JP4288821B2 - 高温強度に優れた低熱膨張Fe基耐熱合金 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、常温の強度と高温での耐酸化性と強度に優れ、かつ低い熱膨張係数を必要とされる耐熱合金に関するものである。特に、セラミックスや超硬合金と接合して使用される複合材部品やガスタービン部材などに使用される低熱膨張の高強度耐熱合金に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、ガスタービン部品の使用温度の上昇に伴い、常温から高温までより高い耐力や引張強さを備えた合金が要求される。同時に、例えばターボチャージャーのセラミックロータと金属軸を接合するターボカラーのように、セラミックスや超硬合金などの低熱膨張材料と接合して使用される金属材料として、各種の部品や部材間のクリアランスを常温から高温まで一定量に維持するために熱膨張係数の低い材料が要求されている。
【0003】
すなわち、このような用途として低熱膨張でありながら高温強度を兼ね備えた金属材料の要求がますます増加している。さらに、これらの用途には高温で使用する際の耐酸化性の向上が要求されている。
【0004】
かかる用途に適用可能な合金として、特開昭53−6225号に記載の低熱膨張合金(質量%でNi:30〜57、Cr:1.7〜8.3、Ti:1〜2、Nb+0.5Ta:1.5〜5.0、Co:≦31、Al≦1.5、C:≦0.2、Mn:≦2.0.Si:≦1.0、B:≦0.03、残部Fe)や、本願発明者等が先に特開平6−228714号において開示した合金(質量%でC:0.2以下、Si:1.0以下、Mn:2.0以下、Cr:4を越え10以下、Al:1.0を超え2.0以下、Ti:0.3〜3.0、Nb+0.5、Ta:1.5〜7で、Ni:20以上30未満、Co:20〜35)などがある。
【0005】
また、高温強度が良好なNi基耐熱合金では、代表的なものとして、WASPALOY(United Technologies社の商標)がある。この合金は、厳しい高温強度や耐酸化性が要求されるジェットエンジンの部品などに使用されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
セラミックスなどの低熱膨張材料との接合部材として使用される金属材料の場合、高温で容易に塑性変形を起こすと、接合部材としての機能が果たせない。そのため、かかる用途では低い熱膨脹係数とともに、高温における高い引張強さと合わせて高い耐力が要求される。また、同時に高温で長時間使用すると脆化相が析出して強度が低下するような材料は、高温で使用できないことを考慮しなければならない。
【0007】
しかしながら、前記特開昭53−6225号に記載される低熱膨張合金は、700℃を越えて900℃程度までの高温に長時間曝される場合、組織が不安定化して高温強度が低下することが認められる。また、Niとの割合に対するCoの含有量も少ないため熱膨脹係数を上げ、高温強度を下げることが認められる。高温強度については、Alの他にγ´相を形成するTi,Nbの総量が少ないことに起因すると解される。また、本願発明者等が開示した特開平6−228714号に記載される合金も、同様にNiが30%未満であるために高温長時間使用されると基地組織が不安定化して高温強度が低下することがある。したがって、上記用途に使用される金属材料として、上記既存合金は十分に満足されているとは言えない。
【0008】
また、前記WASPALOYに代表されるNi基耐熱合金は、良好な高温強度及び優れた耐酸化性を示すが、オーステナイト系であるために熱膨脹係数が高く、上記用途に使用するには不適当である。
【0009】
そこで本発明は、上記特開昭53−6225号記載の既存合金と同様の低い熱膨張係数を有しながら、該合金よりも高温の組織安定性が良好で耐酸化性に優れ、かつNi基耐熱合金に近い常温から高温まで強度の高い低熱膨張の高強度Fe基耐熱合金を提供することを目的とする。特にガスタービン部材やセラミックスおよび超硬合金との複合材等の部品に適した耐熱合金を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本願発明者らは、上記問題点を解決すべく、Fe−Co−Ni系合金を対象に実験を行なった結果、高温強度をさらに上げるためには、基地であるγ(オーステナイト)相と析出強化相であるγ′(ガンマプライム)相をより安定化させることが重要であることを見出し、下記A,B,C,D値の概念を導入することにより本発明に至った。
【0011】
すなわち、本発明の耐酸化性に優れた低熱膨張の高強度Fe基耐熱合金は、質量%にて、C:0.2以下、Si:1.0以下、Mn:2.0以下、Cr:2.0〜8.0、Al:1.0〜2.0、Ti:1.2〜2.5、Nb:3.0〜6.0、Ni:30〜35、Co:20〜30を含有し、かつ質量%で、A値=(Al+Ti+Nb):6.2以上、質量%比で、B値=3.44Al/(3.44Al+1.94Ti+Nb):0.3〜0.5、原子%比で、C値=(Al/Ti):1.1〜1.8、D値=(Ti/Nb):0.4〜1.0の関係を有し、残部は不純物を除きFeからなることを特徴とするものである。
【0012】
また、本発明の耐酸化性に優れた低熱膨張の高強度Fe基耐熱合金は、質量%にて、(Mo+0.5W):3.0以下のMoとWの1種または2種を含有することことができ、さらに、第1グループとして、質量%にて、B:0.02以下とZr:0.1以下の1種または2種、第2グループとして、質量%にて、Y:0.2以下とREM:0.2以下の1種または2種、第3グループとして、質量%にて、Mg0.02%以下とCa0.02%以下の1種または2種、のいずれかの1グループ若しくは2以上のグループを含むことができる。
【0013】
また、本発明の耐酸化性に優れた低熱膨張の高強度Fe基耐熱合金は、800℃における高温引張強さが500MPa以上で、30〜500℃の平均熱膨張係数が12×10-6/℃以下で、800℃の大気中で100hr加熱後の酸化増量が3.0g/m2 以下であることを特徴とするものである。
【0014】
前述の析出強化相であるγ′相は、Ni3 Alからなる金属間化合物で、Alの他にTi、Nb、Cr、Moなどの種々の強化元素が固溶した状態で存在している。とくに、γ′相中でAl側に固溶して強化する元素は、TiおよびNbである。本発明の耐熱合金は、上記のA,B,C,D値の概念を導入して、Al、TiおよびNbの3元素の添加量を制御することにより、γ′相の安定化を達成した。
【0015】
すなわち、添加3元素Al、Ti、Nbの総量のA値を質量%で6.2以上とすることで、より高い高温強度を得ることができた。また、添加3元素に占めるAlの量比のB値は、Nbを基準として質量%比で記述すると、B値=3.44Al/(3.44Al+1.94Ti+Nb)で表わされる。このAl量比のB値を0.3〜0.5の範囲内とし、かつAlとTiの関係C値=Al/Tiを原子%比で1.2〜1.8とし、TiとNbの関係D値=Ti/Nbを原子%比で0.4〜1.0となるように制御することで、従来合金よりも高温域までγ′相を安定化させて、より安定した組織と良好な機械的性質が得られることを明らかにした。
【0016】
前述のように、高温強度を高めるためには、γ′相を構成する元素の量を増加させることが有効な手段であり、本発明合金はAl量を従来の低熱膨張耐熱合金よりも高い1.0%を超える添加量とすることでγ′相中の高いAl量比を得ることができた。一方、高いAl量はγ′相の析出量が増えることに繋がり、熱間加工性を害する方向に向うので、Alの他にγ′相を固溶強化する効果の大きいTiやNbの最適な添加範囲を見出すことで熱間加工性と高温強度を両立させることができた。
【0017】
Tiの添加量を増すと、700℃を越えて900℃までの高温で長時間保持した場合、γ′相が強化に寄与しないη相に変態するために高温強度が低下する。そこで、本発明合金は、Al/Ti比のC値を制御することによりη相への変態を抑制することができた。また、Ti/Nb比のD値をある範囲に制御することにより高い高温耐力が得られることの知見から(日立金属技報No.3(1986))、Ti/Nb比のD値を制御することにより、良好な機械的特性を得ることを考えた。
【0018】
また、本発明合金は耐酸化性を向上させることを目的としている。Crは耐酸化性を高めるのに有効であるが、熱膨張係数を大きくする。そこで、本発明合金は熱膨張係数を下げる効果の大きいNi、Coと最適なCrの添加範囲を見出すことで、低熱膨張特性と高温耐酸化性の両立を図ることができた。
【0019】
以上の検討結果から、γ′相を構成する元素の量ならびに量比を制御することで本発明者等は安定した組織と良好な機械的性質を有する耐酸化性に優れた低熱膨張の高強度耐熱合金を見出すことができた。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明合金の成分限定理由について述べる。
Cは、TiやNbと結合して炭化物を形成し、結晶粒の粗大化を防ぎ強度の向上に寄与するが、0.2%を越える過度の添加はTiやNbの炭化物を増し、析出強化元素として作用する基地のTiやNbを減少させ、また合金の熱膨張係数を増大させるので、Cは0.2%以下とする。望ましいCの範囲は0.1%以下である。
【0021】
Siは脱酸剤としての効果のほかに、結晶粒微細化と粒界形状を改善し、粒界の強度を高めるLaves相の析出を促進させるので必須の添加元素である。Laves相はFe2 (Nb,Ta)を基本組成とし、SiはNb側に固溶して析出を促進させる。この粒界強化の作用はSiを少量添加することにより効果が現れる。しかし、1.0%を越える過度の添加は熱間加工性と高温強度の低下を招くので、Siは1.0%以下に限定する。より望ましいSiの範囲は0.2〜0.6%の範囲である。
【0022】
Mnは、脱酸剤として添加されるので合金中に含まれるが、過度の添加は合金の熱膨張係数を増加させるので好ましくない。したがって、Mnは2.0%以下に限定する。より望ましくは1.0%以下である。
【0023】
Crは、高温加熱時にCr2 O3 の酸化皮膜を形成し、耐酸化性を改善し高温強度を向上させる働きがある。そのためにCrは最低2.0%を超える添加を必要とするが、8.0%を超える過度の添加は、逆にキュリー点を下げて、熱膨張係数を増加させる。このため、マトリックスを構成するFeとCoおよびNiの比をいかに調整しても、十分な低熱膨張特性が得られなくなる。したがって、Crは2.0%〜8.0%の範囲に限定する。望ましいCrの範囲は2.2〜6.0%、より望ましいCrの範囲は2.5〜4.5%である。
【0024】
Alは、本発明合金において常温及び高温強度を高める析出強化型粒子であるγ′相を構成する元素であり、本発明において最も重要な元素である。Alは時効処理によって、(Ni,Co)3 (Al,Ti,Nb)からなる組成の直径数10nm程度の微細なγ′相を析出し、高温引張強度及び高温長時間のクリープ破断強度を著しく向上させる。γ′相中のAlの濃度が低下すると、700〜900℃程度の高温でγ′相が不安定となり、六方晶のη(イータ)相や斜方晶のδ(デルタ)相が析出し、高温強度が著しく低下する。したがって、γ′相中での高いAl量比を得るためには、Alは最低1.0%を超える添加を必要とする。
【0025】
しかし、γ′相中のAlの濃度が過度に増加しても、γ′相そのものが十分に強化されず、高温強度は十分に高くはならない。また、2.0%を超える過度の添加はγ′相を多量に析出させ、熱間加工性を低下させるので、Alは1.0〜2.0%に限定する。
【0026】
TiとNbは、まずCと結合して炭化物を形成し、残りのTiとNbが下記に説明するようにAlとともにNi、Co等と結合し、γ′相を形成して合金を強化する。Tiは時効処理によって、Ni、Co、Al、Nbと共にγ′相を析出し、高温引張強度を著しく向上させる。そのために必要なTi量は最低1.2%であるが、2.5%を越える過度の添加はγ′相を不安定にするとともに、熱膨張係数の増加や熱間加工性の低下を招くので、Tiは1.2〜2.5%に限定する。より望ましい添加範囲は1.2〜2.0%である。
【0027】
NbはTiと同様に、時効処理によってNi、Co、Alとともにγ′相を析出し、熱問強度を著しく向上させる。さらに一部のNbは直径数μm程度のLaves相を粒界および粒内に析出させ、結晶粒を微細化すると共に、粒界の強度を高める作用を持ち、高温引張強度及びクリープ破断強度度を著しく向上させる作用を持つ。したがって、Nbは、3.0〜6.0%の添加とする。より望ましい添加範囲は3.5〜4.5%である。
【0028】
γ′相を構成するAl、Ti、Nbの総量について見ると、これを増加すると、高温強度を著しく高めることができ、Al、Ti、Nbの総量が6.2%を越えると、時効処理時に多量の金属間化合物(δ相、γ′相)を析出することでより高い高温強度が得られる。そこで、Al、Ti、Nbの総量のA値=(Al+Ti+Nb)は6.2%以上とした。
【0029】
またAlは、安定なγ′相を析出させるために、上記のAl単独での成分規定の他に、γ′相中でAl側を構成するAl,TiおよびNbの3元素の添加量に占めるAlの割合を厳密に制御することが必要である。
【0030】
添加3元素に占めるAlの量比は、Nbを基準とすると質量%比で、B値=3.44Al/(3.44Al+1.94Ti+Nb)で表わされる。このAl量比のB値が0.3よりも小さいと高温長時間加熱状態で、γ′相が不安定になることで、十分な強度が得られなくなる。一方、このAl量比のB値が0.5を超えると、γ′相は安定になるが、強化が十分にされないため、かえって高温強度が低下する。したがって、高温域までγ′相を安定化させて、従来合金よりも高い強度を得るためには、B値=3.44Al/(3.44Al+1.94Ti+Nb)が0.3〜0.5の範囲内であることが必要である。より好適な範囲は0.35〜0.45である。
【0031】
Al/Ti比(原子%比)のC値は、γ′相を構成する上で重要である。Al/Ti比のC値が1.1より小さいと、700℃以上の高温で長時間保持した際に、γ′相が強化に寄与しない安定相であるη相へ変態するために、高温強度が大きく低下する危険性がある。また、1.8を越えると、γ′相は安定にはなるが、強化が十分にされないため、十分に強度を高めることができず、かえって高温強度が低下するようになる。したがって、Al/Ti比のC値は1.1〜1.8とした。より好適な範囲は、1.3〜1.7である。
【0032】
また、Ti/Nb比(原子%比)のD値もγ′相を構成する上で重要である。Ti/Nb比のD値が0.4より小さいと、γ′相に固溶するNbの割合が増加して耐力は上昇するが、冷間加工性と熱間加工性が大きく低下するので好ましくない。また、Ti/Nb比のD値が1.0を越えると耐力が大きく低下するために高温で長時間使用する場合に材料が塑性変形しやすくなり、高温においてセラミックスとの接合性が求められる場合などに好ましくない。したがって、Ti/Nb比のD値は0.4〜1.0とした。より好ましい範囲は0.6〜0.8である。
【0033】
Niは、Co、Feとともにマトリックスを構成し、FeとCoおよびNiの比は合金の熱膨張係数と金属間化合物の析出形態に著しく影響を及ぼす。本発明合金は、従来合金を超える最も高いレベルの高温強度を付与するために、TiやNbやAlなどの析出強化元素を多く含むが、同時に従来合金にないFe、Co、Niの割合を見出して高い高温引張強さと低熱膨張係数の両立を可能にしたものである。すなわち、本発明合金のFeとCoとNiの量とその割合により、微細球状のLaves相の析出量が多くなり、粒界強化に役立ち、高温のクリープ破断強度強度が高められている。
【0034】
Niはγ′相の構成元素でもあるので、γ′相が十分に析出し、析出したあとも基地が安定なオーステナイト相となりうるだけの十分なNi量が必要である。そのために必要なNi量は30%以上である。逆に35%以上のNiは熱膨張係数を増加させ、Laves相の析出量を減少させるので、結晶粒の微細化や粒界強化が困難となり、本発明の目的が達成できなくなる。したがって、Niは30〜35%であることが重要である。望ましいNiの範囲は30.5〜32.5%である。
【0035】
CoもNiと同様Feとともにマトリックスを構成し、熱膨張係数の低下とLaves相の析出に役立つ。さらに一部のCoはγ′相中で、Ni側に固溶する。そのためにCoは20%以上の添加を必要とする。逆に30%を越えるCoの添加は熱膨張係数の増加と、過度のLaves相析出にともなう高温強度の低下をまねくので、Coは20〜30%の範囲とする。望ましいCoの範囲は22〜28%である。
【0036】
MoとWは、本発明合金において必須の添加元素ではないが、両者のうちの1種または2種を添加することで、マトリックスを強化することができ、高温の強度をより高めることができる。しかし、両者はともに合金の熱膨張係数を高めるので過度の添加は好ましくない。両者は同属の元素であり、比重の面からはMoが、耐酸化性においてはWが有利である。本発明においてMoやWを添加するときは、(Mo+0.5W)で3.0%以下の添加とする。この量であれば、本発明合金の熱膨張特性、耐酸化性、比重を特に害することなく高温強度が向上する。
【0037】
BとZrは、1種または2種の添加で、結晶粒界に偏析して粒界強度を高め、熱間加工性とクリープ破断強度の向上に寄与する。その効果は極く微量の添加から現れ、多量の添加は逆に合金の初期溶融温度を低下させて熱間加工性を害するので、Bの場合は0.02%以下に、Zrの場合は0.1%以下に限定する。
【0038】
また、Yと希土類金属(REM)の1種または2種は、それぞれ単独および複合でCr2 O3 の密着性を増して耐酸化性の改善に寄与するため、選択元素として添加できる。YとREMの耐酸化性改善の効果はともにごく少量の添加から現れるが、過度の添加はYまたはREMとNi,Fe,Coの金属間化合物を晶出し、その共晶温度が合金の熱間加工温度よりも低くなるために、合金の熱間加工性を低下させる。したがって、Yは0.2%以下、REMは0.2%以下の添加とする。
【0039】
さらに、選択添加元素として、MgとCaの1種または2種を添加することは、それぞれ単独および複合で脱酸・脱硫効果を高めるとともに、合金の熱間加工性と高温延性を高める効果をもつ。そのために、Mgは0.02%以下、Caは0.02%以下の範囲で添加できる。
【0040】
上述の添加合金元素の他に下記の合金元素は、以下に示す範囲で含有するならば特性上とくに問題とはならないが、いずれも極力低い方が望ましい。
質量%で、V≦1%、Cu≦1%、Re≦1%、Hf≦0.2%、P≦0.01%、S≦0.005%、O≦0.005、N≦0.005%
以上述べた元素の他は、残部Feで構成される。
【0041】
次に、本発明合金の特性を規定した理由について述べる。
高温強度が低いと、使用の際に材料が軟化してしまうために、接合部材としての機能を果たさなくなる。この機能を果たすために要求される強度として、800℃における高温引張強さが500MPa以上を規定した。
【0042】
また、高温の熱膨脹係数が大きくなると、各部品や部材間のクリアランスを常温から高温まで一定に保つことが困難になるので、合金はセラミックスなどに近い低熱膨脹係数が要求される。そこで、30〜500℃の平均熱膨張係数を12×10-6/℃以下に規定した。
【0043】
さらに、耐酸化性の良好でない合金は高温中で使用すると、形成する酸化層の密着性が不十分で酸化層が剥離するために、各部品や部材間の接合が劣化し、またクリアランスを常温から高温まで一定に保つことが困難になる。そこで、緻密で密着性の良い酸化層を形成し良好な耐酸化性を示す数値として、800℃の大気中で100hr加熱後の酸化増量を3.0g/m2 以下とした。
【0044】
本発明合金の溶製は、真空溶解で製造されることが望ましい。インゴット重量が200〜300kg以下の場合は、真空の1回溶解のみでも良好な特性が得られるが、それより大きな重量のインゴットを製造する場合は、エレクトロスラグ再溶解や真空アーク再溶解等の組織改善効果の高い再溶解によるインゴットの製造がより望ましい。
【0045】
このようなインゴットは通常の超耐熱合金と同様の熱間加工プロセスによって熱間成形が可能である。さらに必要に応じて冷間の成形を加えて目的とする製品形状に仕上げることができる。固溶化処理は、Laves相が残存あるいは析出するとともにγ′相が十分に固溶する温度範囲で行なう。固溶化処理の好ましい温度は850〜1100℃である。固溶化処理に先立つ熱間加工が、固溶化処理を代用できる場合は固溶化処理を省略してもよい。時効処理は、γ′相が基地と十分整合し数10nm程度の微細析出粒子として析出する温度で実施する。時効処理の望ましい温度範囲は600〜850℃である。
【0046】
【実施例】
表1及び表2に示す化学組成の合金を、真空誘導溶解炉により溶解して10kgのインゴットにした。No.1〜9は本発明合金、No.11は前記特開平6−228714号に記載の従来合金である。比較合金のNo.21、22は前記特開昭53−6225号に記載の合金、No.23はNo.22に類似するCr無添加の合金、No.24はNiべ−スのWASPALOYに相当する成分の合金である。また、表2には併せて前記A,B,C,D値の計算値を示す。
【0047】
【表1】
【0048】
【表2】
【0049】
上記の各合金のインゴットを、熱間で鍛伸して30mm角の試料とした。その後、すべての合金を980℃×1hr保持後水冷する固溶化処理を施した。時効処理は、No.1〜9、11、21〜23の合金は、720℃×8hr保持後、55℃/hrの冷却速度で620℃まで冷却し、引続き8h保持後空冷の熱処理を実施した。No.24合金は、843℃×4hr保持後空冷した後、さらに760℃×16hr保持後空冷する2段時効処理を施した。
【0050】
この各試験片について、常温及び高温の引張試験、熱膨張測定、及び高温耐酸化試験を行った。高温引張試験は、800℃においてASTMの試験方法に基づき、平行部直径6.35mm、標点間距離25.4mmの引張試験片で実施し、引張強さ及び0.2%耐力を測定した。熱膨張係数の測定は示差熱膨張測定装置により30℃から500℃および800℃までの平均熱膨張係数を測定した。耐酸化試験は、直径10mm、長さ20mmの丸棒試験片を、大気中雰囲気で800℃×100hrの加熱を行った後、酸化増量値を測定して耐酸化性を評価した。表3に機械的性質を示す。
【0051】
【表3】
【0052】
表3から、まず常温の引張特性を見ると、本発明の合金No.1〜9の引張強さは1400MPa台で、1200〜1300MPa台の従来合金No.11や比較合金No.21〜24に比して高い強度を有している。耐力についても同様である。
【0053】
800℃の高温引張強さにおいても、本発明合金は代表的なNi基耐熱合金の比較合金No.24(WASPALOY)には劣るものの、低熱膨張のFe基耐熱合金の中では非常に優れた引張強さと耐力比(耐力/引張強さ)を有する。
【0054】
すなわち、高温引張強さで見ると、本発明合金No.1〜9はいずれも500MPa以上の引張強さを示しており、良好な高温引張強さを有している。この値は、Ni基の比較合金No.24(WASPALOY)より低いが、Fe基合金としては、従来の低膨張合金では得られなかった強度である。この中でも、A値が最も高い合金No.6は最も高い高温引張り強さを有する。一方、A値が高くてもB値,C値が高めの合金No.2やNo.7は、強度がNo.6に比較してやや低くなる。また、発明合金の中でもCr量の少ないNo.2、No.3、No.8は低めの高温引張り強さを示す。上記の事実から、Crが高温引張り強さの向上に効果があることが判る。これに対し、比較合金No.21〜23の高温引張り強さは、約200〜270MPaである。このように本発明合金が良好な高温引張強さを示すのは、化学成分の他にA,B,C,Dの規定値をすべて満足しているためである。従来合金No.11はTi量の他にA値が、比較合金No.21はA値、C値が、No.22はA値が、No.23はB値、C値が低いために、いずれも高温引張り強さが低くなっている。
【0055】
高温における0.2%耐力も、本発明合金No.1〜9は、従来合金No.11、比較合金No.21〜23よりも高く、耐力比(耐力/引張強さ)で見ても、No.21〜23よりはるかに高い。以上のように本発明合金は、常温から高温まで高い強度を有する。
【0056】
表4に膨脹係数と酸化増量のデータを示す。
【0057】
【表4】
【0058】
熱膨脹係数を見ると、本発明合金は30〜500℃において、9.4〜11.4×10-6/℃、30〜800℃において、約14.8×10-6/℃で、従来合金No.11、比較合金No.21、22とほぼ同等の低熱膨張を示している。この値はNi基のNo.24より低い値である。また比較合金No.23はCrを含有しないので、熱膨脹係数は低いが下記の耐酸化性において著しく劣る。
【0059】
耐酸化性について見ると、前述のようにCrを無添加としたNo.23合金は、熱膨張係数は低いものの、Cr無添加であるために耐酸化性が低下する。本発明合金は、従来合金No.11、比較合金No.21〜23と比較して同等以上の耐酸化性を有し、従来のNiべ−ス合金の代表であるNo.24合金(WASPALOY)と比較してもより高い耐酸化性を有する。
【0060】
上述のように本発明合金は、従来の低熱膨張耐熱合金と同等の熱膨脹係数を有しながら、それら合金より常温から高温まで高い強度を有するFe基耐熱合金である。また、高温耐酸化性においても従来合金やNi基耐熱合金より優れる。
【0061】
【発明の効果】
本発明の合金をガスタービン部品、セラミックス接合部品および超硬合金接合部品等の用途に使用すれば、従来合金では得られなかった高い高温強度、高い高温耐酸化性ならびに低熱膨張特性を同時に満足することができ、常温から高温まで高強度で、かつ各種の部材や部品間に設けられたクリアランスを常温から高温まで一定量に維持することが必要な構造用材料への長時間の適応が可能となる。また、セラミックスや超硬合金のような低熱膨張材料との接合に際し高強度で信頼性の高い接合が長時間にわたり得られる。さらに、これらの用途以外の部品への適用に際しても、発明合金が有する高温強度、耐酸化性および熱膨張特性の特色を生かした部品ならば、いずれも良好な特性が得られる。
Claims (4)
- 質量%にて、C:0.2以下、Si:1.0以下、Mn:2.0以下、Cr:2.0〜8.0、Al:1.0〜2.0、Ti:1.2〜2.5、Nb:3.0〜6.0、Ni:30〜35、Co:20〜30を含有し、かつ質量%で、
A値=(Al+Ti+Nb):6.2以上、
質量%比で
B値=3.44Al/(3.44Al+1.94Ti+Nb):0.3〜0.5、
原子%比で、
C値=(Al/Ti):1.1〜1.8、
D値=(Ti/Nb):0.4〜1.0の関係を有し、
残部は不純物を除きFeからなることを特徴とする高温強度に優れた低熱膨張Fe基耐熱合金。 - さらに、質量%にて、(Mo+0.5W):3.0以下のMoとWの1種または2種を含有することを特徴とする請求項1に記載の高温強度に優れた低熱膨張Fe基耐熱合金。
- さらに、第1グループとして、
質量%にて、B:0.02以下とZr:0.1以下の1種または2種、
第2グループとして、
質量%にて、Y:0.2以下とREM:0.2以下の1種または2種、
第3グループとして、
質量%にて、Mg0.02%以下とCa0.02%以下の1種または2種、
のいずれかの1グループ若しくは2以上のグループを含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の高温強度に優れた低熱膨張Fe基耐熱合金。 - 800℃における高温引張強さが500MPa以上で、30〜500℃の平均熱膨張係数が12×10-6/℃以下で、800℃の大気中で100hr加熱後の酸化増量が3.0g/m2 以下であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の高温強度に優れた低熱膨張Fe基耐熱合金。
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