JP4293414B2 - 半導体膜の結晶化方法及びそれを用いた半導体装置の作製方法 - Google Patents

半導体膜の結晶化方法及びそれを用いた半導体装置の作製方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体膜の結晶化に用いるレーザー照射装置及びそれを用いた半導体膜の結晶化方法、並びにそれを用いた半導体装置の作製方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ガラス基板上に堆積した非晶質シリコン膜に、レーザー光を照射して多結晶シリコン膜を形成する結晶化技術が知られている。パルス発振するエキシマレーザー発振器はこの結晶化技術において代表的に用いられている光源である。パルスレーザー光の照射によりシリコンは瞬間的に加熱され、一旦溶融し冷却過程で結晶化が起こり、通常は異なる面方位を持った複数の結晶粒が集合した多結晶体が形成される。パルス幅が数十〜数百ナノ秒のパルスレーザー光の照射は、シリコンを選択的に加熱することが可能であり、基板の温度を上昇させずに結晶化が可能である。従って、耐熱温度が低いとされるホウケイ酸ガラスなど安価な基板を適用できるという利点が認識されている。
【0003】
勿論、ガラス基板上における半導体膜の低温での結晶化はパルスレーザー光の照射に限定されず、連続発振レーザー光の照射によっても可能である。例えば、「N. Sasaki et al, 2002 SID International Symposium Digest of Technical Papers, pp.154-157」では連続発振レーザー光の照射によるラテラル結晶成長技術について報告されており、その技術を用いて作製されたシフトレジスタ回路において270MHzの動作周波数が報告されている。
【0004】
上記文献で開示されている連続発振レーザー発振器を用いるレーザーアニールは、エキシマレーザーに代表されるパルスレーザー発振器を光源とする場合と比較して、半導体膜がレーザー光により加熱される時間が長いという特徴がある。また、溶融領域と固相領域との界面(固液界面)が基板表面と概略平行な方向に進み結晶がその方向に延在するという特徴がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
これまでの半ば経験的な知見として、レーザーアニールにより非晶質シリコン膜を結晶化するに際し、酸素を含む雰囲気中で結晶化を行うと大粒径化が図られることが知られている(例えば、特開2001−15435号公報を参照)。従って、多くの場合レーザーアニールは大気中で行われていた。
【0006】
結晶の大粒径化の要求は、それを用いて作製するTFTの電界効果移動度を向上させることにあり、単結晶シリコン基板に形成されるMOSトランジスタと同等にすることがその理想的な一形態として捉えられている。連続発振レーザー光を走査して固液界面を連続的に移動させながら結晶化する方法はゾーンメルティング法に近い方法であると考えられ、連続的な結晶成長により大粒径化が可能である。しかしながら、結晶を大粒径化が実現しても、同一基板上に形成した複数のTFT間で特性がばらつくという問題点がしばしば顕在化していた。
【0007】
この問題点に関し、本発明者はレーザーアニール法において、これまでに認識されていない新たな要因を見いだした。つまり、パルスレーザー光より長い時間溶融状態を持つ連続発振レーザー光の結晶化は、外部から不純物が結晶に取り込まれる割合が増加して、それが融液表面での表面張力対流(マランゴニ対流)によって均一に分散せず、局所的に偏析して、結局は結晶の品質が変動する要因となり、それがTFTの特性ばらつきの原因となっていると考えることができた。
【0008】
本発明は、このような問題点に鑑み成されたものであり、レーザーアニール法において融液表面での表面張力対流(マランゴニ対流)を制御して、結晶性に優れ、且つその品質のばらつきが少ない結晶性半導体膜を提供するレーザー照射装置及びそれを用いた半導体膜の結晶化方法、並びに、それにより作製される結晶性半導体膜で高い電界効果移動度を実現する電界効果トランジスタを用いた半導体装置を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明は、非晶質半導体膜を一旦溶融して、その後の冷却過程で結晶化するに際し、その溶融表面の表面張力対流(マランゴニ対流)を制御することを主たる目的として、溶融表面又は溶融帯に磁場を印加することを特徴とする。磁場の印加により表面張力対流(マランゴニ対流)が抑制され、酸素を含む雰囲気中で溶融帯を形成しても、半導体に取り込まれた酸素が局所的に偏析するのを防ぎ、形成される結晶性半導体膜中に均質に分散させることを可能とする。
【0010】
上記目的を達成する本発明に係るレーザー照射装置は、連続発振レーザー発振器と、それを光源とするレーザー光を照射面において線状に集光する光学系と、被照射体に対して照射面を移動させる走査手段と、照射面又は照射面を含む空間において磁場を形成する磁場印加手段とが備えられたものである。磁場印加手段としては、常伝導コイル、超伝導コイル、永久磁石などが適用可能である。
【0011】
本発明に係る半導体膜の結晶化方法は、半導体膜を部分的に加熱して溶融帯を形成し、その固液界面を連続的に移動させることにより結晶化するに際し、溶融帯若しくは固液界面に磁場を印加して溶融帯表面での表面張力対流(マランゴニ対流)を抑制しつつ半導体膜の結晶化を行うものである。溶融帯は連続発振レーザー光を半導体膜に照射することにより形成され、溶融帯は酸素を含む雰囲気中で形成することが好ましい形態となる。また、半導体膜の溶融時間が、10μsec乃至500μsecとなるように溶融帯若しくは固液界面を移動させることが好ましい形態となる。
【0012】
本発明に係る半導体膜の結晶化方法は、絶縁表面上に形成された半導体膜を部分的に加熱して溶融帯を形成し、その固液界面を連続的に移動させることにより結晶化するに際し、溶融帯若しくは固液界面に磁場を印加して溶融帯表面での表面張力対流を抑制しつつ半導体膜の結晶化を行い、形成された結晶性半導体膜に絶縁ゲート型電界効果トランジスタのチャネル部を形成するものである。溶融帯は連続発振レーザー光を半導体膜に照射することにより形成され、溶融帯は酸素を含む雰囲気中で形成することが好ましい形態となる。また、半導体膜の溶融時間が、10μsec乃至500μsecとなるように溶融帯若しくは固液界面を移動させることが好ましい形態となる。
【0013】
上記本発明の構成において、磁場は照射面若しくは溶融帯に対して、水平磁場、垂直磁場、カプス磁場によって半導体膜に取り込まれる酸素濃度とその分布を制御する。或いは、溶融帯の移動方向に対して、水平磁場、垂直磁場、カプス磁場によって半導体膜に取り込まれる酸素濃度とその分布を制御する。
【0014】
酸素は2配位であるので、4配位のシリコンネットワーク中に取り込まれることにより構造柔軟性が高まり、転移などに起因する未結合手を低減させる作用を持つ。結晶粒界に供給される酸素は、そこに存在する未結合手と反応して結合を形成する。結合に自由度が増すので、格子歪みに起因する欠陥を補償することができる。
【0015】
もっとも、多量の酸素の供給はシリコンの結晶構造の崩壊を招き、かえって欠陥を増大させる。本発明において適用される酸素濃度は、二次イオン質量分析法(SIMS)により測定される平均的な濃度評価法に従えば、5×1017〜2×1019/cm3とすることが望ましい。但し、本発明において対象にする酸素は、レーザーアニールに際し雰囲気中(気相中)から取り込まれる酸素の他に、当初から半導体膜に含まれている酸素、半導体膜の表面に形成される自然酸化膜の酸素、半導体膜が接する下地から供給される酸素なども含んでいる。
【0016】
なお、本発明でいう非晶質半導体膜とは、狭義の意味で完全な非晶質構造を有するものだけではなく、微細な結晶粒子が含まれた状態、又はいわゆる微結晶半導体膜、局所的に結晶構造を含む半導体膜を含む。代表的には非晶質シリコン膜が適用され、その他に非晶質シリコンゲルマニウム膜、非晶質シリコンカーバイト膜などを適用することもできる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の態様について図面を参照して詳細に説明する。但し、本発明は多くの異なる態様で実施することが可能であり、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は本実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。また、以下に示す実施形態の全体を通して同じ要素には同じ符号を付するものとする。
【0018】
図6は、本発明のレーザー照射装置の主要な構成要素とその関連を示す図である。当該レーザー照射装置は、レーザー発振器101、波長変換素子102、高変換ミラー103、シリンドリカルレンズ104、105、スリット106などを含み照射面においてレーザー光を線状に集光する光学系100、載置台109、載置台の周辺部に置かれた磁場印加手段107を主要な構成要素としている。その他に付加的な構成要素として、被処理物110が晒される雰囲気を制御するガス供給手段108が備えられていても良い。雰囲気制御は、特に酸素を積極的に含ませる場合、或いは含ませない場合に用いる。
【0019】
レーザー発振器101は矩形ビーム固体レーザー発振器が適用され、特に好ましくはスラブレーザー発振器が適用される。或いは、YAG、YVO4、YLF、YAlO3などの結晶にNd、Tm、Hoをドープした結晶を使った固体レーザー発振器にスラブ構造増幅器を組み合わせたものでも良い。スラブ材料としては、Nd:YAG、Nd:GGG(ガドリニウム・ガリウム・ガーネット)、Nd:GsGG(ガドリニウム・スカンジウム・ガリウム・ガーネット)などの結晶が使用される。その他にも、連続発振可能な気体レーザー発振器、固体レーザー発振器を適用することもできる。連続発振固体レーザー発振器としてはYAG、YVO4、YLF、YAlO3などの結晶にCr、Nd、Er、Ho、Ce、Co、Ti又はTmをドープした結晶を使ったレーザー発振器を適用する。発振波長の基本波はドープする材料によっても異なるが、1μmから2μmの波長で発振する。5W以上のより高い出力を得る為には、ダイオード励起の固体レーザー発振器をカスケード接続しても良い。
【0020】
このようなレーザー発振器から出力される円形状又は矩形状のレーザー光は、シリンドリカルレンズ104、105により照射面の断面形状において線状に集光される。また、照射面での干渉を防ぐため、高変換ミラー103を適宜調節して10〜80度の角度を持って斜め方向から入射する構成としても良い。シリンドリカルレンズ104、105は合成石英製とすれば高い透過率が得られ、レンズの表面に施されるコーティングは、レーザー光の波長に対する透過率が99%以上を実現するために適用される。勿論、照射面の断面形状は線状に限定されず、矩形状、楕円形又は長円形など任意な形状としても構わない。いずれにしても短軸と長軸の比が、1対10〜1対100の範囲に含まれるものを指している。また、波長変換素子102は基本波に対する高調波を得るために備えられている。
【0021】
また、載置台109は駆動手段により二軸方向に動かすことにより被処理物110の全面にレーザー処理をすることを可能としている。一方向への移動は基板420の一辺の長さよりも長い距離を1〜200cm/sec、好ましくは5〜50cm/secの等速度で連続的に移動させることが可能であり、他方へは線状ビームの長手方向と同程度の距離を不連続にステップ移動させることが可能となっている。レーザー光の集光幅が概略5〜50μmであり、上記走査速度を適用することにより、
10μsec〜50μsecの溶融時間が達せられる。
【0022】
磁場印加手段は、超伝導コイル又は常伝導コイルなどの電磁石又は永久磁石が適用され、被処理物110の周囲に500〜10000ガウス程度の磁場を形成する目的で配置されている。磁場はレーザー光の照射により被処理物に形成される溶融帯との相対的な位置関係によって、水平磁場、垂直磁場、カスプ磁場の形成を可能とする配置から選択する。
【0023】
大気中で非晶質半導体膜にレーザー光を照射して溶融帯を形成すると、大気と反応して酸素がそこに溶け込む。また、他の酸素流入経路としては、非晶質半導体膜の下地のガラス基板又はその表面に形成した酸化シリコン膜の酸素などがある。磁場の印加は表面張力対流(マランゴニ対流)を抑制して、溶融帯が固化して酸素が局部的に偏析するのを防ぎ、酸素を一様に分散させる作用を呈する。また、磁場の印加方法により、結晶化領域における酸素濃度の制御をすることが可能となる。即ち、酸素を意図的に含ませることもできる。いずれにしても、結晶化の形態によって磁場の印加方法を目的に応じて使い分けることが肝要である。
【0024】
図2に示す磁場印加の形態は、基板110上の半導体膜111に形成される溶融帯112に対して垂直方向に印加する一例である。この場合、溶融帯112は紙面の垂直方向に移動することを想定している。磁場印加手段107としてはトロイダルコイルを適用しても良い。
【0025】
図3に示す磁場印加の形態は、基板110上の半導体膜111に形成される溶融帯112に対して水平方向に印加する一例である。この場合、溶融帯112は紙面の垂直方向に移動することを想定している。図6はこの状態を上面から見た形態である。磁場印加手段107としてはトロイダルコイルを適用しても良い。一方、磁場印加手段の配置の変更により、水平方向の磁場印加の他の形態として、溶融帯112の移動方向と平行な方向に磁場を印加することもできる。
【0026】
図4に示す磁場印加の形態は、基板110上の半導体膜111に形成される溶融帯112に対してカスプ磁場を印加する一例である。この場合、溶融帯112は紙面の垂直方向に移動することを想定している。磁場印加手段107としてはトロイダルコイルを適用しても良い。カスプ磁場中心の位置は、溶融帯112の上方、溶融帯112の中心、溶融帯112の下方の三種類を取り得る。カスプ磁場中心が溶融帯112の中心である場合には、溶融帯112の中心から外側の向きに磁力が作用する。一方、図5のようにして、カスプ磁場を溶融帯112の垂直方向へ作用させることもできる。
【0027】
図8と図9は溶融帯112の移動方向とカスプ磁場の相対的な位置関係を示している。これは、溶融帯112の移動方向と平行な方向に作用する磁場成分Hpと、交差する方向に作用する磁場成分Hcとの向きを異ならせた形態を示している。
【0028】
本発明の半導体装置の作製方法の最も好適な一例として、磁場を印加して非晶質半導体膜に溶融帯を形成し、固液界面を連続的に移動させて結晶成長させる態様においては、吸収係数が5×104〜2×105/cmとなる波長帯域から選ばれた連続発振レーザー光を照射することが望ましい。これは、非晶質半導体膜の内部でレーザー光を吸収して内側から加熱することで完全溶融化することを目的としている。例えば、非晶質シリコン膜に対して、Nd:YVO4レーザー発振器の第2高調波(532nm)が適用される。
【0029】
図10は本発明による半導体装置の作製方法を説明する図である。図10(A)において基板201上には窒化シリコン膜、酸化シリコン膜、窒酸化シリコン膜の単層又は積層体から成る下地絶縁膜202がされている。基板201となる部材はアルミノシリケートガラスなど市販品で無アルカリガラスと称されるガラス材料が適用可能である。その他に単結晶シリコンなど半導体基板を適用することも可能である。
【0030】
結晶性半導体膜203は、非晶質半導体膜を磁場印加してレーザー光を照射して結晶化させる。非晶質半導体膜はシリコン又はシリコンにゲルマニウムを添加した非晶質材料を用いる。結晶性半導体膜の厚さは30〜200nm、代表的には150nmの厚さとする。
結晶化は連続発振レーザー光を照射するが、その光源はYVO4レーザー発振器を用いその第2高調波(532nm)を適用する。光源の出力6W(第2高調波)のレーザー光を約500μm×20μmに集光したビームを5〜100cm/sec、好ましくは25〜50cm/secの速度で走査する。磁場は500〜5000ガウスを印加する。また、結晶性半導体膜203は、非晶質半導体膜を磁場印加してレーザー光を照射して再結晶化させたものでも同等である。
【0031】
次いで、図10(B)に示すように、基板101の下地絶縁膜102上に作製された結晶性半導体膜から、所望の形状にエッチング処理し島状に孤立分離した半導体膜201〜203を形成する。これらの半導体膜201〜203は、チャネル形成領域、ソース及びドレイン領域、低濃度不純物領域などを作り込みTFTの主要な構成要素となる。結晶性半導体膜をエッチングするには、ドライエッチング法を用いてCF4とO2の混合ガスをエッチングガスとして用い、ゲート絶縁膜の被覆性を良くするために、半導体膜201〜203の端部に30〜60度のテーパー角が付くように加工する。
【0032】
次いで、半導体膜204〜206を形成し(図10(B))、その上にゲート絶縁膜を形成する酸化シリコン膜207、窒化シリコン膜208を高周波マグネトロンスパッタリング法で形成し、ゲート電極を形成する第1導電膜209、第2導電膜210の4層を大気に触れさせることなく減圧下にて連続的に形成する(図10(C))。
【0033】
まず、半導体膜204〜206の表面の清浄化と平滑化処理を、オゾン水含有水溶液による酸化処理及びフッ酸含有水溶液による酸化膜除去処理で行い、半導体膜の表面をエッチングして表層部を除去する。この処理により半導体膜204〜206の最表面がエッチングされて水素で終端された清浄で不活性な表面を形成することができる。ゲート絶縁膜の成膜段階では、基板及び基板表面に付着している水分を離脱させ清浄化させるために100〜200℃の加熱処理を減圧下で行う。
【0034】
本実施形態におけるゲート絶縁膜は、高周波マグネトロンスパッタリング法によりシリコンをターゲットとして形成される酸化シリコン膜207と、窒化シリコン膜208の二層積層構造である。酸化シリコン膜の主な膜形成条件は、スパッタガスにO2とArを用い、基板加熱温度100〜200℃として10〜60nmの厚さで形成する。さらに、その後600〜750℃で30〜180secのランプアニールを行う。この条件により半導体膜と界面準位密度が低く、緻密な酸化シリコン膜207を形成することができる。窒化シリコン膜208は、スパッタガスにN2とArを用い、同様に100〜200℃に加熱して10〜30nmの厚さに形成する。酸化シリコンの比誘電率3.8に対し窒化シリコンの比誘電率は約7.5であるので、酸化シリコン膜で形成するゲート絶縁膜に窒化シリコン膜を含ませることで、実質的にはゲート絶縁膜の薄膜化を図るのと同等の効果を得ることができる。ゲート絶縁膜において酸化シリコン膜と窒化シリコン膜の2層構造とすることで、当該ゲート絶縁膜の全厚さを30〜80nmとしてもゲートリーク電流を低減させ、2.5〜10V、代表的には3.0〜5.5VでTFTを駆動させることができる。
【0035】
この様に本実施形態では二層構造のゲート絶縁膜を採用するが、勿論、プラズマCVD法によりTEOSを用いて形成する酸化シリコン膜や、SiH4と窒酸化物ガスを反応させて形成する窒酸化シリコン膜を用いても良い。
【0036】
さらに、ゲート絶縁膜とゲート電極界面の汚染物も、しきい値電圧などを変動させる原因となるのでゲート絶縁膜を形成した後、続けて膜厚10〜50nmの窒化タンタル(TaN)から成る第1導電膜209と、膜厚100〜400nmのタングステン(W)から成る第2導電膜210とを積層形成する。
【0037】
ゲート電極はこの積層膜を加工して形成するが、その他に適用可能な導電性材料としてはTa、W、Ti、Mo、Al、Cuから選ばれた元素、または当該元素を主成分とする合金材料もしくは化合物材料で形成する。また、リン等の不純物元素をドーピングした多結晶シリコン膜に代表される半導体膜を用いてもよい。また、第1導電膜をタンタル(Ta)膜で形成し、第2導電膜をW膜とする組み合わせ、第1導電膜を窒化タンタル(TaN)膜で形成し、第2導電膜をAl膜とする組み合わせ、第1導電膜を窒化タンタル(TaN)膜で形成し、第2導電膜をCu膜とする組み合わせとしてもよい。
【0038】
次に、図10(D)に示すように、写真蝕刻をしてゲート電極のパターンを形成するレジストマスク211を形成する。その後、ドライエッチング法により第1エッチング処理を行う。エッチング用ガスに限定はないが、WやTaNのエッチングにはCF4とCl2とO2とを用いると良い。第1エッチング処理では、基板側には所定のバイアス電圧を印加して、形成される第1形状のゲート電極パターン212の側面に15〜50度の傾斜角を持たせる。エッチング条件にもよるが、第1エッチング処理によりゲート絶縁膜として形成された窒化シリコン膜208は、第1形状のゲート電極パターン212の下部において残存し、その他の領域では酸化シリコン膜204が露出する。
【0039】
この後、第2エッチング条件に変え、エッチング用ガスにSF6とCl2とO2とを用い、基板側に印加するバイアス電圧を所定の値として、W膜の異方性エッチングを行う。こうして、ゲート電極213を形成する。その後、レジストマスク211は除去する(図10(E))。
【0040】
ゲート電極は第1導電膜209と第2導電膜210との積層構造体であり、第1導電膜209が庇のように突出した帽子型(ハットシェイプ)の構造となっている。その後、図10(F)で示すようにドーピング処理を行い、各半導体膜に不純物領域を形成する。ドーピング条件は適宜設定すれば良い。半導体膜204に形成される第1n型不純物領域215は低濃度ドレインを形成し、第2n型不純物領域216はソース又はドレイン領域を形成する。半導体膜205に形成される第1p型不純物領域218はゲート電極とオーバーラップするソース又はドレインを形成し、第2p型不純物領域219はソース又はドレイン領域を形成する。それぞれの半導体膜におけるチャネル形成領域214、217はゲート電極213の第2導電膜とほぼ重なる位置に形成されろことになる。また、半導体膜206は容量部を形成する部材として適用し、第2n型不純物領域又は第2p型不純物領域と同じ濃度で不純物が添加される。
【0041】
そして、図11(A)に示すように水素を含有する酸化窒化シリコン膜220をプラズマCVD法により50nmの厚さで形成し、さらに350〜550℃の加熱処理により半導体膜の水素化を行う。
【0042】
層間絶縁膜221はアクリル又はポリイミドなどを主成分とする感光性の有機樹脂材料で所定のパターンに形成している。そして、ドライエッチングによりコンタクトホールを形成する(図11(B))。
【0043】
その後、図11(C)で示すように、Al、Ti、Mo、Wなどを用いて配線222〜224を形成する。配線構造の一例は、膜厚50〜250nmのTi膜と、膜厚300〜500nmの合金膜(AlとTiとの合金膜)との積層膜を用いる。
【0044】
こうして、nチャネル型TFT301、pチャネル型TFT302、容量部303を形成することができる。各TFTにおいてはゲート絶縁膜に少なくとも1層の窒化シリコン膜が含まれている。また、容量部303において、誘電体膜として少なくとも一層の窒化シリコン膜が含まれている。
【0045】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、非晶質半導体膜を一旦溶融して、その後の冷却過程で結晶化するレーザーアニール法において、レーザー光の照射により形成される溶融表面の表面張力対流(マランゴニ対流)を制御することにより、酸素を含む雰囲気中で溶融帯を形成しても、半導体に取り込まれた酸素が局所的に偏析するのを防ぎ、形成される結晶性半導体膜中に均質に分散させることを可能とする。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明のレーザー照射装置の構成を示す図である。
【図2】 溶融帯に対して垂直に磁場を印加する形態を示す図である。
【図3】 溶融帯に対して水平に磁場を印加する形態を示す図である。
【図4】 溶融帯に対してカスプ磁場を印加する形態を示す図である。
【図5】 溶融帯に対してカスプ磁場を印加する形態を示す図である。
【図6】 溶融帯に対して水平に磁場を印加する形態を示す図である。
【図7】 溶融帯の移動方向に対して平行に磁場を印加する形態を示す図である。
【図8】 溶融帯に対してカスプ磁場を印加する形態を示す図である。
【図9】 溶融帯に対してカスプ磁場を印加する形態を示す図である。
【図10】 本発明の半導体装置の作製方法を説明する図である。
【図11】 本発明の半導体装置の作製方法を説明する図である。
【符号の説明】
107 磁場印加手段
110 基板
111 半導体膜
112 溶融帯

Claims (5)

  1. 酸素を含む雰囲気中において、線状の連続発振レーザー光を半導体膜に照射して溶融帯を形成し、その固液界面を連続的に移動させることにより結晶化するに際し、
    前記溶融帯若しくは固液界面に磁場を印加して前記溶融帯での表面張力対流を制御することによって、前記酸素を含む雰囲気中から前記溶融帯に取り込む酸素濃度を制御するとともに、前記溶融帯中の酸素濃度の分布を一様にする半導体膜の結晶化方法であって、
    前記磁場の方向は前記溶融帯に対して平行であることを特徴とする半導体膜の結晶化方法
  2. 酸素を含む雰囲気中において、線状の連続発振レーザー光を半導体膜に照射して溶融帯を形成し、その固液界面を連続的に移動させることにより結晶化するに際し、
    前記溶融帯若しくは固液界面に磁場を印加して前記溶融帯での表面張力対流を制御することによって、前記酸素を含む雰囲気中から前記溶融帯に取り込む酸素濃度を制御するとともに、前記溶融帯中の酸素濃度の分布を一様にする半導体膜の結晶化方法であって、
    前記磁場は前記溶融帯に対してカスプ磁場であることを特徴とする半導体膜の結晶化方法。
  3. 酸素を含む雰囲気中において、絶縁表面上に形成された半導体膜に、線状の連続発振レーザー光を照射して溶融帯を形成し、その固液界面を連続的に移動させることにより結晶化するに際し、
    前記溶融帯若しくは固液界面に磁場を印加して前記溶融帯での表面張力対流を抑制することによって、前記酸素を含む雰囲気中から前記溶融帯に取り込む酸素濃度を制御するとともに、前記溶融帯中の酸素濃度の分布を一様にすることによって形成された結晶性半導体膜に絶縁ゲート型電界効果トランジスタのチャネル部を形成する半導体装置の作製方法であって、
    前記磁場の方向は前記溶融帯に対して平行であることを特徴とする半導体装置の作製方法
  4. 酸素を含む雰囲気中において、絶縁表面上に形成された半導体膜に、線状の連続発振レーザー光を照射して溶融帯を形成し、その固液界面を連続的に移動させることにより結晶化するに際し、
    前記溶融帯若しくは固液界面に磁場を印加して前記溶融帯での表面張力対流を抑制することによって、前記酸素を含む雰囲気中から前記溶融帯に取り込む酸素濃度を制御するとともに、前記溶融帯中の酸素濃度の分布を一様にすることによって形成された結晶性半導体膜に絶縁ゲート型電界効果トランジスタのチャネル部を形成する半導体装置の作製方法であって、
    前記磁場は前記溶融帯に対してカスプ磁場であることを特徴とする半導体装置の作製方法。
  5. 請求項3又は4において、前記結晶性半導体膜中の酸素濃度は5×1017〜2×1019/cmの範囲であることを特徴とする半導体装置の作製方法。
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