JP4293786B2 - 錠前装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、キー機能を有する携帯端末によって施解錠される従来のシリンダ錠部分に後付け可能な錠前装置に関し、特に、携帯端末を介してのIDコードの照合による第1の解錠を行なった後、簡易的な鍵挿入によって人力でシリンダ回動を行なう第2の解錠により錠の解錠を行なう錠前装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般的な機械警備システムでは、警備対象である契約先の建物あるいは住居に侵入者や火災などの異常事態を検知する各種センサおよび異常検知時に通報する通報装置を設置し、夜間や休日などの無人となった建物あるいは住人が外出して不在となった住居の警備を行なっている。上記センサが異常事態を検知すると、通報装置により電話回線などを介して警備会社の監視センタに対して異常事態を検知した旨の通報が行なわれる。警備会社の監視センタでは、上記通報を受けると、当該建物あるいは住居に警備員を派遣し、状況の確認を行なわせると共に、必要に応じて警察や消防など関係機関への出動要請なども行なう。現場に派遣された警備員は、事前に契約先から借り受けていた鍵を使用して建物内あるいは住居内に入り、上記センサにより検知された異常の原因を究明する。また、確認された異常の状況に応じて事態の収拾にあたり、あるいは被害の拡大防止のために必要な対処を行なう。
【0003】
ところで、このような警備環境において、契約先の建物あるいは住居に入るための鍵に関して以下に示すような背景およびその改善点が存在する。
【0004】
第1に、借り受けた鍵は、専用の鍵箱に収納し、その鍵箱を警備員の待機場所に保管するか、当該地区を担当する警備員の警備車両に載せるが、鍵の数が増加するにしたがって保管場所の確保が困難になる。たとえば、一人の警備員は200個前後の鍵を保持し、受け持ち地域(建物)の警備にあたっている。
【0005】
第2に、それぞれの警備員は警備すべき担当地区が割り当てられており、異常事態が検知された際に当該担当地区を担当する警備員がその発生現場に派遣される。ところが、当該地区を担当する警備員が別件などに対応しており、上記現場に向かうことができない場合、隣接する地区を担当する警備員を代わりに派遣しなければならない。このとき、隣接する地区を担当する警備員は当該地区の契約先の鍵を所持していないため、当該地区を担当する警備員と任意の場所で合流し、鍵の受け渡しを行なう必要があった。
【0006】
また、契約先の鍵を警備員の待機場所に保管している場合、当該地区を担当する警備員が出動中のとき、または隣接する地区を担当する警備員が代わりに派遣されるとき、いずれも当該地区の待機場所に寄ってから現場に向かう必要があった。このように、鍵の受け渡しを行なうために、現場に向かうまでの時間のロス、すなわち、非常時にもかかわらず異常事態が発生した場所まで鍵を持って行くまでに時間が掛かり過ぎてしまうことになる。このように、鍵の受け渡しなど煩雑な手続きが必要であった。
【0007】
さらに、上述の状況を図17を参照して説明する。図示するように、警備員a〜警備員dの担当地区がA地区〜D地区としてそれぞれ割り当てられており、各警備員はそれぞれの地区の待機場所で待機している。
【0008】
また、各地区の契約先建物に入るための鍵は、それぞれの地区の警備員が保管している。たとえば、A地区の契約先建物A1において異常事態が検知されると、監視センタからの指示にしたがって警備員aは契約先建物A1に派遣され、警備員aは状況確認などの対応を行なう。
【0009】
このとき、A地区の契約先A2において異常事態が検知されると、本来は警備員aが契約先A2に派遣されるべきであるが、契約先A1に出動中であるため対応することができない。そこで、隣接地区であるC地区の警備員cが契約先A2に派遣されるが、警備員cはA地区の契約先の鍵を持っていないため、警備員aと合流してから契約先建物A2に向かうか、待機場所Aに立ち寄ってから契約先A2に向かうため、直接、契約先建物A2に向かう場合と比較して大きく迂回することになる。そのため、現場に到着するまでの時間が余計にかかっていた。
【0010】
第3に、契約先において異常事態が検知され、警備員が状況確認のために建物内に入る場合の他、契約先に設置したセンサなどの警備員の機器が正常に機能するように、保守要員が点検作業や交換作業のために契約先の建物内に入る場合にも契約先から借り受けた鍵が使用される。このような場合においても、当該地区を担当する警備員と保守要員との間で鍵の受け渡しを行なう必要があるため、時間の無駄が生じると共に煩わしいものであった。
【0011】
第4に、上記第2、第3の背景・改善点における鍵の受け渡しを行なわなくても済むように、あらかじめ鍵を複製しておき、当該地区を担当する警備員および隣接する地区を担当する警備員に渡しておくことも考えられるが、その一方で各警備員が保管する鍵の数が大幅に増加する。鍵の数が増えるにしたがって盗難や紛失などが発生する危険性が高くなるという問題があり、また、契約先の多くは鍵を複製されることに対して抵抗があるなどの理由により実施することが困難である。
【0012】
第5に、ホテルなど部屋数の多い建物においては、多数の鍵を持ち歩かなくても済むように配慮して、マスターキー方式が採用されている。このマスターキー方式は、マスターキーを用いて複数の錠を施解錠するようにしたものである。この方式を適用すれば、警備員が保管しなければならない鍵の数を削減することができる。ところが、従来のマスターキー方式は、マスターキーを紛失したり盗難されたりした場合、他人に悪用されてしまうおそれがあった。万一、このような事態が発生すると、マスターキーに対応する錠をすべて交換するなどの必要があり、多大な費用および労力を要することになる。そのため、警備員が複数の契約先の建物に入館するための鍵として、従来のマスターキー方式を安易に導入するわけにはいかなかった。
【0013】
第6に、警備員が保管する鍵の数を削減するために、契約先建物の出入口などに使用される錠を電気錠に交換し、暗証番号などにより施解錠できるようにすることも考えられるが、電気錠自体が高価であること、また、後から電気錠を設置する場合、電源を確保するために配線工事を行なう必要があり、工事費が嵩むなどの理由から容易に電気錠を設置することができなかった。
【0014】
そこで、上述したような改善すべき点を解消するものとして、マスターキー機能を有する携帯端末およびそれらに用いられる電気錠が本出願人により提案されている(たとえば、特許文献1参照。)。特に、ここでは後付け電気錠の構造が示されている。この後付け電気錠は、扉の内部に設けられ、リンク機構を介してモータと錠の回転軸を接続し、モータの駆動力で回転軸を回動させる電気錠である。
【0015】
また、外筒とその外筒に収容され鍵挿入穴を備えた内筒とからなるシリンダの内筒の回動によって施解錠するシリンダ錠において、外筒と内筒とを機械的に係合すると共に鍵挿入穴に突出しない位置に設けられた移動可能なピンと、ピンを移動させる電磁アクチュエータと、内筒の鍵挿入穴に挿入された電子鍵から送信された鍵コードとあらかじめ記憶された鍵コードとが一致した場合に、上記係合しているピンを移動させて機械的係合を解除するように上記電磁アクチュエータを動作させる電子回路と、を外筒内に内蔵したシリンダ錠が開示されている(たとえば、特許文献2参照。)。
【0016】
なお、上記シリンダ錠は、電子鍵内に鍵コードが登録されているため、従来の物理的な鍵と同様に、錠が数多くある場合には数が増え、警備員による管理や前述したような受け渡し時の煩雑さが解消されず、さらに、紛失・盗難など時において悪用されるケースが考えられる。すなわち、電子錠それぞれに鍵コードが固定して登録されているので、紛失・盗難時などにおいて監視センタでの的確な処置(書き換えや消去など)が行なえず、管理、セキュリティの面において前述した改善点を解消するものではなかった。
【0017】
【特許文献1】
特開2002−21385号公報
【特許文献2】
特公平6−72505号公報
【0018】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記に示されるような従来の後付け電気錠は、従来のシリンダ錠を改造(追加加工)して扉に設置するものであり、外付けの場合には外観(デザイン性)を損なわないという制限があったり、あるいは扉内部の設ける場合には限られたスペースに設置するため、装置全体を小スペースに収納する必要があった。ところが、モータの駆動力でロック軸を回動する構造上、所定以上のトルクを発生させるモータと、モータの駆動力を伝達するリンク機構とを、小スペースに収納、あるいは外観上の制約から、小型で実現させなければならず、かつ後付けであるため特別な配線工事を不要にする理由から、電気錠に供給する電力も最小限にすることが要求される。
【0019】
すなわち、電気錠を施解錠し、シリンダを回動するためには大きなトルクのモータを搭載しなければならないが、既存のシリンダ錠に電気錠を付加するにはスペースや、電力が限られているので、大きなトルクのモータを使用することが容易ではなかった。
【0020】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、小型で、かつ小さな駆動電力で施解錠可能な後付け電気錠を実現すると共に、施解錠に伴う管理やセキュリティ性を向上させることの可能な錠前装置を提供することを目的とする。
【0021】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、請求項1にかかる錠前装置にあっては、所定の信号を送信可能な携帯端末を用いてシリンダ錠を施解錠する錠前装置において、前記シリンダ錠は、外筒と機械的に施錠可能な内筒と、外部ケースとロック可能な前記外筒と、を有し、前記シリンダ錠の前記外部ケースに対して前記外筒の回動をロックするロック手段と、前記ロック手段におけるロック/ロック解除の駆動を行なう駆動手段と、前記携帯端末を介してロック解除信号を受信し、当該ロック解除信号にしたがって前記駆動手段を駆動制御して前記ロック手段の前記外筒に対する前記外部ケースからのロックを解除して前記シリンダ錠を解錠可能状態にする制御手段と、を備え、前記解錠可能状態において、当該シリンダ錠に差し込むことが可能な形状を有する簡易キーを前記内筒に挿入し、前記シリンダ錠の前記内筒を前記外筒ごと回動することによって前記シリンダ錠を解錠状態にするものである。
【0022】
この発明によれば、ロック手段でシリンダが回動不可に固定され、シリンダ錠を解錠する際に、携帯端末が、監視センタとの相互通信によってロック手段のロックを解除するための信号を取得して当該信号を錠側に送信し、制御手段は、当該信号にしたがって駆動手段を制御し、簡易キーの挿入による人力によって回動可能状態にロック解除するように、ロック機構部分のみを電気系の構成にし、トルクがかかるシリンダの回動を簡易キーの挿入で人間が行なう構成とすることにより、最小限の電力供給および後付け電気錠自体の小型化が実現すると共に、監視センタと携帯端末との相互通信により、所定の認証で許可された者のみがシリンダのロックを解除した後、簡易キーを操作して解錠することにより、監視センタでの携帯端末の管理がリアルタイムでかつ的確に行うことが可能になる。なお、ロックを解除することにより、簡易キーを操作して施錠することも可能である。
【0023】
また、請求項2にかかる錠前装置にあっては、前記ロック手段は、前記シリンダ錠の外周部分に設けられた溝部と、前記溝部に係合部材を係合する係合部と、を備え、前記駆動手段は、通電/非通電により前記溝部に対し前記係合部材を往復移動する移動手段を有するものである。
【0024】
この発明によれば、請求項1において、ロック手段を、シリンダ錠の外周部分に設けられた溝部と、この溝部に係合ピンを係合する係合部と、係合部材を溝部に付勢する付勢手段とで構成することにより、小型のロック機構でシリンダの回動を阻止することができる。
【0025】
また、請求項3にかかる錠前装置にあっては、前記ロック手段は、前記シリンダ錠の外周部分に設けられた溝部と、前記溝部に係合部材を係合する係合部と、を備え、前記駆動手段は、通電/非通電によって収縮/復元することにより前記溝部に対し前記係合部材を往復移動し、前記溝部に対して係合/非係合動作する係合/非係合部を含むものである。
【0026】
この発明によれば、請求項1において、ロック手段を、シリンダ錠の外周部分に設けられた溝部と、この溝部に係合部材を係合する係合部とで構成すると共に、このロック手段を駆動する駆動手段として、通電/非通電によって収縮/復元する係合/非係合部を用い、係合部材を往復移動させる機構とすることにより、固定/解除機構が小型で実現する。
【0027】
また、請求項4にかかる錠前装置にあっては、前記ロック手段は、前記シリンダ錠の外周部分に設けられた溝部と、前記溝部に係合部材を係合する係合部と、を備え、前記駆動手段は、通電/非通電によって収縮/復元することにより前記溝部に対し前記係合ピンを螺旋回動させて、前記溝部に対して係合/非係合動作する係合/非係合部を含むものである。
【0028】
この発明によれば、請求項1において、ロック手段を、シリンダ錠の外周部分に設けられた溝部と、この溝部に係合部材を係合する係合部とで構成すると共に、このロック手段を駆動する駆動手段として、通電/非通電によって収縮/復元する係合/非係合部を用いて係合部材を螺旋回動させる機構とすることにより、固定/解除機構が小型で実現する。
【0029】
【発明の実施の形態】
以下、本発明にかかる錠前装置の好適な実施の形態について添付図面を参照し、詳細に説明する。なお、この実施の形態は一例を示すものであり、本発明はこの実施の形態に限定されるものではない。
【0030】
(業務の流れ)
本発明による携帯端末が使用されるのは、主につぎの2つの場合である。機械警備システムを導入した契約先において、夜間や休日など契約先の者が不在となり警備状態に設定されているとき、センサにより異常事態が検知されて監視センタに通報が行なわれたことにより、状況確認などのために警備員を派遣する第1の場合である。また、機械警備システムを導入した契約先において、センサなどの警備用機器を定期的または要請により点検・交換するための保全作業を、契約先の者が不在となる夜間や休日に行なう第2の場合である。
【0031】
なお、契約先の者が立会いのもとで行なう保全作業の場合や、建物に管理人が常駐している場合など、すでに解錠されており鍵が不要なときや、必要な鍵を現場で借り受けることができる状況であれば、携帯端末を用いる必要はない。
【0032】
以下、それぞれの場合における概要について説明する。
【0033】
(1)異常事態の検知による対応
図1を参照し、この異常事態の検知による対応について説明する。図において、警備対象である契約先建物A1には、機械警備装置を構成するセンサsと通報装置T、出入口扉に設けられた錠(ロック機構)kとその錠を施解錠する入力手段Rを備える。また、警備員a1は本発明に用いられる携帯端末1を所持している。なお、後述するように、携帯端末1から契約先建物Aの入力手段Rに対して錠(ロック機構)kのロックを解除するロック解除信号が送られるように構成されている(図9参照)。
【0034】
(a)異常事態の検知
契約先に設置したセンサsが異常事態を検知すると、通報装置Tにより、監視センタ100に対して異常事態を検知した旨の通報が行なわれる。
(b)警備員に対する派遣指示
監視センタ100は、上記通報を受けると、警備員a1に対し、無線や携帯電話を利用して現場に行き状況確認するように派遣指示を行なう。このとき、警備員a1が所持している携帯端末1に鍵データを送信する。
(c)警備員による状況確認
警備員a1は、監視センタからの指示にしたがって出動し、現場に到着すると、監視センタ100から送られた鍵データを利用し、携帯端末1により契約先建物の出入口などに設けられた錠(ロック機構)kを解錠して中に入り、センサsにより検知された異常事態の原因を確認する。また、確認された異常事態の原因に応じて事態の収拾や被害の拡大防止など、必要な対応を実行する。対応が完了すると、警備員a1は携帯端末1により錠(ロック機構)kを施錠し、退出する。
【0035】
(2)保全作業
つぎに、図2を参照し、保守要員b1による保全作業について説明する。
(d)契約先建物A1に設置したセンサsや通報装置Tなどの警備用機器の故障により点検・交換を要請された場合、あるいは警備用機器の定期点検などにより、保守要員b1が契約先建物A1に向かう場合、保守要員b1は監視センタ100に作業を行なう旨を連絡し、契約先の建物に入館することを伝えると共に鍵データの送信要求を行なう。
(e)契約先建物A1に入館する旨の連絡および鍵データの要求を受けると、監視センタ100は保守要員b1の持つ携帯端末1に鍵データを送信する。
(f)保守要員による保全作業
保守要員b1は、現場に到着すると、監視センタ100から受け取った鍵データを利用し、携帯端末1により契約先建物A1の出入口に設けられた鍵kを解錠して建物内に入り、センサなどの警備用機器の修理や点検などの保全作業を行なう。保全作業が完了すると、保守要員b1は携帯端末1により鍵kを施錠し、退出する。
【0036】
(3)現地において必要な鍵データのみを受け取る場合
つぎに、図3を参照し、他の手順として、警備員a1あるいは保守要員b1が契約先建物A1に出動し、現場において監視センタ100に必要な鍵データのみを要求し、送信してもらう場合について説明する。
【0037】
(g)警備員、保守要員の出動
契約先建物A1に設置したセンサsが異常事態を検知したことによる派遣指示、あるいは警備用機器の点検などを要請されたことにより、警備員a1あるいは保守要員b1が現場に向かう。なお、この時点では鍵データの送信は行なわれない。
(h)錠のID取得
警備員a1あるいは保守要員b1は、現場において施解錠する必要がある鍵が存在する場合、鍵の制御装置(不図示)から携帯端末1の錠のIDを送信させ、あるいは錠に付与された識別番号を警備員a1あるいは保守要員b1が確認して携帯端末1に入力し、施解錠する錠のIDを取得する。
(i)錠データの要求、錠データの送信
上記(h)において得られた錠のIDを監視センタ100に送信し、施解錠するための鍵データを要求する。監視センタ100では、要求にしたがって錠のIDに対応する鍵データを送信する。
(j)警備員、保守要員の対応
警備員a1あるいは保守要員b1は、監視センタ100から受け取った鍵データを利用し、携帯端末1により契約先建物A1に設けられた錠(ロック機構)kを解錠して建物内に入り、それぞれ必要な対応をとり、作業が完了すると携帯端末1により錠(ロック機構)kを施錠し、退出する。
【0038】
なお、鍵データを要求する場合、監視センタ100にいる監視員が直接対応するのでは、鍵データを送信するための手続きが監視員の負担になるおそれがある。そこで、監視センタ100の自動対応装置(不図示)を設置し、警備員a1あるいは保守要員b1が鍵データを要求する際、錠のIDなど識別情報を送ることにより、監視センタ100の自動対応装置が自動的に携帯端末1に送信すべき鍵データを選択し、送信するようにすればよい。
【0039】
(4)認証の必要性
前述した業務の流れにおいて、監視センタ100から警備員a1あるいは保守要員b1に対する鍵データの送信、携帯端末1による契約先の出入口に設けられた錠の施解錠が行なわれている。ここで、下記のような不正行為が想定されることから、不正行為を防止するための確認行為が必要となる。
【0040】
上記(b),(e),(i)における鍵データの送信の際、鍵データの不正入手および不正利用を防止するため、鍵データをどの携帯端末に送信したのか、鍵データを送信した際に携帯端末を使用していたのは誰であるかを確認しておく必要がある。特に、(e),(i)においては第三者が身分を偽って鍵データの送信を要求してくることも考えられるため、正規の携帯端末であるか、携帯端末を使用する正当な権限を与えられた者であるかを確認することは重要である。
【0041】
上記(c),(f),(j)における錠を施解錠する際、不正な施解錠を防ぐため、正規の携帯端末であるか、携帯端末を使用する正当な権限を与えられた者であるかを確認する必要がある。不正な施解錠としては、携帯端末と同等の機能を持つ不正な装置を製作して錠を施解錠する場合と、正規の携帯端末を第三者が強奪して不正使用する場合と、が考えられるので、これらの行為を防ぐための確認が重要である。
【0042】
したがって、上述した背景から、本発明による携帯端末を使用するにあたり、不正行為を防止するための確認処理として認証を取り入れるものとする。
【0043】
なお、この認証は必須となる手順ではなく、監視センタ100から警備員a1に対して指示を与える際の手順や通信方式により、認証を行なうまでもなく相手方の確認が行なえる場合や、錠の種類により認証を取り入れても不正使用の防止効果を得られない場合は不要である。
【0044】
(5)携帯端末の構成
つぎに、本発明にかかる携帯端末の構成例について図4を参照し、説明する。図4(a)は、携帯端末と携帯電話の機能が一体化された第1の構成例、図4(b)は、携帯端末を携帯電話に接続して利用する第2の構成例である。また、図5は、図4(a)の携帯端末と図4(b)の携帯端末のそれぞれの外観構成例を示す説明図である。
【0045】
図5(a)に示す携帯端末1aは、表示部11、操作部12、認証部13、制御部14、記憶部15、送受信部16、ロック解除信号出力部17、耐タンパ手段18、を備える。
【0046】
図5(b)に示す携帯端末1bは、携帯端末1aの送受信部16に代えて入出力部19を備えている部分が異なり、他の構成およびその機能は基本的に同じであるので、同一符号を付してある。したがって、図5(b)の場合、入出力部19と携帯電話(無線機など)20が図5(a)の送受信部16に相当する。
【0047】
表示部11は、操作部12を操作した際の入力確認、操作結果の確認など、各種情報を表示する。操作部12は、警備員a1または保守要員b1が錠(ロック機構)kを施解錠するための操作や、(必要に応じて)認証の際の暗証番号入力などを行なう。
【0048】
認証部13は、携帯端末1a(1b)が鍵データを受信する際、または契約先に設けられた錠を施解錠するために使用される際、その使用者が携帯端末1a(1b)を使用する正当な権限が与えられた者であるか否かを確認するための認証を行なう。認証の際は、暗証番号の入力や指紋照合、使用者が所有するIDカードを読み取るなど、既存の技術を適宜利用する。なお、指紋照合やIDカードを読み取る場合、指紋入力装置やカードリーダを携帯端末1a(1b)に接続するか、その機能を携帯端末に設けるなどが必要である。
【0049】
制御部14は、携帯端末1a(1b)の各種制御を行なう。記憶部15は、監視センタ100から受け取った鍵データを記憶する。送受信部16は、無線や携帯電話の機能を一体化し、監視センタ100との間の通信手段として利用すると共に鍵データの受信も行なう。監視センタ100との通信の際、認証用データの送受信もここで行なう。
【0050】
ロック解除信号出力部17は、ロック解除するためのロック解除信号を送出するものであり、契約先に設置された錠を施解錠させるために設けられたカードリーダなどの入力手段に対して施解錠信号を送信し、錠を施解錠する。なお、施解錠信号は、直接施解錠するために用いられる信号に限らず、施解錠の際に用いられる識別情報であってもよい。
【0051】
耐タンパ手段18は、携帯端末1a(1b)が分解されるなどして不正に鍵データが奪われるのを防止するため、携帯端末1a(1b)が分解されたことを検知すると、鍵データを強制的に消去する。すなわち、鍵データを絶対に第3者に漏れないように、耐タンパ性(tamper resistance)を確保する。また、鍵データ以外に不正入手されたくない情報がある場合、それらも同時に消去するようにしてもよい。
【0052】
入出力部19は、携帯電話20a、無線機20bなどの他の無線機20が接続され、信号の授受を行なう。
【0053】
より高いレベルのセキュリティが要求される場合において、携帯端末が正規のものであることを確認するための認証を行なう場合、認証と施解錠信号の出力を一連のものとして行ない、認証により正規の携帯端末であることが認められた上で施解錠が行なわれるようにする。
【0054】
なお、送受信部16(入出力部)および施解錠信号出力部17は共用してもよい。その他、携帯端末1a(1b)は電源を供給するバッテリ(不図示)を備える。後付け電気錠を用いる場合、電気錠装置を駆動させるための電源を供給するようにしてもよい。
【0055】
本発明による携帯端末1a(1b)は、監視センタ100との通信により、監視センタ100から鍵データを受信する。このとき、以下に示す通信手段のいずれかを用いることで実現される。
【0056】
(6)無線機との接続
監視センタ100と警備員a1あるいは保守要員b1との間で、監視センタ100からの指示や警備員からの報告を行なう際、無線が利用されている場合は、無線機20aと携帯端末1bとを接続ケーブルなどを利用して接続し、鍵データの受信などを行なえばよい。
【0057】
(7)携帯電話、PHSとの接続
監視センタ100と警備員a1あるいは保守要員b1との間で、監視センタ100からの指示や警備員からの報告を行なう際、携帯電話やPHS20aが利用されている場合は、携帯電話やPHS20aとを接続ケーブルなどを利用して接続し、鍵データの受信などを行なえばよい。
【0058】
(8)無線機、携帯電話、PHS機能を携帯端末に設ける場合
図4(a)に示す携帯端末1aのように、携帯端末に無線機、携帯電話、PHSなどによる通信機能を持たせ、監視センタ100からの指示や警備員a1からの報告に利用すると共に、鍵データの受信を行なうことができる。
【0059】
なお、携帯電話やPHSの機能を持たせた場合、監視センタ100から携帯端末を呼び出す際は電話番号により携帯端末を指定でき、携帯端末から監視センタ100を呼び出した際は発信者番号通知を利用して携帯端末を特定することができる。したがって、この場合は、監視センタ100から鍵データを送信する際、正規の携帯端末であるか否かを確認するための認証を省略することもできる。
【0060】
なお、携帯電話は、アナログ方式、デジタル方式の何れであってもよいが、無線区間の通信が比較的安定し、高速通信が可能なデジタル方式(たとえば、TDMA:Time Division Multiple Access,あるいは次世代移動通信システムであるIMT−2000など)が好ましい。すなわち、携帯電話の方式としては、PDC(Personal Digital Celluler)方式やcdmaOne(Code Division Multiple Access:符号分割多元接続)、あるいは第3世代型方式(たとえば、wideband−CDMA,cdma2000など)といったIMT−2000方式の採用が可能である。また、高速移動ではなく、比較的狭い範囲の移動であれば、PHS(Personal Handy―phone System)であってもよい。なお、PHS方式の場合には、無線通信網の内部構成が公知のPHSシステムとなる。また、携帯端末と電気錠との通信としてBluetoothといった通信手段を用いることが可能である。
【0061】
(9)暗号化コードを携帯端末に入力
携帯電話や無線を利用して監視センタ100から警備員a1に指示を与える場合、監視センタ100から鍵データとして、暗号化コード(たとえば、10桁程度の数列)を伝え、警備員a1はその暗号化コードを携帯端末に入力し、携帯端末で復号して鍵データとして利用する。
【0062】
なお、この暗号化コードを生成する際、日付などのパラメータを利用する日によって異なる暗号化コードが生成されるようにし、ある錠を施解錠する鍵データを暗号化した暗号化コードが同一にならないようにすることが好ましい。
【0063】
また、鍵コードを送る際の認証においても、同様の暗号化・復号アルゴリズムを利用し、警備員a1や携帯端末の識別番号を暗号化した暗号化コードを監視センタ100に伝え、監視センタ100において復号し、確認をとるようにしてもよい。この場合、監視センタ100と警備員a1との間の通信に使われていた無線機などをそのまま利用できるというメリットがある。
【0064】
(10)携帯端末を使用する者の認証について
携帯端末を使用する者が正当な権限を与えられた者であるか否かを確認する方法として以下の方法がある。
【0065】
(a)携帯端末において認証
監視センタ100から鍵データを受信する際、携帯端末により錠を施解錠する際、あらかじめ携帯端末に記憶(登録)させた比較対象とする情報と、携帯端末を使用する者が所有するIDカードに記憶された情報とを比較し、認証を行なう。
(b)監視センタにおいて認証
監視センタ100から鍵データを受信する際、携帯端末により読み取られた、使用者のIDカードに記憶された情報、使用者の指紋などの生体情報を監視センタ100に送信し、監視センタ100においてあらかじめ記憶された比較対象とする情報と比較し、認証を行なう。
【0066】
携帯端末により錠を施解錠する場合、鍵データを受信する場合と同様に監視センタ100において認証してもよいが、施解錠の都度、監視センタ100と通信を行なうので通信費が嵩む。また、建物内において携帯電話やPHSが使用できず、認証を行なえない可能性がある。
【0067】
そこで、携帯端末により錠を施解錠する場合は、鍵データを受信する際に認証を行なった使用者と同一人物であるか否かを確認すればよい。そのため、携帯端末は鍵データを受信する際の認証に使われた使用者の情報を記憶しておき、錠を施解錠する際、記憶された情報と使用者の情報とを比較照合する。
【0068】
(11)携帯端末の認証について
監視センタ100から鍵データを受け取る際、携帯端末が正規のものであることを確認するための認証方法としては、以下の方法がある。
【0069】
携帯端末にはあらかじめ識別コードを割り当てておく。監視センタ100では、携帯端末に割り当てられたそれぞれの識別コードを登録しておく。携帯端末は、鍵データを受け取るために監視センタ100と通信する際、自己の識別コードを監視センタ100に送信し、監視センタ100では送られてきた識別コードとあらかじめ登録された識別コードとを比較照合し、正規の携帯端末であることを確認する。
【0070】
このとき同時に、携帯端末の使用者が正当な権限を与えられた者であることの認証を行なってもよい。また、監視センタ100では、あらかじめ担当地区、警備員(保守要員)、携帯端末の対応関係を登録したデータベースを準備しておいて対象となる契約先が所在する地区、携帯端末の使用者、携帯端末の対応関係が正しいことを確認することにより、さらに信頼性の高い認証を行なうようにしてもよい。
【0071】
監視センタ100は、正規の携帯端末であることが確認されると、携帯端末に鍵データを送信する。このとき送信する鍵データは、これから向かう契約先において必要となる鍵のデータのみとする。なお、契約先において複数の鍵データを必要とする場合は、複数の鍵データを送信する。なお、携帯端末と監視センタ100との間の通信方法によっては、携帯端末が正規のものであることの確認を簡略化できる。
【0072】
携帯端末1aのように携帯端末に携帯電話やPHSの機能を持たせた場合、監視センタ100から携帯端末を呼び出す際、電話番号により対象となる携帯端末を指定でき、携帯端末から監視センタ100を呼び出した際、監視センタ100では発信者番号通知を利用して携帯端末を特定することができる。したがって、これらを利用することにより、携帯端末が正規のものであることを確認でき、識別コードなどによる確認を行なわなくてもよい。
【0073】
(12)携帯端末と契約先錠との認証(後付け電気錠の場合)
既存のシリンダ錠のような機械式錠に電気的に制御を行なえるようにした制御装置を追加して取りつけた、いわゆる、「後付け電気錠」を用いる場合、外部から給電して施解錠信号を入力するだけで施解錠できるようにすると、任意のバッテリを接続し、任意の制御装置から施解錠信号を入力すると誰でも施解錠できることになる。
【0074】
そこで、このようなケースを防止するため、後付け電気錠を用いる場合は、電気錠と携帯端末との間で認証を行なうことにより、正規の携帯端末であることを確認する必要がある。
【0075】
図6に、公開鍵を利用して認証を行なう場合の例を示す。電気錠の制御装置30には、あらかじめ任意の認証局Aから発行された公開鍵(1)と秘密鍵(1)、鍵データ(錠ID 123)を登録しておく。また、携帯端末1には、あらかじめ任意を認証局Aから発行された公開鍵(2)と秘密鍵(2)を登録しておく。認証は以下の手順にしたがって行なう。
【0076】
▲1▼異常事態の検知や保全作業などにより契約先の建物に入館する場合、監視センタ100と携帯端末1との間で認証が行なわれた後、監視センタ100から公開鍵(2)で暗号化された鍵データ(錠ID 123)が携帯端末1に送信される(S1)。
▲2▼電気錠の制御装置30と携帯端末1との間であらかじめ登録された公開鍵(1),(2)を交換し、任意の認証局Aに認められたものであることを互いに確認する(S2)。
▲3▼電気錠の制御装置30から携帯端末1に対して、上記(S2)で受け取った公開鍵(2)で暗号化した鍵データ(錠ID 123)が書かれた文書を送信し、署名を要求する(S3)。
▲4▼携帯端末1は、上記(S3)で受け取った文書を自らの秘密鍵(2)で復号し、上記(S1)で監視センタ100から送信された鍵データと、上記(S3)で電気錠の制御装置30から送信された鍵データを比較する(S4)。
▲5▼鍵データが等しい場合、携帯端末1は上記(S4)で復号した文書にデジタル署名を行なう(S5)。
▲6▼携帯端末1から電気錠の制御装置30に対して、上記(S5)でデジタル署名された文書を上記(S2)で受け取った公開鍵(1)で暗号化し送信する(S6)。
▲7▼電気錠の制御装置30は、署名を確認した後、施解錠する(S7)。
【0077】
したがって、図6に示す例のように、厳重な認証により他人に悪用されるおそれがほとんどなく、重要施設などにおいても利用できる高い信頼性を得ることができる。しかしながら、一般の建物において利用する場合、必要以上に厳重になりすぎるので、管理上、負担になる。
【0078】
そこで、本発明に用いられる携帯端末1は、監視センタ100から鍵データを送信されなければ利用できないこと、監視センタ100から鍵データを送信する際、携帯端末1が正規のものであること、および携帯端末1の使用者が正当な権限を与えられた者であるかを確認すること、携帯端末1は鍵データを不正入手されないための対することなどから、認証の一部を簡略化しても十分な信頼性を得ることができる。図7に、図6の例において認証の一部を簡略化した場合の例を示す。
【0079】
電気錠の制御装置30には、あらかじめ任意の認証局Aから発行された公開鍵(1)と秘密鍵(1)、鍵データ(錠ID 123)を登録しておく。
【0080】
▲1▼異常事態の検知や保全作業などにより契約先の建物に入館する場合、監視センタ100と携帯端末との間で認証が行なわれた後、監視センタ100から公開鍵(1)で暗号化された鍵データ(錠ID 123)が携帯端末1に送信される(S11)。
▲2▼携帯端末1は上記(S11)で監視センタ100から受信した暗号化された鍵データ(錠ID 123)と、施解錠信号を電気錠の制御装置30に送信する(S12)。
▲3▼電気錠の制御装置30は、上記(S12)で受け取った暗号化された鍵データ(錠ID 123)を秘密鍵(1)で復号し、鍵データ(錠ID 123)を比較する(S13)。
▲4▼鍵データの一致を確認した後、上記(S12)で受け取った施解錠信号により施解錠する(S14)。
【0081】
(13)携帯端末に記憶される鍵データの扱い
携帯端末1には監視センタ100から受け取った鍵データを記憶するが、携帯端末1が盗難や紛失にあっても、鍵データの漏洩による被害を最小限に抑えるために、以下に示すような対策を行ない、携帯端末1には最小限の数の鍵データを必要とされる間だけ記憶するようにしておく。この手順は以下の通りである。
【0082】
▲1▼監視センタ100から新たな鍵データを受け取ると、過去に受け取った鍵データを消去する。
▲2▼携帯端末1に設けられた消去手段の操作により消去する。この場合、警備員a1による異常確認や事態の収拾などが終わり、契約先建物A1から警備員a1が退出した(入口扉を施錠した)後に消去すればよい。
▲3▼監視センタ100から鍵データを受信してから一定時間有効とし、消去する。鍵データの中に有効期間を指定する情報を含ませておく。
▲4▼携帯端末1内にタンパスイッチを設けておき、分解されるなどの行為が行なわれるると鍵データを消去する。
▲5▼解錠が1回行なわれると鍵データを消去、または解錠操作を禁止する。
▲6▼鍵データは解錠が行なわれてから施錠操作が行なわれるまで有効とする。
▲7▼監視センタ100に作業終了の連絡を入れた際、監視センタ100からの操作(監視センタ100から携帯端末1に消去命令を送信)により消去する。
【0083】
なお、鍵データの扱いに関し、鍵データの消去などにより施錠、解錠操作双方を禁止してもよいが、解錠操作のみを禁止するようにしてもよい。これは、不正に解錠されることにより悪用される可能性はあっても、不正に施錠されることにより悪用される可能性は極めて低いからである。
【0084】
(14)鍵データの内訳
鍵データの内訳として想定されるものを以下に示す。下記の情報を必要に応じて選択し、利用する。
【0085】
▲1▼識別情報
錠を施解錠する際、錠の側の制御装置において、照合のために利用される情報である。たとえば、非接触カードから送信される識別情報、暗証番号、個人のIDコードなど、携帯端末以外に利用して錠を施解錠する場合に、カードリーダなどに送られる情報と同様の情報である。
▲2▼施解錠の対象となる錠の錠前情報(ID)
施解錠を行なう際、対象となる錠が正しいか否かを確認する場合に使用する。
▲3▼鍵データの消去条件
有効回数、有効期間など状況に応じて消去条件を変更する場合に使用する。施解錠の対象が建物の入口扉であれば、1度だけ施解錠できれば十分であるが、各階の入口扉で共通の鍵が必要である場合は、複数回施解錠しなければならない。このような場合は回数ではなく、必要な作業時間をもとに有効期間(たとえば、2時間)を定めておけばよい。
▲4▼錠の名称
複数の錠を施解錠する場合、警備員が施解錠する錠に応じて施解錠信号を選択する場合に用いられ、たとえば「建物入口扉」、「○階入口扉」などの名称である。すなわち、携帯端末により複数の錠を施解錠する場合、警備員はどの錠を施解錠するのかを選択し、指定しなければならない。その際に利用させるための錠の名称である。
【0086】
(15)後付け電気錠の構成および動作について
つぎに、本発明の特徴である後付け電気錠の構成および動作について説明する。本発明の錠前装置は、シリンダ錠の部分に電気錠を追加設置し、警備員や保守要員が施解錠する場合は電気錠により施解錠するように変更する。契約先の者が施解錠する場合は、従来の鍵をそのまま利用して施解錠するものである。このように構成することで契約先の者が現在利用している鍵と交換するという煩わしさがなくなる。追加設置する電気錠は、常時電源を供給しておくのではなく、警備員が携帯するバッテリから電源供給を受けたときに有効となり、携帯端末からの信号により施解錠する。大掛かりな配線工事などをなくし、設置費用を低減させる。
【0087】
すなわち、前述した後付け電気錠は、既にシリンダ錠が用いられている契約先においても、携帯端末による施解錠(ロック/非ロック)を可能にするため、シリンダ錠の外側にシリンダの回動を電気的に規制するロック部を設け、ロック解除後に人間が既存の簡易キーでシリンダを回動するものである。以下、図8〜図16を参照し、具体的に説明する。
【0088】
図8は本発明の実施の形態にかかる携帯端末と後付け電気錠の構成例を示すブロック図であり、図9は本発明の実施の形態にかかる携帯端末と後付け電気錠の構成例を示す説明図である。また、図10は本発明の実施の形態にかかる扉への後付け電気錠の組み込み例を示す説明図である。
【0089】
これらの図に示すように、携帯端末1は、前述した送受信部16などの機能の他に給電部140を備えている。また、後付け電気錠150は、送受信部101、制御部102、認証部103、駆動部104、ロック部105、シリンダ部106、受電部107を備えている。また、図9・図10における符号60は給電端子、符号110はロック解除後のシリンダを回動させるための簡易キー、符号200は出入口扉である。また、図10における符号90はロック部105によりロック/解除が行なわれるロック軸、符号91は出入口扉200の端面より突出/退避し、建物と出入口扉200を施解錠(本締り)するデッドボルト、符号95a,95bはドアノブである。なお、簡易キー110は、たとえば、カギ山がないストレートな形状のキーで、シリンダに挿入して回動可能な形状であればよい。
【0090】
給電端子60は、携帯端末1の給電部140から後付け電気錠150の受電部107に電力供給を行なう際に中継コネクタ的に接続されて用いられる。なお、給電部140から受電部107に対する電力としては、ロック部105を解除するだけの電力、たとえば、後述するようにバイオメタルファイバー(人工筋肉)が動作可能な、3V/300mA程度である。これに対し、従来はシリンダの回動をモータの駆動で行なうために、12V/1A程度の電力供給が必要である。したがって、本発明では上記小電圧の供給のみでロック部分の駆動を行なうことが試作により確認されており、この結果、低電圧および省電力化を図ることができる。
【0091】
制御部102は、受電部107で受電した電力によって動作し、駆動部104を制御してロック部105のロックを解除する。この解除にあたっては、携帯端末1との間で認証部103などを行ない、不正な施解錠が行なわれないようにする。ロック部105によってロックが解除されたシリンダ部106は簡易キー110の挿入により人力で回動され、解錠が行なわれる。すなわち、ドアノブ95aが回動可能になり、その回動でデッドボルト91が扉端面より退避し、扉が開かれる。なお、契約先の者は、従来通り、通常の鍵を用いて錠を施解錠する。
【0092】
このように、携帯端末1の送受信部16を介してIDコードを後付け電気錠150側に送信する。さらに制御部102は、認証部103において正規のIDコードであることが確認されるとロック部105を駆動部104によりロック状態からロック解除状態に切り換えシリンダ部106を解錠可能状態とし、シリンダ部106に簡易キー110を差し込んで人間が回動することで解錠状態にする。すなわち、シリンダ部106のロックを携帯端末を用いて解除し、簡易的なキーをシリンダに差し込んで回すことによってシリンダ錠の解錠を行ない、当該シリンダ錠の解錠によってドアノブが回動可能になり、ドアノブを操作することで扉が開かれる。
【0093】
図11は、従来のシリンダ錠と本発明によるシリンダ錠との違いを示す説明図である。図11(a)は従来の一般的なシリンダ錠の構成を示すものであり、外筒51と外筒51内に収納され、外筒にロックされる内筒50で構成され、通常キー120の挿入により施解錠が行なわれる。図11(b)は本発明のシリンダ錠の基本構成を示すものであり、外筒51の外側に外側ケース52を設けたものである。また、図11(c)はシリンダ錠と施解錠部との関係を示し、(d)は従来および本発明における解錠の様子を示すものである。実際の取り付けにおいては、ロック機構を設けるために外筒51の交換(追加工)と外部ケース52の追加が行なわれる。
【0094】
図11(c)において、シリンダ部106は鍵の一致により自由に回動できる状態となるが、連結された施解錠部により回動範囲が制限される。すなわち、シリンダ部106の回動が施解錠部へ伝えられることにより施解錠する。また、シリンダ部106は特定の者しか操作できないように制限する役割を有する。
【0095】
図11(d)において、ロックされているシリンダ錠を解錠する場合、従来は所定のキーで内筒50を回動させるのに対し、本発明はロック解除後に、外部ケース52内で、内筒50と外筒51とを簡易キーなどによって回動させるものである。
【0096】
つぎに、ロック機構の具体例について説明する。図12は、本発明の実施の形態にかかるロック機構の第1の構成例を示す説明図である。シリンダ錠の外筒51の外周に溝部51aを設け、さらに、この外側に設けた外側ケース52に上記溝部51aに係合するカギ状突起105aを先端に有するロック部105を設ける。このようなロック機構において、図12(a)はカギ状突起105aを溝部51aから開放した解除状態であり、(b)はカギ状突起105aを溝部51aに噛み合わせたロック状態、(c)は(b)のロック状態を上からみた斜視図である。
【0097】
たとえば、カギ状突起105a部分には溝部51a側に向かって付勢するようなばね(不図示)を設け、この付勢状態(ロック状態)を、モータの駆動により引張る機構や通電によって収縮するバイオメタルファイバーなどを用いて駆動し、非付勢状態(ロック解除)にする。あるいは、ロック部105の回転支点軸の端部にギアを設け、これにモータ駆動ギアを歯合させ、これをモータで駆動するようにしてもよい。
【0098】
図13は、本発明の実施の形態にかかるロック機構の第2の構成例を示す説明図であり、(a)はロックが解除されている場合、(b)はロック状態を示す。本構成は、バイオメタルファイバー(人工筋肉)68を滑車61に張架し、その中央にロック用ピン63を吊り下げ、さらに、ロック用ピン63の外周に図示のような圧縮スプリングを設ける。なお、バイオメタルファイバーは繊維状のアクチュエータであり、電流を流すことにより収縮する。このような構成において、バイオメタルファイバー(人工筋肉)68に通電/非通電することにより、ロック用ピン63を上下移動させる。
【0099】
図14は、本発明の実施の形態にかかるロック機構の第3の構成例を示す説明図であり、(a)はロックが解除されている場合、(b)はロック状態を示す。本構成は、外側ケース52の外側(溝52a部分)にロック部材65を外筒51の溝に係合/非係合するように板ばね64を介して設ける。このように、ロック手段を構成する付勢する手段として板バネを用いたので、シリンダのロック/解除の機構を小さなスペースで収納することができる。
【0100】
図15は、本発明の実施の形態にかかるロック機構の第4の構成例を示す説明図であり、(a)はロックが解除されている場合であり、左図は断面図、右図は上面図である。(b)はロック状態を示し、左図は断面図、右図は上面図である。本構成は、図13と同様にバイオメタルファイバー(人工筋肉)68を用い、螺旋状ロック部材67を引っ掛け(図15(b)の状態)、螺旋状ロック部材67をバイオメタルファイバー(人工筋肉)68に通電することで引張ることにより、ロック用ピン66の部分が回動し、せりあがる(図15(a)の状態)ように構成されている。
【0101】
図16は、本発明の実施の形態にかかるロック用の溝やピンを差し込む位置関係を示す説明図である。ここでは、180度反転させることにより、施錠と解錠を切り換える構成のシリンダの場合、施錠位置あるいは解錠位置のいずれかに外部ケース52と外筒51とを固定しなければならないため、ロック用溝70を180度隔てた位置に2つ設ける。
【0102】
(16)携帯端末の利用者
本発明の錠前装置について、警備会社の警備員や保守要員が利用する場合を例にとって説明したが、錠前装置の利用者はこれに限らず、建物の空調、配電、配水などを管理する設備業者が携帯端末と簡易キーとを携帯し、設備異常が発生した場合に携帯端末を利用して建物に入館するようにしたり、建物の清掃を受け持つ業者が携帯して夜間や早朝、清掃のため建物に入館する際に利用したりしてもよい。
【0103】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明にかかる錠前装置(請求項1)によれば、ロック手段でシリンダが回動不可に固定され、シリンダ錠を解錠する際に、携帯端末が、監視センタとの相互通信によってロック手段のロックを解除するための信号を取得して当該信号を錠側に送信し、制御手段は、当該信号にしたがって駆動手段を制御し、簡易キーの挿入により人の力で回動可能にする解錠可能状態とし、前記解錠可能状態にするためにロック解除するように、ロック機構部分のみを電気系の構成にし、トルクがかかるシリンダの回動を簡易キーの挿入で人間が行なう構成とすることにより、最小限の電力供給および後付け電気錠自体の小型化が実現するため、出入口扉に設けられた既存のシリンダ錠に電気錠を取りつける場合、限られたスペースでの収納が行なえ、かつ省電力化による施解錠を行なうことができる。また、監視センタと携帯端末との相互通信により、所定の認証で許可された者のみがシリンダのロックを解除した後、簡易キーを操作して解錠することにより、監視センタでの携帯端末の管理がリアルタイムでかつ的確に行なえるので、セキュリティ性が向上すると共に、シリンダを回動させるだけの簡易的な鍵あるいは器具を持っていれば従来のように一人の警備員が数多くの鍵を所持する必要もなくなる。
【0104】
また、本発明にかかる錠前装置(請求項2)によれば、請求項1において、ロック手段を、シリンダ錠の外周部分に設けられた溝部と、この溝部に係合部材(係合ピン)を係合する係合部と、係合部材(係合ピン)を溝部に付勢する付勢手段とで構成したので、小型のロック機構による後付け可能な電気錠が実現する。
【0105】
また、本発明にかかる錠前装置(請求項3)によれば、請求項1において、ロック手段を、シリンダ錠の外周部分に設けられた溝部と、この溝部に係合部材(係合ピン)を係合する係合部とで構成すると共に、このロック手段を駆動する駆動手段として、通電/非通電によって収縮/復元する係合/非係合部を用い、係合部材(係合ピン)を往復移動させる機構としたので、後付け電気錠に要求される小型の固定/解除機構が実現する。
【0106】
また、本発明にかかる錠前装置(請求項4)によれば、請求項1において、ロック手段を、シリンダ錠の外周部分に設けられた溝部と、この溝部に係合部材(係合ピン)を係合する係合部とで構成すると共に、このロック手段を駆動する駆動手段として、通電/非通電によって収縮/復元する係合/非係合部を用いて係合ピンを螺旋回動させる機構としたので、後付け電気錠に要求される小型の固定/解除機構が実現する。
【図面の簡単な説明】
【図1】警備員による鍵データの取得から施解錠までの手順などを示す説明図である。
【図2】保守要員による鍵データの取得から施解錠までの手順などを示す説明図である。
【図3】警備員・保守要員による鍵データの取得から施解錠までの手順などを示す説明図である。
【図4】本発明の実施の形態にかかる携帯端末の構成例を示すブロック図である。
【図5】本発明の実施の形態にかかる携帯端末の外観構成例を示す説明図である。
【図6】本発明の実施の形態にかかる鍵データを利用して施解錠する場合の認証手順を示す説明図である。
【図7】本発明の実施の形態にかかる鍵データを利用して施解錠する場合の他の認証手順を示す説明図である。
【図8】本発明の実施の形態にかかる携帯端末と後付け電気錠の構成例を示すブロック図である。
【図9】本発明の実施の形態にかかる携帯端末と後付け電気錠の構成例を示す説明図である。
【図10】本発明の実施の形態にかかる扉への後付け電気錠の組み込み例を示す説明図である。
【図11】本発明の実施の形態および従来におけるシリンダ錠の構成を示す説明図である。
【図12】本発明の実施の形態にかかるロック部の第1の機構例を示す説明図である。
【図13】本発明の実施の形態にかかるロック部の第2の機構例を示す説明図である。
【図14】本発明の実施の形態にかかるロック部の第3の機構例を示す説明図である。
【図15】本発明の実施の形態にかかるロック部の第4の機構例を示す説明図である。
【図16】本発明の実施の形態にかかるロック用の溝やピンを差し込む穴の位置を示す説明図である。
【図17】警備員が鍵の授受を行なった後に現場に向かう従来例を示す説明図である。
【符号の説明】
1,1a,1b 携帯端末
11 表示部
12 操作部
13 認証部
14 制御部
15 記憶部
16 送受信部
17 施解錠信号出力部
50 内筒
51 外筒
52 外部ケース
60 給電端子
61 滑車
62 バネ
63,66 ロック用ピン
64 板バネ
65 ロック部材
67 螺旋状ロック部材
68 バイオメタルファイバー(人工筋肉)
70 ロック用溝
100 監視センタ
101 送受信部
102 制御部
103 認証部
104 駆動部
105 ロック部
105a カギ状突起
106 シリンダ部
107 受電部
110 簡易キー
140 給電部
150 後付け電気錠
Claims (4)
- 所定の信号を送信可能な携帯端末を用いてシリンダ錠を施解錠する錠前装置において、
前記シリンダ錠は、外筒と機械的に施錠可能な内筒と、外部ケースとロック可能な前記外筒と、を有し、
前記シリンダ錠の前記外部ケースに対して前記外筒の回動をロックするロック手段と、
前記ロック手段におけるロック/ロック解除の駆動を行なう駆動手段と、
前記携帯端末を介してロック解除信号を受信し、当該ロック解除信号にしたがって前記駆動手段を駆動制御して前記ロック手段の前記外筒に対する前記外部ケースからのロックを解除して前記シリンダ錠を解錠可能状態にする制御手段と、
を備え、
前記解錠可能状態において、当該シリンダ錠に差し込むことが可能な形状を有する簡易キーを前記内筒に挿入し、前記シリンダ錠の前記内筒を前記外筒ごと回動することによって前記シリンダ錠を解錠状態にすることを特徴とする錠前装置。 - 前記ロック手段は、
前記シリンダ錠の外周部分に設けられた溝部と、
前記溝部に係合部材を係合する係合部と、
前記係合部材を前記溝部に付勢する付勢手段と、
を備え、
前記駆動手段は、通電/非通電により前記溝部に対し前記係合部材を往復移動する移動手段を有することを特徴とする請求項1に記載の錠前装置。 - 前記ロック手段は、
前記シリンダ錠の外周部分に設けられた溝部と、
前記溝部に係合部材を係合する係合部と、
を備え、
前記駆動手段は、通電/非通電によって収縮/復元することにより前記溝部に対し前記係合部材を往復移動し、前記溝部に対して係合/非係合動作する係合/非係合部を有することを特徴とする請求項1に記載の錠前装置。 - 前記ロック手段は、
前記シリンダ錠の外周部分に設けられた溝部と、
前記溝部に係合部材を係合する係合部と、
を備え、
前記駆動手段は、通電/非通電によって収縮/復元することにより前記溝部に対し前記係合部材を螺旋回動させて、前記溝部に対して係合/非係合動作する係合/非係合部を有することを特徴とする請求項1に記載の錠前装置。
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