を示すブロック図である。
上記信号変換部32は、処理選択部41と、4つのモデル信号処理部、すなわち、モデル1信号処理部42と、モデル2信号処理部43と、モデル3信号処理部44と、モデル4信号処理部45と、を有して構成されている。
処理選択部41は、上記アルゴリズム選択部31から入力したアルゴリズム情報に基づいて、処理を行うモデル信号処理部を選択し、該アルゴリズム選択部31から入力した入力プロファイル、色空間変換プロファイル、および表示プロファイルと、上記画像データ入力部12から入力した16バンド撮影信号と、を選択したモデル信号処理部に出力するものである。
各モデル信号処理部は、この処理選択部41から、入力プロファイルと、色空間変換プロファイルと、表示プロファイルと、16バンド撮影信号と、を入力し、16バンド撮影信号を6原色表示信号に変換して画像データ出力部15に出力する。
図10は、モデル1信号処理部42の構成を示すブロック図である。
モデル1信号処理部42は、スペクトル推定データ算出部51と、表示信号変換データ算出部52と、スペクトル推定部53と、表示信号変換部54と、を有して構成されている。
上記スペクトル推定データ算出部51は、入力した入力プロファイルに含まれる、カメラ分光感度、撮影照明光スペクトル、被写体分光反射率の統計データ、および階調特性と、入力した色空間変換プロファイルに含まれるレンダリング照明光スペクトルと、を用いて、スペクトル推定マトリクスおよび階調補正データを算出し、スペクトル推定部53に出力する。
ここに、上記レンダリング照明光スペクトルは、被写体の色を再現するために設定する照明光スペクトルであり、撮影照明光スペクトルや観察照明光スペクトルとは独立に設定することができる。
これらのカメラ分光感度、撮影照明光スペクトル、および被写体分光反射率の統計データを用いて、撮影信号から分光反射率推定マトリクスを算出する手段については、上記文献2に記載されており、スペクトル推定マトリクスの算出は、該文献2における分光反射率を分光反射率×レンダリング照明光スペクトルに置き換えることにより、同様の手段を用いることができるために、ここでは説明を省略する。
上記スペクトル推定マトリクスは、16バンド撮影信号から401次元の被写体スペクトルを算出するための、401×16の要素からなるマトリクスである。
上記階調補正データは、上記文献1に記載されているTRCに相当する階調特性データから補間により算出されるデータであり、16バンド撮影信号を入射光強度と線形な信号値に補正したデータとして含んでいる。
上記表示信号変換データ算出部52は、入力した表示プロファイルに含まれる6原色のスペクトルおよび階調特性を用いて、6原色スペクトルおよび階調補正データを表示信号変換部54に出力する。
ここに、階調補正データは、上記文献1に記載されているTRCの逆関数に相当するデータであり、輝度と線形な信号値に対して6原色表示信号を与えるデータとして含んでいる。
上記スペクトル推定部53は、スペクトル推定データ算出部51から階調補正データとスペクトル推定マトリクスとを入力し、画像データ入力部12から入力した16バンド撮影信号に対して、階調補正を行い、マトリクス変換によりスペクトル推定を行い、401次元の被写体スペクトルを算出して、表示信号変換部54に出力する。
表示信号変換部54は、スペクトル推定部53から入力した被写体スペクトルを6原色ディスプレイ3の6原色スペクトルの線形和により表した場合に、この線形和により表されたスペクトルと元の被写体スペクトルとの誤差が最小となるように、6原色表示信号を変換する。次に、表示信号変換部54は、階調補正データを用いて、これらの6原色信号を階調補正し、補正後の6原色信号を画像データ出力部15に出力する。
図11は、モデル2信号処理部43の構成を示すブロック図である。
モデル2信号処理部43は、スペクトル推定データ算出部61と、表示信号変換データ算出部62と、スペクトル推定部63と、表示信号変換部64と、を有して構成されている。
このモデル2信号処理部43におけるスペクトル推定データ算出部61およびスペクトル推定部63は、上述したモデル1信号処理部42におけるスペクトル推定データ算出部51およびスペクトル推定部53とそれぞれ同様であるために、説明を省略する。
また、表示信号変換データ算出部62は、入力した表示プロファイルに含まれる6原色のスペクトルおよび階調特性と、入力した色空間変換プロファイルに含まれる等色関数と、を用いて、6原色スペクトル、6原色測色値、および階調補正データを表示信号変換部64に出力する。
表示信号変換部64は、被写体の測色値を正しく表示するという拘束条件の下で、上記スペクトル推定部63から入力した被写体スペクトルを6原色ディスプレイ3の6原色スペクトルの線形和により表した場合にスペクトルの誤差を最小とする6原色表示信号に変換する。
上記6原色測色値は、各原色の発光スペクトルをp
j(λ)(j=1〜N)、等色関数をt
k(λ)(k=1〜K)とすると、次の数式2により表される。
ここで、等色関数tk(λ)(k=1〜K)は、CIE1931等色関数やCIE1964等色関数(これらの場合には、K=3となる。)を含めて、任意の関数を設定することができるものとする。拘束条件付きの最小自乗問題はラグランジュの未定係数法により解くことができ、この解法については、例えば田島譲二著「カラー画像複製論」(丸善1996の第68頁から第69頁)(文献6)に記載されている。
その後、表示信号変換部64は、階調補正データを用いてこれらの6原色信号を階調補正し、画像データ出力部15に出力する。
図12は、モデル3信号処理部44の構成を示すブロック図である。
モデル3信号処理部44は、多次元測色値推定データ算出部71と、表示信号変換データ算出部72と、多次元測色値推定部73と、表示信号変換部74と、を有して構成されている。
多次元測色値推定データ算出部71は、入力した入力プロファイルに含まれる、カメラ分光感度、撮影照明光スペクトル、被写体分光反射率、および階調特性と、入力した色空間変換プロファイルに含まれるレンダリング照明光スペクトルおよび等色関数と、を用いて、多次元測色値推定マトリクスおよび階調補正データを算出し、多次元測色値推定部73に出力する。
ここで等色関数は、ディスプレイの原色数以下のK個(ここでは6以下)の関数により構成されているものとする。色空間変換プロファイルに(K+1)個以上の関数が記述されている場合は、その内のK番目までの関数が用いられる。
上記多次元測色値推定マトリクスは、16バンド撮影信号からK次元の被写体の測色値を算出するためのK×16の要素からなるマトリクスである。
カメラ分光感度、撮影照明光スペクトル、および被写体分光反射率の統計データから分光反射率推定マトリクスを算出する手段は、上記文献2に記載されており、多次元測色値推定マトリクスの算出は、この文献2における分光反射率f(λ)をレンダリング照明光スペクトルE
R(λ)を用いて、
に置き換えることにより、該文献2に記載されているのと同様の手段を用いることができるために、ここでは説明を省略する。
表示信号変換データ算出部72は、入力した表示プロファイルに含まれる6原色のスペクトルおよび階調特性と、入力した色空間変換プロファイルに含まれる等色関数と、を用いて、6原色の多次元測色値および階調補正データを上記表示信号変換部74に出力する。
多次元測色値推定部73は、上記多次元測色値推定データ算出部71から入力した多次元測色値推定マトリクスおよび階調補正データを用いて、画像データ入力部12から入力した16バンド撮影信号に対して、階調補正を行い、マトリクス変換により多次元測色値に変換して、表示信号変換部74に出力する。
表示信号変換部74は、上記多次元測色値推定部73から入力した被写体の多次元測色値を、上記表示信号変換データ算出部72から入力した6原色の多次元測色値を用いて、被写体の多次元測色値に応じて異なるマトリクスを用いる領域別のマトリクス変換により、6原色表示信号に変換する。
この領域別のマトリクス変換については、T.Ajito、他による「Color Conversion Method for Multiprimary Display Using Matrix Switching」( Optical Review Vol.8, No.3, 2001の第191頁から第197頁)(文献7)に記載されているために、ここでは説明を省略する。
その後、表示信号変換部74は、階調補正データを用いて、これらの6原色信号の階調補正を行い、画像データ出力部15に出力する。
図13は、モデル4信号処理部45の構成を示すブロック図である。
モデル4信号処理部45は、XYZ推定データ算出部81と、表示信号変換データ算出部82と、XYZ推定部83と、表示信号変換部84と、を有して構成されている。
XYZ推定データ算出部81は、入力した入力プロファイルに含まれる、カメラ分光感度、撮影照明光スペクトル、被写体分光反射率、および階調特性と、入力した色空間変換プロファイルに含まれるレンダリング照明光スペクトルおよびL組のXYZ等色関数と、を用いて、L−XYZ推定マトリクスおよび階調補正データを算出し、XYZ推定部83に出力する。
L−XYZ推定マトリクスは、16バンド撮影信号から被写体のXYZを算出するための3×16の要素からなるマトリクスをL個有している。
カメラ分光感度、撮影照明光スペクトル、および被写体分光反射率の統計データから分光反射率推定マトリクスを算出する手段は、上記文献2に記載されており、L−XYZ推定マトリクスの算出は、該文献2における分光反射率f(λ)をレンダリング照明光スペクトルE
R(λ)を用いて、
に置き換えることにより、該文献2に記載されているのと同様の手段を用いることができるために、ここでは説明を省略する。
表示信号変換データ算出部82は、入力した表示プロファイルに含まれる6原色のスペクトルおよび階調特性と、入力した色空間変換プロファイルに含まれるL組のXYZ等色関数と、を用いて、6原色のL組のXYZおよび階調補正データを表示信号変換部84に出力する。
XYZ推定部83は、XYZ推定データ算出部81から入力したL−XYZ推定マトリクスを用いて、画像データ入力部12から入力した16バンド撮影信号に対して、階調補正を行い、L個のマトリクス変換によりL組のXYZに変換して、表示信号変換部84に出力する。
表示信号変換部84は、上記XYZ推定部83から入力した被写体のL組のXYZと、上記表示信号変換データ算出部82から入力した6原色のL組のXYZと、の誤差が最小となる6原色表示信号に変換する。複数の等色関数を用いた色変換については、上記文献4に記載されている手段等を用いることができる。
その後、表示信号変換部84は、階調補正データを用いてこれらの6原色信号の階調補正を行い、画像データ出力部15に出力する。
次に、上述した入力プロファイルや表示プロファイル、あるいは色空間変換プロファイルのファイル形式について図14を参照して説明する。図14は、プロファイルの基本構造を示す図である。
各プロファイルは、上述した文献1に記載されているように、タグ形式のファイルフォーマットをとっており、図14に示すように、固定長のヘッダと、タグ数に応じて可変のタグテーブルと、タグデータと、を有して構成されている。
上記ヘッダには、当該プロファイルが入力プロファイル、表示プロファイル、または色空間変換プロファイル等の何れであるかを区別するための識別子や、プロファイル間のインターフェースであるPCS(プロファイルコネクションスペース)の情報等が記述されている。
本実施形態においては、PCSは、380nm〜780nmを1nm間隔で刻む401次元の分光反射率空間となっているが、入力プロファイルのPCSは、分光反射率空間と同様の波長サンプルからなるスペクトル空間とすることも可能である。
このPCSが分光反射率空間とスペクトル空間との何れであるかは、上記アルゴリズム選択部31と処理選択部41とを介して、各信号処理部42〜45に入力され、そこでの処理に反映される。
例えばPCSがスペクトルである場合の処理は、レンダリング照明光スペクトルが用いられない処理またはレンダリング照明光スペクトルが等エネルギースペクトルに置き換わることにより、実現される。
上記タグテーブルは、タグデータの数と、各タグデータの識別子、位置、およびサイズと、を含んで構成されている。このタグデータは、各プロファイルの種類に応じて決まる必須タグと、プロファイル作成者の意図に応じて追加可能なオプションタグと、を含んで構成されている。
これらの内の必須タグは、入力プロファイルの場合、分光感度、撮影照明光スペクトル、および階調特性であり、表示プロファイルの場合、原色スペクトルおよび階調特性であり、色空間変換プロファイルの場合、レンダリング照明光スペクトルである。
それぞれのタグデータは、所定の形式に従って、プロファイル内のタグテーブルに記述された位置に記録されている。
このような第1の実施形態によれば、カラー画像入力手段とカラー画像出力手段の色再現特性を所定のフォーマットによって信号値と分光反射率・スペクトルを関係付ける情報として有することにより、オープンなシステムにおいてスペクトル空間をインターフェースとしたスペクトル・色再現を実現するスペクトル・色再現システムを構築することが可能となる。
また、レンダリング照明光スペクトルや等色関数を、カラー画像入/出力手段の色再現特性とは独立に備えて設定することにより、任意のレンダリング照明光スペクトルおよび等色関数を用いたスペクトル・色再現を、カラー画像入/出力手段の色再現特性を変更することなく実現することができる。
図15から図22は本発明の第2の実施形態を示したものであり、図15はスペクトル・色再現システムの構成の概略を示すブロック図である。この第2の実施形態において、上述の第1の実施形態と同様である部分については同一の符号を付すなどして説明を省略し、主として異なる点についてのみ説明する。
この第2の実施形態のスペクトル・色再現システムは、撮影照明光5によって照明された被写体106を撮影するマルチバンドカメラ1と、このマルチバンドカメラ1から入力されるカラー画像を後述する6色プリンタ103に出力するためのカラー画像に変換する色変換手段たる画像変換装置102と、この画像変換装置102により変換されたカラー画像からハードコピー104を出力するカラー画像出力手段たる6色プリンタ103と、を有して構成されており、出力されたハードコピー104は、観察照明光105の下で観察されるようになっている。
これらの内のマルチバンドカメラ1と撮影照明光5は、上述した第1の実施形態で説明したものと同様である。
また、上記被写体106は、本実施形態においては、撮影照明光5により照明された絵画となっており、撮影照明光5は絵画の面を一様に照明しているものとする。
上記画像変換装置102は、マルチバンドカメラ1から入力された色信号である16バンドの画像データを、6色プリンタ103の6原色の画像データに変換して、変換後の色信号である画像データを6色プリンタ103へ出力するものである。
上記6色プリンタ103は、画像変換装置102から6原色の画像データを入力し、ハードコピー104としてプリント出力するものである。
上記画像変換装置102の内部構成は、上述した第1の実施形態の図5に示したものと同様であり、入力プロファイル作成部11と、画像データ入力部12と、色変換部13と、データ記憶部14と、画像データ出力部15と、を有して構成されている。
これらの内の色変換部13以外については、内部構成も同様であるが、色変換部13は、内部構成が上述した第1の実施形態の図6に示したものとは異なるために、この色変換部13についてのみ説明する。
色変換部13は、上記図5に示したように、データ記憶部14から、カラー画像入力手段の色再現特性である入力プロファイル、色空間変換プロファイル、およびカラー画像出力手段の色再現特性である出力プロファイルを入力し、これらのデータを用いて画像データ入力部12から入力した16バンド撮影信号を6色出力信号に変換して画像データ出力部15へ出力するものである。
また、画像データ出力部15は、色変換部13から入力した6色出力信号を記憶して、本実施形態においては、6色プリンタ103へ出力するようになっている。
図16は、色変換部13の構成を示すブロック図である。
この第2の実施形態における色変換部13は、入力プロファイル入力部121と、色空間変換プロファイル入力部122と、出力プロファイル入力部123と、スペクトルベースCMM124と、を有して構成されている。
これらの内の入力プロファイル入力部121および色空間変換プロファイル入力部122は、上述した第1の実施形態の入力プロファイル入力部21および色空間変換プロファイル入力部22とそれぞれ同様である。
上記出力プロファイル入力部123は、出力プロファイルをデータ記憶部14からユーザー設定に従って入力し、この出力プロファイルのデータをスペクトルベースCMM124に出力するものである。
上記スペクトルベースCMM124は、入力プロファイル入力部121、色空間変換プロファイル入力部122、および出力プロファイル入力部123からそれぞれ入力したデータを用いて、画像データ入力部12から入力した16バンド撮影信号を6色出力信号に変換し、画像データ出力部15に出力する。
スペクトルベースCMM124による撮影信号から出力信号への変換の概念は、上述した第1の実施形態において、図7を参照して説明したものとほぼ同様である。
また、このスペクトルベースCMM124の構成も、上述した第1の実施形態の図8に示したものと同様であり、アルゴリズム選択部31に対応するアルゴリズム選択部131(図17参照)と、信号変換部32と、を有して構成されている。
上記アルゴリズム選択部131は、入力プロファイル入力部121、色空間変換プロファイル入力部122、および出力プロファイル入力部123からそれぞれ入力した各プロファイルデータと、ユーザー設定と、に基づいて、信号変換部32で使用する色変換アルゴリズムを選択する。
ユーザー設定は、分光反射率マッチングとスペクトルマッチングと測色マッチングとの何れかを選択する設定を含み、画像変換装置102のユーザーが、色変換を行うときに何れかのマッチングを選択する。
ユーザー設定において分光反射率マッチングが選択された場合には、アルゴリズム選択部131は、信号変換部32にモデル11信号処理部142(図17参照)を用いるためのアルゴリズム情報を出力する。
またユーザー設定においてスペクトルマッチングが選択された場合には、アルゴリズム選択部131は、色空間変換プロファイル入力部122から入力した色空間変換プロファイルに等色関数がデータとして含まれるか否かを判定する。
ここで、色空間変換プロファイルに等色関数がデータとして含まれない場合には、アルゴリズム選択部131は、信号変換部32にモデル12信号処理部143(図17参照)を用いるためのアルゴリズム情報を出力する。
一方、色空間変換プロファイルに等色関数がデータとして含まれる場合には、アルゴリズム選択部131は、信号変換部32にモデル13信号処理部144(図17参照)を用いるためのアルゴリズム情報を出力する。
さらに、ユーザー設定において測色値マッチングが選択された場合には、アルゴリズム選択部131は、色空間変換プロファイル入力部122から入力した色空間変換プロファイルに含まれる等色関数の組の個数を入力する。
ここで、等色関数の組の個数が1である場合には、アルゴリズム選択部131は、モデル14信号処理部145(図17参照)を用いるためのアルゴリズム情報を出力する。
また、等色関数の組の個数が2以上である場合には、アルゴリズム選択部131は、モデル15信号処理部146(図17参照)を用いるためのアルゴリズム情報を出力する。
こうしてアルゴリズム選択部131は、選択したアルゴリズム情報と、入力プロファイルと、色空間変換プロファイルと、出力プロファイルと、を信号変換部32に出力する。
信号変換部32は、画像データ入力部12から入力した16バンド撮影信号をアルゴリズム選択部から入力したアルゴリズム情報に基づいて選択された変換方法(モデル11〜15信号処理部142〜146)により、入力プロファイルと、色空間変換プロファイルと、出力プロファイルと、を用いて6色出力信号に変換し、変換後の6色出力信号を画像データ出力部15に出力する。
図17は、信号変換部32の構成を示すブロック図である。
この第2の実施形態の信号変換部32は、処理選択部141と、5つのモデル信号処理部、すなわち、モデル11信号処理部142と、モデル12信号処理部143と、モデル13信号処理部144と、モデル14信号処理部145と、モデル15信号処理部146と、を有して構成されている。
処理選択部141は、上記アルゴリズム選択部131から入力したアルゴリズム情報に基づいて、処理を行うモデル信号処理部を選択し、該アルゴリズム選択部131から入力した入力プロファイル、色空間変換プロファイル、および出力プロファイルと、上記画像データ入力部12から入力した16バンド撮影信号と、を選択したモデル信号処理部に出力するものである。
各モデル信号処理部は、この処理選択部141から入力プロファイルと、色空間変換プロファイルと、出力プロファイルと、16バンド撮影信号と、を入力し、16バンド撮影信号を6色出力信号に変換して画像データ出力部15に出力する。
図18は、モデル11信号処理部142の構成を示すブロック図である。
モデル11信号処理部142は、分光反射率推定データ算出部151と、出力信号変換データ算出部152と、分光反射率推定部153と、出力信号変換部154と、を有して構成されている。
上記分光反射率推定データ算出部151は、入力した入力プロファイルに含まれる、カメラ分光感度、撮影照明光スペクトル、被写体分光反射率の統計データ、および階調特性を用いて、分光反射率推定マトリクスおよび階調補正データを算出し、分光反射率推定部153に出力する。
これらのカメラ分光感度、撮影照明光スペクトル、被写体分光反射率の統計データから分光反射率推定マトリクスを算出する手段は、上記文献2に記載されているために、ここでは説明を省略する。
分光反射率推定マトリクスは、16バンド撮影信号から401次元の被写体分光反射率を算出するための401×16の要素からなるマトリクスである。
また、階調補正データは、上述した第1の実施形態で説明した階調補正データと同様である。
上記分光反射率推定部153は、分光反射率推定データ算出部151から階調補正データと分光反射率推定マトリクスとを入力し、画像データ入力部12から入力した16バンド撮影信号に対して、階調補正を行い、マトリクス変換により分光反射率推定を行い、401次元の被写体分光反射率を算出して、出力信号変換部154に出力する。
上記出力信号変換データ算出部152は、出力プロファイルから、6原色および出力紙の分光反射率を入力して、出力信号変換部154に出力する。
上記出力信号変換部154は、分光反射率推定部153から入力した被写体分光反射率を6色プリンタ103の6色により再現した場合に、分光反射率を近似する6色出力信号に変換し、画像データ出力部15に出力する。
なお、分光反射率を近似する6色出力信号へ変換する手段は、上記文献5に記載されているために、ここでは説明を省略する。
図19は、モデル12信号処理部143の構成を示すブロック図である。
モデル12信号処理部143は、スペクトル推定データ算出部161と、出力信号変換データ算出部162と、スペクトル推定部163と、出力信号変換部164と、を有して構成されている。
これらの内のスペクトル推定データ算出部161およびスペクトル推定部163は、上述した第1の実施形態におけるモデル1信号処理部42のスペクトル推定データ算出部51およびスペクトル推定部53とそれぞれ同様である。
上記出力信号変換データ算出部162は、入力した出力プロファイルに含まれる6原色および出力紙の分光反射率と、色空間変換プロファイルに含まれるレンダリング照明光スペクトルと、を用いて、6原色および出力紙の反射スペクトルを算出し、出力信号変換部164に出力する。
上記出力信号変換部164は、スペクトル推定部163から入力した被写体スペクトルをレンダリング照明光の下で6色プリンタ103の6色により再現した場合に、スペクトルを近似する6色出力信号に変換し、画像データ出力部15に出力する。
スペクトルを近似する6色出力信号へ変換する手段は、上記文献5に記載されている6原色および出力紙の分光反射率を、レンダリング照明光スペクトルをかけた反射スペクトルに置き換えることにより、該文献5に記載されているのと同様の手段を用いることができる。
図20は、モデル13信号処理部144の構成を示すブロック図である。
モデル13信号処理部144は、スペクトル推定データ算出部171と、出力信号変換データ算出部172と、スペクトル推定部173と、出力信号変換部174と、を有して構成されている。
これらの内のスペクトル推定データ算出部171およびスペクトル推定部173は、上述した第1の実施形態におけるモデル2信号処理部43のスペクトル推定データ算出部61およびスペクトル推定部63とそれぞれ同様である。
上記出力信号変換データ算出部172は、入力した出力プロファイルに含まれる6原色および出力紙の分光反射率と、入力した色空間変換プロファイルに含まれるレンダリング照明光スペクトルおよび等色関数と、を用いて、6原色、出力紙の測色値、および反射スペクトルを算出し、出力信号変換部174に出力する。
上記出力信号変換部174は、スペクトル推定部173から入力した被写体の測色値を正しく表示する拘束条件の下で、被写体スペクトルを近似する6色プリンタ103の6色出力信号に変換し、画像データ出力部15に出力する。
測色値を正しく表示する拘束条件の下でのスペクトル近似する6色出力信号への変換手段は、上記文献5に記載されている6原色および出力紙の分光反射率を、スペクトルおよび測色値に置き換えることにより、同様の手段を用いることができる。
6色の測色値は、各原色の分光反射率をp
j(λ)(j=1〜6)、レンダリング照明光スペクトルをE
R(λ)、等色関数をt
k(λ)(k=1〜K)とすると、次の数式5により算出される。
ここで、等色関数tk(λ)(k=1〜K)は、CIE1931等色関数やCIE1964等色関数(これらの場合には、K=3となる。)を含めて、任意の関数を設定することができるものとする。
図21は、モデル14信号処理部145の構成を示すブロック図である。
モデル14信号処理部145は、多次元測色値推定データ算出部181と、出力信号変換データ算出部182と、多次元測色値推定部183と、出力信号変換部184と、を有して構成されている。
これらの内の多次元測色値推定データ算出部181および多次元測色値推定部183は、上述した第1の実施形態におけるモデル3信号処理部44の多次元測色値推定データ算出部71および多次元測色値推定部73とそれぞれ同様である。
上記出力信号変換データ算出部182は、入力した出力プロファイルに含まれる6原色および出力紙の分光反射率と、入力した色空間変換プロファイルに含まれるレンダリング照明光スペクトルおよび等色関数と、を用いて、6原色および出力紙の測色値を算出し、出力信号変換部184に出力する。
上記出力信号変換部184は、多次元測色値推定部183から入力した被写体の測色値を、該測色値を正しく表示する6色プリンタ103の6色出力信号に変換し、画像データ出力部15に出力する。
測色値を正しく表示する6色出力信号への変換手段は、上記文献5に記載されているために、ここでは説明を省略する。
図22は、モデル15信号処理部146の構成を示すブロック図である。
モデル15信号処理部146は、XYZ推定データ算出部191と、出力信号変換データ算出部192と、XYZ推定部193と、出力信号変換部194と、を有して構成されている。
これらの内のXYZ推定データ算出部191およびXYZ推定部193は、上述した第1の実施形態におけるモデル4信号処理部45のXYZ推定データ算出部81およびXYZ推定部83とそれぞれ同様である。
上記出力信号変換データ算出部192は、入力した出力プロファイルに含まれる6原色および出力紙の分光反射率と、入力した色空間変換プロファイルに含まれるレンダリング照明光スペクトルおよびL組のXYZ等色関数と、を用いて、6原色および出力紙のL組のXYZを算出し、出力信号変換部194に出力する。
上記出力信号変換部194は、XYZ推定部193から入力した被写体のL組のXYZを、該L組のXYZとの誤差を最小とする6色プリンタ103の6色出力信号に変換して、画像データ出力部15に出力する。
L組のXYZを表示する6色出力信号へ変換する手段は、上記文献5に記載されているXYZを、L組のXYZで置き換えることにより、同様の手段を用いることができるために、ここでは説明を省略する。
このような第2の実施形態によれば、カラー画像入力手段がマルチバンドカメラであって、カラー画像出力手段が6色プリンタである場合にも、上述した第1の実施形態とほぼ同様の効果を奏することができる。
図23から図31は本発明の第3の実施形態を示したものであり、図23はスペクトル・色再現システムの構成の概略を示すブロック図である。この第3の実施形態において、上述の第1,第2の実施形態と同様である部分については同一の符号を付すなどして説明を省略し、主として異なる点についてのみ説明する。
この第3の実施形態のスペクトル・色再現システムは、カラー画像入力手段たる入力側表示装置201と、この入力側表示装置201に入力されるカラー画像と同一のカラー画像を入力して後述する出力側表示装置203に出力するためのカラー画像に変換する色変換手段たる画像変換装置202と、この画像変換装置202により変換されたカラー画像を表示するカラー画像出力手段たる出力側表示装置203と、を有して構成されている。
上記入力側表示装置201は、例えばコンピュータグラフィクス(CG)により画像を作成するためにクリエータが用いる表示装置であり、上述した第1の実施形態における6原色ディスプレイ3と同様に、6原色からなる表示装置である。クリエータは、この入力側表示装置201上でCG画像の色調整等の作業を行いながら作品を完成させる。
入力側表示装置201に画像を表示するための色信号である6原色表示信号は、該入力側表示装置201自体に入力されるとともに、画像変換装置202にも入力されるようになっている。
この画像変換装置202は、入力側表示装置201から入力した6原色表示信号を、出力側表示装置203に表示するための色信号である6原色表示信号に変換して、該出力側表示装置203に出力するものである。
上記出力側表示装置203は、入力側表示装置201と異なるスペクトル特性の6原色を有する表示装置であり、画像変換装置202から入力した6原色表示信号によりカラー画像を画面上に表示するようになっている。
図24は、画像変換装置202の構成を示すブロック図である。
画像変換装置202は、画像データ入力部212と、色変換部213と、データ記憶部214と、画像データ出力部215と、を有して構成されている。
画像データ入力部212は、入力側表示装置201に表示する表示信号の画像データを記憶して、画素位置毎に6原色表示信号として色変換部213に出力する。
色変換部213は、データ記憶部214から、カラー画像入力手段の色再現特性である入力側表示プロファイル、色空間変換プロファイル、およびカラー画像出力手段の色再現特性である出力側表示プロファイルを入力し、これらのデータを用いて、画像データ入力部212から入力した入力側の6原色表示信号を、出力側の6原色表示信号に変換し、画像データ出力部215に出力する。
画像データ出力部215は、色変換部213から入力した6原色表示信号を記憶して、出力側表示装置203へ出力する。
図25は、色変換部213の構成を示すブロック図である。
色変換部213は、入力側表示プロファイル入力部221と、色空間変換プロファイル入力部222と、出力側表示プロファイル入力部223と、スペクトルベースCMM224と、を有して構成されている。
入力側表示プロファイル入力部221は入力側表示プロファイルを、色空間変換プロファイル入力部222は色空間変換プロファイルを、出力側表示プロファイル入力部223は出力側表示プロファイルを、それぞれデータ記憶部214からユーザー設定に従って入力し、各プロファイルのデータをスペクトルベースCMM224に出力する。
スペクトルベースCMM224は、入力側表示プロファイル入力部221、色空間変換プロファイル入力部222、および出力側表示プロファイル入力部223からそれぞれ入力したデータを用いて、画像データ入力部212から入力した入力側の6原色表示信号を、出力側の6原色表示信号に変換し、画像データ出力部215に出力する。
図26は、スペクトルベースCMM224による入力側表示信号から出力側表示信号への変換の概念を示す図である。
入力側表示プロファイルは、入力側の表示信号と表示スペクトルとの関係を与える情報を含んでいる。この入力側表示プロファイルを用いることにより、入力側の表示信号から表示スペクトルに変換することができる。
また、出力側表示プロファイルは、出力側の表示スペクトルと表示信号との関係を与える情報を含んでいる。この出力側表示プロファイルを用いることにより、出力側の表示スペクトルを表示信号に変換することができる。
さらに、色空間変換プロファイルは、人の色知覚特性を表す等色関数を含んでいる。この色空間変換プロファイルを用いることにより、入力側表示スペクトルを、人の色知覚特性を考慮した上で、出力側表示スペクトルに変換することができる。
このようにスペクトルベースCMM224では、入力側表示プロファイルや出力側表示プロファイル等のデバイスプロファイルが信号値とスペクトルとの対応関係を与え、スペクトル空間がプロファイル間のインターフェースすなわちプロファイルコネクションスペース(PCS)となっている。
スペクトルから色を決定するための等色関数の情報は、上記色空間変換プロファイルが提供する仕組みになっており、物理量であるスペクトル情報から心理量である色情報への変換を、デバイスプロファイルとは無関係に設定することができるようになっている。
なお、スペクトルベースCMM224の処理手順は、必ずしも図26に示す通りである必要はなく、入出力の条件に応じて計算過程の結合などの最適な処理構成をとることが望ましい。
また、スペクトルベースCMM224は、上述した第1の実施形態の図8に示したものと同様であって、アルゴリズム選択部31と、信号変換部32と、を有して構成されている。
上記アルゴリズム選択部31は、入力側表示プロファイル入力部221、色空間変換プロファイル入力部222、および出力側表示プロファイル入力部223からそれぞれ入力したプロファイルデータと、ユーザー設定と、に基づいて、信号変換部32で使用する色変換アルゴリズムを選択する。
ユーザー設定は、スペクトルマッチングと測色マッチングとの何れかを選択する設定を含み、画像変換装置202のユーザーが、色変換を行うときに何れかのマッチングを選択する。
まず、ユーザー設定においてスペクトルマッチングが選択された場合には、アルゴリズム選択部31は、色空間変換プロファイル入力部222から入力した色空間変換プロファイルに等色関数がデータとして含まれるか否かを判定する。
ここで、色空間変換プロファイルに等色関数がデータとして含まれない場合には、アルゴリズム選択部31は、信号変換部32にモデル21信号処理部242(図27参照)を用いるためのアルゴリズム情報を出力する。
また、色空間変換プロファイルに等色関数がデータとして含まれる場合には、アルゴリズム選択部31は、信号変換部32にモデル22信号処理部243(図27参照)を用いるためのアルゴリズム情報を出力する。
一方、ユーザー設定において測色値マッチングが選択された場合には、アルゴリズム選択部31は、色空間変換プロファイル入力部222から入力した色空間変換プロファイルに含まれる等色関数の組の個数を入力する。
ここで、等色関数の組の個数が1の場合には、アルゴリズム選択部31は、モデル23信号処理部244(図27参照)を用いるためのアルゴリズム情報を出力する。
また、等色関数の組の個数が2以上の場合には、アルゴリズム選択部31は、モデル24信号処理部245(図27参照)を用いるためのアルゴリズム情報を出力する。
こうしてアルゴリズム選択部31は、選択したアルゴリズム情報と、入力側表示プロファイルと、色空間変換プロファイルと、出力側表示プロファイルと、を上記信号変換部32に出力する。
信号変換部32は、画像データ入力部212から入力した6原色表示信号を、アルゴリズム選択部31から入力したアルゴリズム情報に基づいて選択された変換方法(モデル21〜24信号処理部242〜245)により、入力側表示プロファイルと、色空間変換プロファイルと、出力側表示プロファイルと、を用いて出力側の6原色表示信号に変換し、変換後の6原色表示信号を画像データ出力部215に出力する。
図27は、信号変換部32の構成を示すブロック図である。
信号変換部32は、処理選択部241と、4つのモデル信号処理部、すなわち、モデル21信号処理部242と、モデル22信号処理部243と、モデル23信号処理部244と、モデル24信号処理部245と、を有して構成されている。
処理選択部241は、上記アルゴリズム選択部31から入力したアルゴリズム情報に基づいて、処理を行うモデル信号処理部を選択し、該アルゴリズム選択部31から入力した入力側表示プロファイル、色空間変換プロファイル、および出力側表示プロファイルと、上記画像データ入力部212から入力した6原色表示信号と、を選択したモデル信号処理部に出力するものである。
各モデル信号処理部は、この処理選択部241から入力側表示プロファイルと、色空間変換プロファイルと、出力側表示プロファイルと、入力側の6原色表示信号と、を入力し、入力側の6原色表示信号を出力側の6原色表示信号に変換して画像データ出力部215に出力する。
図28は、モデル21信号処理部242の構成を示すブロック図である。
モデル21信号処理部242は、スペクトル推定データ算出部251と、表示信号変換データ算出部252と、スペクトル推定部253と、表示信号変換部254と、を有して構成されている。
スペクトル推定データ算出部251は、入力した入力側表示プロファイルに含まれる6原色のスペクトルおよび階調特性を用いて、階調補正データおよびスペクトル推定マトリクスを算出し、スペクトル推定部253に出力する。
ここに、階調補正データは、6原色表示信号を、表示輝度と線形な信号値に補正するためのデータである。
また、スペクトル推定マトリクスは、6原色表示信号から401次元の表示スペクトルを算出するための401×6の要素からなるマトリクスである。
表示信号変換データ算出部252は、入力した出力側表示プロファイルに含まれる6原色のスペクトルおよび階調特性を用いて、6原色スペクトルと階調補正データとを算出し、表示信号変換部254に出力する。
ここに、階調補正データは、表示輝度と線形な信号値に対する6原色表示信号を与えるデータである。
スペクトル推定部253は、スペクトル推定データ算出部251から階調補正データとスペクトル推定マトリクスとを入力し、画像データ入力部212から入力した6原色表示信号に対して、階調補正を行い、マトリクス変換によりスペクトル推定を行い、401次元の被写体スペクトルを算出して、表示信号変換部254に出力する。
表示信号変換部254は、スペクトル推定部253から入力した入力側の表示スペクトルを、出力側の6原色ディスプレイでなる出力側表示装置203の6原色スペクトルにより表示した場合に、スペクトルの誤差を最小とする6原色表示信号に変換する。
その後、表示信号変換部254は、階調補正データを用いてこれらの6原色信号の階調補正を行い、画像データ出力部215に出力する。
図29は、モデル22信号処理部243の構成を示すブロック図である。
モデル22信号処理部243は、スペクトル推定データ算出部261と、表示信号変換データ算出部262と、スペクトル推定部263と、表示信号変換部264と、を有して構成されている。
スペクトル推定データ算出部261は、入力した入力側表示プロファイルに含まれる6原色のスペクトルおよび階調特性と、入力した色空間変換プロファイルに含まれる等色関数と、を用いて、階調補正データ、6原色スペクトル、および6原色測色値を算出し、スペクトル推定部263に出力する。
ここに、階調補正データは、6原色表示信号を表示輝度と線形な信号値に補正するためのデータである。
また、6原色スペクトルは、6原色表示信号から401次元の表示スペクトルを算出するための401×6の要素からなるマトリクスである。
表示信号変換データ算出部262は、入力した出力側表示プロファイルに含まれる6原色のスペクトルおよび階調特性と、入力した色空間変換プロファイルに含まれる等色関数と、を用いて、6原色スペクトル、6原色測色値、および階調補正データを算出し、表示信号変換部264に出力する。
スペクトル推定部263は、スペクトル推定データ算出部261から階調補正データと6原色スペクトルと6原色測色値とを入力し、画像データ入力部212から入力した6原色表示信号に対して、階調補正を行い、マトリクス変換によりスペクトル推定を行い、401次元の表示スペクトルを算出して、表示信号変換部264に出力する。
表示信号変換部264は、入力側表示スペクトルの測色値を正しく表示する拘束条件の下で、スペクトル推定部263から入力した表示スペクトルを6原色ディスプレイでなる出力側表示装置203の6原色スペクトルの線形和により表した場合に、スペクトルの誤差を最小とする6原色表示信号に変換する。このときの変換方法は、上述した第1の実施形態のモデル2信号処理部43における変換方法と同様であるために、説明を省略する。
その後、表示信号変換部264は、階調補正データを用いてこれらの6原色信号の階調補正を行い、画像データ出力部215に出力する。
図30は、モデル23信号処理部244の構成を示すブロック図である。
モデル23信号処理部244は、多次元測色値推定データ算出部271と、表示信号変換データ算出部272と、多次元測色値推定部273と、表示信号変換部274と、を有して構成されている。
多次元測色値推定データ算出部271は、入力した入力側表示プロファイルに含まれる6原色のスペクトルおよび階調特性と、入力した色空間変換プロファイルに含まれる等色関数と、を用いて、多次元測色値推定マトリクスおよび階調補正データを算出し、多次元測色値推定部273に出力する。
ここで、等色関数は、6原色ディスプレイの原色数以下のK個(ここでは6以下)の関数により構成されているものとする。なお、色空間変換プロファイルに(K+1)個以上の関数が記述されている場合は、その内のK番目までのデータが用いられる。
多次元測色値推定マトリクスは、6原色表示信号からK次元の表示信号の測色値を算出するためのK×6の要素からなるマトリクスである。
すなわち、多次元測色値推定マトリクスは、各原色の発光スペクトルをp
j(λ)、等色関数をt
k(λ)とすると、
を成分とするN×Kのマトリクスとなっている。
表示信号変換データ算出部272は、入力した出力側表示プロファイルに含まれる6原色のスペクトルおよび階調特性と、入力した色空間変換プロファイルに含まれる等色関数と、を用いて、6原色の多次元測色値および階調補正データを算出し、表示信号変換部274に出力する。
多次元測色値推定部273は、多次元測色値推定データ算出部271から入力した多次元測色値推定マトリクスを用いて、画像データ入力部212から入力した6原色表示信号に対して、階調補正を行い、マトリクス変換により多次元測色値に変換して、表示信号変換部274に出力する。
また、表示信号変換部274は、上述した第1の実施形態の図12に示した表示信号変換部74と同様であるために、説明を省略する。
その後、表示信号変換部274は、階調補正データを用いてこれらの6原色信号の階調補正を行い、画像データ出力部215に出力する。
図31は、モデル24信号処理部245の構成を示すブロック図である。
モデル24信号処理部245は、XYZ推定データ算出部281と、表示信号変換データ算出部282と、XYZ推定部283と、表示信号変換部284と、を有して構成されている。
XYZ推定データ算出部281は、入力した入力側表示プロファイルに含まれる6原色のスペクトルおよび階調特性と、入力した色空間変換プロファイルに含まれるL組のXYZ等色関数と、を用いて、L−XYZ推定マトリクスおよび階調補正データを算出し、XYZ推定部283に出力する。
L−XYZ推定マトリクスは、6原色表示信号からXYZを算出するための3×6の要素からなるマトリクスをL個有している。このL−XYZ推定マトリクスの算出は、上述したモデル23信号処理部244の多次元測色値推定マトリクスの算出と同様であるために、ここでは説明を省略する。
さらに、表示信号変換データ算出部282および表示信号変換部284は、上述した第1の実施形態の図13に示したモデル4信号処理部45の表示信号変換データ算出部82および表示信号変換部84とそれぞれ同様であるために、説明を省略する。
このような第3の実施形態によれば、カラー画像入力手段とカラー画像出力手段の両方が表示装置である場合にも、上述した第1,第2の実施形態とほぼ同様の効果を奏することができる。
なお、上述した第1の実施形態ではマルチバンドカメラをカラー画像入力手段とするとともに6原色ディスプレイをカラー画像出力手段としたシステム、第2の実施形態ではマルチバンドカメラをカラー画像入力手段とするとともに6色プリンタをカラー画像出力手段としたシステム、第3の実施形態では入力側表示装置をカラー画像入力手段とするとともに出力側表示装置をカラー画像出力手段としたシステム、についてそれぞれ説明したが、本発明は、これらの組み合わせに限定されるものではない。
例えば、ディスプレイ(入力側表示装置)をカラー画像入力手段とするとともにプリンタをカラー画像出力手段とするシステム、プリンタをカラー画像入力手段とするとともにプリンタをカラー画像出力手段とするシステム、カメラをスキャナに置き換えたシステム、プリンタを印刷機に置き換えたシステム、等に対してももちろん有効である。
さらに、これらの構成を組み合わせることによって得られる、任意の数の装置から構成されるシステムに対しても、同様に有効である。
また、信号変換部における信号処理のアルゴリズムは、上述した各実施形態において説明したようなものに限定されることはなく、同様のインタフェースを有するモジュールであれば、任意の信号処理手段に替えることや追加することが可能である。
そして、上述した各実施形態においては、レンダリング照明光と、観察環境の照明光や周囲の観察環境と、が異なる場合において発生する、色の見えの違いについては言及していないが、レンダリング照明光と、観察照明光の情報と、色の見えモデルと、を用いて、補正する処理を組み込むことも可能である。
図32から図37は本発明の第4の実施形態を示したものであり、図32はスペクトルベースCMMによる撮影信号から表示信号への変換の概念を示す図である。この第4の実施形態において、上述の第1から第3の実施形態と同様である部分については同一の符号を付すなどして説明を省略し、主として異なる点についてのみ説明する。
本実施形態のスペクトル・色再現システムは、基本的に、上述した第1の実施形態と同様に構成されているが、スペクトルベースCMMと、各プロファイルのデータ構成と、が該第1の実施形態とは異なっている部分である。
図32に示すように、入力プロファイルは、撮影信号と、入力プロファイルのPCSである被写体分光反射率、被写体スペクトル、または被写体測色値の何れかと、の関係を与える情報を含んでいる。この入力プロファイルを用いることにより、撮影信号を、被写体分光反射率、被写体スペクトル、または被写体測色値の何れかに変換することができる。
表示プロファイルは、表示プロファイルのPCSである表示スペクトルまたは表示測色値の何れかと、表示信号と、の関係を与える情報を含んでいる。この表示プロファイルを用いることにより、表示スペクトルまたは表示測色値を表示信号に変換することができる。
色空間変換プロファイルは、分光反射率に対してスペクトルを算出するために用いられるレンダリング照明光スペクトルと、必要に応じて人の色知覚特性を表す等色関数と、を色空間変換プロファイルのPCSのデータとして含んでいる。この色空間変換プロファイルを用いることにより、分光反射率に対しては所定照明光下におけるスペクトルを算出し、スペクトルを人の色知覚特性を考慮した上で、表示側のスペクトルに変換することができる。
プロファイルPCS変換は、入力プロファイル、色空間変換プロファイル、および表示プロファイルのそれぞれのPCSを、スペクトルCMMが用いるCMM−PCSのデータに変換して、それぞれCMM−PCS推定、CMM−PCS変換、表示信号変換へ出力する。
このようにスペクトルベースCMM24では、入力プロファイルや表示プロファイル等のデバイスプロファイルが信号値とそれぞれのプロファイルのPCSとの対応関係を与え、プロファイルPCS変換において、それぞれのプロファイルのPCSがCMM−PCSに変換され、CMM−PCSが間接的にプロファイル間のインターフェースとなる。
CMM−PCS推定、CMM−PCS変換、表示信号変換は、プロファイルPCS変換から、CMM−PCSをインターフェースとした入力プロファイル、色空間変換プロファイル、表示プロファイルのデータを入力し、CMM−PCSにおいて上述した第1の実施形態の図7で説明したのと同様の処理が行われる。
なお、スペクトルベースCMM24の処理手順は、必ずしも図32に示す通りである必要はなく、入出力の条件に応じて計算過程の結合などの最適な処理構成をとることが望ましい。
入力プロファイルは、任意の分光反射率、スペクトル、または測色値をPCSとすることができ、色空間変換プロファイルと表示プロファイルは、任意のスペクトルまたは測色値をPCSとすることができる。
各プロファイルは、PCSとして用いた空間を規定する情報をPCS情報として含んでいる。このPCS情報は、CMM−PCSの部分空間として各プロファイルのPCSを規定するものである。
すなわち、CMM−PCS空間のデータをS
i (CMM)(i=1〜R’)、プロファイルのPCSをS
j (PRO)(j=1〜R)とすると、
により、プロファイルのPCSをCMM−PCS空間と関係付けるPCSの基底関数ρji(i=1〜R’,j=1〜R)を、PCS情報として含んでいる。
ρji(i=1〜R’,j=1〜R)は、任意のデータを用いることができるが、予め登録した幾つかのデータを用いる場合には、実際のデータの代わりにそのデータの識別子をPCS情報として含むこともできる。
ここでは、測色値CIE1931XYZを規定するデータとして、CIE1931等色関数とその識別子を予め登録しておくものとする。この場合には、CIE1931等色関数x(λ),y(λ),z(λ)がそれぞれ数式7のρ1i,ρ2i,ρ3i(i=1〜R)に相当する。
図33は、スペクトルベースCMM24の構成を示すブロック図である。
スペクトルベースCMM24は、処理選択手段たるアルゴリズム選択部331と、信号変換部332と、を有して構成されている。
アルゴリズム選択部331は、入力プロファイル入力部21、色空間変換プロファイル入力部22、および表示プロファイル入力部23からそれぞれ入力したプロファイルデータから、信号変換部332において用いるCMM−PCSを選択する。
CMM−PCSは、スペクトル空間または測色値空間であり、スペクトル空間は380nm〜780nmを1nm間隔で刻む401次元の空間、測色値空間は任意の等色関数により規定される任意次元の測色値からなる空間である。
アルゴリズム選択部331は、まず、入力プロファイルと表示プロファイルのPCSを調べて、両方のPCSが測色値である場合には、次元数の低いPCSをCMM―PCSとして選択する。
この場合、次元数の高い測色値から次元数の低い測色値への変換は、次元数の低い等色関数を次元数の高い等色関数により最小自乗近似するマトリクスを用いたマトリクス変換により算出する。
また、入力プロファイルと表示プロファイルのPCSの内の一方が測色値で他方がスペクトルである場合には、アルゴリズム選択部331は、測色値をPCSとして選択する。
この場合、スペクトルから測色値への変換は、測色値をPCSとするプロファイルが保有する等色関数を用いて、上述した数式2と同様の計算を行うことにより算出する。
さらに、入力プロファイルと表示プロファイルのPCSの両方がスペクトルである場合には、アルゴリズム選択部331は、スペクトルをCMM−PCSとして選択する。ただし、入力プロファイルのPCSが分光反射率である場合には、色空間変換プロファイルからレンダリング照明光スペクトルを入力して、スペクトルとした上で、上記手段によりCMM−PCSを算出する。
また、各プロファイルのスペクトル空間が、CMM−PCSのスペクトル空間と異なる場合には、PCSのスペクトル空間を規定するPCS情報を用いて、CMM−PCSのスペクトル空間に変換する。
アルゴリズム選択部331は、CMM−PCSが測色値である場合には、信号変換部332にモデル31信号処理部342(図34参照)を用いるためのアルゴリズム情報を出力する。
アルゴリズム選択部331は、CMM−PCSがスペクトルである場合には、色空間変換プロファイルに等色関数が含まれるか否かを判定する。
ここで、色空間変換プロファイルに等色関数がデータとして含まれる場合には、アルゴリズム選択部331は、信号変換部332にモデル32信号処理部343(図34参照)を用いるためのアルゴリズム情報を出力する。
また、色空間変換プロファイルに等色関数がデータとして含まれない場合には、アルゴリズム選択部331は、信号変換部332にモデル33信号処理部344(図34参照)を用いるためのアルゴリズム情報を出力する。
アルゴリズム選択部331は、選択したアルゴリズム情報と、入力プロファイルと、色空間変換プロファイルと、表示プロファイルと、を信号変換部332に出力する。
信号変換部332は、画像データ入力部12から入力した16バンド撮影信号を、アルゴリズム選択部331から入力したアルゴリズム情報に基づいて選択された変換方法(モデル31〜33信号処理部342〜344)により、入力プロファイルと、色空間変換プロファイルと、表示プロファイルと、を用いて6原色表示信号に変換し、変換後の6原色表示信号を画像データ出力部15に出力する。
図34は、信号変換部332の構成を示すブロック図である。
信号変換部332は、処理選択部341と、3つのモデル信号処理部、すなわち、モデル31信号処理部342と、モデル32信号処理部343と、モデル33信号処理部344と、を有して構成されている。
処理選択部341は、アルゴリズム選択部331から入力したアルゴリズム情報に基づいて、該アルゴリズム選択部331から入力した入力プロファイル、色空間変換プロファイル、および表示プロファイルと、上記画像データ入力部12から入力した16バンド撮影信号と、を所定のモデル信号処理部に出力する。
各モデル信号処理部は、この処理選択部341から入力プロファイルと、色空間変換プロファイルと、表示プロファイルと、16バンド撮影信号と、を入力し、16バンド撮影信号を6原色表示信号に変換して画像データ出力部15に出力する。
図35は、モデル31信号処理部342の構成を示すブロック図である。
モデル31信号処理部342は、測色値推定データ算出部351と、表示信号変換データ算出部352と、測色値推定部353と、表示信号変換部354と、を有して構成されている。
測色値推定データ算出部351は、入力した入力プロファイルに含まれる測色値推定マトリクスおよび階調補正データを、測色値推定部353に出力する。
測色値推定マトリクスは、16バンド撮影信号からK次元の被写体測色値を算出するためのK×16の要素からなるマトリクスである。この測色値推定マトリクスは、入力プロファイルのデータとして与えられている場合と、入力プロファイルのカメラ分光感度、撮影照明光スペクトルと被写体分光反射率の統計データ、色空間変換プロファイルのレンダリング照明光スペクトルと等色関数とから算出される場合と、がある。
また、階調補正データは、上述した第1の実施形態と同様の計算を行うことにより算出されたものである。
表示信号変換データ算出部352は、入力した表示プロファイルに含まれる6原色測色値および階調補正データを、表示信号変換部354に出力する。
6原色測色値は、表示プロファイルのデータとして与えられている場合と、表示プロファイルの6原色スペクトルと色空間変換プロファイルの等色関数とから算出される場合と、がある。
また、階調補正データは、上述した第1の実施形態と同様の計算を行うことにより算出されたものである。
測色値推定部353は、測色値推定データ算出部351から階調補正データおよび測色値推定マトリクスを入力し、画像データ入力部12から入力した16バンド撮影信号に対して、階調補正を行い、マトリクス変換により測色値推定を行い、K次元の被写体測色値を算出して、表示信号変換部354に出力する。
表示信号変換部354は、測色値推定部353から入力した被写体測色値を6原色ディスプレイ3により正確に表示するための6原色表示信号に変換する。ここに、被写体測色値から6原色表示信号へ変換する手段は、上述した第1の実施形態におけるモデル3信号処理部44と同様であるために、説明を省略する。
その後、表示信号変換部354は、階調補正データを用いてこれらの6原色信号の階調補正を行い、画像データ出力部15に出力する。
図36は、モデル32信号処理部343の構成を示すブロック図である。
モデル32信号処理部343は、測色値推定データ算出部361と、表示信号変換データ算出部362と、測色値推定部363と、表示信号変換部364と、を有して構成されている。
これらの内の測色値推定部363および表示信号変換部364は、上述したモデル31信号処理部342の測色値推定部353および表示信号変換部354とそれぞれ同様であるために、説明を省略する。
測色値推定データ算出部361は、入力した入力プロファイルに含まれるカメラ分光感度、撮影照明光スペクトル、および被写体分光反射率の統計データと、入力した色空間変換プロファイルに含まれる等色関数と、を用いて、測色値推定マトリクスおよび階調補正データを算出し、測色値推定部363に出力する。
表示信号変換データ算出部362は、入力した表示プロファイルに含まれる6原色スペクトルおよび階調特性と、入力した色空間変換プロファイルに含まれる等色関数と、を用いて、6原色測色値および階調補正データを算出し、表示信号変換部364に出力する。
図37は、モデル33信号処理部344の構成を示すブロック図である。
モデル33信号処理部344は、スペクトル推定データ算出部371と、表示信号変換データ算出部372と、スペクトル推定部373と、表示信号変換部374と、を有して構成されている。
これらの内のスペクトル推定部373および表示信号変換部374は、上述した第1の実施形態におけるモデル1信号処理部42のスペクトル推定部53および表示信号変換部54とそれぞれ同様であるために、説明を省略する。
スペクトル推定データ算出部371は、入力した入力プロファイルを用いて、CMM−PCSで規定されるスペクトル推定マトリクスおよび階調補正データを算出し、スペクトル推定部373に出力する。
表示信号変換データ算出部372は、入力した表示プロファイルを用いて、CMM−PCSで規定される6原色表示スペクトルおよび階調補正データを算出し、表示信号変換部374に出力する。
このような第4の実施形態によれば、上述した第1から第3の実施形態とほぼ同様の効果を奏するとともに、カラー画像入/出力手段の色再現特性として、任意の分光反射率、スペクトル、測色値との対応関係を与える情報をもたせることにより、色再現特性に記述するデータを、測定器の精度や再現目的に合わせた精度で記述することが可能となる。
また、個人差等による等色関数のばらつきを考慮した3以上の測色値や視野角等の違いに応じて、異なる等色関数を自由に用いることも可能となる。
さらに、色再現特性として測色値をもたせることにより、現行のカラーマネージメントシステムとの互換性を保ったシステムとすることができる。
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲内において種々の変形や応用が可能であることは勿論である。