以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
図1は、概略的に示した内燃機関たるエンジン1の構成図(1気筒のみを示す)であり、本発明を適用したものである。このエンジン1は例えば自動車用の3気筒のもので、図示しないアクセルペダルに連動して開閉するスロットルバルブ5、サージタンク6、吸気管7等を備えた吸気系と、この吸気系の末端近傍に配設され燃料噴射を行う燃料噴射弁8と、スパークプラグ9による点火で混合気を燃焼させる燃焼室10a等を備えた気筒10と、図示しないマフラに至るまでの排気系とから概略構成されている。
そして、この燃焼室10aには、カム機構によりエンジン回転に同期して開閉するように吸気バルブ2と排気バルブ3とを設けている。これら吸排気バルブ2、3のための動弁機構について詳述すると、これら吸排気バルブ2、3はそれぞれ上方へ延びるステム2a、3aを備え、各ステム2a、3aの上部には図示しないバルブスプリングおよびバルブリフタ2b、3b等をそれぞれ組み付けている。各バルブリフタ2b、3bには、吸気側カムシャフト11および排気側カムシャフト12上にそれぞれ形成したカム13、14をそれぞれ当接させている。本実施形態では、図2、3に示すように、排気側カムシャフト12の一端に配設したタイミングプーリ15と、エンジンのクランクシャフトの一端に配設したタイミングプーリ(図示しない)とをタイミングベルト16により連結している。なおこれらタイミングプーリの歯数比は、周知の通りクランクシャフトが2回転する間に排気側カムシャフト12が1回転するように設定している。また、吸気側カムシャフト11は、吸気バルブ2の開閉タイミングつまりバルブタイミングを排気バルブ3のバルブタイミングに対して可変にすべく、可変バルブタイミング機構4を介して、排気側カムシャフト12に連結している。
可変バルブタイミング機構4は、いわゆる揺動シリンダ機構を利用したもので、油圧により駆動され、例えば図3〜5に示すように、排気側カムシャフト12に固着したロータ17と、このロータに外嵌するハウジング18と、ロータ17に対してハウジング18を回動させる切換制御弁たるオイルコントロールバルブ19(以下OCVと称する)と、互いに噛合うように一方をハウジング18に固着し他方を吸気側カムシャフト11に固着した一対のシザースギヤ20、21とを備えてなり、ロータ17に対するハウジング18の相対角度を変えることにより、排気側カムシャフト12と吸気側カムシャフト11との間に任意の回転位相差を生じさせることのできる機能を有するものである。なお、周知のごとくシザースギヤ20、21の歯数比は1:1となるように設定し、吸気側カムシャフト11と排気側カムシャフト12との回転数が同一となるようにしている。
具体的には、ロータ17は、円筒形状をなし、その内側面17aを排気側カムシャフト12に外嵌させて固着し、外側面17bから例えば4本のベーン22をラジアル方向に突出させたものである。
ハウジング18は、中央に貫通孔を有する円板状のもので、ロータ17に対しこの貫通孔を外嵌して回動自在に取着する。また、このハウジング18には、正面視扇形で、貫通孔の側面に開口する4つの部屋18aを軸に点対称に設けており、上述のごとくハウジング18をロータ17に外嵌させた際に、各ベーン22がそれぞれの部屋18aを進角室18bと遅角室18cの2つに仕切るように構成している。
OCV19は、図3に示すようにいわゆる電磁式の4方向スプール弁で2つの入力ポート19a、19bと2つの出力ポート19c、19dとを有し、スプール19eの進退により、内部流体経路を切り換えて、各出力ポート19c、19dをそれぞれ入力ポート19a、19bのいずれかに連通させるものである。また、スプール19eの中立位置においては内部流体経路を遮断し、出力ポート19c、19dと入力ポート19a、19bとを連通させないようにする。なお、図3はスプール19eが中立位置にある状態を示している。このスプール19eの進退は、外部から入力される弁制御信号であるOCV駆動信号aにより行うようにしており、このOCV駆動信号aの値であるオン/オフデューティ比DVTに応じてその進退距離を変化させ得る。具体的には、デューティ比(以下デューティ比と称する)DVTが0%(オフ状態)においては、スプール19eを最も一端側(図3中左側)に位置させ、流路断面積が最大の状態で入力ポート19aと出力ポート19c、および入力ポート19bと出力ポート19dが接続されるよう内部流体経路を設定する。この状態からデューティ比DVTが50%付近までの間においては、内部流体経路を切り換えることなく、デューティ比DVTの増加に応じてスプール19eを他端側(同図中右側)に向かって移動させその流路断面積を減少させる。そしてデューティ比DVTが50%付近で、スプール19eを中立位置に位置させ、OCV19の内部流体経路を完全に遮断する。ここで50%付近と規定したのは、同じデューティ比DVTのOCV駆動信号aを与えても、スプール19eの位置が個々のエンジンや環境変化等により変動するからである。さらにデューティ比DVTを増加させると、内部流体経路を切り換えて入力ポート19aと出力ポート19d、および入力ポート19bと出力ポート19cを接続する。そして、デューティ比DVTの増加に応じてスプール19eを他端側に向かって移動させその流路断面積を増加させる。デューティ比DVTが100%(オン状態)の状態では、スプール19eを最も他端側に位置させ、その流路断面積を最大にする。
次にこの可変バルブタイミング機構4に係る油圧経路について述べる。図3〜5に示すように、可変バルブタイミング機構4の動力源であり、エンジン1によって駆動される油圧ポンプPの出力は、OCV19の一方の入力ポート19aに接続するようにしており、OCV19の他方の入力ポート19bを、タンクTに接続するようにしている。また、OCV19のこれら出力ポート19c、19dは、排気側カムシャフト12の内部に設けた2本の貫通孔12a、12bの一端にそれぞれ接続しており、各貫通孔12a、12bの他端は、排気側カムシャフト12の外側面において周方向に沿って平行に設けた2本の溝12c、12dにそれぞれ開口させている。これら溝12c、12dは、ロータ17の外嵌している部位に設けており、ロータ17には、図4に示すように、一端を他方の溝12dに開口し、他端をベーン22により仕切られた進角室18bに開口する第1流体経路17cと、図5に示すように、一端を一方の溝12cに開口し、他端をベーン22により仕切られた遅角室18cに開口する第2流体経路17dとを設けている。
このように油圧経路を構成することにより、ポンプPが進角室18bに、またタンクTが遅角室18cに連通する第1状態と、ポンプPが遅角室18cに、またタンクTが進角室18bに連通する第2状態と、ポンプPおよびタンクTが遅角室18cにも進角室18bにも連通しない第3状態とをOCV19のスプール19eを進退移動させることで実現している。
すなわち、OCV19を制御して第1状態を保持することにより、進角室18bに油を導きその容量を増大させて図6に示すようにベーン22を部屋18aの一端に当接する最進角位置まで回動させることができる。これは後述する吸気バルブ2のバルブタイミングを進角側にずらせるように作用するものである。また第2状態を保持することにより、遅角室18cに油を導きその容量を増大させて、図7に示すようにベーン22を部屋18aの他端に当接する最遅角位置まで回動させることができる。これは吸気バルブ2のバルブタイミングを遅角側にずらせるように作用するものである。これら第1、2状態でのベーン22の回動速度は、OCV駆動信号aのデューティ比DVTにより設定できる。さらに、その間でベーン22を停止させる場合は第3状態に保持すれば良い。このようにベーン22を図6から図7に示す角度範囲θ間で回動させて、ハウジング18のロータ17に対する相対角度を角度θの範囲で任意に変えることができるようにしている。
この一方で、吸気側カムシャフト11を、シザースギヤ20、21を介してこのハウジング18に連動させているとともに、排気側カムシャフト12をロータ17と一体に回転するようにしている。したがって、上述のように、ハウジング18のロータ17に対する相対角度を角度θの範囲で変えることにより、吸気側カムシャフト11と排気側カムシャフト12との回転位相差を角度θの間で任意に設定できることになる。すなわち、本実施形態による可変バルブタイミング機構4は、クランクシャフトの回転に対して排気バルブ3を常に一定のタイミングで開閉させつつ、吸気バルブ2のバルブタイミングを変化させて、排気バルブ3のバルブタイミングと吸気バルブ2のバルブタイミングとの相対位相差を角度θの間で自在に変化させることができるものである。
なお、さらに本実施形態では、図4に示すようにハウジング18に、スプリング23aにより突出方向に付勢したピン23を、前述の最遅角位置でロータ17に設けた孔17eに係合する位置に設けている。この孔17eのピン23に嵌合する反対側は、前記溝12dに連通させており、油圧が発生するとスプリング23aの付勢力に逆らってこの油圧がピン23を没入させて、ロータ17とハウジング18との相対回転を禁止しないようにしている。
上述した構成によるエンジン1の電気的な制御は、電子制御装置24により行うようにしている。次に、この電子制御装置24をはじめ、本実施形態の電気制御に係る主なセンサ、電気配線等について以下に詳述する。
本実施形態に係る主なセンサとしては、図1、2に示すように、例えば次のようなものを設けている。すなわち、排気側カムシャフト12には、クランクシャフトが720°CA(以降、クランクシャフトの位相を述べる場合には、このように角度にCAを付して表現する)回転する毎にパルス信号である気筒判別信号cを出力すると共に、240°CA回転する毎にパルス信号である排気カム信号bを出力する排気側タイミングセンサ25を設けている。そして、吸気側カムシャフト11には、240°CA回転する毎にパルス信号である吸気カム信号dを出力する吸気側タイミングセンサ26を設けている。本実施形態では、図2に示すように、例えば120°毎に配設した排気カム信号b出力用の歯と、その他に設けた気筒判別信号c出力用の1つの追加歯との、合計4本の歯を有した歯車25aを、排気側カムシャフト12のタイミングプーリ15に添設しておき、この歯車25aに近接させて配設したピックアップセンサを排気側タイミングセンサ25として使用している。また同様に、吸気側カムシャフト11には、120°毎に配設した合計3本の吸気カム信号d出力用の歯を有した歯車26aを設けておき、この歯車26aに近接させて配設したピックアップセンサを吸気側タイミングセンサ26として使用している。その他に、エンジン回転数NEを検出しエンジン回転数信号gを出力する図示しない回転数センサや、スロットル開度がアイドル状態になった場合にアイドルスイッチ信号IDLを出力するアイドルスイッチ27、スロットル開度が一定以上になった場合にパワースイッチ信号PSWを出力するパワースイッチ28、あるいは吸気管圧力PMを検出し吸気管圧力信号hを出力する吸気管圧力センサ29等を設けている。
電子制御装置24は、図1に示すように中央演算処理装置24a、記憶装置24b、入力インターフェース24c、出力インターフェース24d等を備えるようにした、いわゆるマイコン装置として一般に知られているものである。記憶装置24aには、エンジン1等を制御するための種々のプログラムが記憶されているとともに、後述する中立点学習値GDVTHが更新可能の記憶されるものである。また、入力インターフェース24cには排気カム信号b、吸気カム信号d、気筒判別信号c、アイドルスイッチ信号IDL、パワースイッチ信号PSW、吸気管圧力信号h、エンジン回転数信号g等を少なくとも入力するようにしている。また、出力インターフェース24dからは、可変バルブタイミング機構4の制御信号であるOCV駆動信号a、燃料噴射弁7の駆動信号f、スパークプラグ9の点火信号e等を少なくとも出力するようにしている。
もちろん、この他に、自動車に一般的に用いられる各種の部材やセンサ等も構成要素となっているが本実施形態においては省略する。
上述した構成の本実施形態にかかる可変バルブタイミング機構4は、基本的にはエンジン1の運転状態に応じて、この分野で知られている制御方法により制御するものであってよく、OCV19のスプール19eが機械的に中立位置にある場合、言い換えればスプール19eを中立位置に保持するためのOCV駆動信号aの中立点保持デューティ比である中立点学習値GDVTHの学習については、図8及び図9に示すフローチャートに基づいて以下に説明する方法により行うものである。
すなわち、可変バルブタイミング機構の学習制御プログラムは、バルブタイミングが判定範囲VTCST内に収まる場合のOCV19のOCV駆動信号aのデューティ比DVTを中立点学習値GDVTHとして学習して記憶し、記憶した中立点学習値GDVTHをもとにOCV19のフィードバック制御を行うものであって、記憶された中立点学習値GDVTHが存在する場合より中立点学習値GDVTHが記憶されていない場合に前記判定範囲VTCSTを広く設定するように構成されている。以下の説明においては、エンジン1が最初に運転される場合、つまり電子制御装置24に図示しないバッテリが接続されて最初に電力が投入された場合、あるいはエンジン1や車両のメンテナンスにおいてそれまで接続されていたバッテリが一旦外された後に再度接続された場合で、中立点学習値GDVTHが電子制御装置24の記憶装置24bから消去されて記憶されていないつまり存在しない初期状態から制御を開始するものとする。
まず、ステップS1において、吸気バルブ2のバルブタイミングの安定度を判定するための判定範囲VTCSTを判定範囲初期値KVTCSTINIにより設定する。この判定範囲初期値KVTCSTINIは、中立点学習値GDVTHが記憶されていない場合のものであるので、判定範囲最終値KVTCSTに比較して大きく設定してあるもので、例えば判定範囲最終値KVTCSTの10倍から10数倍程度に設定するものである。
判定範囲VTCSTを判定範囲初期値KVTCSTINIにより設定した後、ステップS2では、可変バルブタイミング機構4をフィードバック制御しているか否かを判定する。可変バルブタイミング機構4は、エンジン回転数NEが所定回転数以上となる完爆後の始動後運転状態となるまでの始動時においては、吸気バルブ2を最遅角したバルブタイミングに固定して吸気バルブ2を制御するものである。始動後の運転状態において、エンジン1が安定して作動していると判断した場合に、可変バルブタイミング機構4のフィードバック制御を行う運転状態と判定する。そして、エンジン回転数信号NE、排気カム信号b、吸気カム信号d等をはじめとして種々のエンジン運転状況を示すセンサからの信号(出力情報)等を用い、吸気バルブ2が所望のタイミングで開閉するように、中立点学習値GDVTHの学習初期値に基づいてOCV駆動信号aのデューティ比DVTを演算してフィードバック制御を行う。
学習初期値は、本来の中立点学習値GDVTH言い換えれば後述する判定範囲最終値KVTCSTにより設定された判定範囲VTCSTにおいて学習した中立点学習値GDVTHより例えば30%程度遅角側に設定してあるものである。この学習初期値は、実際のエンジン1の運転において学習して得たものではなく、始動直後の運転状態などにおいて、実バルブタイミングVTを進角側に制御することによりエンジン1の回転が不安定になるなどの不具合を発生しないように、上述したように設定するものである。
可変バルブタイミング機構4のフィードバック制御モードであると判定した場合は、ステップS3において、目標バルブタイミングVTTを演算する。目標バルブタイミングVTTは、様々な運転状態に対応して、吸気管圧力PM及びエンジン回転数NEにより求められるエンジン負荷とエンジン回転数NEとの関係からあらかじめ実験的に最適値に設定されている。
次に、ステップS4において、実バルブタイミングVTを演算する。実バルブタイミングVTは、この時点での吸気カム信号dと吸気バルブ2のバルブタイミングを最遅角した状態での吸気カム信号dとの位相差により演算するものである。
この後、ステップS5において、実バルブタイミングVTをなまし演算処理する。なまし演算自体は、この分野でよく知られているものを使用することができる。具体的には、例えば今回算出した実バルブタイミングVTと前回演算した実バルブタイミングVTのなまし演算値VTSMとの差を定数(例えば8)にて除した値を、前回演算したなまし演算値VTSMに加算して今回のなまし演算値VTSMとするものである。なお、なまし演算値VTSMに代えて、実バルブタイミングVTの移動平均値を採用するものであってもよい。
次に、ステップS6において、演算した今回の実バルブタイミングVTと目標バルブタイミングVTTとのバルブタイミング差を演算し、そのバルブタイミング差に基づいてOCV駆動信号aのデューティ比DVTを演算し、OCV19に出力する。これにより、OCV19は吸気バルブ2のバルブタイミングを進角するように作動する。
このようにしてOCV19をフィードバック制御している間に、ステップS7において、実バルブタイミングVTが目標バルブタイミングVTTに達したか否かを判定する。実バルブタイミングVTが目標バルブタイミングVTTと等しくない場合は、実バルブタイミングVTが目標バルブタイミングVTTに達していないとして、ステップS8において、実バルブタイミングVTとなまし演算値VTSMとの差の絶対値が判定範囲VTCSTを下回るか否かを判定する。すなわち、今回演算した実バルブタイミングVTとなまし演算値VTSMとの差の大きさつまり絶対値が大きく判定範囲VTCST以上である場合は、フィードバック制御を実行しているにもかかわらず実バルブタイミングVTが安定していないために中立点学習値GDVTHの学習は不可能であると判定する。このような場合に中立点学習値GDVTHの学習を行うと、OCV19のスプール19eが機械的な中立位置に位置するとみなせない場合のOCV駆動信号aのデューティ比GDVTHを中立点学習値GDVTHとして学習してしまうので、誤学習が生じることになる。
一方、上記絶対値が判定範囲VTCSTを下回るつまり実バルブタイミングVTが判定範囲VTCST内である場合には、ステップS9に進んで中立点学習値GDVTHの学習を実行する。すなわち、ステップS9においては、この時点のつまりステップS4において演算したOCV駆動信号aのデューティ比DVTを中立点学習値GDVTHとして学習し、記憶装置24bに保存する。バッテリクリア後の運転時においては、学習初期値により中立点学習値GDVTHが設定してあるので、この学習初期値を今回の中立点学習値GDVTHにより更新して保存するものである。
このようにして中立点学習値GDVTHの学習を実行した後、ステップS10において判定範囲VTCSTの更新を実行する。判定範囲VTCSTは、上述のように、バッテリクリアの後のエンジン1の運転においては、判定範囲初期値KVTCSTINIにより設定しており、中立点学習値GDVTHを学習する毎にその範囲を狭くするようにして更新されるものである。この判定範囲更新ルーチンについて、図9により説明する。
ステップS11において、この時点の判定範囲VTCSTから所定値KVTCSTDECを減算して新たな判定範囲VTCSTに設定する。すなわち、このステップS11により、中立点学習値GDVTHを学習した後に、判定範囲VTCSTを所定値KVTCSTDEC分だけ縮小するものである。この後、ステップS12において、今回演算した新たな判定範囲VTCSTが判定範囲最終値KVTCSTを下回っているか否かを判定する。そして、判定の結果、新たな判定範囲VTCSTが判定範囲最終値KVTCSTを下回っていると判定した場合、つまり判定範囲VTCSTとして設定している最小の範囲より演算した新たな判定範囲VTCSTが小さくなる場合には、ステップS13において、判定範囲VTCSTを判定範囲最終値KVTCSTにより設定する。
このような構成において、中立点学習値GDVTHを学習するに際して、吸気バルブ2のバルブタイミングの安定度を判定する、言い換えれば中立点学習値GDVTHを学習するか否かを判定する判定範囲VTCSTは、吸気バルブ2のバルブタイミングをフィードバック制御している場合に、バッテリクリアにより記憶されていた学習により得た中立点学習値GDVTHが消去されて存在しない時に最大値である安定範囲初期値KVTCSTINIを適用し、その後は中立点学習値GDVTHの学習を行う毎に縮小するものである。
すなわち、バッテリクリアを実行した場合には、記憶装置24bに記憶されていた中立点学習値GDVTHが一旦消去され、それまでに学習した中立点学習値GDVTHが存在しない状態となる。このため、バッテリを接続して電子制御装置24への電力の供給が再開された場合には、中立点学習値GDVTHを学習初期値により設定して、中立点学習値GDVTHを学習するまでの間においても学習初期値により設定された中立点学習値GDVTHに基づいてフィードバック制御(ステップS2〜6)を行うものであう。また、フィードバック制御に先立って、判定範囲VTCSTは、判定範囲最終値KVTCSTより大きな値の判定範囲初期値KVTCSTINIにより設定するものである(ステップS1)。
始動直後にバルブタイミングを進角させてエンジン1が円滑に回転しなくなることを防止するために、学習初期値で設定した中立点学習値GDVTHは、OCV19のスプール19eをほぼ中立位置に位置させるOCV駆動信号aのデューティ比DVTを学習した本来の中立点学習値GDVTHに比べて遅角側に偏った値で設定していることにより、学習初期値で設定した中立点学習値GDVTHに基づいてOCV駆動信号aのデューティ比DVTを設定するとバルブタイミングの変動が大きくなる傾向になってしまうが、判定範囲初期値KVTCSTINIにより設定された判定範囲KVTCSTが広いので実バルブタイミングVTの安定度の判定(ステップS8)を容易にしている。これによりバッテリクリアの後の運転において、早期に中立点学習値GDVTHの学習を行う(ステップS9)ことができるものとなる。そして、このように中立点学習値GDVTHの学習を早期に実行することにより、バルブタイミングを迅速に安定させることができる。
この後、エンジン1を継続して運転することにより、制御は、ステップS2からステップS8を繰り返し実行し、中立点学習値GDVTHの学習条件(ステップS2、ステップS7及びステップS8)が満たされる毎に学習(ステップS9)して、電子制御装置24の記憶装置24bに記憶してある中立点学習値GDVTHを更新するものである。
そして、図10に示すように、中立点学習値GDVTHの学習を重ねる毎に判定範囲VTCSTを狭くしていくので(ステップS11)、学習精度を高くすることができる。つまり、中立点学習値GDVTHの学習を重ねる毎に、実バルブタイミングVTの変動が小さくなった状態において中立点学習値GDVTHを学習するので、実バルブタイミングVTの安定度は学習回数を重ねる毎に高くなる。このような状況において、判定範囲VTCSTを広くしておくと、実バルブタイミングVTが何らかの理由で変動している場合に、その実バルブタイミングVTが広く設定した判定範囲VTCSTに収まることによりその時のOCV駆動信号aのデューティ比DVTを中立点学習値GDVTHとして学習することになる。しかしながら、実際にはOCV19のスプール19eが中立位置に保持されていない可能性がある。そしてこのような中立点学習値GDVTHによりフィードバック制御を実行すると、中立点学習値GDVTHが誤っているために実バルブタイミングVTが不安定になるものである。つまりこのような学習は、OCV19のスプール19eの位置からして本来の学習とはならないため、誤学習となり学習精度を低下させるものとなる。この実施形態にあっては、中立点学習値GDVTHを学習する毎、つまり最初の学習の実行から時間的に隔たるに応じて判定範囲VTCSTを狭くしていくので、中立点学習値GDVTHの学習後の各時点において誤学習を回避することができる。しかも最終的には、中立点学習値GDVTHを誤学習することのない最小範囲となる判定範囲最終値KVTCSTによる判定範囲VTCSTに収束させるので、判定範囲VTCSTを可変にしても確実に中立点学習値GDVTHの誤学習を防止することができる。
なお、上記実施形態においては吸気バルブ2のバルブタイミングを可変にするものを説明したが、吸気バルブ2のバルブタイミングを変えずに排気バルブ3のバルブタイミングを可変にするものであってよい。この場合、吸気バルブ2のバルブタイミングを遅角する制御は、排気バルブ3のバルブタイミングを進角する制御に対応するもので、進角する制御についても同様である。
また、上記実施形態にあっては、中立点学習値GDVTHの学習を重ねる毎に判定範囲VTCSTを縮小するものを説明したが、例えば学習回数を計数しておき、計数した学習回数が設定した回数例えば3回になった場合に判定範囲VTCSTを縮小するように構成するものであってもよい。このような例の場合においても、学習回数が3回毎に縮小されるものであり、3回の学習に要する時間の経過の後、つまりは最初の学習の実行から時間的に隔たるに応じて判定範囲VTCSTを縮小するものである。設定した回数自体は、3回に限定されるものではなく、学習により判定範囲VTCSTを縮小することが遅延しないように設定すればよい。
このように、設定された学習回数を計数することにより、設定された学習回数になるまでの間の経過時間の長短にかかわらず最初の学習の実行から時間的に隔たるに応じて判定範囲VTCSTを縮小することができるため、迅速に中立点学習値GDVTHの学習精度を高くすることができる。そして、判定範囲VTCSTを縮小する毎に、学習精度が高くなることにより、設定された学習回数に対応する経過時間も短縮され、上述のように確実に中立点学習値GDVTHの誤学習を防止することができるものとなる。
その他、各部の具体的構成についても上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。