JP4295719B2 - 高純度鉄先駆体により作成されるフィッシャ・トロプシュ触媒 - Google Patents

高純度鉄先駆体により作成されるフィッシャ・トロプシュ触媒 Download PDF

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Description

本発明は、フィッシャ・トロプシュ法に使用するための触媒の製造方法および本発明の方法により製造される触媒に関するものである。本発明の触媒は鉄と少なくとも1種の促進剤とからなっている。触媒は、高純度の鉄先駆体の作成からなり且つ触媒製造に際し名目量の水を使用する方法を介して作成される。高純度の鉄先駆体により作成される触媒粒子は実質的に汚染物を含まず、実質的に球状の粒子形状と比較的小さい粒子寸法分布範囲とを有する。
フィッシャ・トロプシュ合成は、メタンから重質ワックスに至る範囲の広スペクトルの飽和および不飽和炭化水素への合成ガス(主として一酸化炭素と水素との混合物)の接触変換を含む。たとえばアルコール、ケトン、アルデヒドおよびカルボン酸のような酸素化物もフィッシャ・トロプシュ合成により合成することができる。最初の市販フィッシャ・トロプシュ触媒はコバルト系であり、ドイツ国にて1935年の早くから使用されていた。フィッシャ・トロプシュ合成の開発の初期には、コバルトよりも高価でない金属を含む触媒の開発に関心が集まった。鉄が明瞭な選択であったが、鉄系フィッシャ・トロプシュ触媒の産業的使用は1950年代まで達成されなかった。そのとき以来、鉄系フィッシャ・トロプシュ触媒は固定床、流動床およびスラリー相反応器にて南アフリカでサソール社により工業規模で成功裏に使用されている。
鉄系フィッシャ・トロプシュ触媒の活性および選択性は、少量の促進剤の添加により著しく改善される。古典的な鉄系フィッシャ・トロプシュ触媒は銅および第I族金属(たとえばナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウムもしくはその組合せ)により促進される。鉄系フィッシャ・トロプシュ触媒は、これらが水素、一酸化炭素もしくは合成ガスで還元されている場合のみ活性である。銅が鉄酸化物の還元温度を顕著に低下させることが判明しており、従って触媒の焼結を防止する。第I族金属(たとえばカリウム)での促進は鉄酸化物の酸性を低下させ、これにより選択性を望ましくないメタンまで減少させること共にアルケンおよびワックス選択性を増大させる。第II族金属も使用しうるが、第I族金属がより効果的な促進剤である。たとえばSiOおよびAlのような結合剤も、構造一体性および鉄系触媒の寿命を増大させるべく使用しうるが、これらは一般に酸性であってメタン選択性の増大をもたらす。
鉄系フィッシャ・トロプシュ触媒の製造につき幾つかの方法が使用されている。フィッシャにより作成された最も古い触媒は、アルカリで処理された鉄旋盤屑であった。高圧力にて液体生成物は酸素化された化合物がリッチであり、それより低い圧力にて炭化水素が生成される。しかしながら、この方法により作成される鉄系触媒は急速に失活した。
鉄系フィッシャ・トロプシュ触媒の最も一般的な作成方法は沈殿である。典型的には、たとえば硝酸第二鉄のような鉄塩の溶液を塩基(たとえば水性アンモニアもしくは炭酸ナトリウム)で処理する。得られる鉄オキシヒドロキサイド(iron oxyhydroxide)沈殿物は反復洗浄および濾過されて、沈殿プロセスに際し形成された塩類(硝酸アンモニウムもしくは硝酸ナトリウム)を除去する。次いで、洗浄された濾過ケーキを乾燥させると共に焼成する。沈殿鉄触媒の銅および第I族金属による促進は、任意の時点で或いは乾燥および焼成工程の前もしくは後に行うことができる。最終的触媒は一般に高表面積のコランダム相鉄酸化物(α−Feもしくはヘマタイト)で構成される。
他の種類の鉄系触媒は融合鉄、支持鉄および焼結鉄を包含する。融合鉄触媒は、鉄鉱石および1種もしくはそれ以上の促進剤(たとえばSiO、Al、CaO、MgOおよびKO)を溶融させることにより作成される。得られる触媒は一般に主としてマグネタイト(Fe)で構成されると共に、極めて小さい表面積を有する。活性融合鉄触媒は、酸化物を水素により金属鉄まで還元するだけで達成することができる。還元された触媒は約10〜15m/gまでの表面積を有しうる。融合鉄触媒は高い構造一体性を特徴とし、そのままで流動床操作(サソール社)に充分適している。しかしながら、比較的小さい表面積は典型的な沈殿鉄触媒と比較して劣った活性を有するフィッシャ・トロプシュ触媒をもたらす。支持鉄触媒は一般にたとえばAl、SiO、TiOもしくはZrOのような耐火性金属酸化物に鉄塩の溶液を含浸させて作成される。この含浸は初期湿潤化技術により或いは過度の湿潤化に続く減圧乾燥により行うことができる。支持鉄触媒は、鉄質量基準で沈殿鉄触媒に類似したフィッシャ・トロプシュ活性を有する。しかしながら、これらは典型的には触媒容積基準で劣っている。支持鉄触媒は金属鉄支持体の酸性を受けることが避けられず、望ましくないメタンの選択性を増大させる。
沈殿鉄触媒は一般に、ここに記載された他の種類の鉄触媒よりも優れたフィッシャ・トロプシュ触媒と見なされる。沈殿鉄触媒製造の主たる欠点は高コストを含み、この方法は労力を要し、副生成物は環境に有害である。硝酸鉄が沈殿鉄触媒の好適な鉄供給源である。何故なら、塩化鉄もしくは硫酸鉄からの塩素および硫黄の汚染が、得られるF−T触媒の活性に悪影響を及ぼすからである。硝酸鉄は、洗浄プロセスにより解消せねばならない窒素酸化物をもたらす硝酸における鉄金属の蒸解により製造される。必要とされるこの洗浄工程はプロセスに追加コストを付加する。更に、沈殿法は極めて粘性かつゼラチン質の鉄水酸化物もしくは鉄オキシハイドレート先駆体の形成をもたらす。この粘性先駆体は、流動床用途につき球状かつ耐摩耗性の触媒に形成するのが極めて困難である。
洗浄および濾過工程を減少させ或いは排除すると共に環境への放出が最小となる鉄系フィッシャ・トロプシュ触媒の製造方法が好ましい。産業的観点から論理的なプロセスは、高純度および大表面積を有する市販入手しうる鉄酸化物を促進させ、形成させ、乾燥し、かつ焼成することである。市販の鉄酸化物は容易に入手できる。しかしながら、これらは一般に塩酸もしくは硫酸による鋼材の処理により作成される。これら鉄酸化物は、フィッシャ・トロプシュ触媒のための原料として使用しえなくするような塩化物および硫黄を含め著量の不純物を含有する。当業界にて知られるのように、市販鉄酸化物(赤色もしくは黄色鉄酸化物)の不純物は、極めて高い温度におけるピックリングプロセスにより極めて低レベルまで減少させることができる。しかしながら、ピックリングプロセスの極端な条件のため鉄酸化物の表面積は一般に10m/gよりも小さく、鉄酸化物を触媒用途には不適当にする。
鉄と少なくとも1種の促進剤とからなるフィッシャ・トロプシュ触媒は、鉄金属からの高純度鉄酸化物の作成からなる方法を介して作成される。高純度鉄酸化物で作成される触媒粒子は実質的に汚染物(特にハロゲン、窒素および硫黄)を含まず、実質的に球状の粒子形状と比較的狭い粒子寸法分布範囲と種々の触媒用途に適する約100m/gまでの表面積とを有する。
この方法は、鉄金属を緩和な有機酸および空気と最少量の水の存在下に反応させることからなっている。本発明における水消費の量は従来の沈殿法で使用される量よりも顕著に少なく、その結果として、硫酸塩、硝酸塩もしくは塩化物を含有する廃水がこのプロセスにて最少量となり或いは全く生じない。得られる鉄酸化物スラリーを次いで微粉砕すると共に、促進剤を添加する。このスラリーを噴霧乾燥させて最終触媒を形成させる。この方法は鉄金属を使用するので、たとえば硫黄および塩素のような潜在的汚染物のレベルを綺麗な金属から出発することにより最少量に保つことができる。更に鉄金属で出発することにより、廃水の量が従来技術の触媒沈殿におけるよりも顕著に低くなるよう鉄酸化物濾液を洗浄することにより除去することが必要となる残留物質が存在しなくなる。更にスラリーを反復して洗浄および濾過する必要がないので、生成時間が従来の触媒作成よりも短くなる。
好適実施形態の説明
本発明の触媒はフィッシャ・トロプシュ(F−T)プロセスに使用することを意図する。触媒組成は従来技術のF−T触媒に類似し、鉄と少なくとも1種の促進剤とを含む。しかしながら、触媒を作成するプロセスは新規であり、本発明の触媒はたとえば硫黄および塩素のような汚染物が一層少なく、従来技術のF−T触媒よりも効率的に製造することができる。
フィッシャ・トロプシュ法は表面触媒重合プロセスであって、合成ガス(水素ガスと一酸化炭素との混合物)を広範囲鎖長および官能性を有する炭化水素まで変換する。典型的には、フィッシャ・トロプシュ法に使用する触媒は、効率的な一酸化炭素吸着剤であると共に水素化反応につき効果的である少なくとも1種の金属(たとえば鉄、コバルトおよびニッケル)を含む。鉄もしくはコバルトを含む触媒が所定範囲の炭化水素の製造につき好適である。ニッケル系触媒は多量のメタンを生成する傾向を有し、ルテニウム系触媒は反応条件に応じ主としてメタンまたは高溶融性ワックスを発生する。本発明の触媒は全触媒重量に基づき鉄を含め約35〜約70重量%の鉄を含み、一層好適な具体例では触媒は約56〜約70重量%の鉄を含む。
フィッシャ・トロプシュ触媒(特に鉄触媒)は一般に少なくとも1種の促進剤をも含み、この促進剤は触媒の選択された性質を改善すべく或いは触媒活性および/または選択性を改変すべく添加される。しかしながら促進剤の添加は、実質的に球状の形状と比較的狭い粒子寸法分布とを有する触媒粒子を作成するには必要とされない。鉄系触媒につき従来技術は銅、アルカリ金属およびアルカリ土類金属(たとえばナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムおよびその組合せ)が効果的促進剤であると教示している。他の金属を所望に応じ使用者により置換して触媒特性を改変し或いは触媒の活性および/または選択性を改変することもできる。たとえばフィッシャ・トロプシュ触媒は硼素、セリウム、クロム、銅、イリジウム、鉄、ランタン、マンガン、モリブデン、パラジウム、白金、レニウム、ロジウム、ルテニウム、ストロンチウム、タングステン、バナジウム、亜鉛、酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化ルビジウム、酸化セシウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化ジルコニウムおよび他の稀土類金属(たとえばスカンジウム、イットリウム、プラセオジミウム、ネオジミウム、プロメチウム、サマリウム、ヨーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウムおよびその組合せよりなる群から選択される促進剤で作成されている。促進剤は一般に鉄よりも低い濃度にて添加され、本発明においては促進剤は好ましくは全触媒重量の約0.002〜約40重量%、より好ましくは約0.01〜約1重量%を占める。
更にフィッシャ・トロプシュ触媒の物理的構造も触媒活性に影響を及ぼし、当業界で知られるように特定種類の反応器につき適性な触媒設計の選択は工業生産者に比較的高い生産速度および比較的低い維持費をもたらす。粒子強度および摩耗耐性を含め触媒の構造もしくは機械的性質は触媒の化学的安定性に依存すると共に、触媒粒子の寸法および形状により影響を受ける。触媒粒子の形状および寸法は更にたとえば流動分布および圧力低下のような性質にも影響を与えうる。
本発明において触媒組成は従来技術のフィッシャ・トロプシュ触媒の組成に類似するが、触媒を作成するプロセスは実質的に汚染物を含まず且つ実質的に球状の粒子形状と比較的狭い粒子寸法分布範囲と大きい表面積とを有する触媒をもたらす。広義に言えば、本発明の好適具体例による触媒を作成する方法は鉄金属を緩和な有機酸および空気で直接処理して鉄酸化物スラリーを形成させ、次いで激しくスラリーを小ミクロン寸法まで微粉砕し、次いで1種もしくはそれ以上の促進剤をスラリーに添加し、次いでスラリーをホイールアトマイザで噴霧乾燥することを含む。必要に応じ水をプロセスに添加して各材料の混合を可能にする(ここで用いる「汚染物」という用語は、フィッシャ・トロプシュ触媒の性能に悪影響を与えることが当業界で知られた元素もしくは化合物を意味する。或る種の一般的に認められた汚染物は硫黄および塩素である)。
より詳細には、本発明のフィッシャ・トロプシュ触媒を作成するには鉄金属を常温にて水性媒体中で緩和な有機酸と反応させ、次いで混合物を通気する。鉄金属は粉末、顆粒、球体、チップまたは約1μm〜約500μmの平均直径を有する他の形態とすることができる。1具体例において、鉄金属は約40μm〜約150μmの平均直径を有するミクロスフェロイダル形状である。更に鉄金属は実質的に汚染物フリーとすべきであるが、微量の炭素、マンガン、ニッケル、銅、珪素およびその組合せが存在してもよい(ここで使用する「微量」とは組合せ全要素につき約1.5重量%未満と規定される)。有機酸は好ましくは、少なくとも1個のカルボン酸基を有すると共に約0.5〜約6の常温におけるpKを有するカルボン酸である。たとえば蟻酸、酢酸、グリコール酸、蓚酸、ピルビン酸、マロン酸およびプロピオン酸を反応に使用することができる。
有機酸は撹拌下に脱イオン水に添加されて酸溶液を形成する。常温にて攪拌もしくは混合を維持しながら、鉄金属をゆっくり酸溶液に添加する。鉄が酸と反応するにつれ反応温度は上昇するが、添加の速度は温度が約100°Fを越えないよう充分ゆっくりすべきである。鉄金属を有機酸溶液に添加する場合、鉄は酸により酸化されると共に水素ガス(H)が発生すると思われる。水素ガスはベント内で空気により約4%未満の濃度、すなわち爆発限界以下に希釈することができ、或いは後バーナーに送って乾燥もしくは焼成に使用する熱を回収することもできる。
鉄金属を酸溶液に混入した後、たとえば空気、圧縮空気、酸素、過酸化水素、有機過酸物、オゾンまたはその組合せのような追加酸化剤を溶液に添加する。1具体例において酸化剤は圧縮空気であり、これを混合タンク内に装着されたステンレス鋼空気スパージャを介し溶液に圧入するが、当業界で知られた各種他の手段も鉄/酸溶液に空気をバブリングさせるべく使用することができる。空気流を持続すると共に反応温度を実質上全部の遊離イオンが消費されて鉄スラリーが生成するまで約100°F未満に保つ。スラリーは水和物、鉄酸化物、鉄水酸化物、鉄オキシ水酸化物もしくはその組合せを含むと思われる。全鉄消費時間は鉄供給源に応じ約24〜約48時間もしくはそれ以上の範囲とすることができる。反応の過程で、スラリーの色は灰色から褐色に変化する。典型的には、色変化は空気流を開始させた後に約45分間〜約6時間にわたり見られる。未反応の鉄はX線回折パターンにより検出することができる。
鉄スラリーはたとえば約40μm未満の平均粒子寸法のような小粒子寸法まで、好ましくは約10μm未満の粒子寸法まで微粉砕される。ここに示す各実施例においてはSEPR、ER 120A0.8/1.25mmセラミックビーズを有するネッチュミルが使用される。しかしながら、幾つかの異なる微粉砕技術が当業界で知られており、ネッチュミルの代わりに使用することができる。
スラリーにおける鉄含有量は当業界で知られた標準技術を用いて測定され、促進剤はスラリーに添加される。添加される特定促進剤および促進剤を添加する濃度は用途に応じて変化することができる。促進剤を結晶として添加する場合、結晶は少量の水に溶解され、その後にスラリーに添加することができる。促進剤の添加の後、生成スラリーは約10%〜約40%の固形物含有量を有する。
次いでスラリーをホイールアトマイザで噴霧乾燥する。入口温度は約500°Fに設定されると共に、出口温度は約300°Fに維持される。約50μm〜80μmの平均粒子寸法(約13,000rpmのホイール速度)が好適である。噴霧乾燥の後、触媒の表面積は約10m/g〜約40m/gとなる。噴霧乾燥された触媒を次いで焼成すると共に、スクリーニングして大粒子を除去する。約662°Fに設定されたボックス炉にて約4時間にわたり焼成した後、触媒は約10m/g〜約80m/gの表面積を有する。噴霧乾燥された触媒は実質的に球形状を有する。
以下、実施例により本発明を説明するが、これら実施例は如何なる点においても本発明を決して制限するものでない。実施例1は慣用の沈殿法を用いるフィッシャ・トロプシュ触媒の製造を説明し、実施例2〜8は本発明によるミニマル・エフルエント法を用いるフィッシャ・トロプシュ触媒の製造につき記載する。
実施例1:フィッシャ・トロプシュ触媒の比較例を次のような従来技術の沈殿法により作成する:
約133.55kgの硝酸鉄溶液(7%Fe(w/w);シェファード・ケミカル社、シンシナチ、OHから市販入手しうる)を45ガロンのステンレス鋼タンクに添加して約30ポンドの鉄酸化物を製造した。全容積が約42ガロンになるまで脱イオン水を添加した。硝酸鉄溶液を充分混合した。
次いで硝酸鉄溶液を約890cc/minの供給速度にて、約6.5リットルレベルに切断穴を有する約8リットルのステンレス鋼沈殿タンクに供給した。実質的に並流でアンモニア水溶液(29%w/w)を約400cc/minの初期供給速度にて沈殿タンクに供給した。合体させた溶液は沈殿容器内で約5分間の滞留時間を有した。沈殿容器における溶液を高剪断ミキサで混合すると共に、アンモニア水溶液の供給速度を沈殿容器における合体溶液が約10.0のpHを有するよう調整した。スラリーが生成すると共に沈殿容器からステンレス鋼オーバーフロータンク(約110ガロンの容積を有する)までオーバーフローさせ、ここで混合を持続する。硝酸鉄溶液が消費された後、アンモニア水溶液流を中断し、約50ガロンのスラリーがオーバーフロータンクに存在した。
スラリーをフィルタプレスを通し濾過して濾過物を形成し、濾過物の伝導率を当業界で知られた標準技術により測定した。濾過物もしくはフィルタケーキを固くなるまで空気により処理する。フィルタケーキを約110ガロンの容積を有するステンレス鋼タンクに充填すると共に、約36ガロンの脱イオン水を添加した。フィルタケーキと水とを完全に混合し、濾過プロセスを反復した。洗浄および濾過の各工程を濾過物が約300μSの伝導率を有するまで反復した(これには、たとえば約7回の洗浄および8回の濾過を必要とする)。
スラリーにおける鉄含有量を当業界で知られた標準技術により測定し、促進剤をスラリーに添加した。スラリーにおける約100gの鉄当たり、Cu(NO・21/2HO結晶(アルドリッチ社、ミルウォーキー、WIから市販入手しうる)またはCu(NO溶液(28%Cu、w/v(SCIプラント・マテリアルス社)を添加して約0.5gの銅を供給すると共に、硝酸カリウム(アルドリッチ社、ミルウォーキー、WIから市販入手しうる)を添加して約0.2gのKOを供給した。促進剤を結晶として添加する場合、結晶はスラリーに添加する前に最少量の水に溶解させることができる。
次いでスラリーをホイールアトマイザ(APVアンヒドロ・スプレー・ドライヤ社)で噴霧乾燥した。入口温度を約500°Fに設定すると共に、出口温度を約300°Fに維持した。50〜60μmの平均粒子寸法(13,000rpm)が好適である。次いで、噴霧乾燥された触媒を約662°Fにて4時間にわたりボックス炉内で焼成した。約20ポンドの触媒が得られた。
実施例2:フィッシャ・トロプシュ触媒の試料を実施例1に示した比較方法により作成したが、ただし洗浄および濾過の各工程後に約25ccの硝酸を約25ポンドのフィルタケーキに添加すると共に充分混合して、濾過ケーキが攪拌により流体となるようにした。水を必要に応じ添加して混合を容易化させた。溶液の固形物含有量は約15%〜約20%とすべきである。次いで鉄含有量を測定し、促進剤を添加し、スラリーを実施例1におけるように噴霧乾燥した。
実施例3:フィッシャ・トロプシュ触媒の試料を実施例1に示した比較方法により作成したが、ただし洗浄および濾過の各工程後に生成物をSEPR、ER 120A0.8/1.25mmセラミックビーズを有するネッチュミルで約2μm未満の平均粒子寸法まで微粉砕した。次いで鉄含有量を測定し、促進剤を添加し、スラリーを実施例1におけるように噴霧乾燥した。
実施例4:フィッシャ・トロプシュ触媒の試料を実施例2に示した方法により作成したが、ただし硝酸を添加した後に生成物をSEPR、ER 120A0.8/1.25mmセラミックビーズを有するネッチュミルにより約2μm未満の平均粒子寸法まで微粉砕した。
実施例5:フィッシャ・トロプシュ触媒の試料をここに示す本発明の方法により次のように作成した:
ステンレス鋼空気スパージャを50ガロンのナルゲンドラムの底部に装着した。約36ガロンの脱イオン水と約16.5ポンドの蟻酸(90%、スペシャルティ・ケミカルCo、LCC社、クリーブランド、TN、USAから市販入手しうる)をドラムに添加して充分混合した。約40ポンドの鉄粉末(パイロン社、ナイヤガラ・フォールス、NY、USAから市販入手しうると共に、商品コードAC−325により同定)を混合しながら蟻酸溶液に添加した。鉄粉末を、約100°F未満の反応温度を維持するように充分ゆっくり添加した。
鉄粉末を添加すると共にスラリーが形成し後、圧縮空気をスパージャに通過させた。空気流を持続すると共に反応温度を約100°Fに実質上全部の遊離イオンが消費されるまで或いは約24時間にわたり保持した。未反応鉄をXRDにより検出することができる。
鉄スラリーをSEPR、ER 120A0.8/1.25mmセラミックビーズを有するネッチュミルにより約2μm未満の平均粒子寸法まで微粉砕した。スラリーにおける鉄含有量を当業界で知られた標準技術により測定し、促進剤をスラリーに添加した。スラリーにおける約100gの鉄当たり、Cu(NO・21/2HO結晶(アルドリッチ社、ミルウォーキー、WIから市販入手しうる)またはCu(NO溶液(28%Cu、w/v(SCIプラントマテリアルス社)を添加して約0.5gの銅を供給すると共に、硝酸カリウム(アルドリッチ社、ミルウォーキー、WIから市販入手しうる)を添加して約0.2gのKOを供給した。促進剤を結晶として添加する場合、結晶はスラリーに添加する前に最少量の水に溶解させることができる。
次いでスラリーをホイールアトマイザ(APVアンヒドロ・スプレー・ドライヤ社)で噴霧乾燥させた。入口温度を約500°Fに設定すると共に、出口温度を約300°Fに維持した。50〜60μmの平均粒子寸法(13,000rpm)が好適である。次いで、噴霧乾燥された触媒を約662°Fにて4時間にわたりボックス炉内で焼成すると共にスクリーニングして、大粒子(−100もしくは−60メッシュ)を除去した。約40ポンドの触媒が得られた。
実施例6:フィッシャ・トロプシュ触媒の試料を実施例5に示した本発明の方法により作成したが、ただし鉄粉末AC−325をヘーガネスAB(ヘーガネス、スエーデン国)ASC−300により置換すると共に、通気時間を約48時間まで増大させた。
実施例7:フィッシャ・トロプシュ触媒の試料を実施例5に示した本発明の方法により作成したが、ただし鉄粉末AC−325をヘーガネスASC−300により置換すると共に、通気時間を約48時間まで増大させた。
実施例8:フィッシャ・トロプシュ触媒の試料を実施例5に示した本発明の方法により作成したが、ただし蟻酸を酢酸により置換すると共に、通気時間を約30時間まで増大させた。
実施例9:フィッシャ・トロプシュ触媒の試料を実施例5に示した本発明の方法により作成したが、ただし蟻酸を蓚酸により置換すると共に通気時間を約36時間まで増大させた。
実施例10:フィッシャ・トロプシュ触媒の試料を実施例5に示した本発明の方法により作成したが、ただし蟻酸をピルビン酸により置換すると共に通気時間を約36時間まで増大させた。
実施例11:フィッシャ・トロプシュ触媒の試料を実施例5に示した本発明の方法により作成したが、ただし蟻酸をグリコール酸により置換すると共に通気時間を約32時間まで増大させた。
実施例12:フィッシャ・トロプシュ触媒の試料を実施例5に示した本発明の方法により作成したが、ただし蟻酸をプロピオン酸により置換すると共に通気時間を約37時間まで増大させた。
上記したように、本発明で使用する水の量は、従来の沈殿法で用いる量よりも顕著に少ない。これは、たとえば実施例4(沈殿法)で使用した水の量と実施例5(本発明の方法)で使用した水の量とを比較して示すことができる。表Iに示すように、実施例4の方法により触媒を作成するには約4836ポンドの水投入を必要とする。実施例5の方法により触媒を作成するには約300ポンドの水、すなわち実施例4の方法で使用するよりも約16倍少ない水しか必要としない。
Figure 0004295719
更に、本発明の方法は沈殿方法よりも少ない水をプロセスに対するインプットとして必要とし、顕著に少ない廃水が発生する。たとえば実施例5では299.77ポンドの廃水を発生し、これは4855ポンドの廃水を発生する実施例4と対比される。更に、本発明の廃水は一層綺麗であり、すなわちこれは実質的に硫酸塩、硝酸塩もしくは塩化物を含有しない。
図1および2は、それぞれ実施例1および実施例6に記載したように作成された触媒の走査型電子顕微鏡図である。当業界で知られるように、粒子形状は触媒の物理的性質(たとえば粒子強度および摩耗耐性)に影響を及ぼしうる。球状粒子は非球状粒子よりも大の粒子強度を有する傾向があり、かつ一層摩耗耐性である。粒子寸法はたとえば流動分布および圧力低下のような触媒の性質に影響を及ぼし、更に工業操作につき比較的狭い範囲内の粒子が好適である。図2に示すように、鉄粉末から作成された触媒は実質的に球状の形状を有すると共に比較的狭い粒子寸法分布範囲を有する。比較として図1に示すように、従来技術の沈殿法により作成された触媒は変化した形状および粒子寸法を有する。
本発明の触媒はフィッシャ・トロプシュ法で使用することを意図し、従来技術のF−T触媒に類似した組成を有する。しかしながら、触媒を作成するプロセスはより少ない水を使用し、より少ない廃水を発生し、一層効率的であり、更に実質的に汚染物を含まずかつ実質的に球状の粒子形状と比較的小さい粒子寸法分布範囲とを有する最終製品をもたらす。触媒の組成および特定処理条件は、本発明の範囲を逸脱することなく改変しうることが了解されよう。
鉄酸化物からなると共に実施例1に記載した従来技術の沈殿法により作成される触媒の倍率100X(画像が8.5″x11″ペーパーにて作成された場合に測定)の走査型電子顕微鏡の第2電子画像である。 鉄酸化物からなると共に実施例2に記載した本発明の方法により作成された触媒の倍率100X(画像が8.5″x11″ペーパーのシートで作成された場合に測定)の走査型電子顕微鏡の第2電子画像である。

Claims (33)

  1. (a)有機酸水溶液を作成し;
    (b)前記有機溶液に鉄金属を添加し;
    (c)前記鉄金属が消費されると共に鉄スラリーが形成されるまで前記有機溶液に酸化剤を圧入し;
    (d)前記鉄スラリーをμm未満の平均粒子寸法まで微粉砕し;
    (e)前記微粉砕鉄スラリーに少なくとも1種の促進剤を添加して生成物スラリーを形成させ、前記生成物スラリーが前記促進剤の0%〜0%の固形物含有量を有するような濃度にて前記促進剤を添加し;
    (f)前記スラリーを噴霧乾燥させて粒子を形成させ;
    (g)前記粒子を焼成して前記触媒を形成させる
    ことを特徴とするフィッシャ・トロプシュ法に使用するための触媒の作成方法。
  2. 前記有機酸が、少なくとも1個のカルボン酸基を有するカルボン酸であって周囲温度にて.5〜のpKを有する請求項1に記載の方法。
  3. 前記有機酸を蟻酸、酢酸、グリコール酸、蓚酸、ピルビン酸、マロン酸およびプロピオン酸、並びにその組合せよりなる群から選択する請求項1に記載の方法。
  4. 前記鉄金属が粉末、顆粒、球体、チップまたはμm〜00μmの平均直径を有する他の形態である請求項1に記載の方法。
  5. 前記促進剤を銅、アルカリ金属、アルカリ土類金属およびその組合せよりなる群から選択する請求項1に記載の方法。
  6. 前記アルカリ金属をナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウムおよびその組合せよりなる群から選択する請求項5に記載の方法。
  7. 前記アルカリ土類金属をマグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムおよびその組合せよりなる群から選択する請求項5に記載の方法。
  8. 前記スラリーをホイールアトマイザにより噴霧乾燥させる請求項1に記載の方法。
  9. 前記触媒が全触媒重量に基づき35〜0重量%の鉄と.002〜0重量%の促進剤とからなる請求項1に記載の方法。
  10. 前記酸化剤が空気、圧縮空気、酸素、過酸化水素、有機過酸化物、オゾンおよびその組合せである請求項1に記載の方法。
  11. (a)有機酸水溶液を作成し、前記有機酸水溶液に鉄金属を添加し、前記鉄金属が消費されると共に鉄スラリーが形成されるまで前記有機酸水溶液に酸化剤を圧入することにより実質的に汚染物フリーの鉄スラリーを作成し;
    (b)前記鉄スラリーをμm未満の平均粒子寸法まで微粉砕し;
    (c)前記微粉鉄スラリーに少なくとも1種の促進剤を添加して生成物スラリーを形成させ;
    (d)前記スラリーを噴霧乾燥して粒子を形成させ;
    (e)前記粒子を焼成して前記触媒を形成させる
    ことを特徴とするフィッシャ・トロプシュ法に使用するための触媒の作成方法。
  12. 前記スラリーをホイールアトマイザにより噴霧乾燥させる請求項1に記載の方法。
  13. 前記生成物スラリーが0%〜0%の固形物含有量を有する請求項1に記載の方法。
  14. 前記触媒が全触媒重量に基づき35〜0重量%の鉄と.002〜0重量%の促進剤とからなる請求項1に記載の方法。
  15. 前記実質的に汚染物フリーの鉄スラリーを、鉄供給源を有機酸水溶液および酸化剤と反応させることにより作成する請求項1に記載の方法。
  16. 前記鉄供給源が鉄金属粉末、顆粒、球体、チップまたは00μmの平均直径を有する他の形態である請求項1に記載の方法。
  17. 前記有機酸溶液を水および周囲温度にて.5〜のpKを持った少なくとも1種のカルボン酸基を有するカルボン酸から作成する請求項1に記載の方法。
  18. 前記有機酸溶液を水と蟻酸、酢酸、グリコール酸、蓚酸、ピルビン酸、マロン酸およびプロピオン酸、並びにその組合せよりなる群から選択される酸とから作成する請求項1に記載の方法。
  19. 前記酸化剤が空気、圧縮空気、酸素、過酸化水素、有機過酸化物、オゾンおよびその組合せである請求項1に記載の方法。
  20. 前記促進剤を銅、アルカリ金属、アルカリ土類金属およびその組合せよりなる群から選択する請求項1に記載の方法。
  21. 前記促進剤を銅、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムおよびその組合せよりなる群から選択する請求項1に記載の方法。
  22. (a)有機酸水溶液を作成し、前記有機酸水溶液に鉄金属を添加し、前記鉄金属が消費されると共に鉄スラリーが形成されるまで前記有機酸水溶液に酸化剤を圧入することにより実質的に汚染物フリーの鉄スラリーを作成し;
    (b)前記鉄スラリーをμm未満の平均粒子寸法まで微粉砕し;
    (c)前記微粉スラリーを噴霧乾燥して粒子を形成させ;
    (d)前記粒子を焼成して前記触媒を形成させる
    ことを特徴とするフィッシャ・トロプシュ法に使用するための触媒の作成方法。
  23. 前記微粉砕スラリーをホイールアトマイザにより噴霧乾燥させる請求項2に記載の方法。
  24. 前記鉄スラリーが0〜0%の固形物含有量を有する請求項2に記載の方法。
  25. 前記実質的に汚染物フリーの鉄スラリーを、鉄供給源を有機酸水溶液および酸化剤と反応させると共に次いで少なくとも1種の促進剤を添加することにより作成する請求項2に記載の方法。
  26. 前記鉄供給源が鉄金属粉末、顆粒、球体、チップまたはμm〜00μmの平均直径を有する他の形態である請求項2に記載の方法。
  27. 前記有機酸溶液を水と蟻酸、酢酸、グリコール酸、蓚酸、ピルビン酸、マロン酸およびプロピオン酸、並びにその組合せよりなる群から選択される酸とから作成する請求項2に記載の方法。
  28. 前記酸化剤が空気、圧縮空気、酸素、過酸化水素、有機過酸化物、オゾンおよびその組合せである請求項2に記載の方法。
  29. 前記促進剤を銅、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムおよびその組合せよりなる群から選択する請求項2に記載の方法。
  30. 前記実質的に汚染物フリーの鉄スラリーを実質的に汚染物フリーの鉄酸化物を少なくとも1種の促進剤と反応させることにより作成する請求項2に記載の方法。
  31. 前記促進剤を銅、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムおよびその組合せよりなる群から選択する請求項3に記載の方法。
  32. 鉄供給源を有機酸および空気と反応させて鉄酸化物スラリーを形成させ、前記鉄酸化物スラリーを微粉砕し、前記鉄酸化物スラリーに1種もしくはそれ以上の促進剤を添加して生成物スラリーを形成させ、前記生成物スラリーを噴霧乾燥させると共に焼成することにより作成され、更に全触媒重量に基づき35〜0重量%の鉄と.002〜0重量%の促進剤とからなることを特徴とするフィッシャ・トロプシュ法に使用するための触媒。
  33. 前記鉄酸化物スラリーをμm未満の平均粒子寸法まで微粉砕することを更に含む請求項3に記載の触媒。
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