JP4291995B2 - 鉄系焼結合金部品の温間サイジング設備 - Google Patents

鉄系焼結合金部品の温間サイジング設備 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、鉄系焼結合金部品の連続熱処理装置による熱処理と温間サイジングを連続的に行うための温間サイジング設備に関する。
【0002】
【従来の技術】
熱処理して強度や硬度を高める鉄系焼結合金部品は、サイジングまたはコイニング後に熱処理を施すと、サイジング、コイニングを行ったときの残留応力が熱処理工程で解放されて寸法精度が大きく低下する。
【0003】
この不具合を無くすために、本出願人は、マルテンサイト変態開始点(Ms点)が50〜350℃の温度域にある鉄系焼結体をオーステナイト化温度以上の温度(Ael点)で加熱してオーステナイト化した後、マルテンサイト変態が出現する冷却速度で焼き入れし、焼き入れ体の温度がMs点以上、Ael点以下の温度域に達したときにサイジングまたはコイニングを行う方法を特開平7−138613号公報で提案している。この製法を温間サイジングと呼ぶ。
【0004】
この方法を実施するには、温度管理が正確に行える連続熱処理設備が必要になる。
【0005】
一般的な連続熱処理設備としては、例えば、特開2001−26817号公報に示されるものなどがある。同公報の設備は、軸受部材などの焼入れに利用するものであって、加熱炉で加熱したワークを炉内搬送ローラテーブルに載せて一次冷却室に移動させ、ここで傾斜搬送ローラテーブル、第1搬送ローラテーブル経由で第2、第3搬送ローラテーブルに乗り移らせたワークを第2、第3搬送ローラテーブルともども冷却油槽中に浸漬し、これを油槽から引き上げ、移送中に200〜230℃に冷却されたワークをプレス機でサイジングするようにしてある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ワークが鉄系焼結合金部品である場合、ワークの温度がMs点以上、Ael点以下の温度域に達したときにサイジングまたはコイニングを行う必要があるが、上記公報の熱処理設備ではサイジングプレス機の動作と焼入れ動作のタイミングにずれが生じるなどしてワークのサイジング温度が適正温度から外れることが考えられ、このようなときにもサイジングが実施されるため、不良品が発生する。
【0007】
そこで、この発明は、ワークの温度管理を正確に行ってサイジング不良の低減を図り、かつ、無駄なサイジング動作を省けるようにすることを課題としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するため、この発明においては、連続熱処理装置の投入部、加熱装置、冷却室、排出部を順に通ってサイジング装置に供給されるワークを前記投入部から排出部まで搬送する搬送装置を有し、
その搬送装置が、加熱装置内のワークを間欠送りする搬送機構と、
前記搬送機構上の先頭位置のワークを加熱装置の出口に連なる冷却室内の焼入れ油槽中に投入する投入機構と、投入されたワークを前記焼入れ油槽内で受け取るワーク受け具と、このワーク受け具を焼入れ油槽上に引き上げる昇降機構を備えた前記冷却室に設けられる焼入れ搬送装置と、
記ワーク受け具からワークを受け取って排出部に移動させる排出装置とから成り、サイジング処理時間に同期してワークを一個ずつ送るように構成された鉄系焼結合金部品の温間サイジング設備を提供する。
【0010】
前記焼入れ油槽に、投入されたワークを前記ワーク受け具内に誘導するガイドを設けたり、搬送装置を構成する部材のワーク接触面に耐熱性緩衝材を貼り付けたり、加熱装置から冷却室までを無酸化雰囲気としたりする好ましい。
【0011】
さらに、冷却室での冷却時間は、製品の品質を安定させるために1秒以下の単位で管理するのが好ましく、前述の搬送装置によればその1秒以下の単位での搬送時間管理が行える。
【0012】
搬送装置を外気から隔離するカバーを設けてそのカバーの内の温度を一定に保つようにしておくのも好ましい。
【0013】
また、ワークが前記冷却室から排出された時点からサイジングが開始されるまでの経過時間を計測し、時間管理でサイジング処理の可否を決定する制御装置、もしくは、ワークの温度をサイジング装置への投入時または投入直前に測定し、その測定温度によりサイジング処理の可否を決定する制御装置を備えさせるとより好ましい設備になる。
【0014】
このほか、サイジング装置に金型の冷却装置を備えさせるとサイジングと同時に冷却が行える。
【0015】
【作用】
この発明のサイジング設備は、ワークの供給がサイジング処理時間に同期してなされるので、冷却からサイジング開始までの時間がほぼ一定し、そのためにサイジング実施時のワーク温度もほぼ一定し、ワーク温度が適正範囲から外れることに起因したサイジング不良が効果的に防止される。
【0016】
また、この発明で採用する搬送装置は、加熱装置の出口付近に到達したワークを適切なタイミングで焼入れ油槽中に投入するので、冷却室での冷却時間と冷却後のワーク搬送時間を加熱装置内の搬送機構の搬送速度に捕らわれず適正に管理することができ、サイジング処理時間に同期したワーク供給が可能である。
【0017】
なお、焼入れ油槽内にガイドを設けると、油槽内に投入したワークがワーク受け具に確実に受け入れられる。
【0018】
また、搬送装置を構成する部材のワーク接触面に耐熱性緩衝材を貼り付けておくとワークの傷つきが防止される。加熱装置から冷却室までを無酸化雰囲気にした設備はワーク表面の酸化が防止される。
【0019】
さらに、冷却時間を1秒以下の単位で管理できるので、冷却後の温度管理が適正に行える。搬送装置を外気から隔離するカバーを有し、カバー内の温度を一定に保つことで、搬送中のワークの温度管理が容易となる。
【0020】
ワークが冷却室から排出された時点からサイジングが開始されるまでの経過時間に基づいてサイジングの可否を決定する制御装置を加えた設備は、無駄なサイジング動作が未然に防止され、生産性の向上やサイジング装置の耐久性向上なども図れる。ワークの温度を事前に測定してサイジングの可否を決定する制御装置を備える設備も同様の効果が得られる。
【0021】
さらに、サイジング装置の金型の冷却装置を備えることでサイジングと同時に焼入れができる。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の温間サイジング設備の実施形態を図1乃至図5に基づいて説明する。このサイジング設備は、加熱装置の加熱炉1と、その加熱炉の出口に連なる冷却室2と、加熱炉1内に引き通したメッシュベルトコンベヤ3と、冷却室2に設けた焼入れ搬送装置4と、焼入れ搬送装置4から受け取ったワーク(鉄系焼結合金部品)Wを排出部に向けて搬送する排出装置5と、排出部6から排出されたワークWをサイジング処理するサイジング装置7とを設けて成る。
【0023】
加熱炉1は、内部の温度分布を均一化するための攪拌ファン8と、加熱用のヒータ9を有し、内部温度を制御可能となっている。また、この加熱炉1の内部は窒素が導入されて無酸化雰囲気になっている。
なお、加熱用のヒータの熱源としては、電気ヒータ、誘導加熱等が考えられる。
【0024】
冷却室2は、カバー10で覆われており、この部屋の内部も、加熱炉1と同様無酸化雰囲気になっている。この冷却室2の内部には、ガイド11を有する焼入れ油槽12が設けられている。
【0025】
前記メッシュベルトコンベヤ3と、焼入れ搬送装置4と、排出装置5の3者によって、連続熱処理装置の投入部、加熱装置、冷却室、排出部を順に通ってサイジング装置に供給されるワークを前記投入部から排出部まで搬送する搬送装置が構成されている。加熱炉1(加熱装置)内の搬送機構であるメッシュベルトコンベヤ3は、加熱炉1の入口部において供給されるワークWを間欠送りして炉の出口に向けて移動させる。図示のコンベヤ3は、ワークWを2列に並べて搬送するが、ワークの搬送は1列にして行うこともできる。
【0026】
焼入れ搬送装置4は、水平シリンダ13aと垂直シリンダ13bとで駆動する投入機構の掻き落とし具13と、焼入れ油槽12の油面下に待機させてワークを受け取る断面U字状のワーク受け具14と、そのワーク受け具14をシリンダ15aで上下動させる昇降機構15と、昇降機構15と一緒にワーク受け具14を横移動させる横行機構16と、ワーク受け具14を傾ける傾動機構17とから成る。この焼入れ搬送装置4は、サイジング装置7によるサイジング処理時間に同期して駆動され、また、ワークの油焼入れの時間を1秒以下の単位で制御するようにしてある。
【0027】
水平シリンダ13aとそのシリンダで押し引きする掻き落とし具13は搬送されるワークに対応させて2組設けてあり、その2組の掻き落とし具が交互に駆動されて左右のワークを交互に焼入れ油槽12に掻き落とす。
【0028】
排出装置5は、図5に示すように、冷却室2を出たワークWをサイジング装置7によるサイジング処理時間に同期して一個送りする排出用メッシュベルトコンベヤ18と、このコンベヤの先端から滑落させたワークWをシュータ19を介して受け取ってプレス投入部21に供給する移送装置20とから成る。排出部6は、プレス投入部21からなる。移送装置20のワーク受け20aは移動終点で傾動してワークWをプレス投入部21に滑り落とす。排出装置5は、全体がカバー22で覆われており、そのカバー22の内部には、ワークWの温度維持のために熱風発生装置23で発生させた熱風が送り込まれる。温度を一定に保つための手段は、電気ヒータ、ガスバーナ等であってもよい。
【0029】
サイジング装置7は、プレス機にダイセットを取り付けた周知の装置である。
【0030】
なお、例示のサイジング設備は、プレス投入部21に移動したワークWを作業者がサイジング装置7に移し替えるが、その移し替えはロボットハンドなどを使用して機械化してもよい。
【0031】
また、ワークWが落下時に接触するガイド11、ワーク受け具14、シュータ19、ワーク受け20a、プレス投入部21の表面には、ワークの傷付きを防止するために耐熱性緩衝材24を貼り付けてある。
【0032】
このように構成した温間サイジング設備は、メッシユベルトコンベヤ3に載せたワークWが加熱炉1により目標温度、例えば850℃程度の温度に加熱される。そして、コンベヤ3の出口付近に到達したワークWが、掻き落とし具13により焼入れ油槽12内に掻き落とされる。掻き落とし具13は、サイジング処理時間に同期して駆動され、この掻き落とし具13による掻き落としが実施されるまでワークWは、停止したコンベヤ3上で待機する。従って、掻き落とし具13の動作タイミングによっては、各ワークの加熱時間にずれが生じることが考えられるが、加熱炉内で待機するため温度差は生じない。
【0033】
焼入れ油槽12の中に落とされたワークWは、ガイド11に誘導されてワーク受け具14内に納まる。このワークWは焼入れ時間を1秒以下の単位で管理して油槽12から引き上げられる。その引き上げは、ワーク受け具14をガイド11との干渉が避けられる位置まで移動させた後、シリンダ15aで上昇させる方法でなされる。油槽12から出したワークWは、ワーク受け具14を傾動させて排出装置の排出用メッシユベルトコンベヤ18上に移され、さらに、移送装置20に移されてプレス投入部21に送られる。
【0034】
プレス投入部21に移動したワークWは、作業員によりサイジング装置7にセットされてサイジング処理される。
【0035】
図6に、サンプル数50個について実験で求めた油焼入れ後〜サイジング開始までのワーク温度と、経過時間と、サイジング処理後の寸法精度と硬度の歩留り(良品率)の関係を示す。
【0036】
この図から分かるように、ワーク温度が180℃を下回ると、良品率は大きく低下し、ワーク温度が100℃以下では9割が不良になってしまう。ワーク温度を100℃以上に保てる時間は120秒、また、180℃以上に保てる時間は30秒であった。従って、生産面でのロスを無くすためには、油焼き入れ後30秒以内にサイジングを実施する必要がある。この発明の設備は、サイジング装置7に同期させてワークを一個送りするが、上述した構成では、上記の時間が30秒を経過したのちにもサイジングが実行される。その不具合をなくすために、サイジングの可否を決める制御装置25を設けておくのがよい。
【0037】
その制御装置25は、ワークWが焼入れ油槽12から引き上げられたことをシリンダ15aの上昇終了をスイッチなど(図示せず)を設けて検出し、その時点よりサイジングが開始される直前までの時間(この中には作業者によるセット時間も含まれる)をタイマでカウントし、目標時間(図示の設備は30秒)をオーバしていなければそのままサイジングを実行し、目標時間をオーバした場合にはサイジング不可と判断して、サイジング作業を停止させるものでよい。サイジング不可の判定がなされるとサイジング装置7は、セット済のワークWを払出し装置(図示せず)で金型の外部に払い出す。
【0038】
制御装置25は、サイジング装置への投入時または投入直前にワーク温度を測定してサイジングの可否を決定するものであってもよい。温度測定は放射温度計などで行える。その放射温度計による温度測定は、測定精度を高めるために暗室内で行うのがよい。
【0039】
また、サイジング装置7の金型に含まれるダイに冷却媒体の通路を設けて金型を冷却すると、サイジング処理時にワークの焼入れが行えて好ましい。
【0040】
【発明の効果】
以上述べたように、この発明のサイジング設備は、熱処理したワークをサイジングの処理時間に同期してサイジング装置に一個送りするので、サイジング開始時のワーク温度のばらつきが小さく抑えられ、温度不適正によるサイジング不良が減少し、また、そのために、生産性も向上する。
【0041】
また、このサイジング設備に採用した搬送装置は、加熱装置のコンベヤから独立させた焼入れ搬送装置を設けて油焼入れの時間を1秒以下の単位で管理できるようにしたので、サイジング不良の更なる低減、サイジングして得られる製品の品質の安定化が図れる。
【0042】
加熱装置から冷却室までを連続した無酸化雰囲気にしたものはワークの酸化が防止され、また、搬送装置をカバーで外気から隔離してカバーの内側に一定温度ガスを流すものは焼入れ後のワークの温度低下が抑制される。
【0043】
このほか、焼入れ後の経過時間やサイジング時のワーク温度に基づいてサイジングの可否を決定する制御装置を備えさせたものは、サイジング不良と無駄なサイジング動作を無くすことができ、生産性の向上、サイジング装置の耐久性向上なども図れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明のサイジング設備の実施形態を簡略化して示す平面図
【図2】図1のAーA線に沿った断面図
【図3】図1のBーB線に沿った断面図
【図4】図1のCーC線に沿った断面図
【図5】排出装置の断面図
【図6】油焼入れ後〜サイジング開始までのワーク温度と、経過時間と、サイジング良品率の関係を示す図
【符号の簡単な説明】
1 加熱炉
2 冷却室
3 メッシユベルトコンベヤ
4 搬送装置
5 排出装置
6 排出部
7 サイジング装置
8 攪拌ファン
9 ヒータ
10 カバー
11 ガイド
12 焼入れ油槽
13 掻き落とし具
13a 水平シリンダ
13b 垂直シリンダ
14 ワーク受け具
15 昇降機構
15a シリンダ
16 横行機構
17 傾動機構
18 排出用メッシユベルトコンベヤ
19 シュータ
20 移送装置
20a ワーク受け
21 プレス投入部
22 カバー
23 熱風発生装置
24 耐熱性緩衝シート
25 制御装置

Claims (4)

  1. 連続熱処理装置の投入部、加熱装置、冷却室、排出部を順に通ってサイジング装置に供給されるワークを前記投入部から排出部まで搬送する搬送装置を有し、
    その搬送装置が、加熱装置内のワークを間欠送りする搬送機構と、
    前記搬送機構上の先頭位置のワークを加熱装置の出口に連なる冷却室内の焼入れ油槽中に投入する投入機構と、投入されたワークを前記焼入れ油槽内で受け取るワーク受け具と、このワーク受け具を焼入れ油槽上に引き上げる昇降機構を備えた前記冷却室に設けられる焼入れ搬送装置と、
    前記ワーク受け具からワークを受け取って排出部に移動させる排出装置とから成り、サイジング処理時間に同期してワークを一個ずつ送るように構成された鉄系焼結合金部品の温間サイジング設備。
  2. 前記焼入れ油槽に、投入されたワークを前記ワーク受け具内に誘導するガイドを設けた請求項1に記載の温間サイジング設備。
  3. ワークが前記冷却室から排出された時点からサイジングが開始されるまでの経過時間を計測し、時間管理でサイジング処理の可否を決定する制御装置を備えさせた請求項1又は2に記載の温間サイジング設備。
  4. ワークの温度をサイジング装置への投入時または投入直前に測定し、その測定温度によりサイジング処理の可否を決定する制御装置を備えさせた請求項1又は2に記載の温間サイジング設備。
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